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休業や時短への財政支援 十分に保障されるのか<新型コロナ法改正ここが論点⑤>(2021年1月28日配信『東京新聞』)

 新型コロナウイルス特別措置法改正案は、国と地方自治体に対し、休業や営業時間短縮の要請に応じた事業者への財政支援を義務付けた。だが、憲法29条の財産権に基づく損失補償とは位置付けられず、具体的な金額などは行政の裁量に委ねられる。従わない場合の罰則が導入されるのに、協力への見返りがちゃんと保障されないのはバランスを欠くとの指摘もある。

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 憲法29条3項は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と「正当な補償」を明記する。休業要請などは私有財産の制約に当たる可能性があるが、現行の特措法では、都道府県知事が休業などを要請、指示しても財政支援の規定がない。社会全体の利益となる公衆衛生のためには、経済活動のある程度の制約が認められると解釈されているからだ。

 政府は当初、財政支援を努力規定とする方針だったが、与野党からの批判が相次ぎ、義務規定に切り替えた。それでも、財政支出が拡大することを恐れ、条文では「必要な財政上の措置を効果的に講ずる」と曖昧な規定にとどめる。

 明治大学の木村俊介教授(行政法)は特措法改正案に財政支援の義務規定が盛り込まれたことについて、公衆衛生のための規制なら損失補償しないという従来の政府見解から一歩踏み込んだ「異例の対応」と前向きに評価。一方で「肝心なのは実際の支援の内容だ」として、予算にどう反映されるかが重要と話す。

 野党は「影響に応じた」補償の規定を設けるよう訴えるなど、事業規模や損失に応じた補償を求める意見は根強いが、政府は「規模に応じて支援する補償的なことをやると、時間がかかる」(西村康稔経済再生担当相)と否定的だ。政府は雇用調整助成金を含め、他の制度の活用も呼び掛けるが、十分な補償とセットでなければ、事業者によっては生活のために営業を続けざるを得なくなり、対策の実効性が上がらない懸念もある。(川田篤志)=おわり



行政側の求め拒否…「正当な理由」線引きは<新型コロナ法改正ここが論点④>(2021年1月27日配信『東京新聞』)

 新型コロナウイルス対策の関連法改正案に盛り込まれた罰則の多くは、行政側の求めを「正当な理由なく」拒むことで科される。国民の権利を不当に制限しないよう弁明などの手続きができる見通しだが、どんな事情なら「正当」と認められるか線引きは難しく、基準がはっきりしない。

 感染症法改正案では「正当な理由なく」入院措置を拒否した患者に刑事罰を科す。新型コロナ特別措置法改正案では、新設する「まん延防止等重点措置」や緊急事態宣言の下で「正当な理由なく」休業・営業時間短縮の要請に応じない場合に行政罰の対象となる。

 だが、患者が誰かを感染させるために出歩いたり、事業者がクラスター(感染者集団)を発生させても営業を続けたりするなど例外的な事案でない限り、それぞれ個別の事情がある。基準が曖昧なままでは、子育てや介護で自宅を離れられない人、倒産の瀬戸際で店を開けざるを得ない事業者まで違法とされ、罰則を科される恐れも指摘される。

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 西村康稔経済再生担当相は26日の衆院予算委員会で、正当な理由が認められる事例に関して「個別の事由はこの段階ではお答えできない。かなり限定的に考えていかなければならない」と述べた。甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「『正当な理由』の解釈や判断は難しく、行政側の恣意的な運用への歯止めが必要だ」と語る。

 これまで新型コロナ対策で行政側による法的根拠の乏しい「お願い」が多用され、従わない事業者は非難された。「正当な理由」を判断する際、弁明の機会や不服申し立ての手続きが設けられるとみられ、人権保障にプラスという見方もあるが、行政手続法は意見聴取を「公益上、緊急に不利益処分をする必要がある」場合なら省略できると規定する。

 迅速な対応を求められるコロナ禍は「緊急時」とみなされる可能性がある。日本弁護士連合会は改正案で「適切な手続きが保障されるか不明だ」と懸念する。(山口哲人)



懲罰的な店名公表、拡大のおそれ<新型コロナ法改正ここが論点③>(2021年1月26日配信『東京新聞』)

 新型コロナウイルス感染拡大の「第1波」に襲われた昨年春、休業要請に応じないパチンコ店などへ抗議が殺到し、営業継続を断念する店舗が相次いだ。きっかけは都道府県知事による店名公表だったが、懲罰的な対応は新型コロナ特別措置法の趣旨に反するとの指摘もあった。今回の特措法改正案では、緊急事態宣言前の「まん延防止等重点措置」でも公表できる規定となり、同じような問題が起きる可能性がある。

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 現行の特措法は宣言の発令時、感染拡大を防ぐため、知事が事業者に休業や営業時間短縮を要請・指示でき、その内容を遅滞なく公表するよう定める。生活に必要な情報を提供し、行政権の乱用で過度な権利の制限につながっていないかを国民がチェックできるようにする仕組みだ。

 ところが、知事が要請に応じない店名だけをまとめて公表し、記者会見で苦言を呈するなど懲罰的な運用も横行した。強制力のない「お願い」をされただけの事業者が営業を続けて批判されたり、嫌がらせを受けたりする問題が相次いだ。

 改正案は、知事に事業者への休業などの命令(現行法では指示)を認め、宣言前の「まん延防止等重点措置」でも同様の対応を取れるようにする。行政の権限が強化され、法の趣旨に反した店名公表が広がることを不安視する声もある。

 また、感染症法の改正案は、政府が医療機関に病床確保などの協力を「勧告」できるとし、正当な理由なく応じない場合は公表も可能とする。制裁的な公表と受け取れる規定で、日本医師会の中川俊男会長は「懸命に地域医療を守っている医療機関にいきなり勧告がなされ、従わない場合は公表する仕組みの導入は容認できない」と反発する。

 田村憲久厚生労働相は「大前提は(医療機関との)信頼関係」と説明するが、新型コロナ対策の実効性を確保するために政府などの権限強化は欠かせないとも訴える。(市川千晴)



感染症法「患者に罰則」正当か<新型コロナ法改正ここが論点②>(2021年1月25日配信『東京新聞』)

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 感染症法改正案には、新型コロナウイルス感染者への刑事罰の新設が盛り込まれた。憲法が保障する「移動の自由」の制約につながるだけでなく、患者が「犯罪者」になりかねない。かつて感染症患者への人権侵害や差別が行われた歴史もあり、懸念は根強い。

◆入院措置の拒否や入院先から逃げ出すと刑事罰

 刑事罰が適用されるのは、都道府県知事による入院措置の拒否や、入院先から逃げ出した場合で、1年以下の懲役か100万円以下の罰金だ。政府は与野党協議で、患者が入院先から無断外出して温泉施設を利用したり、宿泊療養中に出歩いたりした事例を紹介。行動の制約には罰則による強制力という「最終的な手段」(厚生労働省幹部)が不可欠と訴える。

 だが、政府の説明には異論も多い。入院勧告に従わなかった患者が感染を広げたという科学的な根拠を示していないからだ。厚労省は刑事罰の対象になるような事例が全国で何件あったかを調査、集計していないことも認めており、人権団体などは「強力な人権制約を正当化する事実は存在しない」と指摘する。

◆ハンセン病政策での苦い教訓

 反発が広がる背景には、感染症を巡る過去の苦い教訓がある。日本では戦前からハンセン病患者の強制隔離政策を実施し、治療が可能になった戦後も人権侵害や差別が横行した。

 日本医学会連合は声明で、らい予防法廃止後の1998年に制定された感染症法が「歴史的反省のうえに成立した経緯を深く認識」するよう求めているとして「感染者個人に責任を負わせることは倫理的に受け入れがたい」と再考を迫っている。与野党の修正協議では懲役刑の部分の削除が検討される。

 改正案には、患者が感染経路の追跡調査を拒んだり、虚偽の回答をしたりした場合にも50万円以下の罰金を科すと規定する。罰則を導入すれば、検査そのものを避けることにつながり、対策の実効性を高める狙いに逆行するとの指摘もある。(坂田奈央)


<新型コロナ法改正ここが論点①>緊急宣言前の休業命令 憲法22条に抵触の恐れ(2021年1月24日配信『東京新聞』)

 新型コロナウイルス対策の特別措置法改正案で、感染拡大を未然に防ぐためとして創設されるのが「まん延防止等重点措置」だ。緊急事態を宣言していない地域でも、都道府県知事に事業者らへの休業や営業時間短縮の命令などを認め、違反した場合には30万円以下の過料(刑事罰とは違って前科にならない行政罰)の罰則も導入する。

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◆「営業の自由」を過度に制約

 現行の特措法は緊急事態という「有事」に限って国民の権利を制限し、それ以外は国民らに協力を求めることを基本とする。これまで緊急事態宣言がなくても「お願い」として、飲食店などに半ば強制的な要請をしていた問題点が指摘されていた。この措置の新設で、有事でなくても国民の権利を制限できるようにする。

 緊急事態宣言前に休業や営業時間の短縮を命じることは、憲法22条の「職業選択の自由」に含まれる「営業の自由」を過度に制約することになりかねないとの懸念がある。慶応大の横大道聡教授(憲法)は「必要以上に広範な権限を知事に与える恐れがあり、憲法上問題だ」と話す。

 また、どんな状況なら宣言の前段階に位置付けられるのかは曖昧だ。政府は「新規陽性者数などを踏まえた感染拡大や、医療提供に支障が生じる恐れ」(坂井学官房副長官)を基に認定するとの説明にとどまる。

◆国会への事前報告必要なし

 要件は閣議決定による政令で定め、実施を判断するのも政府対策本部長(首相)とされ、内閣の裁量が大きい。緊急事態宣言では義務付けられる国会への事前報告も「私権制限はかなり少ない」(菅義偉首相)として盛り込まれず、国民を代表する立法府のチェックを受ける仕組みもない。

 政府・与党はこの措置の撤回には応じない構えで、与野党の修正協議では過料の導入の是非などが議論される見通し。(川田篤志)

 政府が2月上旬に成立を目指す新型コロナウイルス対策の関連法改正案の主な論点を掘り下げます。



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