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政治と科学、役割整理 東大教授・武藤香織氏(2020年12月31日配信『日本経済新聞』)

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インタビューに答える武藤香織・東京大学医科学研究所教授

需要喚起策「Go To キャンペーン」の停止をめぐり政府と専門家の間の関係がギクシャクした。科学と政治の間の間合いがうまくとれていないようにみえる。新型コロナウイルス感染症の第1波に対処した専門家会議のころから、コミュニケーションの課題を指摘し続けている武藤香織・東京大学教授に聞いた。

――感染拡大が止まらず、新型コロナウイルス感染症対策分科会がやや迷走気味に見えます。

「専門家の提言を政府がそのまま実行する必要はなく、政府は経済界の見方を聞いた上で判断すればよい。政治には政治の判断があるからだ。分科会は経済学者も加わるが感染症や公衆衛生の色合いが濃い。経済と感染症の専門家が同じゴールを国民に示し、ここを一緒に目指そうという感染制御の目標を立てたい」

「専門家に長期見通しを示してほしいとの要望が経済界にある。その期待にこたえる必要はあるが、未知の感染症対策に確実なエビデンスを要求することは困難だとも知ってほしい」

――専門家会議は6月の解散時に「専門家が前のめりだった」との反省を公表しました。

「第1波の際、専門家会議が国民に行動変容を呼びかけたことは後悔していない。しかし呼びかけが常態化し、専門家が新型コロナ対策を決めていると思わせてしまった。対策を決め国民に呼びかけるのは政治と行政の役割だ。政治と科学の役割分担があいまいだった。7月以降は厚生労働省のアドバイザリーボードがリスク評価を、内閣官房の分科会がリスク管理の提言をする形になり、少し整理できた」

「緊急事態宣言をしなくてもよかったなど否定的な声も多かった。宣言の成果は、人との接触を減らせば感染拡大を防げることが明らかになり、感染拡大の速度を抑えて時間を稼ぐことで検査や医療の提供体制を拡充できたことにある。人々の頑張りで感染者数を下げられた。感染の急拡大は最優先で回避すべきだという第1波のころの記憶がその後薄らいでしまったように思う」

「第2波も社会経済活動をしながら乗り越えた。だが成功体験が冬季の感染の楽観視を招き、急激な第3波につながった可能性がある。国と地方、科学と政治の間の相反するメッセージが人々を混乱させている。まず流行抑制に注力し、専門家の警告から政治の判断までの時間を短くし迅速な対応を目指すべきだ」

――感染者や医療従事者などへの差別や中傷が今も深刻です。

「差別や中傷の問題は長く尾を引く。早くから政府に対応を求めていた。9月に分科会に作業グループが設けられ11月に中間とりまとめを公表した。最も強調したのは中傷や差別に法的な責任を伴う行為も含まれるという警告だ」

「検査陽性や感染の事実だけを捉えて非難するのは不当で、非難されるのを恐れて受診回避を招けば、結果的に社会に危険を及ぼす。災害時には立場の弱い人や少数者が犠牲になりやすい。正確な知識を広げ、偏見や差別を減らす啓発にもっと力を入れる必要がある」

(聞き手は編集委員 滝順一)

むとう・かおり 1993年慶応義塾大学文学部卒。東京大で博士号を取得。米ブラウン大、信州大を経て東大医科学研究所准教授、2013年から現職。医療社会学や医療倫理などが専門。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて政府が設置した専門家会議や分科会のメンバーを務める。




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Author:gogotamu2019
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