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#自助といわれても;「8050問題」 ひきこもりの弟と向き合う姉「駅のホームで意識を失った」(2021年1月3日配信『毎日新聞』)

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ひきこもりになった弟と母のケアをしている女性=東京都渋谷区で2020年12月16日午後4時13分、待鳥航志撮影

 61万3000人--。内閣府が2019年に発表した全国の40~64歳のひきこもりの推計だ。ひきこもりの子と親が高齢化し、生活に困窮する「8050問題」の深刻化が叫ばれて久しい。記者は、ひきこもりの当事者ではなく、彼らを支えるきょうだいが集まる会合に出かけ、そこである女性と出会った。彼女は「私がすべてを解決しなくてはならないと思い、うつ状態になりました」と打ち明けた。
一体何があったのか。女性の苦悩に耳を傾けた。【待鳥航志/統合デジタル取材センター】

成績優秀な弟が近所トラブルを繰り返す

 「9歳年下の弟が、10年以上ひきこもっています」

 20年12月上旬。東京都内のある施設の和室で田中久美子さん(58)=仮名=は10人ほどの参加者を前にして、こう語り始めた。これはNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京都)が毎月開いている「兄弟姉妹の会」。ひきこもりのきょうだいがいる参加者がフリートークで悩みを分かち合う「居場所」という名の当事者会だ。

 参加者はひきこもり本人のきょうだい。田中さんは「今はほぼ毎月参加しています。来ると元気がもらえるんです」という。だが昨年夏ごろ、うつ状態になりかけたという。明るく振る舞う姿からはとても想像できない。

 田中さんは4歳年上の兄、弟の3人きょうだい。弟は記憶力が優れており、中学時代の成績はほぼ「オール5」の「秀才」。ただ、ずっと手を洗っていたり、洗剤のにおいが受け付けられなかったりする様子が気になった。「ちょっと変わった子だと思っていました。上の2人の子と年が離れているぶん親に甘やかされてはいましたが、成績優秀だったので両親も私も彼の将来に期待していました」という。

 田中さんは26歳で結婚し、川崎市に住まいを移した。仕事や家庭に追われる中で、弟と関わる時間は次第に少なくなっていった。

 弟は大学を卒業後、関東にあるメーカーに就職して1人暮らしを始めたが、数カ月で退職。その後広告系の会社に勤めたが長続きせず。以降、イベントスタッフなどのアルバイトで生計を立て、かつ両親の援助も受けるようになった。

 弟が36歳のとき。アパートの部屋で雨漏りがしたのに放置し、畳が腐って抜け落ちるトラブルが発生した。それまでも夜中に大声を出すなどして大家や近所といさかいを繰り返し、横浜市内を転々としていた。

 その頃、希望するアルバイト先が年齢制限などで見つかりにくくなり、両親の住む実家に戻った。田中さんは「親はそれでも『弟は才能があるのに生かせていないだけ』と言っていました。その期待が本人にプレッシャーや苦痛を与えていたのかもしれません」と振り返る。実家に戻った弟は、それ以降家にひきこもるようになった。買い物程度の外出はするが、外部との関係を絶っているようだった。

 手紙を書いたことがあった。「今何に苦しんでいるのかを知りたいとか、年をとった両親のことも考えなさい、などとつづりました。でも本人は読まずに破り捨てていた、と母から聞いて。弟からすれば『どうせ説教だろう』と思ったのかもしれません」

母倒れ、弟の暴力が発覚

 14年に父が亡くなり、母と弟の2人での暮らしになった。ひきこもりは続き、母は「どうすればいいかわからない」と涙を流していた。

 18年2月の夜、突然弟から電話がかかってきた。「母ちゃんが倒れた。今、救急車で病院に運ばれた」

 母は脱水症状を起こして倒れ、意識不明になっていた。足腰が弱まったためトイレに行く頻度を減らそうと、水分摂取を控えていたことが原因になった可能性がある。母は回復したが、さらに脚力が落ちて自力での歩行が難しくなった。

 そんな時、母に付いていたケアマネジャーの女性がこう言った。「お願いですから、2人をこれ以上一緒にいさせないでください」




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Author:gogotamu2019
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