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コロナ禍でイジメさながら 店名病院名公表のえげつなさ(2021年1月16日配信『日刊ゲンダイ』)

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 今の日本の状況は「コロナ禍」というよりも「政治禍」と呼ぶ方が正しいのではないか。厚労省は15日の専門家会議で、入院を拒否した新型コロナウイルス感染者に対して罰則を求める案を提示。18日召集の通常国会にこの規定を盛り込んだ感染症法改正案を提出する見通しとなった。

 会議で具体案は示されなかったものの、現在、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」や、保健所による積極的疫学調査に協力を拒否した場合に「6月以下の懲役か50万円以下の罰金」とする案が浮上しているという。だが、これらは罰則ありきと言ってもいい愚策としか言いようがない。

 そもそも入院したくても受け入れ先がなく、自宅療養を強いられている現状の改善策を考えるのが先だろう。それに時間とカネに余裕のある感染者ばかりではないのだ。入院によって大幅な収入減を余儀なくされた場合の補償はどうするのか。乳飲み子を抱えた共働き夫婦がそろって感染したら子供は一体、誰が面倒を見るのか。ひとり親を介護している人が感染した場合はどうなるのか……。それぞれの家庭が抱える事情は千差万別であり、そうした課題を何ら議論しないまま罰則規定だけを強めても従わないし、意味がないのは子供でも分かるだろう。医療系の136学会でつくる日本医学会連合が「倫理的に受け入れ難く、感染抑止も困難になる」と反対する意向を示し、日本公衆衛生学会や日本疫学会が「罰則は適切でない」とする声明を出したのも当然だ。

■病床削減を進めてきたのは安倍・菅政権

 政府はまた、全国的に逼迫する新型コロナ患者用の病床確保に向け、同改正法で国や都道府県知事が病院などに患者受け入れを勧告できるよう検討しているという。

 現在の受け入れ要請を勧告に強め、正当な理由なしに勧告を拒否した場合は医療機関名を公表するというのだが、これも支離滅裂だ。

 そもそも今のように病床数が足りない状況を招いたのは、2025年度までに全国の急性期病床を約20万床減らす方針を打ち出した安倍・菅政権ではないのか。昨年度から「地域医療構想の実現を図るための病床機能再編支援」と称し、各地域病院の統廃合のほか、病床の数を削減すると1床当たり114万~228万円を支給してきた。

 コロナ禍でこの方針の凍結や見直しが検討されるかと思いきや、21年度予算でも195億円が計上されたのだから何をかいわんや。

 医療機関に対して「病床を減らせば補助金を出す」と迫りながら、今度は「受け入れろ」「受け入れを拒否したら名前を公表するゾ」――なんて恫喝以外の何物でもない。政府方針に従って病床削減を進めてきた医療機関ほど怒り心頭だろう。タダでさえ疲弊している医療現場を、ますます混乱させるだけ。政治は何もやらず、国民にはひたすら自粛を強要し、従わなければさらし者という“イジメ”手法はどう見てもおかしいだろう。弁護士の小口幸人氏(南山法律事務所)がこう言う。

「昨春の宣言発令時には罰則規定を設けなくても国民は政府方針に従い、コロナの感染拡大も抑えられていた。それが今、罰則規定を設ける必要に迫られている原因が何かと言えば、政府が対策を講じてこなかったからです。無為無策の政府が、感染拡大してきたからといって慌てて罰則を言いだすのは国民感情としては受け入れがたいでしょう。罰則規定を作るのであれば、政府がまず、これまでの対応を国民に謝罪し、きちんと責任を取るべきです。そうでなければ罰則規定が出来ても効果が上がるとは思えません」

コロナ禍に乗じて私権を制限する権力を握りたいのが菅政権の本音

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罰則を作るなら補償しろ

 政府・与党は改正特措法でも罰則導入に前のめり。飲食店などに営業時間短縮を命令できるようにし、拒んだ場合は店名公表や行政罰の過料を科すことを検討しているというが、そうなったら昨春のパチンコ店のように名前が公表された店が誹謗中傷されたり、「自粛警察」が押し掛けたりするのは容易に想像がつく。社会の分断をあおるきっかけになるのは間違いなく、あちこちで乱闘騒ぎが起きたり、最悪の場合、死傷者が出たりする可能性もあるだろう。

 もはや都市部だけでなく、全国的に市中感染が広がっている状況では、今の政府・与党の罰則ありきのえげつない対策では感染抑止にはつながらない。数十万あるとみられる飲食店名をいちいち公表したところで意味がないのだ。

 抑止効果に実効性を持たせるために何よりも重要なのは、国民に危機感を共有してもらうこと。政府自身がふんどしを締め直し、覚悟を決めてコロナと対峙し、全力で対策に取り組む以外に方法はない。

罰則や制裁措置といった強権的な手法を取るのではなく、欧州のように国民が政府方針に納得して従うような補償の充実といった政策が欠かせないのだ。

 そのためには一刻も早く国会を開き、私権制限につながる罰則規定についても堂々と議論すればいい。それなのに菅首相は国会も開かず、「感染拡大を絶対に阻止する」と言うばかり。議論も尽くさず、自分たちに火の粉が及ばないように責任逃れに終始しているからどうしようもない。繰り返すが、今のコロナ禍の惨状は、無責任とその場しのぎという安倍・菅政権の「政治禍」が背景にあるのだ。

■「答弁を差し控える」を繰り返すポンコツ首相

 コロナの封じ込めに成功したと言われる国のトップは連日のように会見を開き、国民に感染抑止の徹底を訴え、あらゆる対策を講じている。

ところが菅は違う。緊急事態宣言の再発令も対策もすべてが後手後手で、国民に訴えかける会見でも原稿を棒読みするだけ。ボロが出るのを恐れているのか質疑応答にも真正面から答えず、早々に打ち切ってしまう。安倍前首相は国会答弁で100回以上の嘘をついたが、菅は「答弁を控える」と100回以上も言っていたという。先頭に立って政策の陣頭指揮を執るべき立場の総理大臣が、国会で「答弁を控える」を連発しているのだから、コロナ対策が遅々として進まないのも当たり前だろう。

 もともと、マトモな政治信念もなく、政治家として不可欠な誠実さも欠いている――と評されていた菅の総理大臣就任に対し、与党内からは「地位は人をつくる」といった声も出ていたが、ポンコツはポンコツ。「答弁を控える」の本当の意味は、「私は政治家としても総理大臣としても能力不足なので答えられません」なのだ。

 そんな男が上から目線で国民に自助を求めているのだから冗談ではない。自助を口にするのであれば、まずは自分がコロナ対策戦略の前面に立ち、国民に向かって自分の言葉で丁寧に説明するべきなのは言うまでもない。

 ところが菅はコロナ分科会の尾身会長が同席した会見でも、政治判断が求められた説明を尾身会長にブン投げていた。結局、一事が万事この調子で、誰も腹を括ろうとしない保身ばかりの卑劣政権だからコロナ感染は拡大の一途になるのだ。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。

「罰則規定は基本的人権の尊重を害するため、21世紀下の世界の民主主義国家の潮流は罰則なしです。やむを得ず規定を設ける場合は生活を保障する。そうでなければ人間は死んでしまいますからね。しかし、菅政権は生活を保障せず、罰則導入だけ。これも菅首相の言う自助なのかもしれませんが、対象となる国民は死刑宣告されたに等しいでしょう。そして菅政権の本当の狙いは、コロナ禍に乗じて私権を強く制限する権力を握りたいのではないか。そのためにダラダラと手抜きの対策を取ってきたとしか思えません」

 このままだと、国民の健康も財産も奪われ、社会も病んでいく。





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