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4月から「税込表示」が義務化 ”税別”のユニクロは実質値下げ? アパレルが逃れられない呪縛(2021年1月20日配信『ITmedia ビジネスオンライン』)

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4月から「税込み表示」が義務化

 3月31日に消費税転嫁対策特別措置法が失効し、4月1日より税込み価格表示が義務化される。今まで本体価格+税の値札を付けていた企業は「税込み価格を上からシールで貼るか追加の値札を添付する」「POP (店頭広告)やタブレット、デジタルサイネージ(電子広告)などを使って税込み価格を表示する」「商品の陳列棚に税込み価格を表示」「税別価格と税込み価格の読み替え表の掲示、配布」などの対応を行えば、値札の付け替え作業をしなくても良い。

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義務化でユニクロは実質値下げ?

 ネット販売やテレビ、カタログ通販などの非接触型の小売りも、購入決定時の媒体が税込み表示となっていれば、本体価格+税の値札の付け替えは必要ない。こうした特例事項を設けることによって小売店の現場の混乱を来たす事なく移行できるよう、一定の配慮が施される。

 この税込み価格表示義務化について、特に商品の安さを武器に戦う企業にとっては重要な意味合いを持つ。対応として次の2つのケースで分かれることになる。それは、本体価格+税表記で訴求している企業と、すでに税込み表記で訴求している企業だ。

 代表的な例を挙げるならば前者がユニクロで後者がワークマンといったところだろうか。

4月からの対応は 消費税内包で実質値下げ?

 ユニクロの店内では「¥1290」「¥1990」「¥2990」「¥3990」といった大きく数字の入ったプライスPOPが目に飛び込むものの、全て消費税は別。ワークマンの店内も「¥1900」「¥2900」「¥3900」の数字が並ぶがこちらは全て消費税込み。

 ワークマンは4月1日以降も何ら変更することなく営業できるが、ユニクロは税別表記を税込み表記としなければならない。今のプライスラインのまま消費税10%分を内包するか「¥1419」「¥2189」「¥3289」「¥4389」と税込み表記とするのか、対応はいずれかに限られる。

 新作の春物商品の値札からは+税の表記が消えていることから、私は前者の方ではないかと推察する。

 内包といっても実質10%分の値下げとなるわけで、コストとして吸収するのは厳しい。それでも断行するのはコロナ禍というマイナス環境の中で、ファッションが消費の優先順位のあと回しにされてしまい、節約カテゴリー入りしてしまうのは何としても避けたいとの思いからだろう。税込み価格表示とはいえ値上げと感じさせることは得策とは見なかったと考える。

 そもそもこの消費税転嫁対策特別措置法とは、前回の消費税の増税(5%→8%)時に設けられた特例だ。消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保や、値札の貼り替えなど、事業者の事務負担に配慮する観点から、表示価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じていれば「税込価格」を表示しなくてもよいとしていた。

 そしてこの特例を利用した企業と利用しなかった企業とに分かれた訳だが、8%への増税が2014年の4月だったことを思えば5年もの間、税別・税込み表記のPOPや値札がファッション市場には混在していたことになる。消費税も3%の頃ならいざ知らず、今や10%にまで上がってしまっている事からも、商品それぞれに税別なのか税込みなのかの意味も年々大きくなっているのだ。

 ましてや商品の安さを追求していくファッション企業は、価格についてもこだわっていかなければならない。15年頃、原材料や人件費の高騰もあってアイスクリームやカレー、シチューといった食品類の値上げとともに、アパレルにも値上げ機運が高まったタイミングがあった。ユニクロはこの時に客離れを起こした苦い経験があるのだろう。一時的な客離れにしろ、代替え選択肢のある業態では、値上げは命取りになりかねない。価格戦略は店の業績にも大きく影響のでる要素なだけに慎重な判断が求められる。

ユニクロ店内でよく見る「新価格」の戦略

 最近は生活者の潜在的な意識が購買決定を大きく左右する。特に衣料品は買い慣れた手順で購入する人が多い。以前買って気に入った店からのぞいたり、日用品の買い物ついでだったり、個人がそれぞれ納得のいく方法で商品を手にしている。常日ごろ「A店は安い」と思って買っていたのに、高く感じてしまうきっかけを与えてしまうと、A店で買う以外の選択肢を探すことになるのだ。

 人気ショップとして継続して支持を集めるためには、いつもの買う習慣以外の選択肢をいかに与えず、顧客をつなぎとめておけるかが重要だ。

 そのあたりのことを良く理解しているのがユニクロだ。現在、ユニクロの店内をのぞくと値下げ商品は1枚もない。冬物セール時期にもかかわらず値下げ表記が無いのだ。あるのは「新価格」と書かれた赤いPOP表記のみ。そう、ユニクロでは値下げ価格を「新価格」とうたうのだ。「値下げ」「処分価格」「割引」と聞いてワクワクしたのは遠い昔の話で、今では「余り物」とか「売れ残り」といった負のイメージの方が強くなる。

 確かに「新価格」であれば、「新商品」や「新作」と同じように「新」で始めた方がブランドイメージが保たれる。しかし、それでは生活者の誤認とならないのか。個人的には少し不安に感じるのだが、そこまでこだわって価格訴求を考えているという事の裏返しでもある。

 4月から始まる「総額表示」の義務化。今までお値打ち感を打ち出していた企業の大半は本体価格+消費税で価格訴求をしてきた。競合店の動きを見ながら消費税を内包させる(実質値下げ)企業が多いと考える。しかし、これは新たに消費税を転嫁する話ではなく、表現方法が変わるというだけの話なのだが、「値上げ感」=負のイメージという呪縛から、ファッション産業は逃れられないでいる。

著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン「マネー現代」などで特集記事などを執筆。




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Author:gogotamu2019
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