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(論)緊急事態(2021年1月18・20・21・26・28日)

コロナ緊急事態 宣言延長へ早期の決断を(2021年1月28日配信『産経新聞』ー「主張」)

 11都府県に発令中の緊急事態宣言は2月7日に期限を迎える。全国的に1日当たりの新型コロナウイルスの新規感染者は減少傾向にあるが、顕著に減ったとはいえない。東京では27日、973人を数えた。

 世界に目を転じれば米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると感染者の総計が1億人を超えた。昨年11月に5千万人に達してからわずか2カ月半で倍増したことになる。各国で見つかっている変異種の猛威によるとみられ、変異種による感染は日本でも確認されている。

 国内各地で病床の逼迫(ひっぱく)も解消されておらず、とても宣言を解除できる情勢にはない。菅義偉首相は期限の数日前が判断の目安との認識を示したが、決断は早い方がいい。営業時間の短縮要請に応じている飲食店などにぎりぎりで即応を求めるのは酷である。

 西村康稔経済再生担当相は解除の目安として1日の新規感染者が「東京で500人」との数字をあげた。ちなみに昨春の宣言時に解除の基準とされたのは「直近1週間で10万人当たり0・5人以下」だった。東京の人口に換算すると約70人である。

 実際に前回の解除後は東京の新規感染者はしばらく1桁に抑えられ、再拡大時に都が定めた「東京アラート」の発動基準は20人とされた。今回とは、検査数の増加だけでは説明できないほど数値の開きは大きい。


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 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は宣言の効果は「おそらく今週末から来週初めに分かる」と説明し、「ここ数日で減っているように見えるのは、忘年会の影響がなくなってきたからだ」と分析した。

 東京で1日当たり2000人超が続いたのが忘年会の影響だったとすれば、それは年末に宣言の機を逸した失政の結果だったことになる。とはいえ8日の宣言発令から3週間となり、減少傾向がみられるのは事実だ。効果に期待が見込めるからこそ、宣言の延長を早期に判断すべきだろう。

 強制力を伴わない宣言である以上、感染の収束に向けた国民の理解と協力が欠かせない。そうした最中に自民、公明両党の幹部議員が深夜に東京・銀座のクラブで会食したことが発覚し、菅首相が陳謝した。これが国民にどんな影響を与えるか、自覚と想像力の欠如にはあきれ返るばかりだ。





制御困難な爆発(2021年1月26日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 欧州ルネサンス期における三大発明と言えば活版印刷術、羅針盤に加えて火薬だろう。ドイツの修道僧が薬品に火を付けると爆発し、大きな石が屋根を突き破って飛んだという逸話が残る

▼実験を続けた彼は爆発で吹き飛ばされ、頭を天井にぶつけて脳が飛び散ったという説は、さすがに作り話の域を出ない。だが、人知を越えた巨大な力を利用しようという試みへの戒めとして語られたことは想像に難くない

▼新型コロナの緊急事態宣言が発令された地域で起きていることはある種の「爆発」である。専門家らが口にする「ステージ4相当」とは爆発的な感染拡大を意味する。政府や自治体が外出自粛や営業時短を求めても、制御できていない

▼菅義偉首相は昨年秋の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜く」と豪語した。ところが、先週の施政方針演説では「ステージ4を早急に脱却する」と事実上爆発を認めた。「絶対」はどこへ飛んで行ったのだろう

▼想定外のことが起きたとき、政府は事象を過小評価しようとする。10年前、福島第1原発が水素爆発を起こした際、政府は「格納容器が爆発したのではない」と強調していたのを思い出す

▼教訓は「想定外のことも想定しておく」だったはずだ。コロナの緊急事態も1カ月と期限を切っているが、予想外の展開に対する次善策が見えないことに不安を覚える。





飲食店時短要請 政府の財政支援の拡充を(2021年1月21日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染急拡大で、県は県内全域の飲食店を対象に営業時間の短縮を要請している。長引くコロナ禍で苦境が続く飲食店への衝撃は大きく、閉店や廃業を口にする店主も少なくない。

 要請の期限は2月7日だが、感染が一定の水準まで抑えられなければ延長される恐れもある。これ以上、経済活動にブレーキがかからないよう、飲食店への財政支援を拡充し、期限内までに感染拡大を食い止めなければならない。

 蒲島郁夫知事が県独自に宣言を発令した緊急事態が14日から始まり、感染防止対策の柱として時短要請を強化した。昨年12月30日から熊本市中心部で酒類を提供する飲食店に限っていた要請を県内全域に拡大。対象店舗も酒類の提供の有無にかかわらず全ての飲食店に広げ、午後10時までの時短を午後8時まで(酒類提供は午後7時まで)と2時間前倒しした。

 ただ飲食店の戸惑いは少なくないようだ。蒲島知事の表明以降、県には「対象になるのか」などの問い合わせが急増。専用窓口には1日500件以上の相談が寄せられたこともあったという。「週末のみ営業する店にも全額支給するのは不公平」といった声もあり、県は公平性を担保する観点から、追加対応を公表。時短に応じた店舗には1日4万円最大84万円を支給するが、営業日数が週3日以下の場合は、最大48万円とほぼ半額に抑えた。

 協力金に関しては、政府の緊急事態宣言の対象地域が1日6万円のため、不公平感を訴える店主も多い。熊本を政府の宣言対象地域に加え、協力金の引き上げを求める意見もある。

 この間の政府の対応も分かりづらい。菅義偉首相は宣言を発令した11都府県以外でも感染拡大を抑えるため、緊急事態宣言に準じた地域への支援拡充を表明していた。こうした動きの中、広島市が“準じた地域”への指定を要請したが、政府は「該当しない」と回答。同市は協力金の引き上げを見送る事態になった。

 政府の宣言が発令された地域と同様に、時短要請や外出自粛などを住民や企業に求めている地域に対しては、追加の財政支援をするのは当然ではないか。飲食店の取引先への支援も、政府は11都府県に限り検討しており、独自に時短要請をしている熊本など13道県では、対象拡大を国に求めている。政府はただちに対応方針を見直すべきだ。

 今国会で審議される予定の新型コロナ特別措置法改正案では、時短要請に従わない事業者に最大50万円の過料を科すことが盛り込まれた。首相は施政方針演説で「実効性を高めるため」と説明したが、適切な支援のないままでの罰則導入は、事業者の理解と協力を得る上では、むしろ逆効果だろう。運用によっては飲食店への敵視を招き、社会の分断をあおることにもなりかねない。これまでも慎重な審議を主張してきたが、重ねて求めたい。



じっと我慢して、喜びの春を(2021年1月21日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 緊急事態宣言下の熊本市の繁華街。旧知の焼き鳥店を訪ねると「臨時休業」の張り紙が出ていた。店主に電話で聞いたところ、県の時短要請を機に思い切って休むことにしたという。午後8時までの時短営業では採算が合わないという判断だ

▼当の夜8時を過ぎるころ、中心街の店はほとんど明かりを落とし、道行く人はみな帰宅を急いでいるように見えた。赤色灯をつけたパトカーが通りを巡回している。寂しい光景である

▼休業を含め時短要請に応じた飲食店には1日当たり4万円が支払われる。大きな店も小さな店も同じ、従業員の数にかかわりなく、一律4万円という協力金には実態に合わない面がある。本来ならばそれぞれの売り上げに応じ、時短による損失を補償すべきではないか。とはいえ、協力金があるとなしでは大違いだろう

▼焼き鳥店の張り紙に「あまびえ」が描かれていた。だれが思いついたのか〔あ〕あきらめない〔ま〕まわりの事を考える〔び〕びょうきに負けない〔え〕えい知あふれる進化を遂げる-とあった

▼人はパンのみにて生きるにあらず、という。飲食店にとって協力金は、むなしい無為の代償でもあろう。本来なら来店したお客に「ありがとう」「おいしかったよ」と声をかけられることこそが、何よりの喜びのはず

▼きのう二十四節気の大寒を迎えた。平年通りならあと10日もすれば、梅の花が咲き始める。新型コロナウイルス感染拡大下の2度目の冬である。ここはじっと我慢して、喜びの春を迎えに行きたい。



[三度の緊急事態]「大切な人守る」行動を(2021年1月21日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからず、3度目となる県独自の緊急事態宣言が出された。年明け以降、県内全域で急速に感染者が増加し、「医療崩壊」が目前に迫っている。いま一度、危機感を共有し、大切な人を守る行動を取ってほしい。

 宣言初日の20日、111人の新規感染者が報告された。直近の5日間で、100人を超えたのは3日を数える。

 入院患者のうち重症や中等症は130人と増加傾向にある。入院や療養を待つ人も135人となっている。

 コロナ病床の利用率は、84%に達する。県平均の一般病床利用率も95%。特に本島中部では103%となり、人口が多い中南部の病床が逼迫(ひっぱく)している。

 県立八重山病院では、コロナ入院患者増加に対応するため、それ以外の重症患者を本島の病院に搬送する事態に追い込まれた。県立宮古病院も「病院機能の崩壊が近づいている」とし、診療制限が始まり手術の延期やリハビリ外来中止を余儀なくされている。

 県独自の緊急事態宣言は、昨年4月と8月に次いで3度目となる。前回第2波の宣言時と比べても、療養者数、病床占有率、重症者用病床占有率、新規感染者数、PCR陽性率の5指標で大きく悪化した。

 島しょ県で、医療資源に限りがある沖縄は、「医療崩壊」の瀬戸際にある。

 県はこれまで感染防止策と経済活動の両立を模索してきた。だが、今は医療者が求めるようにブレーキを踏む局面である。

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 玉城デニー知事は、緊急事態を宣言するにあたり、県民に、通院や必需品の買い出しといった生活の維持に必要な場合を除き、外出を自粛する「行動変容」を求めている。

 飲食店と遊興施設は営業時間を午後8時までに短縮し、対象も県内全域に広げた。時短要請に応じた事業者には、一律から店舗ごとへの協力金を支給するよう拡充した。ただ、多くの業界がコロナの影響で、業績が悪化している。支援は飲食店などに限定され、食材や飲食料品などを扱う取引先は、対象となっていない。

 感染状況は、国の緊急事態宣言の対象地域と同様のレベルまで悪化している。

 県からの求めに沿って、政府は一刻も早く沖縄などを緊急事態宣言の地域に追加するなどして、対象地域と同様、売り上げが減少した幅広い業者を支援するべきだ。

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 最近の傾向として、活動が活発な若い世代がまず感染して2次、3次感染でお年寄りに広げるパターンが懸念されている。年末年始や成人式に向けて、玉城知事は、感染防止のメッセージを発信したが、十分には響かなかった。

 全国的には、入院を待つ間に容体が悪化したり、亡くなるケースも相次いでいる。

 緊急事態宣言は、県民に我慢や痛みを強いるが、ここで、コロナを抑え込むことができなければ、医療は崩壊し経済回復の道も遠のく。

 感染防止への一人一人の覚悟が問われている。





カフカではなく一茶の施策を(2021年1月20日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 きょうは大寒。寒さが厳しく「冷ゆることの至りて甚だしきとき」とされる。そんな時季はあったかい鍋物やおでんが恋しい。熱燗(あつかん)が付けばなお良し

▼加藤楸邨の有名な句に<カフカ去れ一茶は来れおでん酒>。おでんをつつきながら一杯やるときは、不条理や絶望を語るカフカより庶民的で温かみのある小林一茶がいい

▼この人も「冷ゆることの甚だし」と感じていよう。新型コロナ対策が批判され、支持率が急落した菅義偉首相だ。先日の施政方針演説では、十八番(おはこ)の「経済との両立」を封印し、コロナ対策最優先の姿勢に。税金で旅行や外食を奨励しながら感染を抑えるという不条理にやっと気付いたか

▼今や、医療体制が逼迫(ひっぱく)して入院したくてもできない。再度の緊急事態宣言で、外出自粛や飲食店の時短営業に逆戻り。この一年、政府は何をしていたのか。失政の反省がないばかりか、法改正を強行し言うことを聞かない人や店に「罰則を科す」と

▼感染におびえる高齢者や持病のある人、収入減や失業で困窮する人たちの絶望感は募るばかり。カフカ去れ、庶民に優しい一茶のような施策来れ-。それが切なる願いだ

▼一茶に<梅咲けど鶯(うぐいす)鳴けど一人かな>の句。外出を控え一人で家にこもる人も少なくなかろう。梅や鶯の頃には自由に外出でき、仲間とも一杯やれるよう、感染対策の「最前線に立つ」と宣言した首相は今度こそ行動で示してほしい。



沖縄県が緊急事態宣言 政府の失政が窮状招いた(2021年1月20日配信『琉球新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑止するため、県は3度目となる独自の緊急事態宣言を出す。20日から来月7日までの19日間、全県を対象に飲食店などへの営業時間短縮を求めるほか、不要不急の外出自粛を県民に呼び掛ける。

 県民の生命を守るため、さらには医療現場の逼迫(ひっぱく)した状況を少しでも和らげるため、緊急事態宣言はやむを得ない。しかし、県民生活を制限する独自の緊急事態宣言に3度も踏み切らざるを得ない沖縄の窮状は政府の失政が招いたと言わざるを得ない。その責任は極めて重い。

 18日に召集された通常国会で菅義偉首相は就任後初の施政方針演説に臨んだ。その内容はコロナ禍の中で不安を抱える国民の期待に応えるものではなかった。

 菅首相は演説の冒頭、「私が一貫して追い求めてきたものは、国民の『安心』そして『希望』だ」と述べた。その上で「わが国でも深刻な状況にある新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させる」と決意を表明した。

 「安心」「希望」を追求してきたという菅首相の言葉に説得力がないのは内閣支持率の急落を見ても明らかだ。政府が打ち出すコロナ対策が後手に回り、国民の間に不満や不信感が広がっているのだ。

 政府に対する不満は地方自治体も同様である。今月に入り、熊本県や宮崎県、長崎県が独自の緊急事態宣言を出している。国の施策を待てないほど感染拡大が進んでいるのだ。国民や自治体の間で渦巻く不信や不満を政府は認識しているのか疑問だ。

 今国会の焦点となるのが新型コロナ特別措置法や感染症法の改正案だ。政府は22日閣議決定し、国会審議を経て2月初めに成立させる意向だ。ところが改正案は政府は自らの失政の責任を棚に上げ、国民に科料や刑事罰を加える。本末転倒の内容であり、受け入れることはできない。

 新型コロナ特別措置法では緊急事態宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を新設し、営業時間短縮の命令を拒否した事業者に科料を導入する。なぜ、科料が必要なのか理解できない。ここまでコロナ禍が深刻化したのは菅政権がコロナ防止と経済回復の両立にこだわり対応が遅れたからではないのか。

 感染症法は入院を拒んだ感染者らに対し、1年以下の懲役か100万円以下の罰金など刑事罰を設けるというが、国民間の相互監視と分断を招きかねない。撤回すべきだ。医療機関に対しては、感染者受け入れの協力要請を勧告に強化し、従わなければ機関名を公表するというが、逼迫する医療機関の下支えが何よりも急がれる。

 コロナ禍が始まって、もうすぐ1年になる。この間に政府は何をなし、何をなし得なかったのか菅内閣は自己検証すべきだ。そうすれば、罰則を国民に振りかざすような法改正などできないはずだ。





緊急事態と経済 生活と雇用守る支援を(2021年1月18日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象が11都府県に広がり、日本経済が二番底に向かう懸念が強まっている。

 営業時間短縮を要請される飲食店だけでなく、外出自粛による需要減などが幅広い業種に及ぶ。

 コロナに関連する解雇や雇い止めは8万人を超え、中小企業や個人事業主の多くはぎりぎりの経営を続けている。宣言の再発令が倒産や廃業、失業の増加に拍車をかけることがあってはならない。

 感染抑止策の実効性を高めるためにも、国民や事業者が不安なく協力できる支援策が欠かせない。とりわけ宣言発令の影響が真っ先に及ぶ弱者への目配りが肝要だ。

 だが昨年末に決定した本年度第3次補正予算案は宣言の再発令を想定していない。感染収束を前提に「Go To」事業や脱炭素化、国土強靱(きょうじん)化に財源を多く割き、感染対策や生活支援は限られる。

 中身を精査し、緊急性の低い予算は逼迫(ひっぱく)する医療の下支えや困窮者救済に回すこともためらうべきではない。きょう召集の通常国会で十分な議論が求められる。

 政府は時短に応じた飲食店への協力金の上限を1日6万円に増額した。ただ従業員が多く、十分ではない店もあろう。事業規模などに応じた仕組みをつくるべきだ。

 支援が必要なのは飲食店だけではない。なのに政府は、売り上げが急減した事業者を業種不問で支援する持続化給付金や、家賃支援給付金の申請を来月に締め切り、新たな給付金を設けるという。

 時短要請に応じた飲食店と直接・間接の取引がある全国の中小企業や個人事業主のほか、宣言に伴う外出自粛で影響を受ける事業者も対象に含める方向だ。

 それでも持続化給付金に比べ対象は限られ、支給額も最大40万円と少ない。開始時期も見通せない。

 これでは宣言発令中に支援を縮小するのも同然だ。早急に再検討し、苦しむ事業者を幅広く、切れ目なく救う制度にする必要がある。

 道内も感染拡大が止まらず、飲食を中心に経済状況は厳しい。さらに大消費地を対象に宣言が発令され、飲食店が時短となることで道産品の出荷にも打撃となる。

 政府は1次産業や卸、食品製造などを支えつつ、農畜産物の需給動向にも目を配ってもらいたい。

 解雇を防ぐため休業手当を国が補う雇用調整助成金の特例措置も来月末で切れるが、延長が当然だ。

 感染拡大が予想された冬場に各種支援終了を決めていた菅政権の判断の甘さが厳しく問われよう。



浮世風呂(2021年1月18日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 浮世風呂とは江戸時代の銭湯のこと。式亭三馬の同名の滑稽本は、銭湯の客の会話を通し江戸市民たちの暮らしぶりを生き生きと描いている。このように銭湯は当時の人々のコミュニケーションの場だった。

 もちろん、今の銭湯や温泉にも、そうした側面はある。先日、時々足を運ぶ県内の温泉で湯船に漬かっていると、隣の湯船に陣取った数人の客が、世間話でわいわいと盛り上がり始めた。しかし、耳に入ってきた、そのうちの一人の話は結構ハードなものだった。

 男性は飲食店に勤めていたのだが、長引くコロナ禍の影響と、今回の緊急事態宣言によって、ついに雇い止めとなってしまった。重労働だが、比較的給料がいい仕事が見つかったので、近く県外に行くのだという。そして淡々と「食べていくためには仕方がないよ」―と。

 コロナ感染が確認されて1年。これに絡む解雇や雇い止めは全国で8万人を超えた。ちまたには、くだんの温泉の男性のような話があふれているのだろう。分かってはいるつもりだったが、やはり生の声として聞くとつらい。温泉効果で体は軽くなったが、それ以上に気持ちが重くなってしまった。

 浮世風呂の「浮世」には、文字通り浮かれた印象を持っていたのだが、調べるとその根底には仏教の「憂き世」の思想もあるのだとか。本県独自の緊急事態宣言は、予定では今週の金曜日まで。経済活動再開のためにも無事その日で解除となるよう切に願う。
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