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特措法改正案 日弁連反対声明「感染者の差別助長のおそれ」(2021年1月22日配信『NHKニュース』)

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新型コロナウイルス対策として、政府が入院を拒否した患者に罰則を科す方針などを示していることについて、日弁連=日本弁護士連合会は「感染者などへの差別や偏見が一層助長されるおそれがある」などと反対する声明を出しました。

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政府が22日、閣議決定した感染症法と特別措置法の改正案では、入院を拒否した患者に1年以下の懲役か100万円以下の罰金、営業時間の変更などの命令に応じなかった事業者に最高で50万円以下の過料を科すことなどが盛り込まれています。

これに対し、日弁連は22日、都内で会見を開き、荒中会長の声明を発表しました。

声明ではまず感染症法の改正案について、対象者の範囲が不明確で不公平な刑罰の適用につながるおそれが大きく、安易に刑罰を導入すれば感染者などへの差別や偏見が一層助長されるおそれがあるなどとしています。

また、特別措置法の改正案についても、要件などが不明確で恣意的に運用されるおそれがあるうえ、経営環境の悪化で休業できない事業者の暮らしや命さえ奪いかねないと指摘しています。

そのうえで感染拡大を防ぐには、安心して入院治療や保健所の調査を受けられる体制の構築や事業者への正当な補償こそが必要不可欠だなどとして抜本的な見直しがされないかぎり、改正案に強く反対すると訴えています。

会見した日本弁護士連合会人権擁護委員会の川上詩朗委員長は「感染するのではないかという不安は差別や偏見も生み出してしまう。感染者は保護されるべき存在だということを軸に考えるべきで、差別の原因となる不安を取り除く取り組みが求められている」と述べました。

感染症法・特措法の改正法案に反対する会長声明

 本日、政府は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)及び「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」という。)の改正案を閣議決定した。新型コロナウイルスの感染が急拡大し、医療環境が逼迫する等の厳しい社会状況の中、収束のための有効な施策が必要であることは論を俟たない。しかし、今回の改正案は、感染拡大の予防のために都道府県知事に広範な権限を与えた上、本来保護の対象となるべき感染者や事業者に対し、罰則の威嚇をもってその権利を制約し、義務を課すにもかかわらず、その前提となる基本的人権の擁護や適正手続の保障に欠け、良質で適切な医療の提供及び十分な補償がなされるとは言えない。さらに、感染の拡大防止や収束という目的に対して十分な有効性が認められるかさえ疑問である。当連合会としては、以下の点について抜本的な見直しがなされない限り、強く反対する。

 まず、感染症法の目的は第一に感染症の患者等の人権を尊重するものでなければならないところ、今回の改正案は、入院措置に応じない者等に懲役刑・罰金刑、積極的疫学調査に対して拒否・虚偽報告等をした者に対して罰金刑を導入するとしている。

 しかし、刑罰は、その適用される行為類型(構成要件)が明確でなければならない。この点、新型コロナウイルス感染症は、その実態が十分解明されているとは言い難く、医学的知見・流行状況の変化によって入院措置や調査の範囲・内容は変化するし、各保健所や医療提供の体制には地域差も存在する。そのため、改正案の罰則の対象者の範囲は不明確かつ流動的であり、不公正・不公平な刑罰の適用のおそれも大きい。

 他方で、新型コロナウイルスには発症前にも強い感染力があるという特徴が認められ、入院措置・調査の拒否者等に対して刑罰を科したからといって感染拡大が防止できる訳ではない。むしろ、最近では多くの軽症者に対して自宅待機・自宅療養が指示され、症状が悪化して入院が必要となった場合にも入院できず、中には死亡に至った例も報告され、患者に対する「良質かつ適切な医療を受けられるように」すべき国及び地方公共団体の責務(感染症法前文・3条1項)が全うされていない現実がある。しかも、単に入院や調査を拒否したり、隠したりするだけで「犯罪者」扱いされるおそれがあるとなれば、感染者は感染した事実や感染した疑いのあることを隠し、かえって感染拡大を招くおそれさえ懸念される。

 新型コロナウイルス感染症は従来からのインフルエンザ感染症と比べて、無症状感染者からの感染力が強いと分析され、深刻な後遺症が残る例も報告されている。そのため国民全体に感染に対する不安が醸成され、感染したこと自体を非難するがごとき不当な差別や偏見が既に生じている。その解消を行わないまま、安易に感染者等に対して刑罰を導入するとなれば、感染者等に対する差別偏見が一層助長され、極めて深刻な人権侵害を招来するおそれがある。

 そもそも、感染症法は、「過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」、「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応する」などとした「前文」を設けて法の趣旨を宣言し、過去の反省等に基づき、伝染病予防法を廃止して制定された法律である。新型コロナウイルス感染症は、その感染力の強さゆえ、誰もが罹患する可能性がある疾病である。感染者は決して責められるべきではなく、その実情を無視して、安易に刑罰をもって義務を課そうとする今回の改正案は、かかる感染症法の目的・制定経緯を無視し、感染者の基本的人権を軽視するものに他ならない。

 次に、特措法の改正案は、「まん延防止等重点措置」として都道府県知事が事業者に対して営業時間の変更等の措置を要請・命令することができ、命令に応じない場合は過料を科し、要請・命令したことを公表できるとしている。

 しかし、改正案上、その発動要件や命令内容が不明確であり、都道府県知事に付与される権限は極めて広範である。そのため、恣意的な運用のおそれがあり、罰則等の適用に際し、営業時間の変更等の措置の命令に応じられない事業者の具体的事情が適切に考慮される保証はない。

 さらに、感染拡大により経営環境が極めて悪化し、休業することさえできない状況に苦しむ事業者に対して要請・命令がなされた場合には、当該事業者を含む働く者の暮らしや命さえ奪いかねない深刻な結果に直結する。もとより、主な対象とされている飲食に関わる事業者は、それ自体危険な事業を営んでいるわけではない。いかに努力しようとも、飲食の場に感染リスクがあるというだけで、死活問題となる営業時間の変更等を求められるのは、あまりにも酷である。かかる要請・命令を出す場合には、憲法の求める「正当な補償」となる対象事業者への必要かつ十分な補償がなされなければならず、その内容も改正案成立と同時に明らかにされなければならない。

 また、不用意な要請・命令及び公表は、感染症法改正案と同様、いたずらに風評被害や偏見差別を生み、事業者の名誉やプライバシー権や営業の自由などを侵害するおそれがある。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、政府・自治体と市民との間の理解と信頼に基づいて、感染者が安心して必要な入院治療や疫学調査を受けることができるような検査体制・医療提供体制を構築すること及び事業者への正当な補償こそが必要不可欠であって、安易な罰則の導入は必要ないと言うべきである。

 以上の観点から、当連合会は、今回閣議決定された感染症法及び特措法の改正法案に対して、抜本的な見直しがなされない限り、強く反対する。

 2021年(令和3年)1月22日

日本弁護士連合会
会長 荒   中

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