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(論)ワクチン(2021年1月6・10・12・20・21・25・26・27・28・29・30・31・2月1・2・3・4・5・7・8・10・11・12・13・14・16・17・18・19・20・21・23・25・26・28日・3月3・4・6・8・12・13・14・16・22・24・28日・4月1・3・4・5・6・8・10・11・13日)

高齢者の接種スタート 感染対策を緩めず、着実に(2021年4月13日配信『毎日新聞』-「社説」)

 高齢者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。医療従事者以外で初のケースだ。

 関西圏や首都圏などで感染拡大の「第4波」が広がっている。感染対策を緩めることなく、接種を着実に進めたい。

 対象は65歳以上の約3600万人だ。2回の接種が終わるのは8月ごろと見込まれる。

 重症化リスクが高い高齢者にワクチンが行き渡れば、医療現場の負担軽減につながる。

 だが、これだけ大規模な接種は前例がなく、自治体にはノウハウの蓄積がない。

 第1陣の配分は供給量が限られ、集団接種の予約が殺到して電話がつながらない自治体があった。高齢者施設では接種券が届いた人と届いていない人がおり、不公平にならないよう接種が先送りされる例もみられた。

 接種が本格化する5月以降に向けて、滞りなく進められるよう体制を整えなければならない。

 それまでの経験を生かし、集団接種会場での手順や、接種情報登録システムの改善につなげることが重要だ。

 国や都道府県は改善点を洗い出し、対処方法と併せて市区町村に周知してほしい。

 政府は、自治体が余裕を持って準備を進められるよう、ワクチンの供給スケジュールを早い段階で示すべきだ。

 医療従事者の確保も課題だ。接種準備で、薬剤師の協力を得る自治体もある。参考にしてほしい。離島など人手が足りない地域には、医療機関が看護師らを派遣できるよう国の支援が求められる。

 副反応についても丁寧な情報提供が欠かせない。接種部位の腫れや発熱は一定の割合で起きる。高齢者が不安に陥らないような助言が必要だ。

 ワクチン接種は個人の判断に委ねられ、医学的な理由で受けられない人もいる。接種しない人が差別を受けることがないよう、国や自治体が積極的にメッセージを発しなければならない。

 菅義偉政権は、ワクチン接種をコロナ対応の「切り札」と位置付けている。感染対策の最前線に立つ医療機関や、業務が増える自治体の声に耳を傾け、ワクチンの円滑な接種に責任を持つべきだ。



コロナワクチン 人員確保して高齢者接種急げ(2021年4月13日配信『読売新聞』-「社説」)

 ワクチンは、感染抑止の決め手である。まず、重症化しやすい高齢者から迅速に接種できるように、医療従事者の確保を急がねばならない。

 12日から始まった高齢者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種では、初回分として約5万人分が配布された。大半の都道府県で実施されたという。

 使われているのは、米ファイザー製のワクチンだ。2回接種すれば95%の発症予防効果があることが示されている。米国では、高齢者施設での感染者や死者が9割以上減ったという報告がある。日本でも早急に進めるべきだ。

 日本で先行接種を受けた医療従事者への調査によると、65歳以上では若い世代に比べて副反応が出にくい傾向があったという。だが、発熱や頭痛、全身のだるさなどの副反応は想定しておきたい。

 過度に副反応を心配する必要はないものの、明確に意思を伝えることが難しい高齢者も多かろう。医療従事者や施設職員は、接種を受けた人を十分観察し、体調管理に万全を期すことが不可欠だ。

 日本は他の先進国に比べて、ワクチン接種が大きく立ち遅れている。医療従事者約470万人への接種が2月に始まったが、世界的なワクチン不足などで、まだ約110万人にとどまっている。

 供給が本格化するのは5月以降になる見込みだ。政府は、欧州連合(EU)の承認を前提に、6月末までに全高齢者約3600万人分を確保するとしている。EUに強く働きかけてもらいたい。

 6月には大量に入荷するというが、その配分計画は不透明で、自治体が予定を立てにくい状況となっている。政府は、供給スケジュールを早急に示し、混乱を回避することが重要である。

 多くの市町村が特設会場を設ける予定だが、その2割は看護師不足を訴えている。

 民間の調査機関は、看護師が足りないため高齢者への接種が円滑に進まず、完了するのは秋にずれ込むと試算している。

 医療機関からの医師や看護師の派遣、子育てで離職した看護師の復職などを大幅に増やすことが急務である。政府と自治体は、人員確保に全力を挙げてほしい。

 コロナの感染が再拡大している。このまま患者が増えれば、接種にあたる医療従事者の確保はさらに厳しくなるだろう。

 12日から「まん延防止等重点措置」の適用地域が広がった。一人一人が気を引き締めて、感染を防ぐことが大切だ。



お通し(2021年4月13日配信『日本経済新聞』-「春秋」)

 居酒屋などでテーブルに着くや、おしぼりと一緒に簡単なつまみが出てくることが多い。枝豆、きんぴら、もろきゅう……。関東でお通し、関西ではつき出しと呼ぶ一品だ。店はこれで席料を取るわけだが、まず何か並べておき、客を落ち着かせる効果も大きいという。

▼コロナ封じのワクチン接種作戦も、ひょっとしたらこのやり方だろうか。日本で医療従事者向けの接種が始まったのは2月17日だった。そこそこ早い時期に、とりあえずお通しは運ばれた印象である。しかし、あとがいけない。あれから2カ月近くたつのに、医師や看護師の大半がまだ1回目の接種さえ受けていないのだ。

▼待てど暮らせど、あとの料理が続かない店のようである。ところがきのうから、65歳以上の高齢者という別の団体の受け入れも始まった。さしあたり調達できるワクチンはわずかな量だという。遅い遅いの批判をかわそうと、スタートだけは当初予定に間に合わせたと陰口も聞こえる。危うい同時進行であるのは疑いない。

▼希望する国民全員の接種が終わるのは、はていつになるだろう。東京五輪の開幕まで、あすであと100日。変異ウイルスも増える一方だから、いよいよ切羽詰まった局面なのだ。「おーい、ワクチンまだ?」「お客さん、いまやってるところです」。ちまたの居酒屋なら、客はしびれを切らして帰ってしまう時分である。



ワクチンの遅れ 根本から備えの見直しを(2021年4月13日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が始まった。

 当面、ワクチンの供給が限られる。菅義偉首相は6月末までに全高齢者が2回接種できる量を届けると述べたが、見通しは確実なのか。自治体は手探りの準備を続けざるを得ない。

 ワクチンの供給がこれだけ滞るのはなぜか。国内で量産はできないのか。背景と課題を検証し、安定的な供給体制づくりにつなげていかなくてはならない。

 2月に始まった医療従事者の先行接種で、1回以上受けたのは約110万人。国民の1%に満たない。一方、米国や欧州各国では着々と接種が進み、世界全体では先週前半までに5%に達している。日本の遅れは明らかだ。

 感染の拡大とともに、各国によるワクチンの奪い合いが激しさを増した。政府はその動きを見越して対応することができなかった。海外産に頼る危うさだ。

 菅首相は接種遅れの理由を国会で問われ、日本人の治験を行う必要から手間取ったことを挙げた。元をたどればワクチンを巡る国の姿勢に行き着くのではないか。

 日本は1960年代からはしかや風疹のワクチン開発で世界をリードしてきた。その後、混合ワクチンなどで重い副反応が報告され、後遺症の訴訟も起こった。

 国民の警戒感も強まり、国主導のワクチン開発が停滞した。企業は巨額の資金を回収できる見込みがなければコストや人材を投じるのは難しい。「負のスパイラル」と指摘する専門家もいる。

 約20年前に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際はワクチン開発の途中で収束し、強い危機感が広がらなかった。

 世界で新型コロナ感染が広がり始めた昨年、日本では感染者や死者が欧米に比べ桁違いに少なく、切迫感が乏しかった。

 今後、新たな感染症が世界的に広がった場合、輸入ワクチンに頼るだけでは国内の対策が間に合わない恐れがある。新型コロナも変異株の広がりが懸念される。

 自国のワクチンを国民の命に関わる安全保障の問題として捉えていくべきだろう。国が開発を下支えしていく仕組みが必要だ。

 ワクチンは多くの人が免疫を持つ効果とともに副反応を伴う。情報開示を徹底し、国民の不安を払拭していくことも欠かせない。

 国内で複数の製薬会社やベンチャー企業が治験を進めるものの年内の実用化はまだ見えてこない。政府は海外との粘り強い交渉で確実な供給を図ってほしい。



高齢者ワクチン接種 医療者への遅れ解消図れ(2021年4月13日配信『福井新聞』-「論説」)

 高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種がようやく始まった。ワクチンは「第4波」が迫り来る中、形勢を好転させる切り札といえる。

 日本で現在接種に使われているファイザー社製のワクチンは先行する各国の実績などから死亡率や重症化率に加えて、感染自体を防ぐ効果も確認されている。重症化や死亡のリスクの高い約3600万人の高齢者と、それに続く基礎疾患のある人への接種が進めば、感染者、死者が大幅に減ると期待されている。

 ただ、肝心のワクチンの供給量が足りず、高齢者は無論、先行した医療従事者への接種さえ遅れている。全国約480万人の医療者向け接種は2回目の供給が完了するのが5月の連休明けとされている。しかし、現状ではワクチンが最初に配布される「基本型接種施設」でも、いまだに1回目の接種が終わっていないところが多いという。当然、そこから配布を受けるはずの小規模病院などでは1度も受けないまま患者を診ている状況にある。

 緊急事態宣言解除後、大阪や兵庫、宮城などを中心に感染が拡大。全国の重症者数は3月中旬には320人台だったが、その後増加に転じ500人を超えた。病床がほとんど埋まっている地域もあり、医療現場や保健所は危機感を募らせているという。

 高齢者への接種も開始時期が二転三転した経緯がある。当初3月下旬としていたが、4月になり、揚げ句中旬にまでずれ込んだ。必要な全量の供給は6月になる見込みだが、さらに遅れることはないと言い切れるのか。供給量が少ないにもかかわらず、政府が開始時期に固執したのは政権による実績づくりを優先させたからとの指摘もある。

 スケジュールの混乱で自治体はその都度見直しを迫られている。閣僚らの発言一つで詳細に詰めたはずの段取りが揺らぎ、現場を混乱させることもあった。予約制を取った東京都八王子市ではその段階で混乱を来し、嫌気を差した高齢者も少なくないはずだ。接種を迷う人を一層ためらわせるなど、接種率の低下につながることが危惧される。

 世界では既に人口の5%がワクチン接種を終えたとされる。イスラエル61%、英国46%、米国32%に対して、日本は1%にも満たない状況だ。変異ウイルスについては若年層の感染率、重症化率が高いとの報告もあり、全世代のワクチン接種が不可欠といえるが、このままでは感染のさらなる長期化を招きかねない。

 背景にはワクチンの国産化ができず、輸入に頼るしかなかったことがあるが、今からでも国内の生産体制を強化し、変異株や新たな感染症に備えるべきだ。



高齢者のワクチン接種 混乱招かぬ情報提供を(2021年4月13日配信『中国新聞』-「社説」)

 高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種がようやく始まった。

 65歳以上の3600万人が対象となり、日本の人口の3割近くに上る。高齢者は重症化したり死亡したりするリスクが高い。ワクチンには感染予防や重症者を減らす効果が確認されている。医療現場の負担軽減にもつながることが期待される。

 そして究極の目標は、接種を受けた人がウイルスへの免疫をつけ、それを強めることで社会全体で流行を抑え込んでいくことにある。

 とはいえワクチンが安全かどうか不安に感じている高齢者もいるだろう。これまで明らかになっている副反応などの情報について、正確な分析と丁寧な説明が求められる。

 政府は接種を担う市区町村や医療機関と連携を強め、安心して接種できる体制を整える必要がある。

 ところが肝心のワクチン供給量が足りない。4月末までに配られるワクチンは140万人分しかなく、高齢者全体の4%足らずしかカバーできない。

 当面は一部の自治体で限定的に行われる。広島県内ではきのう、呉市が一部の高齢者施設で実施しただけだった。

 接種の開始スケジュールが二転三転したことも混乱に拍車を掛けている。当初は「3月下旬」としていた目標が「4月」に変更され、結局この時期までずれ込んだ。

 高齢者はおろか、先行した医療従事者480万人への接種もまだ完了していない。極めて少ない供給量しか確保できないのに、無理やり接種開始に踏み切る狙いが分からない。

 これでは、菅義偉政権による「やってる感」の演出と言われても仕方あるまい。

 数少ないワクチンを誰から接種するかといった悩ましい問題は自治体につけ回した格好だ。多くの自治体が4月中の集団接種を見送るなど、接種体制の見直しを余儀なくされている。

 広島市が福祉施設の入所者や入院患者、80歳以上から先行するなど、年齢や属性で優先度を付けたのも、少ない供給量のワクチンをどう生かすか腐心した結果だろう。

 政府は5月からワクチン供給が本格化し、6月末までに高齢者全員分のワクチンを確保できるとしている。だが具体的な供給日程は明らかにしていない。

 自治体側は、国から連絡を受けた配分量に基づき、接種会場や医療従事者の確保に当たったり住民から接種予約を受け付けたりする。

 予定通りにワクチンが届かなければ、接種計画の見直しを迫られる恐れもある。混乱を避けるため、政府のさらなる情報提供を求める声が自治体から上がるのも当然だろう。政府は甘い見通しを排し、正確な配分量を具体的に伝えるべきだ。

 6月末に高齢者へのワクチン接種が完了した後に、基礎疾患のある人から一般の人へ対象が広がる。接種期間の長期化は避けられないだろう。

 感染力の強い変異株の影響で、流行の第4波による死者数は第3波を上回るとの予測もある。政府が危機感を持ってワクチン確保に全力を挙げることはもちろん、私たちも感染防止意識を高く保ちマスク着用の徹底などを続ける必要がある。 



長期戦(2021年4月13日配信『高知新聞』-「小社会」)

 政府が緊急輸入したワクチンは1300万人分。それを全国各地の乳幼児らにわずか1カ月で接種したのだから、関係機関の総力結集のたまものだろう。1961年夏の出来事。

 流行していたのはポリオ(小児まひ)だ。前年に感染者が急増し5600人を超え、61年はさらに増える勢いだった。頼みの綱は海外製の飲むタイプの生ワクチン。当時の古井喜実厚生相が旧ソ連などからの調達を決める。

 時代は冷戦のさなかだ。反対意見が相次いだのも無理はない。生きた状態のウイルスを使う生ワクチンにも不安の声が寄せられたが、古井氏は「責任はすべて私にある」と輸入に踏み切った。その覚悟の下に実施された全国一斉接種。効果は大きく、感染は激減する。

 新型コロナウイルス感染症ワクチンの高齢者への接種が始まった。こちらは60年前と違って、長期戦の様相だ。対象は高齢者だけで3600万人に上るが、ワクチン供給は遅い。

 コロナワクチンの総合調整役、河野太郎行政改革担当相が先月、かつての古井氏と似た言葉を発している。ワクチンが予定通りに確保できなければ、責任はすべて自分にあると。

 政府に求められるのは量の確保もあるが、いかに安全に、混乱なく接種を進められるかだろう。感染防止の啓発も根気よく続けなければならない。現場から「自治体に丸投げだ」とのぼやきが聞こえてくるようでは、長期戦に力は結集できまい。



高齢者ワクチン接種(2021年4月13日配信『佐賀新聞』-「論説」)

配分格差は許されない

 高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種がようやく始まった。世界中で流行を繰り返し、日本では「第4波」を迎えた新型コロナとの困難な戦いで、初めて形勢を逆転させ得る切り札だ。しかし日本では、先行した医療者の接種において地域、医療機関の間で遅速が生じ、不公平感が生まれている。全員に行き渡るとの信頼に基づくべき接種事業で、そうした格差は許されない。配分体制の再構築と情報発信の改善が急務だ。

 日本で接種に使われているファイザー社製のワクチンは、臨床試験や先行した各国の実績から死亡率や重症化率、さらには感染自体を防ぐ効果が既に実証されている。重症化、死亡のリスクが高い約3600万人の高齢者と、それに続く持病のある人への接種が進めば、感染者、死者が大幅に減ることは疑いがない。

 ところが肝心のワクチン供給量が足りない。高齢者はおろか、先行した医療者への接種さえ滞っているありさまだ。

 全国約480万人の医療者向け接種は、2回目までの配布が完了するのが5月の連休明けになる。現状では、ワクチンが最初に届けられる「基本型接種施設」の医療機関でも、まだ1回目の接種が終わっていない。当然、そこから配られるはずの小さな病院やクリニックでは、医療者が1度も接種を受けないまま診察に当たっている。医療現場の国への不信感は膨らむばかりだ。

 高齢者への接種でも開始時期が二転三転した。当初の3月下旬との目標が4月になり、結局中旬までずれ込んだ。本格接種は実態として5月に、必要な全量の配分は6月になる見込みだ。対象者の数に比べて極めて少ない供給量にもかかわらず、国が接種開始に固執した経緯には、政権による実績づくりではないかとの疑問が湧いてしまう。

 分配スケジュールの混乱により、自治体の準備作業はそのつど見直しを余儀なくされた。多くの自治体が、国が求める65歳以上一律という建前を外れて年齢や属性で細かい優先度を付けたのも、実は少ない供給量をどう生かすかに苦心した表れである。

 情報発信の課題もある。厚生労働省と都道府県の間で詳細に詰めたはずの段取りが、閣僚の発言一つで揺らぎ、自治体の担当者を混乱させることが散見された。確実な情報を一元的に取りまとめ、決まったルートで発信できるよう、意思統一を図ってもらいたい。

 「自分はいつ頃、接種を受けられるのか」という住民の疑問は早急に解消されなければならない。東京都八王子市で見られたような予約段階での混乱に、嫌気が差している高齢者もいるだろう。接種するかどうか迷っている人をいっそうためらわせ、ひいては接種率の低下につながることが懸念される。

 世界では既に人口の5%がワクチン接種を終えた。イスラエル61%、英国47%、米国35%に対し、日本ではいまだに1%にも届かない。日本の接種事業の遅れはもはや隠しようもないところだ。

 後れを取ったのは、ひとえに国産化ができず、輸入に頼らざるを得なかったからだ。自前で開発、生産する能力を育ててこなかったツケは大きい。研究開発と生産体制の強化にすぐにでも着手し、少なくとも次の変異株、新たな感染症の発生には間に合わせたい。(共同通信・由藤庸二郎)





高齢者ワクチン 先行接種の知見共有を(2021年4月11日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスワクチンの65歳以上の高齢者向け接種が、あすから始まる。

 当面は供給量が少なく、一部の自治体で限定して行われる。26日の週には道内179市町村全てにそれぞれ約500人分が届く予定で、本格化は5月以降になる。

 札幌市、江別市など先行接種する自治体での取り組みを検証し、そこで得られた知見を道内の市町村で共有していくことが重要だ。

 今回のワクチンは新技術を用いているため、その分国民には不安もあろう。効果や副反応についてより丁寧な説明が求められる。

 道や市町村は接種が円滑に進むよう、予約を含めた情報の提供と相談体制を、いっそう充実させる必要がある。

 道内の高齢者向けワクチンの対象者は166万人に上る。19日の週までに計1万1千人分のワクチンが届き、道は22市町にそれぞれ振り分ける。

 接種開始は江別市で12日、札幌市は14日以降を予定し、高齢者施設の入所者らに順次行う。

 政府は6月末までに全国の高齢者全員分を確保する方針だが、具体的な供給日程は示していない。

 そのため自治体は急にワクチンを配給されても、医師や会場を確保できないと困惑している。

 そもそも安倍晋三前政権は、今年前半までに全国民に提供できる量の確保を目指すとしていた。

 その後、国の方針は二転三転し、混乱を招いた。甘い見通しは厳しく問われよう。国は接種時期や供給量の目安など正確な情報を速やかに伝えるべきだ。

 道内は居住地が点在している地域もある。離島で生活する人たちもいる。車がなかったり、公共交通機関の利用が不便な高齢者もいよう。自治体はそれぞれの事情に細かく配慮しなければならない。

 医療従事者への先行接種では、重いアレルギーの「アナフィラキシー症状」の事例などが報告されている。ただ、医療設備の整った施設での接種であり、処置は迅速に行われただろう。

 高齢者への接種は体育館などでの集団接種も予想される。帰宅後に体調が悪くなる場合があるかもしれない。さまざまなケースを想定した入念な準備が欠かせない。

 全国の高齢者は約3600万人を数えるが、専門家は「接種が終わっても社会全体の感染は抑えられない」と警鐘を鳴らす。

 しかも一般の人たちの接種時期は不透明なままだ。感染予防の意識を高く持ち続けたい。



出羽守(2021年4月11日配信『高知新聞』-「小社会」)

 出羽守(でわのかみ)には、昔の出羽国の長官とは別の意味もある。「出羽」と「では」をかけて、「海外では」「他の業界では」といった具合に他者を引き合いに出して物事を語る人をいう。

 使われ始めたのはかなり古く、1950年ごろ。占領下の日本で政治家や芸能人の渡米ラッシュがあった。米国の文化に触れ、口を開けば「あちらでは…」。米国通をひけらかした姿から生まれた(鷹橋信夫著「昭和世相流行語辞典」)。

 海外の進んだ事例を紹介して、返す刀で日本の政治や社会を批判する論法をやゆする響きもある。とはいえ、最近つい「あちらでは…」と言いたくなるのが、日本の新型コロナワクチン確保の出遅れだろう。

 これまでに少なくとも1回の接種を受けたのは、人口の1%にも満たない。数十%のイスラエルや米英をはじめ、主要各国の後じんを拝している。途上国との南北格差という重い課題もあるが、五輪開催国としても「争奪戦激化を見通せなかった」と報じられる対応力は心もとない。

 あすから高齢者への接種が一部始まる。ただ、政府方針はこれまで二転三転。先に済ませるはずだった医療従事者への接種も遅れ、頭を悩ませる自治体も多いとか。政府の説明や情報提供はなお欠かせまい。

 それにしても、現政権は後世への教訓として、歴史的検証に耐える公文書をきちんと残しているのだろうか。この疫病に日本では、どう対応したのかを。





さばを読む(2021年4月10日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 秋に旬を迎えるサバは、今が産卵期。回遊しながらえさを採り、たっぷり脂の乗った秋サバは「嫁に食わすな」と例えられるほど。誰もが欲しがるものは、人の冷静さを失わせるのだろうか

▼傷みやすいサバの取引は時間との勝負。市場でサバを数えるとき、わざと急いでその数をごまかしたことが、「さばを読む」の語源とされるが、取り扱いの難しいものほど慌てず、間違いのないよう数えたい

▼65歳以上の高齢者を対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種が12日から始まる。ただ、供給量が限られ、希望者全員の2回接種は早くても6月以降となる見込みだ

▼政府は6月までに3600万人の高齢者分を調達できるとの見通しを示すが、先行きは不透明。今年前半までに全国民分を確保するとした政府計画の達成は難しい情勢にある

▼見通しというものは外れる方が不満も高まり、混乱を招くもの。自治体の接種の実施計画はたびたび見直しや一時中止を余儀なくされてきた。必要なのは、会場設置や人員確保の調製に忙殺される自治体職員の負担を軽減する確実な情報提供だろう

▼そもそも現在のワクチンは、感染防止より発症を防ぐことが主目的だ。温度管理も難しいワクチンには副反応の懸念もある。安全第一で接種を進めたい。そういえば秋サバを嫁に食べさせないのは、食あたりの恐れがあるからともいう。大切な配慮だろう。



高齢者にワクチン 不安解消に着実な接種を(2021年4月10日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染拡大の「第4波」到来への危機感が高まる中、感染対策の切り札と期待されるワクチンの接種が週明けから、65歳以上の高齢者を対象に始まる。

 コロナ感染による死亡者の多くは70歳以上で、高齢者ほど重症化のリスクも高い。ワクチンはいま増加している変異株に対する効果などに不透明な面はあるものの、接種の開始は朗報と言えるだろう。

 ただし、当面のワクチン供給量は少なく、接種を受けられる人は一部に限られる。まずは5月の本格実施に向け、混乱なく軌道に乗せることが大切だ。ワクチン供給量が少ない初期段階で課題を洗い出してほしい。

 12日に全国でスタートする高齢者へのワクチン接種を、どのような優先順位や方法で実施していくのか。その判断は各自治体に委ねられている。

 集団感染を警戒して高齢者施設から始める自治体もあれば、申し込みの先着順に始める自治体もある。

 九州でも、福岡市は当面、地域のかかりつけ医による個別接種と並行して、高齢の民生委員や自治協議会長らを対象とした集団接種などを実施する。北九州市はまず民生委員らに集団接種を実施し、高齢者には集団接種を原則として個別接種の併用も検討する、といった具合だ。

 全国では、予約殺到で窓口が混乱したケースもある。接種を受けるかどうかは最終的に本人が決めることでもあり、自治体は市民が不安を抱かぬよう、接種に関する情報を丁寧に周知することが求められる。

 現在、関西や首都圏を中心に再び感染が拡大している。コロナ対応の改正特別措置法で新設された「まん延防止等重点措置」の適用自治体も週明けから増えることになった。

 こうした中、高齢者へのワクチン接種はコロナの感染治療との同時進行となる。接種後の副反応の経過観察も重要で、集団接種の会場には医師や看護師を手厚く配置する必要もある。保健所や医療機関にかかる負荷が増大することは確実だ。要員の手当てが怠れない。

 離島やへき地でワクチン接種を担う医療従事者が不足しているとして、全国知事会などは医師や看護師を地方へ派遣する仕組み作りを国に求めている。都道府県単位でも医師会などと協議し、実効性のある支援策を早急に打ち出すべきだ。

 自治体の側には国からのワクチン供給の時期や量に関する情報が曖昧で計画を立てにくいという不満がある。政府はワクチンの量の確保に一段と注力するとともに、全体のスケジュールなどを小まめに示すべきだ。





国産ワクチンの遅れ 中長期的な戦略が必要だ(2021年4月8日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス対策で、政府が初めて緊急事態宣言を出してから1年が過ぎた。収束のめどが立たないばかりか、大阪で感染者が急増するなど、「第4波」への懸念が高まっている。

 対策の切り札とされるワクチンは、来週から高齢者への接種が始まるが、国民全体へ行き渡る見通しは示されていない。供給を輸入に頼っているためだ。

 世界では、ワクチン製造企業を擁する国で接種率が高い傾向がみられる。日本の接種率は1%に満たない。国内企業も開発に取り組んでいるが周回遅れだ。

 ワクチンは、パンデミック(世界的大流行)対策に欠かせない。だが、各国による争奪戦が激しさを増す中、海外頼みではおぼつかない。

 政府は、国内でのワクチンの開発を支えるために中長期的な戦略を立てる必要がある。

 2009年に流行した新型インフルエンザの際も、国産ワクチンの開発や供給が遅れた。政府の有識者会議は翌年、「可及的速やかに国民全員分を確保するため、製造業者を支援し、生産体制を強化すべきだ」と求める報告書をまとめた。

 しかし、その後もメーカー任せの状況は変わることはなく、具体的な国家戦略が示されることはなかった。

 一方、海外では官民協調の研究開発が進んだ。その蓄積が新型コロナワクチンに生かされ、迅速な実用化につながった。



へびつかい座(2021年4月8日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 オリーブの葉に包まれた国際連合旗の中央に、蛇が巻き付いた杖(つえ)がデザインされている。世界保健機関(WHO)のシンボルマーク。異様な感じもするが、ギリシャ神話に登場する名医アスクレピオスの杖で、医療の象徴とされる

◆アスクレピオスは優れた医術で死者さえもよみがえらせた。功績が認められ、死後は「へびつかい座」として祭られたとされる。医神として現代まで引き継がれ、その杖はWHOをはじめ、世界各国で救急車に描かれたり、記章に使われたりしている

◆7日はWHOの設立を記念した世界保健デーだった。毎年、テーマが設定されており、今年は「健康格差」となっている。新型コロナ感染に関わる不平等を克服するため、すべての国で希望の象徴としてワクチンが接種される世界を目指す

◆佐賀県でも医療従事者のワクチン接種が進み、週明けから65歳以上の高齢者へと広がる。供給の見通しも立たない中、接種事業を担う市町は大変だろうが、住民のために踏ん張ってほしい

◆アスクレピオスのように死者をよみがえらせるのはかなわずとも、守れる命は守りたい。医療に携わる人だけでなく、一人一人が感染予防を心掛け、窮地の社会を支える杖になる。星座の見分けもつかないが、どこかで見守っているはずの「へびつかい座」に願いを掛けて夜空を仰ごうか。



[ワクチン接種] 国は確実な供給情報を(2021年4月8日配信『南日本新聞』-「社説」)

 高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が12日から全国で始まる。鹿児島県内でも鹿児島市と大和村を皮切りに接種を開始する予定で、実務を担う各市町村で準備が進んでいる。

 ワクチンの接種がある程度広がってきた英国や米国では経済活動の再開が進むなど、明るい兆しが見えてきた。国内でも感染収束への切り札として期待が高まる。

 一方で、ワクチン供給の見通しは不透明で、医療従事者への優先接種も遅れ気味だ。いつ、だれに接種できるのか、全体像は見えない。自治体が着実に計画を立てられるように、国はワクチン確保と供給の確実な道筋を示さなければならない。

 新型コロナの確立された治療法がないなか、現在国内で承認されている米ファイザー社製のワクチンは発症率を95%減らす高い効果が報告されている。社会全体で接種が進めば、人口の一定割合が免疫を持つ「集団免疫」の状況になり、感染拡大を防ぐ効果が見込める。

 迅速で安定的な接種が必要だが、準備に取り組む自治体からは不安の声が上がる。最大の要因は国からの供給情報が乏しいことだ。

 河野太郎行政改革担当相は2日、5月下旬までに3600万人の高齢者の半数にあたる1800万回分の数量を自治体に配送できると説明した。しかし、政府の方針はこれまでにも二転三転している。自治体側に不信感が募るのは当然だ。

 南日本新聞が2月下旬~3月上旬に行ったアンケートでは、高齢者接種について県内43市町村の7割にあたる31市町村が「接種日程が不透明」という懸念を持っていることがわかった。

 自由記述欄には「供給日程を示してくれないことには対応できない」「日々情報が変わって確認に苦慮している」などの声があふれた。不確実な情報に困惑する職員の姿が浮かぶ。

 集団接種の場合、前例のない規模で実施され、円滑に進むかどうかも懸念材料だ。

 事前に訓練を行った自治体では、医師の予診に時間がかかったり、経過観察の待機場所で滞留が起きたりするなど、課題が浮き彫りになった。

 実際の接種では、副反応への対応も含め、さらに想定外の事態も考えられる。臨機応変に問題点を修正することが求められよう。
 大阪や東京など全国で感染者が増加している。「第4波」や変異株の広がりが接種に与える影響も心配だ。

 感染が再拡大すれば医師が医療の対応に取られて不足したり、住民が接種を控えたりする恐れもある。感染防止へいま一度、気を引き締めたい。





ワクチンはまだか 「救えるはずの命」を守れ(2021年4月7日配信『産経新聞』ー「主張」)

 いつになったら、新型コロナウイルスのワクチンを接種できるのか。

 欧米やイスラエルなどワクチン接種が進んだ国々では感染抑止の効果が顕著になっているというのに、日本はまだ、最優先の医療従事者にもワクチンがいきわたっていない。世界的なワクチン調達において、日本は大きな後れをとったと言わざるを得ない。ワクチン接種が遅れた分だけ感染者と死者は増えていく。

 「救えるはずの命」が日本では救えていない現実を、政府は重く受け止めなければならない。

 厚生労働省によると、国内では2月17日から今月5日までに、119万6884回の接種が行われた。このうち、2回目の接種は約24万回である。接種率は全国民の1%未満で、優先接種対象の医療従事者約480万人のうち、380万人以上が一度も接種を受けていない。

 12日からは高齢者への接種が始まり、医療従事者と高齢者への接種が同時進行する。優先順位の意味を考えれば、医療従事者への接種が終わってから、高齢者の接種を開始すべきだ。

 ワクチン調達の遅れを小さく見せかけるために同時進行に踏み切った、とみなされても仕方あるまい。本末転倒も甚だしい。政府と厚労省の「その場しのぎ的な対応」が、コロナ対策に対する不信の原因になっていると認識すべきである。

 3月末には小林史明ワクチン担当大臣補佐官が、民放番組に出演し、「接種会場ごとに打つワクチンが公表されるので、会場を選べば打つワクチンを選ぶことができる」などと述べたが、この発言を河野太郎行政改革担当相が撤回した。ワクチン行政の中枢で基本的な認識が共有されていないのでは、無用な混乱を招くだけだ。

 欧米に比べれば、日本は感染者、死者数は少ない。アジア、アフリカ、南米の多くの国のように中国やロシアをワクチン調達先の選択肢にはしない。

 ワクチン調達が遅れた客観的な理由はある。しかし、日本が置かれた状況を踏まえて国民の命を守るのが政府の責務だ。

 短期的にワクチン確保に全力を挙げながら、国産ワクチンの開発や感染症医療の体制整備などコロナ禍で露呈した中長期的課題にも、政府は本腰を入れて取り組む必要がある。



市町のワクチン接種(2021年4月5日配信『佐賀新聞』-「論説」)

少数者にも配慮を

 医療従事者向けの先行接種に続き、65歳以上を対象とする新型コロナウイルスのワクチン接種が12日の週以降、佐賀県内市町でも順次始まる。各市町は国から届くワクチンの供給量をみながら、臨機応変な対応が求められる。国からの供給予定などが日々変わり、市町が準備に忙殺される中で、交通弱者や障害者ら接種を受けるのが難しい少数者は置き去りにされてはいないだろうか。接種希望者が受けられない事態が生じないよう、入念に対応に当たってほしい。

 市町ごとの接種が始まるのを前に、鳥栖市では3月議会で議員から質問や要望が出された。同市は、市内40の医療機関で個別接種を予定しており、接種の順番は国の方針に沿って(1)65歳以上(2)基礎疾患がある人、高齢者施設などで働いている人、60~64歳の人(3)16~59歳の人と想定。妊婦は、接種のメリットとデメリットを医師と相談のうえで決めてもらうとの方針を説明した。

 高齢者の接種について、ある議員は「免許返納も進む中、接種地まで1人で行けない人も多いのではないか」と指摘。市は「個別接種なので送迎補助は考えていない」としつつも「(ワクチンが多く届いて)個別接種だけで対応できない場合は集団接種も視野に入れている。その際は送迎も考慮に入れたい」との考えを示した。交通の便が悪い北海道の町では、高齢者の移動手段を確保するためタクシーで送迎する所もあるようだ。県内の山間部などでも、交通手段を理由に接種が難しいと考えている高齢者はいないだろうか。地域の事情を基に点検してほしい。

 ある議員は、国が自治体に求めた「障害に応じた合理的配慮」を強く要望した。電話相談窓口を設ける際は、聴覚障害者のためにファクスやメールでも相談ができるようにし、接種会場では聴覚障害者向けにコミュニケーションボードを設け、視覚障害者向けに音声案内を行うという配慮だ。ワクチン接種では、正確な情報提供はもちろん、副反応への迅速な対応も不可欠になる。障害者らと迅速・確実に情報がやりとりできる準備は必須といえるだろう。

 ワクチン接種の進め方は、高齢者施設から始めたり、集団接種から始めたり、市町ごとに異なり、住民に十分な周知が必要になる。市報や町報、ホームページ、会員制交流サイト(SNS)など、さまざまな手段を使って分かりやすく情報を届けてほしい。接種が始まれば、予約当日、体調不良などで急に受けられないケースも出てくるだろう。限られたワクチンを無駄にしないため、鳥栖市はキャンセル時は必ず連絡を呼び掛けているが、こうした緊急時の対応も事前周知しておきたい。

 新型コロナを抑え込むには、ワクチンは一人でも多く接種することが望ましいが、副反応を心配する人もいる。今回の接種は努力義務とされ、個人の判断に委ねられている。鳥栖市の橋本康志市長は、接種の大前提の一つとして「接種していない人に対して、差別やいじめは避けなければいけない」とも強調した。接種を受けなかった人が地域で特定され、後ろ指を指される事態があってはならない。市町は接種の準備・対応と同時に、打たない選択をした住民への配慮を怠らないでほしい。(樋渡光憲)





ワクチン安全保障/国産製造促す取り組みを(2021年4月4日配信『河北新報』-「社説」)

 新型コロナウイルス対策の要となるワクチンの世界的な争奪戦が過熱している。開発国が、ワクチンを使って自国の影響力を高めるための「ワクチン外交」も活発化。防衛、食糧、エネルギーの各分野に加え、ワクチンが新たな安全保障の鍵となり得る局面も出てきている。ワクチン接種で大きく後れを取る日本にとって、自国生産を促す取り組みも必要ではないか。

 国内では医療従事者への接種が2月に始まり、高齢者の接種も今月から本格的に始まる。ただ、対象者の接種完了がいつになるのか、東京五輪・パラリンピックを控える中でも、見通せない状況だ。

 日本のワクチン接種の遅れは、顕著だ。接種が世界最速ペースで進むイスラエルをはじめ、世界では少なくとも70カ国が日本に先行した。 先行したのは欧米製薬大手との直接交渉で早々に必要量を確保した高所得国だけではない。欧米と対抗する中国、ロシアは自国ワクチンの提供や生産協力で関係強化を狙うワクチン外交を展開、それを積極的に受け入れる中所得国・途上国も多い。アラブ首長国連邦(UAE)などは中ロ製を積極的に受け入れ、集団免疫確立を急ぐ。

 こうした中、日本のワクチン供給元の欧州連合(EU)では域内に十分な量を供給できなくなることへの懸念などから、域内製造ワクチンの輸出管理強化を決めた。各国、各地域は囲い込みに躍起だ。
 現状のままでは、ワクチン確保までの時間と費用に常に不確定要素がついて回る。世界各地で確認されている変異株には、現行のワクチンが効かない懸念もある。改良ワクチンが求められ、さらなる別のウイルスが出現することになれば、同じ状況が繰り返されることになる。国際的な増産と分配の枠組みが求められるのは間違いないが、危機管理の面から国内の生産能力を高めることができないか。

 国内では、一部で海外製ワクチンの原液の受託製造が始まったほか、独自ワクチンの臨床試験に着手した製薬会社も出てきた。
 ただ、ワクチン開発には多額の資金が必要だ。欧米の製薬大手などと比べ、規模が小さい国内企業にとって、ワクチン製造に踏み出すのにリスクは大きいだろう。ここで、米国のトランプ政権下で行われた「ワープスピード作戦」のように、一定の成果を上げる開発企業に公的支援を行うことなどで、国産ワクチンの比率を少しでも高める仕組みを作ることはできないか。

 これまでのコロナ対応で投じられた巨額の国費の中では、「アベノマスク」事業など妥当性を問われる支出もあった。当面は、現行のワクチン接種の推進に全力を傾注すべきだが、将来を見据え、国産のワクチンや治療薬の製造を促すような、新たな公共投資の在り方を具体化すべき時期に来ている。



新型コロナ・ワクチン接種/供給の見通し具体的に示せ(2021年4月3日配信『福島民友新聞』-「社説」)
 
 新型コロナウイルスの感染を抑え込むためには、ワクチンを広く行き渡らせることが不可欠となる。国は安定供給に全力を挙げてもらいたい。

 ワクチン接種は、まず医療従事者向けから始まった。県内の対象者約7万人のうち、1回目を受けたのは1万4千人余りで、全体の約20%にとどまっている。2回分のワクチンが本県に届くのは5月になる見込みという。供給の遅れなどから、当初の予定よりずれ込んでいる現状だ。

 医療従事者への接種を高齢者らよりも先に進めているのは、患者の治療に当たる医師、看護師らを新型コロナから守り、医療体制を安定させるためだ。病床の使用率からみても、本県は厳しい状況が続いている。医療崩壊を招かないよう、効率的な接種に最善を尽くすことが重要だ。

 国は当初、医療従事者向けの接種をほぼ終えてから高齢者に移る想定だった。しかし、日程の遅れのため、高齢者と平行して接種を進めなければならなくなった。自治体の負担が増すのではないかといった懸念は拭う必要がある。

 県内で対象となる高齢者は約58万人に上る。郡山市が12日から接種開始を予定しており順次、各市町村で始まる。集団接種の会場確保、ワクチンの管理、医師や看護師の手配など、市町村が調整しなければならないことは多い。

 どの程度の量のワクチンが、どのくらいの頻度で配布されるかなど、国からの基本的な情報をもとに、会場を押さえたり、住民の接種予約を受け付けたりすることができる。ただ、詳細なスケジュールが伝わってこないといった声が市町村から上がっている。

 共同通信の世論調査ではワクチン接種計画について、遅いという回答が65.6%に達した。接種を待つ人に速やかに行き渡らせなければならない。国はスピード感を持って配布見通しなどを逐次、示していくことが求められる。

 医療機関が限られている自治体は少なくない。河沼、大沼両郡や、福島市と飯舘村など、複数の自治体が連携して接種体制を構築する動きが出てきた。

 集団接種の流れを確認する模擬訓練を実施した自治体もある。県は訓練を通して浮き彫りになった課題などの情報を共有化し、接種が円滑に進むよう市町村を支援してほしい。

 ワクチンを接種した後のアナフィラキシーなどの副反応を心配する人に対しては、相談態勢を十分に整え、不安解消に努めていくことが大切だ。





あまりに軽々しい発言(2021年4月1日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 <史上最低の遊園地>-。30年以上前の4月1日、新聞各紙にそんな広告が載った。「ただ回るだけ」「乗ったと思ったらすぐ終わり」と遊戯施設をこき下ろし、父親は「来るんじゃなかった」と頭を抱える

▼東京の遊園地としまえんを訪れた家族が、そのひどさに愕然[がくぜん]とする、という設定。当時はバブル景気に沸いていて、際物[きわもの]的な広告が受け入れられる土壌があったという(鈴木拓也著『世界のエイプリルフール・ジョーク集』中央公論新社)

▼もちろん4月1日だから許される冗談で、この広告が評判を呼び来園者が急増したらしい。きょうは嘘[うそ]をついてもいい日とされるエープリルフール。それを意識したわけではなかろうが、政府内からどうにもいただけない発言が飛び出した

▼新型コロナウイルスのワクチンを巡り、小林史明内閣府大臣補佐官は複数メーカーの接種が始まれば希望する社を選べるようになる、と述べた。接種会場ごとにワクチンを決め、それが公表されるので、会場を選べばワクチンも選べる、と

▼それを聞いたワクチン担当の河野太郎行政改革担当相は「撤回しておわびする」と大慌て。選択制については何も決まっておらず、「完全な勇み足」だという。嘘というより口が滑らかすぎた結果のようだが、あまりに軽々しい発言である

▼欧米に比べてワクチン確保は出遅れ、65歳未満の一般向け接種がいつ始まるかも分からない。その上、政府の情報発信が迷走すれば国民の混乱は極まる。たがを締め直す必要がありそうだ。





高齢者のワクチン接種 混乱招かぬ指針の提示を(2021年3月29日配信『毎日毎新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染対策で、高齢者約3600万人に対するワクチンの優先接種が4月12日から始まる。

 供給量が非常に限られる中でのスタートだ。各自治体は接種体制を整えるとともに、住民向けの窓口対応にも当たらなければならない。情報不足で混乱が起きないよう、政府は接種の進め方について基本的な指針を示すべきだ。

 高齢者向けに4月中の配布が確実なワクチンは約140万人分で全体の4%弱にとどまる。特に初回は全国でわずか約5万人分だ。

 感染状況などに応じた配布ではなく、全都道府県に一斉に配られる。どの市区町村で接種を始めるのか、対応を委ねられた各都道府県は判断に苦慮してきた。

 接種業務を担う市区町村では、集団接種を先送りするところがある。クラスター(感染者集団)発生のリスクが高い高齢者施設の入所者から接種を始めるなど計画を見直している。

 配布量は5月から増える見込みだ。地域の状況によっては、十分な在庫を確保してから本格的な接種を始めてもよいのではないか。

 高齢者向けの配布完了は6月になるという。その後、基礎疾患のある人から一般の人へ対象が広がる。接種期間の長期化は必至だ。

 政府はどのような接種計画が効果的なのか、専門家の意見を聞きながら対応する必要がある。ワクチンは今後も海外からの輸入が中心となる。予定通り確保できるように、働きかけを続けるべきだ。

 接種に伴う副反応について、厚生労働省の専門部会は「現時点で安全性に重大な懸念はない」と説明している。

 それでも、不安を抱いている人は少なくないだろう。できるだけ多くの人が安心して接種を受けられるよう、副反応についての情報を迅速に分かりやすく国民に伝えることが欠かせない。

 早ければ5月中に、新たなワクチン2種類の使用が承認される見通しだ。接種の対象者や方法に応じてどう使い分けるのか、政府は早急に考えを示すべきだ。

 緊急事態宣言の全面解除に際し、菅義偉首相は感染対策の柱の一つに「安全、迅速なワクチン接種」を挙げた。政府は自治体任せにせず、その役割を果たすべきだ。





「集団免疫」獲得への一助(2021年3月24日配信『東奥日報』-「天地人」)

 医療従事者向けの新型コロナワクチン優先接種が進み、4月12日からは本県でも、高齢者への接種が青森市とむつ市を先陣として始まる。世界中で奪い合いになっていることからも想像できるように、ワクチンの有効性はかなり高いとされる。しかし、国民には副反応への不安などから、ワクチンそのものに対する不信感が根強い。

 記憶に新しいのは2013年に定期接種が始まった子宮頸(けい)がん予防の「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」。全身の痛みなどを訴える人が続出したため国が積極的な勧奨を中止し、普及が進む海外とは対照的な状態になっている。

 2月の共同通信社の全国電話世論調査では、無回答などを除くとコロナワクチンを「接種したい」が6割強で、「接種したくない」が3割弱だった。死亡リスクが高い高年層ほど肯定的なのに対し、中年層の女性が否定的だった。

 副反応の中でも要注意なのが重いアレルギー反応の「アナフィラキシー」。厚生労働省の専門部会はこれまでに、7人が発症したが投薬で治癒したと公表し「現時点で安全性に重大な問題はない」と結論づけている。

 接種率向上へ、22日に開設されたコールセンター「青森県新型コロナワクチン相談電話」の取り組みにも期待したい。副反応などについて医学的な知識を丁寧に説明すれば「集団免疫」獲得への一助になるだろう。





ワクチン接種 混乱避ける支援が必要(2021年3月22日配信『北海道新聞』-「社説」)

 65歳以上の高齢者を対象に新型コロナウイルスのワクチン接種が4月12日から始まる。当面は供給が限られるため、本格実施は4月26日以降になる見通しだ。

 国からのワクチン接種に関する情報の遅れや度重なる日程変更で、自治体は接種体制の見直しを余儀なくされている。

 高齢者に続いて行われる持病のある人や、一般の人たちなどへの接種時期はまだ示されていない。

 自治体にとっては経験のない大きな事業だ。入念な準備なくして本番を迎えれば混乱や事故につながりかねない。

 国は接種の日程や供給量の目安など正確な情報を速やかに自治体に伝える必要がある。

 高齢者への接種は市区町村や対象者を絞った限定的な形で始まる。接種が先行する医療従事者が、想定した約370万人から約500万人に膨らんだため、接種は並行して行われる見込みだ。

 自治体はこれまで医師や看護師の確保で苦労してきたが、さらに調整が難航しないか懸念される。

 接種体制の整備に取り組む自治体からは国の補助では財源が足りないという声も出ている。自治体ごとの地域事情に配慮した支援策の拡充が欠かせない。

 道内は面積が広い。市町村間の距離もあり、地域によっては集団接種に必要な人員の確保も難しいという。接種を円滑に進める上では道の手だても重要だ。

 ワクチンの供給量や時期について、日本政府の説明は二転三転してきた。世界的なワクチン争奪を背景にした欧州連合(EU)の輸出規制強化も影響している。

 だが、政府の見通しに甘さがあったことは否めない。情報を精査して確証が得られたものを提供するべきだ。

 医療従事者への先行接種で得られた副反応の情報は有益だ。特に重いアレルギー反応のアナフィラキシー症状への関心は高い。国民への詳しい開示が求められる。

 ワクチン接種が広く行われ、感染が収束して「日常生活」に戻るには、「年単位の時間がかかる」という専門家の見方もある。

 広がる変異株への対応をはじめ、来年以降もワクチン需要が続く可能性がある。海外に依存しているだけでは供給が思うように進まないことは、一連の政府の対応を見れば明らかだ。

 国産ワクチンへの国民の期待は大きい。開発がどこまで進み、どういう見通しなのか―。政府にはしっかり説明する責任がある。





日米豪印首脳会合 ワクチン、公平な分配を(2021年3月16日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国首脳会合がテレビ会議方式で開かれ、新型コロナウイルスワクチンの発展途上国への普及に向けて生産拡大での連携を確認した。来年末まで10億回分の供給を目指す。ワクチンの公平な分配は解決すべき世界の共通課題だ。

 ワクチン確保については国家間の格差が問題となっている。欧米各国が奪い合うように自国分のワクチン確保に躍起となっている中で取り残されている国々がある。支援を急ぐ必要性は言うまでもない。

 10億回分供給の声明は、ワクチン供給を通じて途上国への影響力を強めようとしている中国やロシアを意識したものでもある。先月開かれた先進7カ国(G7)首脳のテレビ電話会議に続く途上国へのワクチン供給支援の表明となった。

 コロナの流行収束が見通せない中、ワクチン争奪戦は激化する一方だ。増産体制は確立されておらず、声明の実現は容易なことではない。

 ワクチン生産国であり、感染者・死者がいずれも世界最多の米国はバイデン大統領が国内供給に注力する。争奪戦に出遅れた日本は自国分の確保も不透明な状況。ようやく医療従事者向けの接種が始まったが、国内生産にはしばらく時間を要する。

 それでも先進国の一員として日本がワクチンを接種会場まで運ぶ「コールドチェーン」(低温物流)整備へ資金協力などで貢献するのは当然だ。米国と共にインドの輸出向けワクチンの生産能力を高めるための支援も検討。オーストラリアは東南アジアへの供給を支援する。

 供給量は大きいが、来年末までという目標は随分先だ。それでは各国の「一日も早く」という要望に応えることはできないだろう。可能な限り日程を前倒しするよう取り組んでほしい。

 国連機関などが進めている公平分配の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」の出番でもある。豊かな国が出資し、共同購入したワクチンを世界に配布することはコロナ克服のために欠かせない。

 G7首脳会議と日米豪印首脳会合はいずれも、COVAXとの緊密な協力を確認した。ワクチンの第1便が既にアフリカやアジアの途上国に届き始めている。早期接種を望む途上国の期待に応えたい。

 日米豪印首脳会合の共同声明は、東・南シナ海での「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦」には協力して対応すると強調。海洋進出で強権的な姿勢の中国をけん制する狙いだ。

 その一方で世界の共通課題に取り組む役割に期待が高まる。ワクチン供給と気候変動、重要・新興技術を扱う三つの作業部会発足が表明された。4カ国が経済、社会、技術面で協力を強化することは意義深い。まずはワクチンの供給拡大という喫緊の課題で成果を上げ、存在感を示してもらいたい。



ワクチン詐欺 不安につけ込む卑劣な犯罪だ(2021年3月16日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、現金をだまし取ろうとする詐欺行為が各地で報告されている。人々の不安に乗じた許し難い犯罪だ。被害に遭わぬよう注意したい。

 全国の消費生活センターには、今年に入ってワクチン詐欺の相談が相次いでいる。警察にも同様の通報が寄せられている。

 保健所職員を装い、「ワクチンを優先的に接種できる。後日、返金するので10万円を振り込んで」などと求める電話がかかってくるという。「接種の手続きに伺いたい」と、住所を聞き出そうとするケースも確認されている。

 正規のワクチン接種は全額公費負担のため、無料で受けられる仕組みで、自治体から案内や接種券が郵送されてくる。料金の支払いを求めたり、個人情報を聞き出そうとしたりする電話やメールは、まずは詐欺を疑うべきだ。

 今後、ワクチン接種が本格化すると、こうした卑劣な犯罪がさらに増える可能性がある。不審な要求があれば、一人で悩まず、警察などに通報してもらいたい。

 4月から始まる高齢者向けの接種では、ワクチンの配分量が極めて少ない。そのため、接種のスケジュールを遅らせる自治体が出るなど、一部に混乱もみられる。

 情報のあいまいさは人々の不安につながり、詐欺グループにつけ込む隙を与えることになる。政府や自治体は、接種の時期や規模について、正確できめ細かい情報発信に努めなければならない。

 コロナに便乗した犯罪は、他にも起きている。昨年1年間に全国の警察が確認した特殊詐欺事件のうち、コロナ関連は55件、被害額は計約1億円に上るという。

 山梨県に住む70歳代の女性は息子を名乗る人物から「PCR検査で陽性だった。助けて」という電話を受け、1500万円をだまし取られた。給付金の受け取り用に口座を作り直すとして、キャッシュカードを取られた人もいる。

 狙われるのは、多くが高齢者だ。コロナ禍で在宅時間が長くなり、自宅で電話をとる機会も多いだろう。現金やカードを受け取りに来た犯人がマスクで顔を隠していても、今は違和感を覚えない。

 警察は、こうした詐欺の被害が拡大しないよう、取り締まりに力を入れる必要がある。

 被害に遭わないためには、留守番電話や自動録音機能を活用するなど、自衛策を講じることも大切だ。高齢の親と離れて暮らす家族は、不審な電話や見知らぬ人の来訪がないか目配りしてほしい。



ワクチン接種 不安払拭へ丁寧な説明を(2021年3月16日配信『新潟日報』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチン先行接種が医療従事者らの間で進んでいる。4月には県内でも高齢者向けのワクチンの配分が始まり、大型連休後に接種が本格化する見通しだ。

 ワクチンが安全なのかどうか、不安に感じている高齢者もいるだろう。国は先行接種で分かった副反応など事例を詳しく分析して説明し、安心できる接種体制を整えてもらいたい。

 国によると、米ファイザー製のワクチン約1億回分(約5千万人分)が6月末までに調達できる見通しとなった。

 県内では4月5日の週に新潟市など6市町に初回が配分され、3週間余りで全市町村に届けられる計画だ。県内高齢者の約1・5%に当たる約1万人分で試行的な接種が始まる。

 各市町村はクラスター(感染者集団)が発生しやすい高齢者施設の入所者を優先するなど、それぞれ準備を進めている。

 厚生労働省の専門部会はワクチンについて「現時点で安全性に重大な問題はない」としている。高い予防効果は海外の接種事例でも報告されている。

 とはいえ、誰もがこのワクチンの接種は未経験だ。接種後の体調変化などを丁寧に説明し、不安を払拭(ふっしょく)する必要がある。

 分かっているのは、まれに重いアレルギー反応のアナフィラキシーを示す人がいることだ。

 厚労省によると、9日までに接種した約10万7600人のうち7人が国際的な基準でアナフィラキシーに該当した。

 アナフィラキシーは、血圧低下などに加えて息苦しさやせきなど呼吸器の症状と、じんましんやかゆみといった皮膚の症状の両方が出る。

 女性に多いといい、今回確認された7人も全員女性だった。

 先行接種では、9割の人が翌日に痛みを訴えていることも分かってきた。

 政府は副反応と性別、年齢や既往症などとの関連についてしっかりと説明し、国民の安心につなげてもらいたい。

 円滑な接種を進める上で懸念されるのは、ワクチンの供給に確実な見通しが立たないことだ。各国間で争奪戦が激化し、供給は生産国に偏っている。

 菅義偉首相は国内生産の体制確立は「極めて重要な危機管理だ」との認識を示しているが、時間がかかるのは必至だ。

 欧米製を確保する約束で満足し、先を見通せなかった政府の甘さを指摘せざるを得ない。

 4都県で延長している緊急事態宣言の期限は21日に迫る。

 一方で厚労省が13日までにまとめた指標では、27都道府県で1週間の新規感染者数が前の週を上回った。

 専門家は、日本人の6、7割が年内に接種を受けたとしても、今年の冬までは感染が広がるとの見方を示している。基本的な感染防止対策がこれからも欠かせないということだ。

 ワクチン接種が始まる安心感は緩みを招き、感染再拡大を引き起こしかねない。そのことを肝に銘じ、確実な収束に向けて一人一人が対策を徹底したい。






増産と公平な分配 実現を/途上国とコロナワクチン(2021年3月13日配信『東奥日報』-「時論」)

 日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国はオンラインによる初の首脳会合で、発展途上国への新型コロナウイルスワクチンの供給促進を議題の一つに据えた。

 背景には中国のワクチン外交への対抗意識があり、感染症との闘いに国際政治がつきまとう現実を反映している。とはいえ先進7カ国(G7)首脳の会議に続き、国際社会は結束してワクチンの増産と公平な分配に全力を挙げなければならない、とのメッセージを送ったと受け止めたい。

 新型コロナ制圧の切り札と期待を集めるワクチンの投与は先進国、あるいは生産拠点を持つ国に偏っている。バイデン米大統領は「5月1日までに米国の全成人を接種対象とするよう各州に指示する」と表明した。

 一方、多くの途上国では医療従事者の接種さえ始まっていない。自国民のためのワクチン確保に血眼となる先進国を横目に、中国やロシアは途上国へのワクチン提供を通じて存在感を強める外交を展開している。

 こうした状況が長引く限り、途上国では感染が続く。変異を繰り返してワクチンが効かないウイルスが出現する可能性も大きくなる。ワクチンが有効でなくなれば、世界経済の回復もまぼろしになる。危機回避の鍵は、公平な分配の実現だ。

 世界中が同じペースで接種計画を進め、全ての国の医療従事者、次いで高齢者や持病のある人々が接種を受けるのが公平な分配の理想だが、現実には自国民を優先しない国はない。

 現実と理想のギャップを埋めるため、国連機関などが進めている公平分配の国際的枠組みが「COVAX(コバックス)」だ。豊かな国が出資し、共同購入したワクチンを世界に配布する。トランプ前米政権はこの枠組みに背を向けていたが、バイデン政権は参加に転換し、G7首脳は2月の会議で、中心的役割を果たす姿勢を確認した。

 調達したワクチンの第1便がアフリカやアジアの途上国に届き始め、3月初めにアフリカのガーナとコートジボワールで初の接種が実現した。まずは5月末までに英製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンを142カ国・地域に供給する計画だが、十分な量を世界に行き渡らせるまでの道は長く険しい。

 国連のグテレス事務総長はパンデミック(世界的大流行)丸1年に合わせた11日の声明で「豊かな国が買い占め、製薬会社と取引を続けることが全ての人にワクチンを届けることを妨げる」と先進国にくぎを刺した上で「世界は結束し、ワクチン製造能力を少なくとも2倍にする必要がある。われわれが力を合わせてこそ、流行を終わらせ、経済を回復できる」と強調した。

 インドはCOVAXが配布するワクチンの主要な供給元であり、生産能力増強に期待したい。安価なジェネリック医薬品(後発薬)やワクチンの生産大国で「世界の薬局」を自負するインドは、これまで近隣諸国へのワクチン外交も試みてきたが、あくまでCOVAXを通じて貢献してほしい。

 国内でワクチン生産の見通しが立たない日本はCOVAXへの資金提供に加え、ワクチンを運ぶ「コールドチェーン」(低温物流)整備などで途上国を援助する方針だ。支援を惜しまず各国と力を合わせたい。



生き物のドキュメンタリー映像で…(2021年3月13日配信『毎日新聞』-「余録」)

 生き物のドキュメンタリー映像でいつも感嘆するのは、葉脈や虫食いの跡まで本物の木の葉や木の枝そっくりのチョウやナナフシなどの昆虫の擬態の妙である。そこに造化(ぞうか)の神様のたくらみを感じる方もいよう

▲このみごとな造形も、鳥などの捕食者の視力の発達と、それをくらまして生き残る虫の進化の競争の所産という。相互の進化を加速させるこのプロセスは、対立する国同士の軍備拡張になぞらえて、進化的軍拡競争と呼ばれるそうだ

▲この「軍拡競争」を思い浮かべたのは、新型コロナのワクチン接種の進展の一方で、その変異株の感染拡大が伝えられているからだ。人が守りを固めれば、すぐにウイルスも攻撃の新手を繰り出す。いや、むろん見かけ上の話である

▲感染力の強さに加え、英国型で致死率増の推計も報じられる変異株である。国内独自の変異株の懸念も伝えられる。ワクチンの効果への変異の影響が心配される一方、変異に対応したワクチンの治験も始まり、「競争」は止まらない

▲緊急事態宣言の期限の迫る首都圏では新規感染の再燃が目立ち、そこには変異株の影がちらつく。かねて検査態勢の弱さが批判された日本のコロナ対策だが、変異株の実態把握が必要な今になって守りの破綻(はたん)をもたらさないだろうか

▲常に変異を繰り返すウイルスに悪意やずる賢さを感じるのは人の勝手な夢想だろう。ウイルスとの「競争」の本質は、人の手抜かりを容赦なく突いてくる自然の摂理と適切に向き合えるかどうかの一事だ。



途上国とワクチン(2021年3月13日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆公平分配に国際社会結束を◆

 日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国はオンラインによる初の首脳会合で、発展途上国への新型コロナウイルスワクチンの供給促進を議題の一つに据えた。中国のワクチン外交への対抗意識が背景にあり、感染症との闘いに国際政治がつきまとう現実を反映している。

 とはいえ、国際社会は結束してワクチンの増産と公平な分配に全力を挙げなければならない、とのメッセージを送ったと受け止めたい。

 新型コロナ制圧の切り札と期待を集めるワクチンの投与は先進国、あるいは生産拠点を持つ国に偏っている。バイデン米大統領は「5月1日までに米国の全成人を接種対象とするよう各州に指示する」と表明した。

 一方、多くの途上国では医療従事者の接種さえ始まっていない。自国民のためのワクチン確保に血眼となる先進国を横目に、中国やロシアは途上国へのワクチン提供を通じて存在感を強める外交を展開している。

 こうした状況が長引く限り、途上国では感染が続く。変異を繰り返してワクチンが効かないウイルスが出現する可能性も大きくなる。ワクチンが有効でなくなれば、世界経済の回復もまぼろしになる。危機回避の鍵は公平な分配の実現だ。

 世界中が同じペースで接種計画を進め、全ての国の医療従事者、次いで高齢者や持病のある人々が接種を受けるのが公平分配の理想だが、現実には自国民を優先しない国はない。

 現実と理想のギャップを埋めるため、国連機関などが進めている公平分配の国際的枠組みが「COVAX(コバックス)」だ。豊かな国が出資し、共同購入したワクチンを配布する。その第1便がアフリカやアジアの途上国に届き始め、3月初めにアフリカのガーナとコートジボワールで初の接種が実現した。

 5月末までに英製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンを142カ国・地域に供給する計画だが、十分な量を世界に行き渡らせるまでの道は長く険しい。国連のグテレス事務総長はパンデミック(世界的大流行)丸1年に合わせた11日の声明で、「豊かな国が買い占め、製薬会社と取引を続けることが全ての人にワクチンを届けることを妨げる」とくぎを刺した。

 安価なジェネリック医薬品やワクチンの生産大国で「世界の薬局」を自負するインドは、COVAXが配布するワクチンの主要な供給元であり、生産能力増強に期待したい。国内でワクチン生産の見通しが立たない日本はCOVAXへの資金提供に加え、ワクチンを運ぶ「コールドチェーン」(低温物流)整備などで途上国を援助する方針だ。各国と力を合わせたい。





江戸時代のビジネス指南書といわれる井原西鶴の…(2021年3月12日配信『毎日新聞』-「余録」)

 江戸時代のビジネス指南書といわれる井原西鶴(いはらさいかく)の「日本永代蔵」に、母子2代で大坂・北浜の大商人に成り上がった話がある。母はまず米俵に刺して中身を検品する米刺しからこぼれるわずかな米に目をつけた

▲ホウキで集めて日々の糧(かて)にしたが、北浜の米の扱い量が急増すると集めた米も売るほどになる。20年で銭12貫以上がたまった。息子は米俵のわらを拾い集め、銭の穴に通すヒモにして売り出した。商売は成功、両替商への道が開ける

▲ちりもつもれば山となる。「始末大明神のご託宣にまかせ、金銀をたむべし」は西鶴の言葉で、「始末」とは倹約のこと。そして今、商人より新型コロナのワクチン接種関係者が耳を傾けるところとなった始末大明神のご託宣である

▲本来5回分の1瓶から、特殊な注射器で6回分取るのが欧米で一般化したファイザー社製ワクチンである。今度はさらにインスリン投与用注射器だと7回分取れるという医療現場の提言が注目を集めた。上には上の「始末」の工夫だ

▲針の短いインスリン注射器では皮下脂肪の厚さの事前検査も必要だが、新開発の7回用注射器の生産も近く始まるという。いじましくも見える始末の努力だが、ワクチンの世界的供給不足と見通せぬ先行きを思えば無駄ではなかろう

▲1瓶で接種できる人が2人増えれば、高齢者約3600万人への接種で1400万人分以上が節約できる計算になる。北浜の母子ならば見逃すまい。注射器に残ったまま捨てられる貴重なワクチンの滴(しずく)を。



ワクチン接種 的確な情報提供で混乱避けよ(2021年3月12日配信『読売新聞』-「社説」)

 限られたワクチンを有効に使い、円滑に接種を進めねばならない。政府は、供給見通しなどを正確に伝え、市町村の準備を後押しすべきだ。

 高齢者への新型コロナウイルスのワクチン接種が、4月12日から始まる見通しとなった。当面は供給量が少ないため、本格化するのは4月26日以降になるという。

 高齢者は、感染すると重症化する割合が高い。できるだけ多くの人が免疫をつけ、社会全体で流行を防ぐことが望ましい。

 政府は、4月5日の週からワクチンを配送する。東京、大阪、神奈川に約2000人分、残る44道府県には約1000人分ずつ配り、その後は、量を増やしていく。4月最終週には、全市町村に約500人分ずつ配る予定だ。

 広く行き渡らせることを優先したため、ごく少量になったのは残念というほかない。

 4月末までに配られる高齢者向けワクチンは、1瓶5回分とすると約140万人分にとどまる。高齢者約3600万人の4%弱しかカバーできない。

 ワクチンは世界的に不足しているとはいえ、十分な量を早期に確保できるよう、政府は一層の努力を尽くしてもらいたい。供給が限られる現状について、率直に説明することも必要だろう。

 市町村は、接種体制の見直しを余儀なくされている。4月中の集団接種は見送り、まずは高齢者施設などでの訪問接種に切り替えるところが少なくない。

 ワクチンへの期待が高まる中、市町村が住民への説明に苦慮する場面も生じている。政府は自治体が混乱しないよう、優先的に接種する人の目安を示すなど、実情を踏まえた対策を講じてほしい。

 河野行政・規制改革相は、6月末までに、すべての高齢者分を確保できるとの見通しを示した。

 医療従事者や会場の確保などの準備に追われる市町村にとって、供給量や時期についての情報は不可欠だ。現実的なスケジュールで接種を進められるよう、政府は甘い見通しを排し、適切に供給予定を明らかにすることが重要だ。

 医療従事者への優先接種では、副反応が疑われる事例が複数あったが、いずれも回復しているという。わかりやすく情報を提供し、冷静な対応を促したい。

 政府・与党には、より多くの人に接種するために、海外の事例を参考にして、今は3週間としている接種間隔を広げるべきだとの意見がある。十分な効果が得られるのであれば、検討に値しよう。





なぜこれほど後れをとったのか(2021年3月8日配信『産経新聞』-「産経抄」)

「5月末までに米国の全成人に行き渡らせるワクチンを確保する」。バイデン米大統領は先週、新型コロナウイルス対策についてこう述べた。今のところワクチンを輸入に頼らざるを得ない日本はどうだろう。

 ▼5月末といえば、全成人どころか高齢者以外の接種は始まってもいないのではないか。複数の国内メーカーが開発を進めているものの、実用化にはまだ時間がかかる。科学技術立国を標榜(ひょうぼう)する日本が、なぜこれほど後れをとったのか。

 ▼ワクチン開発には巨額の費用が必要である。年間数千億円もの研究開発費が使える米大手製薬会社に対して、国内メーカーはとても太刀打ちできない。日本の場合、過去の薬害訴訟の影響から、承認までの時間が長くなる。どの理由ももっともらしいが、いちばん納得できたのが、作家の井沢元彦さんの指摘である。

 ▼夕刊フジの連載コラムで、日本は「細菌戦を想定していない」と書いていた。米国やロシア、中国などでは、未知のウイルスによって国民が危機にさらされる事態を想定して、常日頃からワクチンの大量生産の準備をしている、というのだ。自国で生産しなくても、他国に先駆けてワクチンを確保したイスラエルのような国もある。





偉人の思い(2021年3月6日配信『福島民報』-「あぶくま抄」)

 新たな感染症のワクチン接種が世界中で進められている。県内でも医療従事者らを対象にスタートした。感染の収束が見通せない中、いつ受けられるのか気掛かりな人は少なくないだろう。

 ワクチンは、さまざまな病の予防接種に使われている。研究で功績を残した人物として、イギリスの医師エドワード・ジェンナー(1749~1823年)が名高い。牛がかかる牛痘によって天然痘への感染を防げると突き止め、1798年に公表した。その手法は世界に広まり、たくさんの命を奪ってきた病の根絶につながった。

 ジェンナーは数々の栄誉を手にしたが、古里の小さな村にとどまった。自宅の庭にある小屋で、貧しい人に無料で天然痘の予防接種を施したと伝えられる。人々を苦しめる感染症から、1人でも多く救おうとする生き方に、心を打たれる。生涯を医療にささげ、後に「近代免疫学の父」と呼ばれるようになった。

 現在、各国によるワクチン争奪戦が激しさを増している。一部の国が囲い込んでしまえば、接種を待ち望む人々の不安は増す。世界中の多くの人に、できるだけ速やかに行き渡ってほしい。天国の偉人も、そう願っているはずだ。





[ワクチン接種]供給量も情報も足りず(2021年3月4日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチンを載せた航空機の第1便が那覇空港に到着した。早ければ明日にも新型コロナ診療に関わる医療従事者への接種が始まる。

 今週届くのは7箱で、来週さらに7箱届く予定だ。合わせて1万3650~1万6380人分の接種1回目の量となる。月内に、2回目の分が届く見通しだが、以降の供給は未定という。

 県は、優先接種に該当する医療従事者約5万7千人の中でも、感染患者の入院を受け入れている重点医療機関から配分する考えだが、供給量は足りていない。

 地域によっては、救急救命士ら消防関係者にも接種されるといい、現場の実情を勘案した柔軟なワクチン接種の動きは、歓迎したい。

 医療従事者に続いて、4月12日から65歳以上の高齢者への接種が始まる。だが、12日に合わせて政府が沖縄に発送するのは、最大でも1170人分だ。全高齢者に必要な量が行き渡る時期は不透明で、小分けに届くワクチンをどう優先順位をつけて、市町村に配分していくのか、県は対応に苦慮している。

 医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で、高齢者数が限られる離島から優先的に接種するかなど、感染状況も見極めた上で、複数案の検討を進めている。

 医師の数が限られる離島での接種には、県立病院や医師会などの協力が欠かせない。県と国、市町村が密接に連携し、官民一体となって、県民の大部分にワクチンを接種するという前例のないプロジェクトを成功させてほしい。

■    ■

 政府は当初、高齢者への接種開始を3月下旬と想定していた。ところが、「早くても4月1日以降」など次々と後退している。

 河野太郎行政改革担当相が4月中に供給できると語ったワクチンの量は当初の想定に比べて、あまりにも少ない。4月に一斉開始が見込まれていた高齢者への実施は、極めて限定的になる。高齢者の接種が遅れれば、その後の基礎疾患者や高齢者施設で働く人への接種もずれ込むだろう。

 供給が見通せないままでは、実務を担う市町村が混乱するのは当然である。

 政府には、一刻も早く、供給量や配分日程を公表してもらいたい。

 ここにきて、気になる事例が出ている。ワクチンを接種した基礎疾患のない60代女性が、接種から3日後にくも膜下出血で亡くなった。偶発的な事例の可能性もあるが、因果関係について情報公開と国民への丁寧な説明が必要だ。

■    ■

 県独自の緊急事態宣言は、先月で終了した。しかし、新規陽性者の確認は連日2桁が続き、油断すれば一気に感染拡大につながる恐れがある。

 玉城デニー知事は新年度を控え、県民へ引き続き感染対策を呼び掛けている。歓送迎会の自粛や会食は2時間以内・4人以下など県が示した行動方針を改めて確認したい。

 県民全体へのワクチン接種が終わるのは、年を越しそうだ。気を緩めず、マスク着用や手洗いなどの「新しい生活様式」を引き続き、徹底してほしい。



ワクチンなくても東京五輪開催最優先(2021年3月4日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★2日、自民党幹事長・二階俊博は「別に、ワクチンと衆議院の解散は関係あるようではありますが、ワクチンで衆議院を解散するとかしないとかっていうことは別に考えておりません」と発言。その一方で「解散する場合は、想定される諸課題はできるだけ解決して国民の理解を得られるような状況を作っていくことが大事だ。解散は総理の一存で決めることだが、幹事長の立場としては明日あってもいいように準備している」とした。

★前段の発言が踏み込みすぎたと見えて、途中で修正を加えた発言だが、二階の言うように、今自民党が気にしているのはワクチンではなく、東京五輪開催の起爆剤を都議選と衆院選にどう利用するかだろう。思えば1年前も3月下旬に五輪の1年延期を決め、そこから事実上の本格的コロナ対策が始まったといえ、それが初動の遅れとして尾を引いている。先手先手で動きたいとの発想がそういわせたのだろう。

★今回、五輪の聖火リレーは25日にスタートする。世論の中には五輪の中止、または無観客試合を想定している向きも多いだろうが、政府が大騒ぎして組織委員長を決めたり、ほかのスポーツイベントの観客定員を下げて実施にこだわっているのは何としても、いびつながらも「五輪」なるものを強引にでも実現する方針に変わりがないからだろう。ワクチンの接種がなくても五輪の開催と国内観客の観戦の実現は何とかまとめたいとの思惑だ。先月には警察庁から全国に五輪警備の応援警官の動員は予定通りとの通達が出た。つまり既に五輪はアスリートファーストなどではなく、IOCを含め、日本政府の威信のかかる政治イベントになったといえる。その実現のためならば医療専門家の懸念よりもワクチン接種よりも優先されるべきは五輪ということになる。五輪成功という結果が選挙勝利を呼ぶということか。それならばコロナと本気で闘うべきではないのか。





国産ワクチン実現へ国は民間を支えよ(2021年3月3日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 新型コロナウイルス制圧の決め手となるワクチンの開発で、日本は大きく出遅れた。現在のように全量を海外品に頼っていては、接種スケジュールが見通せず、対策もおぼつかない。来年以降も接種はしばらく続く公算が大きく、官民挙げて国産ワクチンの早期実現を急がなければならない。

 日本経済新聞社が2月末に実施した世論調査によると、政府のワクチン対策への不満な点として「国産品の開発が遅い」を挙げる声が最も多く、5割近くあった。技術革新によって主要国が異例のスピードで実用化するなか、科学技術立国を掲げるにはあまりにもふがいなかった。

 ワクチン開発は製薬企業にとって大きな経営リスクを伴う。感染動向で需要が大きく変わり、一般的な医薬品と違って市場の見通しが立ちにくい。新しい感染症向けとなると、研究開発段階から安全性や効果をみる臨床試験(治験)、承認審査に至る実用化段階まで国の積極的な関与がどうしても必要だ。

 これまで米国、英国、ドイツ、ロシア、中国が新型コロナのワクチン実現にこぎ着けた。国が開発費を支援し規制の柔軟な運用で実用化を後押しした。コロナ禍の当初、日本がこうした戦略性に欠けていたのは明らかだ。

 国内では現在、塩野義製薬とアンジェスの2社が治験に取り組む。さらに月内をメドに第一三共とKMバイオロジクスも治験に入る。厚生労働省も開発状況に応じて治験の費用などを補助する。

 国としては今後、資金面だけでなく治験の在り方や承認の仕方でも実現を支える仕組みを検討していかなければならない。

 最大のハードルが最終段階の治験ができるかどうかだろう。国内の感染状況が落ち着いてしまえば数万人規模での実施が難しい。海外で検討していくことになるが、すでに実用化したワクチンの接種が広まると、簡単にはいかない。

 また、ファイザー製に適用した日本の特例承認は、海外における使用が前提になっている。コロナ禍という非常事態を考慮して、欧米のような緊急使用許可の仕組みもいる。専門家を交え国産ワクチンの承認体制をどうするか熟慮すべきである。

 日本はこれまで感染症対策で積極的に途上国を支援してきた。国際貢献という観点からも自前のワクチンは必須だろう。





ワクチンの配分 自治体任せでは混乱招く(2021年2月28日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルス感染症のワクチンの高齢者への優先接種が4月12日から始まる。

 ただし、接種は当面限定的だ。日本が確保できた数量が少ない中で、全都道府県での4月開始を目指し、「薄く広く」配分した面はないのか。

 実施を担う市区町村からは「誰から接種を開始すればよいのか分からない」と困惑の声が上がる。

 厚生労働省は高齢者のうち、どのような人から接種するのか指針を示すなどして、自治体を支えるべきだ。

 優先接種の対象になる65歳以上の高齢者は全国で約3600万人いる。一方、4月12日からの接種に向けて、第1陣で配分されるワクチンは約5万人分しかない。

 河野太郎ワクチン担当相は記者会見で、「どの市町村で接種を行うか、どう配分するかは、各都道府県に調整をお願いしたい」と述べた。東京、神奈川、大阪の3都府県に第1陣で届くのは約2千人分で、他の道府県へは約1千人分だ。どう分けるというのか。自治体へ難題を丸投げせず、指針を設けて混乱を避けるべきだ。

 65歳以上の高齢者全員が2回接種する分は6月中に確保できるという。だが、スタート分として明確に示された数量は計55万人分で高齢者の1.5%分にすぎない。政府は接種の遅れを招いた見通しの甘さを猛省してもらいたい。

 一般の接種もそれだけ遅れることになる。背景には製造元の米ファイザー社による生産ライン変更や欧州連合(EU)による域外への輸出管理の強化がある。医療従事者の接種希望増も一因だ。

 今後もワクチンは五月雨式の到着になろう。厚労省は混乱を招かぬ配分方法の指針を随時、策定してもらいたい。75歳以上を優先したり、対象人数と割当数が合う市町村から始めたりするなど、知恵をしぼればよい。

 高齢者の接種開始までにワクチン1瓶から6人分の薬液を取れる特殊注射器を調達できるかも不透明だ。確保できれば、接種人数は2割増える。

 ファイザー社からのデータ提出を受けて、米食品医薬品局(FDA)は25日、零下15~25度の一般的な医療用冷凍庫で最大2週間のワクチン保管を認めた。小分けや移送が容易になり、自治体の負担は軽減される。日本でも速やかに実施しなければいけない。





コロナワクチン 国産体制へ支援を加速せよ(2021年2月26日配信『読売新聞』-「社説」)

 感染症対策の決め手となるワクチンを海外からの輸入に頼るしかないようでは心もとない。安定供給の確保に向け、日本のワクチン開発戦略を抜本的に見直すべきだ。

 政府は、2020年度の補正予算に、新型コロナウイルスの国産ワクチンを開発するための支援費を計上している。効果や副反応を調べる大規模な臨床試験の費用などを国内のメーカーに補助し、実用化を加速させるという。

 国産ワクチンは現在、塩野義製薬や第一三共などが開発に取り組んでいる。政府は、メーカー側の意見を聞きながら、実効性のある支援につなげてほしい。

 新型コロナのワクチンは、世界的な供給不足で各国が争奪戦を展開している。国内でも米ファイザー製の接種が始まったが、入荷の見通しがはっきりせず、今後のスケジュールも不透明だ。

 変異ウイルスの出現など不測の事態が起こり得るほか、来年以降もワクチン需要が生じる可能性がある。自前の生産体制がなければ対処は難しかろう。国家の危機管理の点からも、ワクチンの開発力を培っていくことは重要だ。

 日本には本格的な政府の支援の枠組みがなく、企業の自主性に任されてきた。経営的判断から、まれにしか起きない感染症の対応に消極的になるのが実態だった。

 ワクチンの副反応が社会問題となり、新規開発が著しく停滞した時期もあった。政府は、正確な情報を提供し、国民の理解を得ながら進めてもらいたい。

 米英などは、1年足らずの驚異的な速さでワクチンを実用化させた。日頃の研究開発の蓄積があったからこその成果と言える。

 米国では、生物医学先端研究開発局という部局が安全保障の観点から、新型コロナのような新たな感染症や、核・生物・化学テロに備えて、治療薬、ワクチンの開発などを支援している。

 日本でも、平時から政府主導でワクチン開発の技術を育て、感染症流行などの有事に即応できる仕組みづくりが必要である。

 有望な技術をいち早く開発し、国際的な臨床試験に参加できれば、開発費が安く済み、実用化までの時間が短縮されるだろう。

 政府はこれまで、途上国の感染症対策に資金を拠出してきた。国産ワクチンの開発は、途上国支援の一環としても有用である。

 国内では新型コロナの新薬や新たな治療法の研究も進んでいる。ワクチンと並んで、効果的な治療薬の開発も急ぎたい。



ワクチン接種(2021年2月26日配信『高知新聞』-「小社会」)

 「島耕作」は、中高年世代にはちょっとした有名人だ。大企業でばりばりと働き、出世していく姿に憧れた人もいるかもしれない。その島が、新型コロナウイルスに感染した。

 1983年から連載が続く漫画の話だ。作者の弘兼憲史さんは、バブル経済やその後の不況など現実の社会・経済情勢に沿って物語を展開。課長だった島も、部長、常務、社長などを経て、いまでは相談役になっている。

 コロナ禍を取り上げ、主人公が感染する流れも弘兼さんらしい。最新号は、70代の島の感染が判明し、ホテル療養を始めるまでを描いた。実体験者の話を基にしているといい、かなり詳細だ。今後、高齢者の感染の恐ろしさや、社会や政策の問題を展開していくのだろう。

 政府が高齢者へのワクチン優先接種を4月12日から始めると明らかにした。感染すると重症化しやすい高齢者への接種は急がれるが、初回に全国に配られるのは計約5万人分。対象となる高齢者は約3600万人に上る。

 行き渡る日を考えると気が遠くなる。ワクチンの効果がもし半年程度なら、初期に接種した人は次の秋冬にも接種が必要なのでは、という疑問も湧く。一般の人の接種となると…。

 ワクチン接種が始まっても新型コロナとの戦いは長期戦になりそうだ。気を緩めずに感染防止に努めたい。弘兼さんも最新号の紙面に作者メッセージを寄せている。「コロナをなめてはいけない」





東京五輪開催へワクチン以上の策とは?(2021年2月25日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★19日の衆院予算委員会で立憲民主党・玄葉光一郎が質問に立った。「五輪開催時に世界からくるアスリートたちはワクチンを接種してくるのか」と問うと、五輪相・丸川珠代は「IOCはワクチン接種を推奨しているが、国によってアスリートの接種順位が異なっている。国の判断だ。現状ではそれぞれの国で確保されたワクチンの承認の条件もおそらく異なるだろう」。玄葉は「もしワクチンを打ってこなかった方がいた場合は2週間隔離するなどの防護措置はあるのか」と問うと丸川は「接種をしてこなくても安心・安全な大会を遂行できるよう、さまざまな措置を取らせていただく」。

★そんな方法は一体あるのか。どんなものなのかぜひ伺いたい。五輪相がこの時期に安心・安全な措置をする大会とはどんなものなのか。大変興味深い。玄葉は続ける。「中国のワクチン外交などが目立つ中で、途上国に対してしっかり接種できる体制を整えるというのは、私たちにとっても自分事だと考えなければいけない。そのためにCOVAXという枠組みがある。国家の経済力にかかわらずワクチンへの平等なアクセスを確保する。日本は既に個別契約でワクチンを確保しているから日本人分は確保してある。COVAXにお願いしていた分は不要になる可能性もある。それらを途上国に回していくなど含めやっていくべきではないか」。COVAXは、世界保健機関(WHO)などのワクチンの世界共同購入・配分計画だ。

★元外相らしい質問だが、丸川はワクチンより安全・安心な策があるようだし、ワクチン担当相・河野太郎はワクチン接種のスケジュールを発表しては訂正と謝罪を繰り返し、国内の接種のめどすら立っていない。河野は24日の衆院内閣委員会で、ワクチンの接種計画について「今夏の東京五輪・パラリンピックは考慮せずに策定する」と明言した。五輪開催があったとしても国民にワクチンが接種されるのは年内に間に合うかどうかだろう。既に世界70を超える国や地域で接種が始まっている中、日本の遅れは異常だ。COVAXに配給を頼むのは日本かもしれない。





ワクチンの準備 現実と課題を見極めたい(2021年2月23日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 政府目標の不確かさが一段と鮮明だ。新型コロナウイルスのワクチン接種である。

 承認した米ファイザー社製ワクチンは当面の供給量が限られ、高齢者の接種に遅れが避けられなくなった。対象は約3600万人。4月から全国一斉に始め、6月で終える想定だった。後の接種日程にも影響する可能性が高い。

 総合調整をする河野太郎行政改革担当相が明らかにした。週内にも計画を練り直すという。

 供給見通しの修正が相次ぐ中、現実の課題がより浮き彫りになったとも言える。準備を進める自治体に混乱が広がらないよう、丁寧に進めなくてはならない。

 ベルギーの生産拠点ではラインの拡張工事に伴い生産量が一時的に減少。加えて欧州連合(EU)が域外輸出を規制している。

 河野氏は先週、優先接種する医療従事者向けに最大117万回分を配分すると発表した。一方で対象人数は当初想定の370万人から100万人増えた。

 これまで欧州から届いたワクチンは約84万回分にすぎない。今週届いた第2便と同じ数が毎日空輸されたとしても、全ての高齢者まで行き渡るには半年ほどかかる。配分計画はあまりに楽観的だ。

 河野氏は高齢者の接種について「少しゆっくり立ち上げたい」と説明した。一部の自治体で試行的に始め、拠点から会場に送る際の不具合などを検証する考えも示している。安定供給が見通せない以上、当然の対応だろう。

 海外で1回だけの接種でも高い効果が得られたとの結果を基に、従来方針の2回接種にこだわらない可能性を示唆している。

 不明確な基準は接種体制に影響を及ぼしかねない。慎重に検証していくことが欠かせない。

 基礎疾患のある人には自己申告で優先接種を受けてもらう考えを示した。混乱を避けるには、対応する自治体の役割も重い。

 民間の調査で要介護高齢者の4割超が「接種するか分からない」と答えている。迷いの主な理由は副反応の不安や効果への疑問だ。会場までの移動の難しさを挙げる人も少なくない。周囲の関係者を通じて理解を深め、支える方法を検討する必要がある。

 日程優先で接種を急ぐことは、不安や疑問などさまざまな課題を置き去りにしかねない。

 調達の遅れによって生まれた時間的余裕を有効に使っていくことが重要だ。地域の感染状況も考慮しながら、現実と課題を見極め、着実に準備を進めたい。



[コロナワクチン接種] 自治体の裁量拡大せよ(2021年2月23日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 新型コロナウイルス対策の「切り札」とされるワクチン接種が、国内でも始まった。

 まずは医療関係者4万人への先行接種が進められている。県内の医療従事者向けには、3月1日の週に、初回接種のワクチン約8千人分が出荷されることが発表された。

 16歳以上の国民の多数に短期間でワクチンを接種する、という前例のないプロジェクトだ。1年余り続いているコロナウイルスの流行を収束させるための重要局面となる。

 ところが、現在のワクチン確保量と政府が描く接種計画の必要量の間に、桁違いの開きがあることが分かった。

 国内へワクチンを供給するファイザーの生産能力増強が5月以降になる影響が大きい。

 4月に一斉開始が見込まれていた高齢者への実施は、極めて限定的になる公算が大きくなった。計画の練り直しが迫られ、プロジェクトは序盤で足踏みを余儀なくされた。

 世界で新型コロナワクチンの争奪戦が続いており、やむを得ない面はある。ただ、供給見通しが不透明なままでは、実務を担う市町村が混乱しかねない。

 ファイザー製ワクチンは、超低温の管理が求められ、限られた期間内に使い切らなければならないなど制約が大きい。円滑な接種には自治体と医療機関などの連携が欠かせず、周到な準備が求められている。供給量が十分でない場合にどう配分するかなど、政府は丁寧に説明すべきだ。

 副反応をはじめとする先行接種で得られた情報も、詳細に示してほしい。

■    ■

 ここに来て、3週間の間隔を置いて2回の接種が必要とされるファイザー製ワクチンについて、1回に減らす案が突然浮上している。

 確かにイスラエルの研究チームが、1回の接種でも発症を85%減らす効果があるとの調査結果を発表している。

 総合調整を担う河野太郎行政改革担当相は「1回でも効果があり、日本でもそのやり方でいこうとなれば、打ち方は変わってくる」と言及し、対応を協議する考えを示した。自民党も党内で案の可否を検討するという。

 仮に接種回数を減らすことになればスケジュールの改善が見込まれる。

 とはいえ唐突感は否めない。国内では「1人2回接種」を前提に有効性が確認され、承認された経緯がある。安易な回数変更は、ワクチン接種への国民の信頼を損ね、逆に不安を与えかねない。慎重な対応が求められる。

■    ■

 県独自の緊急事態宣言は、予定通り28日で終了する見通しとなった。感染状況は改善傾向にあるものの、引き続き防止対策の徹底が求められている。

 県内でも自治体による模擬接種の訓練など準備が進む。だが、小規模離島の多い県内で、都市部と同じような方法では円滑な接種が難しい面がある。

 玉城デニー知事は、全国一律ではなく全住民の同時接種も含め市町村の裁量で柔軟に実施できるよう求めている。地域の実情に即した弾力的な対応を認めてもらいたい。





ワクチン接種開始/先行き早く示し不安解消を(2021年2月21日配信『河北新報』-「社説」)

 待ちわびた遠方からの到着を歓迎しつつ、一抹の不安を覚える。

 多くの国民は、そう受け止めているのではないか。国内でも新型コロナワクチンの接種が始まった。

 期待できる効果は二つある。医療従事者の先行実施に続いて4月以降、65歳以上の高齢者3600万人に接種される予定だ。
 ワクチンが治験通りに効けば、医療逼迫(ひっぱく)の一因である高齢者の重症化と入院を減らすとともに、死者の増加を食い止められる。

 一時パンク状態となった保健所の業務負担を和らげることにもなる。

 もう一つは「集団免疫」の獲得である。一定数の人が免疫を持てば、感染ルートの拡大を防ぐとされる。

 ワクチンがきちんと調達され、全国に配給されることが前提となる。いつの時期に、どれだけの量が届くのか、先の入荷見通しはどうなっているのか。

 政府はあいまいな見込みを示すだけで、会場確保など実務を担う市町村や担い手のスタッフを集める医師会は困惑している。

 供給ラインについて情報収集を急ぎ、見通しの公表と自治体への説明を速やかに行うべきだ。

 先行接種は米ファイザー社製で、医療従事者4万人に打たれる。主に海外での治験を参考にしたワクチンが日本人にどう反応するか、国内調査を兼ねる。

 海外で深刻な副反応の事例は報告されていないが、ファイザー製は2回打つ必要があり、長期的な効果には不明な点も多い。

 国内調査によって明らかになった副反応の特徴や発生確率、有効な対策を公表し、その後の高齢者、基礎疾患のある人、一般の接種へと生かしてほしい。

 全国の自治体は準備を進めている。都市部では、東京都練馬区のように診療所での個別接種を軸にするパターンと、大きな会場での集団接種と個別を組み合わせるところがある。

 3月下旬以降の接種券(クーポン券)の発送と予約、2回目の準備をスムーズに進める上でも、政府と自治体との連携は緊密にしなければならない。

 政府は、ワクチン1本で6回接種できると見積もっていたが、現状の注射器では5回分しか打てないと分かった。

 計画見直しにつながる事態である。注射器のチェックは基本動作だろう。緊張感を欠いていたのではないか。先が思いやられる。

 ワクチンとて万能ではない。海外からの供給見通しが狂い、変異ウイルスに戸惑うケースも予想される。

 マスクや手洗いといった対策はまだ続くことになる。過度な期待はせず、気持ちを緩めることなく粛々と進めていきたい。



希望は心の持ち物(2021年2月21日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 さだまさしさんの小説『風に立つライオン』で、主人公の医師がこう話す場面がある。「医師が患者から奪っていけない最も大切なものは命じゃない。希望なんだ」

◆希望は「その人の心の持ち物」。誰にも奪う権利はないし、奪えるものでもないだろう。逆に言えば、患者に希望を持たせることが有効な処方箋になる

◆コロナ対策の切り札といわれるワクチン接種が県内でもまずは医療従事者を対象に始まる。ワクチンといえば幕末、佐賀藩は天然痘予防で牛痘接種(種痘)を推進した。背景には、シーボルトにも学んだ医師伊東玄朴(神埼町出身、1800~1871年)の存在がある

◆玄朴は鍋島直正公に牛痘入手を進言。東京大医学部につながる私立の種痘所を開設し、江戸でも種痘を広げた。ほかに、西洋の医学書を翻訳した『医療正始(いりょうせいし)』の刊行や蘭学塾「象先堂(しょうせんどう)」を江戸に開設するなど玄朴の功績は多い。象先堂の象先は「現象の先にあるもの」という意味。先が見えにくい今、「物事の本質を見極めよ」という教えにも聞こえる

◆既得権益を死守しようとする抵抗勢力にも負けず、近代西洋医学の普及に力を尽くした玄朴。今年は没後150年に当たる。玄朴をはじめ開明的だった佐賀藩の歩みをいま一度顕彰したい。ワクチン接種が順調に進み、希望が大きくなることを願いながら。(義)





コロナワクチン 「囲い込み」の過熱を懸念する(2021年2月21日配信『読売新聞』)

 新型コロナウイルスを抑え込むため、世界各国がワクチンの確保を急いでいる。自国の感染収束を優先するのは理解できるが、競争が過熱気味なのは懸念材料だ。

 ワクチンの「囲い込み」が進んで途上国に行き渡らなくなれば、世界的な封じ込めも、経済活動の正常化も遅れて、先進国を含めた世界全体にとってマイナスとなる。国際協調に基づく供給の枠組みを機能させることが必要だ。

 ワクチンは、日本を含む約80か国で接種が始まった。イスラエルでは人口の約5割、英国は2割以上、米国では1割以上が、少なくとも1回の接種を受けている。

 感染者や死者数が多い欧米諸国ではこれまで、出入国規制の厳格化やロックダウン(都市封鎖)など厳しい制限措置を強いられ、経済に大きな打撃となってきた。

 社会・経済活動の正常化を早める切り札としてワクチンにかける期待が大きいのはうなずける。

 先進国の多くは米ファイザーや英アストラゼネカなどの製薬会社と個別に契約し、必要量の確保を図っている。製薬会社の生産が遅れ、需要に追いつかない現状から囲い込みの動きが出始めた。

 欧州連合(EU)は域内で生産されたワクチンの輸出について、EUの事前承認を必要とする制度を導入した。EUの契約枠の供給が後回しにならないよう、製薬会社に圧力をかけたといえる。

 日本は欧州で生産されたワクチンを輸入しているため、入荷の見通しをつけにくくなった。世界保健機関(WHO)は利己的な「ワクチン・ナショナリズム」に警鐘を鳴らした。当然の指摘だ。

 アフリカや中南米、アジアなどの発展途上国では、中国製やロシア製、インド製のワクチンの供給が広がっている。中国は、53か国・地域で無償供与を進め、ロシアも旧ソ連諸国や中東などに提供しているという。

 途上国には恩恵となるが、中露はワクチンに関する情報を十分に公開していない。中国は自国の感染を人の移動の管理で抑え込む一方、ワクチンは主に輸出に回し、国際的な影響力拡大につなげようとしているとの批判もある。

 ワクチンの政治利用を防ぎ、途上国に効果的に配るには、WHOが主導する国際的な共同購入・分配の枠組みの活用が望ましい。

 枠組みへの資金拠出が不足している中で、先進7か国(G7)は支援強化の方針を表明した。欧米と日本は国際協調に基づく分配を主導しなければならない。





コロナワクチン 国産の開発と生産を急げ(2021年2月20日配信『産経新聞』ー「主張」)

 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が日本でも始まった。米製薬大手ファイザー社製のワクチンである。接種は喜ばしいが、国産ワクチンでないのは残念だ。

 新型コロナの脅威に加え、今後、全く別の危険なウイルスが襲ってくる恐れもある。国民の命と健康を守るワクチンの開発や生産を海外に頼っている現状に日本は危機感を持つべきだ。

 欧州連合(EU)は域内生産された新型コロナワクチンの管理を強め、域外への輸出を承認制にした。このため日本はワクチン確保の見通しが定かでなくなった。

 ワクチンは戦略物資であるとの認識に立ち、国がもっと開発を支えてほしい。開発には巨額の資金が必要で投資リスクが大きい。参入企業が少ないのも当然だ。

 日本の研究者からは「日本の開発費は欧米や中国の10分の1以下だ」との声が漏れる。政府は令和2年度の3次にわたる補正予算にコロナワクチン開発・生産支援を盛り込んだ。第1次補正が100億円余り、第2次は国内外で開発されたコロナワクチンの国内生産用の施設、設備に約1400億円、第3次が国内開発にかかる約1200億円である。

 単純比較はできないものの、米国が昨年5月に打ち出したワクチン開発計画「ワープ・スピード作戦」の予算は1兆円規模だ。欧州や中国も同程度を確保したとされる。米国には、国防の観点からワクチンの新技術を準備してきた蓄積もあった。

 規模もスピード感も日本とは段違いで、認識が不十分だった厚生労働省は猛省が必要である。

 菅義偉首相は17日の国会で「国内で治療薬、ワクチンができるよう徹底して支援していくことが必要だと痛感している」と語った。コロナ禍に見舞われて1年以上たつのに、国政の最高責任者がまだそんなことを言わざるを得ない日本でいいのか。パンデミック(世界的大流行)が宣言される前後から総力を挙げるべきだった。

 世界で開発中の新型コロナワクチンは200以上ともいわれる。日本では、大阪大学発の製薬ベンチャー「アンジェス」や、塩野義製薬などが開発に取り組んでいる。技術はあるのに周回遅れになっているが、全面的なてこ入れで少しでも挽回し、日本や世界の人々にワクチンや治療薬を供給できるようにしてほしい。



ワクチン開始/国民の理解深める努力を(2021年2月20日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスワクチンの先行接種が兵庫県内でも始まった。感染を抑え込み、日常生活を取り戻す一歩となることを期待したい。

 対象は同意した医療従事者4万人で、うち半数で健康状態を記録してもらう安全性調査が実施される。

 効果だけでなく、副反応などの有害事象も詳しく公表し、信頼向上につなげる必要がある。新たな課題も見えてくるだろう。そうした情報の共有にも努めてほしい。

 接種は強制ではなく、受けるかどうかは個人がメリットとデメリットを踏まえて判断する。収束を目指すにはより多くの人に自主的に受けてもらうことが不可欠だ。

 誰もが知りたいのが安全性に関する情報だろう。国内で使われ始めた米ファイザー製のワクチン接種を巡って欧米では、発熱や頭痛のほか、急激なアレルギー反応などが報告されているが、今のところ深刻な副反応はごくまれのようだ。

 ただ、日本人ではまとまったデータがなく、副反応の特徴や頻度などよく分かっていないことも多い。

 共同通信社が今月上旬に実施した世論調査によると、ワクチンについて「接種したい」と答えた人は63・1%、「接種したくない」は27・4%だった。

 健康への影響はないか、自分の順番はいつか、効果はどうか。異例のスピードで開発されたこともあって、不安や疑問を覚える人は少なくない。政府は国民の理解を深める努力を重ねなくてはならない。

 何より十分な情報公開と丁寧な説明が求められる。10代後半から高齢者まで幅広い年代が対象となり、伝え方に知恵を絞る必要もあるだろう。国内に住む外国人にも目配りし、できるだけ多くの言語で発信するなどきめ細かな対応も欠かせない。

 国内での接種が本格化するのは高齢者への優先接種が始まる4月以降になる。多くの自治体では、集団接種と診療所などでの個別接種を組み合わせた計画を策定しており、先行接種のデータも参考にしながら、行政の規模や地域に合った形で準備を進めてもらいたい。

 一方、需要に供給が追いつかず、日本にいつどのくらいの量が届くのか見通せない状況が続く。国内で用意された注射器では1容器での接種回数が想定から1回減るという問題も明らかになった。

 供給スケジュールや1容器当たりの接種回数は、実務を担う各自治体が進める医師や看護師の確保、会場設営など全ての準備作業の前提になる。貴重なワクチンを無駄にしてはならない。政府は国際社会や産業界などとも連携し、一つ一つの課題を着実に解決していかねばならない。



ワクチン接種への注文(2021年2月20日配信『山陰中央新報』-「明窓」)

 「これ読んだ?」。新聞を広げていた配偶者が先日、心配そうな表情で聞いてきた。見ると、イスラエルでの新型コロナウイルスワクチンの接種体験記(本紙6日付)。共同通信の39歳になる男性特派員が接種の様子や、その後の体調をリポートしていた

▼配偶者が気にしたのは、記事にあった「夜になって(接種した)左肩の痛みが増し、激しい頭痛や歯ががたがたする震えに襲われた」という記述。インフルエンザの予防接種を毎年受けているとはいえ、加齢に伴い体のあちこちに不調が出始めているだけに不安になったらしい

▼山陰でも医療従事者を対象にワクチンの先行接種が始まった。4月からは高齢者も対象になる。これまでは接種スケジュールや低温での輸送と保管、対応する医療関係者の確保に関する報道が中心。接種を受ける側の不安に沿った情報は、まだ多くない

▼例えば副反応の程度も、医療関係者なら「数日以内に回復するのなら心配ない」と分かっても、一般の人は事前に心得ていないと不安になる。またワクチンは発症や重症化を防ぐのに有効でも、無症状を含めて感染そのものを防ぐ効果は未知数とされる

▼不安解消へ、最新の正確な情報の提供と丁寧な説明を望みたい。欲を言えば、「Go To トラベル」を再開する際、ワクチンを接種した人には割引率が上乗せされると、配偶者の心境も変わってくるだろう。





【ワクチン開始】安心につながる接種に(2021年2月19日配信『高知新聞』-「社説」)

 国内で新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。県内ではきょうから始まる。同意を得た医療従事者への先行接種で、安全性を確かめる調査も兼ねている。

 感染収束に道筋を付ける第一歩だ。希望する人が円滑に接種を受けられる体制をつくる必要がある。

 ただ、海外から輸入するワクチンの供給量が見通せないなど、接種が計画通りに進むかどうかに懸念もある。政府は混乱を生じさせず、ワクチン接種を国民の安心につなげなければならない。

 ワクチンは米ファイザー製で、約3週間間隔で2回接種する。海外の治験では、未接種に比べて発症率が95%減る結果が出ている。

 接種が認められるのは16歳以上で、予防接種法に基づき、国が費用を負担する。国民には原則として接種を受ける努力義務が生じるが、個人の判断に委ねられ、接種しなくても罰則はない。妊婦は努力義務の対象外になった。

 発熱や痛み、だるさなどの副反応は今のところ、深刻な例は少ない。厚生労働省の研究班が先行接種で日本人に関するデータを集めて分析し、毎週公表していく方針だ。

 コロナワクチンは開発されてまもなく、効果の持続期間などもよく分かっていない。国民は判断材料を求めている。政府は正確な情報を迅速に提供する責任がある。

 計画では、来月中旬から新型コロナの診療に関わる医療従事者約370万人、4月以降に65歳以上の高齢者約3600万人に優先接種を始める。

 ただ、スケジュールがずれ込む可能性も指摘され始めた。欧州連合(EU)は域内で製造したコロナワクチンの輸出管理を強化した。ベルギーで生産されているファイザー製も供給量が見通せなくなっている。

 日本に12日に到着した第1便は最大約38万回分。毎日同じ量が届いたとしても、優先接種の4千万人近くの1回分をカバーするだけで3カ月以上かかる計算になる。第2便は来週の予定だが、その後の到着ははっきりしない。政府は契約通りの供給量を強く求めていかねばならない。

 このほか、政府が供給契約を結んでいるのは承認申請中の英アストラゼネカと、米モデルナの2社だ。

 安定供給を考えれば、輸入ワクチンだけに頼る状況を打開すべきだろう。国産ワクチンの開発を急ぎ、生産体制を整える必要がある。政府は研究を最大限に支援すべきだ。

 国からワクチンの供給量や時期がはっきり示されず、接種の実務を担う市町村の準備に支障が出ている。

 医師らは接種業務に協力を求められても、具体的な日程が分からなければ通常の診療と調整ができない。ファイザー製ワクチンは超低温での保管が求められている。品質を保ちながら接種会場に運ばねばならない。解決すべき課題は多い。

 既に政府の方針が二転三転する状況もあった。市町村に負担をしわ寄せすることは許されない。住民への接種が混乱なく進むよう、政府が努力しなければならない。



[新型コロナ・ワクチン接種] 効果と副反応を詳細に(2021年2月19日配信『南日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が国内でも始まった。当面は安全性を調べるための先行接種として行われ、全国の医療従事者約4万人が対象となる。

 政府は接種による集団免疫の確立が感染拡大防止の切り札と位置付け、国民の期待は高まる。一方で副反応を不安視する人は少なくない。

 先行接種で得られるワクチンの効果やリスクなどのデータは、接種するかどうかを判断する上で手掛かりになる。詳細な情報を分かりやすく公表してもらいたい。

 接種が始まった米ファイザー製のワクチンは開発段階の臨床試験で発症率を95%抑えるとの結果が出ている。有効性が20~60%程度とされるインフルエンザワクチンよりも効果は非常に高い。

 一方、副反応は注射部位の痛みが約84%、頭痛が約55%、発熱が約15%にみられたが、一時的で軽いものが大半とされる。急性の重いアレルギー反応のアナフィラキシー症状の発生は100万回に5回というデータもある。

 とはいえ、共同通信社の今月上旬の世論調査では4人に1人が「接種したくない」と答えた。さらに、要介護高齢者の4割以上が接種を迷っているという民間企業調査もある。

 先行接種する4万人のうち2万人を対象に最初の接種から7週間、健康状態を記録してもらう。データは厚生労働省の研究班が集め、毎週公表する方針だ。接種の判断ができるよう丁寧な情報発信が欠かせない。

 政府は3月ごろから感染者に接する機会の多い医師や看護師、保健所職員ら約370万人への接種を始め、4月から高齢者3600万人に優先接種する計画だ。その後、基礎疾患のある人や高齢者施設職員へと続くが、順調に進むかは見通せない。

 欧州連合(EU)は域内製造ワクチンの輸出管理を強化、各国によるワクチン争奪戦が過熱している。そのため日本が必要量を調達できる時期は未定で、政府は明確な接種スケジュールを提示できていない。

 コロナ禍の収束を急ぎたいが、多くの人にワクチンが行き渡るまでには時間がかかるだろう。世界保健機関(WHO)は、今年中に社会全体が集団免疫を獲得する見通しについて否定的な見方を示している。

 昨年からの「第3波」では入院患者が大幅に増え、1日に100人以上の死者が報告された日もある。これまで通りに感染防止策を続け、まずは感染者を少しでも減らすことが肝要だろう。焦らず着実に接種を進めていきたい。



ワクチン接種開始 丁寧で透明性ある説明を(2021年2月19日配信『琉球新報』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症の国内でのワクチン接種が17日に始まった。医療従事者への先行接種を経て、4月から65歳以上を対象とした優先接種に進む計画だ。県内では3月上旬から医療従事者への接種が始まる。

 コロナ収束の切り札として期待されるワクチンだが、異例の早さで開発・承認が進められた経緯もあり、国民の間に接種への不安があることは否めない。政府は副反応を危ぶむ声に誠実に対応するなど、安全に関する透明性のある情報の提供が不可欠だ。

 前例のない大規模な集団接種となる中で、実施主体を担うのは市町村だ。ワクチン管理や医療スタッフの確保、接種状況を管理するシステムの運用など、多くの実務をこなさなけばならない。

 県は小規模離島について、優先接種の対象となっている高齢者だけでなく、住民全体への一斉実施を国と協議する方針だ。離島は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)なことに加え、運び込まれたワクチンが高齢者への接種後に余る可能性があることから、全住民に同時接種が効率的という考え方だ。

 国が定める接種スケジュールを柔軟に運用するなど、地域の実情に応じた取り組みを支援することも混乱の回避に向けて重要になる。

 国内で接種が始まった米ファイザー製のワクチンは、「RNAワクチン」と呼ばれる新しいタイプだ。遺伝子の新技術を駆使することで、通常は数年とされるワクチン開発は短期間で進んだ。

 日本での医薬品の審査も通常は1~2年を要するが、手続きを簡略化する「特例承認」を適用。昨年12月の申請から2カ月で承認に至るスピード審査となった。

 海外の臨床試験によると深刻な副反応の例は少ないが、注射部位の痛みや頭痛、だるさの訴えはインフルエンザワクチンより多い。重いアレルギー反応のアナフィラキシー症状は20万回に1回とされる。何より日本人のデータが十分ではなく、政府は医療従事者への先行接種を通じて副反応の特徴などを収集する。

 政府はコロナワクチンを予防接種法の臨時接種に位置付け、無償で接種を進める。国民には原則として接種の「努力義務」が生じるものの、最終的には自己判断だ。

 スピード優先のあまり、不安や疑問に対する説明がおろそかになれば、国民の理解を得て接種率を上げていくことは難しい。政府には国民との丁寧なコミュニケーションと情報の共有が求められる。

 だが、ワクチン情報の開示を巡り、河野太郎行政改革担当相や加藤勝信官房長官が、輸送に関する取材の自粛を報道機関に要請した。入手過程を含めて国民の命に関わる重要事項にもかかわらず、「知る権利」を軽んじている。

 客観的で公正な情報の提供を果たせるのか。政府の説明姿勢に対する、国民からの信頼度が問われてくる。





種痘の鼻祖(2021年2月18日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 
 松前藩に仕えた中川五郎治が国内で初めての種痘を実施したのは文政7年(1824年)とされる。長崎・出島のオランダ人が鍋島藩主、鍋島直正に痘苗を渡す四半世紀前のこと。拉致されたロシアで種痘の書物をもらい受け、帰国後に実施した。種痘の鼻祖たるゆえんだ

▼業績を伝える史料は多くない。異国からの送還民は幕府が厳しく取り調べた時代。5年半も抑留された五郎治も例外ではなかった。そのためか、断片的史料から利権目当てに知見を独占したなどと低い評価を受けたこともある

▼実際はどうだったか。五郎治の足跡を研究する松木明知さんの著書によると、五郎治は種痘方法を医師らに教え、道内に限らず、ノウハウを受け継いだ者が秋田で接種した記録も残る

▼外国での経験を語ることは固く禁じられていた。口外できないという事情もあったろう。そもそも持ち帰った種痘書は幕府の訳官が翻訳していた。むしろ、種痘術への理解を得ることに尽力した功績をたたえるべきかもしれない

▼医療従事者を対象とする新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。有効性はもちろん安全性の確保が最優先だ。接種強制や政権浮揚への利用などあってはならない

▼未知の種痘を行った五郎治の行動には学ぶ点もあったかもしれない。過去はなによりの教科書。将来のためにも、包み隠さず記録を残して開示することが肝要である。



2000年代、NHKのドキュメンタリー番…(2021年2月18日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 2000年代、NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』が人気を博した。新製品の開発や社会的事件、国家的事業に挑んだ人々に焦点を当て、成功までの苦難に満ちたドラマを紹介した。中島みゆきさんの主題歌や田口トモロヲさんのナレーションも話題を呼んだ

▼「プロジェクトXみたいになる」。新型コロナウイルス感染対策の切り札とされるワクチン接種をそう表現したのが、陣頭指揮を執る河野太郎行政改革担当相。医療従事者への先行接種がきのう国内で始まった

▼4万人のうち約半数に健康状態を記録してもらい、副反応などの安全性を調べる。来月中旬以降に医療従事者、4月以降に65歳以上の高齢者が続く。その他の人は未定だ

▼ようやく第一歩を踏みだしたものの、海外からワクチンが滞りなく供給されるのか、1瓶当たり6回分取るのに必要な特殊な注射器を確保できるのかなど課題は山積する。実務を担う自治体は情報不足に困惑しながらも準備を急ぐ。当面は走りながら考えることになる

▼私たちが知りたいのは、本当に安全なのか、接種がいつ頃になりそうなのかということ。国がそうした情報をきちんと提供するかどうかを注視しながら、接種に必要なクーポン券が届くのを首を長くして待つことになりそうだ。



「信頼」(2021年2月18日配信『東奥日報』-「天地人」)

注射器を持つ医師のこわばった表情から、テレビ中継の画面越しに緊張感が伝わってきた。きのう、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。流行収束の「切り札」として期待がかかる。

 まず医療従事者を対象に、八戸市の青森労災病院を含む、全国100カ所の病院で4万人が先行して接種を受ける。半数の2万人の日々の健康状態などを調べ、知見を得る。欧米から2カ月遅れの開始だが、後発の利を最大限に生かし、安全性などを確認しながら進めたい。

 ただワクチン供給が海外頼みなのがもどかしい。4月以降は、優先接種される65歳以上の高齢者、持病のある人などが対象となるが、時期は確定していない。希望者に漏れなく行き渡るには時間がかかりそうだ。

 それでも接種の心構えと情報は欠かせない。米ファイザー社製は、3週間の間隔で2回接種する。接種方法は、病院での個別接種と集団接種が基本だ。予約制で、事前に届く接種券を持参する。季節性インフルエンザの予防接種と同様に、予診票に体質などを漏れなく記入する。注射部位の痛み、だるさ、頭痛など一定の副反応が出る場合がある。頭に入れておきたい。

 国を挙げた前例のない大規模な集団接種だ。政府はその都度、国民に、より速やかに、きめ細かく、正確な情報を伝える必要がある。集団免疫を構築する鍵は「信頼」であろう。



ワクチン接種 情報公開で不安解消に努めよ(2021年2月18日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス対策の決め手とされるワクチンの接種が、国内で始まった。より多くの人に受けてもらうため、副反応などに関する情報公開と丁寧な説明が不可欠である。

 接種は、まず医療従事者4万人に実施し、4月以降、高齢者約3600万人を対象にした接種を開始するという。一般への接種は、今夏にも始まるといわれる。

 使用される米ファイザー社のワクチンは、新型コロナの発症率を95%減らすことが確認されている。一方、半数以上に頭痛や疲労感、15%に発熱などの副反応が出るとされる。多くは数日以内で治まるが、心配な人は多かろう。

 医療従事者への先行接種では、2万人について、その後の副反応を追跡調査し、公表する計画だ。国民の不安を払拭ふっしょくするため、着実に実施してもらいたい。

 都道府県ごとに副反応の相談窓口を設けるほか、大学病院などで専門の診療を受けられる態勢も整えるという。重大な副反応が確認された場合は事実を公表し、注意を促すことが重要だ。

 短期間に多数の国民に接種するという前例のない事業だけに、実施主体となる市区町村の負担は大きい。接種にあたる医師の確保ができていない地域もある。自治体と地域の医師会は緊密に連携し、調整にあたってほしい。

 政府は当初、広い会場での集団接種が原則だと説明していたが、先月末から診療所での個別接種も推奨し始めた。受ける人にとってかかりつけ医による個別接種は安心感がある一方、自治体はワクチンの管理や輸送が大変になる。

 受けられる人が2割近く少なくなる可能性も浮上している。政府は、ワクチン1瓶あたり6回分の接種を見積もっていたが、特殊な注射器を使わないと、5回分しか打てないことが判明した。

 接種会場に何人分のワクチンが到着するかわからなければ、自治体の準備作業は立ちゆかない。こうしたお粗末なミスが再び起きないよう、政府はチェックを徹底しなければならない。

 世界的なワクチンの供給不足で、日本への入荷時期が不明確なことも不安材料になっている。欧州連合(EU)が先月、ワクチンの輸出制限措置に踏み切ったことで、各自治体に配分する計画が立てられなくなっているという。

 接種は長期に及ぶため、今後もこうした急な方針転換やトラブルが予想される。政府と自治体はしっかり意思疎通を図り、現場が混乱しないように努めるべきだ。



ワクチン接種 信頼性を高めなければ(2021年2月18日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まった。国立病院機構など全国100の医療機関に勤める医師や看護師ら約4万人に先行接種していく。

 政府が承認した米ファイザー製ワクチンの安全性を確かめるため、半数の人に経過を記録してもらう。大規模な治験が行われ、接種が進む海外では痛みや発熱などの副反応例が報告されている。

 3月中には一般の医療従事者への接種に移り、4月以降は高齢者や基礎疾患のある人、高齢者入所施設の職員らへと続く。計画が進む前に、国民の疑問や不安に応えていかなくてはならない。

 どのような副反応が表れているのか、変調はないか。国はデータを丁寧に積み上げ、結果を分かりやすく公開してほしい。

 国はコロナワクチンの接種を、まん延防止のため緊急に行う措置に位置付け、法改正で国民に「努力義務」を課している。

 感染を広げないようにする責任は誰もが負うとしても、ワクチンは副反応のリスクを伴う。人工合成したウイルスの遺伝物質を取り入れる最新技術で、安全性や有効性に未解明な点がある。

 一人一人が納得して選択できるためには、各国の接種状況も含めた情報の開示が不可欠だ。それが十分に伝わらなくては、国民の信頼は高まらない。

 医療の専門家には、高齢者の接種について、周囲の感染状況を考慮して要否を決めるべきだとの指摘がある。科学の知見に基づく判断材料が必要だ。

 ワクチンに関する政府の情報は信頼感に欠ける。接種までの手続きは急ピッチで進み、正式承認も1日前倒しされた。菅義偉政権は「感染対策の切り札」と接種開始に期待感を膨らませる一方、ワクチンの供給量を巡っては曖昧な情報を発信し続けてきた。

 6月までに全国民分を確保する見込みとした説明は、先月末の首相の国会答弁で「目指している」に変わった。来週中に欧州からワクチンの第2便が到着予定だが、その後の見通しは不透明だ。

 供給の状況によっては、全国の接種計画に見直しが迫られかねない。自治体や医療現場が混乱しないよう、政府は明確な根拠を基に情報発信に努めるべきだ。

 全国では接種を誘う電話を受けたとの相談事例が相次ぎ、消費者庁が注意を呼びかけている。

 ワクチンの信頼性をおとしめる偽情報や誤解によるデマにも警戒が要る。各自治体を通じた正確な情報の提供が欠かせない。



「やっと」「ようやく」「ついに」「とうとう」(2021年2月18日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 よく似た言葉がある。例えば「やっと」「ようやく」「ついに」「とうとう」。使い分けるのはかなり難しい。もっとも日常生活では、それほど厳密な使い分けは求められないような…

▼辞書を開いてみる。「やっと」には〈何らかの制約や困難があったために成立しがたかった行為・状態が、どうにか成り立つさまを表す〉とあり、言い換えとして「ようやく」が紹介されている。「ようやく」には〈そろそろと。ゆっくり〉という意味もあるようだ

▼「ついに」には〈行為や状態が、最終的に実現するさまを示す〉とあって、言い換えの例に「とうとう」が出てくる。「ついに」の方には〈一つの行為や状態が、ずっと最後まで持続するさまを示す〉ともあるが、こちらはやや古い用例か

▼国内初となる新型ウイルスのワクチン接種が、きのう始まった。これには、どの言葉を用いるのが適当だろう。多くの難事を乗り越えたという感慨を込めるなら「やっと」「ようやく」だろうか

▼待ち望んだ思いが大きければ「ついに」「とうとう」かもしれない。もちろん人によって感じ方はそれぞれだろうし、いずれも当てはまらないという方もいるだろう

▼ともかく初めての接種にこぎ着けた。ただ、始まったのは一部の医療従事者に対する先行接種だ。海外からの供給が不透明なこともあり、今後のスケジュールにはぼんやりした部分が残る。多くの人々が「やっと」「ようやく」「ついに」「とうとう」と感じられるのはいつになるだろう。



効果や安全性 丁寧に情報発信を(2021年2月18日配信『愛媛新聞』-「社説」)

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まった。海外では既に接種が進み、日本は遅いスタートだが、流行の収束に向けて重要な一歩となる。

今回は医療従事者への先行接種との位置付けで、同意を得た全国の4万人に接種して安全性を確かめる。このうち2万人に日々の健康状態を記録してもらい、発熱や体のだるさといった症状のデータを集める。国民にはワクチンの副反応への不安が根強くあり、国は先行接種の状況や分析結果を速やかに公表することが肝要だ。

新型コロナワクチンは、まん延を防ぐため緊急に行う予防接種法上の「臨時接種」に位置付けられ、国民に無料で接種される。国民には原則として接種の「努力義務」が生じる。国民に努力義務を課す以上、接種するかどうか判断できる材料を提供することが不可欠だ。国は、ワクチンの利点とリスクについて国民の理解が進むよう丁寧に情報発信しなければならない。

国内で初接種されたのは、米製薬大手ファイザー製のワクチンだ。主成分は人工合成した新型コロナの遺伝物質。皮膚の面に対してほぼ垂直に針を刺す方法で筋肉に注射すると、体内でウイルスのタンパク質の一部が作られ、免疫ができる。3週間の間隔を置いて計2回、接種することになる。

約4万人を対象にした海外の臨床試験では、95%の高い発症予防効果が示された。重症化を抑えるとの研究もある。接種後に注射箇所の痛みを訴えたり、だるさや頭痛を感じたりする人もいるが、米国の調査では2~3日以内で収まるという。効果については、感染自体を予防できるのか、発症を防ぐ効果がどれだけ長持ちするかなどは分かっていない。政府は引き続き、効果や安全性の見極めに注力することが必要だ。

接種は3月ごろから、感染者に接する機会の多い医師や看護師らへと広がる。4月以降に65歳以上の高齢者への接種が始まり、持病のある人、高齢者施設の職員へと続く。ただ接種が政府の想定通りに進むかどうかは分からない。日本に届くワクチンの数が見通せないからだ。

政府はファイザーと1億4400万回分の供給契約を結んでいる。しかし主力工場があるベルギーの加盟する欧州連合(EU)はワクチンの輸出管理を強化しており、供給が遅れる懸念が出ている。現在予定している生産能力の増強も遅れる公算が大きい。日本へのワクチン第2便は来週の予定だが、その後の頻度ははっきりしない。十分な供給量を確保するため多面的に施策を講じてもらいたい。

接種の実務を担う市区町村には国からワクチン供給量や時期といった重要情報が提供されないことに不満がある。経験のないプロジェクトだが、滞りなく進めねばならない。自治体や国民が混乱しないよう国は必要な情報を可能な限り早く示すよう努めるべきだ。



連立方程式(2021年2月18日配信『高知新聞』-「小社会」)

 「25円値下げ」「一般財源化」「地方に迷惑を掛けない」。この三つを同時に満足させる連立方程式はない―。2008年2月の新聞に自民党幹部のこんな発言が載っている。
 
 当時国会で激しい論戦になっていたガソリン税など道路特定財源を巡る話だ。税率を本来より高くする「暫定税率」が30年以上も常態化。野党が見直しを迫っていた。税率を戻せば、ガソリン価格が1リットル当たり25円下がるとあって、論議が白熱したのは無理もない。
 
 問題は、税収が減れば地方の道路整備の財源も減ることだ。当時の福田康夫政権が導き出した解は、高い税率を維持しつつ使途を道路以外にも広げる一般財源化だった。これでは道路財源が心もとないのは同じだ。福田首相はその他の政策でも支持を失い、同じ年の9月に退陣した。
 
 新型コロナウイルス感染症ワクチンの先行接種がようやく始まった。ただ河野太郎担当相は「高次な連立方程式になっている」。海外からの調達に依存しており、今後の接種スケジュールを明示できないでいる。
 
 政治家は難局をよく連立方程式に例える。政治は数学と違い、明確な解があるとは限らないが、最適な解を導く責任がある。いま直面しているのは国民の命や健康を左右する問題だ。
 
 難問であっても後回しは許されない。ワクチン対策は、経済の立て直しや東京五輪・パラリンピックの開催といった方程式にもつながっている。



ワクチン格差 貧しい国を放置できない(2021年2月18日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチン接種がようやく日本でも始まった。世界を見渡すと、ワクチンを巡り先進国などが争奪戦を繰り広げる一方、貧しい国の人々が置き去りにされている。ワクチンが行き届いてこそ、パンデミック(世界的大流行)は収束に向かうはずだ。

 新型コロナ感染症の発生後、ワクチン供給の格差が生じないよう国際社会は「COVAX(コバックス)」を設立した。現在190カ国・地域が参加し、ワクチンを共同出資・購入して経済力の乏しい途上国に無償供給を目指す枠組みだ。初回の分配計画が来週発表される見通しになった。

 現状はワクチンが富裕国に偏在し、国の貧富の差が供給の格差を生んでいる。世界保健機関(WHO)によると、今月上旬までに投与されたワクチンの4分の3超が世界の国内総生産(GDP)の約60%を占める10カ国に集中し、約130カ国で接種が始まっていないという。

 WHOは4月までに全ての国で接種が始まるよう各国に協力を要請しているが、爆発的な感染拡大を引き起こした欧米を中心にワクチンを確保し、囲い込む動きが起こっている。

 典型は欧州連合(EU)だ。域内の供給を優先し、ワクチン輸出に規制を掛けた。ロックダウン(都市封鎖)を繰り返して経済に深刻な打撃を受け、各国政府が自国民を守ることに追われているからだろう。

 見逃せないのは富裕国の買い占めによって貧しい国がワクチンを調達できず、それらの国々に中国やロシアが自国開発のワクチンを大量に提供していることだ。ワクチンはもはや国際政治で影響力の増大を狙う戦略物資ともなっている。

 世界の新規感染者は先月、減少に転じたとはいえ、ワクチン接種率は1%程度にとどまる。各国が国益ばかりを優先させ、供給を市場原理に委ねては、取り残される国が生じ、世界全体の感染収束には至らない。新たな変異株出現の懸念もある。

 COVAXの供給が順調に始まっても、途上国の国民全体に行き渡る量には程遠い。国内のワクチン接種が一定水準に達する見通しとなった国々は、途上国への公平な配給が実現するよう協力すべきだ。

 COVAXに背を向けてきた米国はバイデン政権誕生後に参加を表明し、中国もこの枠組みを通じて1千万回分を提供する計画を発表した。国際協調を促すこうした動きは歓迎したい。

 国連のグテレス事務総長は新型コロナのワクチンを「世界の公共財」と訴える。この認識を国際社会で共有し、定着させたい。日本も決して協力を惜しんではならない。



ワクチンを待つ空気(2021年2月18日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 江戸のむかし、「笹湯」という習わしがあった。子どもが酒をまぜた湯を浴びる。当時恐れられていた感染症、天然痘が治ったときの祝いである。現在の伊万里市山代町でも幕末の安政3(1856)年、豪農の山本家が笹湯をして客を招待した記録が残っている

◆この時代、佐賀藩は天然痘予防の種痘、いまでいうワクチンを無料で領内の子どもに接種していた。山本家の近所でも対象児が集められたが、予定数を上回り、種痘が全員に行き渡らない。心配した村役の庄屋らが追加接種を願い出たという。そんないきさつもあり、祝宴はにぎわったことだろう

◆ワクチンを待つ社会の空気は、どこか現代と似通っている。新型コロナ対策の国内接種が始まった。ただ、実務を担う市町の体制整備はこれから。国際争奪戦のあおりで供給スケジュールも見通せない。そもそも短期間で開発されたワクチンは安全か…。期待ばかりとはいかないようである

◆佐賀藩が種痘を普及させた大きな要因は、藩医を計画的に派遣して村の医者に技術を教え、藩役人と庄屋が協力して希望者を集める先駆的な地域医療体制にあった。「医療や藩に住民が信頼を寄せていたからできた」と青木歳幸・佐賀大特命教授(医療史)は語る

◆「信頼」という社会の空気はいま、どうだろう。笹湯の祝いは、まだちょっと早い。



ワクチン接種開始 必要量確保と体制確立を(2021年2月18日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの米ファイザー製ワクチンの先行接種が17日始まった。対象者は医療従事者約4万人。その後、3月から残りの医療従事者約370万人、4月以降は65歳以上の高齢者約3600万人へと広げる。

 政府は「流行収束の切り札」として、スピード感を持っての実施をアピールしている。しかし、必要量を確保できるか見通せておらず、接種の実務を担う自治体からは情報不足を理由に不安の声も上がっている。まんべんなく確実に行き渡るよう、必要量を確保するとともに、接種体制を早急に確立しなければならない。

 ワクチン接種は16歳以上が対象で、国は予防接種法に基づく臨時接種として来年2月までを予定する。先行接種は熊本再春医療センター(合志市)、熊本総合病院と熊本労災病院(八代市)、人吉医療センター(人吉市)の県内4医療機関でも実施。4万人のうち2万人には、日々の健康状態を記録してもらう安全調査も実施する。

 ただ、計画通りに進むかどうかは、ワクチンの供給次第だ。ファイザー製ワクチンの輸出管理は、域内で製造する欧州連合(EU)によって強化され、まとまった量がいつ供給されるか見通せない。河野太郎行政改革担当相は16日の会見で詳細な接種日程を示せず、高齢者の接種がずれ込む可能性すら示唆した。ワクチンの日本への第2便到着は来週の予定だが、その後の頻度は判然としていない。

 自治体への具体的な接種日程が、依然として示されないのはそのためだ。47都道府県庁所在地の自治体調査で、複数の市が高齢者への接種開始の見通しが立っていないとして、「政府が計画を全く示していない」ことを理由に挙げた。接種会場や医師・看護師の確保が十分整っていない自治体も多く、かかりつけ医による個別接種を導入する所もある。接種情報を扱うシステムが乱立することも予想され、膨大な事務量を自治体が的確に処理できるかも気掛かりだ。国は自治体任せにせず、総合的な支援も急いでもらいたい。

 県内では、県が大型病院など22カ所に「基本型接種施設」を設置する予定だ。市町村では接種に関する体制整備や予算化が進められているが、医療機関の協力や接種会場がどの時期にどの程度必要なのか不透明な部分が多い。限られた時間の中、手探りによる準備に追われているのが実情だ。

 ワクチンは高い効果が見込まれるが、副反応に関する科学的情報の発信は必要だ。先行接種の安全調査結果も速やかに公表し、国民の不安払拭に[ふっしょく]努めてもらいたい。

 政府が準備不足のまま接種に踏み切ったのは、ワクチンによって流行を抑え込み、東京五輪開催に向けた準備態勢をアピールすることも狙ってのことだろう。

 しかし、まずは国民が安心して接種できる環境を整えることが大前提である。流行の収束策は短期的なものではなく、国が国民と共に長期にわたって取り組むという姿勢を忘れてはならない。



朗報には違いない(2021年2月18日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 1967(昭和42)年といえばまだ小学生だったので、そんな騒ぎが起きていたとは知らなかったが、県内でワクチンを求めて長蛇の列ができたという

▼何のワクチンかといえば日本脳炎。前年より接種希望者が急増し、6月末時点で4万人分も足りない事態となった。当時の本紙によると、接種を呼び掛けていた県はお手上げの様子で、「注射だけに頼っても効果はない。(媒介する)蚊に刺されぬよう」と言うしかなかったようだ

▼いよいよ国内できのう、感染収束の「切り札」とされる新型コロナのワクチン接種が始まった。まさか半世紀以上前の日本脳炎のようなことは起きないだろうが、先行接種に続く詳細な日程が見えてこないのは不安材料だ

▼この点について、河野太郎行政改革担当相は「けっこう高次な連立方程式になっている」と述べた。いまだに不確定要素が多く日程を示そうにも示せないと言いたいのだろう。こんな時は国民に疑心暗鬼を生じさせてはならない。そのためには不都合な情報でも積極的に公開してもらいたい

▼きょうは二十四節気の「雨水」。降る雪が雨に変わり、山に積もった雪も解け出して田畑を潤すという意味で、農作業の準備を始める時期の目安とされた。暦とは裏腹に県内ではきのう雪が降り、きょうも冷え込みは続きそうだ

▼「三寒四温」を経て季節は春へ向かう。コロナ禍でもやはり気分が浮き立ってくる。何はともあれワクチン接種にこぎ着けたことは、春の訪れを待つ中で届いた朗報には違いない。



ワクチン接種開始(2021年2月18日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 「天使のささやき」とはおしゃれな名前だ。気温がマイナス20度以下になると空気中の水蒸気が凍ってできる氷の結晶「ダイヤモンドダスト」のことをいうらしい。きのうは「天使のささやきの日」だった。

 1978年の2月17日に、北海道の幌加内(ほろかない)町母子里(もしり)という所で、非公式ながら国内最低気温のマイナス41・2度を記録。これを記念して、同町の有志がイベントを始めたのに由来する。とてつもない寒さを町おこしにつなげる地元住民のたくましさに頭が下がる。

 立春から半月たち、きょうは二十四節気の一つ「雨水」。雪が雨に変わり、氷が解けて水になるという意味。しかし強い冬型の気圧配置などの影響により、きょうにかけて各地で強い風が吹き、暴風雪や大雪になる恐れがあるという。まさに「春は名のみの風の寒さや」。

 来そうで、なかなか来ない春。同じように、見えそうでなかなか見えないのが、新型コロナウイルスの収束だ。きのう、国内でのワクチン接種が始まった。まずは医療従事者4万人への先行接種、来月のコロナ診療に関わる医師らへの接種を経て、65歳以上の高齢者への接種は4月以降になる予定。

 いずれにせよ今しばらくの辛抱。気を付けたいのが、はやる気持ちにつけ込んだ詐欺だ。「金銭を振り込めば接種できる」といった不審な勧誘が国内で報告されている。そうしたものには決して耳を貸さぬよう。間違いなくこちらは「悪魔のささやき」である。



正確で迅速な情報の提供(2021年2月18日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 手塚治虫の曽祖父にあたる手塚良仙は、幕末から明治の初めを生きた蘭方医でした。緒方洪庵の適塾で学び、仲間とともに江戸・お玉が池に種痘所を設立。のちの東大医学部の前身です

▼良仙の時代、オランダから伝わった医学は迫害や偏見にさらされました。幕閣に食い込んだ漢方医の奥医師らが抑圧。天然痘のワクチン、種痘にも人びとは「牛になる」と反発しました。その苦闘ぶりは治虫の漫画『陽(ひ)だまりの樹』に詳しい

▼時をこえ、新型コロナウイルスのワクチン接種が日本でも始まりました。先行は医療従事者。最初に受けた東京医療センターの院長は「多少なりとも安心感が得られる」。自分たちが副反応の調査対象となることに、国民に安心して受けてもらえるよう有効に活用してほしいと話しました

▼接種の普及で世界に先駆けるイスラエルからは、発症を9割以上減らす効果があるとの研究結果が示されました。重症化も同程度の減少がみられたと。一方で変異株の影響で感染は拡大、早期収束への期待は低くなっているとも伝えられます

▼感染抑制の切り札とされるワクチン。国内では65歳以上の高齢者が4月から、あとの接種は未定です。収束に向けた一歩とはいえ、まだ先は見通せません

▼良仙が苦心した頃に比べ、いまや医学も病気にたいする意識も大きく変わりました。しかし未知のワクチンを懸念する声が多いのも事実です。入り交じる期待と不安。そんなときこそ、正確で迅速な情報の提供に政府は徹するべきです。





ワクチン接種 情報開示の徹底不可欠(2021年2月17日配信『北海道新聞』-「社説」)

 厚生労働省は米製薬大手ファイザー製の新型コロナウイルスのワクチンを承認し、きょうから医療従事者への先行接種が始まる。

 政府はワクチンがコロナ収束の鍵になると期待する。

 だが、専門家は開発から実用化までの時間が短いため、長期的な有効性と安全性について継続的な検証が重要だと指摘する。

 国民には努力義務とはいえ、接種を義務付けるからには、十分な安全対策が欠かせない。

 政府はワクチンの副反応などの情報公開を徹底し、国民に接種の判断材料を提供するべきだ。その方法も具体的に示す必要がある。

 先行接種は全国の国立病院機構など100カ所の医療従事者4万人を対象に実施する。

 4月以降の高齢者への接種などのモデルになるよう検証して、その結果を速やかに公表し、接種への不安解消につなげたい。

 ファイザー製のワクチンは、病原性を弱めたウイルスなどを投与した従来のものとは異なり、人工的に作成した「メッセンジャーRNA」という遺伝物質を持つ。

 それが体内に入ると、ウイルスと闘うための「抗体」が作られ、本物のウイルスが侵入してきた時に攻撃する仕組みだ。

 厚労省はワクチン接種に関する電話相談窓口を設けた。今回のワクチンは新技術を用いているからこそ、効果や副反応を分かりやすく説明しなければならない。

 接種体制の事例としては東京都練馬区が注目を集める。約250カ所の診療所でのかかりつけ医による個別接種と、区役所などでの集団接種を組み合わせる方法だ。

 かかりつけ医であれば、持病やアレルギーの把握、接種後の経過観察がしやすい。国は個別接種への支援を検討してはどうか。

 ファイザー製のワクチンを巡っては、欧州連合(EU)が域内製造分の輸出管理を強化し、供給体制に不透明感が増している。

 さらに日本政府が一度は特殊な注射器を調達できず、ワクチン1瓶当たりの接種回数を6回から5回に減らすと明らかにしたことで自治体は混乱した。政府の見通しの甘さが露呈したと言えよう。

 全国知事会は33道府県から職員を厚労省と内閣官房に派遣すると発表した。国との情報共有を徹底し、接種を円滑に進めてほしい。

 日本人は薬害の歴史もあり、ワクチンに慎重な傾向が強いとされる。国には、個人の判断で接種を受けなくても、社会的不利益を被らない配慮が求められる。



ワクチンの接種開始 不安拭う説明と体制必要(2021年2月17日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスワクチンの接種がきょうから始まる。医療従事者約4万人が、米ファイザー社製ワクチンの先行接種を受ける。だが、今後に向けた課題は多い。

 16歳以上の国民が対象の大事業で、実務を担う地方自治体からは不安の声が上がっている。特に、医療関係者の確保が懸念材料だ。

 政府は集団接種を中心に考えているが、この方式は多くの人手を要するため、一般診療に支障が出かねない。身近な医療機関や職場単位といった手法を組み合わせて円滑に進められるよう、政府は具体的な指針を示すべきだ。

 各国では既に接種が始まっている。先進国では遅いスタートだ。日本人対象の国内での治験を追加するなど、有効性や安全性を見極める手続きを重視したためだ。

 その間に、先行する国の経験を生かし、より周到な計画を立てることもできたはずだ。だが、準備は自治体任せになっている。

 ワクチンの供給も心もとない。欧州連合は域内で生産されるワクチンの輸出を許可制にしている。輸入が相手国の事情に左右されるような状況は危うい。

 追い打ちをかけるように、接種回数の制約が明らかになった。「1瓶で6回分」と見積もっていたが、国が確保した注射器の大半は5回分しか採れないという。

 国は昨年中に把握しながら、有効な対策を講じなかった。「ファイザーとは接種回数で契約している」と釈明するが、必要な瓶数が増える。影響は否定できない。

 菅義偉首相は「ワクチンは感染対策の決め手」と強調している。だが、誰もがスムーズに接種を受けられるだけの量を確実に調達できるのか。仮契約でワクチンの数量を確保したことで安心し、事態を甘く見ていたのではないか。

 3月には接種券の送付、4月には高齢者への接種が始まる。人手や会場確保など、準備に残された時間は少ない。

 接種状況を一元管理するオンラインシステムの構築を急いでほしい。副反応の情報を素早く集約し共有する仕組みの整備も急務だ。

 同時に、ワクチンの恩恵とリスクについて国民に丁寧に説明することも求められている。

 国民が混乱しないような体制の整備に全力で取り組むべきだ。



「白神記」とは幕末に越前・福井藩や隣国に種痘を普及させた蘭方医…(2021年2月17日配信『毎日新聞』-「余録」)

 「白神記(はくしんき)」とは幕末に越前・福井藩や隣国に種痘を普及させた蘭方医、笠原良策(かさはらりょうさく)が残した記録である。「白神」とはラテン語のハクシーネ(ワクチン)のあて字、病魔から子を守る神とたのんだ種痘だった

▲笠原が痘(とう)苗(びょう)を植え継ぐ子どもたちを連れ、雪深い峠を越えて越前に種痘をもたらした物語は有名である。運んだ痘苗は長崎・出島の医師モーニケがバタビア(ジャカルタ)から取り寄せた牛痘で、蘭方医らが待ちに待ったものだった

▲牛痘は以前から知られていたが、痘苗の輸入は失敗続きだったのだ。笠原のような献身的な医師の努力により、モーニケの種痘は瞬く間に各地に普及する。海外からのワクチンの到来がこれほど待たれたのは、それ以来かもしれない

▲先日、国内で初めて特例承認された米ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンだが、その国立病院などの医療従事者約4万人への先行接種がきょう始まる。接種28日後までの副反応の追跡調査が行われ、結果が公表される予定だ

▲その後、来月中旬には医療従事者約370万人、4月以降は65歳以上の約3600万人への接種が始まる段取りだが、さて肝心のワクチンは予定通りに入手できるのか。自治体の接種体制もまだまだ模索中のところも多いようである

▲ワクチン接種を待ち望む向きには出島に着く痘苗を待ちわびる蘭方医の気分だろう。令和の「白神」降臨のすみやかなることを願うが、加えて政府には副反応も含めた十分な情報公開が求められる現代である。



ワクチン接種へ 史上最大の作戦に全力を(2021年2月17日配信『産経新聞』ー「主張」)
キャプチャ
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 新型コロナウイルス感染症のワクチンが日本で初めて承認され、17日から医療従事者への先行接種が始まる。

 今回のワクチンは、米製薬大手のファイザー社製だ。他社製が承認されればそれらも含め、国内の16歳以上の日本人、外国人合わせて1億人余りが高齢者や基礎疾患のある人、一般の人などの順で無料接種の対象となる。

 これほど多くの人々への接種事業は日本の歴史始まって以来だ。政府や自治体、医療機関などの関係者は、円滑かつ迅速な実施に向け全力を尽くしてほしい。

 予防接種法に基づき、妊婦を除く16歳以上の人に接種の「努力義務」がある。強制ではないが、できるだけ多くの人の接種が求められる。それが本人はもちろんのこと、周りの人々、逼迫(ひっぱく)する医療提供体制、ひいては国家、社会を守ることにつながるからだ。

 日本感染症学会理事長の舘田一博東邦大教授は16日の衆院予算委員会で、今回のワクチンについて「データを冷静に見るとかなり効果があるし、副反応も許容の範囲だ」と語った。政府や自治体は接種のメリット、副反応を国民に分かりやすく説明してほしい。

 政府、自治体の新型コロナ対策が後手に回ってきた点を踏まえれば、接種プロジェクトの行方を楽観することはできない。

 日本は欧米諸国と比べ2カ月も開始が遅れた。菅義偉首相は8日の国会で「人種差が想定され、日本人を対象に一定の治験を行う必要がある」と釈明したが、納得できない。ファイザー社は、アジア系も暮らす米国を含む6カ国約4万3千人で治験をしており、それで代えることもできたはずだ。

 特殊な注射器の必要性に気づくのが遅れ、先行接種以降、ファイザー社製ワクチン1瓶当たりの注射回数を6回から5回へ減らす羽目になったのも厚生労働省の大失態だ。貴重なワクチンを無駄にしてしまう。欧州連合(EU)の域外輸出をめぐり、先行接種以降の日本へのワクチン供給の見通しが定かではないのも不安材料だ。

 菅首相は15日、ワクチン接種について「感染対策の決め手」「国家最大の課題」と語った。「全ての国民に安心して接種していただける体制を構築することが国の責務だ」とも語ってきた。その言葉を現実のものとして国民の命と暮らしを守らなければならない。



ワクチン接種スタート 現場の不安解消、早急に(2021年2月17日配信『中国新聞』-「社説」)

 欧米より2カ月遅れて待望のワクチン接種である。新型コロナウイルスの感染拡大を収束させ、日常を取り戻す「切り札」となることが期待される。

 国内で初めて、米製薬大手ファイザー製のワクチンが正式承認された。きょう医師や看護師ら4万人を対象に先行接種が始まる。政府は副反応など安全性を確認しながら、対象を順次、国民にも広げる方針だ。

 前例のない規模だけに、予期せぬトラブルや混乱が生じかねない。接種が順調に進むよう、実務を担う市町村をはじめ現場の不安の早急な解消に政府は努めなければならない。五輪開催への道を開くといった思惑優先の前のめり姿勢は許されない。

 というのも、接種の準備や実施が円滑に進むか懸念する国民が多いからだ。今月6、7日の共同通信社による世論調査では、接種が「順調に進むか不安がある」は82・8%に達した。

 情報伝達がうまくいっていないと国民も感じているに違いない。いつ、どのぐらいの量が届くのかなど、自治体は速やかな情報提供を求めている。しかし政府は十分に応えてはいない。

 確かに、ワクチンは欧州連合(EU)による輸出統制が解かれていないなど、流動的な要素も多い。しかし現場が混乱しないよう、政府には自治体の声をしっかり聞いて対応するよう、改めて注文しておきたい。

 計画では、約370万人の医療関係者への接種が終わる4月以降、まず65歳以上の高齢者への接種を始める。全国で約3600万人に上る規模に加え、もし感染が拡大していれば、現場の負担は膨らみかねない。

 医師のほか、冷凍庫などの設備、会場なども大規模接種には必要となる。確保に難航している自治体もあり、財政面を含めた支援態勢づくりが急がれる。

 接種自体の正確な情報発信も必要だ。費用は国が負担し、国民には接種の「努力義務」が生じる。強制ではなく、罰則もないため、努力義務は課さない妊婦も含め、最終的には個々人の判断次第となる。多くの人に受けてもらうには、効果や副反応などの情報を包み隠さず明らかにしなければならない。

 とりわけ副反応を気にする人は少なくないようだ。世論調査では「接種したくない」人が3割近くに達した。副反応の全くないワクチンはないのだから、効果と比べることで、不安を解消できるよう、政府は情報提供に努めることが欠かせない。

 米国では、半数以上の人が接種した部位の痛みや、だるさを感じたという。だが「アナフィラキシー症状」と呼ばれる重いアレルギー反応は、20万回に1回程度と非常にまれだった。逆に、感染するのを防いだり感染しても重症化を免れたりする効果が95%の人にあったという。

 もちろん、日本では異なる傾向が出るかもしれない。そのため政府は先行接種のデータに加え、本格接種後には、発熱やはれ、痛みなど300万回分の健康状態をアンケートする。丁寧に調べ、その結果を正確に伝えることで、安全性への理解を広めることが急がれる。

 守るべきは、国民の命と健康であって、菅義偉政権ではない。山積する課題を一つ一つ解消して、現場が円滑な接種環境を整えられることにこそ、力を尽くさなければならない。 





新型コロナワクチン 冷静に接種を進めよう(2021年2月16日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 国内初となる新型コロナウイルス感染症のワクチンが承認された。日本は海外に比べて大きく出遅れたが、最前線に立つ医療従事者に続いて高齢者や持病がある人への優先接種がようやく始まる。1年以上も続く流行を早く収束に向かわせるための重要なステップだ。

 ただ多くの人に行き渡るまでには時間がかかるし、思わぬ混乱もありうる。福島県沖で起きた地震は不測の事態を想定した備えの必要性をあらためて思い起こさせた。不正確な情報に踊らされることなく、マスク着用や3密(密閉、密集、密接)回避といった従来の感染防止策を続けながら、焦らず冷静に接種を進める必要がある。

 ウイルスが見つかってからこれだけ短期間で何種類ものワクチンが実用化されたのは驚くべきことだ。臨床試験のデータには幅があるが、国内で接種が始まるファイザー製のワクチンは発症を防ぐ有効性が95%と非常に高いとされる。接種で先行するイスラエルでは、すでに高齢者の感染や入院が減ったとの報告がある。接種率が高まって免疫を持つ人が増えると、集団の中でウイルスが広まりにくい「集団免疫」ができると期待される。

 大切なのは社会の中で最も弱い人たちを守ることだ。新型コロナは高齢者ほど重症化しやすく、国内では60歳以上の人が感染すると18人に1人が死亡する。昨年からの「第3波」の流行で入院患者が大きく増え、1日に100人以上の死者が報告される日もある。

 ワクチンは感染を完全に防げなくても、高齢者や持病がある人の重症化を回避して救命につながる期待がある。こうした人が接種を受けるメリットは比較的大きい。

 ワクチンは体にとって異物なので人によって接種部位の腫れや痛みといった副反応が起きる。米国の最新データでは、ファイザー製のワクチンでアナフィラキシーと呼ばれる全身性の激しいアレルギー反応が起きたのは約20万人に1人。アレルギー体質の人は接種後に医師らがすぐに治療できる状態で様子を見ることで対処できる。一人一人が自分の健康状態を理解し、個人や社会の利益とリスクとのバランスを考えた上で接種を受けてほしい。

 心配なのがウイルスの変異株に対する有効性だ。英国やブラジル、南アフリカなどで広がった変異株は、人の細胞に取り付く表面突起の形が変化して感染しやすくなっているとみられる。

 現在のワクチンは従来株を想定するため変異株に効きにくく、特に南アフリカの変異株の発症を防ぐ度合いが低いとの報告がある。製薬会社はすでに変異株に効くワクチンの開発に乗り出している。最新手法のRNAワクチンなら数週間で開発可能という。変異株と従来株の両方に効くワクチンも検討されている。

 ただワクチンは万能ではない。接種しても一定の割合で発症する可能性があり、時間がたつと効果が落ちる。無症状を含む感染そのものをどの程度防げるかも未知数だ。

 だから自分が接種を受けても、当面はマスク着用などの対策を続けよう。以前のような自由な暮らしに戻るのはもう少し先だ。国内で変異株が流行するのを防ぐのにも役立つ。出口が見えてくるまでの間、自分だけでなく他者に配慮した責任ある行動を心掛けたい。



ワクチン接種は安全かつスムーズに(2021年2月16日配信『日本経済新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスとの闘いがいま何合目にさしかかっているかはわからない。しかし、大きな転換点にあるのは間違いない。国内でもワクチンの接種がようやくスタートすることになった。

 新型コロナワクチンの接種を円滑に進めるため、厚労省と川崎市が1月に実施した集団接種の訓練。看護師(右)が注射器で打つしぐさをしたファイザー製のワクチンが承認され、17日に医師や看護師ら4万人を対象にした先行接種が始まる。3月に残りの医療従事者370万人、4月から65歳以上の高齢者3600万人に対象を広げる。かつて例のない大規模接種となる。国や自治体は安全面での対応をおろそかにせず、滞りなく進める必要がある。

 ワクチンの接種は70カ国以上で始まっている。開発期間が1年足らずと短く、新しい技術を採用しており、当初は有効性や安全性を心配する声も大きかった。これまでのところ想定を超す深刻な副作用の報告はみられない。

 最速ペースで接種が進むイスラエルや人口の1割にあたる3200万人超に打った米国では、新たな感染者数が大きく減る傾向にあるという。社会全体での感染抑制効果を検証するにはもう少し時間がかかるが、この2カ月、ワクチンへの期待は日増しに大きくなってきている。

 国内での承認は主に海外での臨床試験データを参考とする特例の形をとり、手続きを簡略にした。コロナ禍という緊急性を考慮すれば妥当といえよう。

 3月までに行われる医療従事者への接種で、海外と比べて副作用の頻度や有効性に差があるのかどうかがわかる。国は速やかにこうした情報を収集・分析し、4月に始まる高齢者以降の接種につなげるようにしてほしい。

 現場の混乱なくスムーズに接種が進むかが最も懸念される。集団接種を軸とするが、自治体によってはかかりつけ医による個別接種を探る動きもでてきた。地域の事情を優先するのは当然で、政府は柔軟な対応で支援することだ。

 ワクチン接種は長期戦となる。海外から供給が途絶えたり、変異ウイルスが猛威を振るったりする事態も考えられる。予期せぬ副作用がでるかもしれない。常に最悪のシナリオも想定しながら、冷静に前に進めていくべきだ。

 いま国内の流行状況は「第3波」を抜け出す正念場にある。ワクチン接種が始まってもマスクや手洗いといった地道な対策は当面続けなければならない。気が緩むムードが広がるのを用心したい。



ワクチン接種 正確な情報を迅速に(2021年2月16日配信『東京新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症を抑え込むと期待されているワクチンが日本でも承認された。接種を進めるためには、供給態勢にとどまらず、副反応などの情報を正確、迅速に提供することが重要だ。

 政府は14日、米ファイザー社製ワクチンについて、有効性と安全性が確認できたと判断して正式に承認した。医療従事者を対象にした接種が17日にも始まる。

 重要なことは、接種への理解を促すための正確で十分な情報の提供だ。

 接種は無料で、各個人がリスクと利点を勘案して接種を判断するが、感染を抑え込むには、より多くの人に接種を受けてもらう必要がある。

 時事通信の世論調査ではワクチンに「期待する」が82・9%、共同通信社の世論調査では「接種したい」は63・1%と期待は高い。

 しかし、新型コロナウイルスに限らず、どのワクチンにも副反応がある。過去には副反応への不安が広がり、接種を控えるなどの問題が起きたこともあった。

 各個人が接種の可否を正しく判断するためには、ワクチンに関する情報を包み隠さず正確、迅速に伝え、副反応の不安など疑問に誠実に答えることが前提だ。

 新型コロナウイルスのワクチンを巡り、発熱やだるさ、頭痛などのほか、呼吸が苦しくなるなどのアナフィラキシー症状が報告されているが、深刻な副反応は今のところ報告されていない。

 ワクチンには、発症を抑止する効果はあるものの、感染自体を抑えるかどうかは不明だ。政府が接種開始後に情報収集する「有害事象」には、ワクチンとの因果関係が不明なケースも含まれる。

 政府はこうした点も含めて丁寧に説明すべきである。

 日本に住む外国人の不安にも対応するため、外国語での発信などきめ細かい対応も必要だ。

 医療従事者らに続き、高齢者への接種が四月にも始まる。体育館などを利用した集団接種以外に、地域で患者と接するかかりつけ医らが対応する個別接種なども検討されているという。

 接種の実務を担う各自治体は、かかりつけ医や、医師会と緊密に連携して、地域の医療態勢や接種希望者の事情を考慮した多様な接種ルートを確保してほしい。

 新型コロナの感染拡大を抑えるには、これまで同様の感染防止策を続けるとともに、ワクチンの安定供給がカギを握る。供給態勢を確実に整え、接種の現場を支えることは政府の重要な役割である。



ワクチン承認 円滑な供給に全力挙げよ(2021年2月16日配信『山陽新聞』-「社説」)

 厚生労働省が米製薬大手ファイザー製の新型コロナウイルス感染症ワクチンを承認し、国内でも接種が始まることになった。流行の収束に向けて大きな一歩とは言える。

 ワクチンは海外の大規模な臨床試験で、高い効果があるとの結果が出た。発症する人や重症化する人を大幅に減らすことが期待される。

 だが、人から人にうつるのを防ぐ効果や、効果が続く期間など、まだよく分かっていないこともある。接種しても、すぐにコロナ禍以前の暮らしに戻れるわけではないと多くの専門家が警告している。マスクの着用や手洗い、3密を避けるといった対策は当面続ける必要がある。

 政府はまず、安全性を調べる目的で医療従事者約2万人への先行接種を行う。来月からは残りの多くの医療従事者、4月から重症化の危険性が高い高齢者らを優先対象として接種する。最終的には子どもを除く約1億人が対象とあって、接種を終えるには長い時間がかかる。

 その実務を担う自治体は、山積する課題に頭を悩ませている。例えば、医師や会場確保のめどが立たず、診療所などでの個別接種を中心に検討する自治体が少なくない。温度管理や振動対策などワクチンをどうやって運べば品質が保証されるかも新たな問題になっている。

 大きな懸念は、日本へのワクチン供給量が見通しにくいことだ。政府が1瓶当たりの回数を注射器の都合で6回から5回に急きょ変更したため、ファイザーとの契約量が7200万人分相当から減る恐れもある。

 政府に求められるのは、自治体の接種予定や進捗(しんちょく)状況に応じて円滑に供給されるよう全力を挙げることだ。自治体との連携を密にして、供給の見通しを早く示すことも欠かせない。ワクチン確保が遅れることによって接種が止まったり、自治体によって進み具合が大きく違ったりすれば、信頼は大きく揺らぐ。

 ワクチンの効果を高めるには、できるだけ多くの人に接種を受けてもらう必要がある。とはいえ、最終的には個人の判断に委ねられる。

 共同通信社が今月実施した全国電話世論調査によると、ワクチンを「接種したい」と答えた人は63・1%を占めた一方、「接種したくない」も27・4%いた。

 心配なのは安全性だろう。接種は多くの国で進められ、注射した部位の痛さや体のだるさといった副反応はインフルエンザなど他のワクチンより多いが、数日で治まるとされる。一方、急性の重いアレルギー反応のアナフィラキシー症状の報告もまれにあり、注意を怠ることはできない。

 医療関係者が心配するのは日本で根強いとされるワクチンへの不信感である。その不安を拭い去るためにも、政府は先行接種の有効性や副反応のデータを迅速、丁寧に公開することが欠かせない。



コロナワクチン承認(2021年2月16日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)


◆利益とリスク考えて接種を◆


 国内初となる新型コロナウイルス感染症のワクチンが承認された。日本は海外に比べて大きく出遅れたが、最前線に立つ医療従事者に続いて高齢者や持病がある人への優先接種がようやく始まる。1年以上も続く流行を早く収束に向かわせるための重要なステップだ。

 多くの人に行き渡るまでには時間がかかるし、思わぬ混乱もありうる。福島県沖で起きた地震は不測の事態を想定した備えの必要性をあらためて思い起こさせた。不正確な情報に踊らされることなく、焦らず冷静に接種を進める必要がある。

 ウイルスが見つかってからこれだけ短期間で何種類ものワクチンが実用化されたのは驚くべきことだ。臨床試験のデータには幅があるが、国内で接種が始まるファイザー製のワクチンは発症を防ぐ有効性が95%と非常に高いとされる。

 接種で先行するイスラエルでは、すでに高齢者の感染や入院が減ったとの報告がある。接種率が高まって免疫を持つ人が増えると、集団の中でウイルスが広まりにくい「集団免疫」ができると期待される。感染を完全に防げなくても、高齢者や持病がある人の重症化を回避して救命につなげることが可能だ。ここに接種のメリットがある。

 人によって接種部位の腫れや痛みといった副反応が起きる。米国の最新データでは、ファイザー製のワクチンでアナフィラキシーと呼ばれる全身性の激しいアレルギー反応が起きたのは約20万人に1人。アレルギー体質の人は接種後に医師らがすぐに治療できる状態で様子を見ることで対処できる。

 一人一人が自分の健康状態を理解し、個人や社会の利益とリスクとのバランスを考えた上で接種を受けてほしい。

 心配なのがウイルスの変異株に対する有効性だ。英国やブラジル、南アフリカなどで広がった変異株は、人の細胞に取り付く表面突起の形が変化して感染しやすくなっているとみられる。現在のワクチンは従来株を想定するため変異株に効きにくく、特に南アフリカの変異株の発症を防ぐ度合いが低いとの報告がある。

 製薬会社はすでに変異株に効くワクチン開発に乗り出している。最新手法のRNAワクチンなら数週間で開発可能という。変異株と従来株の両方に効くワクチンも検討されている。ただワクチンは万能ではない。接種しても一定の割合で発症する可能性があり、時間がたつと効果が落ちる。無症状を含む感染そのものをどの程度防げるかも未知数だ。出口が見えるまで、マスク着用や3密回避といった従来の感染防止策を続けることが必要なのは言うまでもない。





ささくれ立った心を治す鍼(2021年2月14日配信『産経新聞ー「産経抄」』)

 江戸の儒学者、佐藤一斎は警句の名手としても名高い。その一つ。〈箴(しん)は鍼(しん)なり。心の鍼(はり)なり〉。先人の残した箴言(しんげん)は、心に施す鍼治療のようなものだ、と。続けて「よこしまな思いが芽生えたら、箴言を念じて自戒せよ」と処方箋も示している。

▼人の心を刺して戒める「箴」。患部に刺して治す「鍼」。どちらも「はり」の訓読みがあり、気の利いた警句といえる。著書『言志後録』には、気分が優れなければ胸に十数本の鍼を刺し、病の予防に努めた-と体験談もつづっている。一斎は鍼治療の信者だった。

▼「はり」への依存度では、現代人の方が上かもしれない。その数、今年だけで「約1億4400万」と聞き、事の重大さが改めて身に染みる。日本が米製薬大手ファイザー社から提供される新型コロナウイルスワクチンの接種回数であり、必要な注射針の数である。

▼国の正式承認を経て、今週半ばにも医療従事者への接種が始まる運びとなった。国内で初めて新型コロナの感染症による死者が確認されてから、1年になる。医学の歴史からみれば驚異的な速さで、行き詰まった医療現場からすれば「やっと」届いた知らせだろう。

▼今回のワクチンは主に、ウイルスが体内で悪事を働かぬよう発症を抑えてくれるのだという。とはいえ、医療に携わる方々の手が必要となることに変わりはない。接種を受ける日まで一人一人がおのが胸に「箴」を刺し、行いを慎むことでしか出口は見えてこない。

▼不満。怒り。不安。おびえ。胸の底にたまった澱(おり)を数え上げればきりがない。人の心をむしばんだウイルスどもに、一矢ならぬ一針を報いるときだろう。やがてワクチンを届けてくれるであろう針たちが、ささくれ立った心を治す鍼になるといい。



ワクチン承認 安心できる接種態勢早く(2021年2月14日配信『新潟日報』-「社説」)

 前例のない規模の集団接種のスタートとなる。効果が確実に発揮され、感染拡大に歯止めがかかることを期待したい。

 政府はワクチン接種の現場となる市町村に十分に情報提供して現場の混乱を防ぎ、国民が安心できる態勢を迅速に整えなければならない。

 米製薬大手ファイザー製の新型コロナウイルス感染症ワクチンが12日、日本に到着した。

 厚生労働省の専門部会は同日、海外で接種が進んでいる実績などを踏まえ、特例承認して差し支えないと判断した。

 これを受け、田村憲久厚労相が14日にファイザー製ワクチンを正式承認する見通しだ。

 承認されれば、安全性調査を目的に、同意が得られた医療従事者への接種が始まり、全国の病院の医師ら約2万人が、副反応など接種後に生じる症状のデータ集計に参加する。

 ファイザー製のワクチンは、海外では約4万3千人を対象に臨床試験(治験)をし、発症率は95%抑えられたと報告されている。しかし日本国内での治験は160人にとどまり、日本人に関する情報は限定的だ。

 医師ら約2万人の接種後の症状は毎週公表される。国民がワクチン接種の利点や危険性を客観的に判断する上で、貴重なデータとなるはずだ。

 本県では医療従事者向けの優先接種が3月中旬から下旬に始まる方向で準備が進んでおり、6万~7万人規模になる。

 高齢者や一般住民への実施は4月以降になる見通しだ。

 しかし国からは具体的な接種スケジュールが示されておらず、集団接種をする場合に必要な会場や医師の確保が思うように進められない状況だ。

 そのため診療所などでの個別接種を検討している自治体もあるが、冷凍保管が必要なワクチンの輸送方法などが新たな課題になっている。

 二転三転する国の方針にも、自治体は振り回されている。

 政府は1月下旬になって、マイナンバーを活用して接種情報を一元管理し、接種状況をほぼ即時に把握できる新システムの導入を打ち出した。

 さらに市区町村が住民に発送する接種券(クーポン券)に、接種前の体調を確認する予診票を同封することも示された。

 接種開始が迫る中で、自治体からは「今更言われても」「条件を途中変更することが増えている」などと不満が上がる。

 政府が新たな方針を小出しにしていることが、自治体の困惑につながっている。

 特殊な注射器を確保できず、ワクチン1瓶当たりの接種回数が減る可能性も生じた。接種スケジュールが延長されれば、現場の負担はさらに増える。

 ワクチン接種について、政府は首相官邸のツイッターなどを通じて、国民に対して随時、情報提供していくという。

 速さは大事だが、自治体に通知する前に情報が流れれば、現場の混乱を招きかねない。政府は配慮や目配りを怠らないでもらいたい。





ワクチン承認へ 緊密な連携で接種を滞りなく(2021年2月13日配信『読売新聞』-「社説」)

 ワクチンの接種開始は新型コロナウイルスの感染収束に向けた大きな一歩になる。政府は、混乱が起きないよう自治体と緊密に連携すべきだ。

 厚生労働省の専門部会は、米製薬大手ファイザーが製造したワクチンを承認すべきだと判断した。厚労省が近く、正式に承認する見通しだ。

 今回のワクチンは、最新の遺伝子技術を使い、前例のない速さで開発された。それを不安視する声もあったが、海外では治験などの必要な手順を踏んでおり、有効性は非常に高いとされる。重篤な副反応の報告も特段、多くない。

 ほとんどの先進国で、大規模接種が始まっている。日本では手続きを大幅に省いた特例承認となる。緊急事態宣言が延長されている状況を踏まえれば、スピード重視の承認は妥当だと言えよう。

 接種は、感染の危険に直面する医療従事者が優先される。まずは1万~2万人が対象となる。高齢者への本格接種が始まるのは4月以降になる見通しだ。

 ワクチンは第1便が日本に到着したものの、供給の日程や配分される量が確定しておらず、自治体に困惑が広がっている。接種の進展やワクチン供給の情報を集約するシステムなどを政府主導で早急に整備せねばならない。

 どんなワクチンも、腕に痛みが出るなど軽微な副反応を伴う。10万回に1回といった頻度で重篤な症状が出ることもあるという。

 日本人はワクチンを敬遠する傾向が強いとされる。過去の薬害の歴史もあり、新製品を怖いと感じるのはやむを得ない。

 それでも接種率が上がれば、社会全体の感染リスクを下げることができる。経済活動を制限し、自粛生活を送るしかない現状から、抜け出せる可能性があろう。

 ワクチン接種のメリットとデメリットを比べ、冷静に判断する姿勢が大切だ。政府は、ワクチンの効果や副反応を分かりやすく説明し、接種に対する疑問や不安を解消してもらいたい。

 政府は、緊急事態宣言の対象地域の一部解除を見送った。愛知県や岐阜県では感染者が減ったが、病床の逼迫ひっぱくが十分に解消されていないと判断した。解除後に感染が再び拡大し、再発令する事態を避けるためには当然の決定だ。

 医療が逼迫した場合、宣言に準じた対策を講じられる「まん延防止等重点措置」が創設された。ワクチンが行き渡るには時間がかかる。こうした制度を活用しながら、当面は感染の抑止に努めたい。



ワクチンの承認 課題の整理こそ急がねば(2021年2月13日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 実用の間際になって課題が次々浮上している。新型コロナウイルスのワクチン接種だ。

 米ファイザー社製のワクチンがあすにも、国内で初めて特例承認される。厚生労働省の専門部会が妥当と判断した。

 きのうは製造拠点があるベルギーから第1便が届いた。同意を得た医療従事者約2万人を対象に来週半ばにも先行接種が始まる。

 せき立てるかのような性急な手続きの進め方に、前のめりな政府の姿勢が際立つ。国民への接種を担う自治体の現場は、準備が整うには程遠い状況だ。ワクチンの有効性や副反応については未解明な部分が多い。住民の不安が拭えないままの使用開始となる。

 政府は各地域の実情を踏まえながら課題を整理し、必要な対応を進めなくてはならない。

 国は当初、集団接種を基本に自治体の態勢づくりを促してきた。一方、地域によっては医師や会場確保が難しく、かかりつけ医や診療所など身近な医療機関での個別接種が中心になる所もある。

 拠点施設からの小分け配送に、厚労省は東京都練馬区が当初計画したバイク便を先行例に挙げた。だが、零下70度で管理するファイザー製ワクチンは成分が壊れやすく、同社は移動の衝撃で品質が保てなくなる恐れを指摘した。

 供給量に大きな見込み違いもあった。政府が調達する注射器では1瓶で取れる量が想定していた6回から5回に減り、このままだと1200万人分が不足する。

 欧州連合(EU)は域内で生産されるワクチンの輸出管理を打ち出している。域外国との間で争奪の動きを強め、日本への供給に影響が広がりかねない。

 長野県は4月から県民に接種が始められるよう準備を進める。本紙が行った全市町村アンケートでは供給の量や時期に関する情報の提供を求める声が相次いだ。

 政府はEUや製薬側との交渉を粘り強く進め、確実な供給の見通しを立ててほしい。

 河野太郎行革担当相らはテロの危険などを理由にワクチンの輸送に関する取材、報道の自粛を求めた。国民には命に関わる関心の高い問題であり、ワクチン行政に不信感を深めかねない対応だ。

 ファイザー製は海外の治験で高い有効性を得たとする一方、副反応の疑い例も高い頻度で報告されている。国内で進めた治験は詳細が明らかにされていない。

 国にはワクチンを巡るあらゆる情報について、迅速で丁寧な開示を求める。





ロジスティックス(2021年2月11日配信『東奥日報』-「天地人」)

「ロジを担当します」。先月、新型コロナワクチン担当兼務となった河野太郎行政改革担当相のあいさつを聞き、カタカナ言葉に戸惑った。頭に浮かんだのは「路地」。しかし、さにあらず、英語「ロジスティックス」の略。ワクチンの輸送や保管、接種までを管理、調整する責任を負う。

 もともとは軍事用語の「兵站(へいたん)」。前線の部隊のために、車両・軍需品の輸送、補給、修理などを後方支援する任務だ。裏方仕事だが、過去の戦争では戦況の行方を左右した。ビジネスや災害現場でも重視され、担当者を「ロジ担」と呼ぶ。

 肝心のワクチン接種の先行きは不透明感が増す。米ファイザー社製の接種が近く始まる予定だが、欧州連合(EU)の輸出管理により供給量が見通せない。特殊な注射器が足りず、1瓶当たりの接種回数が想定の6回から5回に減ることも判明した。自治体の接種計画は大幅変更を強いられよう。

 県内40市町村の悩みは深い。本紙の聞き取りで、7割が「政府からの情報提供不足」を指摘し、8割が「医療スタッフ確保」に腐心している。「県は市町村と細やかに連携を取り、積極的に対処を」との訴えも。

 三村申吾知事は、医師や看護師の確保を後押しする考えを表明した。路地の隅々まで目を配り、滞りなく希望者がワクチンを接種できるよう、支援、調整が急務だ。県のロジ担の責任も重い。



コロナワクチン 円滑な接種の準備を急げ(2021年2月11日配信『西日本新聞』-「社説」)

 政府が新型コロナウイルス感染症対策の切り札と位置付けるワクチンの接種が近く始まる見通しだ。パンデミック(世界的大流行)の中で実施する、前例のない大規模接種となる。

 先行した国々では混乱もあった。円滑に国民全体への接種が進むよう、国と自治体が緊密に連携し準備を進めてほしい。

 日本政府は米英の製薬会社3社とワクチン購入の契約を結んでいる。2月中に医療従事者への先行接種に乗り出す。4月からは高齢者への接種を始め、基礎疾患がある人、65歳未満へと対象を広げる予定だ。

 不安材料や課題は山積していると言わざるを得ない。

 近く国内承認される見通しの米ファイザー製のワクチンは、零下の超低温保管庫が不可欠だ。加えて一度解凍した大量のワクチンは短期間で使い切る必要があるという。

 多くの人に効率よく接種するため、体育館のような施設の使用も想定されている。感染対策で「3密」を避けるには動線整理といった準備も必要だ。何より十分な数の医師や看護師を確保することが前提となる。

 東京都練馬区はワクチンを診療所に配って個別に接種するという。福岡市医師会も医療機関に協力要請を進めている。各自治体は地域のかかりつけ医などに接種の場を広げる試みにも積極的に取り組んでほしい。

 無論、こうした準備が難しい地域もあろう。とりわけ中山間部の過疎地や九州に多い離島の住民への接種を滞りなく進めるため、広域連携によるバックアップを工夫してほしい。

 日本の接種開始は欧米諸国より遅れた。菅義偉首相は「有効性と安全性に配慮した結果、時間を要した」と釈明している。これ以上、ワクチンの確保や接種スケジュールが不透明な状況が続けば、自治体の準備にも支障が生じかねない。政府は早急に関係先と協議を詰め、国民に全体像を示すべきだ。

 昨年末成立した改正予防接種法で、国民には接種を受ける努力義務はあるが、最終判断は本人に委ねられる。それには適切な情報提供が欠かせない。

 特に今回のワクチンは先端技術を使って極めて短時間で開発された。効果は未知の部分もあり、副反応には警戒が必要だ。海外では一部の変異株に対し、効果に疑義が示されたワクチンもあるという。日本政府は国際社会と協調して、最新の情報を国民に提供し、不安を解消するよう努める必要がある。

 ワクチン接種が広く行き渡るには相当の時間がかかる。国民には引き続き感染防止の努力が求められる。接種開始が気の緩みを招かぬよう注意したい。





コロナワクチン 公平分配へ国際協力を(2021年2月10日配信『東京新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチン接種が欧米で始まり、日本でも準備が進んでいる。感染拡大の歯止めになると期待がかかるが、世界各国に公平、均等に分配されることの重要性も忘れてはならない。

 世界で感染者の増加が止まらない。変異株も確認されており、まだまだ収束のメドはつかない。

 希望はワクチン接種が始まったことだ。少なくとも1回接種を受けた人が、世界で1億人を突破したという。普及は加速している。
 
日本でも2月中旬から医療従事者への接種が始まる予定だ。ワクチン保管用の超低温冷凍庫の配備も広がっている。情報を適切に公開しつつ、安全な接種に努めてほしい。

 心配なのは「ワクチン・ナショナリズム」と言われる現象だ。先進国がワクチンを買い占め、価格の高騰をもたらすことを指す。

 ワクチン接種国の大半は、富裕国だ。接種回数の4割を米英が占めているとの統計もある。

 欧州連合(EU)は、域内の供給優先のため、ワクチンの輸出規制を発表し、批判を受けた。

 中央アジアや中米の国々ではまだ接種が始まっておらず、貧富の差が、そのままワクチン格差につながっている。

 「自国優先主義」がはびこれば、世界的な流行に歯止めをかけるのは難しい。最終的には、先進国にもツケが回ってくる。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も、ワクチン・ナショナリズムについて「短期的な政治目的の達成には役立っても、それは近くしか見ておらず、自滅的だ」と批判している。

 一方、ワクチンを共同出資・購入し、発展途上国にも無償で供給を行う国際枠組み「COVAX(コバックス)」は、今月にも145カ国・地域にワクチンの供給を開始する計画だ。

 先進国は、緊急性の高い自国内の医療従事者や高齢者への接種を終えたら、COVAXを通じ、ワクチンを均等に配分してほしい。

 ワクチンで先行する米国とロシアはCOVAXに参加していない。再考を促したい。

 人口100人当たりの接種回数が世界一多いイスラエルは、対立するパレスチナに2000回分を供給したという。需要には全く足りないものの歓迎すべき動きだろう。

 インドや中国も、周辺国にワクチンの無償提供を始めた。自国外交への過度の利用は慎むべきだが、ワクチンをめぐる国際協力が広がることを期待したい。





ワクチンの接種管理を信頼回復の糸口に(2021年2月8日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 政府が新型コロナウイルスのワクチン接種の状況を管理するため、新たなシステムを開発することになった。コロナ対応での度重なる「デジタル失政」によって地に落ちた行政システムへの信頼を取り戻すきっかけにすべきだろう。

 接種がどの地域でどの程度進んでいるか、随時把握できるデータベースをつくる。いつ誰がどのワクチンを接種したかは自治体ごとに管理するため、全国の接種状況を迅速に集約できるよう追加することになった。

 接種開始が迫った時期に急きょつくり始めるのは、いかにも泥縄だ。なぜ当初からデータベースを構築する発想がなかったのか。デジタル化で後れをとった理由の一つがここにある。

 9月に発足予定のデジタル庁は民間人材を登用して各省のシステムづくりに最初から関与することになる。デジタルに適した形を前提にして、制度を設計する文化を霞が関に根付かせたい。

 政府はデジタル庁創設に併せて個人情報保護を適正化し、データ活用を促す環境も整備する。接種管理システムはこうした流れの試金石にもなろう。

 国は接種状況を一覧できるようになるが「一元管理」とはしていない。公権力の行使にあたっても個人情報などのプライバシーは最大限保護されるという最高裁判決の憲法解釈があるためだ。

 対策としてクラウド上で国と自治体の領域を分け、個人情報は自治体側に置く。国は統計データを吸い上げるだけで、一人ひとりの接種情報は把握しないという。

 マイナンバーの利用も不安の残る人はいるだろう。安全対策を含め、政府には丁寧な説明で理解を得ていく努力が欠かせない。

 一方で接種データの活用も想定すべきだ。接種情報のデータベースは、副作用への迅速な対応や国内製薬会社の今後のワクチン開発に役立つ。通常の予防接種システムとの連携や母子手帳の電子化にも活用したい。

 自治体はすでに独自システムの準備を進めており、国の新システムとの連携が課題になる。うまくつながらず、手入力になっては昨年の10万円給付金の二の舞いだ。

 自治体の負担が小さければトラブルは減り、信頼性が高まる。地道な信頼の積み重ねこそがデジタル政府への近道になるはずだ。



ワクチン安定供給 日米主導で協調実現せよ(2021年2月8日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルスのワクチン供給が世界的な課題となる中、中国が東南アジアやアフリカなどに低価格で自国製を提供する「ワクチン外交」を展開している。

 バイデン米大統領就任後初めての日米首脳の電話会談を踏まえ、菅義偉首相は、新型コロナ対策で日米が協力し、立ち向かっていくと強調した。

 ワクチンを全世界に安定して供給するため、国際協調をいかにして実現するか。ワクチンを配分する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」の活用を含め、日米が主導し、国連や先進7カ国(G7)などで議論を進めたい。

 無秩序にワクチン争奪戦が繰り広げられる事態は絶対に避けなければならない。

 中国の王毅国務委員兼外相は1月、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟4カ国を歴訪し、中国製ワクチンの提供など新型コロナ対策での支援を約束した。

 感染拡大が深刻なインドネシアは、王氏の訪問とあわせるように、中国製ワクチンの緊急使用を許可し、ジョコ大統領が接種の第1号となった。

 ASEANへの影響力を広げようという中国の意図は明らかだ。それが分かっていても、支援を手に入れたいと考えるのが新興国、途上国の現実である。

 昨年6月、国連人権理事会で、中国の香港国家安全維持法に日欧など27カ国が懸念表明したのに対し、途上国など50カ国以上が支持したことを想起すべきだ。

 自由や民主主義を唱えるだけでは、経済力を背景とする中国の覇権主義に対抗できない。途上国の役に立つ質の高い支援を打ち出していかねばならない。

 中国製ワクチンは、米英の製薬大手と違い、臨床試験の詳細なデータが公表されていない。米英大手のワクチンを先進国が独占し、途上国が中国製や、やはりデータ公表不十分のロシア製に頼る状況は健全とはいえない。

 河野太郎規制改革担当相はオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で、ワクチン供給について「国のリーダーが話す必要がある」と呼びかけた。日本が提案し、具体化してもらいたい。

 ワクチン接種は、供給が確保されれば事足りるものではない。「3密」を避け効率的に接種を進める。その手本を示すのも、日本の役割と考えたい。





コロナのワクチン争奪 国際協調が試される時だ(2021年2月7日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチン確保を急ぐ、国際的な競争が起きている。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「村が燃えているときに、一部の人々が消火器を買い占めても意味がない」と警鐘を鳴らした。

 特に米国のファイザー、モデルナ、英国のアストラゼネカの3社のワクチンを巡り、激しい確保争いが繰り広げられている。

 最も懸念されているのは、資金力のある国による買いだめだ。先進国では、接種回数で欧州連合(EU)15億9000万、米国12億1000万、日本3億1400万回分が確保済みだ。全国民に2回以上接種できる計算になる。

 一方、アフリカ連合(AU)は15億回分の確保を目指しているが、めどが立ったのは2億7000万回分にとどまっている。

 世界人口の13%の国や地域がワクチン全供給量の51%を確保しており、コロナが貧富の差を拡大させる可能性がある。

 豊かな国・地域同士の対立も表面化している。EUは域内へのワクチン供給が不足すると判断した場合、輸出の差し止めが可能となる規制を導入した。

 製造元からの供給が遅れ、加盟国から不満が出たことが背景にある。オランダなどで生産されるワクチンが英国に優先して輸出されることを制限する狙いで、ナショナリズムを過熱させかねない。

 ワクチンを公平に分配するための国際枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」が創設され、日本を含む190以上の国・地域が参加している。ただ、この枠組みで調達したワクチンは11億1000万回分に過ぎない。

 グローバル化時代に、一部の国や地域で接種を済ませても、コロナを抑え込むことはできない。途上国へのワクチン供給のため各国は国際枠組みに協力すべきだ。

 WHOは4月までに、世界の全ての医療従事者と高齢者がワクチン接種を受けられるよう加盟国に協力を求めている。

 独自にワクチンを製造し、途上国に提供している中国やロシア、インドを取り込み、足並みをそろえる努力も必要だろう。人類共通の脅威を前に、国際協調の力が試されている。





vaccaと書いて、ワッカと読むそうだ。ラテン語の雌牛を意…(2021年2月5日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 vaccaと書いて、ワッカと読むそうだ。ラテン語の雌牛を意味するこの単語にワクチンの名は由来するという。ジェンナーが牛の病気の牛痘から種痘法を発見したのに関係している。語源を知って以来、特に英単語のワクチン(vaccine)を見ると、干支(えと)のめぐり合わせもあって、なにやら牛がありがたく感じられる

▼今年はワクチンの年になるのかもしれない。開発されたばかりのワクチンを国民の多くに打つ前例のない大事業が、今月にも始まる。医療関係者に始まり、一般の高齢者は四月以降になりそうだ

▼早かった欧米などに比べ接種開始はひと月以上遅い。政府の出遅れが指摘されているが、奪い合ってもいけない。現状で最善を尽くすしかないだろう

▼先手必勝の世界にみえるビジネス界に、遅れが強みにもなるケースがあると聞く。「後発優位」というそうだ。戦後、後発として始まった日本の輸出型産業などに通じようか。先行者の困難や課題を学べ効率よく進むこともできる

▼先行の国々で明らかになったワクチンの副反応などは学べる。開示する情報としても生かせるだろう。人員や機器の不足、デマの拡散などで、混乱が起きた国もある。後発の国としては参考になる

▼コロナ対策全般で、後手が気になっている政府だが、急ぎすぎもいけない。落ち着いて、着実に。牛の歩みも大事な時であろう。



コロナワクチン(2021年2月5日配信『福井新聞』-「論説」)

国は情報提供を最優先に

 新型コロナウイルス感染症を抑え込む切り札とされるワクチンの接種開始が、国内でも間近に迫っている。医療従事者、高齢者、基礎疾患のある人、一般国民の順に進められる予定だが、どれだけ早く届けられるかだろう。世界では欧米を中心に既に1億回の接種が行われたとされ、日本は周回遅れの感が否めない。

 ただ、視点を変えれば、他国の接種結果や効果を見極められる立場にあるともいえる。コロナ禍を食い止めるためには、できるだけ多くの人の接種が欠かせないはずだ。政府は先行例の情報収集に努めるなどし、科学的に正しい情報を繰り返し発信することで接種への信頼を得る必要がある。

 懸念されるのは、政府がワクチンの供給計画をいまだに示さないことだ。福井県内の市町も対策本部などを立ち上げたものの、いつ、どれだけのワクチンが入ってくるのかが分からなければ、人員の配置もままならないのではないか。会場の設定や医療者の確保、接種のための住民台帳の整備、接種券・接種済み証の印刷・発送など多岐にわたるが、明確な供給計画があってこその準備だろう。

 加えて、医療従事者や高齢者に接種が見込まれる米ファイザー製のワクチンは超低温での管理が必要な上に、いったん温度を上げると5日で使い切る必要がある。新設するシステム「V-SYS」を整備し適時適切な流通と配分を図りたい。米国ではキャンセルで余ったワクチンを求めて集まった若者らに接種しているケースもある。余剰分をどうするのかも、あらかじめ決めておくべきだろう。

 人口10万人の自治体で65歳以上の高齢者が2万7千人いると想定した場合、週に6千回の接種が必要と試算されている。1日平均千人近い接種をこなす必要があり、混雑や混乱も想像に難くない。コロナ禍の接種だけに、3密の回避も欠かせない。接種直後の強いアレルギー反応(アナフィラキシー)は米ファイザー製では20万回に1回程度というが、万一に備えた体制の確保も不可欠だ。

 事業の過程では、流通や供給、実際の接種などさまざまな場面で問題が出てくると考えておきたい。事前に懸念材料を洗い出し国と自治体で共有しなければならない。地域間で不公平が生じる事態はあってはならず、国は情報提供を最優先に進める必要がある。

 接種開始で個々の感染対策が緩むことも避けたい。集団免疫の獲得のためにはかなりの期間がかかることが想定され、その間に感染が拡大する恐れも否めない。さらには、ワクチン効果が相対的に低くなる変異株の懸念など過信は禁物との指摘もある。当分の間は我慢の時と捉えたい。





「人参」と江戸川柳にあれば…(2021年2月4日配信『毎日新聞』-「余録」)

 「人参(にんじん)」と江戸川柳にあれば、野菜のニンジンではなく薬の朝鮮人参のことである。国産化される前の値は15グラムほどで金1両、「人参の合ふ病なり運のつき」とは人参の必要な病気なら破産するということだ

▲高値は、庶民の間で人参がどんな難病も治る万能薬と信じられたからだ。希望の代価とでもいえようか。「人参ができて看病ひとり減り」は病気の親の人参のために娘が身売りしたということ。人参といえば身売りという川柳が多い

▲こんな薬だから偽物も多かったろう。病の治癒への庶民の切実な願いが「万能薬」の幻を生み、いかさま医者や悪徳売薬業者をはびこらせた昔だった。さてこちらは現代、コロナ禍克服の決め手との期待が高まるワクチンの話である

▲菅義偉(すが・よしひで)首相は今月下旬としていた医療従事者へのワクチン接種開始を中旬に前倒しするという。ただ欧米での供給遅れや輸出制限が伝えられる中、今後の予定数量確保には不安要素もある。各地域の接種体制が固まるのもこれからだ

▲聞けば早くもワクチン接種やその予約をかたる特殊詐欺の電話が各地で相次いでいるという。元の暮らしの回復を願う切実な思い、なかなか見通せぬ今後、それらが織りなす不安や焦りにつけ込む悪知恵は今も昔もさほど変わらない

▲さいわい希望に高値がついた昔と違い、ワクチンは無料で、市区町村から送られるクーポン券を待てばいい。お金がからむ話はすべて詐欺である。誰しも抱く不安を希望に変える情報公開は行政の責務だろう。



私たちはどんな国に暮らしているのか(2021年2月4日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 原因不明のウイルス性肺炎-中国・武漢市が発表したのは一昨年12月31日だ。やがて新型コロナと判明するが、政府系メディアが「制御できる。ヒト-ヒト感染はない」とする中で感染は急拡大。人口1千万の大都市が封鎖された

▼その中から、作家の方方さんは日々の暮らしや暗部をブログに発信し続けた。時に遮断されても。「家にこもる健康な人、感染者、家族を見送った人、医療スタッフ、みんな心に傷を負った」(『武漢日記』河出書房新社)。悲しみ、当局への不信や怒りが原動力だったのだろう

▼ウイルスの起源を突き止めようと、武漢にWHOの調査団が入った。昨日はコロナ研究で知られコウモリから分離したウイルスも扱っていた研究所を訪れた。トランプ米前政権がウイルスの起源と疑い、中国が猛反発した施設だ

▼ただし発生から1年余。どんな成果が得られるのだろう。最初に集団感染が確認された海鮮卸売市場も視察したがすでに閉鎖。残った野生動物や加工品は回収され、徹底的に消毒されていたという

▼コロナ禍はさまざまな問題を浮き彫りにした。体制やメンツにこだわって初動を誤った国。甘く見積もり感染爆発を引き起こしたリーダー。見返りを要求するようなワクチン外交や金と技術によるワクチンの囲い込み。WHOの出遅れもその一つであろう

▼方方さんはこうも書いている。「ある国の文明度を測る唯一の基準は、弱者に対して国がどういう態度を取るかだ」。さて、私たちはどんな国に暮らしているのか。





【ワクチン接種】国は自治体支援に全力を(2021年2月3日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスワクチンの集団接種に向け、住民への接種業務を担う市町村が準備に追われている。

 県内でも、早ければ来月中旬からコロナ診療に関わる医療従事者ら数万人、4月1日以降に65歳以上の高齢者約24万人を対象にした優先接種が始まる見込みだ。

 短期間で大人数の接種を行う必要がある。円滑に進めるため、政府は市町村の態勢づくりをあらゆる面で支援しなければならない。
 国内のワクチン供給について、政府は米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカの3社と計約3億1千万回分を契約している。

 このうち、ファイザー製が15日にも承認される。このワクチンは21日間空けて2回接種する必要がある。

 政府は接種の対象を医療従事者、高齢者、基礎疾患がある人、それ以外の一般の人に順次広げる計画だ。

 集団接種の会場は病院や保健センターなどが想定されている。高齢者施設を巡回する接種も考えられる。

 ファイザー製は零下75度前後で保管せねばならず、政府は超低温冷凍庫の配備を進める。県内にも主要病院などに70台余りが来る見込みで、そこからワクチンを会場に届ける。

 大きな課題になっているのが、接種に当たる医師や看護師をどう確保するかだ。本県は医療の人材が高知市に偏っている状況がある。自治体によっては、近隣市町村が共同で集団接種を行う場合も出てこよう。

 本県の実情に即した態勢をつくるため、県が医師会や市町村などの間で調整役となり、果たすべき役割は大きいと言える。

 公共交通機関に乏しい本県では、高齢者らが接種の会場まで移動する手段も考えておく必要がある。市町村には、住民の立場から考えたきめ細かい対応が求められる。

 コロナワクチンの接種は強制ではなく、希望した人に無料で行うものだ。県内の高齢者には来月中旬以降、住民票がある市町村から接種券が郵送される予定になっている。

 その後、電話やインターネットで予約すれば接種を受けられる。高知市はコールセンターを来月から設置し、接種に関する相談にも応じる。

 コロナワクチンは開発されたばかりだ。接種に迷いがある人も少なくない。そうした人が判断材料にできる医学的な知見やデータも、国は十分に公開する必要がある。

 ただ、ここに来て、日本へのワクチン供給に影が差している。  欧州連合(EU)が域内で製造したコロナワクチンの輸出管理を強化した。英アストラゼネカがEUへのワクチンを削減する一方、英国内へは順調に供給しているからだ。ワクチンの「囲い込み」といった事態が懸念される。

 ワクチン担当の河野太郎行政改革担当相は「日本国内の供給が確定できず影響が出ている」と述べている。ワクチンの届く時期や量が定まらなければ、市町村は集団接種のスケジュールを確定しにくい。

 政府は粘り強く交渉し、安定供給を確保せねばならない。



「令和の壊し屋」不思議な発言(2021年2月4日配信『中国新聞』-「天風録」)

 「令和の壊し屋」と名指しされ、根回しは苦手とお見受けする―と国会で野党議員に疑問符を付けられた。それを「令和の運び屋」と呼ばれるよう頑張る―とかわしたのは河野太郎・行革担当相だった

▲急きょワクチン大臣も任され、世界中で過熱する争奪戦の渦中にいる。日本は買い手だ。接種の遅れは政権の浮沈にも関わるだけに、運び屋の役目に強い決意を持って臨んでいるのだろう。しかし、おとといの「自粛要請」はどうにも理解に苦しむ

▲ワクチンの輸送計画の報道は控えてほしい、と河野氏は求めた。テロや妨害行為を想定しているようだが、根拠には触れずじまい

▲わずかな量であまたの人をあやめる核物質ならいざ知らず、いずれは全国民に接種するワクチンの話である。むしろ「ガラス張り」を旨とすべし。副作用があればすぐ情報開示して、と薬害エイズ被害者の川田龍平参院議員も新聞紙上で訴えていた

▲おととい菅義偉首相は文字を映し出すプロンプターを用い、さほど目線を下げないで会見に臨んだ。政権にとって2月は瀬戸際の1カ月。包み隠さず、おのれの言葉で語れば開ける道もあろうか。ワクチンにせよ、感染予防にせよ、である。





かつてない規模の集団接種(2021年2月2日配信『日本経済新聞』ー「春秋」)

 終戦まもないころの話である。女優の高峰秀子さんはなじみの日系2世の米兵にジープに乗せられ軍の病院にやってきた。「コレラとチフス。ほんとは三回、でもデコサン一回でOK」。手製の握り飯と茶漬けをふるまった返礼にワクチン注射をプレゼントされたのだ。

▼兵隊さんの心配は無理もない。当時の日本は衛生状況も悪く、海外からの引き揚げも増えて感染症が大いにはやった。しかし、デコさんは注射が大の苦手。ノコノコついて来たのがバカだったと後悔するも後の祭りだ。3回分の予防接種をまとめて受けた一部始終を自著「わたしの渡世日記」にユーモラスにつづっている。

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▼予防接種法の制定はそれから3年たった1948年。46年から47年にかけての大規模なチフスの予防接種が大きな成果を上げたのだ。12の疾病が「接種義務」と位置づけられ、集団接種が広がった。感染症の患者が減るのと同時に予防接種の健康被害が社会問題化して接種が個人の判断へと委ねられるのは90年代のことだ。

▼新型コロナウイルスのワクチンの接種は久々の、そして、かつてない規模の集団接種となるようだ。実務をになう自治体には戸惑いも広がる。終戦のあの年、政府も人も進むべき道に迷って「右に走り、左に走った」と高峰さんは記した。大変だった。でも知恵を絞って乗り切った。後に振り返りこう思える1年にしたい。



ワクチン争奪戦過熱 世界が公平に接種できる体制を(2021年2月2日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染者が世界で1億人を超える中、ワクチンの争奪戦が激しさを増している。接種が進んでいるのは大半が資金力のある先進国だ。

 各国で料金を上乗せしての囲い込みや、供給不足による混乱も生じており、憂慮せざるを得ない。先んじて確保しても世界中の人々がワクチンで保護されなければ、地球規模での集団免疫は得られず感染収束は遠い。「自国優先主義」に陥ることなく、全ての国で公平な普及が実現できるよう、各国の協調を求めたい。

 既に世界約60カ国で接種が始まっている。世界最速ペースのイスラエルは、国民の少なくとも3割超が1回目を済ませた。ネタニヤフ首相が米製薬大手ファイザーのトップと直談判し、確保。イスラエル側は約2倍の代金を支払ったと伝わる。

 米国の大学の調査によると、1月中旬時点、世界で購入されたワクチン約70億回分のうち、約6割を高所得の国が占めたという。英国は人口の3倍、カナダは5倍以上も確保したとされる。

 人口の何倍もの量を確保した国がある一方で、全体の供給は後れが目立つ。英製薬大手アストラゼネカは「製造上の問題」を理由に欧州連合(EU)との当初契約から供給量を大幅に削減。ところが、英国には契約通り供給を続けたため、EU各国に反発が広がった。欧州委員会はこのほど、製薬会社への管理を強めようと、EU域内で製造したワクチンを輸出する際は、加盟国の承認を義務付ける新たな措置を打ち出した。

 場合によっては輸出差し止めも辞さないとする姿勢は囲い込みにつながりかねず、慎重さを促したい。供給不足下では医療従事者や感染リスクの高い高齢者分の優先確保を目指し、関係国同士が協力し合うべきだ。欧米3社と購入する契約を結んでいる日本もEU側の動向に左右される恐れがある。海外産ワクチンの買い付けを進めるリスクが浮き彫りとなる中、国産の実用化を急ぐことは大事だ。

 高所得の国が次々と製薬会社と直接契約を結ぶことで価格が上昇すれば、途上国にワクチンが回りにくくなる。国の貧富にかかわらずワクチンを共同購入し、分配する世界保健機関(WHO)主導の枠組み「COVAX」でも必要量が確保できない恐れが浮上している。市場原理に任せっきりで、世界全体に行き渡らない事態は避けなければならない。

 途上国への供給が課題となる中、ロシアや中国などが「ワクチン外交」を本格化させていることも見過ごせない。自国の影響力を強める狙いだが、命を左右するワクチンを外交の道具にすべきではない。自国優先のワクチンナショナリズムが前面に出ては、世界規模の感染抑制にはつながらず、経済回復も遅らせる。世界中の人々が安心して接種できる体制を整えることは先進諸国の責任である。





本物の春を待ちたい(2021年2月1日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 124年ぶりのことだという。今年の節分は例年より1日早い2月2日になる。地球が太陽の周りを回る周期は365日ぴったりではない。その微妙なずれが積み重なって、年によっては2月3日と前後することがある

▼節分といえば豆まきである。鬼を追い払うために豆をまくのは「魔滅(まめ)」に通じるからとか、鬼は豆が苦手だと毘沙門天からお告げがあったとか、諸説あるようだ。本県では、雪の中でも拾いやすいからと落花生をまくことも多い

▼鬼や悪霊を追い払う豆となるのか。わが国では新型ウイルスのワクチンが今月中旬に承認され、医療従事者らを中心に接種を始める計画だという。今年は1日早い豆まきとなる。疫病の早期収束に向け、一日も早い接種を望む人もいるだろう

▼政府は海外の製薬会社と約3億1千万回分の供給を受ける契約を結んだ。1人2回の接種を想定しており、1億5700万人分という。だが、スムーズに接種できる態勢をどうつくるかという難問が待つ

▼本紙の調査では県内市町村の9割が接種に当たる医療従事者を確保できるか心配している。会場設定や副反応への対処、ワクチンの運搬・管理…。課題は山積みだ。海外から契約通りにしっかり供給されるのかという懸念も残る

▼節分の翌日は立春。疫病収束という春が待ち遠しい。ただ、若年層も含めた接種のスケジュールはなかなか見通せない。節分も立春も、現代の暦では厳冬期のさなかである。体調管理を十分にして、本物の春を待ちたい。



ワクチン争奪(2021年2月1日配信『新聞』-「小社会」)

 2019年の映画「風をつかまえた少年」は最貧国の一つ、アフリカのマラウイが舞台だ。干ばつに苦しんだ農村の実話が基になっている。

 主人公の少年は学費を払えず中学校を退学になる。それでも勉強をしたくて登校すると、校長が怒鳴った。「他の生徒の家族から金を盗んでいるのと同じだ」「私や教員からも」と。村の集会。参加した大統領に族長が食料支援を求めたところ、政府批判とみなされ、暴行された。

 見捨てられた村人は希望を失い、略奪が起き、餓死者も…。胸をえぐられる思いがする作品だ。これを遠くの国の話だと片付けていいだろうか。格差や分断はいま、さまざまな形で先進国や国際社会に広がっている。

 新型コロナウイルスのワクチン争奪戦はどうか。豊かな国がわれ先にと調達を急いでいる。金にものを言わせたり、輸出を規制したり。このままでは、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な途上国はワクチンも手に入らなくなる恐れがある。

 先進国は製薬会社のワクチン開発を支援してきた。優先権はあるにしても、世界中に広がったウイルスを封じ込めるには世界が手を取り合う必要がある。格差を埋め、分断をなくして。

 映画の少年はこっそりと図書室で勉強を続け、風力発電機を製作。電力で井戸の水を畑に流し、村に恵みを復活させた。ハッピーエンドの物語が教えてくれる。理解や支援があれば、村の悲劇はもっと早く解決したのではないかと。



ワクチン接種 国の責任で確実な準備を(2021年2月1日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

キャプチャ
厚労省と川崎市が実施した新型コロナウイルス感染症ワクチンの集団接種の訓練で使われたワクチンに見立てた容器

 国内での新型コロナウイルスのワクチン接種が間もなく始まる。ほぼ全国民を対象に、開発されたばかりのワクチンを使用するという前例のない取り組みである。実務を担う自治体の負担は大きい。混乱を生まぬよう、国の責任で確実に準備を進めてもらいたい。

 前提となるのは国際的なワクチンの確保である。政府は海外の製薬3社とワクチン供給の契約をしている。このうち英アストラゼネカと米モデルナの2社分は、日本国内での臨床試験(治験)が始まったばかり。米ファイザー製が先行しており、今月15日にも承認される見通しだ。同社からは年内に7200万人分の提供が受けられるとされている。

 既に世界では約60カ国が接種を開始し、国際的なワクチン争奪戦の様相を呈している。欧州連合(EU)の中には、予定通りの製品を供給できていないファイザー社に対し、契約不履行で提訴しようとする国も出ている。

公平配分の尊重も

 日本政府は必要数の確保を目指し、繰り返し各社に働きかけていく必要があろう。ただし、自国の利益だけを考えるのではなく、ワクチンを公平に配分する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」などを尊重することも忘れてはならない。

 政府の計画では、今月下旬に最初に医療従事者への接種が始まる。その後、65歳以上の高齢者、基礎疾患のある人、高齢者施設などの職員、それ以外の一般の人の順で接種を進める。

 ファイザー製のワクチンは、21日間を空けて1人2回接種する仕組みだ。超低温管理が必須で、いったん解凍すると千回分以上を5日間で使い切らなければならないという。効率的な実施のために、一定の住民を集めての集団接種が想定されている。

 最大の課題は全国約3600万人とされる高齢者で、政府は開始を「4月以降」としている。一般の人については見通しが示されていない。各グループの開始時期とワクチン供給量は、できるだけ早く公表されるべきだ。正確な予定なしには住民への周知案内ができず、混乱を招きかねない。

 都道府県や市町村は、政府方針に従い準備に取り掛かっている。長期にわたる集団接種には、会場や担当医師らを確保する必要がある。しかし、国からの情報不足もあり、戸惑いもあるようだ。

現場の実情に対応


 厚生労働省と川崎市は先に接種訓練を実施している。体育館で実際の動きを確認したが、医師の予診に想定以上の時間がかかるなど課題が浮上した。全国の関係機関は問題点を共有し、準備に生かすべきだ。国は自治体との連携に万全を期さなければならない。

 熊本県は独自に高齢者施設職員への接種を優先させ、高齢者と同等の順番にする方針だ。県内で多発している施設でのクラスター(感染者集団)に応じたものだ。国はそうした全国の現場の実情に柔軟に対応してもらいたい。

 政府は国民の接種情報を一元管理する新しいシステムも構築する。厚労省は当初、自治体ごとに管理を任せようとしていたが、方針転換した。2回の接種の間に、自治体をまたいで転居した人などに対応できないためだ。住民の利便性の視点に立ち、スムーズなシステム運用を望みたい。

情報公開が不可欠

 接種後に副反応が起きる可能性もある。そうした情報をもれなく集め、間を置かずに公開していくことも肝要だ。

 接種したくないという人も少なくない。新開発のワクチンへの不安感もあるはずだ。接種は義務ではないが、感染の抑え込みには接種率向上がカギになるだろう。国民の理解を得るには、政府による正確な情報提供が不可欠である。





ワクチン接種/市町村と共に備え怠りなく(2021年1月31日配信『河北新報』-「社説」)

 誰も経験したことのない大掛かりな取り組みが始まる。

 政府はこの春以降、新型コロナウイルスのワクチン接種を医療従事者と65歳以上の高齢者、基礎疾患のある人などの順に開始する。

 接種の進展状況をつかむ新たな情報システムを取り入れ、スピード感のある運用を目指すという。

 ワクチンへの期待の大きさは理解できるが、これだけの規模で実施するのは例がない。準備期間の短さを不安視する声もある。

 住民のいる自治体を主体にするため、接種会場のほか医師、看護師、事務職員などの人手を地元で確保しなければならない。

 大都市、山間部など地域によって医療提供体制は異なる。一律の進め方で混乱させる事態は避けたい。

 トラック配送、保管、会場への分配、接種後の副反応の対応をスムーズに進めるには、十分な連絡体制を組む必要がある。

 国は地域の特性に合った正確な情報を提供し、不安解消に努めてほしい。

 ワクチン接種は希望する人に無料で行われる。先行輸入される米国ファイザー社製は3週間空けて2回打つ。

 課題となるのは、マイナス75度という超低温での保管をどうするかだ。

 国は特別の冷凍庫を発注し、市町村の拠点病院に置いて保管するという。未経験の代物を扱う自治体の気苦労がしのばれる。

 各県にある国立大の物質材料研究所や医学部の協力を得てはどうか。設備とノウハウを持つところと連携するのは一手だろう。

 医師らスタッフの配置については、地元の医師会や看護協会に協力をお願いすることになる。

 コロナ対応と通常診療に追われる中で、どれだけの人員を回せるのか、念入りに計画を立ててもらいたい。

 接種後は30分待機して反応をうかがう。ファイザー製は今のところ、安全とされているとはいえ、予防接種に副反応の疑いは付き物だ。

 体調の変化や症状をリアルタイムで把握し、軽視できない時は中断する取り決めをしておいてもらいたい。

 担当する省庁は、接種を厚生労働省、輸送は国土交通省、冷凍は経済産業省などに分かれる。

 この1年、省庁間の連携に手間取り、「目詰まり」を起こしてきた。その反省を生かせるかにかかっている。

 菅義偉首相は、ワクチン接種担当に河野太郎行政改革担当相を起用した。

 縦割り打破の切り札とする一方で、支持者離れに苦しむ政権がワクチンを巻き返しの好機と捉えているとの思惑もちらつく。

 世論を意識し、成果を急ぎ過ぎると落とし穴にはまる。準備怠りなく冷静に進めるのが肝要である。



新型コロナ・ワクチン/連携図り円滑な接種進めよ(2021年1月31日配信『福島民友新聞』-「社説」)
 
 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が間もなく始まる。国と県、市町村が連携を密にし、これまでに経験したことのない国家的な事業を円滑に進めていかなければならない。

 国は2月中旬にもワクチンを承認し、医療従事者から接種を始め、高齢者、基礎疾患のある人、それ以外の一般の人の順に進める計画を掲げている。

 承認に向けた審査が進められている米製薬大手ファイザー製のワクチンは超低温で保管しなければならず、医療機関や接種会場への移送にも細心の注意が必要となる。綿密な接種計画を組み立てるためには、いつ、どれだけの量が届くのかといった情報を国が速やかに示し、県や市町村と共有していくことが大切だ。

 県内では3月中旬から医療従事者への接種が始まる見通しだ。対象者は約6万6000人で、県が医療機関などと準備を進めている。

 各地域の中核病院などは新型コロナ感染者の治療ばかりでなく、通常の外来、救急医療への対応にも当たっている。診療に支障のないよう調整を図ってほしい。

 住民への接種を担う各市町村は、ワクチンに関する情報が不足するなか、手探りで準備を進めている。大きな課題となっているのが、医師や看護師の確保と接種会場の調整だ。特に医療機関の限られている町村が単独で対応するには負担が大きい。

 河沼、大沼両郡の7町村は、予約の受け付けや相談業務などを一元化し、広域連携で対応することを決めた。居住地以外の郡内での接種も相談に応じる。市町村が知恵を出し合って体制を構築し、住民が安心して接種できる計画を練り上げることが求められる。

 厚生労働省と川崎市が実施した集団接種の訓練では、受け付けから予診票の記入、接種、経過観察後に会場を出るまで30~40分要した。体調や持病などを確認する医師の予診に時間がかかるなどの課題も浮き彫りになった。

 県は、具体的な医療体制や手続きの流れなどをモデルにまとめ、市町村に示すことにしている。地域の実情に即した広域連携の調整など、意見や要望に丁寧に応え支援してもらいたい。

 接種開始への期待が高まる一方で、開発されたばかりのワクチンに対し、副反応を心配して接種をためらう人も少なくない。

 すでに接種が進んでいる各国の事例や知見などを分かりやすく示すとともに、住民の不安を解消できるよう、相談体制を整えることも必要だ。



「科学に国境はない」((2021年1月31日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 ワクチンとはラテン語の「雌牛」を意味します。18世紀末にイギリス医師のジェンナーが牛痘を人に接種することで天然痘が予防できると発見。それが由来といわれています

▼その後、近代細菌学の祖とされるフランスのパスツールが体に免疫をつくらせる物質をワクチンと呼ぶようになりました。感染症の歴史は、人類がその拡大を科学の力によって防ごうとしたワクチン開発の歩みにも重なります

▼新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。世界の感染者が1億人をこえたいま、収束の切り札と期待されています。しかし供給をめぐり、早くも各国の争奪戦や格差がうきぼりに。途上国は置き去りにされ、有効率の高いワクチンを先進国が独占する流れになっています

▼欧州連合(EU)は域内で製造されたワクチンの輸出について規制措置を講じると発表。自国優先の「ワクチンナショナリズム」と批判の声が上がり、世界保健機関(WHO)も公平な配分を阻むことになると懸念を示しています

▼日本は2月下旬から医療従事者に、つづいて65歳以上の高齢者に接種を開始する計画だと政府はいいます。ただし世論調査では、すぐに受けたい人は2割ほどにとどまり、様子見が7割にものぼっています

▼通常5年から10年かかるといわれるワクチン開発。急ごしらえに不安を覚える人は多い。正確な情報の伝達とともに安全性の確保、公平さが求められます。「科学に国境はない」。先駆者パスツールの言葉を肝に銘じるときです。





コロナ1億人感染/ワクチン公平配布で収束を(2021年1月30日配信『河北新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスが世界で最初に確認されたのは中国・武漢市だった。感染爆発に至り、昨年1月23日に都市封鎖されてから1年が過ぎた。中国政府が異例の厳戒態勢で感染を抑え込み、現在は日常生活を取り戻しつつある。

 入れ替わるように、世界全体の感染者が1億人を超えた。欧米などで感染が急拡大している上、日本を含む各国でウイルスの変異種という新たな脅威も生まれ、収束の気配がない。

 各国はこの1年間に得られたウイルスに関する知見を共有し、感染抑止に全力を挙げなければならない。有力な対抗手段はワクチンだが、先進国を中心とする「争奪戦」が懸念される。公平に行き渡るよう調整するべきだ。

 世界の感染者は、昨年11月上旬に5000万人に達してから約2カ月半で倍増した。約80人弱に1人の割合で感染したことになる。死者も210万人を超えた。

 国別では米国が感染者2500万人、死者42万人超と突出している。感染者はインドの1100万人、ブラジル900万人、ロシアと英国370万人と続く。

 新型コロナは厄介な特性がある。昨年の米国調査で、自覚症状のない人の抗体保有率が夏、秋、冬と3カ月ごとにほぼ倍増し、12月には30歳未満で15%を超えたことが分かった。無症状患者からの感染が約6割を占めるとの報告もあり、水面下でまん延しているのは明らかだ。

 フランスの研究チームによると、入院患者の致死率は季節性インフルエンザの3倍近くで、集中治療室(ICU)の入院期間もほぼ倍になっている。

 感染拡大防止に有効性が証明されている対人距離の確保や手指の消毒などの継続に努めるしかない。

 世界の死亡率は減少傾向にある。昨年4月に8%だったが7月には2%に下がり、その後は横ばいとなっている。医師が治療経験を重ねたことが影響しているとみられる。

 ワクチンへの期待は一層高まっている。世界保健機関(WHO)によると、接種は50カ国で実施された。大半が資金力のある先進国で、途上国へのワクチン供給を目指す国際的枠組み「COVAX(コバックス)」で接種が始まるのは早くても2月以降だ。

 「自国優先主義」がはびこれば、公平なワクチン接種は望めない。

 国際商業会議所(パリ)は偏った形で接種が進むと、世界規模の流行は抑えられず、世界の国内総生産(GDP)が今年、9兆2000億ドル(約954兆円)減少する可能性があると指摘。うちの半分は高所得国で失われ、先進国にしわ寄せが来ると警告している。

 遠回りのようでも、公平なワクチン普及こそが経済回復の早道であることを先進国は認識する必要がある。



ワクチン集団接種 地域事情配慮し進めよ(2021年1月30日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスワクチンの集団接種に向けた動きが国内で本格化してきた。政府は来月中の医療従事者への接種開始を目指す。続いて感染による重症化リスクの高い65歳以上の高齢者、持病のある人を優先する方針だ。一般はその後となる。

 11都府県に緊急事態宣言が出されているものの、国内の感染拡大にはなかなか歯止めがかからない。それだけに一日も早く集団接種を実現し、感染収束に全力を挙げなければならない。

 課題は山積している。ワクチン供給をはじめ、接種を担う医療従事者や大規模会場の確保、対象者把握のための台帳整備など都道府県や市町村は膨大な作業を担うことになる。

 集団接種は1994年の予防接種法改正以降、ほとんど行われていない。ノウハウが実施主体の市町村に残されているかどうか不透明な上、今回は比較にならないほど大規模になるとみられる。政府はこうした現状を正確に把握し、主導して接種体制を早急に整備すべきだ。

 コロナワクチンに特有の問題があるのも懸念材料だ。政府は供給契約を米英3社と締結。このうち、近く承認見通しの米国製は冷凍庫保存などが不可欠で解凍後は千回分以上を5日間で使い切ることが求められる。

 厚生労働省と川崎市による訓練では接種前の診断(予診)の際、ワクチンへの不安や持病についての聞き取りで流れが滞ることが判明。アレルギー反応の確認も含め、受け付けから退出まで1人30~40分かかった。

 政府は対象者への予診票の事前配布も検討。十分な説明とやりとりで不安を解消する仕組みをつくり、ぜひスムーズな接種を実現してもらいたい。

 人口規模によっては1自治体で1日千人近い高齢者に接種する必要がある。コロナ患者への対応で医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、必要な医師らを確保できるのかどうか。市町村の枠を超えて協力し合う体制の整備が急務だ。

 移動手段の限られる高齢者がいる中山間地などでは、医師らが接種に出向く必要も出てくる。小規模自治体は事業の財源や人員が確保できないこともあり得る。進捗(しんちょく)状況が地域間で大きく異なるなど不公平感が生じることがないよう、政府は配慮しなければならない。

 各地域の実情を政府が積極的に聞き取り、ワクチン保管用冷凍庫や注射器などの資材だけでなく、財政面でも十分な支援をすることが必要だ。市町村がスムーズに準備を進められるよう、詳しい情報を小まめに提供することも欠かせない。

 国民の正しい理解を得ることも重要だ。接種により少数ながら急激なアレルギー反応が出るとの報告があるが、高い効果が見込まれている。先行接種している海外の事例に学び、万全の対策を政府と自治体で講じなければならない。ワクチン頼みに陥らないよう地道な感染防止対策も継続すべきだ。



コロナワクチン 接種に向け丁寧な説明を(2021年1月30日配信『産経新聞』ー「主張」)

 新型コロナウイルスワクチンの集団接種を想定した初めての訓練が川崎市で行われた。

 想定よりも接種に時間がかかった点など、訓練で浮かび上がった課題は全国の自治体で共有される。関係者は円滑な実施に向け、準備に全力を挙げてほしい。

 そこで欠かせないのは、コロナワクチン接種への理解を促す丁寧かつ速やかな情報提供だ。人々の命と健康を守り、新型コロナ禍を抑え込むには、できるだけ多くの人に接種してもらうことが必要であるからだ。

 「3密」を避けながら多くの人に効率的に接種するのは手順の複雑な大仕事だ。先行して供給されるコロナワクチンは超低温管理が必要で、期間をおいて2回接種する。医師らの確保も課題で、開業医の協力は欠かせない。

 医師不足の地域には都道府県と国の目配りが必要だ。接種が滞る地域を出さないようにしなければならない。

 コロナワクチンの接種は無料で接種に同意する人が対象となる。希望しない人への強制はない。

 人々に接種の意義や安全性、副反応などを伝え、接種を選択してもらわなくてはならない。

 産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が1月に実施した世論調査では、コロナワクチン接種について「期待する」が77・2%だった。

 ただし、もともと日本は、ワクチン接種への国民の信頼度が低い。コロナ禍以前の2015年9月から19年12月にかけて、世界149カ国・地域でワクチンの安全性や有効性がどのように評価されているかを調べた分析が昨秋、英医学誌に掲載された。日本でワクチンの有効性を認めたのは14・7%と最低水準だった。

 新型コロナへの恐れとワクチンへの忌避感で、接種するかどうか迷う人は出てくるだろう。

 政府や自治体、医療機関はコロナワクチンについて、事実に基づく情報を、接種後の倦怠(けんたい)感や局所の痛みなど副反応を含め、分かりやすく伝えてほしい。高齢者には大抵、かかりつけ医がいる。信頼する医師からの説明は特に有効だろう。

 接種が進む欧米諸国やイスラエルなどから情報を集め、効果を公表していくことも欠かせない。変異株(変異種)への効果も国民が知りたい点である。





「想像を絶すると言っていい」(2021年1月29日配信『東奥日報』-「天地人」)

 「想像を絶すると言っていい」。新型コロナのワクチン接種に向けて司令塔役に起用された河野太郎行政改革担当相は、準備の困難さを口を極めて表現した。政府は感染収束の「決め手」と期待するが、東京五輪・パラリンピック開催を見すえた前例のない大プロジェクトであり、先行きが気が気でない。

 計画では2月下旬から、まず米ファイザー社のワクチン接種が医療従事者を対象に始まり、高齢者や基礎疾患がある人などに進む。ただし、他社を含めたワクチンの供給体制に目詰まりが生じつつあり、一般の人への開始時期は未定となった。

 ファイザー社のワクチンについては世界で最も接種が進んでいるイスラエルで、2回接種した約13万人のうち、1週間以上の後に陽性となったのは20人で、副反応も比較的軽かったという。ファイザー社が示した95%の予防効果を上回る可能性がある。

 しかし、米国などではアレルギー反応の中でも特に重いアナフィラキシー症状の報告例がある。今後も安全性と効果の検証は欠かせない。

 案の定、高齢者の接種に向けて川崎市で行われた集団接種の訓練では、病歴やアレルギーの有無を問う予診に時間がかかった。低温でのワクチン保管、医師や看護師、会場の確保など山積する課題の中でも、国の責任ある情報提供が鍵を握る。不安をできる限り少なくして、接種を広げたい。



コロナワクチン 円滑に接種できる態勢整えよ(2021年1月29日配信『読売新聞』-「社説」)

 ほぼすべての国民を対象に新開発のワクチンを接種するという前例のない大事業である。政府と自治体が連携し、周到に準備せねばならない。

 菅首相は国会で、「ワクチンは感染対策の決め手になる」と述べ、全国民分を確保する考えを改めて強調した。

 新型コロナウイルス流行の収束は、多くの人がワクチンを接種し、抗体を得ることが鍵を握る。円滑に接種が進むよう、万全の態勢を整えることが政府の責任だ。

 政府は、米製薬大手ファイザーと、ワクチンに関する契約を締結した。年内に7200万人分の供給を受けるという。

 ファイザー製のワクチンは、海外の臨床試験で高い有効性を示している。政府は通常より審査期間を短縮するため、特例承認を適用する方針だ。安全性を確認し、速やかに手続きを進めるべきだ。

 政府は、2月下旬にも医療従事者への接種を始める予定である。ワクチン担当の河野行政・規制改革相は、その次に対象となる高齢者への接種開始は4月以降になるという見通しを示した。

 各国がワクチンの確保を急ぎ、争奪戦の様相を呈している。政府は供給の時期や量について、適切に情報を開示してほしい。

 ファイザー製のワクチンは、取り扱いが難しい。氷点下75度の超低温で保管し、解凍後5日以内に使い切ることが条件だ。最小単位は1170回分で、小分けにするには制約がある。

 医療機関や公的施設などに多くの住民を集めて、効率的に接種する仕組みが不可欠だ。実施主体となる市町村は、綿密な計画を立てることが重要である。

 政府と川崎市は、集団接種を想定した訓練を行った。問診に想定以上の時間がかかったという。

 密集を避け、短時間で多数の人に接種するには、どうすればよいか。課題を検証し、自治体がノウハウを共有することが大切だ。

 市町村は、会場設営や医療従事者の確保、クーポン券発送など、膨大な事務を担う。1人2回の接種記録も管理しなければならない。政府は、財政支援や物資調達、応援職員の派遣などにより、市町村を後押しする必要がある。

 接種後に副反応が生じる可能性もある。政府や自治体が窓口を設置し、迅速に相談や受診につなげることが必須となろう。

 河野氏は、発信力を期待されての起用である。国民に不安を生じさせないよう、わかりやすい情報発信に努めてもらいたい。



新型コロナワクチン/国が主導的役割果たせ(2021年1月30日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 新型コロナウイルス感染症を食い止める切り札とされるワクチンの供給が、日本でも間近に迫っている。医療従事者や高齢者、持病などでリスクの高い人たちにどれだけ早く届けられるか。世界と軌を一にし、国を挙げた総力戦となる。医療機関や自治体の負担は既に過大であり、接種事業では国が主導的な役割を果たすべきだ。

 早期接種に最も重要なのは、ワクチン自体の確保と配分だ。供給遅れが各国で発生しており、契約通り遅滞なく供給されるよう、各社に繰り返し働きかける必要がある。

 日本が確保したワクチンのうち、米モデルナと英アストラゼネカの2社分は国内治験が始まったばかりで、承認は春以降の見通し。20日に契約を結んだ米ファイザーが頼りだ。ただ同社製品は超低温管理が必要な上、いったん温度を上げると5日で使い切らなければいけない。新設するシステム「V-SYS」を充実させ、適時適切な配分と流通を図りたい。

 厚生労働省の自治体説明会の資料では、膨大な仕事が列挙された。例えば都道府県なら卸売業者の選定と契約、医療関係団体との調整など。市町村では接種会場の設定や医療者の確保、接種のための住民台帳の整備、接種券・接種済み証の印刷と発送などだ。

 人口10万人、うち65歳以上の人が2万7千人いる都市で週に6千回の接種が必要だと試算されている。毎日千人近い接種をこなす慌ただしさは容易に想像できる。厚労省が都道府県と市町村それぞれに、2月末までに必要な人員募集を進めるよう呼び掛けたのも、不足が見込まれるからだ。

 一方で自治体の規模や事務処理量には大差がある。離島や中山間地など地理的に集団接種が難しい地域を抱える自治体ではなおさらだ。国から具体的な方策を助言し、必要な経費、資機材の支援にも万全を期したい。

 流行の初期、マスクや医療現場の防護具が不足した。ワクチンを保管する冷凍庫のほか、ドライアイスや注射器などの資機材のどれも、不足すれば直ちに接種に支障がある。安定供給体制に不安はないか、事前に精査し、必要に応じて増強しておくべきだ。

 それでも事業遂行の過程では、供給や流通、接種事務のさまざまな場面で問題が浮上すると考えておきたい。あらかじめ懸念材料を洗い出し、市町村間の連携や国によるてこ入れ策を整えておく。万が一にも地域間で不公平感が生じることがあってはならない。

 日本は先進国の中でも対応が遅れたが、裏を返せば、接種開始の段階で少なくとも数千万人に接種した結果と効果を見極められる立場にある。それらの先行例によりワクチンの感染抑制効果が示され、接種への理解が進むことが期待される。

 気掛かりは、依然として多くの人が接種をためらっていることと、そのことへの国の危機感があまりにも薄いことだ。

 接種は義務ではなく、ワクチンによる感染抑え込みの成否は、ひとえに市民の協力による接種率の向上にかかっている。

 確保したワクチンには高い効果が見込まれ、副反応は極めてまれなこと、副反応には備えと対処が可能なことなど、科学的に正しい情報を繰り返し発信し、接種事業への信頼を得る。それが現政権に課せられた責務であろう。



コロナ法案修正協議 根本の問題は解消されず(2021年1月29日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正を巡り、自民、立憲民主両党は28日の幹事長会談で、入院拒否者らへの刑事罰を削除することなどで改正法案の修正に合意した。

 立場の弱い人や事業者ばかりを罰則の対象とし、法で威嚇して行政に従わせる構造が今回の法改正の根本的な問題点だ。修正によって問題点は解消されていない。このためコロナ対策としての実効性は大いに疑問である。

 最優先すべきは、全ての人に入院や疫学検査を提供できる検査・医療体制の整備である。緊急事態宣言の前に、国会に報告するだけで広範な権限を知事に与えるなど、国民の人権制約を正当化する法改正は見送るべきだ。

 コロナ特措法には、事業者への営業補償の規定がなく、営業自粛に安心して協力するのが難しいといった問題点があった。その欠陥を補うための改正であれば理解できるが、罰則を設けて強制的に対策に従わせるというのが今回の内容だ。私権の制限という危険性を伴い、罰則の程度を修正して済む話ではない。

 感染者に対して刑罰を設けるのは人権の侵害を招き、感染者に対する差別や偏見を助長する恐れが強かった。刑事罰の削除は当然だ。しかし、修正案は懲役刑を削除するが、罰金に代えて、行政罰である過料を科すことを残した。修正の効果に疑問を覚える。

 そもそも入院拒否の問題よりも、入院したくても受け入れ病床が足りず、自宅で亡くなってしまう事態の方が深刻だ。医療体制を巡る政府の無策を棚上げして罰則強化を急ぐなど後先が逆だ。

 感染者は安全な環境で治療を望むのであり、入院を拒否するのはのっぴきならない事情があるからだ。そうした事情に耳を傾けず罰を科すだけでは、感染を名乗り出ることはできない。感染者を見えなくするだけで、逆効果だ。

 営業時間短縮命令に従わない事業者に科す過料については、当初案から金額を引き下げることで修正合意した。とはいえ、休業できないほど経営的に追い込まれる事業者にいかに感染対策に協力してもらうかという、根本の問題が解消されたわけではない。

 営業補償を設けずに過料を科すことは財産権侵害の恐れがある。憲法29条の3項は「私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」とある。コロナ対策という公共の福祉のために営業の自由を制約するならば、改正特措法に損失への補償も同時に明記しなければ憲法違反になる。

 国民に不自由を強いる緊急事態宣言の発令下に、自民党の松本純国対委員長代理、公明党の遠山清彦幹事長代理が深夜、時短に応じていない銀座のクラブ入店が明らかになった。自らを律することができない政治家に、私権を制限する法改正を審議する資格などない。





不憫な家畜(2021年1月28日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 牛鍋は湯気立て父子いさかへる。飲食店での親子げんかだろうか。きっかけは些事(さじ)なのだろう。せっかくのごちそうが台無しである。残念な場面ではあるが、「新歳時記・冬」にある湯浅藤袴の句は、牛肉好きな食文化をよく表している

▼政府が、牛肉の生産過程をたどることができるトレーサビリティー・システム導入を打ち出したのは、消費者がパニックに陥った牛海綿状脳症(BSE)問題がきっかけだった。全頭に個体識別番号を入れた「耳標」を付け、流通を管理する仕組みだ

▼ネットで出生年月日や飼養地、異動内容が容易に検索できる。大好きな牛肉の安全のためのこととはいえ、丸裸にされる牛を不憫(ふびん)に思うのは明日はわが身だからか

▼新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、河野太郎行政改革担当相がマイナンバーを利用し、個人の接種記録を管理するシステム構築を進める考えを明らかにした。接種の年月日や場所、種類、住所などの情報をデータベース化するという

▼転居した人の情報を共有するというが、本来接種は任意のはず。状況把握なら市町村の予防接種台帳で済まないだろうか。まさかマイナンバーカード普及に接種を利用するわけでもあるまい

▼有効性と安全性が担保されるワクチンならば、だれもが進んで受けるもの。無理を通し、いらぬいさかいを起こす必要もなかろう。家畜扱いは御免被りたいものだ。



「蝦夷種痘図」という絵がある…(2021年1月28日配信『毎日新聞』-「余録」)

 「蝦夷種痘図(えぞしゅとうず)」という絵がある。幕末の安政年間に行われた幕府のアイヌへの集団種痘の様子を描いた絵だ。和人やロシア人から感染した天然痘で、免疫のないアイヌに多数の死者が出ていた時代だった

▲絵には並んで順番を待つアイヌに種痘を施す幕府派遣の医師2人、上座の奉行ら3人の役人、記録する書記役などが描かれている。種痘を終えたアイヌたちはいろりを囲んで懇談し、会場には食器や布など種痘の報奨品も積まれている

▲同じような絵は何種類かあり、ほうびの菓子であやしても泣きじゃくる子の姿もある。医師らは各地の居住地を回り当時のアイヌ人口の半数以上に種痘を施したといわれる。多くの命を病魔から救った幕末の一大プロジェクトだった

▲こんな絵を思い出したのは、新型コロナウイルスのワクチン集団接種のシミュレーションが行われたからだ。川崎市の短大の体育館では、受け付け、医師の問診、接種、接種後15分の待機といった一連の流れとその時間が確認された

▲関係省庁はもちろん各自治体、医師会や医療機関、そして関連企業をまたぐ国家的「プロジェクトX」(河野太郎(こうの・たろう)担当相)となるワクチン接種である。だが、すでに接種の進む欧米からはワクチンの供給遅れなどの不首尾も聞こえる

▲アイヌ集団種痘では一部で住民が山に逃げたこともあったが、ほぼ説得が受け入れられたようだ。令和のプロジェクトXの詳細が決まるのはこれからである。くれぐれも地域と医療の実情を軽んじないよう願う。



気の遠くなるほど煩雑な作業のかたまり(2021年1月28日配信『日本経済新聞』ー「春秋」)

 かつて、帝国陸軍に伝わるざれ歌があった。「輜重(しちょう)輸卒が兵隊ならば 蝶々(ちょうちょう)トンボも鳥のうち」。注釈を加えないと意味不明だろう。輜重輸卒というのは軍需品の運搬や補給に携わる兵たちのことだ。そんな大切な役割を担う者を、旧軍では揶揄(やゆ)の対象にしたのである。

▼こういう話を持ち出すまでもなく、上層部が兵站(へいたん)を軽んじ、前線を疲弊させたケースは枚挙にいとまがない。多くの部隊が現地調達を強いられ、敵よりも飢えと戦った。現場の士気がいかに高くとも、しっかりした後方支援なしに戦争はできないのだ。さていま、コロナ退治のワクチン接種作戦にその懸念はないだろうか。

▼国民の大半に、海外から届くワクチンをひたすら打っていく――。と書けば簡単だが、前例のない成人への集団接種である。対象者への通知と予約確認、配送と保管、会場設営、医師や看護師の確保、接種時のトラブル対応、副作用情報の把握……。気の遠くなるほど煩雑な作業のかたまりだ。国の入念なサポートが要る。

▼2カ月後には、まず高齢者への接種が始まるという。自治体は戦闘モードだが、政府の方針はなお曖昧だから手探りの準備が続く。大号令を発するだけでは現場の混乱は避けられまい。ちなみに「輜重」なる言葉の「輜」も「重」も本来は荷車を指す。コロナからの解放の夢を乗せた車を、滞りなく走らせなければならぬ。



100人の村の30人は子供で、78人が大人。6人で富の59%を…(2021年1月28日配信『東京新聞』ー「筆洗」)

 100人の村の30人は子供で、70人が大人。6人で富の59%を所有していて、20人で富の2%を分け合う。20年ほど前に話題になった『世界がもし100人の村だったら』が、えがいた世界の縮図である。富の偏りに驚き、気付かされた覚えがある

▼世界の新型コロナウイルス感染者が、1億人を超えたという。世界の80人に1人以上の計算は、100人の村に例えると、感染したことのある人が1人、少し前からいたことになる

▼「たったの」ではないだろう。2カ月半あまりで倍増しての数字である。2人目を防ぐ必要に気付くのが、よさそうである

▼世界のワクチンの接種率は0・8%という。日本もこれからだ。村には、まだ1人もいない。人口の6割が抗体を持つことで集団免疫は得られるという説もよく聞く。単純な計算は乱暴なのかもしれないが、60人か。感染で抗体のある人を含めても先は長そうだ

▼欧州などでワクチンの供給遅れが問題になっている。村の富のように接種をめぐる格差が生まれないかも気になる。「感染者1億人」が描く世界像は厳しい

▼「億万を知らんと欲せば、すなわち一二を審(つまび)らかにす」という故事がある。多くを知りたいのならば、最初の一、二を詳しく知ることである。億に至った感染の始まりも、まだ詳しくは分かっていないコロナ禍である。百人で立ち向かうべき相手であろう。



頼みのワクチン(2021年1月28日配信『中国新聞』-「天風録」)

 世界経済は5・5%のプラス成長を見せると、国際通貨基金(IMF)が予測した。昨年はマイナス成長だった日本もプラス3・1%とみる。ワクチン普及や、日米の巨額の財政出動が景気を押し上げる―。そうIMFはそろばんをはじく

▲ことし後半には、経済活動がコロナ流行前の水準に戻るという。八方ふさがりの中、やっと光明の見えてきそうな計算である。もちろん期待したいものの不安要素がある。変異ウイルスの影響やワクチン普及の遅れだ

▲世界の感染者が1億人を超えた。日本の閣僚は会食でまた批判されていたが、アフリカ南部の国々では閣僚が相次ぎ死亡。南アフリカで見つかった変異種の影響もあるのか、感染が拡大する。頼みのワクチンはいつ届くのだろうか

▲欧州では供給が大幅に遅れ、接種計画にも破綻の恐れがあるという。接種を始めた米国でさえ、「全国民分の確保は秋ごろ」とバイデン大統領が厳しい現実を示す。五輪も控える日本は6月を目標とするが、果たして

▲接種に向け、医師や会場の確保に自治体は苦悩する。マイナンバー活用まで持ち上がって頭が痛かろう。プラス成長が「そろわぬワクチンの皮算用」になっては困る。



史上最大のコロナワクチン大作戦(2021年1月28日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 乳搾りで症状の軽い牛痘に感染した人は天然痘にかからない-。言い伝えをヒントに、英国の医師ジェンナーが牛痘の女性から採ったうみを少年の腕に接種したのは18世紀のことだ

▼腕にはやがて発疹が出て、うみを持った。しかし、後に少年に天然痘を接種すると感染しなかった。何とも怖い実験だが、これがワクチンの始まり。語源はラテン語で牛を表すvaccaだ。免疫やウイルスの知見もなかった時代

▼さて、史上最大のコロナワクチン大作戦である。2月に医療関係者から接種をスタートし、高齢者、基礎疾患がある人、一般へと広げる。調整を担う河野太郎行政改革担当相は「令和の運び屋になる」と意欲を示すが、果たして

▼最初に承認が見込まれるワクチンは零下75度、もう一つも零下20度での管理が不可欠だ。どう運び、保管するか。さらに、一度解凍すれば千回分を速やかに使い切る必要がある、というのも悩みの種

▼体育館など大勢が集まれる場所も接種施設となろう。人同士の感染防止に工夫が必要だ。もちろん最大の課題は医療が逼迫[ひっぱく]する中、医師や看護師にどう参加してもらうか。ところが難局を目前に詳細は「決まっていない」が大半、となれば混乱は必至だろう

▼第1波への政府対応を検証した臨時調査会は「場当たり的判断の積み重ね」と総括。これに官邸は「泥縄だったが結果オーライ」と反応した。科学の時代の戦略なき甘い見通しに驚く。補正予算案にも「Go To トラベル」延長経費がちゃっかり入った。



[コロナワクチン] 接種へ正確な情報必要(2021年1月28日配信『南日本新聞』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルス感染症のワクチンについて、3月中旬以降に65歳以上の高齢者への「接種券」を配り始め、接種開始から2回目の接種までを3カ月以内に終えることを目指す計画案を明らかにした。

 対象者が約3600万人に及ぶ計画の規模の大きさを考えれば、相当な速度である。実務を担う厚生労働省や自治体には戸惑いがある。予定する米製薬大手ファイザーのワクチン供給が間に合うのか、との懸念も残る。

 だが、感染の拡大を抑止するために、ワクチン接種はどうしても乗り越えなければならない関門だ。政府は良い悪いにかかわらず、正確な情報を迅速に示しながら自治体と十分に連携し、国民が安心して接種できる体制づくりを急ぐべきである。

 コロナ流行収束の切り札と期待されるワクチンを巡っては、爆発的な感染に見舞われた米国や英国などで接種が進む。日本では菅義偉首相が国会で「全体として3億1000万回分を確保できる見込みだ」と説明している。

 ファイザーのワクチンは現在、厚労省が審査しており、順調にいけば来月15日にも承認される可能性がある。政府はその後、速やかに医療従事者に接種を開始、続いて高齢者への接種に移りたい考えだ。

 しかし、コロナ対応で医療スタッフの不足が深刻化する中、全国の自治体が要員と会場を準備するのは容易ではない。共同通信が47都道府県庁所在地の自治体に聞いた調査では、8割の38市区が主要課題に医師や看護師の確保を挙げた。地元医師会などとの連携が欠かせない。

 ファイザー製ワクチンは零下75度での保管など扱いが難しい。政府は全国約1万カ所の医療機関などに超低温の冷凍庫を置き、そこを拠点にワクチンを配分する構えだが、これまでにない事例とあって、混乱を避けるには入念な準備が必要となろう。

 鹿児島県内では鹿児島市などが接種のための態勢を新たにつくり、県も今月半ばに調整班を発足させた。実施主体となる市町村の作業が円滑に進むよう、政府は具体的な助言、経費の負担など支援に万全を期してほしい。

 注意しておきたいのは、既にインターネットなどで科学的根拠なくワクチンの安全性を否定し、接種を忌避する声が出回り始めていることである。これまでのところ、米疾病対策センター(CDC)は重大な副作用は「極めてまれ」と報告している。被害に対しては政府の救済制度もある。

 とはいえ、国民は感染したり大切な人にうつしたりするリスクと、副作用のリスクを自分で見極めなければならない。冷静な判断のために、政府やメディアはもちろん、ネット利用者も正しい情報発信に努める必要がある。



坂井、河野、松本、遠山…困った神奈川(2021年1月28日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★つい先週、官房副長官・坂井学が新型コロナウイルスのワクチン接種のスケジュールについて「本年6月までに接種対象となるすべての国民に必要な数量の確保は見込んでいる」とすれば、ワクチン担当相・河野太郎が「政府内の情報の齟齬(そご)があり、あのスケジュールに関する発言は修正させていただく」と反発。坂井も発言の修正などせず、2人は閣内不一致として突っ張り合った。結局、自民党幹事長・二階俊博があきれて割って入り「発信に対して片方が取り消すなんて、そんな面倒くさいことをね。よく調整しておやりいただければいいと思います」とたしなめたが政権内の混乱を露呈させた結果となった。

★今度は自民党国対委員長代理・松本純が国会開会日の18日に銀座のクラブを深夜まではしご。それぞれの店で陳情を受けていたと説明。食事後に酒は飲んでいないという。22日には、公明党幹事長代理・遠山清彦も会食後、クラブに連れていかれ相談を受けた。酒は会食時に飲んだがクラブでは飲んでいないと2人とも妙な解説。これで飲食店が感染拡大の温床というのだから恐れ入る。そもそも飲食を助けるのならクラブで飲んでいかないと意味がない。どこから見てもダメな言い訳だ。

★自民党選対関係者が言う。「坂井は神奈川5区、河野は同15区、松本は同1区、遠山は公明党比例(九州ブロック)選出だったが、次期衆院選から神奈川6区で出馬が決まっている。推薦する身としても神奈川は困ったことになった。それでなくても神奈川県連は首相・菅義偉のおひざ元。既に接戦区でテコ入れしたいのが5区、7区、14区、16区、18区だが、これでは先が思いやられる。都市部はこういう話に敏感だ」とこぼす。その首相は27日、参院予算委員会で、銀座のクラブ問題を問われ「夜8時以降の外食・飲食や不要不急の外出をしないように協力をお願いしている中、このような事態が発生し大変申し訳ない」と謝罪した。与党神奈川県連全体で菅政権の足を引っ張っている。





古い時代のインドや中国には天然痘の予防法…(2021年1月27日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 古い時代のインドや中国には天然痘の予防法があったという。患者の皮膚にできた膿疱(のうほう)の膿(うみ)を健康な人の皮膚に傷を付けて擦り込む、あるいは、患者のかさぶたを粉末にして鼻から吸い込む。そんな方法だ

▼やがて、インドからトルコ経由でこうした手法は欧州に伝わる。ところが、これは天然痘を発症する恐れがある危険な方法だった。そこで、牛の病気の牛痘を使うもっと安全なやり方を発見したのが英国の医師ジェンナー

▼以上の詳細はウイルス学の権威加藤四郎さんの『種痘学入門』にある。ジェンナー以前の「人痘種痘法」が危険であっても広がったのは、予防の効果が発病の危険を上回ると考えられたからだろう。そのようにして人の歴史はさまざまな病気と闘ってきた

▼どんな医療行為であっても「ゼロリスク」はあり得ない。新型コロナ感染症のワクチンに関しても副反応が取り沙汰されている。しかし、ワクチンに一定の効果があるのだとすれば、可能な限り多くの人が早く受けるべきだ

▼外国で承認されたワクチンが日本では使えない状況を「ワクチンギャップ」と呼ぶ。安全性や副反応に過剰なまでに慎重なのもまた問題らしい。各種アンケートで、新型コロナワクチンを「受けたくない」とする答えが結構多いのが気に掛かる。



ワクチン準備/十分な情報公開が肝要だ(2021年1月27日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチン接種に向け、各自治体の動きが加速している。兵庫県や神戸市などは担当組織を新設した。厚生労働省も自治体向けの説明会で、3月中旬以降に高齢者への「接種券」配布開始といった日程を示した。

 国民の大半が接種を終えるのが感染収束への大きな一歩だが、それには課題が山積する。医療が逼迫(ひっぱく)する中、接種に携わる医師や看護師をいかに確保するか。「3密」を回避し、接種後の体調観察にも対応できる会場をどう設営するか。高齢者や障害がある人たちの足の確保は…。

 自治体だけでなく、社会全体にとっても未経験の一大事業となる。命を守るため政府、自治体や医療機関などが連携し、安全で円滑な接種態勢を早急に整えねばならない。

 政府がスケジュールを示す一方、最大の懸念となっているのがワクチンがいつ、どれだけ供給されるか現段階で不明な点だ。

 政府は米英の3社から計3種類で計1億5700万人分の供給を受ける契約を結んでいる。しかし米ファイザー製が審査で先行するものの薬事承認には至っておらず、接種の具体的な日程などが固めきれない。

 ワクチン確保の時期を巡り、総合調整を担う河野太郎行政改革担当相と坂井学官房副長官の説明に食い違いも生じた。欧州ではファイザーからの供給が遅れているという。政府は正確な情報をいち早くキャッチし、国民に公開する必要がある。

 政府はきょう、川崎市でワクチン集団接種のシミュレーションを実施する。ファイザー社製ワクチンはマイナス75度という超低温での輸送や保管が必要で、冷凍庫やドライアイスなど資機材の確保も不可欠だ。間隔を空けて2度接種するため、接種状況の把握も重要になる。ソフトとハード両面で、十分な対策を講じねばならない。

 世界では既に多くの国でワクチン接種が始まっている。しかしワクチン開発が異例のスピードで進んだことから、安全性に懸念を抱く人が少なくない。日本でも、同じ声を耳にする。

 英国で発見され、感染力が増しているとされる変異種の市中感染が疑われる事例が日本でも発生した。各地で確認されており、予断を許さない状況だ。開発中のワクチンが有効か、期待と不安が入り交じる。

 菅義偉首相は「正しい理解を広げるため、科学的知見に基づいた正確で分かりやすい発信をしていきたい」と述べている。スケジュールありきではなく、具体的な情報を公開することが、疑問や不安の解消には欠かせない。コロナ対策全般にも言えることだ。



ワクチン接種 情報開示と万全の態勢づくりを(2021年1月27日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの流行収束が見通せない中、政府は「対策の決め手」と位置づけているワクチン接種に向けた動きをようやく本格化させてきた。

 一方、実施主体となる市区町村では、難題が山積しており政府の計画に懸念も出ている。医師ら人員と会場の確保や、扱いが難しいワクチンの管理、運用などが必要で、全住民のうち希望者に1人2回の接種をしてもらう過去に例のない規模の一大事業となる。混乱のないよう政府は準備を急ぎ、自治体を支える万全の態勢をつくらねばならない。

 政府は米英の3社から3億1千万回分のワクチンを確保見込みで、1人2回接種の想定で全国民に行き渡る。手続きが最も進んでいるファイザー製は2月15日にも承認される見通しで、同意を得られた医療従事者約1万人を先行接種し、3月中旬にはコロナ患者の診療などに関わる約370万人の医療従事者への接種を始める。住民では3月下旬から65歳以上の高齢者約3600万人への開始を目指し、対象を広げていく方針だ。

 共同通信の47都道府県庁所在地を対象にした調査で、主要課題として「医師や看護師らスタッフの確保」を8割の自治体が挙げた。コロナ禍での人員確保に難航が予想されている。次いで「接種会場の確保」が30市。3密を回避しながら、接種後も体調観察のため15分以上待機できるスペースを要する。

 ファイザー製ワクチンはマイナス75度での保管が必要で、解凍すれば千回分以上を使い切らねばならず、接種人数の確保や管理が難しく運用に工夫が求められる。どのワクチンがいつ、どれだけ届くのか不明で、具体的な接種計画が立てられないと自治体は指摘している。政府は自治体と綿密に調整を図らねばならない。

 ワクチンは迅速な審査が必要だが、安全性や有効性の確認はおろそかになるようなことがあってはならない。初めてのワクチンで国民には不安も多い。安全性や有効性などの資料、審議会の議事録について菅義偉首相は「迅速な公開に努めたい」としている。科学に基づいた情報開示が信頼性に欠かせない。

 既に接種が行われている欧米では、少数ながら急激なアレルギー反応のアナフィラキシー症状の報告や、ワクチンの供給遅れなどの問題も出ている。効果の持続期間は不透明で、変異種への効果も十分に分かっておらず、変異種の広がりも注視する必要がある。情報収集と分かりやすい情報発信が求められる。

 全国民に必要な数量のワクチンを確保する時期を巡って、ワクチン接種の調整役に任命された河野太郎行政改革担当相と、坂井学官房副長官が互いに発言を否定するなど混乱が生じた。結局、衆院予算委員会で菅首相が6月を「目指している」と表明した。政府内での食い違いは国民の不安や混乱を招くと自覚すべきだ。



パラドックス(2021年1月27日配信『高知新聞』-「小社会」)

 家族でだんらん中、娘が「あすからの連休は久しぶりに温泉に行こう」と提案した。誰も反対意見を言わないので皆、きっと他の家族は行きたいのだと思い込み、旅行に出掛けた。

 ところが宿はいまひとつで行きも帰りも大渋滞。ぐったり疲れた父と母、息子は実は考えていた別の予定があったと明かす。提案した当の娘も予定があり、「たまには母さんも家事から解放されたいかなと思って…」(高橋昌一郎監修「絵解きパラドックス」)。

 皆は賛成なのだろうと黙っていたら、実害を受けた後で実は皆が反対だったと知る―。米国の経営学者ジェリー・ハーベイが提唱した「アビリーンのパラドックス」。多くの企業や組織が陥りがちな空気の支配だろう。大切なのは、反対意見を言う人と異論の検証だ。

 いま異論も口に出し、あらゆる選択肢を検証すべきなのは政府や都といった東京五輪の関係団体だろうか。コロナ感染の世界的な収束が見通せないまま、開幕まで半年を切った。

 ワクチン接種は国内でも五輪までに行き渡る保証はない。疲れ切った医療現場から、感染対策で医師らを動員する計画も無理はないか。首相は「人類が新型コロナに打ち勝った証しとして」と言い続けるが、無観客開催も中止も含め、もう現実を見た議論を始める時期だ。

 もちろん、選手の努力を思えばやるに越したことはない。ただ、皆で黙っていては結果を間違えかねない。



[コロナワクチン接種]混乱招かぬ態勢整えよ(2021年1月27日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症の収束への切り札とされるワクチン接種が、国内でも始まる見通しとなった。

 政府の計画では2月下旬から、同意を得た医療従事者約1万人に先行接種する。3月中旬には、新型コロナ患者の診療や搬送に関わる医療従事者へ接種を始める。続いて下旬から、65歳以上の高齢者に接種する計画だ。

 65歳未満はその後で、まず心臓病や呼吸器の病気など持病がある人が優先される。

 接種の実施主体となるのは全国の自治体だ。県は15日付でワクチン対策チームを発足させた。那覇市も2月1日、市保健所内にコロナワクチン接種推進室(仮称)を設置する方針だ。

 自治体にとっては、経験したことのない大事業となる。

 コロナ禍でただでさえ医療提供体制が逼(ひっ)迫(ぱく)する中、接種に携わる医療スタッフを確保するのは容易ではない。

 都道府県庁所在地の自治体に対する共同通信の調査では、那覇市を含め8割が「医師や看護師の確保」を主要課題に挙げた。集団接種の場合は広い会場の確保も必要だ。

 さらにワクチンの扱いの複雑さが、接種の実務をより困難にしている。

 県内でも提供される可能性が高い米製薬大手ファイザー製のワクチンは、マイナス75度の超低温での保管が必要となる。しかも、解凍すれば接種千回分以上を速やかに使い切らなければならない。

 離島の住民を含めて1人計2回の接種を安全で円滑に進めるには、国と県、市町村が緊密に連携する必要がある。
■    ■
 接種までの流れは、まず、市区町村の発行する「接種券」が郵送で届く。住民は接種できる医療機関や会場を選び予約するという。

 気掛かりなのは高齢者だ。自分で予約し会場に足を運べるか。適切な日数を空けて2回目も受けられるか。不安に感じる高齢者は多いはずだ。きめ細かい支援が求められる。

 行政や医師会、医療機関だけでなく、地域の各種団体の協力も必要になってくるだろう。希望した人が混乱なく接種できるよう態勢を整えて総力戦で取り組むべきだ。

 菅義偉首相は、接種状況を管理するためマイナンバー活用も含めた仕組みを検討すると表明した。

 住民の接種状況を把握し自治体と共有するシステムは政府が開発する方針だというのに、なぜマイナンバーとつなぐ必要があるのか唐突感が否めない。政府の役割は、実務を担う自治体が円滑に作業できるよう財政面を含めて手助けすることだ。
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 人工遺伝子など新技術が活用されたワクチンは、予期せぬ副作用が起きる恐れがある。安全面に不安を感じている人は少なくない。

 昨年10月の国際調査では、接種に「同意する」とした人の割合が日本は69%で、調査対象15カ国の平均を下回った。

 接種は「努力義務」の位置付けであり強制ではない。納得して接種してもらうには、政府は副作用情報があれば積極的に情報を公開し、丁寧に説明することが求められる。





ワクチン接種 国の責任で備え万全に(2021年1月26日配信『北海道新聞』-「社説」

 政府は新型コロナウイルスのワクチン接種を2月下旬にも始める方針だ。

 ワクチンはコロナ収束の決め手となる。だが、安全性をおろそかにすれば普及に影響する。政府が強く認識すべき要諦である。

 接種主体の自治体からは準備への懸念の声も出ている。特に医師、看護師の確保が課題だ。コロナ感染者の拡大で医療現場が逼迫(ひっぱく)する中で確保は容易でないからだ。

 接種会場の確保のほか、医療機関や会場への冷蔵移送が必要なワクチンの管理も求められる。

 自治体側は国から供給時期や量の情報が少なく、準備を具体化できないとも指摘する。

 連絡不足で混乱と手違いが生じれば、国民の命を危険にさらすことになりかねない。

 国が示した工程表では、2月下旬から医療従事者の優先接種を始め、3月以降、高齢者や一般市民などに順次実施する。

 ワクチンの供給では欧米3社と契約し、計1億5700万人分を確保した。厚生労働省は米ファイザー製について、早ければ2月中旬に「特例承認」する見通しだ。

 欧米ではワクチンの接種後に重いアレルギー反応が報告されている。日本政府は海外の情報を常に収集し、公開する義務がある。

 改正予防接種法では国民に接種を受ける努力義務を課し、企業が払う損害賠償金を政府が補償する契約を結べるようにした。

 接種を早期に行うための措置だ。菅義偉首相はきのうの衆院予算委員会で、「国民に正確な情報を提供することがワクチンへの信頼を高める上でも重要だ」と述べた。当然だろう。

 接種実施にはワクチンの安全性や、国内で感染の拡大が懸念される変異ウイルスに対する有効性などの情報を、徹底して開示することが欠かせない。

 全国民に必要な数量のワクチン確保の時期を巡り、政権内の情報が錯綜(さくそう)した。その修正のため、菅首相はきのう、6月の確保を「目指している」と述べた。

 情報が二転三転すると混乱するのは国民だ。ワクチン接種の調整を担う河野太郎行政改革担当相は、関係閣僚と十分に協議することが求められる。

 道内の自治体もワクチン担当の専門部署を設置し、接種への準備に入った。自治体にとっては未経験の大事業だ。

 国は自らの責任を明確にし、自治体への支援を含め、接種の準備を着実に進めなければならない。



ワクチン接種 情報を開示し万全を期せ(2021年1月26日配信『山陽新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスを予防するワクチンの接種に向けて、ようやく国内でも議論が本格化してきた。

 政府はワクチンを「感染収束の決め手」と位置づけているが、接種作業を受け持つ医療関係者や自治体からは、政府の対応への懸念が消えない。政府はこうした不安を取り除くためにも、万全の態勢づくりを進めるべきだ。

 政府はこれまでに、米英の3社から、3億1千万回分のワクチンを確保した。1人2回ずつ接種しても、全国民に行き渡る回数である。承認手続きなどが最も進んでいる米ファイザー社製のワクチンを想定し、2月中に医療関係者ら、3月には高齢者への接種を始める予定とされる。

 ファイザー製のワクチンはマイナス75度での低温管理が必要な上、長期保存はできない。国内での準備は、主に厚生労働省が担当しているが、保存のための特殊な冷蔵庫は経済産業省、輸送は国土交通省などが管轄する。

 省庁を超えた準備を円滑に進めるために、ワクチン担当相として、政府は河野太郎行政改革担当相を任命した。担当大臣の乱立が現場を混乱させることがあってはならない。省庁間や地方との間にある目詰まりを解消し、風通しをよくすることが先決だ。

 一方、医療従事者や接種会場に不安を抱える関係者は多い。共同通信が47都道府県の県庁所在地に課題を聞いたところ、岡山、広島、高松市を含む38自治体が「医師や看護師の確保」と回答した。都道府県庁所在都市でも8割が不安を抱えている。

 ワクチンは、一度解凍したら使い切らなければならない。このため、1カ所で大勢に接種することが求められ、体調不良の有無を確認する待機場所も必要だ。広いスペースが確保できる体育館などが望ましいとされている。先の調査では「会場の確保」についても、岡山、高松市など30市が課題に挙げた。

 岡山県は先週、県内市町村と初めて協議会を開き、接種に向けたスケジュールなどを確認した。小規模な市町村は、自治体を超えた連携が求められる可能性が高く、なおさら心配は大きかろう。地域での偏りがないよう、政府、都道府県は責任を持って調整してもらいたい。

 さらに、ファイザー社のワクチンは主に海外で臨床試験を実施してきた。強いアレルギー反応などの副作用も報告されている。国内でも安全性や効果の試験が始まり、結果がこれからまとまるという段階だ。安全性については手探りでのスタートになろう。

 国民の中には接種に不安を感じる人も多い。一方、コロナ禍の収束のためには、多くの人に接種してもらう必要がある。安全性はもちろん、準備段階の問題点も速やかに情報開示すべきだ。透明度を徹底して高めることが、国民の不安解消につながることを忘れてはならない。





ワクチンの接種体制 正しい情報提供が不可欠(2021年1月25日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、体制整備の遅れを不安視する声が医療関係者らから上がっている。

 政府は米英の3種類のワクチンを、計3億1000万回分確保した。手続きが最も進んでいるのは米ファイザー社製だ。2月下旬に医療従事者への先行接種、3月には高齢者への優先接種開始を目指している。

 だが、実施を担う自治体には戸惑いが広がる。国から日程が示されないからだ。接種場所に加え、医師や看護師などの人手を確保しなければならないが、肝心の供給スケジュールが見通せない。

 政府は「全国民に必要な数のワクチンを6月までに確保する」としているが、接種計画をとりまとめる河野太郎行政改革担当相は「供給スケジュールは決まっていない」と言う。政府内で情報の混乱が起きている。

 こんな状況で、政府主導のワクチン計画を遂行できるのか。不安は尽きない。

 日本のワクチン行政は、必要と判断した個人が医療機関で接種を受ける「任意接種」が原則だ。今回のように、多人数に対して短期間に接種するノウハウは蓄積されていない。

 ワクチンに関する知識や接種会場の情報、進捗(しんちょく)状況などをネット上に集約する「ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)」の構築も、接種開始に間に合うかどうかが危ぶまれている。

 3種類のいずれも薬事承認されておらず、外国製のため不確定要素があることは否めない。しかし、数の確保と公平な分配、接種の着実な実施は国の責務だ。受けたいのに受けられない人が出ることや、副反応情報が放置される事態は、あってはならない。

 河野担当相は、各省庁や自治体、医療機関や輸送業者の声を吸い上げ、具体的な解決策を示すべきだ。予断や希望的観測を排除し、正しい情報を公開することは言うまでもない。

 ただでさえ、自治体は現下のコロナ感染者対応に追われている。そこにワクチン接種という大きな課題が加わった。

 問題点や目詰まりの解消を現場に丸投げし、国民の命を危険にさらすことは、決して許されない。



ワクチン接種 地方にモデルを示さねば(2021年1月25日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 空前の計画は想定通りに進むのか。政府は来月半ばにも、米製薬大手ファイザーの新型コロナワクチンの使用を承認する方針だ。

 同意を得た医療従事者約1万人に先行接種する。安全性を確かめた上、医師や看護師、高齢者や基礎疾患のある人に優先接種していく。5月以降、一般の接種に移るとしている。

 菅義偉首相は全体で3億1千万回分を確保の見込みと表明した。一方、住民の接種を担う市町村の現場は課題が山積みだ。供給されるワクチンの量や時期の情報が届かず、準備は手探りが続く。

 1994年の法改定を機に集団予防接種の中止が広がり、多くの市町村はノウハウが乏しい。その中で感染対策が取れる会場を確保し、住民への案内を進めなくてはならない。ワクチンの管理も厳格な手順が求められる。

 接種の有効性、安全性は保たれるのか。住民に不安が広がりかねない。政府は各自治体の事情を踏まえ、現場で混乱を来さない態勢づくりを急ぐ必要がある。

 全国知事会など地方3団体は政府に対し、ワクチン供給の迅速な情報とともに接種方式のモデルを具体的に示すよう求めている。

 ファイザーのワクチンは超低温での保管が要る。政府は専用冷凍庫約1万台を全国の拠点に配備する。一度解凍すると5日ほどしか持たない。無駄にしないためには短期間でいかに大勢の人に集中的に接種できるかが鍵となる。

 接種に当たる医師や看護師も、どれだけ確保できるのか。コロナ対応で疲弊する医療現場の負担軽減も考えなくてはならない。

 長野県はワクチン接種を円滑に進めるため「接種体制整備室」を新設した。国に対し必要な情報を求めつつ、市町村や医療機関との調整を着実に進めてほしい。

 菅首相はワクチンを「感染収束の決め手」と呼んでいる。この時期に河野太郎行革担当相を接種の司令塔に指名したことには、政権浮揚の意図が透ける。

 政治の前のめりが接種の強制圧力につながらないか。接種しない人が中傷や不利益を受けるようなことがないか。注意したい。

 接種が進む国では、直後のアレルギー反応が報告されている。副作用について詳細な情報の開示が欠かせない。国内で先行、優先接種する人の情報も重要だ。

 供給や接種が想定通りはかどらない国も少なくない。政府はワクチン頼みに傾斜せず、医療が逼迫(ひっぱく)する地域への支援や検査態勢の拡充を併せて進めるべきだ。



ワクチン接種 国は責任持ち環境整備を(2021年1月25日配信『新潟日報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの制圧に向けたワクチン接種を着実に進めるには、丁寧な説明と十分な準備が欠かせない。

 大規模な取り組みとなるが、混乱を招くことがないよう、政府は自治体や関係する民間機関と連携し、迅速、的確に調整を図ってもらいたい。

 米製薬大手ファイザー社の新型ウイルス感染症のワクチンが、早ければ2月15日にも厚生労働省が開く専門部会で承認される見通しとなった。

 承認されれば2月中旬以降、本県などで同意を得た医療従事者への先行接種が始まる。

 接種は医療従事者、高齢者、一般の人の順で進められ、16歳以上が対象になる見込みだ。

 ワクチンは政府が契約したファイザーを含む欧米3社が供給する予定で、厚労省によると3億1400万回分が確保できる見通しという。1人が2回接種する想定のため、1億5700万人分となる。

 全国約1万カ所の医療機関や体育館などにワクチンを保管できる超低温の冷凍庫を置き、そこを起点に地域の他の施設へ配分する体制を取る。

 前例のない大規模な集団接種となる。期待が大きい半面、具体的な接種スケジュールや効果、副反応などに多くの国民が疑問や不安を感じている。

 海外の臨床試験では発症や重症化を防ぐ効果が確認されたとの報告があるが、感染自体を防ぐ効果は分かっていない。効果の持続期間も不明だ。

 接種するかどうかを迷っている人もいるだろう。利点と危険性を判断できる正確なデータの提示が不可欠だ。

 政府は分かりやすい情報発信を心掛けてもらいたい。

 菅義偉首相は既に、河野太郎行政改革担当相をワクチン接種に関する政府全体の調整役に決めている。

 官邸内のチームを中心に省庁横断で対策を講じてきたこれまでの体制から転換を図った。

 ウイルス対応では世論調査などでも首相の「後手ぶり」が批判され、支持率が低下する要因となってきた。

 発信力がある河野氏をワクチン担当に置いたことには、国会での野党の追及を乗り切ろうとする政権の思惑も透ける。

 だが河野氏は22日、ワクチンの確保時期を巡って坂井学官房副長官と互いの発言を否定し合い、調整不足が露見した。

 政府が混乱していては困る。河野氏はしっかり周囲と調整し、準備が円滑に進むよう力を尽くしてもらいたい。

 急がれるのは接種の現場を担う自治体や民間への対応だ。

 都道府県庁所在地の自治体を対象にした共同通信の調査では、大半の自治体が医師や看護師、接種会場の確保に課題があると答えている。自治体側の人手不足で、調整に目詰まりが起きているとの指摘もある。

 接種が始まっても感染がすぐに収まるわけではないが、収束への後押しとするために体制整備をきちんと進め、国民の不安を解消する必要がある。



ワクチン接種 医師・会場、確保できるか(2021年1月25日配信『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、政府は早ければ2月下旬のワクチン接種開始へ準備を急ぐ。

 医療従事者から順次開始し、5月には一般の人にも広げる想定だ。しかし厚生労働省の内部には「非現実的だ」との見方もある。体制づくりに難題が山積しているためだ。

 接種に当たる医師や看護師の確保はもちろん接種会場をどうするのか―。主体となる自治体は頭を抱えている。

 医療現場はコロナ患者の治療や検査などですでに逼迫(ひっぱく)しており、崩壊の危機にある。その中で自治体にとっては「未経験の大事業」となる。収束を急ぐのは当然だが、スケジュールありきでは混乱を招く。政府は自治体と綿密に調整し、地域の実情に沿って財源やノウハウを支援する必要がある。

 米ファイザー社のワクチンは早ければ2月中旬にも承認される。政府は下旬から安全性調査を目的に、まず医療従事者1万人に先行接種する考え。さらに3月中旬には新型コロナ患者の診療や搬送に携わる医療従事者370万人に接種を始める。同時に、65歳以上の高齢者に「接種券」を配布し、3月下旬から接種というスケジュールだ。

 優先対象でない、一般の健康な人の接種は、高齢者の大半が2回目を打った後とされているが、5月頃には始めるとの想定が出てきた。コロナ対策への批判や内閣支持率の落ち込みに焦る政権内で浮上したようだ。

 もちろん国民の多くが早く接種できるに越したことはない。しかし課題があまりにも多い。

 接種には実際どのような課題があるのか。共同通信が都道府県庁所在地で調査すると多くの自治体が人員と会場を挙げた。中でも8割の自治体が「接種に当たる医師や看護師らスタッフの確保」と回答。次いで「接種会場の確保」が多かった。

 コロナ禍の前から医師不足に悩んできた地方にとっては、当然の懸念である。

 地域の医師が交代で接種に当たることになるだろう。勤務する医療機関の休診日などを調整してシフトを組む必要がある。それぞれコロナや一般の患者を診療している中、ワクチン接種は負担となるのではないか。

 感染対策を万全に施した会場の手配、設営も必要だ。接種後の体調観察に15分以上待機できる場所も用意せねばならない。

 マイナス75度の超低温保管が必要な点も難題である。市区町村の拠点病院で保管し、周辺会場に配送、接種という流れにはきめ細かな運用が求められる。

 先行する欧米も接種に際してさまざまな問題点が出てきて思うように進んでいないようだ。

 公衆衛生史上初めての一大事業となる。菅義偉首相は河野太郎行政改革担当相を「ワクチン担当」としたが、ワクチン確保の時期で官房副長官と食い違いが露呈。意思疎通の乏しさには不安を覚えざるを得ない。

 「コロナに打ち勝った証し」と強調してきた東京五輪開催へワクチンの迅速な接種によってめどを立てたいという思惑も、首相にはあるのかもしれない。

 とはいえ、ワクチン接種に最も重要なのは安全性の確保だ。円滑な実施へ、政府は省庁間の調整を早急に図り、さらに自治体や医師会、輸送業者との連携を進めねばならない。 



ワクチン接種 言葉遊びでは何も生まれない(2021年1月25日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★既に新型コロナウイルスのワクチン接種は先進国や中堅国など、世界40カ国で始まっている。ファイザー社のワクチンは20年11月中旬に95%の有効性を確認したとされるが、ワクチンでこれほどの有効性を確認されることも珍しい。欧米各国はリスクよりメリットが大きいとばかり早期の承認、接種を開始した。ところが日本はそうはいかない。21日の参院本会議で首相・菅義偉は「全体として3億1000万回分を確保できる見込みだ」としたが、政府が昨年7月ファイザーと契約したのは6月までに調達するもの。予定が遅れ「年内」に7200万人分の1億4400万本の調達しかできていない。しかし、これらはあくまで調達の話。接種の具体的な計画のめどは立っておらず、医療従事者への優先接種が決まっているだけだ。

★政府は英米3社から供給を受ける計画だが、うち英アストラゼネカ社と米モデルナ社のワクチンは治験の遅れから供給のめどが立っていない。当面は16歳以上への接種というのも苦肉の言い訳となる。しかし、コロナ禍で大混乱の米国は昨年末までに2000万人に接種予定が実際には300万人程度にとどまった。先行している米国でさえこのありさま。政府がもたもたしているのは各国の状況やワクチンの安全性を見ているだけでなく、日本の官僚システムにワクチン接種を組み込むことのしゃくし定規な対応だ。そこで首相は縦割り打破の行政改革相・河野太郎をワクチン担当に指名。適任かどうかはともかく早速暴れだした。20日、一般国民へのワクチン接種開始は5月ごろとする報道について「勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ」とした。だがこれは厚労省が出した工程表に基づくもの。22日に官房副長官・坂井学が「6月までに接種対象となる全ての国民に必要な数量の確保は見込んでいる」と発言すれば「修正させていただく」といい、坂井も「修正しません」と反発。閣内の言葉遊びでは何も生まれない。先が思いやられる。





後藤のコレラ検疫事業に匹敵する難事業(2021年1月21日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 新型コロナウイルスの封じ込めに成功している台湾への称賛の声は高まるばかりである。同時に日本の統治下、児玉源太郎総督のもとで、民政長官として日本の衛生行政制度を導入した後藤新平の存在も改めて注目されてきた。

 ▼後藤の事績にくわしい渡辺利夫拓殖大学前総長は昨年3月の正論欄で、後藤と児玉がコンビを組むきっかけとなったプロジェクトに言及していた。日清戦争後に凱旋(がいせん)した23万人に及ぶ兵士に対して行った検疫事業である。戦地ではコレラが大流行していた。陸軍次官の児玉から全権を委任された後藤は、わずか2カ月で前代未聞の難事業を成し遂げる。

 ▼菅義偉首相は、コロナワクチン接種の担当に河野太郎行政改革担当相を起用した。ウイルス対策の切り札とされるワクチン接種は、2月下旬から医療従事者を対象に始まり、最終的に1億2000万人分の供給が予定されている。

 ▼米製薬大手ファイザー製のワクチンは、零下75度での保管が求められる。大量の超低温冷凍庫は調達できているのか。住民への通知、医師や看護師の確保など、課題は山積みである。

 ▼先行して接種が始まった欧州では、トラブルの続出で遅れが目立つ。16歳以上のすべての国民に接種を円滑に行き渡らせるのは、後藤のコレラ検疫事業に匹敵する難事業である。将来の首相候補の一人とされる河野氏の政治家としての真価が問われる。

 ▼児玉と後藤はこんなエピソードも残している。「これは君の月桂冠だ」。後藤が児玉に事業終了の報告に行くと箱を渡される。そこには後藤批判の電報や手紙が詰まっていた。児玉はそれらすべてを押さえ込んでいた。ワクチン接種の成功が首相のリーダーシップにかかっているのは言うまでもない。





ワクチン担当相任命 自治体側も準備を急がねば(2021年1月20日配信『北国新聞』-「社説」)

 菅義偉首相がワクチン担当相に河野太郎行政改革担当相を任命したのは、新型コロナウイルスのワクチン接種を何としても2月下旬にスタートさせるという決意の表れだろう。現時点で、一番確実な感染拡大防止策は、速やかにワクチン接種を進めることであり、いかに短期間で接種率を高めるか、が重要な課題になっている。

 石川、富山両県や金沢市、富山市など、北陸の自治体でも対策本部や担当課を新設するなどして、ワクチンの受け入れ準備を加速させている。最初に優先接種を受ける医療従事者は県が担当し、住民への接種は市町村が実施する方向である。自治体はそれぞれ地元医師会との調整や接種会場の確保、ワクチン接種券の印刷や発送など、多くの業務を効率良く、着実にこなさねばならない。

 65歳以上の高齢者への優先接種は3月下旬にも始まる見通しであり、準備のために残された時間は少ない。ワクチンの安全性や有効性、副反応などについて、市民の問い合わせに対応するコールセンターの整備など、相談体制の構築も必要だろう。

 新型コロナのワクチン接種は、予防接種法などにおける既存の類型に位置付けられておらず、実施に向けた具体的な方法や費用負担などが決まっていない。米ファイザー社のワクチンの場合、マイナス70度で保管する必要もあり、輸送と保管のシステムを効率的に計画・立案し、実行していくのは容易ではない。

 実際に接種されるまでの行程にはさまざまな省庁が関わり、自治体や医師会、輸送業者が絡んでくる。特に自治体への連絡を密にして、複雑な流れを最適化していかねばならない。全体の調整役となる河野担当相には、持ち前のスピード感と突破力に期待したい。

 ワクチンの優先接種は、対象者だけでも5千万人に及ぶ。よほど段取りよく進めないと、行き渡るまでに相当の時間がかかってしまうだろう。欧米では既に接種が始まり、イスラエルは既に国民の2割超が接種を受けた。夏の五輪開催を控えた日本でもワクチン接種を急ぎ、コロナの脅威から抜け出したい。



「目立つ」河野 西村起用のリスク(2021年1月20日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★首相・菅義偉は新型コロナウイルスのワクチンについて、接種体制を整備するための担当閣僚に規制改革相・河野太郎を起用した。業務の内容はワクチンの保管や輸送、接種を受ける人との連絡など全国の自治体で接種を実施するための体制整備という。防衛相の経験もあり全体を動かす司令塔ということになる。この業務こそ縦割りでは通用せず、規制改革相としての能力を振るってもらうために、ポスト菅としても最近とみに人気の河野を据えたのだろう。

★任命を受けた河野は「まず、今、どういう準備状況になっているかという現状を各省からヒアリングするところから始めたい」とするが、14日に韓国の中央日報のインタビューを受け(掲載は18日)「ワクチンがあるからこそ五輪も可能」とした。首相にない発信力を持つ河野の起用は失敗した時の痛手も大きい。自民党内からは早速「緊急事態宣言を要請した首都圏自治体の知事や専門家会議の使い走りだった経済再生相・西村康稔の使い方と同じ。おだててつぶしていくやり方だよ。今、西村は所属する細田派内でも浮き始めている。河野も麻生派内から批判が出ている」。ハンコ担当が次はワクチンかとの陰口も聞こえてくる。

★確かに2人とも2世議員でたたき上げを自任する首相から見れば苦労なく上ってきたタイプの政治家。ましていずれも派閥を担うホープと目されている。2人とも「目立つ」ことが得意技で「誠実さ」が伝わるより失言、フライング、問題発言が弱点ともいえる。河野には副作用の責任をとらせ、既に五輪について発言したことがのちに命取りになりかねない。党内には「そもそも五輪までに国民にワクチンを打ち終わるのか」との声も。既に安倍・菅内閣は厚労相・加藤勝信を使い捨て田村憲久を配置させたが、西村をコロナ担当に据え、なお河野をワクチン担当相に。一体、首相はどこで先頭に立ってコロナに立ち向かっているのか。





ワクチン格差 公平な分配へ国際協力を(2021年1月12日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチンは、欧米各国で接種が始まった一方で、途上国に行き渡る見通しが立たない。分配の格差を埋めなければ、世界に広がった感染の収束は望めない。

 背景にあるのは、奪い合うように自国分を確保する「ワクチン・ナショナリズム」だ。製薬会社が開発したワクチンは高額で、経済力の違いが格差につながっている。世界保健機関(WHO)によると、既に接種を始めた40カ国余の大半を高所得国が占め、偏りがあらわになっている。

 いくつかの国は、より高値で先に買い入れようとして状況を悪化させ、世界に公平に行き渡らせる取り組みを台無しにしている―。WHOのテドロス事務局長は加盟国代表との会合で訴えた。

 WHOは、各国が共同出資してワクチンを確保し、資金力の乏しい途上国にも供給する「COVAX」の枠組みを主導。日本を含む190カ国・地域が参加している。けれども、2021年末までに途上国の全ての人々にワクチンを届けるのは厳しい状況だ。

 公平な分配の実現に向け、国際的な協力体制を前進させることが欠かせない。何より先進各国の姿勢が問われる。世界規模の感染拡大を抑えるために、「持てる国」としてどう責任を果たすか。自国内の対応を最優先して他を顧みなければ、経済活動の回復もおぼつかなくなる。

 米政府はCOVAXへの参加を見送ってきたが、WHOとともに取り組みを主導する国際組織への資金拠出を、昨年末の追加経済対策に盛ったという。バイデン次期政権には、さらに踏み込んだ関与を求めたい。日本も積極的な役割を担うべきだ。

 供給体制だけでなく、ワクチンをめぐって見落とすわけにいかないのは安全性だ。米製薬大手ファイザーとドイツ企業が共同開発したワクチンは、人工合成した遺伝物質を投与して抗体を作る。過去に実用化された例がない技術だけに慎重な見極めが必要になる。

 長期的な副作用や、有効性がどの程度持続するのかをはじめ、未知の面は多い。接種後に感染したとき、かえって重い症状を引き起こす「感染増強」の恐れが否定できないと指摘されてもいる。

 日本政府は6千万人分の供給を受けることで合意し、承認の審査を経て、早ければ2月下旬に接種を始めるべく準備を進めている。先行する他国に引きずられて手続きを急ぎ、安全性をおろそかにすることがあってはならない。





ワクチン接種 スピード感持って対応を(2021年1月10日配信『北国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスのワクチンについて、菅義偉首相が2月下旬までに接種を始めると表明し、首相自身も率先して接種する考えを示した。予定通りなら、感染者と頻繁に接する医師や看護師らが最優先で接種を受け、その他の医療従事者、65歳以上の高齢者、基礎疾患のある人へと対象を広げていくことになる。

 優先接種が終われば、感染者はもとより、死者、重症者も大きく減るのではないか。高齢者施設や医療機関などでのクラスター(感染者集団)もかなり封じ込めることができるだろう。感染拡大を止めるために、政府はスピード感を持って対応してほしい。

 米ファイザー社のワクチンは現在、承認申請中であり、来月にも承認される見通しである。政府は6月末までに6千万人分の供給を受けることで基本合意しているが、気になるのは、同社のワクチンの場合、マイナス60度から80度で保管する必要があることだ。

 森雅志富山市長は年頭会見で、接種のための専門組織を庁内に新設する意向を示す一方、「国は早く情報を示してほしい」と注文を付けた。特別な冷凍庫は国から支給されるのか、それとも予算措置されるだけなのか。肝心なところが分からなければ、自治体は準備したくとも動きようがなく、もっともな指摘といえるだろう。

 優先接種の対象者は約5千万人に及ぶ。よほど段取りよく進めないと、全員に行き渡るまでかなりの時間がかかる。政府は自治体側の疑問にこたえ、早急に接種方法の詳細を明らかにすべきだ。

 ファイザー社のワクチンは、発症予防効果が95%と高い数値を示した。治験では、2回接種の後に感染したのは、2万2千人中8人で、偽薬(プラシーボ)の投与者は2万2千人中162人が発症している。米モデルナ社のワクチンも同様の効果があるとされており、コロナとの戦いで最強の武器が手に入る期待が膨らむ。

 厚生労働省によると、コロナで死亡した日本人の半数以上は80代以上で、80代以上の死亡率は14%に達するという。コロナに最も弱い高齢者層の接種をできるだけ早く終わらせたい。



【新型コロナ ワクチン接種】態勢整え円滑実施を(2021年1月6日配信『福島民報』-「論説」)

 菅義偉首相は年頭記者会見で、できる限り新型コロナウイルスのワクチン接種を二月下旬までに開始するとした。厚生労働省は、住民票がある市町村で予約した上で接種することを原則とする方針を示している。短期間に多くの県民が受けられるよう、県と市町村、医師会が連携し、早急に態勢を整えるべきだ。

 方針では、市町村から送られる「接種券」が届いた人から実施する。重症化リスクが高い高齢者や持病のある人に優先配布される。券が届いた人は、ワクチンの流通状況を管理するシステム「V-SYS」のホームページで接種できる施設の予約の空き状況を確認し、市町村や病院窓口に電話するなどして予約を入れる。接種した人には「接種済証」が渡される。

 県内で対象となるのは十二月一日現在、百八十二万二千三百七人で、今シーズン、県内に供給されるインフルエンザワクチン百七万人分をはるかに上回る。新型コロナワクチンの供給量にもよるが、短期間に多くの人に接種するには医療機関以外に、市町村が集団接種できる場所を確保する必要がある。

 人が集まれば、おのずと感染リスクは高まる。三密(密閉、密集、密接)回避や動線の確保、換気などの予防策も求められる。接種後にアレルギーなどの副作用で容体が急変する事態も想定され、しばらく経過観察するための控室や休憩所なども設けなければならないだろう。

 接種しやすい環境づくりも欠かせない。平日の日中は仕事で行けない人のために、休日や夜間に予約を受け付ける仕組みを検討してほしい。勤務中でも出向けるよう事業所に協力を求める必要もある。

 県内に住民票がある人のうち、東京電力福島第一原発事故で約二万九千三百人が県外に避難している。避難先は全国約八百市区町村に及んでいる。避難者が、それぞれの避難先で円滑に接種できるよう配慮すべきだ。

 ワクチンは改正予防接種法に基づく「臨時接種」として自己負担なしで提供される。本来ならば国民に接種の努力義務が生じるが、有効性や安全性が十分に確認できない場合は、努力義務を適用しない規定が盛り込まれた。このため、副作用などを懸念し、受けない人が相当数に上ることも予想される。

 集団としての予防効果を得るには接種率を高める必要がある。国は既に接種が始まった国外での副作用の事例や接種効果などの情報を集め、分かりやすい形で国民に提供してほしい。(紺野正人)




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