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「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす(2019年7月29日配信『日本経済新聞』―「春秋」)

 駆け出しの司法記者だったころ、法律用語が理解できずに苦労した。日常会話では、「〇〇とみなす」と「推定する」は、ほぼ同じような意味合いで使う。が、民法の世界では、かなり異なることを知った。学生時代もっと真面目に勉強していれば、と後悔したものだ。

▼例えば、民法にはこんな規定がある。「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」。人は出生により権利能力を持つのが原則だ。でも、相続に関しては、母親のおなかのなかの赤ちゃんにも権利を認める。「みなす」とはどんな事情があるにせよ、法律上そのように取り扱う、という意味だ。反証を許さない。

▼一方、「推定する」は、事実でないことが証明できれば法律関係を覆すことも可能だ。生まれた子の父親は誰か――。参院選で扱いが小さかったが、先週、私たちの人生に深くかかわる記事が載った。現行法は離婚から300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する。この規定を一定の条件の下、見直す案があるという。

▼きょう開く国の審議会で、「嫡出推定」を巡る議論が始まる。夫の暴力から逃れた女性が離婚直後に別の男性との子を出産した場合、戸籍上、前夫の子になることを避けるため出生届を出さない事例もある。無戸籍の子は様々な不利益を被る。DNA鑑定など推定を覆す科学も進歩した。多くの人が審議を注視するだろう。




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