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(論)緊急事態宣言(2021年1月4・5・6・7・8・10・11・12・13・14・15日・4月8・21・22・23・26・27日)

三たび緊急事態 今度こそ失敗は許されぬ(2021年4月27日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく3度目の緊急事態宣言を受け、東京と関西の4都府県で今週から対策が一段と強化されている。

 波状的に繰り返される感染の拡大で、市民生活は疲弊の色を深めている。対策の失敗や混乱はもはや許されない。政府と自治体には強い覚悟を求めたい。

 今回の宣言は、飲食店の時短営業を軸にした前回宣言時の対策から一転、全ての大型集客施設に休業要請の網を掛けるなど幅広い措置が打ち出された。

 政府は感染力が強い変異株の封じ込めに向け、大型連休中の人流を強力に抑止する「短期集中型」と銘打ち、期限を5月11日に設定した。飲食店には午後8時までの営業を認める一方、酒類提供の終日停止を要請する異例の試みも導入した。

 医療提供体制の崩壊は関西のみならず、首都圏でも危ぶまれている。それを回避しつつ、冷え込む経済への影響も最小限にとどめたいと政府は説明する。ただ政府の対応がまたしても後手に回ったのは明らかだ。多くの国民はそこに不信感を抱き、今後への不安も募らせている。菅義偉首相をはじめ全閣僚が責任を自覚すべきだ。

 政府は3月21日に2度目の宣言を全面解除する際、感染拡大の予兆をつかむ戦略的検査、変異株の監視強化、病床の確保などを進める5項目の継続対策を掲げた。これらは結果的には機能せず、わずか1カ月余で再宣言に追い込まれた。

 政府は自らの取り組みを検証し、宣言の具体的な解除基準やその後の対策の方向性を国民に明示していくべきだ。今回は宣言が週末の金曜日に決定され、2日後の日曜日に発動された。多くの企業などが戸惑い、対応に追われる事態も招いた。

 東京、大阪の大都市圏で経済活動や人の往来が制約される影響は九州をはじめ全国に及ぶ。観光業を中心に2年続きで大型連休への期待をそがれた人々の落胆は大きい。全国知事会は、各種支援策の拡充や補正予算の検討、ワクチン接種の推進などを求める緊急提言を出した。当然かつ切実な思いだろう。

 首相は今回の宣言に伴う記者会見で「国民に申し訳ない」とわびつつ、ウイルスの脅威を強調し「手をこまねいていれば感染が国全体に拡大する」と述べた。その兆候は既に顕著だ。

 緊急事態対象の4都府県に加え、それに準じる、まん延防止等重点措置の適用地域が全国で7県を数え、さらに広がる様相を見せている。国民の我慢やいらだちも限界に達しつつある。

 菅政権は言葉ではなく、今度こそ政治の責任として具体的な成果を出さなければならない。





決断できない菅政権 コロナ対策は五輪対策でしかない(2021年4月26日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★4都府県に3度目の緊急事態宣言が出されたが、国民はこの宣言が科学的根拠というよりも政治的思惑で出されたことだと理解していることだろう。14日の参院本会議で「現時点で全国的な大きなうねりとまではなっていない」と見えを張った首相・菅義偉は週末をワシントンで日米首脳会談に充てた。米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は「4月上旬から10都府県に対し、まん延防止等重点措置を適用したものの効果が出ず、緩い制限は感染拡大を抑止することに失敗した」と指摘した。

★コロナ対策はオリンピック(五輪)対策でしかなく、国民の生命や財産よりも五輪開催という体裁が優先されることに政権内の議論があったとは思えない。米AP通信は「菅はこれ以上経済にダメージを与えることに消極的」と書かれ、誠に的を射ていると思うが、さすがに昨年末あたりから経済とコロナ対策の両輪などというアクセルとブレーキを同時に踏むような政策を“コロナ担当”の経済再生担当相・西村康稔も言わなくなった。五輪に対しては国民の中に1964年の東京五輪の思い入れが強くあり、関係するアスリート世代よりも、親や指導者に五輪への憧憬(しょうけい)が強い。

★ところが菅政権は明確なメリハリと決断ができず、五輪開催こそが成功だと考える。また政府内には国民の7割以上が常に五輪開催に反対しているものの、いざ東京で始まれば反対していた人たち誰もがテレビで競技にくぎ付けになり、メダルラッシュに沸けば誰も「反対」などと言わなくなると思っている。だが参加者の少ない五輪のメダルでは国内アスリートたちも複雑だろう。それは国民にもすぐ伝わる。25日に行われた衆参の補選と再選挙は軒並み投票率が下がっている。コロナ禍の総選挙にも課題を残す。23日、国際オリンピック委員会(IOC)のへーリー・ウィッケンハイザー委員(カナダ)は開催の判断は「医療と健康の専門家によってなされるべきで、企業や大規模なビジネスによってなされるものではない。明確で透明性のある説明が必要」と当然の指摘をしている。







3度目の「緊急事態」/失政のつけ 国民に回すな(2021年4月23日配信『河北新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、政府は東京都と大阪府、兵庫県、京都府を対象に3度目の緊急事態宣言を発令する方針を決めた。

 大阪と兵庫は5日から、京都は12日から「まん延防止等重点措置」が適用されたが、効果が上がっていない。大阪は変異株が広まり、重症者数が重症病床数を超える「医療崩壊」に陥っている。

 東京もリバウンド(感染再拡大)の危機に直面し、飲食店などに休業要請・命令が可能になる緊急事態宣言に早々とかじを切った。12日に重点措置期間が始まったばかりだ。失敗だったのは明白だ。

 宣言は国民の権利と生活を制限する。不自由を強いる事態をなぜ、回避できなかったのか。感染防止の決め手と目されるワクチンの入手も出遅れ、接種率は先進国で最低レベルだ。失政のつけが国民に回ってきている。政治の責任が厳しく問われよう。

 東京が宣言を短期集中型にしたがったのは、長引けば、7月23日に開幕する東京五輪・パラリンピックに影響が及ぶと懸念したからだ。開催都市だけに「五輪ありき」の姿勢が顕著だ。

 政府と与党には5月中に宣言を解除すれば、五輪に支障はないと見込む向きがある。

 最も優先すべきは、命と健康であるはずだ。宣言は政府の手中に残る「最後のカード」だ。再三切れば、効力は薄らぎかねない。医療供給体制に余裕が生まれないかぎり、宣言は解除すべきではない。

 宣言の五輪への影響について、菅義偉首相は20日、「オリンピックは(影響は)ないと思っている」と言明した。切迫した状況を前に、認識が甘すぎないか。

 首相は「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開催する」「安全安心な大会になるように全力を挙げたい」とも述べている。

 ならば、コロナ禍を克服できず、安全性が危ぶまれる場合は、開催を再考すべきではないか。政治的なメンツにこだわった揚げ句の強行開催を誰が支持するだろうか。

 東京と大阪は、休業要請の対象に、飲食店のほか、百貨店、テーマパーク、ショッピングセンターといった大型施設も含める方向で検討している。感染防止のガイドラインを順守し、対策を徹底してきた施設にとっては、努力が報われないことに等しい。

 休業すれば、収入を得るすべがなくなり、取引先を含め、事業存続や雇用継続が苦しくなるのは必至だ。

 損失をそのまま補償する規定は、新型コロナ対応の改正特措法にはない。代わりに経営支援として協力金が支給されてきたが、損失の一部を補うにすぎない。

 政府はコロナ禍に備え、2021年度予算で5兆円の予備費を確保している。3度目の「緊急事態」だ。今度こそ、その場しのぎではない救いの手を差し伸べるときだ。



帰って来るな(2021年4月23日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 首都圏にいる友人に先日、こう打ち明けられた。「大好きな秋田のおばあちゃんが亡くなった。でも家族からは『帰って来るな』と言われた」。新型コロナウイルスの感染を広めるのでは、と敬遠され、爪はじきに遭ったように感じたのだろう

▼東京と長野を行き来しながら暮らす別の友人は最近、長野のナンバーの車を購入した。「東京のナンバーだと、長野で白い目で見られてしまう」と顔を曇らせた

▼コロナ禍によって生み出される首都圏と地方の感情の溝。そこに感染力の強い変異株という不安要素が追い打ちをかける。どこまで溝が深まるのか、見通せない

▼政府はきょう、東京都、大阪府、兵庫県などへの緊急事態宣言発令を決定する方針だ。飲食店への営業時間短縮要請を中心とした「まん延防止等重点措置」が適用されていたにもかかわらず感染状況や病床逼迫(ひっぱく)は深刻化。より強い対策が必要な事態に追い込まれた

▼前回の宣言が全て解除された時点で、地域によっては既に感染再拡大の兆しが現れていた。「自粛疲れ」や「宣言慣れ」の中で、幅広い施設への休業要請ができない重点措置で抑制しようとするには無理があった

▼緊急事態宣言の後に重点措置を適用し再び宣言発令へ。切り札を乱発すればするほどその効果は薄まっていく。今回の宣言を受け商業施設への休業要請に踏み込む可能性もあるようだ。爆発的感染に至ってから人の流れが抑制されても遅過ぎる。そのような悪夢は回避せねば。



3度目の宣言、強い対策に覚悟がいる(2021年4月23日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 新型コロナウイルスの感染「第4波」の到来で、三たび緊急事態宣言が出た。生活、経済に大きな痛みを伴うが、医療が逼迫し感染力が強い変異ウイルスが猛威を振るっている。やむを得ない。

 宣言は東京、大阪、京都、兵庫の1都2府1県が対象で、期間は25日から5月11日。政府は集中的な対策で大型連休中の感染拡大を防ごうとしているが、必要なら延長をためらうべきでない。

 2回目の全面解除から1カ月余りでの発令になったのは、感染の中心が変異ウイルスに移った影響が大きい。感染力が従来の1.3倍以上で、重症化しやすいとの見方もある。大阪や兵庫では新規感染の8割を占め、東京でも近く流行の中心になりそうだ。

 政府の分科会の尾身茂会長は「2回目の宣言よりも強い対策がいる」と述べる。感染の先行きが見通せず、昨年春の第1波に匹敵する危機感を専門家は持つ。重く受け止めるべきだろう。

 4都府県のなかで特に深刻な事態にあるのが大阪府。病床が満杯で入院や転院ができないケースが相次ぐ。コロナ以外の患者にもしわ寄せがいき、「救える命」が救えなくなる差し迫った状況だ。一刻の猶予もない。

 病床に余裕のある近隣県と協力しながら、広域医療体制で難局を乗りきるしかない。各知事や医師会が連携を強める。国も調整役として支援を惜しんでならない。

 爆発的な感染拡大に待ったをかけるには人の流れを抑えるしかない。短期間に感染者数を一気に減らす方が、中長期でみた経済への打撃も小さくなるといわれる。今はブレーキを強く踏むときだ。

「まん延防止等重点措置」では飲食店対策に照準を合わせた。オフィス街の人口が減らず、市中感染リスクになった。日中の人出を減らす対策が急務で、テレワークの徹底が必要である。

 大型連休に期待していた飲食店や大型商業施設、娯楽施設にとって、宣言によるダメージは計り知れない。休業補償も国や自治体が連携しきちんと対応してほしい。

 17日間の緊急事態で感染は本当に落ち着くか。再びの延長はないか。ワクチン接種が一向に進まず、国民のコロナ対策への不安や不信は大きくなる一方である。「疲れ」「慣れ」が「あきらめ」「憤り」に変わらぬよう、政府はゴールの姿を示し、達成できない場合の措置も決めておくべきだ。



二兎を追う(2021年4月23日配信『高知新聞』-「小社会」)

 ことわざの「二兎(と)を追う者は一兎をも得ず」は明治期に西洋から伝わった。日本でもウサギはなじみ深く、修身の教科書も採用。類語の「あぶ蜂取らず」は徐々に使われなくなったとか。

 二つの目標を同時に追求しても、結局どちらもうまくいかない―。世界にはひと味違うたとえもある。ユニークなのは、台湾の「二艘(そう)の船にまたがって泡を食う」、ネパールの「二人の妻を持つ男は部屋の隅で泣く」あたりか(岩波書店「世界ことわざ比較辞典」)。
 
 新型コロナの感染抑止と経済再生。その「二兎」ともうまく追えていないのがいまの政府だろう。緊急事態宣言でみても、昨春の1度目は経済への打撃が大きく、年明けからの2度目は中途半端な抑止策で再拡大を招いた。

 大都市で3度目の宣言が迫っている。変異株の拡大という新たな脅威もあり、大阪や東京は百貨店などへの休業要請も想定。当面はどちらのウサギを追うのか。経済重視の菅首相も、めりはりの利いた策が問われるのでは。

 切り札となる接種人口分のワクチンに関し、首相は「9月までに供給されるめどが立った」と述べた。だが、国会で詳しい説明を避けている姿には不安がよぎる。「捕らぬたぬきの皮算用」にならぬよう。インドネシアでは「泳ぐ魚を見て塩コショウを擦る」という。

 大都市部の宣言には本県でも警戒を強めたい。「あすはわが身」は世界中に似た言い回しがある。



3度目緊急事態宣言へ(2021年4月23日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆従来施策の「失敗」総括せよ◆

 政府は新型コロナウイルス感染が再拡大している東京都、大阪府、兵庫県に対する緊急事態宣言発令を23日に決める意向を固めた。自治体からの宣言発令の要請を受けた形で、京都府も発令対象とする方向。期間は4月下旬からの大型連休を含める方針だ。3度目の発令という事態になった以上、政府、自治体は人流抑制と病床確保を早急に実現しなければならない。

 まん延防止措置は、機動的に適用し宣言発令に至る前に拡大を抑える狙いで導入された。しかし、適用された計10都府県で目に見えて減少に転じた所はまだない。かえって、これを適用したことで宣言発令の判断が遅くなった弊害さえ疑われる。

 大阪は今月5日のまん延防止措置適用後も新規感染者数が減らず、2週間後の18日は日曜にもかかわらずその時点で過去最多の1219人になった。これを受け吉村洋文知事は「重点措置では効果は不十分だ」として宣言発令要請を決断した。府が確保した重症病床では足りず、滋賀県に患者受け入れや看護師派遣を求めるなど既に「医療崩壊」と言うべき状況だ。

 歓送迎会などイベントが多い季節で人流がさほど減らず、大阪の新規感染者は30代以下の若者が約半数を占める。加えて感染力、重症化率が高い変異ウイルスが大阪、兵庫で約8割になり、突出したリバウンドを招いた。変異株が約半数の東京も、関西同様になりかねない。

 さらに言えば大阪は「だらだらとやるべきではない」(吉村知事)と2度目の緊急事態宣言を期限より1週間早く2月末までで先行解除した。これが自粛疲れの府民に安心、緩みを与えたことは否定できない。続くまん延防止措置も行動を自制させるメッセージ性が緊急事態宣言に比べ弱かった。

 大阪は宣言解除後も飲食店への時短営業を要請したが、最近では変異株の感染経路は多様化し、飲食店だけでなく学校、職場でも感染者集団が発生している。変異株への対応を甘く見たと批判されても仕方あるまい。

 2度目の宣言は飲食店の時短営業が対策の中心だった。大阪府は今度は飲食店のほか百貨店、テーマパークなどへの休業要請に踏み切る考えだ。大阪市は市立小中学校の授業を原則オンラインにするという。経済活動との両立に固執し再拡大を招いた反省に立つ強い対応なのだろう。だが方針転換するなら、従来施策の「失敗の本質」を総括し、説明責任を果たすプロセスを踏むべきだ。

 全対象者に供給できるだけのワクチンの確保は早くて9月になる。東京五輪開催までは3カ月。大型連休は最後の踏ん張りどころだ。





緊急事態発令へ 必要性の説明を丁寧に(2021年4月22日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大が続く東京、大阪、兵庫の3都府県に対し、3回目の緊急事態宣言を発令する方針を決めた。

 京都府も発令を要請する。

 4都府県はすでにまん延防止等重点措置を講じているが、大阪は新規感染者が連日千人を超え、重症病床は満床状態で、医療機関は災害級の対応を強いられている。

 東京も感染が急拡大している。

 宣言の発令はやむを得まい。

 問題なのは、中途半端な感染対策が繰り返され、すべてが後手に回っていることだ。

 飲食店の営業時間短縮を中心としたまん延防止措置では、感染力が強い変異ウイルスの封じ込めは困難という指摘がかねてあった。

 大都市には、不特定多数の人が集まる繁華街が各地にある。感染経路を特定してすべての濃厚接触者を隔離するのは難しい。

 人の流れを根本的に減らす広範な対策を早急に取らなければ、医療体制の逼迫(ひっぱく)は改善しまい。

 他方、国民一人一人の危機意識も問われている。

 大人数の会食や屋外でのバーベキュー、カラオケなどを通じ、クラスター(感染者集団)が全国各地で発生している。

 感染の危険性が高い行動は避けるという意識を、より徹底する必要があろう。

 まん延防止措置下においても、人の流れが減らない地域は多い。

 長引くコロナ禍で国民に自粛疲れが広がっていることがある。

 政府は人々が感じている閉塞(へいそく)感に真摯(しんし)に向き合い、感染対策の必要性を丁寧に説明すべきだ。

 緊急事態宣言の期間や対策の概要は週内にも正式に決まる。

 大阪では飲食店だけでなく百貨店、テーマパーク、映画館などへの休業要請などを検討している。

 1年前の緊急事態宣言と同程度かそれ以上の抑制策も、場合によっては必要だろう。

 ただ政府内には、大規模イベントの中止については、五輪開催との整合性を問われかねないとの懸念が出ているという。

 五輪に絡めた思惑を排し、科学的根拠に基づいて取るべき対策を講じなくてはならない。

 休業は事業者の反対も根強い。

 強制的でなく事業者が協力しやすいように、休業に伴う手厚い補償制度を整えることが急務だ。

 若年層への感染拡大を受け、小中高校でのオンライン授業が検討されている。休校はできる限り避け、学習に影響が出ないよう細心の目配りを求めたい。



ただごとではない(2021年4月22日配信『東奥日報』-「天地人」)

 新型コロナウイルス第4波のスピードはただごとではない。急激に感染が再拡大する大阪府のほか、東京都、兵庫県などに3度目の緊急事態宣言が発令される見通しだ。10都府県に適用された「まん延防止等重点措置」で目に見えた抑止効果が得られないとは歯がゆいばかりだ。

 昨年4月、1度目の緊急事態宣言発令時、国内感染者は5千人に満たなかった。1年後の今、1日当たり5千人を超え、累計50万人超に。原因は感染力が増した変異種だ。全都道府県で確認され、関東や東海地方、沖縄県で5月にほぼ置き換わるとみられる。

 変異種が猛威を振るう欧州では各国がロックダウン(都市封鎖)などを講じながら、慎重に時間をかけて対策を進める。日本は感染再拡大を十分に抑え込まないまま2度目の緊急事態宣言を解除した。ワクチン接種が進まない中、拙速ゆえに招いた危機と見られても仕方あるまい。

 県内では1月と3月下旬以降に患者2人から変異種が確認された。青森市ではクラスター(感染者集団)が多発し、病床がひっ迫しつつある。市中感染が指摘される。県を挙げて厳重警戒に当たる局面であろう。

 小野寺晃彦青森市長は飲食店などの営業時間短縮やそれに伴う協力金支給などを県に要請する。医療崩壊を招かないよう速やかに対策を進めてほしい。大都市圏の二の舞にならないことを切に願う。



3度目緊急事態宣言へ 人流抑制と病床確保急げ(2021年4月22日配信『東奥日報」-「時論」/『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 新型コロナウイルス感染が再拡大した大阪府は3度目の緊急事態宣言発令を政府に要請した。宣言に準じた「まん延防止等重点措置」が2週間適用されたが、拡大の歯止めにはならなかった。政府は東京都、兵庫県などと併せ発令する方針だ。

 まん延防止措置は、機動的に適用し宣言発令に至る前に拡大を抑える狙いで導入された。しかし、適用された計10都府県で目に見えて減少に転じた所はまだない。かえって、これを適用したことで宣言発令の判断が遅くなった弊害さえ疑われる。3度目の宣言発令という事態になった以上、政府、自治体は人流抑制と病床確保を早急に実現しなければならない。

 同時に、まん延防止措置が本来の趣旨通り素早く急所を突く運用ができたか否か、効果を検証する必要がある。結局、緊急事態宣言の前に新たなハードルができただけなら、強い対策は二段構えより宣言一本に絞る方が適切だ。

 大阪は今月5日のまん延防止措置適用後も新規感染者数が減らず、2週間後の18日は日曜にもかかわらずその時点で過去最多の1219人になった。吉村洋文知事は「重点措置では効果は不十分だ」として宣言発令要請を決断した。

 府が確保した重症病床では足りず、軽症・中等症向けの医療機関で治療を受ける重症者が60人に達した。滋賀県に患者受け入れや看護師派遣を求めるなど既に「医療崩壊」と言うべき状況だ。もっと早く宣言発令を要請すべきではなかったか。

 歓送迎会などイベントが多い季節で若者の人流がさほど減らず、大阪の新規感染者は30代以下の若者が約半数を占める。加えて感染力、重症化率が高い変異ウイルスが大阪、兵庫で約8割になり、突出したリバウンドを招いた。東京も変異株が約半数であり、関西同様の状況になりかねない。

 さらに言えば大阪は「だらだらとやるべきではない」(吉村知事)と2度目の緊急事態宣言を期限より1週間早く2月末までで先行解除した。これが自粛疲れの府民に安心、緩みを与えたことは否定できない。続くまん延防止措置も行動を自制させるメッセージ性が緊急事態宣言に比べ弱かったと言わざるを得ない。

 大阪は宣言解除後も飲食店への時短営業要請を続けたが、最近では変異株の感染経路は多様化し、飲食店だけでなく学校、職場でも感染者集団が発生している。変異株への対応を甘く見たと批判されても仕方あるまい。

 2度目の宣言は飲食店の時短営業が対策の中心だった。大阪府は今度は飲食店のほか百貨店、テーマパークなどへの休業要請に踏み切る考えだ。大阪市は市立小中学校の授業を原則オンラインにするという。経済活動との両立に固執し再拡大を招いた反省に立つ強い対応なのだろう。だが方針転換するなら、従来施策の「失敗の本質」を総括し、説明責任を果たすプロセスを踏むべきだ。

 菅義偉首相は2度目の宣言の全面解除を決めた際の記者会見で「再び宣言を出すことがないよう対策するのが私の責務だ」と述べた。3度目の発令に至った責任は知事以上に首相にあることは当然だ。全対象者に供給できるだけのワクチンの確保は早くて9月になる。東京五輪開催までは3カ月。大型連休は最後の踏ん張りどころだ。



古いことわざに…(2021年4月22日配信『毎日新聞』-「余録」)

 古いことわざに「三度目には馬の鞍(くら)も置き合わされぬ」というのがある。3度目の災難は思ったより早く来るので、逃れるために馬の鞍を置くひまもないというのだ。略して「三度目は馬の鞍」ともいう

▲どんないきさつでこんなことわざができたのかは知らないが、2度の災難が起きた原因を取り除かぬままに漫然と時を過ごせばそういうことにもなろう。で、コロナ感染の急拡大と医療逼迫(ひっぱく)による3度目の緊急事態宣言が迫っている

▲政府は20日に要請のあった大阪府のほか、京都府、東京都にも宣言を発令する方針を固めたという。2度目の宣言解除にあたって心配されていた変異株によるリバウンドが現実となり、鞍を置く間もなく3度目を迎えることとなった

▲同じく古いことわざに「三度目が大事」「三度目には大事」がある。同じように見えるが前の大事は「だいじ」、後のは「おおごと」だ。前者は3度目は失敗が許されないとの意、後者は災難も3度目は重大事になるとの意味という

▲感染力の強い変異株では重症化のスピードも増し、重症者に占める若年層の割合も増えているという。なのに人々のコロナ疲れで、宣言の効果逓減(ていげん)が心配される「三度目」となる。「が大事」「には大事」は、共に的確な警告だろう

▲古いことわざには「三度目は定(じょう)の目」もある。定の目とは本来出るべきさいころの目のこと。政府や自治体への不満はいずれ帳尻をあわせるとして、今は自らがウイルスの運び手とならぬよう心をくだく時だ。



緊急事態宣言へ 感染抑える決意を示せ(2021年4月22日配信『東京新聞』ー「社説」)

 3度目の緊急事態宣言が東京、大阪、京都、兵庫の四都府県に発令される見通しとなった。変異株を含め感染拡大は深刻だ。政府は感染を抑える強い決意を示し、可能な限りの対策を講じるべきだ。

 新型コロナウイルスが社会を覆い尽くして一年以上がたつ。長引く自粛生活により、感染への危機感が薄れる「コロナ慣れ」という新たな課題にも直面している。

 感染を抑え込み、医療態勢の逼迫(ひっぱく)を乗り切るには、人々が危機感を共有し、対策への理解を得ることが必要だが、先頭に立つべき菅義偉首相から「国民を守り抜く」との強い決意は伝わってこない。対策の効果を上げるには政治のリーダーシップが不可欠だ。

 感染力が従来株より強いとみられる変異株の拡大は、都市部を中心に止められない状況だ。

 厚生労働省の専門家会議は、関西圏だけでなく首都圏や中京圏でも現役世代に変異株の感染が広がり、いずれ高齢者にも感染が波及して重症化する人が増える懸念があると分析している。

 もはや会食での感染対策だけでなく、社会のあらゆる場面で人の接触や流れを抑えないと、感染症の猛威を抑え込めないだろう。
 緊急事態宣言を発令すれば、店舗などに営業時間の短縮要請に加えて、休業要請・命令が可能となる。私権制限には慎重であるべきだが、もし制限を課すなら、国民の十分な理解と納得が前提だ。

 政府は宣言発令に当たり、まず先行実施中の「まん延防止等重点措置」の効果を検証した上で、必要な対策と経済への影響、休業や営業短縮などを強いられる事業者への支援策などを併せて国民に説明し、理解を得る必要がある。

 感染症対策の目標は、医療逼迫をより短期間に抑えて重症者や死亡者を少なくすることだ。必要な医療が提供できなくなる医療崩壊は絶対に防がねばならない。

 大阪府内の医療機関はコロナ対応に追われ、一般診療にも支障が出ている。その中で自治体間協力で看護師らの派遣が動きだした。各知事は患者の搬送なども含めて広域連携を進めてほしい。

 最近では、夜の人出増加が感染拡大の予兆となることが分かり、迅速な対応がある程度可能となった。実施した対策にどの程度の効果があるかも分かってきた。

 政府はこれまで感染が拡大した後に対策を打ち出して「後手」と批判されてきたが、もはや許されない。政府も自治体も危機対応に先手が打てるかが問われている。



3度目の宣言 明確な解除の目標を示せ(2021年4月22日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症の急拡大が続く大阪府の要請を受けて政府は3度目の緊急事態宣言を発令する。兵庫県や東京都も対象とする方針だ。

 昨年3月改定の特別措置法に基づく。私権の制限を伴い、慎重な運用が求められるべき措置だ。短期間に繰り返す事態になった要因を直視せねばならない。

 今年1月に首都圏に続き発令した2度目の宣言も、吉村洋文府知事らの要請がきっかけだった。状況が好転すると解除の前倒しを求められ、政府が応じている。

 2度目の宣言解除は、全国的にも新規感染者数が下がり切らない中で実施された。菅義偉首相はピーク時よりも8割以上減ったと強調したが、第4波を招く火種を残したのは明らかだ。解除の判断や時期に問題はなかったか。

 変異株の見通しも甘い。大阪では3月下旬以降、感染力が強い英国株が主流となり、爆発的な感染につながっている。

 昨年末には海外で既に猛威を振るい、専門家からは国内の備えを再三促されていた。にもかかわらず、検査体制が整わずに実態が把握できない状態が続き、第4波に備えた病床確保も遅れた。

 場当たり的な対応になっている。とりわけ政府の責任は重いと言わざるを得ない。

 大阪の状況は深刻だ。20日時点の重症者317人のうち重症病床で治療を受けているのは257人だ。他は中等症病床などにいる。自宅療養者は8千人を超え、自宅で亡くなる人も出始めた。

 滋賀県が重症者の受け入れや看護師の派遣を決め、政府も看護師を順次送り込んでいる。広域的な連携を一層進め、医療に届かない人をなくさねばならない。

 何より新規感染者を減らしていくことが重要だ。

 大阪府の専門家組織は、感染源が多様化し飲食店の営業時間短縮では効果が見られないと分析する。人と人との接触をもっと幅広い機会で減らさねばならない。

 商業施設など広範に休業要請ができる宣言は一定の効果をもたらすだろう。一方、対象地外へ人が流れ感染を広げる恐れもある。

 住民に感染や医療の実態を正しく繰り返し伝え、危機感を共有してもらうしか手だてはない。

 感染は全国で再拡大が顕著になってきた。本来なら感染者を少なく抑えてワクチン接種を円滑に進めていく時だ。宣言の発令に当たり、政府は、ワクチン戦略に絡めた明確な解除の目標を、国民全体に示す必要がある。



緊急事態宣言 対策に実効性持たせねば(2021年4月22日配信『新潟日報』-「社説」)

 これまでの対策では感染拡大に歯止めをかけられていない。より実効性ある手だてを速やかに講じることが不可欠だ。

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大が続く東京都や大阪府などに3度目の緊急事態宣言を発令する方針を固めた。

 現在適用されている「まん延防止等重点措置」から格上げし、さらに踏み込んだ対策を取れるようにする。

 20日にいち早く宣言を要請した大阪府は、重点措置が始まって2週間以上たったが収束には程遠く、21日に過去最多の1242人の感染を確認した。

 重症者の急増で病床が逼迫(ひっぱく)し、軽症・中等症向けの病院で治療を受ける患者が増加した。

 感染力の強い変異株は大阪で約8割に達している。東京でも増えており、今後感染者の増加が加速する状況だという。

 重症者は感染者の後を追って増える。一日も早く強い対策に切り替えるべきだろう。

 大阪府の吉村洋文知事は宣言の要請に伴い、遊興施設や商業施設への休業要請、飲食店への休業、酒類の提供停止を求める案を国に示した。

 政府は大阪をはじめ対象となる自治体と対策内容など詰めの調整に当たっている。

 気になるのは、知事の要請から決定までに時間がかかっているように映ることだ。

 専門家に諮るなど手順を踏まなくてはならないとはいえ、もっとスピーディーに進めることはできないか。菅義偉首相の危機感と指導力が見えない。

 宣言が発令された後に、出されていない地域への人の移動が起きないかも心配だ。

 昨年4月に7都府県に初の宣言が発令された際には、地方への人の流れが加速して感染が広がった。その後政府は全国への宣言拡大を余儀なくされた。

 今回も宣言地域、重点措置地域、どちらでもない地域が混在し、より対策が緩い地域へ人が流れる恐れがある。

 大型連休を控える中で、どういった対策や呼び掛けをすれば動きを抑止できるのかについて、知恵を絞らねばなるまい。

 感染拡大は大都市圏に限らず地方でも深刻化している。

 本県では21日に新規感染者が48人となり、過去最多を更新した。新潟市を中心に感染が急速に広がっている。

 花角英世知事は20日の記者会見で新潟市について「危険水域に来ている」とし、今後の状況によっては重点措置の適用を要請する考えを示した。

 新潟市では県独自の特別警報に伴い、市内全域の飲食店約4千店に5月9日まで、営業時間の短縮が求められている。事業者には大きな打撃となる。

 「宣言慣れ」や「自粛疲れ」が言われるが、期間内に終えられるように一人一人が感染防止対策を徹底したい。

 連休が明けると高齢者へのワクチン接種が本格化する。医療従事者への接種はまだ途上だ。感染を抑え、医療現場に負荷を与えないことが、スムーズな接種を後押しすることにもなる。



3度目緊急事態発令へ 人流抑制と病床確保急げ(2021年4月22日配信『福井新聞』-「論説」)

 政府は新型コロナウイルス感染が再拡大した大阪府の要請を受け、3度目の緊急事態宣言を近く発令する。東京都や兵庫県に加え、京都府もそれに続く。大阪府などでは「まん延防止等重点措置」が2週間適用されたが、歯止めとはならなかった。

 大阪はまん延防止措置適用後も新規感染者数が減らず、2週間後の18日には通常なら少ない日曜日というのに過去最多を記録した。これを受け吉村洋文知事は「重点措置では効果は不十分」として宣言発令要請に踏み切った格好だ。

 大阪の状況は厳しい。重症病床は埋まり、軽症・中等症用の医療機関で治療を受ける重症者が60人にも上る。滋賀県に患者受け入れや看護師派遣を要請するなど「医療崩壊」と言うべき苦境にある。宣言発令をもっと早く要請する必要があったと言わざるを得ない。

 吉村知事は2度目の緊急事態宣言を予定より1週間近く早い2月末までで先行解除した。これが自粛疲れやコロナ慣れの府民に緩みを与えたのだろう。続くまん延防止措置では府民の行動変容を促す効果は弱かったようだ。さらには感染力の強い変異ウイルス(変異株)の拡大で感染経路が多様化し、飲食店だけでなく学校や職場でもクラスター(感染者集団)の発生が相次いでいる。

 大阪など関西での感染拡大は福井県など周辺にも影響を与えているとみられる。県内では21日に過去最多の26人の感染が確認されている。このうち12人は敦賀市内の小学校の児童で、10代以下の感染率が急増しているのも変異株の特徴とされる。30、40代の感染率、重症化率も高くなっているというから要注意だ。

 2度目の宣言は飲食店の時短営業が対策の中心だったが、今回、大阪府は飲食店のほかに百貨店、テーマパークなどへの休業要請に踏み切る構えとされる。ただ、経済への影響が甚大になるだけに、政府がこれを認めるかは見通せない。

 昨年4月の7都府県に対する初の緊急事態宣言ではあらゆる業種に休業を要請し、繁華街の人出は大幅に減った。半面、7都府県から地方への人の流れが加速し、宣言対象を全国に拡大した経緯がある。今回も同じ轍(てつ)を踏まないかが危惧される。東京も変異株が約半数に上り、関西同様の状況になりかねない。

 吉村知事は方針転換に際して、これまでの「失敗」を大いに反省し検証した上で説明責任を果たす必要がある。「再び宣言を出すことがないよう対策するのが私の責務だ」と述べていた菅義偉首相の責任は知事以上だ。ワクチンの確保とともに、人流の抑制と病床確保を早急に実現しなければならない。



[新型コロナ・緊急事態発令へ] 地方の感染拡大阻止を(2021年4月22日配信『南日本新聞』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大が続く東京都、大阪府、兵庫県に緊急事態宣言を発令する方針だ。昨年4月以降、3度目の宣言となる。

 新規感染者数は首都圏や関西圏だけでなく、愛知や徳島、福岡など各地で高い水準にある。このままでは医療提供体制が一層厳しくなる。

 政府は早急に宣言を発令するとともに、地方への感染拡大阻止に向けて万全の対策を講じるべきである。

 大阪府内では3月下旬以降、変異株が主流となり爆発的に拡大、1日当たりの感染確認は千人を超えた。緊急事態宣言に準じた対策が取れる「まん延防止等重点措置」の適用から2週間が経過したが、感染再拡大に歯止めはかかっていない。

 府内では重症者用のベッドがほぼ満床になっている。今後も重症者の増加が予想され、医療従事者は「災害レベルの緊急事態」と警戒する。国は適切な治療が受けられるよう人手や設備の確保など調整を急ぐ必要がある。

 厚生労働省にコロナ対策を助言する専門家組織は、変異株の割合が大阪と兵庫で約8割に上るとの分析結果をまとめた。東京でもおよそ半数が従来株から置き換わっているという。

 国内で最も多く確認されている英国株は従来株よりも約1.3倍感染力が強いとされる。これまで以上に人の流れを抑えるべきだろう。

 大阪府は宣言が発令されれば、大規模な遊興施設や商業施設などに休業を要請したり、飲食店には休業や酒類の提供禁止を求めたりする案を示している。イベントは原則中止か延期とし、企業にはテレワークの徹底を求める。

 一定の効果が期待されるとはいえ、厳しく営業を制限すれば、宣言対象地域から全国の観光地などへ人が流れ、感染を広げる恐れがある。都市部に比べ地方は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で、感染急拡大は医療崩壊につながりやすい。

 政府は昨年4月16日、ゴールデンウイークを前に当初7都府県だった宣言の対象地域を全国に拡大した。鹿児島県内でも商業施設や図書館、美術館など公共施設が自主的に臨時休業や休館に踏み切った。

 宣言が全国に拡大する事態を招かないためにも、政府は都府県をまたぐ移動を自粛するよう強く求めるべきではないか。ダメージを受ける観光や飲食業などへの支援も欠かせない。

 ワクチン接種は高齢者向けが始まったばかりだ。政府は接種対象となる国民全員分が「9月までに供給のめどがついた」と説明するが、具体的な接種時期は見通せない。

 政府はこれまでの宣言や重点措置などを早急に検証し、コロナ禍収束へ有効な対策を打ち出すべきである。





大阪府が緊急事態要請 政府は一日も早く発令を(2021年4月21日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、大阪府が緊急事態宣言の再々発令を政府に要請することを決めた。

 「まん延防止等重点措置」を適用して2週間たったが、十分な効果がみられていない。大阪府の吉村洋文知事は「医療が極めて逼迫(ひっぱく)している」と指摘し、より強い措置の必要性を訴えた。

 1日当たりの新規感染者数は連日のように1000人を超え、減少の兆しは見えていない。重症患者の急増に病床の確保が追いつかず、医療崩壊が始まっているとの指摘もある。政府は専門家の意見を踏まえ、速やかに宣言を発令すべきだ。

 大阪府では、前回の宣言が2月末に前倒しで解除された。感染力の強い変異株の広がりと歓送迎会の時期が重なり、感染は約1カ月で再拡大した。

 喫緊の課題は医療体制の強化だ。不足している医療従事者の手当てが急がれる。災害時と同様に全国から医療従事者を派遣する体制を整えるなど、政府主導で支えるべきだ。

 政府が宣言を出せば、休業要請や命令が可能になる。吉村知事は百貨店やテーマパークなどの集客施設を対象として示した。

 これまでは飲食店への営業時間短縮要請にとどめていたが、一歩踏み込んだ権利の制限になる。実行に移すなら、政府と大阪府は必要性を丁寧に説明し、協力を得る努力を尽くさなければならない。事業者への経済的な支援も欠かせない。

 対象を大阪府に限れば、効果が十分に上がらない可能性がある。前回は、隣接する兵庫県と京都府にも同時に宣言を発令した。生活圏を一体とした対策が必要ではないか。

 政府は感染の再拡大を、まん延防止措置で抑え込もうとしたが適切に機能しなかった。政府内には、宣言を出さないための措置だという考え方もあったという。今後の検証が必要だ。

 まん延防止下の東京都でも新規感染者数は増加している。小池百合子知事は、宣言を要請する方針を固めた。

 政府は大阪での教訓を生かし、都と連携して先手の対策を講じるべきだ。



緊急事態宣言 「感染抑止」へ先手を打て(2021年4月21日配信『産経新聞』ー「主張」)

 新型コロナウイルス感染症の重症患者急増で、大阪府が政府に対し、緊急事態宣言を発するよう正式に要請した。

 東京都は週内にも宣言を要請する方向で検討を進めており、22日の都モニタリング会議での専門家の意見聴取後に判断する方針という。

 政府はこれを受けて対応を協議する見通しだが、なんとも悠長に映る。

 大阪府でも東京都でも、状況は日々、悪化している。いずれも蔓延(まんえん)防止等重点措置の適用中だが、望ましい効果が得られそうにないのは明らかだ。大阪府では重症者数が、確保した重症病床の数を上回り、医療崩壊のありさまだ。

 菅義偉首相は20日の衆院本会議で、宣言発令について「蔓延防止等重点措置の効果を見極め、自治体とも緊密に情報交換しながら必要な対策を講じる」と述べた。

 だが、加藤勝信官房長官は大阪府について「病床使用率が急速に上昇し、医療提供体制が厳しい状況だ」と述べた。西村康稔経済再生担当相は東京都について「人流が減っておらず、変異株が5月には全て入れ替わるという予測を考慮すれば、対策の強化が必要な状況にある」と述べている。

 結論は、すでに出ているではないか。なぜ自治体の要請を待って検討を始め、週末の決定、週明けの適用という従来通りの手順を踏まなくてはならないのか。理解に苦しむ。

 ウイルスは、そんな政治日程を待ってはくれない。

 大阪府の吉村洋文知事は政府に宣言を要請するにあたり、飲食店に加えて百貨店やテーマパークなどの大型商業施設への休業要請が必要との考え方を示した。

 変異株という新たな強敵の跋扈(ばっこ)を前に、今は対策を徹底するときだろう。政府は「宣言解除から間がない」「重点措置を出したばかりなのに」といった批判は甘んじて受け止め、短期集中的で強力な対応策に踏み込むべきだ。

 過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れである。面子(めんつ)や政治的思惑に執心している場合ではない。

 協力金の支給を伴う休業の要請や命令によって人の流れを減らすことが感染抑止に有効であることは分かっている。その上でワクチン接種を迅速に進めることにしか、ウイルスとの戦いに勝利する道はない。これらを主導できるのは、政府だけである。





「緊急事態」1年 場当たり対策から脱却を(2021年4月8日配信『西日本新聞』-「社説」)

 闘いは長期化し、今なお終わりが見えない。政府は一連の対策を真摯(しんし)に検証し、自治体との連携や国民の協力の輪を広げる努力をさらに重ねるべきだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で政府が昨年4月7日に初めて緊急事態宣言を出して1年が過ぎた。初の宣言当時、国内の累計感染者は約4400人、死者は100人足らずだった。それが現在、感染者は50万人、死者は1万人に近づき、100倍ほどの規模に膨らんだ。

 昨年末からの「第3波」では重症者の急増で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、政府は2度目の緊急事態宣言に追い込まれた。それでも感染は抑え切れず、今週から関西と宮城県で緊急事態に準じる「まん延防止等重点措置」を適用する事態に至った。

 手ごわいウイルスが相手とはいえ、政府の対応は後手後手に回り、迷走している印象も拭えない。そこで改めて指摘したいのは、感染症のパンデミック(世界的大流行)に対する政府の警戒感が元来乏しく、それがいまだに尾を引いている点だ。

 新型コロナ対策は昨年3月に新型インフルエンザに対応する特別措置法を急きょ改正し、コロナを適用対象に組み込む形で始まった。政府は当初、その期限を政令で今年1月末までと定め、1年以内での事態収束を見込んだ。その甘い認識が観光需要喚起策などの前倒し実施につながり、感染の抑止が進まない中、ワクチン接種体制の構築も立ち遅れる状況に陥った。

 全国知事会は今回の重点措置適用に際し、政府に対策の拡充を求める緊急提言を発表した。重点措置により、知事は特定地域で強制力を伴う幅広い対策を進めることができる。ただ、この措置の適用を決める権限は国に委ねられ、自治体にはない。

 緊急提言は、知事にも適用権限を与えることや大規模なPCR検査の実施、飲食店に限らない幅広い業種への支援、ワクチン供給の不安解消など広範に及ぶ。これらは現場の危機感にほかならず、国と自治体の連携不足もうかがわせる。菅義偉首相は重く受け止めるべきだ。

 重点措置自体も、今年2月にわずか4日間の国会審議で特措法を再改正して導入された急ごしらえの方策だ。国会ではその際、一連の対策の妥当性について第三者的立場から客観的、科学的に検証し、結果を公表するよう付帯決議が行われている。首相はこれを誠実に履行することも忘れてはなるまい。

 ウイルスの研究が進み、ワクチンも開発された新型コロナはもはや「未知の病原体」ではない。政府には早急に、場当たり的な対策から脱却していく取り組みが求められている。



<不審者はマスクしてない人になり>(2021年4月8日配信『新熊本日日新聞』-「新生面」)

 <おしゃべりが罪になる日が来るなんて>。新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと、国内で最初に緊急事態宣言が出されたのは1年前。今ほど状況が悪化するとは、誰も正確に予想できなかったに違いない。本紙の読者文芸欄に掲載された作品から世情をたどると

▼<思い切りくしゃみしたくて左右見る>。抑えきれない生理現象でさえ、すっかりはばかられる雰囲気に。おとがめの「圧力」は家庭内にも及んだ。心休まる唯一の場所はトイレの中くらいか

▼<不審者はマスクしてない人になり>。猛暑日でもマスクをしているのが当たり前。商店や施設など、どこに入るにも検温と手指消毒が必須条件となった。額に向けられて「ドキリ」となったピストル型体温計にもいつの間にか慣れた

▼<経済は不要不急が支えてた>。そのことに気づかされたのはいつだったか。飲食店や宿泊施設を支援する政府の「Go To キャンペーン」は完全再開できないまま。不要不急の楽しみこそ、人間を人間たらしめることだったはず

▼<パンデミック・オーバーシュート・クラスター・ロックダウンと日本語グッバイ>。慣れぬ横文字になじみ、対策に当たる全国の知事さんの名もよく聞いた。<守備だけの野球のごときコロナ戦>。これほど手ごわい相手とは…。それがこの1年の大方の実感だろう

▼<距離をとり寄り添えという難かしさ>。誰もがコロナ疲れに陥っているのは間違いない。粘り強く日常を送り、守り一辺倒から解放される日を待ちたい。





「緊急事態」拡大】国は収束への道筋示せ(2021年1月15日配信『福島民報』-「論説」)

 新型コロナウイルスの感染者が急増し、首都圏四都県に加えて福島県に隣接する栃木県など七府県にも緊急事態宣言が発令された。二月七日までの期間でこれ以上の拡大を食い止め、「緊急事態」を抜け出せるのか。場当たり的、後手後手などの批判が出ないように、国は収束に向けた具体的な道筋を示し、人々の痛みや不安に対してきめ細かい支援の手を打つ必要がある。

 昨年の一月十六日、国内で初めて感染者が確認された。以後、学校の一斉臨時休校、東京五輪・パラリンピックの延期、全国の緊急事態宣言と解除、Go To キャンペーンの実施と停止など、感染防止と生活・経済の両立を目指して新型コロナとの闘いが続いている。しかし、感染者は今冬に入ってさらに増え、累計三十万人を超えた。

 県内では病床使用率などの指標が悪化し、県は現況を政府の対策分科会が示すステージ3(感染急増)に相当すると判断した。二月七日まで独自の緊急対策期間として、不要不急の外出自粛や飲食店の営業時間短縮を求めている。

 人々はテレワークやオンライン授業などを進め、外出や会合を抑え、大切な行事や大会を見送り、耐えてきた。人と人の接触機会を減らす「新しい生活様式」はある程度定着し、医療関係者は献身的な努力を続けている。にもかかわらず、感染が減らない原因はどこにあるのか。検査態勢やクラスター(感染者集団)対策、経済対策などにまだ足りない点はないのか。関係機関は改めて検証してほしい。

 自粛疲れ、コロナ慣れなどで危機感が薄れてきたとの指摘がある。背景には、いつまでも収束の行方が見えず、今後がどうなるか分からないという先行きの不透明感があるのではないか。例えば、東京五輪は聖火リレーがあと二カ月余りで福島県を出発する予定で、本番は約半年後に迫る。政府は選手や観客の受け入れなど感染対策を最優先に、開催に意欲を示すが、世界的な新型コロナ流行が収まらない場合、どのような方法でやろうとしているのか、説得力ある具体案は示されていない。

 一方的に希望を強調するだけでは、支持は得られない。政府は新型コロナ収束に向けた工程表を示し、それに沿って政策を立案し、着実に取り組みを進めるべきだ。自治体も国任せではなく、幅広い世代の悩みや不安を丁寧に吸い上げ、地域特性に合わせて施策に反映させることが求められるだろう。困っている人を助け、励ますアイデアを一般から募り、活用する工夫も検討してほしい。(佐藤克也)



緊急事態が拡大 「コロナ慣れ」していないか(2021年1月15日配信『北国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を11都府県に拡大した。各都道府県知事の発言を聞く限り、政府の対応を妥当と受け止める声がある一方、「後手に回った」「手ぬるい」などの批判も聞こえてくる。

 緊急事態宣言は当初、大都市圏から全国に感染が広がる前に手を打つ狙いだったが、地方への拡大を防ぎ切れていない。富山県が警戒のレベルを「ステージ1」から「ステージ2」に移行し、午後9時以降の外出自粛を求めたのは、そんな危機感の表れだろう。

 石川県は、今月7日と13日の比較で、病床使用率が54・65%から49・61%に、1週間当たりの感染者数の増加数も1・44倍から1・11倍に下がったことなどから、「ステージ3には相当しない」と判断しているが、緊張感は日増しに高まっている。

 緊急事態宣言は、感染抑止の「万能薬」などではなく、「コロナ疲れ」や「コロナ慣れ」した国民に向けた「気付け薬」に近いものだろう。感染しても無症状、軽症の人が多く、特に若い世代は重症化のリスクが低いことがはっきりしたことで、個々人のコロナ対策に緩みが出ており、そこに警鐘を鳴らす意味はある。

 第3波とみられる流行は、季節性の感染の性質が強いだけに、短期間での収束は難しいと思わねばならない。各自があらためて3密回避やマスク着用などの基本動作を徹底し、不要不急の外出をできるだけ控え、リスクを伴う接触の機会を減らしていくしかない。

 昨春の緊急事態宣言時には、政府は人と人との接触を「最低7割、極力8割」減らす目標を掲げ、国民に外出自粛などの徹底を呼びかけた。これに対し、今回は▽飲食店などの午後8時までの時間短縮営業▽テレワーク推進による出勤者数7割減▽午後8時以降の不要不急の外出自粛▽スポーツ観戦、コンサートなどのイベントの入場制限を掲げ、「限定的で効果的な対策」を目指している。

 より強い休業要請などの措置を取らずに済むよう、個々人の努力の積み重ねで感染拡大を抑え込み、流行期の冬場をしのぎたい。



緊急事態宣言拡大 危機感伝わる発信必要だ(2021年1月15日配信『山陽新聞』-「社説」)

 政府は、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域に、栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の計7府県を追加した。先に発令した首都圏1都3県と合わせ、計11都府県へと大幅に拡大した。

 首都圏に発令した7日の時点では、菅義偉首相は対象拡大に慎重な姿勢を見せていたが、見通しの甘さを露呈した形だ。先に危機感を募らせた知事側が政府に宣言発令を要請しており、政府の対応は相変わらず、後手に回っていると言わざるを得ない。

 首都圏と同様に、緊急事態宣言の期間は2月7日までで、対象地域では知事が飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請する。テレワークなどにより、出勤者の7割削減を事業者に働き掛ける。

 感染者の急増で医療体制が逼迫(ひっぱく)しており、できるだけ早く感染者を減少に転じさせることが求められる。しかし、危機感が国民に共有されているかといえば、疑問だ。

 問題は、政府の情報発信が不十分なことである。13日の記者会見で、菅首相は昼間の外出自粛も呼び掛けたが、7日の会見では午後8時以降の外出自粛を強調し、日中については言及しなかった。「午後8時以前なら大丈夫」と受け止めていた国民も多かったのではないか。

 首都圏では、宣言発令後も繁華街などの人出は大幅には減っておらず、テレワークも進んでいないという。感染の長期化による「コロナ慣れ」や自粛疲れもあろう。国民に対策を求めながら、先月は首相自身が大人数のステーキ会食に参加し、批判された。政府の対応や説明がちぐはぐなこともあり、医療現場が訴える危機感が、国民のもとまで十分に届いていない。

 菅政権は感染防止と経済活動の両立を掲げてきたが、医療崩壊が現実となっている今、命を守るために感染抑止に全力を挙げる局面だ。しかし、こうした現状を国民に丁寧に伝えようとする姿勢が首相からは感じられない。13日の首相の記者会見も約40分で次の予定があるとして、記者の質問を打ち切った。

 人出が減らないままでは1カ月後の宣言解除は難しいとの指摘が既に専門家から出ている。現状では飲食店への時短要請が対策の柱だが、効果がなければ、対策の強化が避けられない。

 大都市部のみならず、地方での感染拡大も止まらず、今後、緊急事態宣言の対象地域はさらに広がる可能性がある。今回、対象とならなかった地域も警戒を強めたい。

 1週間の感染者数が人口10万人当たり25人以上だと、最も深刻なステージ4(爆発的感染拡大)の水準に入る。政府の諮問委員会に示された資料によると、今月11日までの1週間で岡山県は20・42人、広島県は19・29人などとなっている。感染を広げないよう、一人一人があらためて気を引き締めなければならない。



緊急事態、7府県追加 甘い見通し許されない(2021年1月15日配信『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大にブレーキがかからない。政府は、特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域に7府県を追加した。エリア拡大に菅義偉首相は一貫して否定的だったが、関西圏、中部圏、福岡県を加えざるを得なくなった。

 それほど医療崩壊の危機感は増している。全国の感染者は3週間で10万人増え、累計で30万人を突破。重症者も900人を超え、過去最高を更新した。

 陽性と分かっても入院先や宿泊療養先が決まらない人も急増中だ。政府に助言する専門家組織によると、今月3~9日で計6千人と前の週の倍になった。

 大阪府のまとめでは、一般病床に居たまま亡くなった人の数は、重症病床で亡くなった人の3倍。軽症でも安心できない。

 感染者の急増は医療体制全体も揺さぶっている。急病人らの搬送先がすぐ決まらないことが今月4~10日、全国で2707件あった。1カ月前の倍。集計した総務省消防庁は、病床逼迫(ひっぱく)で通常の医療に十分対応できなくなっていると分析している。

 こうした状況を政府はどこまで把握しているのか。後手後手の対策しか打ち出せないのは、現状認識の甘さと危機感の乏しさの表れと言えよう。

 菅氏の会見でも認識不足がうかがえた。7府県追加の理由を「全国への感染拡大を防ぐためだ」と説明した。しかし感染は既に広がっている。新たな対策を講じても効果が出るまで約2週間かかる。状況が深刻になってからの対策では遅すぎる。

 乏しい危機感は、菅氏の率いる自民党にも共通する。党幹事長も務めた石破茂衆院議員(鳥取1区)が先週、大人数の会食に参加していた。これでは危機意識は国民には届くまい。ましてや行動を変えてもらうなど到底期待できない。

 前言撤回も目立つ。大阪府について、菅氏は飲食店の営業時間短縮効果により感染者が減ったとの認識を示すなど「優等生」扱いしてきた。宣言発令にも否定的だった。

 11カ国・地域とのビジネス往来も一時停止にするという。これまでは問題ないとしていたが、急に方針転換した。会食とりわけ夜の飲食を問題視してきたが、ここに来て日中も駄目だと強調し始めた。どれも、泥縄式に対策を小出しにしているとしか見えない。なぜ最初から他人との接触を徹底的に減らそうと、呼び掛けなかったのか。

 見通しが甘いどころか、先々を見ようともしていないようだ。民放の番組で先日、宣言の延長や拡大の可能性を問われ、「仮定のことは考えない」と答えていた。最悪の事態も含め、さまざまな想定をした上で、どんな場合にも対応できるようにしておく―。それが危機管理の基本ではないか。安易な楽観や決めつけを排し、万全な備えを心掛ける。そうしないと、この危機は乗り越えられまい。

 国民が納得できる説明をするには、科学的なデータや客観的な基準に沿った対策が欠かせない。菅氏は、根本からコロナ対策を考え直すべきである。

 中国地方も、首都圏や関西圏のような危機的状況に陥らないとは限らない。広島県は集中対策を来月7日まで再延長する。私たちも命や健康、地域の医療体制を守るため、危機感をさらに強めなければならない。 





緊急事態拡大 危機認識あまりに甘い(2021年1月14日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政府が新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の対象に大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、福岡、栃木の7府県を追加した。

 再発令された地域は4大都市圏を中心に11都府県に広がった。

 政府の対応はかねて泥縄式との批判が強い。今月初めの共同通信の世論調査では7割近くが「評価しない」と答えていた。今回も後手に回った感が否めない。

 菅義偉首相は年頭の記者会見で、飲食店への営業時間短縮要請を先んじて実施した大阪や北海道について「(感染減の)結果が出ている」と強調し、対象拡大に否定的だった。

 大阪は当時から収束には程遠かった。その後、道内を含め全国で感染が拡大している。

 危機への認識があまりに甘い。

 首相はきのうの会見では、外出自粛への協力を強く求め「何としても感染拡大を減少方向にもっていかなければならない」と述べた。

 ただその決意は著しく説得力を欠く。

 感染力が強い変異種が国内で次々確認されたのにもかかわらず、中韓など11カ国・地域とのビジネス関係者の往来は認めてきた。

 経済再生を重視する首相の意向が色濃い。首相はようやく一時停止を表明したが、決断が遅い。

 首相は宣言の対象外地域であっても、感染が拡大している地域なら、飲食店などに11都府県と同等の支援をする考えも示した。

 ただ、こうした小出しの対策を続けて、来月7日までの宣言期間内に収束できるのか。科学的な論拠を示した上での説明はない。

 国民に多大な制約を強いる宣言を出す以上、短期で終わらすために、広範に宣言を発令し、より大規模で集中的な対策を施すことも視野に入れるべきではないか。

 重要なのは、休業要請などへの補償を充実させ、抑止策の実効性を高めることだろう。

 なのに、政府・自民党が感染症対策での罰則導入に前のめりになっていることは見過ごせない。

 特措法の改正により、宣言の前段階から飲食店などに営業時間短縮を命令できるようにし、拒んだ場合は行政罰の過料を科すことを検討している。

 入院拒否や、入院先から逃げ出した際に罰則を科すための感染症法改正も俎上(そじょう)に載っている。

 私権制限については、慎重かつ冷静な議論が欠かせない。

 感染者の急増で入院したくてもできない人が大勢いる。医療体制の逼迫(ひっぱく)に全力で対処すべき時だ。



最悪想定し対策総動員を/緊急事態宣言11都府県に(2021年1月14日配信『東奥日報』-「時論」・『山陰中央新報』-「論説」)

 政府は新型コロナウイルスの緊急事態宣言を栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県に再発令した。発令地域は首都圏4都県と合わせ計11都府県となり、都市部中心に関東から九州までの広域に拡大した。

 菅義偉首相は首都圏に再発令する際、大阪などは感染者が減少傾向にあると評価していた。しかし、1週間もたたずに対象拡大に追い込まれた。見通しが甘かったと言わざるを得ない。ほかにも発令要請を検討中の県があり、全国的に広がる可能性もある。発令期間を1カ月弱の2月7日までにそろえたのも対策の「小出し」にならないか。

 若者らを中心に「行動変容」が進まず感染が収束しないのは、首相はじめ政府の政策、発言のメッセージが弱く、国民が危機感を共有できていないためだ。ウイルスが活性化する真冬の第3波は、これまでの経験則をはるかに超えている。事ここに至っては、経済活動を一時止めてでも感染拡大を抑え込むという政治の意志を示す段階だ。

 首相は正月休み明け時点では、宣言の大阪などへの対象拡大に否定的だった。年末に飲食店へのさらなる営業時間短縮要請を見送った首都圏の感染者数が「深刻」な水準と指摘する一方、「時短要請をした大阪は効果が出ている」と持ち上げていた。飲食店への対策さえ打てば成果が上がるとの短絡的な判断だった。

 ところが直後から大阪の1日の新規感染者は過去最多を連日更新。医療体制が逼迫(ひっぱく)し、当初慎重だった吉村洋文大阪府知事が発令要請に方針転換。大村秀章愛知県知事も年明けの感染急増を受け、政府に再発令が必要だとの認識を伝えていた。事態の急変に即応できていれば首都圏と同時の発令ができたのではないか。判断の遅れは感染拡大を一層深刻化させかねない。政府は自治体との連携に穴がないか、改めて点検してほしい。

 首相が、2月7日までに成果が出なかった場合の対応を問われ「仮定のことは考えない」と述べたのも大いに疑問だ。国民にはそれぞれ生活設計があり、企業には事業計画がある。1カ月後に期間延長があるか否かの見通しは死活問題だ。飲食店中心の対策のみでは2月末にも東京の感染者は現状と同水準のままだとの専門家の試算もある。

 先々まで「仮定」して次の手を構想し、国民に説明責任を果たしながら協力を求めるのは、政治が当然果たすべき義務であると強調したい。

 首相は昨年末、変異種がまん延する英国からの入国者を「1日1、2人だ」と述べた。実際には12月に1日約150人だ。これは異常事態に際し「たいしたことない」と考えてしまう「正常性バイアス」ではないか。「絶対に防ぐ」と繰り返してきた「爆発的感染」も今や主要な大都市圏で現実のものとなった。

 人の移動や接触を抑えきれなかった年末年始休みから2週間が過ぎる1月半ばには、さらに感染者数が膨らむ可能性も指摘される。政府の楽観的観測は「眉唾」だと国民はとうに気づいている。

 首相は正常性バイアスを排し「最悪の想定」も開示しながら、それを防ぐため今国民が何をすべきかを理を尽くして語るべき時だ。そして対策の「逐次投入」で様子を見ては追加を繰り返す悪循環から脱し、飲食店以外にも対策の総動員を再検討すべきではないか。



緊急宣言11都府県に 政治の意志示す時だ(2021年1月14日配信『茨城新聞』-「論説」)

 政府は新型コロナウイルスの緊急事態宣言を栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県に再発令した。発令地域は首都圏4都県と合わせ計11都府県となり、都市部中心に関東から九州までの広域に拡大した。菅義偉首相は首都圏に再発令する際、大阪などは感染者が減少傾向にあると評価していた。しかし、1週間もたたずに対象拡大に追い込まれた。見通しが甘かったと言わざるを得ない。ほかにも発令要請を検討中の県があり、全国的に広がる可能性もある。発令期間を1カ月弱の2月7日までにそろえたのも対策の「小出し」にならないか。

 若者らを中心に「行動変容」が進まず感染が収束しないのは、首相はじめ政府の政策、発言のメッセージが弱く、国民が危機感を共有できていないためだ。ウイルスが活性化する真冬の第3波は、これまでの経験則をはるかに超えている。事ここに至っては、経済活動を一時止めてでも感染拡大を抑え込むという政治の意志を示す段階だ。

 首相は正月休み明け時点では、宣言の大阪などへの対象拡大に否定的だった。年末に飲食店へのさらなる営業時間短縮要請を見送った首都圏の感染者数が「深刻」な水準と指摘する一方、「時短要請をした大阪は効果が出ている」と持ち上げていた。飲食店への対策さえ打てば成果が上がるとの短絡的な判断だった。ところが直後から大阪の1日の新規感染者は過去最多を連日更新。医療体制が逼迫(ひっぱく)し、当初慎重だった吉村洋文大阪府知事が発令要請に方針転換。大村秀章愛知県知事も年明けの感染急増を受け、政府に再発令が必要だとの認識を伝えていた。

 事態の急変に即応できていれば首都圏と同時の発令ができたのではないか。この判断の遅れは感染拡大を一層深刻化させかねない。政府は自治体との連携に穴がないか、改めて点検してほしい。

 首相が、2月7日までに成果が出なかった場合の対応を問われ「仮定のことは考えない」と述べたのも大いに疑問だ。国民にはそれぞれ生活設計があり、企業には事業計画がある。1カ月後に期間延長があるか否かの見通しは死活問題だ。飲食店中心の対策のみでは2月末にも東京の感染者は現状と同水準のままだとの専門家の試算もある。先々まで「仮定」して次の手を構想し、国民に説明責任を果たしながら協力を求めていくのは、政治が当然果たすべき義務であると強調したい。

 首相は昨年末、変異種がまん延する英国からの入国者を「1日1、2人だ」と述べた。実際には12月に1日約150人だ。これは異常事態に際し「たいしたことない」と考えてしまう「正常性バイアス」ではないか。「絶対に防ぐ」と繰り返してきた「爆発的感染」も今や主要な大都市圏で現実のものとなった。

 人の移動や接触を抑えきれなかった年末年始休みから2週間が過ぎる1月半ばには、さらに感染者数が膨らむ可能性も指摘される。政府の楽観的観測は「眉唾」だと国民はとうに気づいている。

 首相は正常性バイアスを排し「最悪の想定」も開示しながら、それを防ぐため今国民が何をすべきかを理を尽くして語るべき時だ。そして対策の「逐次投入」で様子を見ては追加を繰り返す悪循環から脱し、飲食店以外にも対策の総動員を再検討すべきではないか。



緊急事態」7府県追加 首相が頭を切り替えねば(2021年1月14日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、政府は緊急事態宣言の対象地域に、新たに大阪、愛知、福岡など7府県を加えた。

 東京など1都3県を対象に宣言を出してからわずか6日後だ。当初は他地域の追加を否定していた。知事に迫られて方針を変える政府の対応は、場当たり的に映る。

 中でも大阪について、菅義偉首相は飲食店への営業時間短縮の要請で感染を抑制したと評価し、対象に加えない考えを示していた。

 実際には、年明けから感染が急拡大し、病床は逼迫(ひっぱく)していた。宣言の発令は、知事の要請から4日後になった。首相の姿勢が足かせとなり、判断の遅れにつながったのではないか。

 宣言発令後も、1都3県の昼間の人出は、昨春の宣言時ほど大きく減っていない。

 首相は、対策の急所は飲食だと繰り返し、飲食店への午後8時までの時短営業や夜間の外出自粛に重点を置いて呼びかけてきた。

 原因を夜の飲食問題に矮小(わいしょう)化するような説明が、昼間は自粛しなくても良いというメッセージに受け止められたのではないか。

 政府は今になって、日中の会食や外出を控えるよう呼びかけているが、お粗末だ。

 人との接触を8割減らすよう求めた昨春のような強い対策をとっても、感染を抑え込むには2カ月かかるという専門家もいる。市中感染が広がっている以上、時間や場所を区切った対策で十分なのか、早急に効果を見極めるべきだ。

 大都市圏とその他の地域との移動の抑制も重要になる。

 首相は1カ月での宣言解除を目指すというが、状況が改善しなければどうするのか。テレビ番組でその点を聞かれても、「仮定のことは考えない」と答えなかった。これでは国民の信頼は遠のくばかりだ。

 政府のメッセージは一貫して国民に届いていない。経済活動への影響を抑えたいという首相のこだわりと、首相が嫌がることを進言する人物が見当たらないという菅政権の構造問題があるのだろう。

 国民に行動変容を要請する前に、まず首相が発想を転換すべきだ。感染の抑え込みが最優先であることを明確にし、あらゆる手段を講じる覚悟が必要だ。



緊急事態拡大 今まで以上の危機感が必要だ(2021年1月14日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言を追加発令することになった。今後も必要であれば、ためらわずに措置をとるべきだ。

 菅首相は宣言の対象に、関西や中部などの7府県を加えた。首都圏の1都3県に続く発令だ。

 大阪や愛知、福岡でも年明けから感染者が急増している状況を考えると、妥当な判断だと言えるが、追加発令の大半は知事側の強い要請に基づくもので、後手に回った印象は拭えない。

 人の移動の結節点となる都市で感染の拡大を許せば、地方に拡散するのは避けられない。人口が多い都市部を抱える今回の対象地域は、感染を抑え込むことに全力を挙げねばならない。

 飲食店の営業時間短縮や在宅勤務、不要不急の外出自粛など、一人一人の取り組みが重要になろう。政府がもっと国民の心に響くメッセージを発し、一層の協力を呼びかけることが不可欠だ。

 1都3県に宣言が出された後も4月の発令時と比べ、人出の減り方は鈍いという。自粛対象を限定的にとどめようとする政府の姿勢が背景にあるのではないか。

 若年層は感染者数が急増している。無症状や軽症で済むケースが多いため、年末年始の行動に緩みが出た可能性がある。重症化しやすい人にうつさないよう、今一度、気を引き締めてもらいたい。

 政府は宣言に伴い、営業時間短縮に応じた飲食店に支払う協力金を、1日最大4万円から6万円に引き上げた。飲食店の取引先を対象にした給付金も創設し、食材やおしぼりなどを納入する業者に最大40万円を支払うという。

 宣言が経済に及ぼす影響は大きい。政府は、休業に応じた店舗への支援策を明記した新型インフルエンザ対策特別措置法の改正案を通常国会に提出する方針だ。コロナ禍で苦境にある店舗は多い。息の長い支援を続けてほしい。

 感染力が強いとされる変異種が世界で猛威をふるっている。日本でも、英国やブラジルからの入国者に見つかっている。蔓延まんえんを防ぐため、監視の強化が必要だ。

 感染者の増加で、重症者向けの病床が埋まりつつある。入院先が決まらずに、自宅待機を余儀なくされる患者が増えた。医療従事者の疲労も蓄積している。

 大阪府は、コロナ治療に当たる看護師を登録する人材バンクを近く創設し、東京都は、3病院を新たにコロナ専門病院とする。こうした取り組みを各地で強化し、医療体制の拡充に努めたい。



緊急宣言拡大 切り札になっているか(2021年1月14日配信『東京新聞』-「社説」)

 政府は緊急事態宣言の対象地域拡大を決めた。医療崩壊を防ぐためにも感染拡大を抑える対策が最優先だが、宣言が危機感を共有し、対策の効果を上げる「切り札」となっているのだろうか。

 「日中なら外出できる」。緊急事態宣言に伴う政府の要請が、こうした間違ったメッセージとして国民に伝わってはいないか。

 東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を対象に緊急事態を宣言した際、政府は外出自粛やテレワークの促進と併せ、飲食店などの営業時間の短縮、イベントの開催制限などを要請した。

 昨年4月の前回宣言では「人との接触八割減」など個々人が理解しやすい数値目標を示したが、今回は「外出自粛」と言うのみ。その一方で、店舗は日中開いているし、イベントも開催できる。

 小出しで中途半端な対応にしか見えない。共同通信社の世論調査でも、こうした対策による感染拡大の防止は「期待できない」が、72・6%に達している。

 中途半端な対応はこれだけにとどまらない。宣言の対象地域拡大に併せて、飲食店などに食材や資材などを提供する事業者への一時金支給を決めた。コロナ禍による苦境は関連事業者も同じであり支援は当然だが、対象が限定され支給額も十分なのか疑問が残る。

 感染力が強いとされる変異種の流行を防ぐには水際対策が重要だが、11カ国・地域とのビジネス目的の往来停止判断が遅れた。
 東京都内の繁華街では、宣言後の3連休の人出が前回の宣言時を上回った。政府の煮え切らない対応が、国民の不信感や批判を招いているのではないか。

 東京では、感染が判明しても入院や宿泊療養先が見つからず待機している人が、直近の1週間で約6千人と年末年始の約3千人から倍増した。医療機関の受け入れ能力を超える事態に陥っている。

 政府はきのう、緊急事態宣言の対象を愛知、岐阜、栃木、大阪、京都、兵庫、福岡の七府県にも拡大した。流行状況を考えると後手の印象は拭えない。

 このままでは緊急事態宣言の対象地域を拡大しても感染の封じ込めは難しい。感染拡大を抑え込むには、実効性ある対策を短期間に集中して行うことが必要だ。感染しても無症状や軽症が多い若者と危機感をどう共有するかも課題となる。

 国民の命と暮らしを守り、社会や経済を早期に元に戻すために政府は何をすべきか。本腰を入れて真剣に検討すべき局面だ。



緊急宣言拡大 首相は危機感を強く持て(2021年1月14日配信『新潟日報』-「社説」)

 再発令地域がこれ以上広がることは避けなければならない。菅義偉首相は危機感を強く持ち、収束への対策を講じてもらいたい。甘い見通しの上に立って後手の対応を続けるようでは、国民は安心できない。

 政府は13日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域に京都、大阪、兵庫の関西3府県と愛知、岐阜の東海2県、栃木、福岡の計7府県を追加した。期間は14日から2月7日までとなる。

 宣言の対象地域は先行して再発令された東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏4都県を含め11都府県に広がった。

 首相は当初、関西への対象拡大には否定的だった。

 今月4日の年頭記者会見では「(飲食店に)営業時間短縮要請を行った大阪では効果が出ている」と強調していた。

 ところが4都県に再発令された7日、大阪府などが感染状況が悪化しているとして宣言を政府に要請する姿勢を示し、対象が追加されることになった。

 それだけに今回も、首相の対応が後手に回ったと見られることは避けられまい。共同通信の直近の世論調査では4都県への再発令について「遅過ぎた」との答えが8割近くに上った。

 首相は国民が厳しく見ていることを忘れず、宣言拡大が感染防止へ実効性を伴ったものとなるよう、指導力を発揮しなければならない。

 追加発令された7府県でも、飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請するなど会食対策が対応の中心となる。

 だが首都圏に再発令された時点で、この対策では劇的な感染者の減少につながらないとの試算が専門家から出されている。

 感染防止には人の接触機会を減らすことが有効とされるが、首都圏再発令後初の週末となった9~11日は、昨年の宣言時と比べ3倍超の人出となった所もあった。午後8時までの飲食が盛況だとの指摘もある。

 感染防止効果が限定的なものにならないか気掛かりだ。首相は明確なメッセージを発し、国民の協力を得てほしい。

 首相は13日の会見で「あらゆる手段を尽くして取り組んでいく」と述べた。確実な収束に向けてどう国民を導くのか、首相の言動を注視したい。

 厚生労働省によると再発令された地域の他にも滋賀、広島、群馬、奈良など各県で病床使用率が高まっているというが、何とかここで沈静化させたい。

 政府は18日召集の通常国会に新型ウイルス特措法の改正案を提出する。緊急事態宣言発令前でも時短営業の要請に応じない事業者に知事が「命令」を出せることや、応じない場合の罰則などが検討されている。

 だが罰則の議論が先行するようでは安心できない。私権制限を最小限にとどめる特措法の趣旨を踏まえ、協力を促す仕組みの構築に知恵を絞るべきだ。

 私たち県民も感染拡大地域との往来を極力控えるなど、「うつらない、うつさない」ための取り組みを改めて徹底したい。



緊急事態11都府県に(2021年1月14日配信『福井新聞』-「論説」)

「切り札」効果 はや疑問符

 菅義偉首相は新型コロナウイルス特別措置法に基づき、大阪や愛知など7府県に緊急事態宣言を発令した。先週発令した首都圏の4都県を含め計11都府県に上り、北関東から九州までの広域に対象が広がった。

 大阪では昨年11月下旬から大阪市の一部飲食店に午後9時までの時短営業を要請。首相は年明け時点で、首都圏の感染者数が「深刻な水準」と指摘する一方、「大阪は効果が出ている」と宣言の対象に加えることには否定的だった。

 ところが、直後から大阪の1日の新規感染者数が連日、過去最多を更新。医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、吉村洋文知事が発令要請に方針転換した。大村秀章愛知県知事も年明けの感染急増を受け、再発令の必要性を政府に伝えていた。

 こうした事態に即応できていれば、首都圏との同時発令も可能だったはずだ。見通しが甘かったと言われても仕方ない。加えて、7府県の発令期間が首都圏と同じ2月7日までとしたのも対策の「小出し」感が否めない。他にも発令要請を検討中の県があり、全国的に広がる可能性もある。

 懸念されるのは、1週間前に宣言が出された東京など1都3県で、発令直後の3連休の人出が十分に減らなかった点だ。首相は7日の記者会見で「もう一度、制約のある生活をお願いせざるを得ない」と述べ、若い世代の「行動変容」を求めたが、十分に伝わっていないのではないか。

 首相は宣言発令に伴う措置を「限定的、集中的に行う」とし、特に飲食店の時短営業や、都民らの外出自粛で「午後8時以降」にこだわったため、「8時までなら大丈夫なんだ」といった誤ったメッセージになったとの指摘もある。

 これでは新型コロナ感染抑止の最後の「切り札」と称される緊急事態宣言の効果に、はや疑問符が付きかねない。首相は2月7日までに成果が出なかった場合の対応を問われ「仮定のことは考えない」述べたが、期間延長があるか否かの見通しが死活問題となる国民、企業は少なくない。

 飲食店中心の対策のみでは東京の感染者は2月末も現状と同水準のままとする専門家の試算もある。「仮定」を想定した上で、先手先手の構想を打ち出し、国民に説明を尽くしながら協力を求めていくのは政治のあるべき姿勢であり、義務であると強調したい。

 第3波は、これまでの経験則をはるかに超えているとみるべきだろう。対策の「逐次投入」では悪循環から抜け出せないのは明らかだ。飲食店以外にも策を総動員するなど再検討が欠かせない。経済活動を一時停止してでも感染を抑え込むという政治の強力な意志を示す時ではないか。



緊急事態宣言拡大/「医療を守る」に全力注がねば(2021年1月14日配信『神戸新聞』-「社説」)

 政府が、兵庫、大阪、京都など全国7府県に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を再発令した。先週発令された首都圏4都県に続く措置で、期間は同じ2月7日までである。関西、東海圏を含めた三大都市圏を中心に対策を強化し、感染を抑えたい考えだ。

 兵庫の医療現場からは悲鳴が聞こえる。井戸敏三知事は「危機的な状況」と強い懸念を示した。


 このままではコロナ以外の疾病も、必要なときに必要な医療が受けられなくなる。兵庫の医療も崩壊の瀬戸際にあるといっていい。

 もはや一刻の猶予もない。いのちを守るため県と各市町、政府が連携しスピード感を持って対応せねばならない。私たちも自らの生活と意識を見直して感染防止を徹底しよう。

     ◇

 県内では1月に入って感染者が急増している。9日には初めて300人を突破し、きのうも過去3番目に多い285人を数えた。最新の入院病床使用率は77・5%、うち重症向けは60・3%にも上る。

 中でも神戸市は病床全体、重症向けとも90%前後に達している。県内のコロナ患者治療の中核となる市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)のコロナ病床はほとんど余裕がなく、綱渡り状態という。

 救急受け入れも難航

 看過できないのが、入院先や療養先が決まらず自宅などで待機中の患者が県内で約400人にも達する点だ。入院先の調整が追いつかないのが主因だが、適切な医療を受ける前に容体が急変しかねない。

 広島市では昨年12月、60代の男性が待機中に自宅で亡くなった。待機者へのフォローは急務だ。


 県内では救急患者の受け入れ先がなかなか決まらない例も出ている。あらゆる疾病治療にコロナが影を落とし始めている。

 県は入院病床を50床程度増やし、800床程度の整備を目指すとしている。病床だけでなく、医療人材や治療機器も並行して確保しなければならない。民間医療機関も積極的に協力してほしい。

 宣言発令に伴い、県は県内全域の飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請した。知事が当初、「地域限定になる」と述べていたのは、感染者が多い都市部に絞った要請を想定したのだろう。

 しかしここにきて但馬や丹波、淡路など県内全域で感染拡大が見られ、やむを得ない判断といえる。

 さらに先行4都県と同様、午後8時以降の外出自粛の徹底、テレワーク推進による出勤者数の7割削減、イベントの人数制限を打ち出した。

 兵庫県は昨年11月時点でテレワークに取り組む人が2割に満たないとの調査結果もある。7割削減との開きはあまりに大きい。導入していない事業所への支援が不可欠だ。

 「災害」の危機感高め

 緊急事態宣言から1週間となる首都圏4都県では、人出が前回の宣言時ほど減っていない。政府は昼間の外食や不要不急の外出についても自粛するよう呼び掛け始めた。

 政府の求める「午後8時以降の外出自粛」が「午後8時までならOK」と受け取られ、社会全体に感染拡大への危機感が薄らいでいる。菅義偉首相が7日の段階で「(大阪は)緊急事態を再発令する状況にない」と発言するなど、政府の対応が後手後手に回ったことが社会全体の油断を招いたといえる。

 今回の緊急事態では社会活動への影響を考慮し、前回よりも制限は緩くなっている。しかしそのことが決して「現状維持」を意味するわけではないことを、政府は明確に発信しなければならない。

 東京などでは、重症患者の治療の優先順位を付けざるを得ない状況も生じているという。保健所の人員も逼迫(ひっぱく)し、各地の濃厚接触者への調査を縮小する動きも出ている。

 感染経路を追い切れず濃厚接触者のPCR検査などが徹底できなければ、感染爆発が各地で同時多発する最悪の事態も現実味を帯びる。

 県災害医療センター(神戸市中央区)の中山伸一センター長は「医療の需要と医療資源のバランスが崩れており、今の感染状況はまさに『災害』だ」と訴える。

 だが専門的な人材などには限りがあり、医療体制の強化が直ちにできるわけではない。今、なすべきは感染者を増やさないことだ。

 社会全体でもう一度、気持ちを引き締めて日々の行動パターンを見直さなければ、地域医療は崩壊する。一人一人がウイルスと対峙(たいじ)しているのだと、自覚しなければならない。



「物事は自分の希望するように動く」と思いこんでいた(2021年1月14日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 どう読み解けばいいのだろう。戦前の歴史で分からないことがあると、この方の著書を繰った。作家の半藤(はんどう)一利さんである。日本人の歩んだ道を丹念に掘り起こし、90歳で亡くなった

◆泰斗(たいと)の語る教訓をまとめてみる。その1。重大な局面でも、日本人は抽象的な意見を交わしてしまうという。開戦についての軍の見方もそうだった。「物事は自分の希望するように動く」と思いこんでいたと

◆その2。何かことが起きると、日本人は「その場その場のごまかし的な方策で処理する」。言い換えれば「大局観がまったくない」と半藤さんの切っ先は鋭い。「昭和史を通しての日本人のありかたでした」とも

◆新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、首都圏に続き兵庫県など7府県も緊急事態宣言の再発令地域に加わった。背筋がゾクッとなるような感染者数の急増が、これを機になんとか収まってほしい

◆後出しじゃんけんを承知で書く。暮れの「勝負の3週間」が不発だったツケは大きい。宣言を再発令しようという声もあったが、政府は見送った。なぜだろう。「国民は政府の希望するように動く」と思いこんだか、「その場その場で」と手綱を緩めたか

◆昭和史の教訓は昔話ではない。何度もかみしめたい。苦いけれど。



【緊急宣言拡大】国民としっかり向き合え(2021年1月14日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大は特に都市部で歯止めがかからない。政府はコロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言を新たに7府県に再発令した。対象地域は首都圏4都県と合わせ計11都府県になる。

 首都圏や関西圏では、陽性と判明しても入院先や療養先が決まらずに自宅で待機せざるを得ない人が急増している。医療機関や宿泊療養施設が受け入れられないためだ。待機中の症状悪化が懸念される。

 医療提供体制の強化は急務だ。医療崩壊を招かないために、感染者数を減らす対策の実効性を上げることが求められる。
 菅義偉首相は7日に首都圏の再発令に踏み切った。首都圏4知事の検討要請を受けてからだ。経済を重視して状況認識が甘くなり、対応の遅れが指摘された。

 今回の再発令も、関西3府県の知事から宣言対象に加えるように求められてからの動きとなった。判断を先延ばしして対応が後手に回ると感染をさらに拡大させてしまう。

 菅政権には厳しい視線が向けられている。共同通信社の世論調査で内閣支持率は41・3%に下落した。政府のコロナ対応を「評価しない」は7割に迫る。1都3県への宣言再発令は「遅過ぎた」が8割近い。

 政府が感染防止策に、飲食店の時短営業や外出自粛、テレワークの促進などを求めていることへの評価も低い。感染拡大の抑え込みを「期待できない」が7割を超える。

 確かに、こうした取り組みだけでは不十分とする見方もあるだろう。ならばなおさら、データに基づいた説明と感染抑制へ向けた政府の強い意志を示すことが必要となる。

 しかし、情報が伝わっていない。そのいらだちが、こうした冷ややかな反応に表れているのではないか。国民の信頼と協力がなければ感染防止は期待できない。世論としっかりと向き合い、説明を続けて理解を求めることが欠かせない。

 通常国会ではコロナ特措法改正案が審議される。現行法は、知事による時短営業などの要請、指示に強制力はなく、補償規定もない。首相は給付金と罰則をセットにして実効性を高める意向を示す。

 改正案概要には、緊急事態宣言発令の前段階として「予防的措置」の新設を盛った。宣言前でも予防的措置下なら、知事が時短営業の要請に応じない事業者に「命令」でき、拒めば行政罰の過料を科すとする。

 対応が後手に回るのを回避したい、何としても実効性を高めたいという思いがあるのだろう。しかし、私権制限を罰則を付けて行う内容であり、慎重な検討が求められる。  厳しい経営状況を改善したいという経営者側の思いと罰則とは相いれない。やはり前提はしっかりとした補償の義務化だろう。

 特措法は、対策のための国民の権利制限は必要最小限でなければならないと書く。世論調査では罰則導入に反対が48%、賛成は42%と、判断の迷いがうかがえる。拙速を避け、議論を重ねることが基本だ。



福岡も緊急事態 九州が一体で感染対策を(2021年1月14日配信『西日本新聞』-「社説」)

 政府はきのう、新型コロナウイルスに対応した特別措置法に基づき福岡や大阪など7府県に再び緊急事態宣言を出した。首都圏1都3県への再宣言から1週間を待たず、11都府県に拡大した。政府の判断がまたも後手に回った印象は拭えない。

 宣言による外出自粛や出勤者削減、飲食店の時短営業の要請などは、市民の暮らしや地域経済に「痛み」を伴うものだ。

 しかし、福岡など7府県は今年に入り感染者が急増し、病床が逼迫(ひっぱく)、感染経路不明者の割合も高止まりしている。このまま感染拡大が続けば、医療崩壊を招きかねない。再宣言は遅すぎたとも言えるだろう。

 対応の遅れを批判されている政府は流れを変えようと積極的に動いたのかもしれないが、気になるのは福岡県との呼吸の乱れだ。大阪などの関西3府県は先週末から再宣言を求めていたが、福岡県の小川洋知事は消極姿勢を示してきた。

 政府に押し切られた形の小川知事はきのう「短期集中的に感染拡大を封じ込めたい国の意向を踏まえてやむを得ないと判断した」と語った。

 政府の宣言に基づき自粛要請など具体的な措置に取り組むのは都道府県だ。政府はコロナ対応を巡って東京都ともぎくしゃくした関係を指摘されている。政府と地方との連携と調整の不足は依然として目に余る。

 さらに九州を見渡せば、感染拡大が懸念されるのは福岡県だけではない。連日のように、どこかの県で感染者が過去最多を更新している。独自の「緊急事態宣言」を出した宮崎県のような例もある。

 政府による再宣言の要請に前向きだった熊本県は今回、対象とはならなかった。熊本に限らず九州各県の感染状況などを踏まえると、首都圏や関西圏と同様に、九州も福岡を中心に複数県に再宣言を出し、広域で対策強化に乗り出す判断もあったのではないか。疑問が残る。

 政府の宣言はなくとも、九州全体で危機感を共有し、対策で連携することは可能であり、むしろ求められている。命を守ることを最優先に医療提供体制の拡充や軽症者向けの宿泊施設の確保に力を注いでほしい。

 いま政府は緊急事態宣言をさらに拡大していくことには慎重だ。経済への悪影響を最小限にしたいとの考えからだろう。だが今後は、早め早めに思い切った手を打つ方向に切り替えるべきではないか。

 専門家の意見に誠実に耳を傾け、政策の根拠をしっかりと国民に説明し、時に大胆な策を講じることも政治の役割だ。感染第3波が長引くほど、経済が受けるダメージも深まっていく。



国民に重い負担、求める側の覚悟は(2021年1月14日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 ♪覚えてますか寒い夜/赤ちょうちんに誘われて/おでんをたくさん買いました/月に一度の贅沢(ぜいたく)だけど/お酒もちょっぴり飲んだわね。懐かしのフォークソング「赤ちょうちん」

▼この時季、帰り道の赤い灯が手招きしているように見える。ちょっと温まっていかないか、と。そんなささやかな楽しみも、しばらくはお預けか

▼新型コロナの感染拡大で政府は福岡県など7府県にも緊急事態を宣言。赤ちょうちんは午後8時で灯を消すよう求められる。客もつらいが、飲食店経営者や従業員、取引業者は泣きたいに違いない

▼要請に応じれば1日6万円の協力金があるとはいえ、従業員が多い店などはやっていけまい。それでも、感染防止のためなら、と大半は歯を食いしばって協力してくれよう

▼ならば、求める側の覚悟は。♪覚えていますトラベル停止表明の夜/幹事長に誘われて/高級ステーキ店へ行きました/5人以上の会食だけど/マスクを外して食べたわね。会食を批判された菅義偉首相は「誤解」と釈明した。国会議員たちは会食自粛のルールさえ作ろうとしない

▼世論調査では約7割が政府のコロナ対応を「評価しない」と回答。一方、政府は法改正して要請を拒む飲食店などに罰則を科す構えだ。失敗を国民のせいにして権利を制限する前にすることがあろう。範を示して政策への理解と信頼の灯をともさねば、緊急事態の早期解除は難しい。



最後の船(2021年1月14日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 鎌倉時代、大宰府を攻略すべく長崎・鷹島沖に集結していた約4400隻の元寇船を暴風が襲った。世に言う「神風」である。2度にわたって襲来した元軍は大半の船を失い、日本侵攻を断念したとされる

◆後世の人びとが、国難のときに起きると信じた奇跡も、世界に目を向ければ、まったく別の物語になる。同じころ、元軍はベトナムにも攻め入っていた。数で劣るベトナム軍は、入り江に敵の水軍を誘い込んで立ち往生させ、火矢を射かけて壊滅させた。黒澤映画のような知略によって大敗した元軍は、予定していた3度目の日本への遠征をあきらめざるを得なかった…

◆新型コロナにしても、昨春の経験から緊急事態宣言で封じ込めができる、と考えるのは神風を信じるようなものかもしれない。すでに再び宣言が出された首都圏では、休日の人出がそれほど減らず、政府の呼びかけは国民に響かない。きのう福岡県が急きょ対象地域に加えられたのは、政権の焦りにも見える

◆地方から若い世代を吸い上げ、経済的な豊かさを享受してきた都市のことごとくがウイルスに染まっていく。私たちの住む地域にまだ残っている「安心」こそ、手放してはならない大切な価値だとあらためて気づく

◆これ以上、宣言地域は広げないという「最後の船」を、風頼みではなく知略で食い止めなければ。



コロナ特措法改正 「罰則」には慎重な議論を(2021年1月14日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 政府が新型コロナウイルス特別措置法改正案の概要を示した。

 緊急事態宣言の際の都道府県知事による休業や営業時間短縮要請に強制力を持たせるため、罰則と給付金支援を盛り込む。宣言の前段階として、感染のまん延防止策を講じなければ宣言が避けられないと判断した場合の「予防的措置」も新設する。この段階でも命令を拒めば罰則の対象となる。政府は18日召集の通常国会に改正案を提出し、早期成立を目指す。

 迅速で強力な対策に取り組むのが狙いだが、休業要請などに罰則で強制力を持たせると、私権の大幅な制限につながる。もともと現行法は権利制限は必要最小限にとどめるべきだとしている。慎重な議論が必要だ。

 特措法改正は、最初の緊急事態宣言が出された昨春の第1波当時から全国知事会や与野党が要求していた。

 現行法は要請に応じない事業者の名前公表や行政処分に当たる休業指示はできるが、罰則がなく実効性に疑問の声があった。また、要請を受け入れた場合に協力金を支給する制度は、一部都道府県が既に導入。政府もこれを財政支援してきたが、金額は都道府県の財政力によって異なるため、格差が生じていた。

 給付金支援と罰則をセットにした改正は、これらの改善も狙いだが、罰則とは本来、犯罪行為をした悪意ある人に科すものだ。家族や従業員を守るため、あるいは経営破綻を避けるために、どうしても休業できない人はいよう。そうした人まで罰則を使って強制し、生活を奪うことが可能なのか。

 むしろ、協力してもらうにはどんな手当てが必要か、という視点から制度を組み立てることが大事だ。十分な補償がない罰則では理解は得られまい。

 政府は感染者が入院勧告を拒否した場合に刑事罰を科す感染症法改正も検討しているが、これも大きな問題をはらむ。介護や育児で入院できない人もいるはずだ。そうした人たちまで罰則で入院を強制するのか。現状では逆に、感染が判明しても医療施設の不足で待機状態の人が増え続けている。その矛盾をどう説明するのだろう。

 首都圏4都県に始まった緊急事態宣言の再発令は11都府県へと拡大。熊本県も感染者の急増を受けて、14日に独自の緊急事態宣言を発令する。

 その間、政府は「規制を強めれば経済再生が遠のく」「私権を制限すれば休業補償がかさむ」とばかりに後手の対応が目立った。

 菅義偉首相が「給付金と罰則をセットにすれば実効性が上がる」として特措法改正に方向転換したのは昨年末。「Go To トラベル」停止判断の遅れ、内閣支持率急落への危機感があったのだろう。自らの判断ミスの責任を、罰則導入で国民に肩代わりさせているようにも映る。

 「公共」を盾に政府が私権を制限する-。無関心であっては権力乱用に道を開く。過ちを繰り返してはならない。



デジャビュとジャメビュ(2021年1月14日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 日ごろよく使う言葉の対語でありながら、あまり使われないものがある。たとえば「彼岸」の対語の「此岸(しがん)」。さんずの川の向こうで仏様の世界である彼岸に対して、川のこちら側、要するに人間の世界だ。

 夕暮れ時を指す「たそがれ時」の対語で、明け方を意味する「かわたれ時」もそう。どちらも人の顔の見分けがつきにくい時間でたそがれが「誰そ彼」を語源にするの対し、かわたれは「彼は誰」の意味。しかし、たそがれ時に比べ、かわたれ時の知名度は低い。

 外来語にもある。フランス語で既視感を意味する「デジャビュ」。デジャ(すでに)+ビュ(見た)だ。その対語はジャメ(一度もない)+ビュ(見た)で「ジャメビュ」。初めてなのに前に見た気がするデジャビュに対し、見慣れたものが初めて見たように感じられること。

 きのう政府は、新型コロナ特別措置法に基づいて、福岡をはじめ大阪、京都、栃木など7府県に緊急事態宣言を追加発令した。現時点で政府は、宣言の全国への拡大を否定してはいるものの、もし「小出し」の対応から全国に拡大すれば「前にもあったような…」とデジャビュの感覚に襲われよう。

 先の3連休に、街中や郊外、夜の繁華街などの様子を車で見て回った。通常、昼時は満車の飲食店の駐車場がガラガラ。人がいない夜の街の光景は同じ場所とは思えず、まさにジャメビュだ。早く見慣れた光景を見慣れたものとして見られる日がきてほしい。



[緊急事態宣言拡大]泥縄式対策から転換を(2021年1月14日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加した。発令地域は首都圏4都県と合わせ計11都府県となり、関東から九州までの広域で感染に歯止めがかからない深刻な現状が浮かび上がる。

 菅義偉首相は、先週の記者会見で、大阪などは感染者が減少傾向にあるとし、現時点で発令する状況にないとの認識を示していた。感染予測をする上で不確実な要素が多いとはいえ、わずか1週間足らずで重要な判断が覆った。見通しが甘かったと言われても仕方ない。

 2度の再発令は、知事らの要請を受ける形で、その数日後に行っている。他にも発令要請を検討中の県があり、全国的に広がる可能性もある。政府の「小出し」の対策で十分な効果が上がるのか不安が残る。

 これまで継続するとしていた中国や韓国など11カ国・地域とのビジネス関係者の往来も、一時停止に方針転換した。対応が後手に回っている感は否めない。

 菅首相は「(発令の)1カ月後には必ず事態を改善させる」と決意を示すが、果たしてその通りにいくだろうか。

 西村康稔経済再生担当相は「国や自治体、事業者、国民が一体となって取り組めば、必ず感染者数を減少傾向にできる」との認識を示す。感染急拡大の危機感が共有されなければ、絵に描いた餅になりかねない。そうならないためには泥縄式の対策から転換し、国民の胸に響く明確なメッセージを政治が出す必要がある。

■    ■

 政府は来週召集される通常国会に、新型コロナ特措法に基づく休業、時短要請に強制力を持たせるため、罰則と財政支援を盛り込んだ改正案を提出する。

 現行法は、要請に応じない事業者の店名公表や行政処分に当たる休業指示はできるが、罰則はない。改正案は要請に応じない場合、行政罰の「過料」を科すという。

 さらに、感染症法の改正も検討し、入院を拒否した感染者に対し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を規定する方向で最終調整している。

 感染抑止に向けて、対策の実効性を高める必要はある半面、私権制限が広がることへの懸念は根強い。政府の感染対策が遅れたために、国民の基本的人権の制約にしわ寄せが及ぶのであれば、政治の責任は重い。

■    ■

 沖縄でも累計感染者数が6千人を超えた。昨年末から22日間で約千人増えるなど、感染拡大が収まる気配は見えない。医療提供体制の逼迫(ひっぱく)も依然として続く。

 県立八重山病院は、新型コロナ入院患者の増加に対応するため、コロナ以外の重症患者を本島内の病院に搬送する方針を明らかにした。

 危機的な状況を乗り越えるには、国民一人一人の心掛けと行動変容が不可欠だ。「コロナ慣れ」をいかに防ぐか。緊急事態宣言の有無を問わず、命を守る自発的行動を肝に銘じたい。



検証は?雑な税金の使い道(2021年1月14日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★こうなると乗り遅れまいと「うちの県にも緊急事態宣言を出してもらわないと」と勘違いする知事が出てきかねないが、繰り返すようだが、自治体から緊急事態宣言を国に出してくれと頼むこと自体がおかしな話。同時にそれはもう自治体規模では抑えられず手に負えないから国に託すという「ギブアップ」宣言だ。まして首相・菅義偉は大阪府のいわゆる「大阪モデル」というコロナ対策を自治体の手本かのように持ち上げてきただけに、おいそれと緊急事態宣言を要請されたからといって発出できなかったか。

★一方、コロナ禍で2度目の緊急事態宣言を出すのは結構だが、時短要請の飲食店や納入業者などへの手当てなどで格差問題が広がっている。地方では給付金を合わせると通常営業よりも高額になるコロナバブルが起きていると報じるニュースもあるし、こんな金額では家賃と人件費などで全く足らないと嘆く報道もある。いまだに困窮を嘆く報も多い。だがこの状況は2度目のことだ。全国一律や店舗規模など1度目の緊急事態宣言時の教訓や経験を政府は全く生かしていないし、飲食店サイドや産業界も想定しうる策はもう少しあったのではないか。

★一方、単身者の命綱でもある牛丼チェーンや立ち食いソバなどの3密など感染リスクの低い店舗にも時短が浸透し、都市部の食事難民も増えていると聞く。突然の宣言に個別対応ができなかった昨年の春の時点とは大きく違う状況になんの学習も知恵もないままに宣言を発出する県が増えていくことをどう考えているのだろうか。政府は予備費から資金を拠出するとしているが、緊急事態宣言のさなかに持続化給付金などの締め切りは15日。申請の延長はしないという。支援して助かる命や会社を何とか存続させることも経済をまわすことになるのではないのか。どんぶり勘定で雑な税金の使い道はちゃんと検証されるのだろうか。



緊急事態宣言拡大(2021年1月14日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

小出し・後手では感染止まらぬ

 菅義偉政権が、新型コロナウイルス感染拡大に対処する緊急事態宣言の対象を11都府県に拡大しました。追加した大阪府などについて菅首相は6日前まで「現時点において、そうした状況にはないと思う」と述べていました。この判断が誤りだったのは明白です。政府の後手と小出し対応で、新規感染者数は急増し医療体制のひっ迫は深刻の度を増しています。宣言対象を広げても、肝心の検査・医療の支援拡充や飲食店への十分な補償もないままでは実効性ある感染抑止にはつながりません。

国民の不安と不信は募る

 菅政権が新たに緊急事態宣言の対象に加えたのは、栃木、愛知、岐阜、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県です。7日に宣言を出した東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県と同様に、飲食店の営業時間を夜8時までにすることや、不要不急の外出自粛などを知事が特別措置法に基づいて要請します。期間は2月7日までとしました。

 国民の不安と不信は募ります。感染拡大のスピードに菅政権の対応が全く追い付いていないためです。NHKの世論調査(12日放送)では、4都県に緊急事態宣言を出したタイミングについて「遅すぎた」とする回答は79%にのぼりました。4都県より広げるべきだとの回答は80%に達しています。厚生労働省の専門家組織の会議では、感染急拡大の結果、都内では入院先や宿泊療養先が未定の感染者が9日までの1週間で6000人以上にもなり、前週より倍増したことが報告されました。複数の県では、自宅待機中に容体急変で亡くなった感染者も出てしまいました。菅政権の後手と無為無策が、国民の命と健康を危険にさらしていることは明らかです。

 宣言の対象拡大でも不安は払しょくされません。感染の深刻な地域は数多くあるのに、7府県の追加にとどめたことに納得できる説明はありません。首相は「1カ月後に必ず改善させる」などと繰り返しますが、裏付けとなる根拠は不明です。専門家からは至難の業という指摘が相次いでおり、首相の説明に説得力はありません。

 何より問題なのは、国民に厳しい制約と行動変容を求めながら、首相がそれにふさわしい姿勢を示さないことです。自治体が高齢者施設などで躊躇(ちゅうちょ)なくPCR検査拡大などに取り組めるための全額国庫負担には踏み切ろうとしません。コロナ対応病床を大増設するのに不可欠な医療機関への減収補填(ほてん)には背を向けたままです。短縮要請に応じた飲食店への十分な補償を求める声にも耳を貸しません。

 英国や南アフリカなどからコロナ変異株が国内に入っていることへの対応も欠かせません。全世界からの入国停止などに政府は責任を果たすべきです。かつてない危機の中で国民の命と暮らしを守り抜くため、政府があらゆる措置を講じるという方針を明確にしなければ、国民の心に届きません。

罰則は事態を悪化させる

 菅政権が、時短などに応じられない事業者や、入院拒否した感染者への罰則導入を狙っていることは重大です。十分な補償があれば事業者は協力します。いま各地で問題になっているのは、入院拒否でなく入院先が見つからないことです。罰則という強権的手法は、「納得と合意」が大原則の感染症対策への逆行にしかなりません。





緊急事態宣言拡大 危機感共有図る説明を(2021年1月13日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域に京都、大阪、兵庫など計7府県を追加する方針を固めた。きょう13日に正式決定する。

 政府は、対象地域のさらなる拡大や感染抑制対策の強化、影響を被る事業者への支援策の拡充などの検討を急ぐべきだ。対応が後手に回り、対策を小出しにする政府の姿勢に国民の不信は高まっている。国民の理解と協力を得て宣言の実効性を高めなくてはならない。

 発令の対象となるのは関西3府県と栃木、岐阜、愛知、福岡の4県。東京と埼玉、千葉、神奈川の首都圏4都県に続く発令で、対象地域は計11都府県になる。

 大阪府の新規感染者数は昨年11月下旬から12月上旬が一つのピークだった。飲食店に時間短縮営業を要請するなどした結果、年末にかけて減少傾向を見せた。

 ところが年明け後、再び増加に転じ、1月6日に1日当たりの新規感染者が560人と過去最多を更新するなどした。連動するように京都、兵庫でも過去最多更新の日が相次いだ。大阪では重症者用の病床使用率が7割を超え、医療体制が逼迫(ひっぱく)。3府県は危機感を募らせていた。

 菅義偉首相は10日、専門家の意見も踏まえて「もう数日、状況を見る」としていた。時間をあまり費やさずに決断したのは、3府県と危機感を共有する姿勢として評価できる。問題は対象地域や期間、感染防止対策の内容がこれで十分かどうかだ。

 今回の緊急事態宣言では、コロナ感染の急所とされる飲食店での会食を減らす対策が柱。飲食店に午後8時までの時短営業を要請するほか、不要不急の外出自粛などを呼び掛ける。

 テレワークの促進などにより、出勤者数の7割削減も目指している。時短営業やテレワークなどを巡り、どうやって事業者の協力を取り付けていくのか。目標達成が困難なら代替策はどうするのか。待ったなしの問題が山積している。

 共同通信社の最新の世論調査によると、菅内閣の支持率は41・3%。一方、不支持率は42・8%とわずかに上回った。その背景には菅内閣のコロナ対応への不満があるとみられる。

 それは1都3県への緊急事態宣言発令が「遅過ぎた」との回答が約8割、コロナ対応を「評価しない」が7割近くだったことからうかがえる。対象地域についても「他の都市圏も含めるべき」「全国を対象にするべき」が合わせて77%だった。

 今は国民が一致協力して感染を減少に転じさせることが何よりも重要だ。政府はそのために国民に科学的な知見に基づく適切で分かりやすい情報を提供し、危機感を共有してもらわなければならない。しかし政府は失敗していると言わざるを得ない。感染抑制対策を見直すだけでなく、国民への説明の仕方を改善することを求めたい。



宣言地域拡大へ 首相の覚悟が意識変える(2021年1月13日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。菅義偉政権のコロナ対応に対しても「遅い」「小出し」「後手」といった批判が収まらない。

 コロナ禍の収束に向けて国民の間に政権への不信感が存在することは不幸である。大いに反省してもらう必要がある。

 菅首相は緊急事態宣言の対象範囲を、すでに発令した首都圏の1都3県に加え、関西の3府県などに拡大する。

 7日の発令決定時に菅首相は、大阪府や愛知県について「現時点で宣言を発令する状況にはない」と述べていた。関西3府県の知事が宣言発令を要請した後の10日のNHK番組で菅首相は「もう数日の状況を見る必要がある」と語り、悠長に過ぎるとの印象を与えた。その末の対象拡大である。こうした経緯や発言が批判や不信感を招いていると知るべきだ。

 宣言発令後、最初の週末となった9日午後3時の東京・銀座の人出は、昨年4月の前回発令後初の週末に比べて3・4倍だったとの民間調査結果もある。切り札であるべき宣言が、どうも国民の心に響いていない。

 7日の首相会見に同席した政府分科会の尾身茂会長は感染を下火にする4条件を挙げた。(1)具体的で強く効果的な対策(2)国と自治体が一体感をもって明確なメッセージを伝える(3)特措法改正を急ぎ、経済支援とひもづける(4)国民のさらなる協力を得る-である。

 飲食店の午後8時までの時短要請ばかりが強調されれば、昼間の外出自粛要請の効力が薄まる。自治体、特に東京都との責任の押し付け合いは見苦しくさえ映った。特措法の成立も見通せていない。これではなかなか、さらなる協力は得られまい。

 菅首相は昨年末、「国民の皆さんの命と暮らしを守るために、先手先手に対応する」と述べた。その原点に返ってほしい。

 自治体の要請を受け、専門家の意見を聞き、検討を重ねるという現状は平時の常識であっても緊急時の方策とはいえない。

 緊急事態宣言発令の時期と範囲指定の権限は首相一人にある。必要と判断すれば、自治体の要請や分科会の開催を待つ必要はない。その強大な権限を行使するには、相応の覚悟を必要とする。

 その覚悟が見えれば、国民の大多数は意識を変え、協力を惜しまないはずである。



緊急宣言拡大へ 強い危機感共有したい(2021年1月13日配信『東京新聞』-「社説」)

 愛知、岐阜、栃木3県は、大阪府など関西3府県に続き、緊急事態宣言の対象に追加するよう政府に要請した。首都圏の感染拡大は他地域にとっても対岸の火事ではない。強い危機感を共有したい。

 政府は13日にも、関西3府県について緊急事態宣言の再発令を決定する方針で、宣言の範囲が拡大する。愛知、岐阜、栃木3県にも同日、併せて同宣言が再発令される可能性がある。

 愛知県の大村秀章知事は12日の記者会見で「愛知、岐阜県は厳しい状況である」との認識を示し、宣言再発令の必要性について「政府に明確に両県の意思を伝えた」と述べた。政府は「認識と危機感を共有した」と答え、13日にも対応を協議する。

 愛知県の3連休の新規感染者は、9日が362人、10日が343人、11日が198人と高水準が続き、休み明けで検体が少なかった12日も132人だった。岐阜県は11日の新規感染者は50人で、新たに6つのクラスターを認定した。

 両県の要請に合わせ、三重県も同宣言に準じた独自の非常事態宣言を出す方針だ。東海地方の3県は社会経済活動が一体である。感染が深刻な愛知、岐阜県が足並みをそろえて要請し、三重県も合わせて警戒を強めるのは適切だ。

 緊急事態宣言が再発令されれば、原則として営業時間短縮を求める対象を、酒類を提供する飲食店からすべての飲食店に拡大する方針。営業時間はこれまでより1時間早い午後8時まで、酒類の提供は同7時までとされる。「コロナ慣れ」もある中で、大村知事は「行動の変容」を強く訴えており、夜間の不要不急の外出自粛などが求められる。再び「制約ある生活」を強いられるが、まさにここが踏ん張りどころである。

 愛知県病院協会会長は7日に県庁であった専門家会議で「もう医療崩壊が始まっていると言わざるをえない」と警告した。特に愛知県民は医療の現場が逼迫(ひっぱく)している実態を厳しく受け止め、移動自粛やテレワーク、時差出勤など自分ができる対策を徹底してほしい。

 岐阜県では知事選が告示されている。現職はコロナ対策の公務に専念するため遊説取りやめを表明した。有権者に訴えを伝えることは重要だが、選挙運動で感染拡大を招くような事態は避けたい。SNSやリモート集会のフル活用などで、民意を反映できる選挙の実現に知恵を絞ってほしい。



コロナと暮らし 公的支援足りているか(2021年1月13日配信『東京新聞』-「社説」)

 緊急事態宣言に伴って暮らしを支える施策があらためて必要になっている。倒産や解雇は増え続け、多くの人々が生活苦に直面している。国は予算をフル活用して生活支援に全力を挙げるべきだ。

 東京証券取引所の株価はバブル崩壊後の最高値を更新し続けている。昨年111月の時点では完全失業率や有効求人倍率も改善している。しかし、これらの経済指標が生活実態を正確に反映しているとは言い難い。

 株価上昇は各国で金融緩和が続く中、行き場を失ったマネーが流れ込んでいる可能性が極めて高い。

 有効求人倍率の改善も新型コロナウイルスの感染拡大で離職者が相次ぐ医療や介護現場での求人が激増していることが主な要因だ。健全な雇用環境が戻ったとは、とてもいえない。

 緊急事態宣言により最も打撃を受けるのは私たちの暮らしだ。

 厚生労働省の調査では昨年、コロナ禍に関連して解雇・雇い止めに遭った人は約8万人に上った。一部企業の希望退職者が含まれていないとの指摘もあり、実態は数字以上に深刻な可能性が高い。

 失職で収入が途絶えた世帯の苦境は想像に難くない。将来の道を閉ざされる若者も増えるだろう。

 国の雇用対策の軸は、解雇を防ぐために事業主に支払う雇用調整助成金である。これを手厚くした特例措置が2月末で切れるが、確実に延長してほしい。

 中小企業などを支援する持続化給付金や家賃支援給付金も今月15日が申請の締め切りとなる。国は新たな支援策を構築する方針だが、救済内容をより充実させた上で、迅速に実施すべきだ。

 国は昨年末、財投債と呼ばれる国債などでまかなう財政投融資を含め、約40兆円を支出する追加経済対策を決めた。ただ、この中にはデジタル化推進策や災害対応を念頭に置いた国土強靱(きょうじん)化のための予算も盛り込まれている。

 追加対策の中身を吟味し直し、緊急性の低い予算は生活支援策に回すなど柔軟に対応すべきだ。

 今回、営業時間短縮に応じた飲食店への協力金の上限が4万円から6万円に増額されたが、一部の飲食店からは「家賃や給料を考えると焼け石に水」との声も聞こえる。政府の対応には「的外れ」「後手」との批判も強い。

 菅義偉首相には実効性ある支援策の迅速な実現を強く望みたい。そのためにも首相は先頭に立ち、国民の声に謙虚に耳を傾け、かつ誠実に語りかけることが必要だ。



コロナと経済 苦境の業者支え感染拡大抑止を(2021年1月13日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」を何としても食い止めなければならない。新型コロナ特別措置法に基づき緊急事態宣言が再発令され、経済を重視してきた政府も感染防止優先を前面に出している。

 さまざまな要請により、これまでの感染拡大で経営環境が悪化している事業者には、さらなる打撃となる恐れがある。しかし、このまま感染者が爆発的に増える状況が続くと医療体制が維持できない。医療が崩壊する事態になれば、個人消費は格段に低迷し、企業の設備投資も抑制され、経済も致命的なダメージを受ける。政府は苦境にある事業者を支えつつ、感染拡大抑止に取り組まねばならない。

 とりわけ感染者急増の主な要因とされ、対策の中心となった飲食業は厳しい環境に置かれている。東京商工リサーチによると、2020年の飲食業の倒産(負債額1千万円以上)は842件で、年間の最多件数を更新した。東日本大震災で景気が減速した11年の800件を上回った。外出自粛で需要が消える状況は続くと予想され、今後も倒産や廃業が相次ぐ懸念は強い。

 政府は、緊急事態宣言が出た首都圏の4都県による営業時間の短縮要請に応じた店への協力金上限を1日当たり4万円から6万円に引き上げた。

 ただ、協力金で減収分を全て補うのは難しい。家賃など固定費もある。さらに時短の影響は飲食店にとどまらない。飲食店と取引している業者のほか農家や漁業者といった間接的な取引先もある。従来の持続化給付金と、家賃支援給付金の申請受け付けは原則15日で終了するが、新たな給付金で手厚く支援する必要がある。政府は、休業や時短の要請は経営を持続できるだけの十分な補償が不可欠であると改めて認識するべきだ。

 感染者が急増している愛媛県もコロナ対策で飲食店への時短を初めて要請。酒類を提供する松山市全域の飲食店に13日から26日まで営業時間の短縮を要請し、全期間協力した店には1店当たり28万円の協力金を支給する。市は独自に28万円を上乗せするなどし、時短の場合は最大で66万円、休業の場合は最大で80万円になるという。申請から給付までスムーズな運用に努めてもらいたい。

 コロナが感染拡大している現状では国内景気の回復は見通せない。日本経済は19年10月の消費税増税で消費が冷え込んでいたところにコロナが追い打ちとなり、20年4~6月期の国内総生産(GDP)は戦後最悪の落ち込みになった。今後、緊急事態宣言の対象地域が全国へ広がったり、発令期間が長期化したりすれば、消費や雇用への打撃はさらに大きくなる。

 今は感染対策こそが経済対策と受け止める時期だ。できる限り早く感染拡大を抑え込むことが政府の責務となる。その後に感染防止と経済活動を両立させる施策を講じ、景気の本格回復を目指さなければならない。



政府の新型コロナ対策 国民守る抜本策を立てよ(2021年1月13日配信『琉球新報』-「社説」)

 未曽有のコロナ禍の中で、この国のリーダーは国民を守るため何をなすべきかを見失っているのではないか。不審や不満が膨らむばかりだ。

 新型コロナウイルス感染拡大で1都3県を対象に緊急事態宣言を再発令した菅義偉首相や政府への批判が高まっている。決断が遅く、対応が後手に回ったというものだ。地域限定の措置がどれほどの感染抑止効果を持つかも現時点では不透明だ。

 共同通信が9、10の両日に実施した全国電話世論調査によると菅内閣の支持率は41.3%で不支持率42.8%を下回った。緊急事態宣言再発令のタイミングは「遅過ぎた」との回答は79.2%。政府のコロナ対応を「評価しない」が68.3%に上った。

 世論調査の結果は菅首相の指導力の欠如や政府の機能不全に対する国民の憤りをダイレクトに反映していると言っていい。コロナ禍の中で命や暮らしを守ることができるのか、国民は不安や不満を抱いている。菅首相のリーダーシップが待たれている。

 国民の不安の根本原因は、政府の対応が「遅すぎる」ことと「的外れ」であることに尽きる。この二つは連関し合い、国民を混乱させている。

 対応の遅さで言えば、「GoToトラベル」の全国一律休止の判断が12月14日までずれ込んだことが挙げられよう。「GoToトラベル」が感染拡大を助長したとの指摘に対し、政府は「主要な原因とする証拠はない」と事業継続に固執した。対応遅れが「第3波」の爆発的な感染拡大を招いたのではないか。

 1都3県の緊急事態宣言も都県側の強い要請に応じたもので、決断は遅きに失した。13日に再発令される見通しとなった京都、大阪、兵庫の関西3府県の緊急事態宣言も医療の逼迫(ひっぱく)状況に危機感を抱いた府県側の早急な決断を促す声を受けたものであった。数日の判断遅れが感染抑止に大きな影響を与えかねないことを政府は認識しているのか疑問を拭えない。

 的外れで言えば、本年度第3次補正予算案に「GoToトラベル」の費用1兆311億円を盛り込んだことが象徴している。この事業がいつ再開できるか見通しは立っていない。これだけの費用があれば逼迫する医療現場の下支えや困窮する事業者の救済に充てるべきではないか。「新型コロナウイルス禍のお金の使い方を間違えている」という野党の批判は当然だ。

 11カ国・地域との間で合意しているビジネス関係者との往来について政府は継続する方向で調整しているが、それでいいのか。警戒が高まっているウイルス変異種が日本国内に拡大してからでは遅い。

 コロナ禍はもうすぐ1年を迎えようとしているが、政府の対応は迷走続きであった。国民の不信感を払拭し、命と暮らしを守るためも抜本的なコロナ対策を早急に立て、実行しなければならない。





政権の通信簿(2021年1月12日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 「この人は口許[くちもと]は笑っているのに、目は笑っていない」。向田邦子さんがエッセーで米国のカーター元大統領を評している。テレビでしゃべっているのを見ての印象だ

▼為政者にとってテレビ映りは侮れないが、菅義偉首相についても同じような印象を聞く。あの上目遣いでしゃべる時の目が怖い-。そんな見かけも影響しているのだろうか。内閣支持率がまた低下した。共同通信の世論調査では、ついに不支持が支持を上回った

▼新型コロナウイルスの感染拡大は収まる気配がない。熊本県内でも感染者集団のクラスターが続発している。大西一史熊本市長は独自に医療非常事態宣言を出し、国の緊急事態適用を求めた。法に基づく緊急事態宣言は、首都圏だけでなくさらに広がりそうな雲行きだ

▼世論調査では7割が政府の対応を「評価しない」とした。首都圏への緊急事態宣言が「遅すぎた」という人も8割に上る。国民はコロナ収束を求めている。一方で、できれば経済活動もストップさせたくない。政府は難しい対策を迫られているが、期待に応えられていない

▼内閣支持率は政権の通信簿のようなものだろう。菅内閣が発足してやがて120日。1学期は終わったが成績は芳しくない。2学期もこのままだと、ことによって菅さんに3学期はないのかもしれない

▼子どもの成績なら、良い点を見つけてほめてあげることもできる。長い目で見て育てることも大事だろう。だが如何[いかん]せん、そんな温かい目で政権を見ていられる悠長な事態ではない。



[政府のコロナ対応] 言葉も危機感も足りず(2021年1月12日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染拡大への政府対応に厳しい目が向けられている。

 共同通信社の全国電話世論調査では「評価しない」とする回答が68・3%に上った。評価しているのは、わずか24・9%だ。

 評価が低いのは、政府の状況認識が甘く、対応が場当たり的で後手に回っているからだ。

 冬になれば季節性インフルエンザとの同時流行の恐れもあるなどとし、医療提供体制が厳しくなる懸念は早くから指摘されていた。

 にもかかわらず感染の「第3波」に歯止めをかけられず、地域によっては医療崩壊寸前にまで陥っている。

 政府は11月下旬から「勝負の3週間」として感染対策の強化を呼び掛ける一方、菅義偉首相の肝いりの観光支援事業「Go To トラベル」を続け旅行を推奨してきた。

 GoToの全国一時停止を発表したのは12月14日。大阪や札幌など一部地域を外すなど限定的な見直しにとどめようとしたが、小出し対応が批判された末の遅すぎる判断だった。

 国民に会食を控えるよう呼び掛けながら、自身は大人数のステーキ会食に参加する、という菅首相の言動も不信を招いた。

 年明けに首都圏に発令された2度目の緊急事態宣言は、「感染爆発の瀬戸際にある」とする1都3県の知事たちに押し切られた格好だ。

 その後、同様に再発令を求めた関西3府県には、13日にも緊急事態宣言が出される見通しとなった。愛知、岐阜の両県も発令を求める意向だ。

■    ■

 政府は、緊急事態宣言により、時短要請に応じない飲食店名を公表できるよう新型コロナ特別措置法の政令を改正した。さらに特措法改正に向けても調整を急いでいる。

 焦点は、営業時間の短縮や休業の要請に従わない飲食店への罰則導入だ。菅首相は「罰則で強制力を付与し、より実効的な対策を可能にしたい」考えだが、私権制限の強化につながりかねない。

 長引くコロナ禍で飲食店は経営難に直面している。そこに罰則を伴って時短や休業を強制するやり方は適切か。「自粛警察」などの相互監視や分断が懸念される。国会で慎重に議論するべきだ。

 店舗に要請するのは都道府県知事であり、全国知事会が法改正を求めているのは分かる。ただ、実効性を確保する必要があるなら、罰則よりも、応じる店への補償の水準を引き上げるのが先だ。政府は財政支援を拡充してほしい。

■    ■

 世論調査で菅内閣の支持率は41・3%だった。12ポイント余り急落した12月時点の結果よりも、さらに9ポイント下落した。不支持の理由は「首相に指導力がない」が最多だった。

 菅首相は発信力の弱さが指摘されている。記者会見に消極的で、発令に伴う国会報告の場にも出席しなかった。

 緊急事態宣言し「1カ月後には必ず事態を改善させる」と述べたが、国民との信頼関係がなくては首相の言葉は響かない。リーダーシップを発揮し、丁寧で分かりやすい言葉を届けてほしい。



(2021年1月12日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 9カ月ぶりに出された緊急事態宣言の下で新型コロナの感染が全国で広がり、3密を避け、検温、マスク、手洗いと、自助を実践する毎日です。「まず自助を」と説き続ける菅首相の罪深さも日々問われています

▼市民団体と労働組合が共同して食料支援もした「年越し支援・コロナ被害相談村」。人々が助け合う「共助」のお手本で「公助」の貧しさをあぶり出しました

▼相談村を訪れた四国出身の30歳男性は所持金が2万円でした。音楽の専門学校卒業後、楽器店でバイトし、派遣労働者になって働いていたアパレル会社は昨年8月に倒産。次の短期派遣も3カ月でした

▼ハローワークは同じ求職者であふれて仕事はなく、家賃2カ月滞納して路頭に迷う寸前でした。「人生の分かれ道。コロナでなくならない仕事を選んでいたら」と自分を責めてしまう男性。対応した人が「生活保護を受けることは権利です」と話すと、コロナ禍は自助で乗り切るものでなく「社会保障に頼ってもいい」と気持ちが軽くなったといいます

▼最年少相談者は19歳女性でした。仕事がなくネットカフェ暮らしで、実家に帰る金もないとの訴えでした。コロナ危機への「公助」の無策と感染拡大は、不安定な非正規雇用で働く若者や女性にとって命にかかわる緊急事態です

▼コロナで生活が困窮し、自死が増えては元も子もありません。困った人たちに行きわたる経済的支援は、国の仕事です。連帯して「政府はその責任を果たせ」と迫る声を全国であげる時です。





緊急事態要請する自治体の勘違い(2021年1月11日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★首相・菅義偉と政府がもたもたしているのに乗じて、東京都知事・小池百合子がリードして千葉、埼玉、神奈川を巻き込み、1都3県の知事が緊急事態宣言の要請を政府に行った。ここまでは、ぐずぐずする政府の背中を押すという大義があった。宣言が発令されると、4日には「医療体制は非常に厳しい状況にあるが、感染拡大にはなっていない。今の段階で緊急事態宣言を要請することはない」と胸を張っていた大阪府知事・吉村洋文が、7日の会見で一転、「大阪府への緊急事態宣言発令を国に要請すべき」と言い出した。

★9日には大阪、京都、兵庫3府県の知事が、緊急事態宣言の対象に追加するよう国に要請。愛知も岐阜とともに追加要請の意向を示した。周辺県に地域を拡大することはうなずけるが、本来、緊急事態宣言は政府がエリアを決めるか、または全国に発出するもの。自治体側から、追加で宣言区域に入れてくれというのはどういう了見だろうか。自治体は昨年の春から地域のコロナ対策を担ってきた。場合によっては支援金を支出する決定を独自で行った県もあるし、県独自のルールや基準を早々に定めてコロナまん延を抑えてきた県もある。つまり、緊急事態宣言区域に加えてくれと頼む自治体は、コロナ対策に失敗し、自治体としてはお手上げだから国に助けてくれと泣きつくことだと、自治体の住民や国民は知るべきだ。

★では宣言下の自治体の首長はどんなメリットがあるのか。なにがしかの国からの経済支援と、宣言下という錦の御旗が欲しいという心理に他ならない。威勢よく国に要請することは勘違いも甚だしく、県民に対して「自分の力足らずでこうなってしまった」とわびてから国に要請すべきだ。まともな知事なら「今、瀬戸際だ。県内の状況を把握して対策を施し、何とか緊急事態宣言されるのは避けよう」と考えるのが、筋だろう。





差別や中傷を許さない社会的な強い意思(2021年1月10日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 フランスに住むライターの高崎順子さんが、昨秋から冬にかけ外出禁止令が出たときの現地の実情を少し前の週刊文春に寄稿していた。やや長くなるが、心に残ったくだりを紹介する

◆授業が続いていた小学校で、3年生の次男が暴言を吐いたと連絡帳で知った。わけを尋ねると、次男は目に涙をためて打ち明けた。アジア系という理由で「コロナ!」とからかわれたから許せなかったという

◆いきさつを聞いたフランス人の夫は、「次男を注意した」と連絡帳に書き、担任にこう訴えたそうだ。「どうか結果のいさかいだけではなく、原因を見てほしい。出自を差別する言動は絶対にあってはならない」

◆すると、担任が連絡帳に。「学童保育チームと連携して対策します。道徳の授業でも取り上げます」。返信を見て高崎さんは少し泣いた。「この国には差別があるが、それを許さない社会的な意思も強い」と

◆首都圏に続き兵庫県、大阪府、京都府でも緊急事態宣言を求めていく動きになった。不気味に増える感染者の数に、気分は重く、不安も膨らむ。やむを得ないかと思いつつ、医療にかかわる人や感染者への冷ややかな視線がひどくならないか、心配になる

◆差別や中傷を許さない社会的な強い意思。私たちは備えているか。





緊急事態再発令 実効性高い施策尽くせ(2021年1月8日配信『北海道新聞』ー「社説」)

 菅義偉首相が東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を対象に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。

 期間は来月7日までとし、対策は飲食店に営業時間を午後8時までに短縮してもらう要請が柱だ。

 首相は年末まで宣言に消極的だった。感染抑止と経済対策というブレーキとアクセルをメリハリなく中途半端に踏み続けた結果、感染が急拡大し、昨年4月以来の再発令に追い込まれたと言える。

 道内も再び拡大傾向に転じ、全国の新規感染者はきのう、7千人を超えて過去最多を更新した。

 今は感染抑止を最優先し、実効性の高い施策を果断に打つ時だ。

 営業時間短縮の対象は16万店に上る。応じない場合は店名を公表できるように政令を改正した。

 首相は特措法も改正し、休業補償と罰則をセットで設けることに意欲を示したが、事業者の協力を得るために最も必要なのは、制裁的な措置ではなく補償の充実だ。

 宣言で影響を受けるのは、飲食業に関連する卸や食材の生産業者のほか、入場定員の制限を受けるイベント業者など幅広い。

 雇用対策も含め、国民生活への影響を最小限にとどめるきめ細やかな支援策が欠かせない。

 首相はきのうの記者会見で「何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせる」との決意を示した。しかし、政府が新たに示した対処方針には疑問が多い。

 今回は首都圏の飲食店対策を重視したが、感染は地方にも急拡大している。すでに後手に回っている感が拭えない。

 京大の西浦博教授によれば、昨年春の宣言時と同程度の割合で感染者数を減らせても、十分に沈静化させるには2カ月以上かかる。

 飲食店以外への対策は、午後8時以降の不要不急の外出自粛や、テレワーク推進など従来の施策の延長線上の要請が大半だ。

 そのため、前回とは桁違いに増えた感染者を、1カ月で抑え込むことには懐疑的な見方が強い。

 効果が不十分なら、ちゅうちょなく追加対策を打つべきだ。

 特措法では首相が国会報告することになっているが、きのうは西村康稔経済再生担当相に委ねた。

 首相は国会にも、国民に対しても向き合う姿勢が欠ける。発信力の弱さが危機を招く要因になったことを認識すべきである。

 新型コロナの変異種の感染力は強い。収束させるには国民一人一人が自分のこととして捉え、行動できるかどうかにかかっている。

新型コロナ・首都圏に緊急事態/危機感共有し感染抑え込め(2021年1月8日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 菅義偉首相がきのう、新型コロナウイルス特措法に基づき、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象に緊急事態宣言を発令した。

 国内の新規感染者はきのう、7000人を超えた。1都3県でその約半数を占めている状況は深刻だ。一人一人が危機感を共有し、これ以上の感染拡大に歯止めをかけなければならない。

 政府は人の移動が多い年末年始を静かに過ごすよう求めていた。しかし、大みそかに1都3県の感染者は過去最多となり、年明けも人の流れは抑えられなかった。対策が後手に回った感は拭えない。

 菅首相はきのうの会見で「1カ月後には必ず事態を改善させる。そのためにも、ありとあらゆる方策を講じていく」と述べ、国民に対して協力を訴えた。

 緊急事態宣言は2月7日までで、感染リスクが高いとされる飲食店を重点にした対策を講じ、午後8時までの営業時間短縮を要請する。夜間の不要不急の外出自粛を求め、出勤者の7割削減を働き掛ける。昨年4~5月の初発令と比べ、絞り込んだ対策となる。

 飲食店をはじめ多くの事業者は、大きな痛みを伴うことになる。雇用への影響も懸念される。実効性のある対策と併せて、苦境に立つ事業者らに届く支援策を充実させることが重要だ。

 県内も厳しい状況にある。昨年11月末に累計感染者は500人を超え、年明け早々に千人を突破した。1カ月余りで倍増している。確保する病床の使用率は爆発的な感染拡大にある「ステージ4」の指標の一つとなる50%を超えた。

 厚生労働省に助言する専門家組織の分析では、大都市圏の感染拡大は地方に影響を及ぼしている。首都圏で感染を抑えなければ県内でも感染者がさらに増え、医療体制の一層の逼迫(ひっぱく)を招きかねない。

 対象地域が7都府県から全国に拡大された4月の緊急事態宣言を思い出してほしい。人にうつさない、うつらないよう感染防止策を徹底し、首都圏や感染が広がっている地域への移動は、慎重に判断することが求められる。

 首都圏の飲食店で営業時間が短縮されると、取引のある県内の企業にも影響を及ぼす懸念がある。県は企業の動向などを注視し、対応策を検討することも必要だ。

 本格的な受験シーズンを控え、小中学、高校の一斉休校は求めず、大学入学共通テストも予定通り実施される。首都圏の大学を目指す生徒も多いだろう。ただでさえ不安ななか、受験生が本番で力を十分に発揮できるよう、社会が支えていくことが大切だ。



コロナ緊急事態宣言 命救う行動を徹底したい(2021年1月8日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大の勢いが止まらず、菅政権は首都圏の1都3県を対象に、緊急事態宣言を発令した。1日当たりの新規感染者が7千人を超えるという事態の深刻化を招いたのは、昨年来の対応が後手に回った大きな失政と言わざるを得ない。

 国民の不安が日増しに膨らむ中、危機克服へ態勢の立て直しは急務だ。菅義偉首相や都道府県知事ら政治リーダーに求められるのは、医療現場や、時短営業で苦境に立たされる飲食業などの声をくみ取り、危機感を共有し、柔軟かつスピード感を持って政策を打つ姿勢への転換である。同時に、科学的なデータや現状に関する情報を詳細に開示しながら、明確なメッセージを発信するリスクコミュニケーションも心掛けてもらいたい。

 感染者増が始まった昨年11月以降、浮かび上がったのは、政府、自治体、専門家や医療現場の現状認識のギャップだ。「国が決めること」「自治体の判断」と責任を押し付け合う、対話・連携不足も表面化、司令塔が不在だった。さらに、本来なら“平時”に準備しておかなければならない、最悪の事態を想定した医療体制の構築、新型コロナウイルス特別措置法改正や、「Go To」事業の一時停止の判断基準を巡る論議を怠る政治・行政のサボタージュも露呈した。

 医療体制については、コロナ以外の患者の受け入れ余地がなくなってきたとして、日本医師会は「既に崩壊」と指摘する。年末年始を返上して検査・治療に当たって疲弊する医療機関、高齢者施設などには、これまで以上の人的、予算的な手厚い支援が欠かせない。

 今回の緊急事態宣言は、首都圏に絞ったものの、医療が脆弱(ぜいじゃく)な県でも新規感染者数が過去最多を更新するケースが相次ぐ。昨年春の前回宣言とは異なり、飲食店の営業時間短縮の要請を柱とし、学校の一斉休校やイベントの全面自粛は見送る限定的なものになった。飲食店の時短営業を中心とした施策のみの場合、感染者数は2カ月後も現状とほぼ同水準にとどまるという専門家の分析もある一方で、期間は2月7日までとしている。対象も、内容も、期間も十分なのか、必要ならば果断に見直さなければならない。

 午後8時までの時短営業を要請された飲食業界の打撃は大きい。協力金の上限を4万円から6万円に引き上げるが、仕入れなど飲食店に関連する業種への支援も目配りすべきだろう。加えて15日に締め切られる持続化給付金、家賃支援給付金制度の延長も、早急な検討が不可欠だ。

 国会は18日に召集される。しかし、国家の危機である。とりわけ特措法改正は待ったなしの課題だ。国会を前倒しできないならば、召集までに与野党の協議を重ね、速やかに成立させるのが政治の使命ではないか。

 強制力はないとはいえ、民主主義社会で保障された「自由」という権利に、再び一定の制限が課せられることになった。ただ、私たちは「コロナ慣れ」していなかったのか、ここで振り返っておかなければいけない。うつらない、うつさないという努力は、実は自由の制限を最小限に抑えるのが目的と捉えるべきだ。

 政府も、行政も、国会も、そして私たちも、救える命を守る行動を徹底したい。



4都県に緊急事態宣言 沈静化まで対策の徹底を(2021年1月8日配信『毎日新聞』-「社説」)

 東京都と神奈川、埼玉、千葉3県を対象に緊急事態宣言の再発令を決めた。期間は来月7日までの1カ月間だ。

 東京都の1日当たりの感染者数はきのう2400人を超えた。遅すぎる発令で、この間の対策が後手に回った責任は重い。

 宣言の対象を1都3県に限った判断には疑問が残る。愛知県や大阪府などでも感染者数は高止まりしており、対象に含めるよう求めている知事もいる。政府は速やかに対応すべきだ。

 宣言に伴う対策は、飲食店などへの営業時間短縮要請の強化が柱となる。要請に従わない場合は知事がより強い「指示」を出すことができ、店名の公表も可能になる。人と人との接触を減らすため、企業にテレワーク強化を要請し、イベントの人数制限も強化する。

 宣言の実効性を高めるためには、自粛要請とセットとなる支援策の充実が肝心だ。事業者への「協力金」は増額されるが、家賃支援の給付金や従業員を休業させた企業への雇用調整助成金の特例などは1~2月に期限を迎える。予備費の活用などで、切れ目のない対策を取ることが欠かせない。

 飲食店以外でも、劇場や映画館など経営に影響を受ける事業者への支援が必要だ。

 宣言解除の判断にあたり、政府は感染状況が「ステージ3」(感染急増)相当まで改善していることを目安にするという。西村康稔経済再生担当相は、東京都で1日当たりの新規感染者数が500人を切ることなどを例示した。

 妥当な基準と言えるのだろうか。「第3波」は新規感染者数が十分に下がり切らない中で始まり、ここまで拡大した。その教訓を忘れてはならない。

 東京都で新規感染者数が300人を切る「ステージ2」になるなど、再拡大が抑えられるレベルを目指すことが必要だ。

 宣言期間中は、人出の減少傾向や医療機関の逼迫(ひっぱく)状況を注視し、必要があれば速やかに対策を強化しなければならない。政府は各知事と緊密に連携すべきだ。

 医療現場からは、医療崩壊はすでに始まっているとの声が上がる。徹底的に感染者数を抑え込まなければならない。この1カ月が「第3波」収束への正念場だ。



コロナ対策で「兵力の逐次投入」との批判を…(2021年1月8日配信『毎日新聞』-「余録」)

 コロナ対策で「兵力の逐次投入(ちくじとうにゅう)」との批判をよく耳にする。旧日本軍はガダルカナル戦などで、強力な米軍に対し兵力を小出しにして次々に撃破された。中途半端な策を小出しにするのは兵法では禁物とされる

▲旧日本軍も「戦闘を実行するにあたり、所要に充(み)たざる兵力を逐次に使用するは、大なる過失に属す」(作戦要務令)と戒めてはいた。逐次投入は主動の利を失わせ、むだに損害を招き、ついには軍隊の士気を挫折(ざせつ)させると説いたのだ

▲なのに旧軍が兵力の逐次使用に陥ったのは、正確な情報収集を怠って敵の戦力をあなどり、根拠のない楽観にもとづく作戦を立てたからだ。自分らの都合の良いように現実を考える楽観は結局、厳しい現実によって順次打ち砕かれた

▲東京で2400人超の新規感染者が報告される中、後手後手、小出しの対策を批判されてきた政府がようやく緊急事態宣言を出した。ただ、対象は1都3県、施策は飲食店の時短が主軸と聞けば、またも「逐次投入」の言葉が浮かぶ

▲すでに専門家からは、飲食店の時短中心の策では2カ月後も今と同水準の感染状況が続くとの試算も出ている。飲食店時短で感染拡大を抑えたかに見えた大阪でも再拡大の兆(きざ)しがある。人の移動、接触をより減らす策は必要ないのか

▲爆発的な感染急拡大のニュースを聞き、政府のいう「限定的、集中的」施策の効果に疑問を抱く方も多かろう。中途半端な策でもしも緊急事態が長引けば、国民の“士気”の挫折を恐れなければなるまい。



緊急事態再発令 病院間の連携強化が不可欠だ(2021年1月8日配信『読売新聞』-「社説」)

◆感染抑止は個々の行動にかかる◆

 新型コロナウイルスの感染状況が緊迫の度を増している。政府、医療関係者、企業や個人がそれぞれなすべきことを行い総力を挙げて難局を乗り切らねばならない。

 菅首相は新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に緊急事態宣言を発令した。昨年春に続き2度目で、期間は8日から2月7日までとなる。

飲食店に手厚い支援を


 全国の新規感染者数は過去最多の水準にあり、1都3県が多くを占めている。重症者も増加の一途だ。医療現場の受け入れ態勢は限界を迎えつつあるという。国民の「自粛疲れ」も指摘されているが、ここが踏ん張りどころだ。

 政府の基本的対処方針を踏まえ、1都3県は飲食店に午後8時まで営業時間を短縮するよう要請する。応じた店舗には、1日あたり最大4万円だった協力金を6万円に増額し、対象を事業者単位から店舗単位に広げるという。

 コロナ禍で経営が悪化している飲食店は多い。国や自治体は、協力金を速やかに支給するほか、店の存続を支える手厚い支援策を講じるべきだ。

 イベントは、人数を上限5000人かつ半数以下に制限した。主催者は入場者の体温測定や換気など、感染対策にはこれまで以上に注意を払ってもらいたい。

 住民には不要不急の外出を控え、特に夜間は徹底するよう要請した。企業には出勤者の7割削減を求めている。既にテレワークを導入している会社は多い。これまで蓄積したノウハウを生かし、積極的に取り組んでほしい。

対策が後手に回った

 コロナ患者に対応する医療体制の再構築を急ぐことが重要だ。

 全国には手術や救急向けの急性期病床が73万床ある。人口あたりの数は、先進国の中でも極めて多い。にもかかわらず、コロナ患者の治療用に自治体が確保した病床は2万7600床にすぎない。

 欧米に比べて感染者が圧倒的に少ないのに病床が逼迫ひっぱくするのは、日本に中小規模の民間病院が多く、コロナ患者が大病院に集中しているからだとされる。

 早急に病院間の連携を強化し、患者の受け入れ態勢を拡充する必要がある。地域ごとに役割を分担し、逼迫している病院への医療従事者の派遣を進めるべきだ。

 冬場の感染拡大は予想されていた。いまだに十分な病床を確保できないのは、政府の対策が後手に回ったからにほかならない。

 政府は年末、感染拡大地域でコロナ患者を受け入れた病院に、1床当たり最大1500万円を補助する緊急支援策を発表した。集中治療室の改修工事を行い、重症のコロナ患者専用の病床を確保した大学病院もあるという。

 補助金がすぐに医療機関に行き渡るよう徹底してもらいたい。

 看護師の離職が相次いでいる。病室の清掃や消毒まで担っている人もいる。本来の業務に集中できるよう、負担の軽減を急ぎたい。今でも心ない中傷があるという。最前線で働く医療従事者への差別、偏見があってはならない。

 政府は通常国会に、休業に応じた店舗への支援策を盛り込んだ特措法の改正案を提出する方針だ。各病院が、コロナ患者の治療に携わりやすくする法整備も与野党で議論してはどうか。

 今回、小中高校には一斉休校を求めなかった。子どもは家庭内感染が多く、登校による感染のリスクは限定的だとされるためだ。部活動中の集団感染は散発しており、身体的な接触などリスクの高い活動は避けてほしい。

 本格的な受験シーズンが始まる。今月16日からの大学入学共通テストは予定通り実施され、中学や高校の受験も控えている。

入試が混乱せぬように

 文部科学省は混乱の回避に全力を尽くさねばならない。各学校は、感染者や濃厚接触者が不利益を被らないよう配慮が要る。各家庭では家族の間に感染を持ち込まないように注意したい。

 英国で流行しているコロナの変異種が国内で確認された。感染力が強いとされ、空港での水際対策や国内の監視強化が不可欠だ。

 政府は中国、韓国などとのビジネス関係者らの往来を例外的に認めてきたが、状況に応じて停止することが必要である。

 米英では既にワクチンの接種が始まった。日本も2月下旬からワクチン接種を開始する方針だが、多くの国民に行き渡るにはまだ時間がかかる。感染を抑えるには今できることをするしかない。それが経済回復への近道でもある。



緊急事態宣言 再び危機感持ち抑え込め 雇用不安の回避に全力挙げよ(2021年1月8日配信『産経新聞』ー「主張」)

 菅義偉首相が新型コロナウイルスの国内感染拡大を受け、特別措置法に基づく緊急事態を宣言し、国民に協力を呼びかけた。

 宣言は昨年4月以来で、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県の首都圏が対象となった。期間は8日から2月7日までとなった。

 首都圏では感染増に歯止めがかからず、医療提供体制が崩れ始めている。遅きに失した再発令だが、この機に新型コロナを抑え込まなくてはならない。

 宣言が功を奏さなければウイルスは全国に広がる。日本全体の危機ととらえ、国民は協力してウイルスとの戦いを進めたい。人々の「行動変容」がカギとなる。

 ≪追加の対策ためらうな≫

 東京都の7日の新規感染者数は2400人超となった。全国でも最多を更新し続けている。

 政府の新しい対処方針は感染拡大防止を最優先に位置付けた。経済活動重視の方針から一時転換したものだ。

 飲食店などに午後8時までの営業時間短縮を求め、酒類提供は午後7時までとした。時短に応じる店への協力金の上限は1日6万円に引き上げた。感染リスクが高いとして飲食中心に講じた。

 不要不急の外出を控えるよう求め、特に午後8時以降の自粛徹底を求めた。出勤者数の7割削減を目標にテレワークやローテーション勤務の推進を掲げた。イベントは上限5千人を継続する。

 大阪府の吉村洋文知事は7日、政府に宣言発令を要請することを検討中だと明かした。京都府と兵庫、愛知両県も検討に入った。

 政府は、対策の強化や期間の延長、対象地域の追加をためらってはなるまい。

 昨年のように大幅な自粛が実現するかは不透明だ。専門家や知事会から出ていた首都圏との移動の抑制は明記されなかった。首都圏や大阪府、愛知県など大都市部とその他の地域との移動を抑えるべきではないのか。

 欧米諸国より感染者数が少ないことで日本が油断していた面は否めない。現場の医療従事者は必死に働いてきたのに首都圏では医療提供体制が崩壊し始めている。

 年末年始の1週間、入院先や療養先が決まらず自宅待機を強いられた感染者が都内でのべ3千人を超えた。他の自治体でも同様の例がある。

 これらは、特措法改正が間に合わなかったことを含め政府と自治体の失政だ。医療提供体制の立て直しに全力を挙げるべきだ。

 菅首相や知事ら政治リーダーの発信力の弱さも深刻である。それゆえに今回の協力呼びかけが十分に浸透しない恐れはある。

 昨年12月には会食問題で菅首相は謝罪に追い込まれた。飲食店の時短要請強化を政府が求めたのに東京都などが応じなかったとして、今年に入って政府と都が角突き合わせたのも見苦しかった。

 ≪医療めぐる失政挽回を≫

 時短要請が不十分だった首都圏の知事らに問題はあるが、自ら説得に乗り出さなかった菅首相ら政府側も批判を免れない。言い訳や責任転嫁を図るようなリーダー、政府では言葉の重みが失われることを肝に銘じてもらいたい。

 政府が経済活動の制約を求める以上、それで苦境に陥る人たちを支える安全網の整備に全力を尽くすのは当然の責務である。

 協力金が6万円では焼け石に水という受け止め方もあろう。これで十分かは絶えず見極めなくてはならない。中小・零細企業や個人事業主の多くはぎりぎりの経営を続けてきた。いよいよ息切れして経営がもたなくなる事例が相次ぐようなら、速やかに協力金を増やす柔軟さが必要である。

 コロナ禍で売り上げが落ち込んだ事業者らを支援する制度で、15日に申請期限を迎える持続化給付金や家賃支援給付金は存続させるべきである。宣言を発令した途端になくなるのでは、ちぐはぐな対応と言わざるを得ない。

 特に懸念するのが雇用不安である。昨年11月の失業率は5カ月ぶりに改善したが、雇用環境が回復に向かっているとは言い難い。その中で非正規社員らの雇い止めや解雇が相次げば不安が一気に高まりかねない。

 そうならないよう、企業の雇用維持を支える雇用調整助成金の特例措置は2月末の期限後も延長すべきである。景気が二番底に陥ることを回避するためにも、あらゆる手立てを講じてほしい。



緊急事態再発令 国民の協力が得られるか(2021年1月8日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 私権を制限する重い政治判断だ。慎重に運用し、確実な成果を生み出さねばならない。

 菅義偉首相はきのう新型コロナウイルス特別措置法に基づき、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象に来月7日までの緊急事態宣言を発令した。安倍晋三前政権下の昨年4月に続く発令だ。

 国内の1日当たりの新たな感染者は7千人を超え、この2週間で倍増している。半数を占める1都3県では医療の逼迫(ひっぱく)が顕著だ。東京だけで入院や療養の調整待ちが6日時点で3千人以上いる。

 より実効性のある対策を講じなければ、医療体制が維持できなくなる局面だ。感染防止と経済回復の両立にこだわり兼ね合いの対処を曖昧にして、再び緊急事態を招いた政府の責任は極めて重い。

 再発令で主に制限対象となるのは、感染リスクが高いとされる飲食店だ。各知事は午後8時までの営業時間短縮(酒類提供は午前11時~午後7時)を要請し、応じない場合は店名を公表できる。応じた店には1日当たり6万円を上限に協力金を支払う。

 夜間に酒類を提供する飲食店には死活問題だ。自治体の上乗せ分があっても不十分との指摘が少なくない。要請に応じないと明言する店も出ている。従業員の解雇や雇い止めも急増しかねない。

 本来なら時短に応じられるだけの補償が欠かせない。既存の助成制度なども組み合わせて、個別の事情に寄り添った支援ができるように取り組まねばならない。

 飲食店に的を絞った対策が、感染爆発の様相を見せる状況に歯止めをかけられるかは未知数だ。

 前回は、幅広い業種を休業や制限の対象とし、徐々に全国に広げた。今回、西村康稔経済再生担当相は「これまでの経験や国内外の知見を踏まえた」と説明する。

 感染症疫学が専門の西浦博京都大教授によると、飲食店の時短を中心とした施策のみの場合、東京の感染者数は2カ月後も現状とほぼ同水準という。

 国と自治体は、夜間外出自粛や出勤者数削減、イベントの入場制限も組み合わせて取り組む方針だが、どこまで効果に結びつくかは見通せない。対象地外でも感染が急拡大し再発令を政府に要請する意向の自治体が出始めた。

 より広範囲で長期的な対応を迫られる状況も予想される。

 科学的な分析に基づく政策を、場当たりではなく計画的に展開することが重要だ。成果につなげるには国民の協力が要る。丁寧な説明を忘れてはならない。



首都圏緊急宣言 確実に収束へつなげたい(2021年1月8日配信『新潟日報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大は爆発的な増加傾向に転じている。今ここで確実に封じ込めなければ、医療提供体制は崩壊を免れなくなる。

 菅義偉首相は7日、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に対し、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を決めた。

 8日から2月7日までの1カ月間、飲食を中心とした対策を講じる。会食対策を感染防止対策の「急所」と位置付け、4都県の飲食店に午後8時までの営業時間短縮などを求める。

 宣言に当たって政府は「限定的」な対策を強調してきた。

 だが専門家からは、飲食店の対策だけでは感染を下火にできず、1カ月で抑え込むのは難しいとの指摘が相次いでいる。

 当初の方針に固執して対策が後手に回ることがあってはならない。政府には臨機応変な対応を求めたい。

 実効性を持たせるため、政府は時短に応じた飲食店に1カ月当たり180万円までの協力金を支払う。

 要請に応じない場合は施設名を公表する。昨年春の宣言発令時よりも強硬な対応だ。

 飲食店は感染拡大のたびに協力を要請され、厳しい状況にある。強硬な手段を取らずに済むように、まずは丁寧に説明を重ね、事業者の理解を求めたい。

 時短営業で従業員の雇用維持にも懸念が生じる。失業者や困窮者の増加が気掛かりだ。丁寧に目配りし、必要なら支援の拡充もためらうべきではない。

 政府は、再発令に伴って改定した基本的対処方針に、感染拡大の防止を最優先にすることを明記し、経済活動維持との両立を図るとしていた従来の姿勢から方針転換した。

 菅首相はこれまで「静かな年末年始」を過ごすことなどを国民に呼び掛けはしたが、宣言の再発令といった対策強化には及び腰だった。

 その結果、感染が急拡大したことを踏まえれば方針転換は当然で、遅いと批判されても仕方ない。首相は反省すべきだ。

 多人数での会食自粛を呼び掛けながら、菅首相をはじめ複数の国会議員がそれを破っていたことも国民の不信を招いた。

 日本医師会の中川俊男会長は6日の記者会見で全国会議員に人数にかかわらず会食を全面自粛するよう求め、「範を示していただきたい」と訴えた。

 国会には、中川氏の苦言を、日々感染者と向き合っている医療者を代表する声として重く受け止めてもらいたい。

 宣言は首都圏が対象だが、事態がより深刻になれば、全国に広がることも想定される。既に大阪府など複数の知事が宣言要請の検討を始めている。

 花角英世知事は5日、首都圏など感染拡大が見られる地域との往来を「極力控えてほしい」とし、これまでより表現を強めて県民に警戒を呼び掛けた。

 今回の宣言を確実に収束へつなげるために一人一人が感染防止への自覚をいま一度強く持ち、対策を徹底したい。



緊急事態の発令 首都圏の病床増やさねば(2021年1月8日配信『北国新聞』)

 政府は東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に緊急事態宣言を発令した。期間は来月7日までとし、午後8時以降の不要不急の外出自粛を求める。飲食店や飲食を伴う商業施設については午後8時までの時短営業のほか、酒類の提供を午後7時までとするよう要請する。

 政府の新型コロナ対策分科会では、1カ月程度での収束を困難視する見方が大勢を占めているという。冬本番入りの季節要因を考えれば、長期戦を強いられることになるかもしれない。

 心配なのは、首都圏の医療提供体制が逼迫(ひっぱく)していることである。東京都は7日、初めて2千人を超える感染が確認され、2日連続で過去最高を更新するなど、感染が急拡大している。昨年12月1日は1650人だった入院患者は5日に初めて3千人を超え、病床使用率は86・4%に達した。

 神奈川県では重病者病床の使用率が92・5%となり、特に危機的な状況である。

 病床と医師、看護師不足を解消するために、緊急の予算措置が必要だ。特に民間病院に、経営の憂いなく患者を受け入れてもらえるような仕組みができないか。思い切った手を打つよう求めたい。

 宣言に伴う経済への悪影響も心配だ。感染拡大の影響で、解雇・雇い止めされた人は累計8万人を超えた。最多は製造業の1万6717人で、飲食業の1万1021人がこれに続く。

 時短要請に応じた飲食店には1日あたり6万円の協力金が支払われ、要請に応じない店舗に対しては、店舗名を公表できるとしているが、午後8時以降の営業をやめよというのは、飲食業界への負担があまりにも大きい。廃業や失業が続出しかねず、要請に応じたくても応じられない店舗が多数出ることも予想される。

 政府は、医療提供体制の充実を図る一方で、宣言解除のタイミングを逃さぬようにしてもらいたい。医療提供体制が維持できるなら、4段階の基準で最も深刻な「ステージ4」から「ステージ3」に移行した段階で、速やかに解除を考えても良いのではないか。



首都圏に緊急事態宣言(2021年1月8日配信『福井新聞』-「論説」)

感染抑止の実効性高めよ

 首都圏の1都3県に新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が発令された。菅義偉首相は経済優先から方針転換を迫られた形だが、早期の事態収拾には感染抑止の実効性を高めることが欠かせない。

 ただ、宣言を発令した7日の東京都の新規感染者数は2447人に上り、前日の1591人から800人以上増え、2日連続で過去最多を大幅に更新するなど、爆発的感染拡大の様相を呈している。都内の入院患者の病床使用率はほぼ9割で、入院や自宅・宿泊の調整中も3500人余りに上るなど、東京を含む首都圏は医療提供体制の崩壊が強く懸念されている。

 こうした状況を転換すべく政府が重点を置いたのが飲食店の営業時間短縮だが、京都大の西浦博教授のシミュレーションによれば、時短営業を中心とした施策のみの場合、東京都の感染者数は2カ月後も現状とほぼ同水準にとどまるという。人と人の接触を「最低でも7割、極力8割減らす」と幅広く活動を制限した昨春の宣言時に近い施策なら2月下旬にも1日100人未満にできるとしている。

 政府がどこまで、こういった試算を参考にしているかだろう。午後8時以降の不要不急の外出・移動の自粛、テレワークの徹底なども施策に掲げたが、「コロナ慣れ」「コロナ疲れ」から昨春ほどには浸透しないとの指摘もある。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長でさえ「(飲食店対策だけでは)感染を下火にできない」「(抑え込みは)1カ月未満では至難の業」との見方も示している。

 7日の記者会見で首相が発したのは、対策の羅列であり、事務的な印象が拭えなかった。感染を広める一因となっている若い世代に向けメッセージも送ったが、「マスク会食」を自ら呼び掛けながら大人数の会食に参加していたことや、「Go To」事業の一時停止など判断の遅れ、さらには感染対策で自治体との間で責任を押しつけ合う姿勢など、政治への信頼を失わせるような場面を目の当たりにしてきた国民の共感が得られるだろうか。

 一方で、1日当たりの新規感染者が全国で7千人を超える深刻な事態となっている以上、緊急事態宣言の対象が首都圏だけでいいのかという問題も早晩、突き付けられかねない。感染を比較的抑え込んでいる福井県内でも一気に急増する恐れは否めない。首相や都道府県知事らリーダーには、医療現場や時短営業で苦境に立たされる飲食業などに寄り添いつつ、危機感を共有し柔軟かつスピード感を持って政策を打ち出す姿勢こそが求められている。国民、県民も「うつらない」「うつさない」という命を守る行動を徹底したい。



緊急事態宣言再発令/首都圏、飲食中心では不十分だ(2021年1月8日配信『神戸新聞』-「社説」)

 政府は、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を再発令した。期間は2月7日までの1カ月である。

 対象となる東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏1都3県の感染状況は深刻さを増している。東京都の新規感染者数はきのう、前日から800人以上も増えて初めて2千人台に達した。感染爆発が加速し、医療システムに大きな支障が出ている。

 このままでは社会が基盤から壊れかねない。一人一人の行動変容を促し、一刻も早く沈静化させなくてはならない。そのために菅義偉首相は多くの人が共感できるようなメッセージを自らの言葉で発信し続けるべきだ。後手後手に回ったこれまでの対策の失敗を率直に認め、何としても国民の命を守る。そうした覚悟をもっと示してほしい。
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 昨春の前回宣言時と異なるのは、飲食の場での感染リスクの軽減策を中心に据え、措置を限定した点だ。飲食店などに対して午後8時までの営業時間短縮を要請する。

 一方で、要請に応じない施設名の公表など厳しい措置も含まれる。死活問題にもなるだけに、飲食店側は「いじめ」と反発している。

 前回は店名を公表されたパチンコ店に客が押しかけた例があり、どこまで効果があるのかは疑問である。飲食店側の協力が得られなければ逆効果になる恐れもある。

 時短営業などに応じた場合に支払う1日当たりの協力金の上限は現行の一律4万円から6万円に引き上げるが、飲食店で働く人たちの生活を支えるには全く不十分と言わざるを得ない。

 政府は、給付金と罰則をセットにした特措法改正も通常国会で成立させる方針だ。罰則を強化するなら、休業に伴う十分な補償が不可欠だ。重大な私権制限に踏み込む措置であることを自覚し、国会での徹底審議を求めたい。

実効性には疑問も


 ほかに、午後8時以降の不要不急の外出自粛を徹底するよう呼び掛ける。テレワークを推進して、出勤者数の7割削減を目指す。イベントの開催要件も厳格化する。

 だが、「最低7割、極力8割削減」といった人と人の接触を巡る目標設定は見送られた。経済への影響を最小限にとどめたいという首相の考えが強くにじんでいる。

 感染対策としては中途半端な印象が否めない。

 1都3県では既に酒類を出す飲食店に対し、午後10時までの営業時間短縮を要請してきた。早まるのは2時間のみで、どこまで感染を抑えられるのか見通せない。飲食店の営業時短が感染拡大の抑止につながったとみられる北海道でもいまだに収束段階には至っていない。

 社会には「コロナ慣れ」も広がり、人の流れは思うように減っていない。前回の宣言時のような厳しい対策を想定しても、東京の1日当たりの新規感染者数が100人以下に減るまで約2カ月が必要との専門家の試算もある。

 感染状況の推移を見極め、効果が出ないと判明した場合は、外出自粛の強化や、具体的な数値目標を示した人と人の接触機会の削減まで踏み込むべきだ。人々の協力を得るには、解除の基準をはじめとする出口戦略を打ちだし、それに向けた情報を随時公開する必要がある。

臨機応変の対応を

 首都圏など大都市圏の感染拡大は地方にも波及している。多くの自治体で新規感染者数が連日のように最多を更新しており、既に医療崩壊が始まったと言える地域もある。

 日本脳卒中学会が実施した調査では、昨年12月中旬の時点で脳卒中の専門治療を担う全国の医療機関の18・3%で救急患者の受け入れに支障が出ていた。特に関西地区で影響が大きかったという。

 関西圏も感染爆発の瀬戸際にある。大阪や兵庫の病床の逼迫(ひっぱく)度はかなり厳しい状況だ。

 こうした中、宣言の必要性を否定していた吉村洋文大阪府知事はきのう、一転して大阪に緊急事態宣言発出を政府に要請する意向を示した。これを受けて、井戸敏三兵庫県知事と西脇隆俊京都府知事も発令要請に前向きな姿勢を示している。

 医療資源の乏しい地方での感染爆発は食い止めねばならない。地方の実情を考慮し、対象地域の追加も検討するべきだ。

 私たちはこの1年間で、コロナが極めて厄介で軽視してはならないことを学んだ。一人一人が今なすべき振る舞いを考えたい。



「諦めない(2021年1月8日配信『神戸新聞』-「正平調」)

人間の最も重要な能力は-。ゴリラの研究で知られる京都大学前学長、山極寿一さんによれば、その一つは諦めないことだという。「動物はできなかったら諦めちゃう。人間はしつこい」

◆ある対談で山極さんがいわく、「これは、われわれみんなが持っている能力なので、使わない手はありません」。そうであれば、いまこそその能力の発揮しどきだろう

◆新型コロナ対策の緊急事態宣言が首都圏の1都3県に出された。皮肉ながら、きのうの会見で首相が語ったどんな言葉よりも、「東京で感染者2400人超」の衝撃のほうが国民には劇薬となったかもしれない

◆この1年を顧みれば、私たちはいろんなことを諦めている。しかし、それはもっと大きな「諦めない」を成就できると信じてきたからだろう。すなわち感染収束である

◆兵庫県など関西でも宣言要請の声があがる。辛抱は続くが、そのために流した涙の総量よりのちに得られる喜びのほうが大きくなることを諦めない。その喜びが全員に行き渡るようにする、そのことも諦めない

◆ところで国会議員の皆さんは会食が諦めきれないのか、「4人以下で」などのルール作りに余念がないらしい。間の抜けた話である。それくらいのことは、おのおので判断できないものか。



首都圏に再び緊急宣言 危機感共有できるのか(2021年1月8日配信『中国新聞』-「社説」)

 遅れ遅れになっていた「切り札」を出すからには、巨大な第3波の抑え込みに全力を挙げなければならない。新型コロナ特別措置法に基づき、政府はきのう、首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言を再び発令した。

 ただ、経済への打撃を気にするあまり、昨年春の初の宣言時とは違い、飲食店などに対象業種を絞り込んだ。効果がどれほどあるのだろうか。

 感染拡大は、再発令の方針が示された4日以降も勢いを増している。全国の新規感染者数はきのう7千人台に乗り、わずか2週間で倍以上になった。

 感染爆発を避けるには、これまで以上に強い措置が急がれる。人と人との接触を大幅に減らすことが必要―。そう専門家が指摘する通りである。

 ところが、政府の対応は心もとない。例えば対象地域の狭さ。医療崩壊の危機にあるのは首都圏だけではない。医療が逼迫(ひっぱく)しつつある大阪府などへの宣言も検討すべきではないか。

 期間を1カ月にした点にも疑問の声が上がる。「8割おじさん」で知られた西浦博・京都大教授(感染症疫学)は、昨春の宣言時並みの厳しい対策でも東京の感染者抑え込みには約2カ月必要だと試算した。飲食店の時短営業などを中心にした今の対策では、新規感染者数はほぼ横ばいで高止まりするという。

 政府方針には、新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長も厳しい見方を示す。「飲食店だけでは感染を下火にできない」「1カ月未満で抑え込むのは至難の業だ」という。小出しで不十分な対策では抑え込みは不可能だろう。迅速な判断と徹底した取り組みが求められる。

 長く続く対策に国民の協力を得るため、危機感を改めて共有してもらう必要がある。自粛疲れや自粛慣れで気が緩んでいるようにも見えるからだ。

 しかし肝心の政府は危機感が乏しい。何より、先頭に立つべき菅義偉首相に覚悟が感じられない。国民の代表が集う国会で、宣言の必要性について説明し、質疑を受けたのは、西村康稔経済再生担当相だった。一体誰が、国のリーダーなのか。

 菅首相はきのうの会見で「1カ月後には必ず事態を改善させる。あらゆる方策を講じる」と述べた。手元の資料を度々見ながらで、迫力を欠いた。どれほど国民の心に届いただろう。

 危機感を欠くのは国会議員も同じだ。会食ルールを設けるが、4人以下で、午後8時以降は控える程度という。自分たちへの甘さに驚く。食事をせずとも国民の意見は聞ける。なぜ自粛まで踏み込まなかったのか。

 宣言を出すことで、立場の弱い人たちにしわ寄せが及ぶ事態を繰り返してはいけない。コロナ関連の解雇や雇い止めは8万人を超えた。半数近くがアルバイトやパートなど非正規労働者だという。女性が目立ち、自殺も増えている。政府には、国民の生命や健康だけではなく、雇用を守る責任もある。

 中国地方に住む私たちも油断はできない。広島県では、厳しい集中対策で新規感染者数は先月中下旬をピークに減少傾向にある。それでも首都圏での感染拡大を食い止めなければ、再燃の恐れが残る。危機を乗り切るには、一人一人の自覚が前提になることを、再発令を機に改めて肝に銘じておきたい。 



「8割おじさん」の新たな試算(2021年1月8日配信『中国新聞』-「天風録」)

 小欄では「不死身の脇役」との別れを惜しんだばかりだが、この人も命懸けだったそうだ。「8割おじさん」の異名がある理論疫学者の西浦博さん。「新型コロナ」を冠した新著から、今なお続く苦闘を知る

▲昨春の緊急事態宣言で人との接触を「最低7割、極力8割」減らそうと政府は呼び掛けた。この8割が西浦さんらによる分析だったが、政府側が「最低7割」を挿入したという。経済を回そうとする側とのせめぎ合いに、いや応なしに投げ込まれた

▲著書に「生まれて初めて殺害予告を受けました」とある。緊迫の日々から、やがてひとときの平穏が戻ったものの

▲きのう1都3県に再び緊急事態宣言が出された。1カ月と区切るが、東京都の1日の感染者数を100人以下にするには2カ月を要す―と西浦さんは試算した。2500人に近づいた数字を25分の1に絞るには、かなりの努力が必要だろう。しかも、政治への信頼なしには難しい

▲「国会議員の会食ルール」うんぬんの話がいまだ続くことにあきれ果てる。8割おじさんのマイクは置いて研究室に戻ったと、西浦さんはつづる。覚悟の上でまずマイクを握るべきは、夕べも会見した一国の宰相しかいない。 



緊急事態宣言再発令 効果見極め有効な対策に注力を(2021年1月8日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 菅義偉首相は、東京と埼玉、千葉、神奈川の1都3県に新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態を宣言した。宣言は昨年4月に初めて発令して以来で、期間は2月7日までとしている。

 全国の新型コロナの新規感染者が1月6日、5日と比べ千人以上増え6千人台に上った。7日には初めて7千人を超え、爆発的増加の様相を呈している。感染拡大に歯止めがかからず、医療提供体制は逼迫(ひっぱく)しており、強力な感染拡大防止策を打ち出す段階にあるのは間違いない。

 記者会見した首相は「何としても、これ以上の感染拡大を食い止めたい」と強調。「1カ月後には必ず状況を改善させるため、ありとあらゆる方策を講じていく」と決意を述べた。

 昨年末は、都内の人出が多く「このままではさらなる感染拡大が避けられない」との認識を示していたが、「静かな年末年始」を国民に呼び掛けるにとどまり、判断が甘かったと言わざるを得ない。今後も定期的に会見を開き、拡大防止に向けた明確なメッセージを発信し続け、実効性のある対策を講じなければならない。

 経済を重視してきた政府が感染抑止優先へ方針転換を迫られた形だ。感染拡大防止と経済活動維持の両方を追い求めることに問題はない。しかし、今のように感染がまん延すれば経済にも悪影響を与えてしまう。感染状況が落ち着いた段階で経済との両立を目指すべきだ。

 昨年の宣言時と比べると、今回は感染リスクが高いとされる飲食店への対応に重点を置いている。飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとする。要請に応じない場合は店舗名を公表する。

 ただ店名公表の強制力には疑問符が付く。昨年は名前を公表されたパチンコ店に多くの客が集まった。自粛警察のような形で、公表された店に一般市民が嫌がらせをする懸念もある。協力を求めるならば、要請に応じた店への協力金支給などで十分な補償を約束することが欠かせない。要請に応じなかった事業者に罰則を科すことについては補償水準と合わせて国会で議論を重ね、運用の在り方を慎重に検討する必要がある。

 飲食店対策だけで感染を下火にして医療崩壊を防ぐことは難しい。接触機会を極力減らすために自宅などで仕事をするテレワークを推進して出勤者を減らしたり、市民が不要不急の外出を控えたりすることも肝要だ。国は感染状況を分析し、効果を見極めながら有効な対策に力を入れるようにするべきだ。

 感染の拡大から1年近くになる。国民の間に「自粛疲れ」も広がり、政治家は会食を自粛するなどして範を示してもらいたい。併せて感染防止に全力を挙げる機運を高めるため政府は宣言解除の基準を丁寧に説明し、具体的な出口戦略を提示しなければならない。



【「緊急事態」再び】心一つに危機感を高めて(2021年1月8日配信『高知新聞』-「社説」)

 東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が再発令された。期間は8日から2月7日とした。

 全国の感染者数が連日最多を更新し、医療現場の負担は限界に達しつつある。再発令は遅きに失した感が否めない。それでもここで踏みとどまるために国、自治体、住民が心を一つにして危機意識を高め、対策に取り組む必要がある。

 昨年4月の1回目の発令と異なるのは、感染リスクが高いとされる飲食の場に重点を置くことだ。

 飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請。応じない場合は施設名を公表する。時短に応じた店に支払う1日当たりの協力金の上限を現行4万円から6万円に引き上げる。

 一方で小中高校の一斉休校や、イベントの全面的な自粛は求めない。保育所や学童保育も原則として開所する。これまでの経験で、学校教育などは感染リスクが低いとされているからだ。

 新型コロナに関して積み重ねてきた知見に基づき、対策を講じていくことは必要だろう。ただし、菅義偉首相が言う「限定的、集中的」な対策で、十分な効果を上げられるかどうかについては疑問符もつけられている。

 京都大の西浦博教授(感染症疫学)の試算によると、昨春の宣言時に近い厳しい対策を講じても東京の1日当たりの新規感染者が100人以下に減るまでに約2カ月かかる。飲食店の時短を中心にした対策のみの場合、感染者は2カ月後も現状とほぼ同水準にとどまるという。

 政府は新たな基本的対処方針に、感染拡大防止を最優先にすると明記した。従来の経済活動との両立からの転換と言える。半面、飲食の場などに絞り込む対策には、経済への打撃を和らげたい意向もにじむ。中途半端にも映るやり方で、本当に「第3波」を沈静化できるのか。政府の説明が十分だとは言えない。

 感染防止には人と人との接触を減らすことが最も効果的だ。これまでに多くの国民が実感していよう。政府も飲食店への重点対策以外に、午後8時以降の不要不急の外出自粛や出勤者数の7割削減、テレワークの推進などを求めている。

 感染リスクを減らすために国民一人一人がいま一度、制約のある生活を我慢し、できる限り行動を変えていくことが大切だ。

 政府も今後の感染状況に応じて、緊急事態宣言の対象地域の拡大や期間の延長、感染対策の一層の強化などに臨機応変に取り組むことが欠かせない。

 むろん地方も無縁ではない。

 専門家は大都市圏の感染拡大が地方にも影響している、と指摘する。高知県も重症者や中等症者が減っておらず、医療への負担が懸念される。県の対応レベルも「特別警戒」を維持したままだ。

 緊急事態宣言を決してひとごととせず、緊張感を持って「3密」回避などの対策を続けたい。



山登り(2021年1月8日配信『高知新聞』-「小社会」)

 若い頃、八ケ岳、甲斐駒ケ岳など、いわゆる日本百名山の山々に挑んだ経験がある。登って下る。それだけなのに山登りは魅力的であり、難しくもある。

 山頂を目指す上り坂は緊張感がある。特に初めての山は道を間違えないよう神経を集中させる。山頂に着くと、ほっと一息。精神的にゆとりが出てくるからか、下りは行きに見逃した絶景や植物に感激する。
 
 「登ることは登山という行為の第一段階にすぎない」「下山に失敗すれば、登山は成功とはいえない」。作家の五木寛之さんの言葉だ。登山は下山して終わる。無事に下りてこそ、征服した達成感も次の挑戦もある。

 私たちがいま直面している「山」は相当険しい。新型コロナウイルス。感染者は増え続け、いまだにピークが見えない状況だ。政府は首都圏の1都3県に2度目の緊急事態宣言を出したが、きのう全国の新規感染者数は7千人を突破した。危機はもはや首都圏だけではない。

 冬に一段と大きな感染の山が来る恐れは、ウイルスの特性から早い段階で指摘されていた。感染を封じ込めないと経済の回復もあったものではない。政府はあまりにも準備不足ではなかったか。

 この先、ピークに達したとしても気は抜けない。登山は下山中に道を間違ってしまうと、下りられなくなる。けがもしやすい。感染爆発や医療体制の崩壊といった「遭難」は何としても避けたい。改めて緊張感を持とう。



2度目の緊急事態宣言(2021年1月8日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 2年前の1月、インフルエンザにかかった。この時、「1回の服用で治る」という新薬を処方された。服薬から24時間で本当に熱が下がり、「すごい」と思った。インフルエンザの世界大流行から100年たって、人類はこの感染症と共存できるようになった。その歴史を思えば、コロナとの共存の道は始まったばかりだ

◆きのう7日、関東の1都3県に対し2回目の緊急事態が宣言された。やむを得ないだろう。先月、東京で暮らす友人が所用で帰佐し、久しぶりに会った。こちらの不安を察したのか、友人は東京で受けたPCR検査の「陰性証明書」を持参していた。これが当たり前の行動になるのかもしれない

◆誰も「コロナにかかっていい」とは思っていない。細心の注意を払っていたのにかかってしまう。首都圏の感染状況を見てそう思う。自分がかかっていないからといって、感染した人を責めるのはやめよう。回復したらきっと、助ける側に回ってくれるはずだ

◆病気や不調は「無理をしすぎないように」という信号でもあろう。2年前は家族に加え、職場でもインフルエンザにかかる人が相次ぎ、みんなでカバーし合った

◆人は一人では生きられないし、寒い日はぬくもりが欲しくなる。いつにも増して厳しい冬。「お互いさま」と、支え合いの毎日を重ねて乗り切っていくしかない。



平成始まりの日(2021年1月8日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 「遠くなりにけり」というのは、もはや昭和だけにあらず。目まぐるしく移りゆく時の中で、平成すらも存外早く過去のかなたに追いやられていくのではないだろうか。きょう1月8日は平成が始まった日。

 平成元年1月8日付本紙を見ると、当然のことながら昭和天皇の追悼一色だ。次に今が令和3年なので、平成3年の今ごろはどうだったろうと、同年1月8日付の紙面に目を通す。各地で行われた成人式や出初め式、若者のバンドイベントなどの記事がひしめく。

 もちろんどの年も同じようなものだ。これが毎年この時期の「人々の日常」だったからだ。しかし―。昨年1月7日付に載った「中国で原因不明肺炎」の見出しの記事。これが、われわれから日常を次々と奪い取る災禍の序章になろうとは、一体だれが想像できただろう。

 全国の新型コロナウイルスの新規感染者は、きのう7千人を突破。年明けから30人台で推移していた本県も、おととい80人、そしてきのう一気に3桁へと跳ね上がった。関東1都3県では、きょうから緊急事態宣言が再発令。本県も独自に同宣言を出し、あすからさまざまな行動自粛を求めていく。

 これでまた、辛うじて営まれていたささやかな日常生活にも強いブレーキがかかることになるだろう。気がめいるが一日も早く状況を好転させるために皆で耐えたい。過ぎ去りし「平成」に込められた「内外、天地ともに平らかなる世」に思いをはせながら。



[新型コロナ・緊急宣言再発令] 命救う行動 徹底したい(2021年1月8日配信『南日本新聞』-「社説」)

 菅義偉首相はきのう、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏1都3県を対象に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を再発令した。きょうから来月7日までを期間とする。

 1日当たりの新規感染者が国内で7000人を超え、医療提供体制は逼迫(ひっぱく)しつつある。とりわけ首都圏では深刻な状況だ。宣言によって経済へのダメージが懸念されるが、「第3波」の勢いを止めることを優先せざるを得ない。

 早期に流行を抑え、必要な人が治療を受けられない医療崩壊を防がなければならない。救える命を守るため、一人一人が危機感を持ち、感染しない、感染させない行動を徹底したい。

 背景に国民の「コロナ慣れ」があるとはいえ、知事らとの連携を欠き、有効な手を打てないまま感染拡大を許した首相の責任は重い。丁寧な説明で国民の協力を得て、宣言の実効性を高める努力が求められる。

 緊急事態宣言は昨年4月に初めて発令して以来である。経済活動の停滞を招いた前回を踏まえ、対策は感染リスクが高い飲食店を中心に展開する。

 対象店には午後8時までの営業時間短縮を要請し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとする。応じない場合は施設名を公表する。協力金は1日当たり4万円から6万円に引き上げられるが、今月15日で締め切られる持続化給付金や家賃支援給付金の制度延長も早急に考えるべきではないか。

 専門家からは飲食店中心の対策だけでは感染を下火にするのは難しいとの指摘が出ている。対象や内容、期間は十分か。必要なら果断に見直したい。

 午後8時以降の不要不急の外出自粛のほか、企業にはテレワークなどによる出勤者7割削減も要請する。小中高校の一斉休校は求めず、入試も予定通りの実施を促す。いずれも影響が最小限になるよう慎重に対応してほしい。

 医療体制は冬を迎える前の備えが遅れ、全国的にコロナ以外の患者を受け入れる余地がなくなってきている。検査や治療で疲弊する医療機関や高齢者施設などにはこれまで以上の人的、予算的な支援が欠かせない。

 コロナ禍に関連した解雇・雇い止めは約8万人に上る。経済を下支えするため雇用調整助成金の特例延長などの検討を急がなければならない。

 コロナ特措法改正は待ったなしの課題だ。しかし、通常国会の召集は18日と遅い。国会を前倒しできないなら、与野党で協議を重ね、開会後速やかに成立させるべきである。

 鹿児島県内でも感染者が増加傾向にあり、県は宣言を受け対象地域との不要不急の往来自粛を県民に求めた。マスク着用や手洗いの励行、3密を避けるなど基本的な感染対策に努めたい。



切れ味はどうか(2021年1月8日配信『南日本新聞』-「南風録」)

 江戸時代のお家騒動を題材とした歌舞伎「毛抜(けぬき)」の大詰め、主人公の粂寺弾正(くめでらだんじょう)は預かった刀を抜いて悪者を成敗する。東京で幕開けした「初春海老蔵歌舞伎」で市川海老蔵さんが演じている。

 刀は小野小町の子孫に当たる家の重宝である。縁談相手の家から遣わされた弾正が名推理で悪事を暴き“伝家の宝刀”で事を収めたわけだ。スパッと決着させる一太刀が小気味よい。

 新型コロナの感染急拡大を抑えようと、政府は首都圏の1都3県に緊急事態宣言を出した。とっておきの手段という意味で伝家の宝刀に例えられるが、こちらの切れ味はどうか。知事たちにせかされた末の発令だから、付け焼き刃のように見えて心配になる。

 同じ緊急事態宣言でも、都心の繁華街から人影が消えた昨年4月とは様子が異なる。今回は飲食店への営業時間短縮要請が中心で、学校の一斉休校などはない。何よりの違いは人々のコロナ慣れ、という新たな敵の出現ではないか。

 来月7日までの1カ月。短期間での効果を疑問視する声もあるが、医療の逼迫(ひっぱく)や飲食店の苦境、さらに全国への影響を思えば、早く落ち着くことを願うばかりである。

 明るい未来を予感させる「毛抜」は新年にふさわしい演目だ。ウイルスへの一太刀も望外の切れ味を発揮してくれるといい。それには一人一人が行動を見直すしかない。もう自分にできることはないのか、と。



緊急事態宣言再発令 事業者の損失補償確約を(2021年1月8日配信『琉球新報』-「社説」)

 菅義偉首相は7日、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。期間は8日から2月7日までの1カ月間とした。

 本来であれば、もっと早い段階で政府は感染拡大を食い止める効果的な手だてを講じる必要があった。7日は東京だけで2447人の感染が確認されるなど感染が爆発的に拡大しており、宣言を発令するタイミングも遅きに失したと言わざるを得ない。

 現状では首都圏の爆発的感染拡大が地方にも影響を与えており、緊急事態宣言を発令して、より強い対策を講じていくことはやむを得ない。宣言の対象ではないとはいえ、沖縄も感染者数がなかなか減少しない状況にある。首都圏と危機意識を共有し、感染抑制に道筋をつけていきたい。

 国内の感染者は7日に初めて7千人を超え、宣言対象の1都3県が半数近くを占める。治療が必要な感染者が、入院先が決まらず調整する事例が増加するなど、医療供給体制が逼迫(ひっぱく)している。

 全国的な感染の「第3波」に対し、政府の対策はことごとく後手に回ってきた。昨年11月25日から「勝負の3週間」として重点対策を呼び掛けながら、「Go To トラベル」キャンペーンは継続にこだわり、感染抑制の効果は上がらなかった。

 「Go To」停止に追い込まれた菅首相は「年末年始を静かにお過ごしいただきたい」と国民に慎重な行動を促したが、首相自身が大人数の夜の会食に出席して批判を浴びた。指導者の言行に不一致があっては、国民と危機意識を共有できるはずもない。

 緊急事態を宣言した菅首相は「1カ月後には必ず事態を改善させる。ありとあらゆる施策を講じていく」と感染を減少傾向に転じさせていく決意を強調した。一方で、「1年近く学んできた経験を基にした対策」と繰り返すだけで、経済活動との両立に執着してきたこれまでの姿勢には触れなかった。

 国民に行動変容を求めるならば、身をもって示すことが肝心だ。夜間の営業制限などさらなる痛みを強いられる事業者や、自粛を求められる国民が納得できるような強いメッセージは、今回も菅首相から伝わってこなかった。

 専門家からは、東京の新規感染者が100人以下に減るまで約2カ月が必要という試算が示されている。飲食業の営業規制に重点を置いた限定的な対策で実効性を伴うのか、慎重な見方がある。

 菅首相は、新型コロナ特措法を改正して事業者への罰則規定を導入し、対策に強制力を持たせることにも言及した。必要なのは私権の制限を強めることではなく、事業者の損失補償をしっかりと確約することだ。要請に不安なく協力できる経済対策を打ち出すことが、感染対策の実効性を高めることになる。



飲食のせいにする政策自体見直すべき(2021年1月8日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★改めて聞きたい。本当に飲食店が悪いのか。国会議員は特例で4人までなら会食していいとか、社会や国民に要請してきたルールも守れないのに、一般の国民は5人以上の飲食ダメ、20時以降の酒販もダメ。これでコロナは撲滅できるのか。政府はやっと重い腰を上げ2月上旬の成立を目指す新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案では緊急事態宣言下の休業を巡り、都道府県知事が現行の「指示」よりも法的拘束力のある「命令」を事業者に出せるように改正し、従わない場合は50万円以下の過料とするなど骨子が見えてきた。

★思えば以前は、やむにやまれず営業を続けたパチンコ店がやり玉にあがり、営業を続けている地方都市まで車を駆って打ちに行くニュースが盛んに流れたが、業界は店の安全衛生管理に理解を求め、今では規制の対象にもなっていない。なぜ飲食なのか。つまりは人が複数で会食やそこに酒が入れば、コロナ禍であることを忘れ談論風発、口角飛沫(ひまつ)が感染リスクを高めるということだろう。だがそれは客の問題で飲食店の責任ではない。

★法案に対して刑事罰の必要と説く自民や国民民主に対して立憲民主党、共産、社民などは「なじまない」と否定的だ。そもそも安全対策とやらは手洗い、マスク、検温程度しかない我が国のコロナ対策で、コロナ禍で死亡した立憲参院幹事長・羽田雄一郎は亡くなる日の朝の体温は36・1度だった。もう検温は安全対策の根拠にならない。それならば台湾などが実践し効果のあった、まずはその場でわかる過去に感染したことがあるか、現在の感染は初期なのか否か、コロナウイルスに抵抗する抗体をすでに獲得しているのかを調べる抗体検査、ウイルスに感染した細胞が特異的に産生する抗原を検知して診断する抗原検査をまず行い、その中から検査しうることを探しPCR検査を受けさせる手順を踏むべきだ。我が国はいまだPCR検査を自由に受けにくい環境にあることを飲食のせいにする政策自体を根底から見直すべきではないか。



緊急事態の再宣言(2021年1月8日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

危機招いた大失政に反省ない

 新型コロナウイルスの新規感染者の激増が続く中で、菅義偉政権が緊急事態宣言を出しました。東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象にし、期間は2月7日までにしました。飲食店の営業時間短縮の要請などが柱です。ところが、時短要請に実効性をもたせるための要である十分な補償はありません。焦眉の課題である検査・医療体制を抜本的に強化する財政支援もとりません。国民に大きな苦難を強いる措置をとるというのに、あまりに無責任です。菅政権は、危機を深刻化させた大失政を反省し、コロナ対策の根本的転換をはかるべきです。

疑問・不安尽きないまま

 今回の緊急事態宣言によって、4都県では飲食店の営業時間を午後8時までにすることを要請するほか、テレワークの徹底、午後8時以降の不要不急の外出自粛、大規模イベントの人数制限などを求めます。幅広い業種に休業・施設使用制限を要請した昨年4~5月の緊急事態宣言と比べ対象を狭めました。しかし、これで感染の抑制に転じることができるのか。国民の不安と疑問は募ります。

 専門家からは、これらのやり方では1カ月で感染抑制は極めて困難という指摘が出されています。4都県の他にも感染状況が悪化し医療体制がひっ迫してきている道府県も増加しているのに、それらが対象にならない根拠もはっきりしません。感染を広げる場も必ずしも飲食店などに限ることができないのが実態です。菅首相が昨年末の感染者数の急増まで宣言は必要ないと言い張ってきた理由も明確になっていません。

 ところが、政府からは疑問について納得できる説明がありません。宣言に先立ち衆参の議院運営委員会で短時間の質疑が行われましたが、菅首相は野党の出席要求を拒みました。昨年4月の緊急事態宣言の際、当時の安倍晋三首相は出席し不十分ながらも答弁に立ったことと比べても異常という他ありません。宣言決定後の記者会見も首相の話は通り一遍で国民に届く言葉はありません。行政府の長としての資質が問われます。

 いまの感染状況は、昨年の緊急事態宣言の時よりも、はるかに深刻です。しかも、首都圏で「感染爆発相当」という状況を引き起こしたのは、「Go To キャンペーン」に固執し、人の流れを止めようとしなかったことに象徴される菅政権の失政によるものです。

 自らの無為無策と逆行によって、国民に重大な困難を伴う行動変容を求める緊急事態宣言を再び出すことに立ち至ったことへの真摯(しんし)な反省の表明こそ必要です。

国民に責任押し付けるな

 菅政権は自らの行動を即刻改めるべきです。なにより営業が安心して続けられる十分な補償の実施が急務です。感染リスクの高い高齢者施設などでのPCR検査抜本拡充のための全額国庫負担に踏み切る時です。コロナ対応で苦闘が続く医療機関への減収補填(ほてん)と財政支援強化が不可欠です。これまでの姿勢を転換することなく、国民の協力も信頼も得られません。要請に応じられない業者の店名公表のような「制裁」は、国民同士の対立と分断しかもたらしません。国民に責任を押し付ける懲罰的な対策は逆効果です。十分な補償こそが、国民の理解と納得のための最大の保障です。



心にとどかない言葉ばかりか…(2021年1月8日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 国や自治体のリーダーが自ら汗をかき、自ら難しいこともやる。だから、みなさんも協力してくださいというメッセージがないと。このことが私は極めて重要だと思う

▼政府のコロナ対策分科会の尾身会長が緊急会見で強調していました。自粛や要請を求めるだけでなく、まず範を垂れよ。同様の発言は日本医師会の中川会長からも。多数での会食や宴会をくり返し、批判されても開き直る。そんな政府や自民党への苦言ともいえます

▼菅首相が1都3県に1カ月間の緊急事態宣言を出しました。今回の感染拡大を招いたのは明らかに政府による人災。旅行や会食を促して密をつくり、専門家らの勧告も無視する。医療機関や検査体制の拡充も、実効性ある対策も打たず、自己責任を押しつけてきた結果です

▼その間に失業や廃業は増え続け、昨年の飲食店の倒産は過去最多に。すでに適切な医療を提供できない、受けられない事態が起き、コロナ感染によって自宅や施設で亡くなる人が急増しています

▼感染を減らし命とくらしを守るためには、検査の強化や十分な補償が欠かせません。そのうえで、いま求められているのは危機を共有し、この難局をともに乗り越えようとする政府の真剣な姿勢でしょう

▼ドイツのメルケル首相は新年の演説で、コロナで家族を失った人びとに心を寄せ、医療従事者らに感謝をのべました。誰ひとり孤立させない決意を込めて。菅首相から聞こえてくるのは無反省と国民への制約、心にとどかない言葉ばかりか…。





緊急事態に合わせコロナ即応医療態勢を(2021年1月7日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 新型インフルエンザ対策特措法に基づき、菅義偉首相が首都圏1都3県を対象に緊急事態宣言を出した。2月7日までの期間中、飲食店に休業や営業時間の短縮を求めるのが柱だ。

コロナ患者受け入れ病院の現場は疲弊している

 これによって政府は急増する新型コロナウイルス感染者の新規発生の抑制を狙う。同時に喫緊の課題となるのが、感染者のなかでも重症患者を着実に救う医療の再構築である。4都県知事には、当事者意識を強く持って医療界への指導力を発揮するよう求める。

 同法による緊急事態宣言は、安倍政権時の昨年4月に次ぎ、2度目になる。記者会見した菅首相は「1カ月後には必ず事態を改善させる」と述べた。この事態を避けたかった首相は、じくじたる思いだろう。しかし再宣言したからには、短期集中で感染抑制を結実させねばならない。

 コロナ患者の治療が一部の病院に集中している。現場は疲弊しており、受け入れていない病院との差が大きい。本来なら感染が落ち着いていた昨年6月ごろに即応態勢を整えておくべきだった。政府・自治体ともすべきことを怠ってきたと言わざるを得ない。

 政府内では首相官邸・内閣官房と厚生労働、文部科学省との連携が依然、ぎくしゃくしている。都県レベルでは知事と地元医療界との意思疎通が十分とはいえない。各都県は公立病院を持つのに、なぜ知事が先頭に立ってコロナ治療を担う病院を整えないのか。

 今からでも遅くない。重症患者の治療に専念する病院、その他のコロナ患者を受け入れる病院、無症状者のための宿泊施設――など症状に応じて割り振り、必要な医療供給を確保すべきだ。現行の法体系で難しいなら、国会の責任で改正を急がねばならない。

 重症患者の治療は看護職に負担が集中しがちだ。院内感染防止の重圧もある。日本看護協会や各地の団体が看護師・准看護師の確保に手を尽くしてほしい。感染爆発を経験した欧米の国には、看護学部生に助けを求めた例がある。日本も非常時である。資格を持ちながら現場に出ていない看護職の復帰も促すべきであろう。

 政府分科会の尾身茂会長は「皆が一体感を持って取り組めば感染者数は下がる」と言うが、心もとない。感染第1波、2波で得た客観データと知見をフルに生かし、根拠に基づく透明性の高いコロナ対策を徹底させるときである。



爆発的な感染拡大(2021年1月7日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆自らの言動に冷静さ持って◆

 年末年始を挟んで人の移動が増し、懸念されていたことが現実となった。県内で6日、80人の新型コロナウイルス感染者が確認された。年明け以降、過去最多を更新し続けていた1日当たりの感染者数だが、同日は突出して多く、河野知事は「衝撃的な数字」と危機感をあらわにした。誰もが目の前にウイルスの脅威が迫っていることを認識し、大切な人を守るための行動を徹底してほしい。

 県はすでに、感染状況が爆発的だとして、都城市・北諸県圏域を感染区分で最も深刻な「感染急増圏域(赤圏域)」に9日から指定することを決定していた。6日、県は同市と三股町に加え、宮崎市内も対象に、酒類を提供する飲食店に時短営業を求めることを明らかにした。対象店舗には昨夏に続く痛手となるだろうが、感染拡大を防ぐには致し方ない。最悪の事態を避けるための踏ん張りどころだ。

 都市部での感染急拡大について専門家は「感染経路不明のおよそ6割が飲食店での感染と考えられる」と分析している。県内でも会食の場は感染拡大の急所になっており、分析に基づく根拠があることを理解してもらい、協力を仰ぎたい。

 県内の感染者の累計は千人に迫り、第3波の真っただ中にある。濃厚接触者らを追跡する行政検査の範囲内であれば感染経路をある程度把握できるものの、医療機関での保険適用検査による確認例が増えれば、感染経路や場所が把握できないままウイルスがじわりと広がっている事態が想定される。

 現在、この保険適用検査による確認例が増えているのが懸念材料だ。飲食の場などで感染し、無自覚のまま家庭や職場にウイルスを持ち込む。こうして市中感染が広がっていくが、この火種が県内全域にあることを意識しておきたい。

 何より避けなければならないのは医療体制が崩壊する事態だ。県内では感染が初確認されて以降、病床や療養施設の拡充に向けた整備が格段に進んだ。しかし、本県はもともと医療資源が脆弱(ぜいじゃく)であり、これ以上感染拡大に拍車がかかれば医療現場は危機的状況に陥る。引き続き、医療体制拡充と医療従事者へのサポートが必要だ。

 今後の感染の動向は一人一人の行動が分岐点になるだろう。長引くコロナ自粛への疲れと慣れで、どこまで人々が行動変容できるかが試される。もう一つ大切なのは、感染者やその家族、医療従事者らが、差別的な言動や偏見の目にさらされないことだ。誰にも感染の可能性はあることを忘れたくない。安心して暮らせる地域を取り戻すため、冷静に自らの言動に考えを巡らせ、行動するときだ。



トリアージの覚悟(2021年1月7日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 コロナの関連で目新しいカタカナの医療用語が飛び交う。ふさわしい訳語もありそうだが、これだけは日本語に置き換えられることはないのではないか。選別を意味するフランス語が語源の「トリアージ」。

 この言葉の深刻な意味を考えると、だれもが直接的な表現を避けたいからだ。災害発生等で多数の患者を収容する時、症状の緊急度や重症度に応じて治療の優先順位を決めること。いわば命の選別。目の前の患者は全員救いたいのが医者だから、例外中の例外だ。

 しかし時間や薬、機材が制限された状況に陥る場合はある。コロナの世界的大流行は、トリアージが世界のどこでも直面すべき現実であることを見せつけた。特に重症者に必要な人工呼吸器は数に限りがあり切実な問題。だれから装着するか、判断の基準策定が急がれる。

 人口の少ない本県は無関係、と考える人は多いかもしれない。しかし患者急増で医療崩壊に直面したイタリアでは、地方都市でもトリアージが行われた。むしろ医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な地方の方が懸念は大きい。県内の新規感染者が昨日80人へ急増した。患者を受け入れる医療現場の逼迫(ひっぱく)度が増している。

 命の選別はありえないと信じたいが、病床の振り分けや治療の優先順位などの選別が行われる可能性はある。納得いかない患者や家族もいるかもしれない。だが県民が覚悟する段階に来ている。混乱を避けるため最悪の事態を想定し現状を理解しておきたい。





寒さを乗り越えて、美しい花が咲かせられるか(2021年1月6日配信『日本経済新聞』ー「春秋」)

 きのう、寒の入りした列島である。公園の池には氷が張り、投げた小石が遠くへ滑っていった。20日の大寒を経て、来月3日の立春まで、厳しい冷え込みに耐える日が続く。加えて、今年は2度目の緊急事態宣言が重なる。身も心も縮みこみがちなひと月となりそうだ。

▼宣言は東京都と埼玉、神奈川、千葉の3県が対象で、飲食店の営業時間のさらなる短縮など限定的で集中的な対策が柱と聞く。それでも全国にさまざまな影響は及ぼう。各地の知事からは感染が流行する地域との往来自粛が呼びかけられている。折から受験シーズン。臆せず実力を発揮できる雰囲気づくりを忘れたくない。

▼この時期の風習に、冷水を浴び神仏に祈る寒垢離(かんごり)や武道の寒稽古(げいこ)がある。心身を引き締め、正月のゆるみを吹き飛ばすのが目的だろう。一方、低温を利用し酒やみそを仕込む寒造りの知恵も伝わる。味がよく、長く貯蔵もできるという。それらにならい、宣言の間に、医療体制の抜本的立て直しに着手しなければなるまい。

▼海外に比べ病床数は多く、感染者が少ないのに現場が崩壊の瀬戸際にある。なぜか。医療資源の適切な配分への策が早急に要るだろう。今はまだ、思いもよらぬが、ひと月後までに、あちこちからウメの便りが届くはずだ。東京の開花は平年で26日、奈良は来月5日である。寒さを乗り越えて、美しい花が咲かせられるか。



緊急事態宣言 注意喚起と行動抑制に効果(2021年1月6日配信『北国新聞』-「社説」)

 政府が首都圏の1都3県を対象に週内にも緊急事態宣言を発令する方針を固めたのは、このまま感染者の増加が続けば、首都圏の医療提供体制が危機的状況に陥り、経済活動にも支障を来たすと判断したからだろう。東京、埼玉、千葉、神奈川の知事から要請があった以上、発令はやむを得ない。

 1カ月程度、午後8時までの営業時間短縮を求めても、全ての飲食店が応じるとは思えず、効果については懐疑的な見方もある。

 それでもウイルスの活動が最も活発化する時期であり、リスク軽減のために石橋をたたく意味はある。新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、感染源について「多くは飲食店によるものと判断している」と述べている。人々が接触を減らそうと注意深く行動するなどのアナウンスメント効果に期待したい。

 石川、富山両県は、比較的感染が抑えられており、緊急事態宣言を出さねばならぬ状況には至っていない。「GoToイート」のプレミアム付き食事券の販売を停止するほどではなく、引き続き飲食業界への支援を続け、営業時間の短縮などは個々の判断に委ねたい。同時に、各店にはあらためて飛沫防止や手洗いなどの衛生管理、人と人との間隔確保の徹底を求めていく必要がある。

 懸念材料は、感染の急増が地方都市でも目立ってきたことだ。菅義偉首相の言葉通り、「限定的、集中的」に行うことで、経済への悪影響を最小限に抑え、2月下旬からのワクチンの接種開始につなげていきたい。

 一部のメディアや野党から、「このままでは医療崩壊は避けられない」「広い範囲で緊急事態宣言が必要だ」などといった、過剰に恐怖をあおるような主張が聞こえてくる。連日、感染者や重症者数をセンセーショナルに伝える報道姿勢も気になる。

 社会・経済活動にブレーキをかければ、かけるほど良いと言わんばかりの主張は危険だ。過剰に安心を求め、ゼロリスクを目指せば、倒産や失業が相次ぎ、自殺者が急増しかねない。安心の空気を醸成するより、首都圏の医療崩壊を防ぐ施策に踏み込んでほしい。



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社説
緊急事態宣言 国と自治体は全力で感染抑制を(2021年1月6日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相が東京と埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、コロナ特措法に基づく緊急事態宣言発令を検討すると表明した。要所とされる飲食の場を中心に対策を強化する方針だ。7日に決定し、期間は1カ月程度を見込む。

 1都3県の知事が宣言の速やかな発令を求めたことを踏まえた。東京で大みそかに新規感染者数が1300人を超えて初の4桁となるなど、首都圏では感染拡大に歯止めがかかっていない。経済への打撃は必至だが、医療崩壊の恐れがあり、宣言はやむを得ない措置だ。国と自治体が連携し、感染抑え込みに全力を挙げる必要がある。

 緊急事態宣言の発令は昨年4月に続き2回目となる。不要不急の外出自粛要請などに法的根拠が生じる。経済重視の菅首相は宣言には一貫して慎重な姿勢だったが、野党や日本医師会に加え知事からも要請され、翻意を余儀なくされた形だ。

 政府内では昨年12月、宣言を再発令する案が浮上したが見送られた。その結果、年末年始も感染が拡大し、首都圏は全国の新規感染者の約半数を占める。政府の判断の遅れが招いた状況で責任は大きい。現場の自治体の対応も甘かった。東京などは飲食店に午後10時までの時短営業を求めてきたが、人出は減らせず、政府からの時短強化の要請にも応じていなかった。

 最初の緊急事態宣言は東京など7都府県を対象に発令後、全国に拡大。政府は幅広い分野での活動自粛を求め、感染者数は減少傾向に転じた。一方、国と地方の権限があいまいで対策に混乱も生じた。今回も政府は1都3県が宣言の再発令を求めたのに対し、逆に飲食店の時短強化を迫った。感染拡大の責任を押しつけ合うような両者の姿勢に不安を覚える。対策の実効性を高めるには、国と自治体の円滑な連携が欠かせない。

 政府は今回、専門家が問題視する飲食機会での感染リスクの低減を最優先し、前回よりも限定的な対策にするという。要所を効果的に抑え、社会経済への打撃を小さくする狙いだろう。ただ、感染拡大を防げなければ元も子もない。状況が改善しない場合、必要に応じて対策を強化すべきだ。

 飲食店は年末年始の稼ぎ時に感染拡大に直撃された。さらなる時短営業は死活問題となる。時短営業に対する自治体からの協力金も不十分で、要請に応じにくい事情もある。事業者の理解と協力を得るためには手厚い補償が不可欠だ。

 現行のコロナ特措法では宣言が発令されても、飲食店などに休業や時短営業を強制できず、協力した事業者への財政支援も明記されていない。政府は18日召集の通常国会に、給付金と罰則をセットにした特措法改正案を提出する。ただ、罰則は私権の侵害になりかねず、導入には慎重であるべきだ。国会で審議を尽くすよう求めたい。



緊急事態宣言再び(2021年1月6日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 新型コロナウイルス対応で、政府は昨年4月に緊急事態宣言を出す際、「最低7割、極力8割削減」を呼び掛けた。人の接触を大幅に減らせば、短期間で感染が収束するとの厚生労働省クラスター対策班の西浦博教授の試算に基づいた

▲宣言前の1日当たり新規感染者数は100人規模に。10人から20人ぐらいにまで減らすにはどうすればいいか。独自に試算した結果、1カ月で減らすには8割ぐらい接触削減が必要と分かった(「新型コロナから命を守れ!」)

▲西浦氏が公表した何も手を打たなければ42万人が亡くなるとの被害推計も反響を呼んだ。実際の死者は大幅に下回って推移し、8割削減の妥当性も検証の余地がある。けれど、医療や検査体制が今ほど整っていなかった春先の段階で、こうしたメッセージが警戒感を強めさせたのは確かだった

▲首都圏に再び緊急事態宣言が出る見通しとなっても、政府から危機感が十分に伝わってこない。感染の勢いは春と比べものにならないのに、菅義偉首相は宣言の検討を否定してきた。遅きに失した方針転換がさらにそう感じさせる

▲飲食店に時短営業を要請するのが柱で、前回ほど幅広い分野での活動自粛は求めないという。経済のダメージを抑える狙いとしても、これで危機が下火に向かうのかどうかは見通せない

▲人々の疲弊が深まる中、宣言の効果をいかに上げるか。収束に懸ける政府の明確なメッセージが聞きたい。



【緊急事態宣言へ】有効対策につなげたい(2021年1月6日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く首都圏1都3県を対象に、政府は新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言発令を7日に決定することになった。

 再発令に慎重だった菅義偉首相が方針を転換した。まん延を止めなければ経済活動の本格的な再開は難しい。判断の遅れを真剣に受け止め、国と自治体が連携して実効性を高めることが求められる。

 緊急事態宣言の発令は昨年4月に続き2回目となる。これまでの間、外出自粛やテレワークなど国民の行動変容は感染拡大防止へ一定の成果を上げ、医療現場では献身的な対応がとられてきた。

 しかし、11月前半には「第3波」の流行が本格化する。政府が重点的対策を呼び掛けた11月下旬からの「勝負の3週間」でも東京都などでは人の動きが減らず、感染拡大は止まらなかった。

 昨年の大みそかには新規感染者が都で初の4桁となったほか、3県とも過去最多を記録した。感染拡大の勢いで医療体制の崩壊が現実味を帯びるようになり、4都県の知事は1月2日、宣言再発令の速やかな検討を要請した。

 感染が拡大する中で政府の対策が後手に回ることには批判が強く、内閣支持率の低迷につながっている。観光支援事業「Go To トラベル」でも全国一時停止は意思決定の遅れが指摘された。

 今回も4知事の要請を受けての発令の検討表明となったことで、菅政権への打撃は避けられそうにない。それだけになおさら、再発令を感染抑え込みの有効な対策につなげるよう着実に取り組むことを求めたい。

 全国の新規感染者のほぼ半数を4都県で占める。首相は、感染拡大が飲食の場で起きている場合が多いとし、「限定的、集中的に行うことが効果的だ」との認識を示した。期間は1カ月ほどとみられ、前回のようには幅広い分野での活動自粛を求めることはない方向とみられる。

 4都県は、午後8時以降の外出自粛や飲食店に午後8時までの時短営業を要請する方針という。都が先に要請した閉店時間の前倒し要請は人の流れの減少につながっておらず、首相は取り組みの不十分さに不満感をにじませた。意思疎通が不十分では宣言の効果を最大化できない。

 給付金と罰則をセットにしたコロナ特措法改正案を通常国会に提出すると首相は明言した。飲食店にしっかりした補償があれば安心感は高まる。一方、営業時間の短縮要請に応じない店への罰則規定の導入には慎重な対応が求められる。

 トラベル事業の全国一時停止は間もなく期限を迎える。首相は再開は難しいとの認識を示した。地域経済へのさらなる打撃が想定される。2020年のコロナ関連の解雇や雇い止めは8万人近くに上った。きめ細かな対応が必要となる。

 コロナ対策にとどまらず、首相が自らの言葉でメッセージを伝えることが国民の理解につながる。説明を軽視してはならない。



すが漏りの社会に仕掛けしコロナ取り(2021年1月6日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 <すが漏りの土間に仕掛けし鼠(ねずみ)取り>(小林妙子)。「すが漏り」は東北や北海道の方言で冬の季語だ

▼軒先や軒下に氷結した雪が暖房の熱や春の訪れで溶けて隙間から流れ込み、壁や天井を伝って屋内に漏れることをいう。雪深い秋田出身という菅義偉首相にはおなじみの言葉かも

▼昨年4月の緊急事態宣言で抑え込んだはずの新型コロナの感染が、じわじわと流れ込み、きのうは過去最多の新規感染者数に。だだ漏れになってしまった

▼経済優先の菅首相も固執していた「Go To トラベル」を先月28日に停止。感染増に歯止めがかからぬ首都圏の知事たちに強く迫られ、渋っていた緊急事態を宣言する腹を固めた

▼年末からの感染者急増はクリスマスごろにパーティーや会食が相次いだことが一因では。「勝負の3週間」「静かな年末年始」の訴えも空振り。自制を求める一方でGoTo事業を続けていれば、政府の本気度が伝わるはずもない。あまつさえ首相自身が多人数で「ステーキ会食」して謝罪する始末だ。国民の緊張感に隙間をつくってウイルスが入り込んだ「すが漏り」である

▼このまま感染拡大が続けば結果的に経済回復も遅れると、首相もここに至って気付いたか。一時的に社会・経済活動を止めてでも、医療体制の崩壊は防がねばならない。<すが漏りの社会に仕掛けしコロナ取り>が効果を発揮しない限り、穏やかな春は訪れまい。



良寛忌(2021年1月6日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 ある秋の夕方、村の子どもたちとかくれんぼを始めた良寛さん。わら小屋に入ると、積まれたわらをかぶってうずくまった。ところがそのまま寝入ってしまい村人に見つかったのは翌朝になってからだった。

 江戸時代後期の僧侶で歌人、書家でもあった良寛和尚。こうしたエピソードは子どものころに本などで見聞きした方も多いのではないか。寺を構えることなく、妻子を持たず、無一物で72年の人生を全うした。きょうは良寛忌。亡くなったのは1831年だった。

 良寛さんのかくれんぼのように、コロナ禍もじっとしている間にいつしか終わっていたなら、どれほどいいことだろうか。年末年始、多くの人が行動を自制したにもかかわらず感染拡大に歯止めがかからない。あすにも関東の4都県に再び緊急事態宣言が出されるという。

 東京や福岡など7都府県に初めて緊急事態宣言が出された昨年4月7日の、国内の一日の新規感染者は361人。全国に対象が拡大された同16日ですら577人だった。連日3千~4千人台で推移する今と比べるとかわいいものに思えてくる。4日続けて30人を超えるなど県内も厳しい状況にある。

 感染急増圏域になった都城市・北諸県圏域だけでなく、また皆が我慢を強いられることになろう。ストレスもたまるが、互いに思いやりを忘れず過ごしたい。良寛さんも「いかなるが苦しきものと人問わば、人をへだつる心と答えよ」との言葉を残している。





首都圏に緊急事態宣言へ 迷わず感染抑止に全力を(2021年1月5日配信『北海道新聞』-「社説」)

 菅義偉首相は、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県を対象に特措法に基づく緊急事態宣言の発令を検討すると表明した。

 週内にも発令し、期間は1カ月程度を軸に調整している。

 感染高止まりで医療崩壊が現実味を帯びる中、1都3県の知事が2日に発令を政府に求めた。

 飲食店への営業時間短縮要請や国の観光支援事業「Go To トラベル」の一時停止の効果が見えず、現行制度で取り得る最終手段を選択するしかなくなった。

 感染抑止よりも経済再生に比重を置いたような政府の対策が行き詰まったと言わざるを得ない。

 宣言の対象にならない道内は感染者が一時期より減少傾向にあるとはいえ、医療現場は逼迫(ひっぱく)している。今は首都圏を中心に感染抑止に全力を傾け、これ以上の地方への波及を止めなければならない。

 宣言発令は昨年4月に続き2度目で、コロナへの慣れが広がる国民の間に危機意識を共有してもらえるかがカギを握る。だからこそ、政府は国民の納得と共感が得られる対策を打ち出す必要がある。

■甘かった首相の認識

 首相は、1都3県の新規感染者数が全国の約半数を占めているとして「より強いメッセージが必要と考えた」と説明した。

 だが、宣言の再発令が求められるほど感染を広げた主な要因は、場当たり的としか言いようのない政府の対応のまずさにある。

 その象徴が、経済を重視する首相の肝いりのGoTo事業だ。

 流行の第2波が懸念されていた7月下旬に見切り発車し、10月に東京発着を加えた。

 感染者が急増しても、地域や年齢などを限定して一時停止と利用自粛を小出しにし、年末年始の全面停止に追い込まれた。

 外出自粛を呼びかける一方で旅行を奨励するちぐはぐな対応では国民に危機感は伝わらない。

 首相が経済再生と感染対策の両立を掲げるのなら、感染の動向に細心の注意を払い、状況に応じて対策の強化に機敏にかじを切る必要があった。

 未知のウイルスへの首相の認識の甘さが事態の悪化を招いた。

■十分な補償が必要だ

 今回の宣言は、教育・文化関連施設なども休業した前回と違い、感染リスクが高いとされる飲食店への休業・時短の要請が中心になるとみられる。

 首相は「限定的、集中的に行うことが効果的だ」と述べた。

 ただ、飲食業はこれまでも地方自治体からの時短要請などで売り上げ減に直面し、疲弊が著しい。

 要請に応じないところも出てくる可能性がある。対策の効果を高めるためにも、十分な経済的補償が欠かせない。

 政府は1都3県に対し、協力金などの財源をしっかりと手当てしなければならない。

 本来であれば、特措法を改正して補償を担保する法的な裏付けを定めておくべきだった。

 しかし、首相はコロナ対策が批判されて内閣支持率が急落するまで重い腰を上げなかった。この間の不作為の責任は重い。

 首相は法改正に関し「補償と罰則はセット」と重ねて強調した。

 ただ、罰則は人権抑圧につながりかねない。国民に幅広い自由を保障する憲法との兼ね合いなどで反対論も根強くあり、慎重な検討が必要だ。

 特措法改正では国と地方の役割分担も課題である。

 今回も4人の知事が首相に緊急事態宣言を要請したのに対し、政府側が逆に飲食店の時短強化を知事側に求め、ぎくしゃくした。

 国と自治体が責任を押しつけ合うのではなく、双方が一致協力して感染対策に当たることができる仕組みこそが求められる。

 与党は来月初めの法改正を目指し、野党側と調整に入った。拙速な議論を避けながら、感染抑止に実効性が上がる法整備を急いでもらいたい。

■解除は状況見極めて

 前回の宣言時は休業要請に応じない店に陰湿な嫌がらせをする「自粛警察」が登場した。社会の分断を助長するような行いは慎まなければならない。

 宣言の期間が高校や大学の入試シーズンと重なる。受験生の不安を解消するため、国や自治体は試験会場の感染対策などの情報をこまめに発信してほしい。

 最初の宣言は感染者数などの目安を満たさない地域が残ったまま解除し、その後の感染再拡大の火種になった。

 政府は専門家の意見を聞いた上で、科学的知見に基づいた解除要件を定め、感染状況をしっかりと見極めて判断すべきだ。



離見の見(2021年1月5日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 世阿弥は、自身の姿を距離を置いて見つめることを「離見(りけん)の見(けん)」と述べた(花鏡)。人生訓話も多い能楽論の中でも頻繁に紹介されるのは、客観視することの大切さに普遍性があるからだろう

▼人は得てして、独り善がりに陥りやすいもの。それは舞台上に限るまい。日常生活においても通用する戒めの言葉は、周囲をいかすことで、自分もいかされる秘訣(ひけつ)を説いたものといえるだろう

▼菅義偉首相がきのう年頭記者会見で、首都圏を想定した緊急事態宣言の検討に入ると表明した。新型コロナウイルスの感染状況はすでに危機的状況だ。街中では「いまさら」という嘆きも聞かれた

▼首相肝いりの政策「Go To トラベル」の停止を巡っても、対応は後手に回った。専門家会議の要請も当初は放置された。日本学術会議会員の任命拒否問題など強引な姿勢も目立つ政権に、調整役や意見番の不在を懸念する声が与党内にもある

▼能の主役のシテが演技を終え幕に戻ると、後見が鏡の前に誘導するそうだ。どのような姿で謡い、舞っていたのかを確認するという。シテ方観世流能楽師の二十六世宗家、観世清和さんは「己の姿を見る。これほど厳しい現実を突きつけられる世界はありません」と述べている

▼世阿弥は「離見」について「見所同見(けんじょどうけん)」とも言った。見所とは観客席のこと。お客の視線が有益であることは、現代の政治にも当てはまる。



緊急事態、再発令へ/国は自治体と一体で収束を(2021年1月5日配信『河北新報』-「社説」)

 止まらない首都圏の新型コロナウイルス感染拡大に、政府が切り札をようやく切る。

 菅義偉首相がきのうの年頭記者会見で、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県にコロナ特措法に基づく緊急事態宣言発令の検討に入ると述べた。

 緊急事態宣言は、小池百合子東京都知事ら1都3県の知事が今月2日に求めていた。感染対策と経済活動の両立を掲げる菅首相は発令に慎重だった。しかし、感染者が連日3000人を超える事態に方針転換せざるを得なかった。

 不要不急の外出自粛要請に法的な根拠が生じるが、従わなくても罰則などの強制力ははない。

 宣言発令は2度目になる。昨年4月7日、東京など7都府県に発令し、その後全国に拡大。段階的に解除し、5月25日に全面解除した。

 強制力がないとはいえ、国が国民の権利を制限する命令がたびたび出ることは望ましくない。だが、目の前の火事を消すために宣言もやむを得まい。

 ただ、事ここに至った要因については、政府に猛省してもらわなければならない。

 新型コロナ「第3波」が拡大しつつあった昨年11月12日、政府の対策分科会の尾身茂会長は「このままでは一人一人の努力では対策が追い付かなくなる」と警告していた。

 それでも菅首相は批判の多かった観光支援事業「Go To トラベル」を押し通すなど、感染対策でちぐはぐな姿勢が目立った。「Go To」は感染拡大を受けて12月28日に一時停止に追い込まれた。

 緊急事態宣言についても、年末の記者会見で「出すような状況にない」と述べていたのに、4知事の要請を受け翻した。またも後手に回ったと言わざるを得ない。

 国と自治体の足並みの乱れも気になる。飲食店の営業時間短縮を巡って、さらに強化したい国と、消極的な東京都との間でさや当てをするような場面があった。

 今は感染抑止に集中する時だ。国が先導して自治体と協力体制を築き、対策に力を合わせるべきだ。

 第3波で宮城県や仙台市、県と市の医師会が「危機宣言」を出すなど、全国の首長がさまざまな形で感染防止を訴えてきた。それでも住民に浸透したとは言い難い。

 最も国民にメッセージを届けられるのは首相だったはずだ。しかし、菅首相は記者会見を積極的に開いてこなかった。きのうの会見で、緊急事態宣言を検討する理由について「より強いメッセージが必要と考えた」と述べたが、発信を怠ってきたことの裏返しである。

 危機的な事態の中で国民に協力を求めようとするならば、リーダーの説得力のある言動と、それに伴う信頼感がなければならない。これまでの姿勢を改め、心に響く言葉を発信することを求めたい。



緊急事態宣言へ 感染拡大、抑制できるか(2021年1月5日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相が緊急事態宣言の検討に入ると年頭記者会見で表明した。宣言は新型コロナ特別措置法に基づき、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県が対象となる見通しだ。

 1都3県では感染状況が悪化し、医療体制も逼迫(ひっぱく)。4知事は2日、発令を政府に要請していた。これを受けた対応とはいえ、政府の対策が後手後手に回った揚げ句の遅過ぎる判断だ。

 宣言について菅首相は、近く発令するとみられる。だが会見では発令日や期間を言明しなかった。宣言検討の理由としては1都3県の深刻な感染状況を挙げ、「より強いメッセージが必要と考えた」と述べた。

 しかし、肝心の年頭記者会見で言葉を尽くしたとは思えない菅首相の説明では、危機感が国民に十分に伝わったかどうか疑わしい。「強いメッセージ」とは言い難いのではないか。

 緊急事態宣言にはこれまで慎重だっただけに、急激な方向転換だ。菅首相は感染状況などをもっと詳細かつ具体的に国民に示し、多くの理解が得られるよう説明すべきだったのではないか。

 1都3県の現状は極めて厳しい。東京都では4日、重症者数が過去最多を記録。3日の都の新規感染者は経路不明が6割を占め、1都3県の新規感染者の合計は全国の約半数にも達した。

 万一、感染爆発に至れば医療体制が崩壊、人々の命を守ることが難しくなるのは明らかだ。取るべき対策が遅れれば新規感染者や重症者、死者がさらに増える恐れもある。菅首相はこれまでの対応の遅れを率直に認め、感染の拡大阻止と収束に全力を挙げなければならない。

 宣言に伴う措置としては、飲食業を中心に限定的に実施する考えを示した。「経路不明の感染原因の多くは飲食によるもの」だからだという。だが飲食業に絞った対策だけで十分な効果を上げられるのか疑問だ。

 経済への打撃を避けるために対策を小出しにするのでは、感染抑制は難しいだろう。対象業種を飲食業に限定するのが適切なのかどうかを含めて、政府のコロナ分科会など専門家の意見を早急に聞くべきだ。

 営業時間短縮に伴う協力金などの経済支援の内容についても、会見では言明しなかった。明確な情報が十分伝わらないため、事業者が様子見して、その間に感染が拡大するようなことは避けねばならない。

 菅首相は経済重視のあまり、感染防止対策を軽視しがちなのではないかとの懸念もある。観光支援事業「Go To トラベル」の全国一斉停止も、分科会の再三の提言などを受けた判断だった。

 これまでのコロナ対策を見れば、経済再生と感染防止の両立は確かに難しい。今は、経済よりも「命」を守ることに全力を尽くすべきだ。



首都圏に緊急事態宣言(2021年1月5日配信『東奥日報』-「時論」/『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

コロナ収束へ背水の陣を

 菅義偉首相は新型コロナウイルス感染拡大を受け、首都圏の1都3県を対象に2回目の緊急事態宣言発令の検討に入ると表明した。その理由は、首都圏では飲食の場で感染が拡大し、年末の人出が減らず正月も感染者が多かったためとした。

 だが年末年始の人出増は容易に予想できたはずだ。全国で1日の新規感染者が4千人を超え、知事から要請を受けて正月休み明けに発令検討を決めたのは明らかに後手だ。飲食店の時短営業強化を巡っても国と都の歩調の乱れで対応が遅れた。国と自治体はタッグを組み直し、コロナ収束へ背水の陣で当たるべきだ。

 首相は年末の記者会見で、都内の人出が多く「このままではさらなる感染拡大が避けられない」との認識を示したが、緊急事態宣言は出す状況にないとした。政府の対策分科会が求める飲食店の時短営業強化についても罰則や補償を盛り込むコロナ特別措置法改正が先との見解を示し、「静かな年末年始」を国民に要請するにとどまった。甘い状況判断だったと言われても仕方あるまい。

 その後、年末に1日の新規感染者が全国で4520人、東京都で1337人と過去最多を記録。年明けもほぼ毎日3千人を超え、首都圏で全国の半分を占める現状だ。特に東京は感染経路不明が6割で、そのほとんどは飲食の場での感染と専門家が指摘する。若い世代を中心に街中の人出を抑えられなかった点では自治体側にも不備がある。

 東京都などは飲食店に午後10時までの営業時間短縮を求めてきたが、さらなる短縮要請については「協力いただければいいが、現実は厳しい」(小池百合子都知事)と、営業補償や罰則を強化しなければ実効が上がらないとして見送っていた。

 これに関し首相は「時間短縮をした北海道、大阪は結果が出たが1都3県は感染者が減らない」と自治体の不備を指摘。1都3県知事が西村康稔経済再生担当相に宣言発令を要請した際も、逆に宣言に先立つ時短営業強化を改めて求められ、ようやく8時への繰り上げを決めた。国、自治体とも経済活動との両立にぎりぎりまで配慮したのだろうが、感染拡大の責任を押し付け合うような姿は国民にとって不毛だ。

 緊急事態宣言は、首相がコロナ特措法に基づき期間と区域を定めて発令し、対象の都道府県知事は不要不急の外出自粛や施設の使用制限を要請・指示できるようになる。政府の分科会が策定した判断指標は、感染状況や医療逼迫(ひっぱく)状態のデータに基づき4段階のうちステージ4(爆発的感染拡大)に達すると宣言発令を検討するとしている。

 発令の権限は国にあるが、どのステージにあるかの判断は実質的に知事に委ねられている。このため国と自治体で責任の所在が曖昧になりがちだが、見方を変えれば国と自治体が一体で判断し行動することがこれ以上に期待される制度はない。

 英国などで広まったウイルス変異種の侵入を止める入国規制強化も重要課題になってきた中、今夏には1年延期になった東京五輪・パラリンピックが控える。首相は「人類がコロナに打ち勝った証し」として実現への決意が固いが、ワクチン接種も早くて2月下旬からで、宣言発令により選手の練習環境に制約が増せば開催に再び暗雲が漂う。国、自治体はまなじりを決して臨んでほしい。(古口健二)



「轍(てつ)を踏む」(2021年1月5日配信『東奥日報』-「天地人」)

 「轍(てつ)を踏む」とは、前の人と同じ失敗を繰り返すことを戒めるときに使う言葉だが、雪国のわだちは功罪を併せ持つ。雪にすっぽり埋まった青森市では、車で脇道に入っていくのは覚悟が要る。わだちどおりに走るのなら問題は少ない。しかし、対向車とすれ違う際などに、わだちから抜け出ようとして悪戦苦闘する羽目になる。

 新型コロナの感染状況は国によって濃淡はあるものの、欧米などでは経済再生を急ぎすぎて再拡大に陥り、ロックダウン(都市封鎖)を強いられているところも多い。その轍を踏んでしまった日本ではきのう、菅義偉首相が首都圏1都3県を対象とした緊急事態宣言発令の検討を表明した。

 昨年4月7日の緊急事態宣言は東京など7都府県が対象で、後に全国へ拡大。順次解除された5月25日までに教育、文化、スポーツなど各分野で活動が止まり、経済に大打撃となった。

 その反省から今回は「限定的、集中的」に実施するようだ。専門家が感染対策に効果が高いという飲食時のリスク回避を軸に、昨年より自粛要請の対象を絞り込む方向だ。

 県内でも弘前保健所管内の県立高校でクラスター(感染者集団)が発生し、複数の学校に波及している。三沢市の飲食店2店で判明した感染も顧客名簿などがないため、感染拡大の不安がある。今回の緊急事態宣言にあわせ、改めて気を引き締めたい。



首相が緊急事態宣言へ もっと明確なメッセージを(2021年1月5日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、菅義偉首相が東京都など首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言を再発令する考えを表明した。

 首相は「より強いメッセージが必要だ」と述べた。だが、記者会見では発令に伴う具体的な施策について言及を避けた。これで国民にメッセージが届くだろうか。

 大みそかの31日に東京都の1日当たりの新規感染者数が1300人を超え、4都県で全国の感染者数の半数以上を占めた。重症者も増加傾向が続き、医療崩壊の懸念が強まっている。

 対策が急がれたが、一時は知事による営業時間短縮要請の強化が先か、政府の宣言発令が先かという、責任の押し付け合いのような状況が生じた。

 年明けに知事側が要請強化を受け入れる姿勢を示したことで、政府は発令に追い込まれたように見える。

目立つ責任転嫁の姿勢

 「第3波」は昨年11月に始まった。この間、対策を講じる十分な時間があったのにもかかわらず、政府の対応は鈍かった。

 旅行需要喚起策「GoToトラベル」の見直しに後ろ向きで、11月末からの「勝負の3週間」は失敗に終わった。その後の追加対策も中途半端で、首都圏の感染拡大は続いている。

 判断の遅れの背景には、首相が主導した「GoToキャンペーン」へのこだわりや、今夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催問題があったのではないか。感染対策で先手を打つことなく、再発令せざるを得ない感染状況を招いた責任は重い。

 宣言発令にあたっては、実効性を高めることが重要だ。

 今回、政府は自粛要請の対象を飲食店を中心に絞り込む考えのようだ。だが、ここまで感染が広がった以上、人の動きの抑制も検討せざるを得ないだろう。

 安倍晋三前政権も菅政権も、専門家の意見を軽視する場面が目に付いた。今回は、専門家の意見を十分に聞いて判断すべきだ。

 新規感染者がどの程度減少するまで宣言を続けるのか、あらかじめ基準を示しておくことも欠かせない。夏の「第2波」ではピークを越えても感染者数が十分には減少せず、「第3波」が拡大する要因の一つとなった。

 4月に宣言が発令された際は、国民の危機感が強く協力を得やすかった。今回は要請の効果が上がりにくくなっているとも指摘されている。

 もう一段の協力を得るには、どのようにして感染拡大を収束させようとしているのか、明確な戦略を示さなければならない。

 何より大切なのは政治への信頼だ。昨年、自粛要請の最中に首相や自民党の二階俊博幹事長が会食に参加して批判を浴びた。こうした姿勢では反発を招くだけだ。

国会はただちに召集を

 宣言と合わせてコロナ対策の特別措置法の改正議論も進めなければならない。

 全国知事会はこれまで、休業や営業時間短縮の要請に応じた店への協力金制度と、応じなかった店への罰則規定を盛り込むよう求めてきた。

 首相は昨年末にようやく、特措法改正に取り組む考えを示した。与野党は18日召集予定の通常国会で改正案を優先的に審議することで合意している。

 しかし、感染状況が深刻化する中、2週間も待つ余裕はない。政府・与党はただちに召集して、議論を始めるべきだ。

 気がかりなのは、首相が記者会見で「給付金と罰則をセット」にする考えを示したことだ。

 給付金は、既に一部の都道府県で導入されており、政府が財政支援している。これを法律に位置づけることについて、与野党の隔たりは小さい。

 だが、罰則は私権の制限に関わる。専門家による政府の分科会でも賛否両論が出ている。首相はこれを踏まえ慎重に検討する姿勢を示していたにもかかわらず、突然方針を変えたように見えるのは不可解だ。

 まずは与野党で早期に合意できるところから改正を始めるべきだ。罰則導入の是非で与野党が対立し、法改正の議論を停滞させてはならない。

 正念場を乗り切るためには、首相の強いリーダーシップが必要だ。その前提となるのは、国民からの信頼の回復だ。



米国の歌手フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」は…(2021年1月5日配信『毎日新聞』-「余録」)

 米国の歌手フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」は世界で最も多くカバーされた歌のひとつだ。そんな万人に愛されている不朽の名作をシナトラは「好きではなかった」という。死後、娘が明かしている

▲歌詞は、死期が近づく男が人生を振り返り、自分の信じた道を歩んだことに間違いはなかったと述懐する。「身勝手だ」と考えていたようだ。後年は家族への罪の意識も漏らしていたというから華やかな人生にも悔いはあったのだろう

▲「シナトラ・サミット」と呼ばれた主要国首脳会議もあった。ソ連崩壊後の1992年のこと。米国は湾岸戦争疲れから内向きになり、欧州は統合に躍起で、日本は北方領土返還への支持獲得に奔走した。「みんな勝手にわが道を行く」と外交官の間で話題になったのが由来だ

▲この人の「道」は真っすぐなのか、曲がりくねっているのか。菅義偉首相が首都圏1都3県を対象に緊急事態宣言の再発令を検討すると突然表明した。「GoToトラベル」の全国一斉停止に続く遅すぎた政策転換である

▲一本筋が通っていれば柔軟対応ともいえよう。それがないから行き当たりばったりに映る。緊急事態を口にしながら瞬発力を欠く。そんな政治姿勢に国民が不信を抱くのも当然だ

▲コロナ禍克服の道のりは長く遠い。「この道しかない」という傲慢を捨て、国民に理解を得られる道筋を描き、臨機応変に対応できる別の道もつくっておく。今更とはいえ、これが定石だろう。シナトラに聞くまでもない。



緊急事態宣言へ 危機感の共有で感染症抑えよ(2021年1月5日配信『読売新聞』-「社説」)

◆雇用や生活を守る施策が必要だ◆

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない以上、強力な措置を取ることも必要となろう。生活や雇用に目配りしつつ、感染抑止に全力を挙げねばならない。

 菅首相が年頭の記者会見で、緊急事態宣言の再発令を検討する意向を示した。感染者の多い東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象にする方針だ。

 感染が再拡大した昨秋以降、政府や自治体は、不要不急の外出自粛などを呼びかけてきた。だが、首都圏では年末年始も、繁華街の人出があまり減らなかった。

◆医療提供体制の充実を

 首相は「状況を深刻に捉え、強いメッセージが必要だと考えた」と述べた。宣言を発令することで、より多くの人に危機感を共有してもらう狙いがあるのだろう。

 宣言は、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づくものだ。昨年4月に、安倍前首相が東京、大阪など7都府県にまず発令し、全国に対象を拡大した後、5月に順次解除して以来である。

 発令されれば、対象地域の知事は、明確な法的根拠のもとで、住民に外出自粛を要請したり、事業者に営業時間の短縮などを求めたりすることができる。

 現行法では原則として、様々な要請に従わなくても、罰則はない。具体的な対応は、住民や事業者に委ねられている。

 命と健康を守るために、社会全体で協力することが大切だ。マスクの着用や「3密」の回避といった基本的な対策は無論、行政の要請を踏まえて、感染者数を減らす努力を続けたい。

 新規感染者数や重症者数は増加傾向にあり、各地の病床は逼迫ひっぱくしている。感染力が強いとされる変異種も見つかった。

 医療提供体制を充実させることは急務である。政府は、患者の治療にあたる医師や看護師に十分な手当を支給するとともに、病院への補助金などを手厚くし、より多くの医療機関に患者の受け入れを求めていくべきだ。

 既に営業時間の短縮要請に応じて、ぎりぎりの経営を迫られている飲食店などは多い。仕事や収入を失えば、生活が立ちゆかなくなる人もいるだろう。倒産や失業者を増やさないことが肝要だ。

◆事業者支援を手厚く

 政府は、予備費などを活用して自治体の財源を確保し、事業者の資金繰りを支えねばならない。雇用調整助成金の支給額を増額する特例措置のさらなる延長や、事業を支えるための持続化給付金の再交付なども検討に値しよう。

 昨春の緊急事態宣言の際、首都圏の知事らは、飲食店や大型店、遊興施設など多くの業種に休業や営業時間の短縮を要請した。

 首相は記者会見で、今回は宣言を発令しても、自粛などを求める対象は、主に飲食店とする考えを示唆している。個人消費が落ち込み、景気がさらに悪化することを懸念しているのだろう。

 経済を回復させるには、感染を抑止し、安心して日常生活を送れるようにすることが重要だ。

 様々な策を講じる権限は知事にあるとはいえ、政府が責任を持って舵かじ取りをしなければ、広範な協力は得られまい。国は自治体と緊密に協議し、休業や営業時間の短縮を要請する業種や期間などを早急に示すべきだ。

 学校の一斉休校は求めないという。一方、受験シーズンが本格化し、今月16、17日には、大学入学共通テストも行われる。緊急事態宣言下での入試を混乱なく実施することが課題となろう。

 新型コロナの流行初期だった昨春は、強制力のない自粛要請にも、多くの人が従った。だが、今はコロナ禍への「慣れ」や、「自粛疲れ」も広がっている。

◆国のメッセージが大切

 行動制限や休業要請への理解を広げるには、政府が明確な方針を示し、国民に協力を呼びかけていくことが不可欠だ。菅政権の感染症対策は後手に回ってきた。専門家と意思疎通を重ね、迅速な対応を心がけてほしい。

 首相は記者会見で、ワクチン接種を2月下旬から実施する方針を強調した。円滑な接種に向けて、実施主体となる市町村のほか、都道府県、医療機関としっかり連携してもらいたい。

 首相は、特別措置法の改正案を通常国会に提出する考えを示した。事業者への給付金と、休業要請などに従わない人への罰則をセットにする内容だという。

 緊急事態宣言の実効性を確保する意図なのだろうが、罰則を設けて私権を制限することが妥当なのか。慎重に検討すべきである。



緊急宣言発令へ 「一点突破」では不十分だ(2021年1月5日配信『産経新聞』ー「主張」)

 菅義偉首相は4日の年頭会見で、新型コロナウイルスの感染拡大が年を越して深刻化している東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県について、緊急事態宣言発令の「検討に入る」と表明した。

 菅首相は、経路不明の感染の多くは飲食が原因だと指摘し、「飲食の感染リスク軽減を実効的なものとするため、早急に内容を詰める」と述べた。

 昨春、当時の安倍晋三首相が発令した緊急事態宣言下で社会・経済活動が幅広く自粛対象となった。それでも宣言解除までに約2カ月を要した。これに対し菅首相は飲食に的を絞り、限定的、集中的な「一点突破策」で首都圏の感染拡大を抑えたい考えを示した、といえる。

 飲食を対象とした実効的な対策は必要だ。一定の効果は期待できる。ただし、飲食店の営業時間短縮(時短)が感染拡大の抑止につながったとみられる北海道や大阪でも、いまだ感染の収束には至っていない。

 昨年夏の第2波では、いわゆる「夜の街」を対象に集中的な対策が実施され、その効果はあったものの市中感染を止めることはできなかった。

 限定的、集中的な対策だけでは、短期間に新型コロナウイルスを抑え込むことはできないことを、これまでの経験から認識する必要がある。

 飲食店の時短以外では、大都市圏から地方への、これ以上の拡散を止めることが重要だ。菅首相は会見で、緊急事態宣言を発令すれば「Go To トラベル」の再開は困難という認識を示したが、再開できる状況にないことは明らかである。

 地方への拡散を防ぐには、人の移動を奨励するトラベル事業の停止だけでなく、首都圏と地方の人の往来を制約する強い手立てが必要ではないか。

 一方、菅首相は、2月下旬にはワクチン接種を開始できるよう準備を進めると明言した。

 ワクチン接種の早期実行とともに喫緊の最重要課題は、ウイルスの変異株に対する水際対策の徹底である。変異株の拡散を許せばすべてのコロナ対策が無駄になりかねない。

 菅首相には緊急事態宣言の発令時に、より強く、具体的なメッセージを、国民に向けて発信してもらいたい。



収束のゴールへ(2021年1月5日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 オーストラリア国歌の歌詞の一部が、今年1月1日から変わった。「我々は若く(young)て自由だ」から「我々は一つ(one)で自由だ」に改められた。

 ▼1984年に「アドバンス・オーストラリア・フェア」が正式に国歌に定められて以来、初めての変更となる。確かに18世紀後半に英国の入植が始まり、20世紀に建国したという意味では若い国である。もっとも6万年前から暮らしてきた先住民からは、自分たちの長い歴史を冒涜(ぼうとく)するものだと批判が強まっていた。

 ▼「コロナ禍に国民が団結して立ち向かえたことを祝する、という意味もある」。スコット・モリソン首相は1日の記者会見でこう述べた。欧米諸国と比較してウイルスの感染拡大を抑え込んでいる現状に自信をのぞかせていた。

 ▼「一つ」といえば、すぐ思い浮かぶのが、一昨年の新語・流行語大賞の年間大賞になった「ONE TEAM(ワンチーム)」である。2016年にラグビー日本代表のヘッドコーチに就任したばかりのジェイミー・ジョセフさんが、チームのスローガンとして発表したものだ。その言葉通りに一体感を強めたチームは、W杯8強の快挙を成し遂げ、ワンチームは日本の代名詞となった。

 ▼菅義偉首相は昨日の年頭記者会見で、新型コロナの感染拡大を受けて、東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県に週内にも緊急事態宣言を発令する調整に入ったと述べた。医療体制の逼迫(ひっぱく)は深刻である。一方休業を求められる飲食店からは怨嗟(えんさ)の声が上がる。

 ▼異論、反論が入り乱れる中、菅首相は政府をワンチームにまとめて収束のゴールをめざさなければならない。そのリーダーシップがあってこそ、自粛生活に疲れ果てた国民もワンチームになれる。



緊急事態再宣言へ 心に響く誠実な言葉で(2021年1月5日配信『東京新聞』-「社説」)

 菅義偉首相はきのう年頭の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、緊急事態宣言を再発令する検討に入ったことを明らかにしました。2021年、緊張の中での仕事始めです。
    ◇    ◇
 例年ですと1月4日には、首相は閣僚を引き連れて三重県の伊勢神宮参拝に出掛けます。

 しかし、観光支援事業「GoToトラベル」を停止し、外出自粛を呼び掛ける中、大挙して出掛けるわけにいかないのでしょう。
 首相は参拝を見送り、年頭会見も伊勢神宮ではなく、東京都内の首相官邸で行いました。

◆政府の判断に後手の印象

 「東京都と首都3県では3が日も感染者数は減少せず、極めて高い水準だ。1都3県で(感染者数が)全国の半分という状況を深刻に捉え、より強いメッセージが必要だと考えた」

 首相は会見で、特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を検討する理由をこう説明しました。

 首相は12月31日には記者団に「まず今の医療体制をしっかり確保して、感染拡大回避に全力を挙げることが大事だ」と発令に慎重姿勢を示したばかりです。

 一転して発令の検討に入ったのは、東京都の新規感染者数が31日に過去最多の1337人を記録して、小池百合子東京都知事、黒岩祐治神奈川県知事、大野元裕埼玉県知事、森田健作千葉県知事が年明け2日にそろって、西村康稔経済再生担当相に緊急事態宣言の発令を要請したからでしょう。

 私権の一部制限が可能になる緊急事態宣言の発令には慎重であるべきですが、菅内閣の判断には後手に回ったり、受け身だったりの印象があります。

 のちに謝罪したものの多人数の会食を続けたり、GoToキャンペーンの一時停止に慎重だったりと首相がどこまで危機感を持っていたのか、強い疑問も残ります。

◆強いメッセージでなく

 現行の特措法では、宣言に基づいて施設利用の制限や医薬品、食料などの収用、医療施設開設のための建物や土地の強制使用ができる権限が知事に与えられます。

 ただ、現行の枠組みでは、感染源の大部分を占めるとされる飲食関係の感染リスクを低減することは難しいとの指摘があります。

 首相が、飲食店などに休業を強制するため「給付金と罰則をセットにし、より実効的な対策をとるために特措法(の改正案)を通常国会に提出する」方針を表明したのもこうした認識からでしょう。

 経済活動の自由が認められている民主主義社会において、罰則を伴って休業を強いられるのは、かなり強権的な措置です。命を守るために必要だとしても、議論には慎重を期さねばなりません。

 問題は、なぜそのような措置を検討せざるを得ない深刻な事態を招いたか、ということです。

 首相が感染拡大に手をこまねいてきたとまでは言いません。それなりに危機感も表明しています。しかし、国民の心には響いてこないのです。

 首相は「強いメッセージ」が必要と言いますが、国民の共感と協力を得るために必要なのは「強いメッセージ」ではなく「誠実なメッセージ」ではないでしょうか。

 いくら間違いを避けるためでも自分の心からの言葉でなく、手元の紙に目を落として読み上げるのでは心に響くわけがありません。

 日本学術会議会員候補のうち六人の任命を拒んだ問題とも通底します。「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から判断した」と述べるだけで国民の理解が得られると考えるなら、国民を愚弄(ぐろう)しているとしか思えません。

 加えて国会で誠実に答弁せず、国会をなかなか開かなかったり、延長せず閉じたりと、国民を代表する国会を軽視する姿勢が対応を遅らせてもいます。

 罰則付きの特措法改正には賛否がありますが、国会をもっと早く開けば、より迅速に対応できるはずです。法案の成否は別にして議論を通じて問題点が可視化されれば、国民の意識も高まるのではないか。首相は、その機会をも失しています。

◆民主主義再生のために

 国会議員から首相を指名する議院内閣制の日本では、主権者たる私たち国民も、こうした首相を選んだ責任から逃れられません。
 今年は10月に任期満了となる衆院議員の総選挙が行われます。東京では都議選が、党員に限りますが自民党総裁選もあります。

 選挙は民意を表明する最大の機会です。逃す手はありません。

 私たち国民に誠実な言葉で語りかけ、政策の実現に努める政治家を選びたい。それが傷ついた民主主義を再生し、私たちの暮らしもよくするはずです。コロナ禍の真っただ中で始まった2021年、有権者の選択も問われます。



松の内は、東京などで7日まで、関西では古くは15日までをさ…(2021年1月5日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 松の内は、東京などで7日まで、関西では古くは15日までをさしたという。明けるとともに、門松を片付けて、正月気分とお別れすることになる。<松過ぎの又(また)も光陰矢の如(ごと)く>高浜虚子。いつの年も松の内を過ぎると、新年の雰囲気が矢のように遠ざかっていくものだろう

▼今年はいつもの年と違うと覚悟はしていたが、もともと薄い正月の気分が、早々と去ったかのようである。仕事始めの昨日、東京、神奈川、千葉、埼玉の四都県にまた緊急事態宣言が出される見通しとなった

▼昨年のあの重苦しい日々を思い出した方は多いだろう。今回対象に入っていない地域でもまったくのひとごとと思う方はいないはずだ。一歩後戻りするような感覚も列島にあるのではないか

▼感染者の増え方と医療の圧迫を考えれば、措置は納得できる。むしろ遅すぎたのではなかったかとも思えてくる

▼昨年から、かたくなに緊急事態宣言に慎重姿勢だった菅義偉首相は一転して、再発令に傾いた。方針転換について、決して後手に回っているわけではない、と思わせる言葉や説明が、記者会見にはなかったように感じる

▼中国の古典「菜根譚(さいこんたん)」には大切なことを成し遂げるために虎に乗るような勢いに任せれば成就しない、「一歩引くことを考えよ」とある。一歩後戻りはつらいが、踏ん張り時であろう。頑張りを支える言葉や説明もほしい。



緊急事態再発令 危機感伝わらぬ首相会見(2021年1月5日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相がきのうの年頭記者会見で、首都圏の1都3県を対象に新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言発令の検討に入ると表明した。

 安倍晋三前政権下の昨年4月に続く発令となる。対象の東京と埼玉、千葉、神奈川の4知事が2日前に発令を要請していた。

 首相は経済を重視し再発令に一貫して慎重だった。感染者急増で医療が逼迫(ひっぱく)する現実にかじを切らざるを得なくなった格好だ。

 会見では、新規感染者が1都3県で全国の半数を占め、主に飲食の場で感染が広がっている状況を指摘。「より強いメッセージが必要と考えた」と説明した。

 一方で、発令の時期や期間、自粛要請をする範囲や内容を具体的に示さなかった。「限定的に、集中的に行うことが効果的だ」と述べるにとどめている。

 どんな職種が影響を受けるのか、文化やスポーツはどうなるのか、教育や福祉の現場はどうすればいいのか。首相の口からは全体像すら語られない。

 感染状況も「厳しいと認識している」とするだけだ。

 これでは国民に危機感が伝わらない。後手に回った対応を慌てて埋め合わせ、その責任を曖昧にしているとの印象が拭えない。

 政府や自治体は第3波が深刻化する昨年11月から「勝負の3週間」や「静かな年末年始」を掲げ、緊急事態宣言再発令となる事態を避けようと呼び掛けてきた。

 奏功せず、感染者は増えている。観光支援事業「GoToトラベル」を巡る混乱や、政府と自治体が責任を押し付け合うようなやりとり、首相らが発する言葉の貧弱さが、国民に不信を招き、反応を鈍らせているのではないか。

 国と自治体、国民が一体となって取り組むには、緊急事態宣言の具体的な中身や、解除の目安を早急に示す必要がある。リーダーが明確で具体的な言葉で国民に理解を求める努力も欠かせない。

 緊急事態宣言は感染拡大を封じ込める最後の手段だ。初発令は最長49日間に及び、全国の新規感染者を1日50人以下にまで抑えた。

 その後、経済回復を図るため制限の緩和を急いだことが、第2波や第3波につながっている。再発令する以上は、同じ過ちを繰り返さない覚悟で臨むべきだ。

 菅首相は、コロナ特措法改正案について給付金と罰則をセットに通常国会に提出する方針も示した。私権を制限する法律だ。罰則は両刃の剣でもある。国会には納得のいく検証と審議を求めたい。



ウイルス対策 「宣言」実効性あるものに(2021年1月5日配信『新潟日報』-「社説」)

 国民の行動を制限し、経済にも大きな打撃を与える。緊急事態宣言は、感染拡大を抑えるための最終的な手段といえる。

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、菅義偉首相は4日の年頭会見で首都圏の1都3県を対象に宣言発令の検討に入ると表明した。

 再発令するなら、宣言の実効性をしっかりと確保し、感染を確実に封じ込めたい。

◆首相は丁寧な説明を

 そのために欠かせないのが国民の協力だ。菅首相は宣言の再発令で事足れりとせず、国民の胸に届く言葉で、丁寧に宣言の必要性を説明してもらいたい。

 政府は諮問委員会に諮って基本的対処方針を改定し、週内にも宣言を再発令する。

 東京都では昨年末に1337人と過去最多の感染を確認した。埼玉、千葉、神奈川の3県でも最多となる日が続き、この2日には4都県知事が宣言の発令を速やかに検討するよう政府に求めた。

 三が日も感染は止まらなかったため、首相は「より強いメッセージが必要だ」として宣言を検討する判断をしたという。

 4日の会見では具体策について明確にしなかったが、首相は飲食の場で感染拡大が起きているとして「限定的、集中的」に対策を講じる考えを強調した。

 首相はこれまでの感染拡大の経験から必要な対策は学んでいるとした。一方で「限定的」との強調が目立ち、中途半端な対策にならないか気掛かりだ。

 昨年12月にも首相は飲食店の営業時間短縮が「最も効果的」と力説し、宣言の再発令には一貫して慎重だったからだ。

 政府が手をこまねいている間に「第3波」の感染者は右肩上がりに増え、悪化の一途をたどった。

 感染拡大のきっかけになると指摘された観光支援事業「Go To トラベル」を年末に全国で一時停止したものの、首相のメッセージは新年会の自粛などを呼び掛けるにとどまっていた。

 残念なのは、国民に協力を求める場である4日の会見で、首相が原稿を棒読みし、質問に正面から答えなかったことだ。これで有効なメッセージとなるだろうか。

◆首都圏で抑止せねば

 感染「第1波」が広がった昨年4月7日、政府は緊急事態宣言を首都圏をはじめとする7都府県に発令した。

 ただ、この感染は4月1日ごろがピークだったことが後に明らかになった。宣言発令の遅れは結果として全国への流行拡大を招き、政府は同16日に対象地域を全都道府県に拡大した。

 それを踏まえれば、首都圏で確実に抑え込めるかが、全国への拡大を防ぐ鍵を握るといえる。

 「首都圏の感染が収まらないと地方への余波は防げない」と本県の花角英世知事が語るなど、知事の間からも理解を示す声が相次いでいる。

 前回は、5月の大型連休を挟んで休業要請や県境をまたぐ移動の自粛が求められた。経済活動が停止し、生活困窮者が急増した。

 政府には、後手に回っては経済的な損失も膨らむということを教訓としてもらいたい。ここで歯止めをかけなくてはならない。

 宣言の実効性確保に向けて、政府は新型ウイルス特別措置法を改定する方針だ。首相は休業や時短要請を確実に行うため、給付金と罰則をセットにして通常国会に提出するとしている。

 特措法は、個人の自由や私権の制限を「必要最小限のものでなければならない」としており、その扱いが焦点になっている。

 罰則の導入や私権制限は人権にかかわる問題でもある。国会はスピード感を大切にしつつ、慎重に議論してもらいたい。

◆長期戦肝に銘じたい

 菅首相は4日の会見で新型ウイルスのワクチン接種を2月下旬までに開始する見通しだと述べた。

 安全性調査への参加に同意した医療従事者から始め、持病のある人や高齢者を優先し、一般への接種は4月以降になる見通しだ。

 注意したいのは、ワクチン接種によって感染が直ちに収束するわけではないということだ。

 接種が始まっても、流行が抑えられる集団免疫を獲得できるまでには数年かかるとの専門家の見方があり、現在の生活スタイルは数年間は続ける必要があるという。

 感染力が強いとされる変異種も相次いで世界に拡散している。ワクチンが確実に効果を発揮するかも見通せない。

 長引くウイルス禍によって、私たちの警戒感が薄れているとも指摘されている。「慣れ」から対策を怠り、感染が収まらなければ、重症者が確実に増え、医療提供体制を圧迫してしまう。

 ウイルスとの共生は始まったばかりだ。そのことを改めて肝に銘じ、感染防止策を徹底したい。



首都圏、緊急事態発令へ(2021年1月5日配信『福井新聞』-「論説」)

首相の甘い判断が後手に


 菅義偉首相は年頭記者会見で、首都圏の1都3県を対象にした新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言発令に言及した。ただ、週内の発令に向けて検討に入るとしただけ。これでは野党の指摘のように、再び後手に回りかねない。

 首相は昨年の暮れにかけて「年末年始は集中的に対策を講じられる時期」「ウイルスに年末年始はない」「会合を控え、静かな年末年始をお過ごしいただきたい」などと発してきたが、実際の対策に関しては手洗いやマスク着用などの徹底を呼び掛けるのみだった。

 政府の感染症対策分科会の尾身茂会長が「慣れ」によって国民の協力が得られにくくなっている状況だと指摘した通り、東京都の新規感染者数は年末に1337人と過去最多を記録。年明けも800人前後と高止まりしている。他の3県も一向に収まる気配はなく、現状では首都圏で全国の半分を占めている。

 首相や政府の危機感が空回りした格好だが、「Go To トラベル」など一貫して経済を重視してきた姿勢が招いた事態ともいえるのではないか。首都圏では帰省は思いとどまったものの、その分、都内などでの会食にブレーキが利かなかったとの指摘もある。年末に「緊急事態宣言を出す状況にはない」とした首相の判断が甘かったと言われても仕方がないだろう。

 宣言の発令は、1都3県の知事が求めたことを踏まえたものだが、首相は感染拡大が飲食の場で起きている場合が多いとの専門家の見方を示し、「限定的に、集中的に行うことが効果的だ」と強調した。昨年4月の安倍晋三前政権での宣言では人と人との接触を「最低でも7割、極力8割減らす」と幅広く活動を制限したことを振り返れば、どこまで感染の抑制につながるかは見通せない。実効性のある要請・指示ができるかが鍵となろう。

 ここに来て、相変わらず政府と自治体との溝が指摘されている。飲食店の時短営業強化を巡り東京都が見送ったのに対して、首相は自治体側の不備を指摘。宣言に先立つ政府の要請でようやく自治体が繰り上げを決めた。責任を押しつけ合う姿は国民にとって不毛この上ない。政府と自治体はタッグを組み直すべきだ。

 首相は会見で「給付金と罰則をセットにして通常国会に提出する」とコロナ特措法の改正に言及した。「第1波」の時点で求める声が上がっており、遅きに失した感は否めない。一方で改正には時間がかかり、逼迫(ひっぱく)する医療体制への即応性には欠けるだろう。首相は宣言再発令とともに「強いメッセージ」を込めたつもりだろうが、感染拡大を阻止できるかどうかは不透明と言わざるを得ない。



新しい年が明け、きのうは仕事始めだ…(2021年1月5日配信『福井新聞』-「越山若水」)

 新しい年が明け、きのうは仕事始めだった。例年なら1年の期待を込め前向きな思いで迎えるはずだが、今年は昨年来の新型コロナウイルスが猛威を振るい、不安の渦巻く船出である

▼案の定、菅義偉首相は年頭記者会見で首都圏1都3県に緊急事態宣言を発令することを検討中だと表明。経済活動の停滞に否定的だった首相も、さすがに感染爆発と医療現場の逼迫(ひっぱく)を見過ごすわけにいかない。昨年4月に続く2度目の緊急事態宣言に踏み切るようだ

▼この動きを察して、年明け最初の取引・大発会が開かれた東京株式市場では、日経平均株価が一時400円を超える大幅な下落。日本経済の先行きに懸念を示した。俗に相場格言では「丑(うし)つまずき」と言うようで、丑年は年間の騰落率が十二支の中で一番悪いらしい

▼ただ米ニューヨークのウォール街には「チャージング・ブル」(突撃する雄牛)と呼ばれる巨大な銅像がある。株式の上昇相場や力強さの象徴といわれ、大発会の関係者は「強気なブル」の威力に期待を寄せる。さらに付け加えるなら、もう一つ待望の「牛」がある

▼コロナ収束の切り札と目されるワクチンである。ワクチンの名前はラテン語の「雌牛」が由来。英医師ジェンナーが天然痘予防に牛痘を用いたことによる。日本では2月下旬から接種開始。牛頼みでもいい、列島を覆う暗雲を吹き飛ばしてほしい。



緊急事態検討/感染爆発を食い止めねば(2021年1月5日配信『神戸新聞』-「社説」)

 菅義偉首相がきのうの年頭会見で、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県を対象に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言発令の検討に入ると表明した。週内にも踏み切る見通しだ。

 宣言は経済への打撃が大きく、私権の制限につながるため発令には慎重でなければならない。だが、1都3県では医療崩壊の連鎖を招く感染爆発の恐れが指摘されており、後手に回ったとの批判は免れない。

 首都圏の新規感染者数は昨年12月31日、東京都で初の4桁に達し、他の3県も過去最多を更新した。全国の約半数を占める状況が続き、通常診療が困難な地域も出ている。今必要なのは強力な歯止め策である。

 宣言発令は昨年4月に続いて2回目となる。ただ、現行の新型コロナ特措法は罰則などの強制力を伴わない。前回宣言時は大半の個人や事業者が外出自粛や休業要請などに協力したが、長引く感染対策で疲弊した事業者の協力は得られにくくなっている。人々の「コロナ慣れ」も広がり、人の流れが十分に止まるかは不透明だ。

 首相は各知事と連携し、人々に行動変容を促す明確なメッセージを発するべきだ。特措法改正の焦点となる補償や罰則の議論も急がねばならない。

 首相は飲食時の感染リスクが高いとし、「限定的、集中的に行うのが効果的」と強調した。実効性を高めるには、制約に見合った補償や、科学的知見に基づく対象と期間の明確化が欠かせない。

 前回のような学校の一斉休校や、入学試験の延期は求めない方針という。児童、生徒や保護者への影響の大きさを考えれば妥当と言える。

 11カ国・地域とのビジネス関係者の往来は、相手国でウイルスの変異種が確認された場合は即時停止する考えも示した。

 しかし、韓国やベトナムなどで既に変異種が見つかっており対応が遅すぎる。「Go To トラベル」の再開は難しいとするが、ならば観光業者への支援策も検討すべきだろう。

 関西圏でも感染者数は高止まりしている。各自治体は危機感を持って、外出自粛などの呼び掛けを強める必要がある。



「一日で決められなければ、永久に決められない」(2021年1月5日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 スティーブン・スピルバーグ監督の映画「ミュンヘン」に次のせりふがある。「一日で決められなければ、永久に決められない」。「366日映画の名言」(選・文 品川亮)から引いた

◆名言集は1日1言のカレンダー形式になっており、「ミュンヘン」の主人公に決断を迫るそのせりふは1月4日のページに紹介されている。ちょうど仕事始めの折、即断が求められる場面も多々あるに違いない

◆コロナ対策のための緊急事態宣言を出すか、出すまいか。「再発令してほしい」と首都圏の4知事に求められてから二晩、菅首相は大いに悩んだはずである。きのうあった年頭会見で「検討に入る」と表明した

◆これまでの政府対応に世間の目は「中途半端」「後手」と厳しい。“最後の切り札”といわれる宣言の効果をいかに高め、いかに短期間ですますか。休業補償などの手だても含め思い切った決断が求められよう

◆映画の名言集から思い当たることの多い教訓をもう一つ。「あの時私は、“また次があるさ”と考えた。だが、あれが唯一の機会だった」(「フィールド・オブ・ドリームス」より)。4月21日のページにある

◆感染爆発を抑える「次」の機会は恐らくやってこない。4月に後悔するか否かは「今」にかかっている。



首都圏に緊急宣言へ なぜ早く決断できない(2021年1月5日配信『中国新聞』-「社説」)

 遅きに失したと言わざるを得ない。

 政府は近く、新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言を首都圏に再発令する。菅義偉首相がきのうの年頭会見で明らかにした。期間は1カ月程度で調整するという。

 対象は東京都と神奈川、千葉、埼玉の3県。2日には4都県の知事が政府に宣言を出すよう求めていた。新規感染者が減らないどころか、東京都で昨年末に初めて4桁台に達するなど、医療現場は逼迫(ひっぱく)。危機感を訴える声は切実さを増していた。感染の広がりを食い止めるには、これまで以上に強い措置が必要なのは間違いあるまい。

 しかし菅政権は一貫して再発令には後ろ向きだった。経済への打撃を恐れているのではないか。4都県の知事と会談した西村康稔経済再生担当相が、特措法の改正を優先させる考えを示していたほどだ。

 確かに経済への配慮は必要である。それでも首都圏で医療崩壊が現実味を帯びつつある中、国民の生命や健康を守るため、何をすべきかは明らかだろう。

 もっと早く決断できたのではないか。「最優先の課題は新型コロナ対策だ」と菅氏は首相就任時の会見で述べていた。言葉通りの行動がなぜできないのか。医療や介護の現場の苦境を知る知事たちに比べ、危機感を欠いているとしか思えない。

 今回の緊急事態宣言は、昨年春とは様相が変わりそうだ。前回は飲食店や学校、文化イベント、スポーツも含めて活動を全面的に止めた。しかし今回は飲食店などに「限定的に、集中的に行う」という。会食など飲食の場で経路不明の感染が多く起きているとみているからだ。経済に与える影響を最小限にする狙いもあるのだろう。

 そのためにも、休業や営業時間短縮などの要請に応じてくれた事業者に対する十分な補償や支援は欠かせない。窓口となる自治体を、政府は財政面で支えなければならない。先手先手のきめ細かい対応が急がれる。

 というのも、菅政権では判断の遅れが相次いでいるからだ。例えば観光支援事業「Go To トラベル」の一時停止である。全国の新規感染者数が初めて2千人の大台を超えた昨年11月、見直しを求める声が知事や医師会などから上がっていた。しかし耳を貸さなかった。重い腰を上げたのは、事態がさらに深刻になってから。全国一斉で一時停止ができたのは、昨年12月28日だった。

 特措法の改正でも後手に回る。全国知事会が昨年春から要望していたのに、「感染が収束した後に課題を検証する」との立場をなかなか改めなかった。

 先月やっと改正案の検討に乗り出した。今月18日召集の通常国会で成立を目指すという。気になるのは、休業要請などに協力した事業者への給付金と罰則をセットにするという政府の考えだ。国民の自由と権利への制限は必要最小限でなければならず、慎重な議論が必要である。

 「場当たり的な判断の積み重ねだった」。政府のコロナ施策について、民間臨時調査会は昨秋、そんな報告書をまとめた。夏までの安倍政権への評価とはいえ、菅政権でも対応のまずさは変わらない。危機を乗り切るため、先を読んで柔軟に対応することが一層求められる。



句読点付きの2021年(2021年1月5日配信『中国新聞』-「天風録」)

 石川啄木の没後に刊行された「悲しき玩具」には句読点付きの短歌が並ぶ。<何となく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風無し。>といったふうに。病気と借金苦のわが暮らしに、ひと区切り付けたい心情がこもるのか

▲感染拡大にきっちりとピリオドを打つ―。この正月、そんな句点付きの初夢を見た人も多いことだろう。1都3県を対象に近く緊急事態宣言が発令されそう。昨年のように全国へ広がるのかどうか、首都圏以外の私たちも日々の行動が問われている

▲今年3月11日、新型コロナのパンデミック、すなわち世界的大流行が宣言されて1年となる。このころまでに感染収束のめどを付けないと、夏の五輪どころではなくなりそう

▲言うまでもなくその3・11は、東日本大震災から10年の節目でもある。命のはかなさにあらためて気付き、わが来し方行く末を見つめ直す。あの日は誰にとっても「人生の読点」だった

▲新年に希望を託した啄木は<いつしかに正月も過ぎて、わが生活(くらし)が またもとの道にはまり来(きた)れり。>とも詠んでいる。取り戻すべき日常は誰にもあり、後戻りしてはならぬ道もまたある。いま一度、立ち止まる時かもしれない。 



緊急事態宣言へ 九州でも危機感の共有を(2021年1月5日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が再び発令される見通しとなった。菅義偉首相がきのう、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県の首都圏を対象に検討していると明らかにした。発令は週内とみられる。

 菅首相はぎりぎりまで緊急事態宣言に慎重だったとされる。経済活動を維持したい狙いは分かるが、結果的に政府のコロナ対応としてはまたも後手に回ったと指摘せざるを得ない。

 首相が官房長官時代から力を入れている観光支援事業「Go To トラベル」でも全国一時停止措置に踏み切る判断が遅かったと批判を浴びた。教訓が生かされているとは言い難い。政府には猛省を求めたい。

 緊急事態宣言の発令は昨年4~5月に続いて2度目となる。前回は東京、福岡など7都府県を対象に始まり、全国に拡大した。移動や外出の「自粛」が求められ、経済と暮らしに深刻な影響が広がった。宣言解除後、政府は一貫して再発令に否定的姿勢を示してきた。

 それでも感染拡大の第2波は防げず、いま巨大な第3波が襲来している。

 とりわけ首都圏を中心に新規感染数の高止まりが続き、重症者も増え続ける。医療提供体制の逼迫(ひっぱく)などに危機感を募らせた首都圏の知事は年明けの2日、政府に緊急事態宣言の再発令を求めた。さすがに首相も、これには抗しきれなかった。

 首相は会見で「より強いメッセージが必要と考えた」と語ったが、東京は大みそかに1日の感染確認が1300人を超えていた。正月の人の動きなどを考えれば、政府はもっと早い決断も可能だったのではないか。

 これまでの経験から、飲食店の営業時間短縮が感染拡大防止に効果的と首相は力説した。ただ、それで必要十分な対策とはとても言えまい。専門家の意見を尊重しつつ政府と自治体が密接に連携して、対策を練り上げることが求められる。

 実効性を上げるには、なによりも市民や各種業界の協力が欠かせない。丁寧に施策の必要性を説明し、理解を求める努力を重ねるべきだろう。

 緊急事態宣言の再発令が検討されている対象は今のところ首都圏だが、事態の深刻さは全国で受け止めることが大切だ。

 比較的感染が落ち着いていた九州でも、第3波に入って感染者数が増えてきた。福岡県の新規感染者は連日のように100人を超え、病床の稼働率も高くなっている。宮崎県はきのう過去最多を更新した。

 私たちの暮らしや働き方に緩みはないだろうか。あらためて見直し、感染対策を徹底する必要がある。



緊急事態再発令へ 医療の逼迫にブレーキを(2021年1月5日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相は4日の年頭記者会見で、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令する検討に入ると表明した。各都県の知事が2日に速やかな発令を求めたことを受けた判断で、期間は1カ月程度を軸に調整中。発令されれば昨年4月に続き2回目となる。

 首相は再発令の理由として、首都圏の感染者が正月も多かったことを挙げた。だが、全国の1日当たりの新規感染者は年末には4千人を超えており、年明けには人の移動が一定程度増えることも想定できていたはずだ。正月明けに再発令の検討に入ったのは後手に回ったと言わざるを得ない。

 これまで経済への影響を抑える政策に軸足を置いていた首相も、ここで医療体制の逼迫[ひっぱく]にブレーキをかけなければ政権自体に危険信号がともりかねないと判断したのだろう。自治体との足並みも整え直し、連携を密にしてコロナ収束に臨んでもらいたい。

 ■怖い「コロナ慣れ」

 1都3県では各種のコロナ対策が功を奏しておらず、知事らは感染状況の悪化による医療提供体制の崩壊が現実味を帯びる中で政府に最終手段を求めてきた。

 首相も、全国の新規感染者の約半数が1都3県に集中しているとして「より強いメッセージが必要と考えた」と再発令の必要性を強調。感染拡大が飲食の場で起きている場合が多いとの見方も示し、対策は「限定的に、集中的に行うことが効果的だ」とした。小中学校の一斉休校は求めない方向で調整が進んでいる。

 緊急事態宣言が発令されれば、不要不急の外出自粛要請に法的根拠が生じる。対象地域の知事は医薬品、食品などの収用や、医療施設開設のための土地や建物の強制使用が可能となる。その一方で、幅広い業種の事業者が経済活動の停止や縮小を余儀なくされることも想像に難くない。

 ただ、海外のような都市封鎖(ロックダウン)は今回も想定していない。コロナ感染の影響が長期化する中で首都圏の住民には「コロナ慣れ」も広がっており、発令によって人の流れをどれだけ抑えられるかは未知数だ。

 ■ワクチンに特措法

 一方、コロナのワクチン接種に関しては、できる限り2月下旬までに開始すると首相が明言。自身も率先して接種するとした。

 コロナ特措法改正案については、「給付金と罰則をセットにして通常国会に提出する」と述べた。与野党は2月初めの成立を目指す方針で合意した。罰則規定に関しては野党に慎重論もある。密度の濃い審議が必要となろう。

 11カ国・地域との間で合意しているビジネス関係者の往来については、首相は相手国で新型コロナウイルスの変異種が確認された場合は即時停止する考えを示した。

 首都圏ほどではないが、熊本県内でも“第3波”の影響は日増しに広がっている。蒲島郁夫知事は昨年12月29日、県内の新規感染者数が政府の指標で感染急増に相当する「ステージ3」に達したことを受け、熊本市中心部の繁華街で午後10時以降も酒類を提供する飲食店に対し、コロナ特措法に基づく営業時間短縮を要請した。

 ■熊本も危機的状況

 県内の医療現場も危機的な状況にあり、専門家は「医療崩壊を防ぐため感染予防を徹底してほしい」と呼び掛けている。

 年末年始の休みも終わり、多くの県民も通常の生活リズムを取り戻していくことだろう。「年末と同じように過ごしていれば問題ない」と高をくくるのではなく、警戒のレベルを一段高める必要がある。「ステイホーム」を強く呼び掛けられた昨年4~5月の状況をもう一度思い返し、家庭や職場での行動変容を実践したい。



[首都圏に緊急事態宣言]感染爆発を食い止めよ(2021年1月5日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 菅義偉首相は年頭記者会見で、新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言発令の検討に入ると表明した。

 対象地域は、知事から要請があった東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県。早ければ7日にも発令され、1カ月程度で調整している。

 同法による発令は、昨年4月に続き2度目となる。政府は当初、経済への影響を懸念して再発令に消極的だった。重い腰を上げたのは首都圏の感染状況が深刻化の一途をたどっているためで、医療提供体制が崩壊寸前と訴える知事らに押し切られた格好だ。

 菅首相は「限定的、集中的に行うことが効果的だと思う」と述べ、感染リスクの高さが指摘される飲食店の営業時間短縮などを重視する意向を示した。ただ、その効果は不透明だ。

 政府は昨年11月下旬、「勝負の3週間」として重点的な対策を呼び掛けたが、目に見える効果は出せなかった。

 12月末に政府の観光支援事業「Go To トラベル」が停止された後も、増加傾向は続く。東京では、大みそかに1日の新規感染者が過去最多の1337人に達した。4日の全国の新規感染者は半数超が首都圏からだ。

 感染拡大の背景には「コロナ慣れ」による気の緩みがあるとみられる。その最たるものが政治家の宴会や会食だろう。

 大人数で忘年会や懇親会を開き、批判されると「コロナ対策を取っていたから問題ない」などと開き直る。その姿から危機感は伝わりにくい。

■    ■

 政府は元々、緊急事態宣言よりも特措法の改正を重視してきた。

 改正案は、休業や営業時間短縮の要請に応じた店舗への財政支援を明示し、協力金支払いの裏付けとすることなどが柱だ。実現すれば店への要請に実効力を持たせられる。

 だが法改正には時間がかかる。応じない場合の罰則措置も支援とセットとなる見通しだが、私権制限につながるため慎重さが必要だ。

 全国知事会は昨年前半には法改正を求めていた。政府、与党は臨時国会の会期を延長して議論を始めるべきだった。「静かな年末年始」を呼び掛けるにとどまった対応は批判を免れない。

 今は感染爆発を食い止められるかどうかの瀬戸際である。知事たちと連携しながら対応を進めるべきだ。「時間短縮をした北海道、大阪は結果が出たが1都3県は減らない」と地元に責任を押し付けるような菅首相の言い方は、対応が後手に回った言い訳のようにも聞こえる。

■    ■

 昨春、政府が緊急事態宣言を発令した際は、東京や大阪など7都府県に出された後、歯止めがかからず沖縄を含む全都道府県に拡大された。

 「第3波」でも東京から全国に飛び火し広がっている。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「首都圏での感染を抑えなければ、全国の感染拡大を食い止めることは困難だ」と指摘する。

 ワクチンの接種は早くて2月下旬からになる。沖縄も今まで以上に危機感を持つべきだ。



なぜすぐに国会開くと言わないのか(2021年1月5日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★首相・菅義偉は年頭会見でコロナ対応について、緊急事態宣言に触れ「限定的、集中的に行うことが効果的」と説明したが、相変わらず中途半端な印象でコロナ禍制圧を目的としているのだろうかと思ってしまう。経済を動かすという呪縛に取りつかれ、物事を解決してから次に向かうというメリハリがない。これが菅の言う「仕事」なのだろうか。

★首相周辺は首都圏の1都3県に1カ月程度の「緊急事態宣言の再発令」をイメージしているようだが、小中高校を対象にした一斉休校の要請は行わない。劇場や映画館などは入場制限の対象に含めない。今月16、17日に第1日程が予定されている大学入学共通テストについても、文科省は「緊急事態宣言が出ても、感染者が今以上に増えても、共通テストは必ずやる」と強気の対応。一方、Go To トラベルは「地域を絞り込むなどした部分的な再開も当面困難」(経済再生担当相・西村康稔)とさすがに観念した模様だ。

★結局政府は限定的、集中的というものの、飲食店の時短営業だけを目的としたのではないか。厚労省は4日、昨年の解雇や雇い止め7万9608人のうち、アルバイトやパートなど非正規労働者が少なくとも3万8000人を占めると発表。この中に飲食関係者が多くいることは容易に想像がつく。今後も増えるだろう。しかし、それは防ぐことができた解雇だ。昨年の春から特措法の審議要求は野党や自治体の首長が訴えてきたこと。2月中旬をめどにまとめるというが、なぜすぐに国会を開くと言わないのか。ネットでは今回の緊急事態宣言に素直に応ずる人は少ないのではという声がある。医療関係者のSOSの声も聞かなかったのは政府首脳だった。



緊急事態宣言検討(2021年1月5日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

コロナ対策の根本姿勢改めよ

 新型コロナウイルス感染の急拡大に歯止めがかからない中、菅義偉首相が4日の記者会見で、緊急事態宣言の発令を検討すると表明しました。東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象とし、週内にも宣言する方向です。状況をここまで深刻化させた菅政権の責任が問われます。しかも、菅首相の記者会見では、検査・医療の抜本的拡充策も、営業や雇用への強力な支援策についても踏み込んだ発言はありませんでした。このままでは宣言をしても実効性のある感染抑止策になりません。菅政権は根本姿勢を改めるべきです。

要請と補償は一体で

 緊急事態宣言は、昨年3月に改定された新型インフルエンザ特別措置法による措置です。首相は専門家の意見をもとに発令し、対象地域の都道府県知事は、法的根拠に基づく休業要請などができるとしています。昨年4月の感染拡大の際には、7都府県でまず発令され、全都道府県に拡大されたのち5月に段階的に解除されました。

 今回検討に入った緊急事態宣言について、菅首相は「限定的、集中的に行う」と述べました。飲食店への営業時間の短縮要請などを中心に行うことが念頭にあるとみられます。しかし、「内容を早急に詰める」というだけで、補償については触れませんでした。これでは飲食店の経営者や労働者に不安を与えることにしかなりません。

 今度こそ「要請と一体の補償」という感染対策の鉄則を貫くべきです。昨年の緊急事態宣言では、当時の安倍晋三政権による補償は全く不十分で、多くの飲食店がかつてない苦境に陥りました。経営が立ち行かず事業継続を断念した店も少なくありません。宣言解除後も感染が収束しきらないまま秋から冬の「第3波」に突入し、年末年始の書き入れ時が直撃されています。飲食店で働く労働者も収入の手段が断たれ、住まいまで失う事態が後を絶ちません。

 営業を支え、雇用を守る対策と一体となった措置でなければ、国民の暮らしはいよいよ成り立ちません。感染の抑止に実効性を持たせるためにも、菅政権は要請と一体での万全な補償を明確に打ち出すことが必要です。持続化給付金や家賃支援給付金の打ち切り、雇用調整助成金のコロナ特例の縮小は許されません。

 ひっ迫する医療体制の中で苦闘する医療機関などへの本格的な支援強化について菅首相が言及しなかったことは大問題です。感染者急増で年末年始も懸命に奮闘している人たちに対し、あまりに冷たい姿勢です。医療機関への減収補填(ほてん)、医療従事者への特別手当の支給を早急に行うべきです。自治体がPCR検査拡充に躊躇(ちゅうちょ)なく取り組めるよう全額国費で検査を行う仕組みをつくることが重要です。

「人災」は許されない

 感染拡大に拍車をかけた「Go To トラベル」に固執し続けることは、あまりに重大です。危機的事態を招いたのは、菅政権による「人災」という他ありません。

 野党の国会延長要求に逆らって、昨年12月早々に臨時国会を閉じたことは、菅政権に危機感がなかったことの象徴です。

 昨年、「勝負の3週間」などといいながら無為無策を重ねた菅政権への国民の不信と批判は高まるばかりです。政治の抜本的な転換が急がれます。



「何があってもあなたを守る」というメッセージ(2021年1月5日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 4日は仕事始めでしたが、これほど不安に満ちあふれた年明けは経験したことがありません

▼首都圏では、連日のように新型コロナウイルスの感染で「曜日最多」を更新。年末には、東京都で1日の感染者が1300人を超え、衝撃を与えました。対策として、菅義偉首相は4日の会見で、1都3県での飲食店への時短要請を中心とした緊急事態宣言や、応じない業者への罰則付き特措法に言及しました

▼首相は「大阪や北海道で時短要請の効果があったが、1都3県で人出が減っていない」として、「より強いメッセージ」を強調します。しかし、実効性ある対策を何ら打ってこなかった一方、「Gо Tо」事業で旅行や外食を促し、「会食は控えて」と言いながら首相自ら、大人数での会食ざんまい。自民党議員は全国で大宴会を繰り返してきました

▼その結果、「人災」とも言える形で感染が拡大したのです。緊急事態宣言を出すなら、「出歩く国民が悪い」というメッセージではなく、まず、自らのふるまいへの反省と総括が不可欠でしょう

▼飲食店で飛沫(ひまつ)感染が発生している可能性は否定できません。しかし、ほとんどの飲食店は感染防止に神経をすりへらしながら、生活を守るために必死に営業を続けています。首相の口からは、そうした業者への思いやりの言葉も、休業に対する補償も一言もありません。罰則だけが際立ちます

▼国民が求めているのは強制措置ではありません。「何があってもあなたを守る」というメッセージです。





緊急事態宣言要請 首都圏の医療体制守れ(2021年1月4日配信『秋田魁新報新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染状況の悪化や医療体制の逼迫(ひっぱく)が、もはや猶予ならぬ事態であるという危機感の表れだろう。東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏1都3県の4知事が新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令を検討するよう政府に要請した。

 4知事と会談した西村康稔経済再生担当相は「発令が視野に入る厳しい状況」と表明。政府の新型コロナ感染症対策分科会の意見を聞いた上で発令の要否を判断する意向を示した。慎重さは大切だが、判断の遅れが時として一層の事態の深刻化を招く恐れがあることも忘れてはならない。

 国内の新規感染者が4515人と過去最多を記録した昨年12月31日、東京1337人など4都県全てが過去最多だった。国内の重症者も681人と最多を更新。これらの数字を見れば知事らの要請は当然のことだ。

 都内の医療提供体制も厳しさを増す。年末の都モニタリング会議では有識者が「通常医療との両立が困難になっており、このままでは破綻の危機に直面する」と指摘したほどだ。

 西村氏は会談の際、4知事に対して外出自粛要請や飲食店の営業時間短縮強化を求めた。応じた店には協力金を拡充する方針で4都県とも応じる構えだ。要求は緊急事態宣言に準じるような厳しい内容で一歩踏み込んだ対策といえる。

 ただ「飲食が感染リスクの高い場面」との指摘はかねて専門家らが強調している。それを思えば忘年会シーズン前にこそ講じるべき対策ではなかったか。政府と4都県がもっと早く動かなかったことが悔やまれる。

 菅義偉首相は最多の国内感染者数を記録した31日、緊急事態宣言の発令について「医療体制を確保して感染拡大回避に全力を挙げる」と述べるにとどめていた。この段階では発令を回避したい意向がうかがえる。4知事から突きつけられた今回の要請にはどう答えるのか。

 緊急事態宣言となれば、飲食業などに限らない幅広い業種に影響が及び、経済活動の停止、縮小も避けられない。昨年4月の発令と異なり、これまでの売り上げ低迷で企業、事業者らの体力は既に大幅に落ちている。経済への打撃を緩和する追加対策も問われることになろう。

 菅首相や各知事による再三の呼び掛けの効果が見えず、街の人出が減らなかった点が気掛かり。菅首相は飲食店対策を強化する罰則と給付金をセットにした特措法改正案の検討に前向きだ。緊急事態宣言の発令の判断に影響する可能性もある。

 首都圏の感染拡大はもはや手をこまねいていられない状況。歯止めをかけるのは緊急事態宣言の発令なのか、別の強力な対策なのか―。いずれにせよ難しい判断が求められる。首都圏の医療体制を崩壊の危機から守るため、確実な効果が見込める一手が必要な重大局面である。

緊急事態宣言 首相は早期発令の決断を ワクチンの接種開始も急げ(2021年1月4日配信『産経新聞』-「主張」)

キャプチャ
例年なら混雑するJR東京駅の東海道新幹線のホームは閑散としていた =2日午前10時36分(松井英幸撮影)

 一見、静かな正月となった。

 産経新聞東京本社は箱根駅伝のゴール地点にある。例年の1月3日は各大学応援団の太鼓の音や歓声が響き渡り、歩道は歩けないほどの人出で埋まる。今年は朝から警備員の姿ばかりが目立ち、まばらな沿道の人々も自粛要請に応じて拍手のみの応援にとどめた。

 年末年始の帰省や行楽からのUターンラッシュもほぼみられず、東京駅などの主要ターミナルでも混雑はなかった。

◆リーダーシップを示せ


 一方で暦とは関係なく、医療現場は新型コロナウイルスとの厳しい戦いを続けている。その悲鳴を聞き、緊急事態宣言を発令すべきではないか。発令の決断は、菅義偉首相のみができる。

 大みそかの昨年12月31日には新規感染者が東京都で初の4桁となる1337人に上ったのをはじめ、神奈川、千葉、埼玉の各県でも全て過去最多を数えた。

 30日に開かれた都のモニタリング会議では有識者が「通常医療との両立が困難になっており、このままでは破綻の危機に直面する」「より強い対策を実行する必要がある」と指摘した。

 このため4都県の知事は2日、政府に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を4都県に対して発令するよう要請した。4知事と会談した西村康稔経済再生担当相は「緊急事態宣言が視野に入る厳しい状況だとの認識を共有した。(再発令の要請を)受け止めて検討していく」と述べるにとどまった。

 菅首相は4日、年頭の記者会見を予定している。ここで政府の姿勢を明確にすべきである。緊急事態宣言は国民の協力なしに効力を発揮しない。協力を求めるには、首相の言葉が必要である。

 菅首相は大みそか、記者団に緊急事態宣言を出す考えはあるかと問われ、「まず今の医療体制をしっかり確保し、感染拡大回避に全力を挙げることが大事だ」と述べた。発言に疑問があった。そのための宣言発令ではないのか。

 感染状況については「大変厳しい認識をしている」と述べたが、その上で「感染対策の基本はマスク、手洗い、3密回避だ」と語った。これでは従来の認識と変わらぬ印象しか持たれない。

 国民の多くはマスクを着用している。手を洗い消毒も心掛けている。3密の回避も理解している。それだけでは足りないという実感もある。危機に際して首相に求めたいのは、強いリーダーシップの可視化である。先頭に立つ姿を国民に見せる努力をしてほしい。

 緊急事態宣言は安倍晋三政権だった昨年4月7日、東京都など7都府県に発令し、同月16日に対象を全国に広げた。一部に反対はあったが、広く国民の理解を得て、第1波の感染拡大を、どうにか抑制することができた。


 その知見を生かしてほしい。何を止め、何を生かすのか。時短や休業を要請する飲食店などの補償をどうするのか。具体的に語ってほしい。大事なのはスピード感だ。検討に時間をかければ宣言の効力を弱めるだけだ。

◆特措法の改正を迅速に

 急ぐべきは宣言の判断だけではない。まず一日も早いワクチン接種の開始だ。政府は米英の製薬大手ファイザー、アストラゼネカ、モデルナのワクチンの提供を受けることで基本合意している。ファイザーのワクチンについては厚生労働省に製造販売承認を申請済みで、認可待ちの状況だ。

 ワクチンの幅広い接種はコロナ禍収束の切り札となり得る。有効性と安全性の評価には時間がかかるとされるが、今は緊急時だ。迅速な認可を推進してほしい。

 もう一つは、特措法の改正である。緊急事態宣言は特措法を根拠とするが、法に強制力がないため宣言も要請しかできない。

 政府は改正の必要を認めながら「新型コロナ禍の収束後に検証を経て」とする姿勢をなかなか崩さなかったが、ようやく今月召集の通常国会に改正案が提出される見通しだ。緊急事態宣言の効力を強めるため、罰則規定による強制力の付与が必要である。

 今、目の前にある危機に対処できなくては、夏の東京五輪も開催が危ぶまれる。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は1日、新年のあいさつに「(東京五輪は)トンネルの終わりの光になる」と記した。この期待に、応えたいではないか。



緊急事態宣言で急所つく感染防止策を(2021年1月4日配信『日本経済新聞』-「社説」)
 
政府は新型コロナウイルス対策で首都圏の1都3県を対象として、週内にも緊急事態宣言を発令する検討に入った。このまま感染の急増が続けば経済回復は遠のく。いまは社会・経済活動にある程度ブレーキをかけてでも、感染爆発を食い止めるべきだ。

 緊急事態宣言が出れば昨年4月以来となる。政府は2度目の宣言は何としても回避するとして対策を進めてきた。自治体との調整や国民への訴えかけがうまくいかず、ここまで事態が悪化したのは失策と言わざるを得ない。

 ただ、前回に比べウイルス対策の「急所はわかっている」(政府の新型コロナ対策分科会長の尾身茂氏)。感染拡大の温床となりやすい飲食店の営業短縮を徹底するなど、的を絞った対策が効果的と考えられる。

 東京都などは酒類を提供する飲食店などに営業時間を午後10時までに短縮するよう要請してきたが、経営が厳しいとして応じない店も多い。緊急事態宣言が出れば知事の要請は法的根拠をもち、従わない店を公表できる。

 政府分科会は営業終了時間をさらに繰り上げ、午後8時までとするよう求めている。実現には協力金の支給額を増やすなど、補償を手厚くする必要がある。

 飲食店での感染を避けるには企業の協力も欠かせない。新年会や得意先の接待は感染が減るまで控えるよう経営層が意識を切り替え、社員にも呼びかけてほしい。

 会食で感染した人が無症状のまま家族と過ごし、家庭内感染を起こした例も報告されている。受験シーズンにこうした感染がまん延するのは避けねばならない。

 緊急事態宣言の根拠となる新型インフルエンザ対策特別措置法では、飲食店が時短や休業の要請に応じなくても罰則はない。政府は罰則と協力金給付などの規定を一体化した法改正をめざしており、迅速な成立を求めたい。

 緊急事態宣言の最大の目的は感染者の急増による医療の逼迫を防ぎ、重症者や死者を極力出さないことだ。前回の宣言以降、感染者の増加に耐えうる医療体制の整備が最重要課題とされた。しかし大きな改善のないまま危機を繰り返しているのはゆゆしきことだ。

 国内の医療資源は偏在している。司令塔機関を決め、関係学会や日本看護協会、日本医師会などの協力も得て専門医や看護師の配置を調整できる仕組みが必要だ。







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