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DVから逃れたのに元夫が突然現れ…原因は「役所のミス」 被害女性の怒り(2021年1月21日配信『毎日新聞』)

木許はるみ

 ドメスティックバイオレンス(DV)の夫から逃れて新生活を始めていたのに、突然現れたらどれほど恐ろしいだろうか。しかも転居先の情報を提供したのが役所だったとしたら--。こんな事例が各地で相次いでいる。「DV等支援措置」という制度があり、DVやストーカーの被害者は転居先を加害者に知られないように自治体に求める手続きができる。だが実際は、自治体が加害者側に情報を漏えいしてしまうケースが後を絶たない。過去には、ストーカー被害から逃れた女性が殺される事件も発生した。役所の不手際で転居先を知られたDV被害者の一人が、記者に苦しい胸の内を明かした。ミスを認めている東京都目黒区の担当者に聞くと……。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】

やっと離婚できたのに……

 女性はDVが原因で離婚を決意した。家庭では子どもを守るため、家を空けられず、仕事も辞めざるを得なかった。数カ月掛けて離婚を成立させ、なんとか別れることができた。離婚後、幸いなことにすぐに正社員の職と手ごろなアパートが見つかり、新しい生活を始めた。

 新居の住所が夫に知られると、再びDVを受ける恐れがあった。あらゆる対策を徹底しようと、ネット交流サービス(SNS)の投稿もやめた。転居先の自治体ではDV等支援措置の手続きを取った。これは、DVやストーカー、児童虐待の被害者らを保護するため、被害者の住所が記載された住民票などを加害者らに交付しないようにする制度だ。被害者の申し出を受けた市区町村は、警察や児童相談所などの意見を聞いて必要性を判断。加害者やその代理人らが住民票や戸籍付票の交付、住民基本台帳の閲覧を申請すると、システム上に警告が出て交付などが制限される。女性は一連の手続きを無事終えることができた。「これでようやく落ち着いて暮らせる。不安は常に消えないけど、とりあえず隠れることができた」とほっとした。

 仕事にも慣れるなど、生活が落ち着いてきたころだった。2019年夏のある夜、子どもを寝かしつける前の時間だったと記憶している。突然、玄関のインターホンが鳴った。モニターを見ると、元夫の姿があった。「え、どうして?」。心臓がバクバクと鳴り、頭が真っ白になった。「ピンポン、ピンポン」。インターホンは鳴りやまず、「出てこい」などという怒鳴り声が響き渡った。近隣の住民が異変を感じて警察に通報し、元夫は立ち去ったようだった。恐怖のあまり、パニックに陥った。

 相談に応じた警察官はこう言った。「ごめんね、ここにいていいよとは言えない。事件があったら困るから。もしここにいるなら、仕事も学校も行かず、雨戸を閉めて、暮らしてもらうしかない。悪いけど、出て行くしかない」

 翌朝、スーツケースと紙袋に荷物を詰め、知人の家に避難した。

目黒区が支援措置を確認せず

 なぜ元夫が住所を知っていたのだろうか。疑問に思って転居先の自治体に問い合わせた。すると、原因は元夫が住む目黒区のミスだったとわかった。担当者の説明によると、確定申告の業務の際、税務課の職員が夫の扶養家族の情報を調査するため、女性と子どもの現住所が記載された書類を元夫に送付していた。職員は、女性が転居先の自治体でDV等支援措置の手続きをしたことを確認していなかったという。夫は自分の手元に届いた書類を見て、元妻の新住所を知ったようだった。「行政を信用してきたのに。怒りで体が震えました」

 転居先の自治体の担当者は「目黒区のミスです」などと説明。その後、目黒区の税務課長らが謝罪に訪れた。謝ってはいたが、「システムのミス」を強調しているように聞こえた。

 女性は新たな転居先が見つかるまで、ホテルで生活することになった。宿泊費用は目黒区が負担したが、空室の確保が難しく、3日ごとに部屋を移動せねばならなかった。キッチンがなかったので、日々の食事はコンビニやスーパーで買った総菜を電子レンジで温めた。「子どもの運動会のお弁当も作ってあげられませんでした」。また、自宅に帰れなかったので子どものおもちゃがなく、遊び道具はホテルの部屋にあった折り鶴だけだった。その子どもの様子にも異変があった。「とにかく私から離れたがらないんです。怖かったんでしょうか。トイレにも、ランドリーに行くにも一緒でした」

区への不信感高まる

 物件が見つかり、引っ越しのために2カ月ぶりに自宅に戻った。すると、布団や洋服、キッチンの収納スペース……、閉め切っていたために部屋中がカビだらけだった。引っ越し先にまだ使えそうなわずかな家財を運んだが、化粧品のパウダーには小さな虫がはっていた。

 再度の転居に伴い、子どもは転校を余儀なくされた。環境の変化が大きかったせいか異変は続いた。大きな音が苦手で、バイクや車の音が聞こえると急におびえるという。「イルミネーションを見に行った時でも大きな効果音に驚いて逃げていました」




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