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(論)養育費(2021年1月16・20・31日・4月7日)

監護者の指定/子ども最優先の法整備を(2021年4月7日配信『河北新報』-「社説」)

 娘の離婚に伴い、親代わりとして孫を育ててきた祖母が自分を「監護者」に指定するよう求めた申し立ては認められるか-。こうした点が争われた家事審判で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)が「父母以外の第三者は審判を申し立てることができない」とする初の判断を示した。祖母の主張を認めた1、2審を覆し、申し立てを却下した。

 さまざまな事情から親が子どもを育てられない家庭で、祖父母が子どもの世話をしている例はよくある。今回の決定で、最高裁は民法の条文を厳格に解釈したが、子どもの実質的な権利や利益が損なわれる恐れもある。

 法相の諮問機関、法制審議会(法制審)は家族法制の見直しを進めており、祖父母を含む適切な近親者が親の監護権を補充できるよう議論の進展に期待したい。

 決定によると、娘は2009年に出産し、翌年に離婚。祖母、孫の3人で約7年間暮らした後、1人で家を出て再婚した。孫は再婚相手との同居を拒み、17年秋ごろから体調不良を訴えて小学校を休みがちになった。祖母との生活を続けたいと希望したため、祖母が家裁に審判を申し立てた。

 民法766条は、離婚後の子の監護者について「父母が協議して定める」とし、協議が不調となった場合、家裁が決めるとしている。だが、大阪家裁は実態を踏まえて祖母の主張を認め、大阪高裁も「子の福祉」のためなら、父母以外も申し立てができるとして、家裁の判断を支持した。

 第1小法廷は、この民法の規定を巡り、裁判官5人の全員一致で「子の利益は最も優先して考慮しなければならないが、第三者の申し立てを許す根拠にはならない」と結論づけた。

 明治時代の民法は、監護者を定めずに離婚した場合、父が子の世話をするとしていた。「監護者」を定めた現行民法の親権規定は、こうした戦前の家長権を基盤にしており、権限や位置付けに曖昧な部分も残されてきた。

 法制審に先立ち、家族法制の見直しを議論した有識者らの研究会は、2月に公表した報告書で、父母の親権を制限するほどではなくても、監護能力に懸念がある場合、「第三者の監護者指定は有効な選択肢となり得る」と指摘。第三者を監護者に指定できるようにする法改正や、祖父母と孫の面会交流規定を設けることの検討を提言した。

 離婚後の子どもの養育を巡っては法制審の部会が議論を始めたばかりで、こうした報告書の内容も検討材料になる見通しだという。
 家族のかたちが多様化する中、子どもが不安定な環境に置かれる例は今後も増えることが予想される。個々のケースに応じて、安心して暮らせる場所の確保を最優先に考えて法整備を急ぐべきだろう。



【子どもの養育費】不払いなくす仕組みを(2021年4月7日配信『高知新聞』-「社説」)

 親が離婚した後の養育費の不払いが多く、子どもの貧困を招く原因になっている。

 法相の諮問機関である法制審議会の部会で、その解消に向けた議論が始まった。養育費の請求権を子の権利として明記する法改正などを検討する。

 養育費を受け取れず、生活が困窮して健全な成長を阻害されたり、やりたいことや進学をあきらめたりする子どもたちがいる。
 子の利益を守る必要がある。国は養育費の不払いをなくす仕組みづくりを急がねばならない。

 厚生労働省の2016年度の調査では、全国のひとり親世帯は140万世帯に上る。母親が子どもを引き取るケースが大半で、母子世帯が9割近くを占める。

 民法は、離婚する夫婦は養育費について協議して定めるとしている。ところが、離婚時に養育費に関する取り決めをした母子世帯の割合は約43%で、実際に支払いを受けているのは約24%にすぎない。親の都合で不払いが横行しており、多くの子どもが不利益を被っている。

 ひとり親世帯の貧困率は5割近くに上る。母子世帯の平均年収は243万円と低い上、養育費不払いが貧困に拍車を掛けている。離婚したからといって親の責任を放棄するような「支払い逃れ」は許されない。

 法制審の部会では、離婚時の養育費の取り決めを促し、支払いを確実にする方策を議論する。離婚届と併せて取り決めを届け出る制度などが提案されている。

 ただ、家庭内暴力などがあり、話し合いができない状況で離婚に至るケースも少なくない。そうした場合に応じ、取り決めがされるまでの間、子どもの年齢や人数などから算出される法定額を請求できるかも検討される。

 未成年の子どもがいる夫婦の離婚は年12万件に上っている。現状では、養育費の支払いは当事者任せとなっている。

 一方で、海外では国が養育費の確保に大きな役割を果たしている。米国や英国などは給与天引きなどの強制徴収を行っている。
ドイツやスウェーデンは国が養育費を立て替え払いする制度を導入している。

 日本でも、兵庫県明石市が独自の取り組みを行っている。市が支払いのない養育費を立て替えた上で、元夫らに請求している。相手に督促して支払われる実績も上がっているという。

 これら先進例を参考にしながら、国や行政機関の関与を強めることが不払いの解消に欠かせないだろう。

 制度に工夫を凝らし、父母にさまざまな離婚事情があっても、子どもの養育費確保に二の足を踏むことがないようにしたい。相談体制も充実させ、養育費が確実に受け取れる仕組みをつくらねばならない。

 新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化で、養育費の支払いが滞るケースも増えている。困窮するひとり親家庭への支援を強化し、子どもたちの健全な成長を守りたい。





養育費の不払い対策 実効性ある仕組み早急に(2021年1月31日配信『毎日新聞』-「社説」)

 離婚後の養育費不払いを防ぐため、法改正の議論が始まることになった。上川陽子法相が法制審議会に諮問する方針を示した。

 厚生労働省の2016年の調査では、123万世帯と推計される母子家庭のうち、養育費を受け取っているのは24%に過ぎない。

 別居しても、親には子どもの生活を保障する義務がある。勝手な都合で、支払いを免れることは許されない。

 ひとり親家庭の貧困率は5割近くに上る。特に、大半を占める母子家庭の家計は苦しい。母親の年間就労収入は平均で200万円にとどまっている。

 コロナ禍で状況はさらに厳しくなっている。支援団体の調査ではひとり親家庭の7割近くが、収入が減ったか減る見込みと答えた。

 養育費の不払いは、暮らしが困窮する一因になっている。適切に支払われる仕組みを早急に整えなければならない。

 まずは、離婚時の取り決めが不可欠だ。母子家庭の半数以上が取り決めをしていない現状を変える必要がある。

 法務省の有識者会議は、民法に養育費の請求権を明記し、取り決めの際に参考とすべき点を示すよう提言している。公的機関に届け出れば、強制執行が可能になるような制度の導入も求めた。

 自民党からは、取り決めがなければ、原則として離婚できないようにする案も出ている。

 ただ、DVなどによって、離婚時に話し合いができないケースは少なくない。裁判所での手続きを簡略化するなど、負担を減らす対策が必要だ。

 養育費の支払いが滞らないようにするための方策も求められる。不払いに対し、ひとり親が法的手段を取るのは容易ではない。

 欧米では、国や行政機関が養育費を立て替えたり、強制的に徴収したりする制度を設けている。導入の検討を進めるべきだ。

 法律の専門家による相談体制の充実も欠かせない。利用しやすくするためには、国や自治体による支援が重要になる。

 離婚に伴う子どもの養育について、日本はこれまで公的な関与が乏しかった。親の義務を明確にした上で、子どもの利益を最優先にした仕組みを設ける必要がある。





養育費と法制度 子の権利として確立を(2021年1月20日配信『北国新聞』-「社説」)

 離婚後の子どもの養育費不払い問題を解消するため、上川陽子法相が家族法制の見直しを法制審議会に諮問する方針を明らかにした。元夫から養育費が支払われず、貧困に苦しんでいる母子家庭は非常に多い。子どもの養育費を請求する権利を法的に確立し、社会の共通認識として定着させることが望まれる。

 離婚後の養育費不払い問題は深刻であり、子どもの健全育成だけでなく、女性の活躍を妨げる要因にもなっている。このため、政府の「女性が輝く社会づくり本部」は昨年7月に決定した重点方針の中で法改正の検討を明記し、法務省の検討会議は昨年末、民法上の権利として養育費請求権を明確に規定することなどを提言した。

 検討会議の報告書によると、未成年の子どもがいる夫婦の離婚は年間12万組に及び、ひとり親家庭は約140万世帯に上る。離婚した父親から養育費を受けている母子世帯の割合は24%に過ぎない。さらに、ひとり親世帯の貧困率は48%の高さであり、養育費不払い問題は子どもの日々の暮らしに直結する「生存保障の問題」と報告書は指摘している。

 こうした状況を踏まえ、法務省の検討会議は、養育費請求権の明確化のほか、協議離婚時に養育費の取り決めを促し、届け出る制度や裁判所の調停の迅速化、民間の調停・仲裁機関の積極活用、悪質な不払い者に対する制裁制度の検討などを提言している。

 無論、養育費請求権の法制化で問題が解決するわけではない。親権をめぐる争いや母子に対する虐待など深刻な問題を抱えているケースが少なくなく、養育費の支払い能力に欠ける人もいる。

 このため、養育費に関する法制度の見直しに当たっては、国などの公的機関が不払いの養育費を強制的に徴収したり、立て替えたりする制度の是非、離婚前の別居期間中に養育費を確保する方策も検討する必要がある。

 加えて、現在の「単独親権」から「共同親権」へ制度を変更することの当否や、親子の面会交流の在り方など、検討すべき難しい課題が数多くある。





離婚後の養育費 子どもの権利守る制度を(2021年1月16日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 離婚後に子どもの養育費を受け取っている母子世帯は3割に満たない。それが経済的な困窮につながり、子どもに不利益をもたらしている現状を改めていく確実な一歩にしたい。

 上川陽子法相が、離婚後の子の養育に関わる法制度の見直しを法制審議会に諮問することを表明した。離れて暮らす親との面会や、父母双方による共同親権を含めて検討を求めるという。

 養育費については、離婚時に取り決めを促す仕組みのほか、民法への請求権の明記、国や自治体による立て替え払いや強制徴収の制度化、といった点が検討課題になる。国が長く取り組みをおろそかにしてきた問題が、ようやく本格的に議論される。

 民法は、離婚して子どもと離れて暮らす親にも扶養義務を定めている。けれども、実際には大半の母子世帯が養育費の取り決めをしていない。家庭内暴力(DV)から逃れ、話し合うことを諦めざるを得ない場合もある。

 取り決めても支払われないときは、法的な手続きによる取り立てや差し押さえも可能だが、母子世帯には、そのために割く時間や経済的な余力は少ない。それが、逃げ得を許し、泣き寝入りを強いる現状につながってきた。

 多くは非正規雇用の派遣やアルバイトで働き、平均年収は240万円余にとどまる。コロナ禍で飲食業や宿泊業が打撃を受け、解雇や休業によって生活が立ちゆかなくなった母子世帯は少なくない。それは、元々がぎりぎりだったことをあぶり出している。

 十分な養育を受けることは、子どもの権利だ。親の責任とともに、国や自治体はその権利を保障する責務がある。家庭の状況によって子どもの可能性が狭められることは本来あってはならない。

 国の取り組みが遅れる一方で、独自に支援制度を設ける自治体が出てきている。兵庫県明石市は、受け取れていない養育費を立て替えて払い、相手方から回収する制度を昨年7月から始めた。

 海外では、行政や公的機関が関与する仕組みを設けているところが目立つ。スウェーデンでは、夫婦の養育費の取り決めに、自治体に置かれた機関が大きな役割を果たしているという。

 当事者の「自己責任」に委ねているに等しい日本の現状は根本的に見直す必要がある。面会や共同親権を含め、子どもの最善の利益を図る観点から、制度や公的支援はどうあるべきか。法制審は踏み込んだ議論をしてほしい。




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