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(論)施政方針演説(2021年1月19日)

首相の施政方針 コロナ対策 方向見えぬ(2021年1月19日配信『北海道新聞』-「社説」)

 通常国会が召集され、菅義偉首相が施政方針演説を行った。

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の再発令について「再び制約のある生活をお願いせざるを得ず、大変申し訳ない」と陳謝した。

 その上で、感染状況が最も深刻なステージ4から「早急に脱却する」と決意を示した。

 問われているのは、決意を裏付ける実効性のある対策だ。

 首相はこれまでと同じく、飲食店を主たる感染源と強調し、時短営業への協力金増額を真っ先にアピールした。

 だが、飲食店対策を軸とする宣言の再発令から10日が過ぎても感染拡大が収まる兆しは見えない。首相の訴えが人と人との接触を減らす感染予防策の浸透に結び付いていないのは明らかだ。

 なぜ宣言の効果が出ないのか。進めてきた対策の検証なしに、感染収束の道筋は描けない。

 首相は昨年10月の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と宣言した。

 しかし、GoToキャンペーンの停止などが後手に回り、国民との約束を果たせなかった。失政と言われても仕方がなく、その反省の弁がないのは理解しがたい。

 この間の政府対応の問題点を明らかにし、新たな方向性を示す必要がある。

 飲食店の休業や時短営業の実効性を高めるため、首相は支援と罰則を盛り込んだ特措法改正案の早期提出を表明した。

 ただ、支援は時短などの損失を賄う補償ではなく、罰則によって効果を上げようとする姿勢が突出している。これでは政府の無策を棚に上げ、飲食店に負担を押しつける対応と言うほかない。

 首相は成長の原動力に、脱炭素社会の実現と国のデジタル化に向けた技術開発などを位置づけた。

 演説の分量を割いて力点を置いたものの、これらも感染が抑え込めなければ軌道には乗るまい。

 首相はまた、安倍晋三前首相の「桜を見る会」前日の夕食会に関する自らの国会答弁を「改めておわびする」と謝罪した。

 だが謝罪のみで、政府としての再調査実施などには踏み込まなかった。吉川貴盛元農水相の収賄事件にも触れなかった。

 コロナ対策は国民に外出自粛などを呼びかける政府への信頼がなければ効果は期待できない。

 だからこそ政治とカネの問題で首相が指導力を発揮し、政治の信頼回復を図らなければならない。



危機に臨む責任 明示せよ/施政方針演説(2021年1月19日配信『東奥日報』-「時論」)

 菅義偉首相は通常国会冒頭の施政方針演説で、政権の目標は国民に「安心」と「希望」を与えることだと強調、新型コロナウイルス感染症対策について「私自身も闘いの先頭に立つ」と表明した。

 しかし、緊急事態宣言の再発令後も感染拡大は収まらず、「安心」に程遠いのが現状だ。首相は昨年10月の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と明言する一方で経済支援策「Go To キャンペーン」事業などを続け、今の事態を招いている。

 政治は「結果責任」である。その反省の言葉もないまま「先頭に立つ」と言っても、国民に切迫した危機感は伝わるまい。難局に臨むリーダーとしての責任の取り方を明確に示すべきだ。

 演説から浮かぶのは、現状認識の甘さと責任回避の姿勢だ。緊急事態宣言の対策は飲食店の時短営業が柱で、首相は「1年近くの経験に基づき効果的な対策を行う」と述べた。だが、専門家は時短営業だけでは不十分と指摘する。

 宣言解除の見通しについても「一日も早く収束させる」「ステージ4(爆発的感染拡大)を早急に脱却する」と述べただけだ。政府が宣言解除の目安とするステージ3は「感染急増」状態でしかない。それで国民が安心できるのか。政府は責任の持てる解除基準を明示すべきだ。

 早期成立を図る新型コロナ特別措置法の改正案について、首相は「罰則や支援」を規定すると述べた。支援よりも罰則に重点があるようだ。演説では触れなかった感染症法の改正案でも罰則導入が検討されている。

 専門家は罰則による効果を疑問視している。私権を制限する罰則は慎重な検討が必要だ。国会論戦では有効な感染症対策とともに、生活支援策、罰則の在り方について、議論を尽くすべきだ。

 東京五輪・パラリンピックの開催もコロナ次第だ。首相は「世界中に希望と勇気を届ける大会を実現する決意」を強調したが、世界の感染状況を冷静に見極める段階に入ったと考えるべきだ。

 首相は政権4カ月の成果なども強調した。しかし、重要なのは演説で語らなかった課題だろう。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故は3月11日で発生から10年となる。首相は「東北復興の総仕上げに全力を尽くす」と述べた。いまだに4万人以上が避難生活を強いられている現状を、「総仕上げ」とひとくくりにしていいのか。事故原発の廃炉への取り組みや喫緊の課題である処理水の処分方針については一言も触れなかった。見解を示すべきだ。

 「政治とカネ」の問題も同様だ。安倍晋三前首相を巡る「桜を見る会」問題では、官房長官当時の自らの答弁が事実と異なっていたと謝罪した。だが、在宅起訴された吉川貴盛元農相の贈収賄事件など一連の事件には触れなかった。「国政を預かる政治家にとって何よりも国民の信頼が不可欠だ」と述べるならば、政治不信の解消に指導力を発揮すべきだ。

 2021年度予算案は一般会計総額が106兆6097億円と過去最大になる。コロナ対策で財政出動が必要な面もあるが財政再建への具体的言及はなかった。経済成長の原動力として挙げた脱炭素社会の実現、デジタル化推進とともに、どう具体化するのか。国会で深掘りの議論を求めたい。



通常国会開幕 感染抑制、信頼回復が鍵(2021年1月19日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 通常国会が開幕した。菅義偉首相は就任後初めての施政方針演説で、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかける決意を改めて表明した。

 今国会の最大の焦点は新型コロナ特措法改正案だ。緊急事態宣言を巡り、飲食店に対する罰則と支援をセットで制度化する。その背景には、11都府県に宣言を再発令したものの、これまでのところ効果が見えていないことがある。しかし、感染抑制への幅広い協力を得るには罰則よりも支援の充実が重要だ。慎重に議論しなければならない。

 緊急事態宣言では、店内での会食が感染拡大の機会になるとされる飲食店に対し、午後8時までの営業時間短縮を要請している。だが1日6万円の協力金では不十分との声がある。経営破綻を避けるため営業を続けざるを得ない場合もあり得る。

 特措法改正案は、時短営業などを知事が命令できるようにする。従わない場合は行政罰として50万円以下の過料を科すなどと規定する。

 さらに感染症法改正案も注目される。入院勧告を拒んだり、入院先を抜け出したりした感染者に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科す厳しい内容だ。厚生労働省の専門部会メンバーから「新たな差別を生む恐れがある」「実効性があるのか疑問」などと慎重意見が相次いだ事実は重い。

 菅首相は特措法改正には消極的だった。感染拡大に歯止めがかからず、一連の対応が後手に回ったと批判を浴びる状況になってから態度を一変させたのはいかにも苦し紛れで、責任逃れとも見える。

 感染拡大を抑制する上で何より重要なのは、事業者や国民が進んで協力できる条件作りだ。罰則はあくまで最後の手段とすべきだ。強力な私権制限を伴う改正案であるだけに、拙速な議論は避ける必要がある。

 今国会に提出された2020年度第3次補正予算案には、一時停止中の観光支援事業「Go To トラベル」の経費約1兆円などが追加経済対策として計上されている。こうした予算を組み替えてでも、支援策を充実させる方が宣言の実効性を高めるのではないか。

 感染拡大抑制のため不要不急の外出自粛が呼び掛けられているにもかかわらず、各地の人出はあまり減っていない。時短営業などが徹底されるよう、国民の理解と協力を得る方策が欠かせない。

 その点で、コロナ対応の失敗や政治とカネの問題のために政治への信頼が揺らいでいることは見逃せない。安倍晋三前首相の「桜を見る会」前日の夕食会費補填(ほてん)問題や、吉川貴盛元農相=自民離党=が収賄罪で在宅起訴された問題などで、政府の対応が注目される。政治の信頼回復こそが感染抑制策への国民の理解と協力を得る鍵だ。菅首相は自ら政治不信を払拭(ふっしょく)しなければならない。



施政方針演説/実行力示して安心と希望を(2021年1月19日配信『福島民友新聞』-「社説」)
 
 通常国会が召集され、菅義偉首相が初の施政方針演説を行った。演説で強調した「安心と希望に満ちた社会の実現」へ、国民の心に響く言葉で道筋を明らかにし、実行力を示さなければならない。

 菅首相は新型コロナウイルス感染症の早期収束に向け、「闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく」と決意を示した。

 観光支援事業「Go To トラベル」は一時停止を余儀なくされ、11都府県に緊急事態宣言が再発令された。感染拡大の勢いに歯止めがかかっていない。

 緊急事態宣言に関して、飲食店の営業時間短縮や外出自粛の要請などの対策を徹底し、「ステージ4」(爆発的感染拡大)から脱却するとしたが、十分だろうか。実のある論戦で実効性ある対策を打ち出し、対象外の地域を含め感染拡大を食い止めることが重要だ。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からまもなく、10年となる。菅首相は「福島の本格的な復興・再生、東北復興の総仕上げに全力を尽くす」と述べ、浜通りに計画している国際教育研究拠点を「創造的復興の中核拠点」と位置付けた。原発周辺の12市町村については、雇用の場創出と移住推進の支援を明示した。

 避難地域の再生は、これからが正念場だ。5年間の「第2期復興・創生期間」が始まる。浜通りに活力を取り戻す核として、研究拠点の整備を急ぐ必要がある。

 ただ、廃炉、喫緊の課題である放射性物質トリチウムを含む処理水の処分について言及がなかったのは残念だ。工程通りに廃炉作業を進め、復興の加速化につなげることが大切だ。

 経済成長の原動力の一つとして脱炭素社会の実現を掲げた。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを表明している菅首相は、意欲的な企業の支援、再生可能エネルギーの拡充などの推進を強調した。

 県は2040年をめどに、県内のエネルギー需要量の100%以上に相当する再生可能エネルギーを生み出すとしている。浪江町には水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」が立地する。県の取り組みと連動させ脱炭素社会を進めてもらいたい。

 菅首相は、「政治の師」と仰ぐ故梶山静六元官房長官の言葉として「国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」を引用し、信条としてきたと述べた。国民に説明を尽くしてこそ、信頼を得られることを、改めて銘記してほしい。



施政方針演説 危機に臨む責任感示せ(2021年1月19日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 菅義偉首相は通常国会冒頭の施政方針演説で、政権の目標は国民に「安心」と「希望」を与えることだと強調、新型コロナウイルス感染症対策について「私自身も闘いの先頭に立つ」と表明した。

 しかし、緊急事態宣言の再発令後も感染拡大は収まらず、「安心」には程遠いのが現状だ。首相は昨年10月の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と明言する一方で経済支援策「Go To キャンペーン」の事業などを続け、今の事態を招いている。

 政治は「結果責任」である。その反省の言葉もないまま「先頭に立つ」と言っても、国民に切迫した危機感は伝わるまい。難局に臨むリーダーとしての責任の取り方を明確に示すべきだ。

 演説から浮かび上がるのは、現状認識の甘さと責任回避の姿勢だ。緊急事態宣言の対策は飲食店の時短営業が柱で、首相は「1年近くの経験に基づき、効果的な対策を行う」と述べた。だが、専門家は時短営業だけでは不十分だと指摘する。宣言解除の見通しについても「一日も早く収束させる」「ステージ4(爆発的感染拡大)を早急に脱却する」と述べただけだ。政府はステージ3を宣言解除の目安とするが、3は「感染急増」状態でしかない。それで国民が安心できるのか。政府は責任の持てる解除基準を明示すべきだ。

 早期成立を図る新型コロナ特別措置法の改正案について、首相は「罰則や支援」を規定すると述べた。支援よりも罰則に重点があるようだ。演説では触れなかった感染症法の改正案でも罰則導入が検討されている。

 専門家は罰則による効果を疑問視している。私権を制限する罰則は慎重な検討が必要だ。国会論戦では有効な感染症対策とともに、生活支援策、罰則の在り方について、議論を尽くすべきだ。

 東京五輪・パラリンピックの開催もコロナ次第だ。首相は「世界中に希望と勇気を届ける大会を実現する決意」を強調したが、世界の感染状況を冷静に見極める段階に入ったと考えるべきだ。

 首相は政権4カ月の成果なども強調した。しかし、重要なのは演説で語らなかった課題だろう。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故は3月11日で発生から10年となる。首相は「東北復興の総仕上げに全力を尽くす」と述べた。いまだに4万人以上が避難生活を強いられている現状を、「総仕上げ」とひとくくりにしていいのか。

 事故原発の廃炉への取り組みや喫緊の課題である処理水の処分方針については一言も触れなかった。見解を示すべきだ。

「政治とカネ」の問題も同様だ。安倍晋三前首相を巡る「桜を見る会」問題では、官房長官当時の自らの答弁が事実と異なっていたと謝罪した。

 だが、在宅起訴された吉川貴盛元農相の贈収賄事件など一連の事件には触れなかった。「国政を預かる政治家にとって何よりも国民の信頼が不可欠だ」と述べるならば、政治不信の解消に指導力を発揮すべきだ。

 2021年度予算案は一般会計総額が106兆6097億円と過去最大になる。コロナ対策で財政出動が必要な面もあるが財政再建への具体的言及はなかった。経済成長の原動力として挙げた脱炭素社会の実現、デジタル化推進とともに、どう具体化するのか。国会で深掘りの議論を求めたい。



菅首相の施政方針演説 不安に全く応えていない(2021年1月19日配信『毎日新聞』-「社説」)

 通常国会がきのう開会し、菅義偉首相の施政方針演説が衆参両院本会議で行われた。

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、国が東京都などを対象に緊急事態宣言を再発令する中で、ようやく始まった国会だ。

 首相に求められていたのは、感染収束に向けて明確な目標を示すことであり、いつにも増して丁寧な説明をすることだったはずだ。

 にもかかわらず演説は既定方針をなぞるばかりで、国民の不安や不信に応えるものではなかった。

 演説では、昨秋の所信表明演説で力説した「コロナ対策と経済の両立」路線が薄まって、感染防止対策を優先する姿勢が目立ったのは確かだ。

 だが、日に日に逼迫(ひっぱく)している医療体制に関しては、病床確保のための助成金や、医師、看護師への支援金の上積みなど既に打ち出している策を示しただけだ。

 これで今の深刻な状態を乗り越えられるだろうか。危機感も具体策も乏しいというほかない。「ステージ4(感染爆発)を早急に脱却する」と強調したものの、その道筋ははっきりしなかった。

 そもそも首相はどんな国にしていこうとしているのか。具体像が今も見えない。それが、この危機的状況下で、国民の不安にいっそう拍車をかけていないだろうか。

 首相が目指す社会像として掲げてきた「自助、共助、公助、そして絆」との言葉も、今回の演説では消えてしまっている。

 吉川貴盛元農相が大手鶏卵業者から現金を受け取ったとして在宅起訴された贈収賄事件をはじめ、一連の「政治とカネ」の問題にもほとんど触れなかった。

 これでは政治不信は深まるばかりだろう。

 毎日新聞の世論調査では、菅内閣の支持率は33%に落ち込んだ。

 緊急事態宣言に伴う外出自粛要請など、首相のメッセージが「国民に伝わっていない」と答えた人は80%に上っている。

 国会では今後、時短営業に応じない事業者への罰則を設ける特別措置法改正案も議論となる。首相は野党の提案にも耳を傾けて、有効策を講じていく必要がある。

 何より、役所が作った文書を棒読みするのではなく、自らの言葉で訴えなければ国民に届かない。



ゲームの魔法使いのキャラクターが(2021年1月19日配信『毎日新聞』-「余録」)

 ゲームの魔法使いのキャラクターが、魔法を使うたびに消費するマジックポイント(MP)を「マナポイント」と呼ぶゲームもある。マナは南太平洋の島々の民俗信仰で人や物に宿り、特別な力を与える霊力である

▲思わぬ大漁になったら、それは網に宿ったマナのおかげである。首長も強力なマナを持つことで人々を率いることができる。このマナ、人から人へと移ったり、増えたり減ったりするからゲームのMPを表すのにぴったりだったのだ

▲現代の民主政治でも、選挙の勝利や世論調査の高支持率でためこんだマナポイントは政治家のパワーの源泉である。マナポイントがたくさんあれば、不人気な施策だろうと自分の思うがままにポイントを使える。だが逆の場合は……

▲自民党総裁選の圧勝と6割以上の高支持率と共に発足した菅義偉(すが・よしひで)内閣が、小紙調査で33%に支持率を落として迎えた通常国会である。とっておきの魔法を使ったのではない。コロナ対策の失敗でなすところなく失った大量マナだった

▲施政方針演説ではコロナ対策の最前線に立つと見えを切った首相である。だが新味の乏しい施策を聞けば、人々が今抱いている不安が分かっているのかとかえって不安が増す。またまた残り少ないマナを漫然と消費しただけのようだ

▲役人の人事をてこに権力を蓄えた首相だが、どんなに下僚に恐れられても国民の信頼という民主政治のマナポイントは増やせない。国民の心に真っすぐ届く誠実な言葉なしにすみそうにない今国会である。



施政方針演説 医療体制の現実に目を向けよ(2021年1月19日配信『読売新聞』-「社説」)

 感染症の不安を解消するために今、何をなすべきか、という強い問題意識が感じられなかったのは残念である。

 菅首相が通常国会で施政方針演説を行った。新型コロナウイルス対策について「国民の協力をいただきながら、私自身も闘いの最前線に立つ」と述べた。

 感染者数の急増を受け、首相は7日に東京都など4都県に、13日に大阪府など7府県に緊急事態宣言を発令した。措置の期限である来月7日までに、感染拡大を抑え込めるかどうかが焦点だ。

 対象となった自治体は、飲食店に午後8時までの営業時間短縮を要請している。政府はテレワークの推進や、昼間を含めた不要不急の外出の自粛を求めている。

 だが、各地の人出は大きくは減っていない。多くの国民には自粛要請が中途半端に映っている。首相自身の記者会見での発言などが、夜の外食を除けば、普段のように生活して構わないという印象を与えているのではないか。

 首相は演説で、感染者数を減らして宣言を早急に解除する考えを示したが、そのための具体策としては、外出自粛の要請など従来の施策を表明しただけだった。これでは危機感は伝わるまい。

 政府は、宣言の効果が上がらない場合など様々な事態を想定し、対処策を準備せねばならない。

 医療提供体制は厳しさを増している。感染しても入院先が見つからず、自宅待機を余儀なくされている人が増えているという。

 行政が主導して、コロナの患者を受け入れる病院を増やすとともに、そうした医療機関に医師や看護師を派遣するなど、病院間の連携を図る必要がある。コロナの治療を専門とする仮設施設を整備することも、検討に値しよう。

 首相は、東京五輪・パラリンピックについて、「世界中に希望と勇気を届ける大会を実現する」と語った。国内で感染を食い止められなければ、開催が危ぶまれるということを肝に銘じるべきだ。

 経済政策に関しては、温室効果ガスの排出を抑制する脱炭素化と、行政のデジタル化を「次の成長の原動力」と位置づけた。

 再生可能エネルギーの導入を拡大し、新産業で雇用を創出する意義は大きい。国や自治体のシステムを連携させ、行政サービスの迅速化を図ることは重要だ。

 中長期の目標に向けて取り組む姿勢は評価できるが、実現までの道筋は見えない。首相は国会論戦を通じて、具体的な方法や手順を明らかにしてもらいたい。



「暗転」(2021年1月19日配信『日本経済新聞』ー「春秋」)

「楽しい休日が暗転」――。思わぬ事故が起きたときなど、よく「暗転」が出てくる。使い勝手がいいからマスコミにもしばしば登場するが、もともとは演劇用語だ。広辞苑によれば「幕をおろさず、舞台を暗くした中で場面を転換すること」。意味はずいぶん異なる。

▼菅義偉首相の場合はどうだろう。就任したのはまだ4カ月前だ。政権は高い支持率でスタートし、10月の所信表明演説では「国民のために働く内閣」を掲げて実務型を強調した。大局観に欠けると指摘されながらも世間の期待をつないでいたが、やがて支持率は急降下。よく使われる「暗転」の、見本みたいな状況である。

▼もっともその背景には、場面転換の「暗転」に対する国民の不信や当惑があろう。あれだけこだわっていた「Go To」をいきなり全面停止する。慎重だったはずの緊急事態宣言にあわてて踏み込む。暗くなった舞台で大道具小道具をドタバタ動かし、景色が変わってばかりである。およそ筋というものが見えてこない。

▼きのう通常国会が開幕し、首相は施政方針演説に臨んだ。またも「国民のために働く内閣」を口にしたが、人々をもう一度引き寄せるのは容易ではあるまい。暗闇のなかで政治が見えないのだ。そういえば演劇用語では、明るい舞台での場面転換を「明転」という。事態を明るくするのは難しくても、まずはこう願いたい。



コロナ国会 特措法改正を最優先で 非常時にふさわしい論戦を(2021年1月19日配信『産経新聞』-「主張」)
2021.1.19 05:00コラム主張

 通常国会が召集され、菅義偉首相が就任後初めての施政方針演説を行った。

 安全保障、経済、憲法などテーマは多いが、最大の焦点は新型コロナウイルス対策である。

 新型コロナ感染症が全国で広がり続け、11都府県で緊急事態宣言が発令中だ。感染者や重症者の数は、昨年4月の宣言時を大きく上回る。入院先や宿泊療養先が見つからない人が東京都で7千人を上回るなど、大都市部を中心に医療崩壊が始まっている。

 菅首相や閣僚、与野党の国会議員は「非常時の国会」を肝に銘じてもらいたい。コロナ禍が収束しなければ、当たり前の暮らしは戻らず、繁栄の道を歩めない。

 ≪心に届く発信が必要だ≫

 与野党は、政府が22日にも提出する特別措置法改正案や感染症法改正案の成立を最優先に取り組むべきだ。令和2年度第3次補正予算案と3年度予算案の早期成立も重要だ。有効なコロナ対策を建設的に論じ合い、実際の施策に反映させる必要もある。

 菅首相は演説で、コロナとの「闘いの最前線」に立ち、難局を乗り越えていくと決意を語った。

 飲食店の営業時間短縮の必要性や30代以下の若者の外出や飲食が感染を広げている問題を訴えた。2月下旬までにワクチン接種を始めるよう準備中だとし、特措法改正、コロナ病床の増床についても説明した。それはよいとしても、首相が最近語ってきた内容を繰り返している感は否めない。

 国民の自粛疲れや、若者らのコロナへの慣れが人の移動の大幅削減を妨げている。演説は、首相が国民に協力を求める絶好の機会だったが、通り一遍の語り掛けとなった印象だ。

 非常時の国会だ。人々の心に響く言葉がほしい。菅首相は自らの演説や会見、答弁の中身に、もっと工夫を凝らすべきだ。それもリーダーとしての務めである。

 感染力の強い変異種が海外で猛威をふるい、水際対策強化は一層重要になっている。ところが首相は演説で、収束後の観光立国を説く一方、現在進行形の課題である水際対策は語らなかった。問題意識のありように不安を覚える。

 与党は18日、特措法と感染症法の改正案を了承した。特措法改正案は知事が事業者に時短などを命令できるようにし、拒否には罰金を科すことができる。時短などに応じた事業者に対する、国や自治体の支援義務化とセットである。緊急事態宣言の前段階として「蔓延(まんえん)防止等重点措置」も設ける。

 感染症法改正案は、入院を拒んだ感染者に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の刑事罰を設ける。国や知事の医療機関への感染者受け入れの協力要請を「勧告」に強め、従わなければ機関名を公表できるようにする。

 ≪水際対策にも力尽くせ≫

 安倍晋三前内閣当時から政府は特措法改正は「新型コロナの感染が収束した後に検証、検討する」としてきた。だが、昨年のコロナ感染が比較的緩やかなうちに、法改正を実現し、都道府県とともに医療提供体制を整えておくべきだった。当時官房長官だった菅首相は失策を率直に認めるべきだ。

 今回の改正案は私権制限につながるとの批判がある。例えば憲法が保障する移動の自由に反するというが、憲法第22条1項には「公共の福祉に反しない限り」との条件がある。感染症との戦いは「公共の福祉」であり、法改正は認められる。入院を拒む感染者への罰則は、当人に加え、他の人々の生命と健康を守るための合理的な措置といえる。

 時短や休業要請には経済的な手当てが伴わなければならない。改正案が国や自治体による「支援」を義務化することは妥当だ。

 国会は、本会議や委員会の定例日、開催時間の慣例にこだわらず迅速に審議を進めてもらいたい。論点は多く、週末や夜間も活用すればいい。平時の感覚を捨てて国民のために尽くしてほしい。



首相施政方針 危機克服の決意見えぬ(2021年1月19日配信『東京新聞』-「社説」)

 通常国会が召集された。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、緊急事態宣言の最中である。喫緊の課題は感染抑止だが、菅義偉首相の施政方針演説から危機克服の決意を感じ取るのは難しい。

 昨年9月に就任した菅首相には初の施政方針演説だ。内政、外交全般にわたる政策の方向性を国民を代表する国会に説明する機会だが、国民の関心がこの危機をどう克服するかに集まるのはやむを得まい。しかし、演説はどれだけ国民の胸に響いただろうか。

 首相は演説冒頭、新型コロナ感染症が「わが国でも深刻な状況にある」として「一日も早く収束させる」との決意を述べ、午後八時以降の外出自粛要請など、緊急事態宣言に伴う対策に言及した。

 首相が今、国民に問われているのは、感染を抑える自身の決意と具体策のはずだが、演説からは、そのいずれも読み取れなかった。

 共同通信世論調査では政府のコロナ対応を「評価しない」は68・3%に上る。評価が低い従来の取り組みを並べ立てても、国民に安心感を与えることはできない。

 そもそも首相が政府のコロナ対応について、国民に説明を尽くそうとしているのか、甚だ疑問だ。

 政府が緊急事態宣言の発令方針を報告した衆参両院の議院運営委員会には、野党側の求めにもかかわらず、首相は出席しなかった。記者会見は何度かしたものの、出席できる記者や質問数は限られ、事務方が「次の日程がある」として途中で打ち切るのが常だ。

 危機に際し、国民の負託を受けた指導者が対応の陣頭に立つべきは当然だが、強気で臨み、強い言葉を語ればいいわけではない。必要なのは、危機を乗り越えるために国民から理解と共感が得られるような誠実な態度と言葉だ。

 演説から首相の持論である「自助」を強調する文言が消え、「互いに支え、助け合える『安心』と『希望』に満ちた社会の実現を目指す」としたことは評価したい。

 そうした社会の実現には首相自身が指摘するように政治への国民の信頼が不可欠だ。

 首相は演説で安倍晋三前首相を擁護した「桜を見る会」前日夕食会を巡る自身の虚偽答弁は謝罪したが、元農相、吉川貴盛被告の収賄事件や河井克行、案里両被告の選挙違反事件などへの言及はなかった。

 コロナ対策の実を挙げるためにも政治への信頼回復は引き続き重要な課題だ。「政治とカネ」を巡る一連の事件の真相解明と再発防止にも力を注ぐべきである。



施政方針演説 対話する姿勢に欠ける(2021年1月19日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 反省や総括なしに美辞麗句を並べても国民の心には響かない。

 きのう召集された通常国会で、菅義偉首相が行った施政方針演説である。新型コロナウ

イルスの感染拡大で、緊急事態宣言の再発令が避けられなかった中での国会だ。「一日も早く収束させる」と述べたのは当然だ。

 ただし、感染拡大を招いた政府の対策の遅れに対する反省は口にしなかった。

 菅首相は昨年10月に開会した臨時国会の所信表明演説で「爆発的感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜く」と誓っている。

 国民に理解と協力を求めるなら、まず約束が果たせなかったことの総括を述べるべきだ。

 今国会には感染症法や新型コロナ特別措置法の改定案が提出される。入院を拒否した感染者や、営業時間の短縮に応じない飲食店などに罰則を導入する内容だ。自らの責任は棚に上げ、国民に責任を転嫁するようなものだ。

 政府は観光支援事業「GoToトラベル」を継続して医療関係者らの批判を浴びた。菅首相は大人数での会食自粛を国民に求める中、「ステーキ会食」に参加して、国民への協力呼びかけに説得力を欠く結果になった。

 「再び制約のある生活をお願いせざるを得ず、大変申し訳なく思います」のひと言だけで、国民の理解が得られると考えているのなら大きな勘違いだろう。

 いま国民が求めているのは、現在の危機的な状況を打開する道筋を示すことだ。

 都市部だけでなく地方の医療機関も感染拡大で崩壊の危機にある。人員や機器の不足のほか、感染対策のノウハウ不足などで、病床を増やすのは簡単ではないとされる。助成額を増やすだけで解決する問題ではない。

 収入源を失ったり、大幅な収入減となったりして、生活の維持が困難になっている人たちの支援策も乏しい。菅首相は「最前線に立つ」と述べたのに、現場の状況を理解できていないのではないか。

 吉川貴盛元農相の収賄事件など「政治とカネ」の問題に対する見解も示さなかった。首相には国民と対話し、国民が知りたいことを説明していく姿勢に欠ける。

 菅首相は演説の最後に、師と仰ぐ故梶山静六元官房長官の発言を引用した。国民に負担を求める政策を導入するなら「必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」との内容だ。

 まず首相自身が言葉の意味を深く理解する必要がある。



通常国会開幕 ウイルス対応徹底論戦を(2021年1月19日配信『新潟日報』-「社説」)

 緊急事態宣言下、通常国会が18日開幕した。最大の焦点となるのは政府の新型コロナウイルス対策だ。

 感染の拡大に歯止めがかからず、政府対応に疑問や不信を募らせている国民は多い。各種世論調査での内閣支持率低下が、それを如実に物語る。

 こうした中で開かれる国会である。これまでの政府の対応についての検証も含め、実効性あるウイルス対策の構築に資するよう、徹底的な論戦を展開してもらいたい。

 菅義偉首相は就任後初の施政方針演説冒頭で、「国民の命と健康を守り抜く」と強調。「安心」を取り戻すため、新型ウイルス感染症を一日も早く収束させると述べた。

 首相は11都府県への緊急事態宣言に関して「(感染状況が最も深刻な)『ステージ4』を早急に脱却する」との決意表明も行った。

 いずれも国民が望んでいることだ。だが、首相の言葉は説得力を持って伝わっただろうか。

 というのも、今まで観光支援事業「Go To トラベル」停止や緊急事態宣言の再発令などの対応が後手、小出しと批判され、政権の危機感の乏しさを指摘されてきたからだ。

 首相は昨年9月の就任記者会見でも収束に全力を挙げると訴え、先の臨時国会の所信表明演説でも「国民の命と健康を守り抜く」と約束した。

 今、首相や政権に求められているのは感染抑制できちんと結果を出すことだ。決意表明は何度も聞かされている。もう、言いっ放しで終わらせることは許されない。

 施政方針演説ではこれまでのウイルス対応への反省はなく、批判に向き合おうとする様子は見られなかった。不都合から逃げるような首相と政権の姿勢も問われなければならない。

 臨時国会では、新型ウイルス対策などの議論を続ける必要があるとして野党が会期延長を求めたが、与党などが反対して延長されなかった。

 議論を回避し、政権のウイルス対応が独り善がりとなったことも現在の状況を生む一因となったのではないか。もっと緊張感が必要だ。

 野党はトラベル事業の費用を計上する2020年度第3次補正予算案について組み替えを要求し、ウイルス対策に関連した特別措置法や感染症法の改正を巡っても、過料や罰則には慎重論を唱えている。

 真に国民のためになる政策なのか。論戦を通じて妥当性を吟味することが不可欠だ。

 補正予算案、ウイルス関連の法改正案に続き21年度予算案審議に入る日程が想定されるが、「政治とカネ」も重要テーマだ。

 首相は施政方針演説で「桜を見る会」を巡り、官房長官時代に安倍晋三前首相を擁護し事実と異なる答弁をしたことは謝罪したが、「政治とカネ」の問題そのものへの言及はなかった。

 首相からは政治の信頼回復への意志が感じられない。こちらも徹底的な審議が不可欠だ。



施政方針演説 内外の危機克服へ実行力を(2021年1月19日配信『北国新聞』-「社説」)

 菅義偉政権下で初の通常国会が幕を開けた。菅首相は施政方針演説の第一に「新型コロナウイルス対策」を掲げ、一日も早い感染収束に全力を挙げる決意を表明した。

 野党は菅政権の感染対策を厳しく追及する方針であり、「コロナ国会」となる気配である。それは当然としても、国難とも言える課題は内政、外交両面に山積しており、政権批判のための論戦に終始しないよう求めておきたい。

 菅首相は、野党による「政治とカネ」問題の追及を念頭に、「桜を見る会」関連の国会答弁の間違いを改めて陳謝したが、政権に対する国民の理解と信頼を得る上で最も必要なのは結果を出すことであり、政策の実行力を十二分に発揮しなければなるまい。

 菅首相は演説冒頭で、新型コロナ禍に対応する医療や保健、介護従事者らへの謝意を述べ、再び11都府県に緊急事態宣言を発令する事態になったことをわびた。さらに、飲食店の営業時間短縮や不要不急の外出・移動自粛など、施政方針演説では異例とも言える呼び掛けを行った。

 感染拡大に歯止めがかからない現状への危機感の表われであろうが、演説の中で表明した「闘いの最前線に立つ」決意を今後、もっと国民に伝わる言動で示していく必要があるのではないか。

 内政では「長年の課題」である新たな成長産業の育成やデジタル改革、脱炭素化、少子化対策、一極集中の是正などに力点を置き、さまざまな具体策を列挙した。まさに政策遂行能力が問われる分野である。

 外交・安全保障ではまず「多国間主義」を唱え、その流れの中で米国をはじめ東南アジア諸国連合(ASEAN)、豪印両国、欧州などと協力しながら「自由で開かれたインド太平洋」の実現に取り組む戦略を明示したのは妥当であろう。現在の韓国は前向きに論じられる関係になく、取り上げる順番もASEANの後にした。

 中国については、現状変更の試みに対する批判を茂木敏充外相の外交演説に任せ、日中関係安定の重要性を強調した。尖閣諸島が危機にさらされている現状を考えると、物足りなさも否めない。



菅首相の施政方針演説(2021年1月19日配信『福井新聞』-「論説」)
「安心」「希望」には程遠い

 菅義偉首相は初めての施政方針演説の冒頭で、政権の目標は国民に「安心」と「希望」を与えることだと強調した。「安心」とは新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束だが、緊急事態宣言の再発令後も感染拡大は高止まりし、程遠いのが現状だ。

 首相は経済重視の文言を封印し、国民生活への制約要請を「大変申し訳ない」と低姿勢を見せる一方、「私自身もこの闘いの最前線に立つ」と表明した。ただ、昨年10月の所信表明演説でも「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と明言しながら、「Go To トラベル」事業などを主導し続け、今の事態を招いたことを忘れてもらっては困る。

 そうした経緯に対する反省の言葉もないまま「最前線に立つ」と言及しても、国民にどれほどの危機感が伝わるというのか。演説からは現状認識の甘さと責任回避の姿勢が浮かび上がる。緊急事態宣言の対策の柱は飲食店の時短営業だ。首相は「1年近くの経験に基づき、効果的な対策を行う」と説明したが、専門家の多くが時短営業だけでは不十分と指摘している。

 宣言解除についても「ステージ4(爆発的感染拡大)を早急に脱却する」と述べるにとどまった。政府はステージ3を解除の目安としているが、3は「感染急増」の状態であり、国民が安心できるレベルでないことは明らかだろう。首相は、早期成立を図る新型コロナ特別措置法の改正により「罰則や支援」を規定するとも述べた。罰則に重点を置き、感染抑止につなげたいとの思惑も透けるが、罰則による効果を疑問視する専門家も少なくない。私権を制限する罰則については慎重な検討が欠かせない。

 「安心」とともに冒頭で触れた「希望」は、脱炭素社会の実現やデジタル庁の設置、不妊治療への保険適用などを踏まえたとみられる。演説の終盤では「長年の課題について、この4カ月で答えを出してきた」と自負心をのぞかせた。だが、緒に就いたばかりであり「答え」とは言い難い。コロナ対策の遅れなどで急落する内閣支持率を目の当たりにし、秋までに行われる衆院選に向け成果を訴えたいのが本音だろう。

 「政治とカネ」の問題については、安倍晋三前首相の「桜を見る会」を巡り官房長官当時の自らの答弁が事実と異なっていたと謝罪したのみ。在宅起訴された吉川貴盛元農相の贈収賄事件などには一切言及しなかった。「国政を預かる政治家にとって、何よりも国民の信頼が不可欠だ」と述べた以上、政治不信の解消に指導力を発揮するのが筋だ。感染対策の「行動変容」を国民に求める前に、政治こそが透明性と説得力を持つよう変容すべきだ。



心理学に「正常性バイアス」という…(2021年1月19日配信『福井新聞』-「越山若水」)

 心理学に「正常性バイアス」という有名な用語がある。自然災害や火事、事件などが発生したとき「自分は大丈夫」「まだ余裕がある」とリスクを過小評価する傾向を言い表す

▼鋭い社会批評で知られる思想家内田樹さんは、具体的な事例として、ある雑誌のコラムで1975年の米国映画「ジョーズ」を引き合いに出す。巨大ザメが現れたことを確認した警察署長は、市長に海岸を出入り禁止にするよう進言する。しかし市長は聞き入れない

▼「これから海開きでどっと観光客がやって来るのに、鮫(さめ)が出たなんて公表したら客足が止まる。鮫の話はするな」と無視する。警戒令を見送った結果は、皆さんご存じ、海水浴客が次々と人食いザメの餌食になる。まさにパンデミックの寓話(ぐうわ)だと内田さんは指摘する

▼もうお気づきだろう。新型コロナウイルスに直面した政府の「後手後手」の対策に苦言を呈したわけだ。経済活動の再開など利益を重視するあまり、リスク解消を後回しにして爆発的な感染を招いてしまった。その揚げ句、緊急事態宣言を再び発出する羽目に陥った

▼さすがの菅義偉首相も、施政方針演説でコロナの早期収束を最優先課題に挙げた。遅きに失したものの、正しい方針転換だろう。ただコロナ特措法改正などで罰則まで設けるのに、政府の反省も納得できる説明もないまま。信頼回復の道のりはまだ遠い。



施政方針演説/空虚に響く「安心と希望」(2021年1月19日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が再発令される中、通常国会がきのう召集され、菅義偉首相が初の施政方針演説に臨んだ。

 首相は、国民に再び制約のある生活を求めることを「大変申し訳ない」と謝罪したものの、政府のコロナ対策への反省はなかった。

 「安心と希望に満ちた社会」の実現に向け、自らコロナ禍との「闘いの最前線に立つ」とも表明した。だが、感染拡大が勢いを増す現状では空虚に響くばかりだ。

 飲食店に的を絞った対策は適切か、医療体制の確保や困窮者への手当は十分か。政権の対応を厳しく検証し、誤りがあれば軌道修正を求める、国会の責任は重大である。

 焦点は、営業時間短縮の要請に従わない事業者や、入院を拒否した感染者に罰則を科す関連法の改正である。緊急事態とはいえ、私権制限につながる法改正を拙速な審議で決めることは許されない。

 現行法の見直しは全国知事会などが早くから指摘していた。だが政府、与党は野党の会期延長要求に応じず、臨時国会を早々に閉じた。国会が約1カ月半も休んでいる間に感染は拡大し、議論は進まなかった。

 事業者への補償や病床の確保が不十分なまま国や自治体の権限だけが強化されれば、国民の反発を招き感染者が潜在化するとの指摘もある。首相は国会軽視の姿勢を改め、丁寧な説明を尽くすべきだ。

 2020年度第3次補正予算案と過去最大となる21年度予算案の精査は欠かせない。停止された「GoToトラベル」の延長経費をそのまま計上したり、敵基地攻撃への転用が懸念されるミサイル開発で防衛予算が膨らんだりと問題が多い。コロナ禍に苦しむ国民への支援策との優先順位をどう考えるのかも論点だ。

 「桜を見る会」を巡って首相は、官房長官として安倍晋三前首相を擁護し事実と異なる答弁をした点は謝罪したが、政権内で相次ぐ「政治とカネ」の問題には触れなかった。「困難な課題にも答えを出す」と言うなら、前政権の「負の遺産」の清算にも取り組むべきだ。

 日本学術会議会員の任命拒否問題にも言及しなかった。任命拒否の理由という問題の核心は曖昧なまま、政権が人事に介入できるという既成事実だけが残る恐れがある。

 疑惑や批判に向き合わず、強権的にものごとを進める姿勢が、国民のさらなる不信を招いている。それが政府のコロナ対応にも影を落としていると首相は自戒すべきだ。

 内閣支持率の下落は政治不信の深刻さを示している。国民の不安や懸案への「答え」を迫る真剣勝負の論戦を、与野党に期待したい。



通常国会開幕 コロナ対応へ審議尽くせ(2021年1月19日配信『山陽新聞』-「社説」)

 通常国会が開幕した。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、国内で感染者33万人、死者4500人を超える切迫した状況下である。

 デジタル庁設置や、75歳以上の医療費窓口負担増など重要案件の審議が控えるが、まず喫緊の課題は、感染抑止と逼迫(ひっぱく)する医療体制へのてこ入れ、影響を受けている事業者らに対する支援策をどう講じていくかである。

 菅義偉首相は施政方針演説で「1年近い経験に基づき、効果的な対象に徹底した対策を行う」と述べた。その一つが、対策の実効性を高めるためとして感染者や事業者への罰則を設ける動きだ。

 感染症法改正案では、入院拒否や入院先を抜け出した感染者に対し「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」を想定する。保健所が実施する行動歴などの調査を拒んだケースも罰金の対象となる。

 新型コロナ特別措置法改正案は、都道府県知事が営業時間短縮などを事業者に命令でき、それを拒否した場合に過料を科すものだ。

 菅政権は、緊急事態宣言発令の時期などを巡って後手後手と批判を受けてきた。ここで罰則導入という思い切ったカードを切ってアピールし、国民の行動変容を促したい狙いがうかがえる。

 ただ、現状で入院や調査の拒否がどれほどあるかは不明だ。プライバシーとの兼ね合いも軽視できない。罰則があるために、感染が疑わしくても受診を控えるといったことも起こりかねず、かえって実態を把握しづらくなるという声も上がっている。

 苦境にある事業者に対しても、まず求められるのは、時短要請に応じられるような現実に即した支援策だろう。

 感染拡大の勢いに押され、議論が不十分なまま罰則の導入にまで踏み込むことは避けねばならない。しっかりと審議を尽くすべきだ。

 今国会で政府はまず、コロナ対策費を含む19兆円余りの2020年度第3次補正予算案の成立を急ぐ。医療機関の病床確保を支援する「緊急包括支援交付金」などが計上されており、政府は月内の成立を図る構えだ。その後に審議される21年度予算案には、コロナ対策として5兆円の予備費が計上された。

 審議では、予算の膨張にも目配りが欠かせない。非常時の歳出増はやむを得ない面があるとはいえ、3次補正後の20年度一般会計総額は175兆円に達し、106兆円超の21年度予算案も過去最大だ。

 各所に不要不急の予算が計上されているとして、野党には3次補正予算案の組み替えを求める動きもある。中身を精査し、政府も丁寧に説明を尽くしてほしい。

 昨年12月は、野党の臨時国会延長要求が通らず、感染拡大のさなかに国会は休みに入ってしまった。いつにも増して課題は山積しており、政府と国会は切迫感を持って審議に臨んでもらいたい。



首相の施政方針演説 国民に言葉が響いたか(2021年1月19日配信『中国新聞』-「社説」)

 通常国会がきのう開会した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が再発令される中での論戦が始まった。

 焦点は、そのコロナ禍への政府の対応だ。菅義偉首相は施政方針演説で、「この闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく」と表明した。国民の命と健康を守り抜くと強調する一方で、これまで感染防止との両立を掲げていた「経済重視」の文言は使わなかった。

 首相は昨年10月の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と言明した。しかし観光支援事業「Go To トラベル」などを続け、わずか3カ月足らずで宣言の再発令を余儀なくされた。

 後手に回った政府の対応に向けられる国民の厳しい目を意識しているのだろう。国民生活に再び制約を強いることに「大変申し訳ない」と述べた。

 だが、これまでの感染防止対策が適切だったのかどうかについて検証や反省の弁はなかった。演説からは現状認識の甘さと責任回避の姿勢が浮かぶ。

 緊急宣言の解除についても「『ステージ4』(爆発的感染拡大)を早急に脱却する」と強調しただけだ。政府が解除の目安とする「ステージ3」は「感染急増」の状態だ。具体的な基準や方針を示さないと、危機感や切迫感は伝わらないだろう。響く言葉がなければ、国民との信頼関係を築くことは難しい。

 政府が早期成立を目指す新型コロナ特別措置法と感染症法の改定案にも懸念がつきまとう。首相はきのう「議論を急ぎ、早期に国会に提出する」と述べたが、その内容については慎重な検討が欠かせない。

 いずれも感染対策に協力しない国民や事業者、医療機関などに罰則を科す内容である。「無策を棚に上げて、法律に強制力がないから改正するというのは極めておかしい」と野党が反発するのも理解できる。

 感染拡大を止められない状況に焦っているのではないか。問題は、政府が感染対策について国民の理解と協力を得るための努力を怠ってきたことにある。私権の制限につながる罰則を設ければ、かえって反発を招くのは目に見えている。国会では丁寧な議論が求められる。

 首相は「長年の課題について、この4カ月で答えを出してきた」と強調し、経済成長の原動力として挙げた脱炭素社会の実現やデジタル化推進に意欲を示した。秋までに行われる衆院選をにらみ、成果をアピールしたい本音が透ける。

 一方で「政治とカネ」の問題については多くを語らず、踏み込み不足が目立った。安倍晋三前首相の元公設秘書が罰金刑を受けた「桜を見る会」前日の夕食会の費用補填(ほてん)問題を巡り、官房長官当時の自身の国会答弁が事実と異なっていた点だけを謝罪した。

 だが、首相に近いとされる元法相の河井克行被告と妻の参院議員案里被告の選挙買収事件や、在宅起訴された吉川貴盛元農相の贈収賄事件など一連の事件には触れなかった。

 首相は「国政をあずかる政治家にとって、何よりも国民の信頼が不可欠である」と述べた。そう言い切るなら、政治の信頼回復に向けた取り組みや防止策を示し、実現に向けてリーダーシップを発揮すべきだ。 



「ます・ます」演説(2021年1月19日配信『中国新聞』-「天風録」)

 新聞記事と違い、スピーチの文体は「です・ます調」が基本であろう。その伝で言えば、きのうの菅義偉首相の施政方針演説は「ます・ます調」と呼べるかもしれない

▲します・進めます・対応してまいります―。文末を「ます」で締めくくったのが全体の75%にも上っていた。逆に、前首相もしばしば使っていた「ませんか調」は聞かれずじまい。そうは思いませんか・一緒に頑張ろうではありませんか―。周囲をあおる口調はあえて封じたのか

▲確かに現政権が取り組むべき喫緊の課題は山積し、「国民のために働く内閣」をアピールする好機でもあろう。だからといって、めりはりを利かせず、あれもこれもと列挙するだけでは聞く者に響いてこない

▲首相就任時にあれだけ強調した「自助・共助・公助、そして絆」とのフレーズが演説から消えた。むしろ今だからこそ「公助・共助・自助」の順で、コロナ対策をじっくり語るべきでは

▲桜を見る会に絡む自らの答弁を陳謝したのを除けば、政治とカネを巡る言葉もなかった。コロナ対策でも肝心なのは、まずもって政治に対する国民の信頼を取り戻すことではないか。ここは力強い「やります」を聞きたかったです。 



施政方針演説 国民の協力 丁寧な説明が不可欠(2021年1月19日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 通常国会が召集され、菅義偉首相は就任後初めての施政方針演説を行った。新型コロナウイルス感染症の収束を最優先課題とした。国民の命と健康を守る責務を果たさねばならない首相の真価が問われる。

 首相は「国民の協力をいただきながら、私自身も闘いの最前線に立ち、都道府県知事と連携し、難局を乗り越えていく決意だ」と訴えた。しかし、菅政権の対策は後手に回るケースが目立ち、世論調査では7割近くが政府の対応を評価していない。首相はまず、国民が政治不信を募らせている現実を重く受け止めるべきだ。今後、国民から理解や協力を得るには信頼の回復が欠かせない。丁寧な情報発信に努め、感染拡大抑制で結果を出さなければならない。

 演説では、これまでの国民の感染防止への努力に感謝し、緊急事態宣言の再発令に触れて、「今回、再び制約のある生活をお願いせざるを得ず大変申し訳なく思う」と述べた。

 だが、政府の対策遅れについて反省の弁はなかった。感染が拡大する中、首相は観光支援事業「Go To トラベル」に固執し、緊急事態宣言の再発令も「泥縄式」の対応だった。経済を重視するため対策が小出しになったのは明らかだ。首相は自身の不手際に向き合う必要があり、演説で対策の遅れを認めなかったのは誠実さを欠くと言わざるを得ない。

 首相は昨年から掲げてきた基本理念の「自助・共助・公助、そして絆」に触れず、「一人一人が力を最大限発揮し、互いに支え、助け合える、『安心』と『希望』に満ちた社会」との表現にした。感染拡大が続く今の状況で「自助」に頼ることはできない。政治の力で医療体制を立て直し、首相が率先して感染防止に全力を尽くす強力なメッセージを出すよう求めたい。

 通常国会の会期は6月16日までの150日間。政権はコロナ対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算を月内に成立させる構えだ。コロナ特別措置法に行政罰の過料を新設し、感染症法に新たな罰則を導入する内容の改正案も提出される。対策に強制力を付与しても抑止の実効性を確保できるかどうか分からない。私権制限を伴う立法だけに丁寧な議論が不可欠だ。拙速な結論は決して許されない。

 首相は演説の最後で、故梶山静六元官房長官に諭されたと明かし、「国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」という教えを引用した。

 就任以来、首相は国会答弁や記者会見で国民への説明に前向きとは言い難い姿勢だった。通常国会ではしっかり説明責任を果たしてもらいたい。今年は衆院選も控えている。野党も政権担当能力を示せるような中身のある質疑をする必要がある。与野党ともに真摯(しんし)な議論を重ね、実効性あるコロナ対策を構築しなければならない。




2021.01.19 05:00
【施政方針演説】信頼あっての「安心、希望」(2021年1月19日配信『高知新聞』-「社説」)

 通常国会がきのう召集され、菅義偉首相は就任後初めての施政方針演説を行った。

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、医療は逼迫(ひっぱく)している。11都府県には緊急事態宣言が再発令された。深刻な状況であり、早期収拾を最優先課題とするのは当然だ。

 コロナで国民生活が制約を受けていることに首相は、「大変申し訳ない」と述べた。だが、対策が後手に回ってきたことに厳しい批判があることをまず厳粛に受け止めなければならない。共同通信社の世論調査では、政府のコロナ対応を「評価しない」が自民支持層でも6割近い。

 感染「第3波」の流行が本格化する中で、観光支援事業「Go To トラベル」の一時停止は遅れた。飲食自粛を求めながら首相が宴会に参加して、要請の必要性に自らが疑問符を付けてしまった。こんなことでは、首相が闘いの最前線に立つと訴えても説得力は乏しい。

 一方で飲食店の時短営業の実効性を高めるため、コロナ特別措置法に補償と罰則を盛る改正案の早期提出を目指す。東京都で6割を占める感染経路不明の多くが飲食とみられるという。そこを抑え込みたいというのは分かるが、私権制限につながるだけに慎重な対応が求められる。

 菅内閣は行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打ち破り、未来を切り開くと打ち上げた。本気度が試される。
 成長の原動力に「グリーン」と「デジタル」を位置付ける。コロナ後の成長戦略としても必要だが、それだけに緊急性や有効性を判断する姿勢が欠かせない。

 防災・減災の国土強靱(きょうじん)化は、5年で事業規模15兆円をめどに実施する。次期衆院選をにらみ規模ありきとする見方がある。有効な防災対策に異論はないが、コロナ対策はまだ着地点が見えないだけに、財政の健全性と事業効果を検証していく必要がある。

 安定した政権運営の基本となるのは信頼だ。施政方針でも、政治家には国民の信頼が不可欠であると言及している。

 首相が衆院議員に初当選した時、「師」と仰ぐ当時の梶山静六官房長官から、「国民に説明し、理解してもらわなければならない」と指導を受けたエピソードも取り上げた。

 低成長や少子高齢化の環境の中で、国民に負担をお願いする政策も必要となることがある。その際には、という文脈での紹介だが、説明と理解が必要となるのは、その場面にとどまりはしない。

 「桜を見る会」前日の夕食会に関して、事実と異なる答弁を謝罪した。しかし、政治不信を高める「政治とカネ」問題の解明へ動くつもりはないようだ。日本学術会議会員候補の任命拒否問題も触れなかった。

 コロナ対応の遅れや説明回避の姿勢が内閣支持率の低下につながっている。国民の「安心」と「希望」を追い求めるなら、それに見合う対応が必要だ。国会での活発な論戦を期待したい。



首相施政方針 「安心と希望」には程遠い(2021年1月19日配信『西日本新聞』-「社説」)

 通常国会がきのう召集され、菅義偉首相が初の施政方針演説をした。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言下の国会開幕である。首相は「私が一貫して追い求めてきたのは国民の皆さんの『安心』そして『希望』です」と力説してみせた。

 この首相の言葉に「なるほど」とうなずき、「その通りだ」と共感する国民が一体どれだけいるだろう。一連のコロナ対応には「後手で小出し」との厳しい世論がある。首相は率直に受け止め、感染の拡大防止と収束への展望を切り開くべきだ。

 首相は「国民の命と健康を守り抜く」と宣言し「感染症を一日も早く収束させる」とも約束した。具体的にどうするのか。飲食店の時短営業、テレワークの7割実施、不要不急の外出・移動の自粛、イベントの人数制限などを列挙するとともに、新型コロナに対応した現在の特別措置法を改正し、罰則や支援を規定すると表明した。特措法改正は与野党の枠を超えた喫緊の政治課題だ。国民的合意を踏まえて早急に実現してほしい。

 首相の演説で気になるのは、国民に対し「生活や仕事にご負担、ご苦労をおかけする中で今回、再び制約のある生活をお願いせざるを得ず、大変申し訳ない」とわびたことだ。

 国民は政府が緊急事態宣言を再び出したことに不信感を抱いているわけではない。むしろ、政府の決断が「遅きに失した」と不満を募らせているのではないか。先の観光支援事業「Go To トラベル」を巡る迷走や、自民党の要求で11カ国・地域とのビジネス往来を一時停止した判断はその象徴だろう。

 「未知のウイルス」との闘いである。対応に試行錯誤や朝令暮改が伴うのはやむを得ない面もある。問題は「何が判断を誤らせたか」を国民に丁寧に説明し、納得と合意を得て次の手を打つ謙虚な姿勢が見えないことだ。コロナ対策に国民の批判が強まり内閣支持率が急落しているのも、そのためではないか。

 「政治とカネ」の問題も見逃せない。さすがに首相も「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、官房長官時代に安倍晋三前首相を擁護し事実と異なる国会答弁をしたことは謝罪したが、吉川貴盛元農相が収賄罪で在宅起訴された事件など他の問題や疑惑については素通りだった。

 この姿勢は疑問だ。演説冒頭で「安心と希望」の社会実現を訴えた首相は演説の終盤で、国政を預かる政治家にとって「国民の皆さまの信頼が不可欠」と述べた。苦境に立つ今の首相にとってまさに至言だろう。

 有効なコロナ対策を実行するためにも、政府と国民を結ぶ信頼の回復こそ急ぐべきだ。



施政方針演説 展望見えず心に届かない(2021年1月19日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスが猛威を振るい、多くの国民が苦難を強いられている中で通常国会が召集された。初の施政方針演説に臨んだ菅義偉首相は「国民の協力をいただきながら、私自身も闘いの最前線に立ち、自治体とも連携して難局を乗り越えていく」と早期収束へ意欲を示した。

 危機に立ち向かうリーダーには平時以上のコミュニケーション力が求められる。経験のない事態への対処は試行錯誤の連続だからだ。問われるのは、個々のメッセージをどれだけ丁寧に、責任を持って伝えてきたか。正しい現状認識と明確な対処方針を共有できていれば、失敗しても納得を得やすく、軌道修正も速やかに図れる。

 しかし、首相の演説を聞いた限りでは、後手に回った印象の強いコロナ対策の責任をどう自覚し、いかにして挽回を図るのか、展望が見えなかった。さまざまな施策の披歴も心に深く届いたとは言い難く、「この政権に危機対応を任せておいてよいのか」という不安を打ち消すまでには至らなかったように感じる。

 厚生労働省が16日に公表したデータに基づき、国内の新型コロナウイルスの感染状況を政府分科会の6指標に照らすと、4指標以上で「ステージ4」(爆発的感染拡大)に該当する自治体が12都府県に上る。ただ、このうち熊本県と沖縄県には政府の緊急事態宣言が発令されていないなど、ちぐはぐな対応も目につく。

 首相は「ステージ4を早急に脱却する」と明言。飲食店の時短営業の実効性を高めるため、新型コロナ特別措置法改正案に補償と罰則を盛り込み、対策の「決め手」と位置付けるワクチンの接種を2月下旬までに始める目標を改めて掲げた。しかし、それらの実効性には不透明な部分も多い。宣言解除の見通しも示されていない。今後の論戦で明確にしてほしい。

 経済対策では、「グリーン」と「デジタル」を成長の源泉とすると強調。脱炭素社会実現のため、二酸化炭素(CO2)排出に応じて課金するカーボンプライジングや、企業や海外から環境投資を呼び込む金融市場の枠組みづくりを進める考えを示した。デジタル分野では、次世代移動通信システムの研究開発を進め通信規格の国際ルールづくりを主導するとした。

 夏の東京五輪・パラリンピック開催には引き続き意欲を表明したが、世界の感染状況を冷静に見極めるべきだ。

 首相は国民生活への制約要請に関し「大変申し訳ない」と述べたが、コロナ対策の遅れに対する反省の弁はなく、吉川貴盛元農相の収賄事件など「政治とカネ」問題についても踏み込んだ言及はなかった。

 国民に安心と希望を提供したいのならば、不都合な事案ともしっかり向き合い、血の通った言葉で説明するべきだ。安倍晋三前首相の「虚偽答弁」によって失墜した国会の権威を回復するためにも、首相が先頭に立って政治不信の払拭[ふっしょく]に努めてもらいたい。



「紋切り型」(2021年1月19日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 「紋切り型」も日常会話では大した効用がある、と作家の井上ひさしさんがエッセーに書いている。スピーチは「突然のご指名で…」と切り出し、久しぶりの知人には「お子さんも大きくなられたでしょう」とお辞儀する。考える労力を節約でき、新味はないけれど間違いない。「紋切り型さまさま」

▼ただし政治家となれば話は別、と井上さん。「最善を尽くす」「万全を期したい」などの紋切り型は、物事が激しく動いている時ほど現実から浮遊してしまうそうだ

▼コロナ禍の今はまさに「物事が激しく動いている時」だろう。しかし、菅義偉首相のきのうの施政方針演説は、紋切り型というかありきたりな言葉ばかり目立った

▼「目の前の患者を救うため、力を尽くす医療従事者の皆さま」「私自身も、この闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく決意です」-。コロナの陽性が分かっても入院できず、自宅待機中に亡くなる人もいる。厳しい医療の現実を思うと、さすがに空々しく聞こえる

▼批判の多かった「まず、自分でやってみる」の呼び掛けがなかったのは、内閣支持率の急落を気にしてのことだろう。手元の原稿から極力視線を上げる、といった努力もうかがえた。随所で声を張り上げ、与党議員が拍手で盛り上げたのは少し不自然だったが

▼「実務型」らしく、政策で国民の信頼を得てほしい。「安心と希望に満ちた社会」への道筋を論戦を通して分かりやすく発信して…とここまで書いて、こちらも相当な紋切り型だと恥じ入った。



施政方針演説(2021年1月19日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆「安心」の根拠と見通し示せ◆

 菅義偉首相は通常国会冒頭の施政方針演説で、政権の目標は国民に「安心」と「希望」を与えることだと強調、新型コロナウイルス感染症対策について「私自身も闘いの先頭に立つ」と表明した。だが、緊急事態宣言の再発令後も感染拡大は収まらず、「安心」には程遠い。

 首相は昨年10月の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と明言する一方で経済支援策「Go To キャンペーン」の事業などを続け、今の事態を招いている。政治は「結果責任」である。その反省の言葉もないまま「先頭に立つ」と言っても、国民に切迫した危機感は伝わるまい。

 演説から浮かび上がるのは、現状認識の甘さと責任回避の姿勢だ。緊急事態宣言の対策は飲食店の時短営業が柱で、首相は「1年近くの経験に基づき、効果的な対策を行う」と述べた。だが、専門家は時短営業だけでは不十分だと指摘する。

 宣言解除の見通しについても「一日も早く収束させる」「ステージ4(爆発的感染拡大)を早急に脱却する」と述べた。政府はステージ3を宣言解除の目安とするが、3は「感染急増」状態でしかない。それで国民が安心できるのか。責任の持てる解除基準を明示してほしい。

 早期成立を図る新型コロナ特別措置法の改正案について、首相は「罰則や支援」を規定すると述べた。支援よりも罰則に重点があるようだ。演説では触れなかった感染症法の改正案でも罰則導入が検討されている。専門家は罰則による効果を疑問視する。私権を制限する罰則は慎重な検討が必要だ。国会論戦では有効な感染症対策とともに、生活支援策、罰則の在り方について、議論を尽くすべきだ。

 東京五輪・パラリンピックの開催もコロナ次第だ。首相は「世界中に希望と勇気を届ける大会を実現する決意」を強調したが、世界の感染状況を冷静に見極める段階に入ったと考えられる。

 重要なのは演説で語らなかった課題だろう。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故は3月11日で発生から10年となる。首相は「東北復興の総仕上げに全力を尽くす」と述べた。いまだに4万人以上が避難生活を強いられている現状を、「総仕上げ」とひとくくりにしていいのか。事故原発の廃炉への取り組みや喫緊の課題である処理水の処分方針については一言も触れなかった。

 2021年度予算案は一般会計総額が106兆6097億円と過去最大になる。コロナ対策で財政出動が必要な面もあるが財政再建への具体的言及はなかった。国会で深掘りの議論を求めたい。



[通常国会召集] 説明尽くし論戦充実を(2021年1月19日配信『南日本新聞』-「社説」)

 通常国会が召集され、菅義偉首相が就任後初の施政方針演説を行った。

 国民生活が新型コロナウイルスの感染まん延で転換期を迎える中、感染拡大への対処が最大のテーマである。

 今こそリーダーシップを発揮する時だ。安倍前政権時から指摘されてきた国会軽視の姿勢を改め、諸課題について説明を尽くさなければならない。

 演説では「感染症を一日も早く収束させる」と決意を述べた。その具体策として飲食店の営業時間短縮、テレワークの7割実施、不要不急の外出・移動の自粛などを挙げた。

 雇用や事業者を守るため、雇用調整助成金は特例を延長、無利子・無担保融資の上限額引き上げなどに取り組む。十分な対策かどうか、国民の声を反映した議論が求められる。

 一方、コロナ特別措置法の改正案について、「罰則や支援」を規定すると述べた。演説では触れなかった感染症法の改正案でも罰則導入が検討されている。罰則の適用には慎重論も根強い。適用条件などについて詳細な説明が必要だ。

 菅首相は昨年10月の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぎ、社会経済活動を再開して経済を回復させる」と述べた。しかし、3カ月足らずで緊急事態の再発令を余儀なくされた。

 観光支援事業「Go To トラベル」には固執した末に一時停止に追い込まれた。今回、経済重視の文言は封印したが、多くの国民が不満に感じている対策の遅れに反省の弁がなかったのは残念である。

 2021年度の一般会計総額は106兆6097億円と9年連続で過去最大になった。コロナ対策の予備費5兆円を積んだことが全体を押し上げ、高齢化に伴い社会保障費も35兆8421億円と最大を更新し、防衛費も9年連続で増え最大となった。

 コロナ禍で苦しむ中小零細事業者や非正規雇用の労働者らへの支援拡充が求められる中、防衛費の在り方や厳しさを増す財政の再建について徹底した議論を望みたい。

 米国では20日にバイデン大統領が就任する。早期会談と緊密協力に意欲を見せた。安倍・トランプ時代から、菅・バイデン関係をどう構築していくか。沖縄の基地負担軽減や北朝鮮による日本人拉致問題への手腕が問われる。

 吉川貴盛元農相の収賄事件など「政治とカネ」の問題には踏み込んだ見解は示さなかった。コロナ対策などの実効性を高めるには国民の理解と協力が不可欠である。さまざまな疑惑に対して誠実に向き合い、政治の信頼回復に努めなければならない。

 野党も菅政権の後手に回ったコロナ対策などを批判するだけでなく、説得力ある対案を示すなど中身の濃い質疑を展開してほしい。



[首相 施政方針演説]これでは心に響かない(2021年1月19日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染まん延に伴う緊急事態宣言の真っただ中で、通常国会が召集された。

 菅義偉首相は、施政方針演説で「国民の命と健康を守り抜く」と述べ、感染の早期収束を最優先課題とする考えを明らかにした。最大の焦点はコロナ対応である。

 昨年9月の自民党総裁選から掲げてきた「自助・共助・公助、そして絆」には触れず、持論の経済重視の文言も封印した。

 堂々と基本理念を述べ、進むべき方向性と具体的な施策を示すのが施政方針演説だが、基本理念を封印したということは、首相自身が追い詰められていることを物語る。

 今国会にはもう一つ、重要な側面がある。

 菅首相がコロナ危機に立ち向かうかじ取り役としてふさわしいかどうかを見極める機会になる、という点だ。

 感染拡大を防ぐためには、国民の理解と積極的な協力が欠かせない。国民に「行動変容」を促しても、首相の発言や行動に信頼が置けなければ、国民はついていかない。

 実際はどうか。いちいち具体例は挙げないが、菅政権の支持率を見れば、ことは明らかだ。

 大手メディアのどの調査を見ても、支持率はつるべ落としのように急降下しており、不支持率が支持率を上回るケースも目立つ。

 国民は、菅首相の後手後手のコロナ対策に不安を感じているだけでなく、説明を尽くさない逃げの姿勢や発信力にも疑問を抱いているのである。

■    ■

 首相は官房長官時代の癖が抜けないようだ。官房長官時代はそれでも切り抜けられたが、一国の首相はそういうわけにはいかない。

 コロナ禍のような危機の時代に政治指導者に求められるのは、国民に向けた説得力のあるメッセージであり、国民に対して説明を尽くし、ともに歩む姿勢である。

 施政方針演説で首相は、デジタル庁の創設やグリーン社会の実現、携帯電話料金の引き下げなどを取り上げ、「長年の課題について、この4カ月で答えを出してきた」と自負心をのぞかせた。

 菅カラーを打ち出すのはいいが、不都合な事実には触れず国会の数の力で説明責任から逃れるようでは信頼回復は難しい。

 在宅起訴された吉川貴盛元農相の贈収賄事件など、「政治とカネ」を巡る問題が相次ぐが、政治不信解消に指導力を発揮した気配はない。

■    ■

 首相は施政方針演説で「普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進める」と語った。判で押したような、相変わらずの決まり文句である。

 辺野古を巡っては、軟弱地盤の改良のため工事が大幅に遅れ、普天間返還そのものが2030年代半ばまでずれることが明らかになっている。

 計画の大幅変更を余儀なくされていることは何も言わず、「一日も早い全面返還」という言葉を繰り返す。

 「沖縄の皆さんの心に寄り添う」という言葉がむなしく響く。



施政方針「国民への負担」は何を指すか(2021年1月19日配信『日刊スポーツー「政界地獄耳」)

★通常国会が18日、召集された。首相・菅義偉は昨年10月26日に召集された臨時国会で初めての所信表明演説を行ったが具体策が乏しく、首相周辺は本格的なものは施政方針で示すとしていたがさてどうだったか。首相は施政方針演説で目指す社会像について「私が一貫して追い求めてきたものは国民の皆さんの『安心』そして『希望』です」を強調。「1人ひとりが力を最大限発揮し、互いに支え、助け合える『安心』と『希望』に満ちた社会を実現」としたが所信表明で使った「『自助・共助・公助』そして『絆』だ」の言いかえでしかなかった。

★「我が国でも深刻な状況にある新型コロナウイルス感染症を1日も早く収束」。「夏の東京オリンピック・パラリンピックは人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、また東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」も所信表明でも語っていて繰り返した。いくつか就任4カ月での経験を見せる場面もあったが、「何よりも仕事をしたい」としていた仕事の中身は昨今の世論調査などを見れば国民から評価されているとは言い難い。

★演説の末尾は所信表明では「雪深い秋田の農家に生まれ、地縁、血縁のない横浜で、まさにゼロからのスタートで政治の世界に飛び込んだ」とたたき上げと庶民性を訴えたが、今度は「かねてよりご指導いただいていた当時の梶山静六内閣官房長官」の名前を出してその経験を強調。ただ、気になるのは梶山の薫陶を受けたという表現で梶山の言葉を引き、「国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し理解してもらわなければならない」とのくだりを引用した。これは何を指すのか。なぜそこを施政方針で使ったか。「国民への負担」とは何かの臆測を呼ぶのではないか。政府の失策と税金の大盤振る舞いの後にどんな負担を強いられるのか。気になるところだ。



首相施政方針演説(2021年1月19日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

高まる批判に全く反省がない

 菅義偉首相が就任後初となる施政方針演説を行いました。演説はその年の政府の基本方針を明らかにするものです。新型コロナウイルス感染の急拡大の中で、首相の発する言葉に注目しましたが、心に全く響きません。かつてない苦難に直面している国民に努力を求めるばかりで、政府自らが真剣に取り組む姿勢がないからです。4カ月前の就任以来強権ぶりを見せつけてきた日本学術会議への人事介入や、続発する「政治とカネ」問題への反省もありません。菅首相に政治のかじ取りを任せることはできません。

急落する内閣支持率

 施政方針演説の当日、「読売」は内閣支持率が39%に急落し、不支持率が49%と政権発足以来初めて支持と不支持が逆転した世論調査結果を報じました。「毎日」調査(17日付)も支持率が33%に下落し、不支持率が57%と大きく広がりました。

 国民の厳しい批判が集中しているのは菅政権の無為無策のコロナ対策です。深刻化する感染拡大にまともな手を打とうとせず、むしろ「Go To キャンペーン」に固執し続けることで、危機的事態を引き起こしてきました。2度目の緊急事態宣言を出す状況に至っても、首相に根本的な反省はありません。

 施政方針演説ではPCR検査の抜本的拡充には全く触れず、医療機関への減収補填(ほてん)や時短要請に応じた飲食業への十分な補償にも踏み込もうとはしません。それどころか、要請にこたえない業者に罰金を科す罰則規定の導入などを打ち出しました。国民の不安にこたえ、理解と納得を得るのではなく、力ずくで進めることは感染抑止への逆行以外の何物でもありません。「国民の命と健康を守り抜く」というのなら、態度を改め、全額国費での「社会的検査」と医療体制の本格的支援や自粛要請に対する補償を実行すべきです。

 すぐに審議に入る2020年度第3次補正予算案は、「Go To」事業の期間延長や大型公共事業に多額の予算を投じるもので、感染急拡大と緊急事態宣言再発令という事態に全く対応していません。作り直しが不可欠です。

 菅首相が繰り返してきた「自助・共助」「まずは自分でやってみる」の言葉は施政方針演説では消えました。「自己責任」を迫る姿勢への国民の批判を意識したものですが、75歳以上の医療費の窓口負担の引き上げは明言し、冷たい政治を変える立場ではありません。「グリーン」をうたい文句にした原発推進や、沖縄での米軍新基地建設の推進を表明したのは民意無視の極みです。菅政権を国民の声で追い詰めることがますます必要です。

「国民の信頼」得られぬ

 菅首相は、安倍晋三前首相の「桜を見る会」前夜祭問題をめぐる自らの過去の国会答弁について「おわび」したものの、おざなりです。在宅起訴された吉川貴盛元農林水産相らの「卵」汚職について触れなかったのは言語道断です。これで「政治家にとって何よりも国民の信頼が不可欠だ」といってみせても空疎なだけです。

 菅首相が改憲議論を改めて呼びかけたのも、この政権の危険性を浮き彫りにするものです。野党と国民のたたかいで強権的で冷たい菅政権を倒し、政権交代を実現することがいよいよ急務です。



密告、相互監視、強制隔離…(2021年1月19日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 新型コロナウイルス患者の自宅療養者数が3万人を超えました。必要な治療が受けられないまま重症化し、自宅で死亡する人が相次いでいます

▼「これ以上、事態が悪化すると、トリアージ(治療の優先順位を決める)をしなければならない」と日本医師会の中川俊男会長。テレビ画面には「若い人に人工呼吸器を」と延命を断る高齢の患者の姿が映し出されます。すでに命の選別が始まっているとしたら、悪夢です

▼そんな中、政府が通常国会で成立を狙っているのが特別措置法や感染症法の「罰則」新設です。中でも入院を拒んだ感染者に刑事罰を科すとは常軌を逸しています。問題は入院したくてもできないことなのに、手当てが必要な患者を鞭(むち)打つような仕打ちです

▼この方針に呼応するかのように、一部のメディアは感染が増えているのは自宅待機の患者が出歩いているからだと報じます。自宅療養者への生活支援はどうなっているのか、想像力は働かないようです。感染拡大を国民の責任にしたい菅政権には好都合でしょう。一方、自宅療養者には何の治療も施されないことを指摘する報道も。つまりはほったらかしです

▼日本医学会連合は感染症法の「罰則」新設に反対する緊急声明を発表。理由として、過去にハンセン病で患者・感染者の強制収容が法的になされ、著しい人権侵害が行われたこと、罰則を科すと検査を受けない人が増える可能性を指摘しました

▼密告、相互監視、強制隔離…。脅しで国民を支配する恐怖政治の到来許すまじ。






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