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流れを変えた銀座の夜 特措法改正案「丸のみ」の顛末(2021年1月30日配信『日本経済新聞』)

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人通りが減った銀座の並木通り(2020年、東京都中央区)

緊急事態宣言下の深夜に銀座のクラブに来店――。2人の与党幹部の行動が週刊誌の電子版で報じられたのは26日夕。いずれも政府が午後8時以降の不要不急の外出を求めているさなかだった。

「少し軽かったと反省している」「心から猛省している」。報道の直後、自民党の国会対策委員長代理だった松本純氏と公明党の幹事長代理だった遠山清彦氏は国会内で、それぞれこう陳謝した。29日にともに役職を辞した。

くしくも26日は新型コロナウイルスの特別措置法や感染症法の改正案を巡る与野党の修正協議の初日だった。野党は早速、翌27日の参院予算委員会で「国民には自粛をお願いして自分たちは守らない。めちゃくちゃだ」(立憲民主党の徳永エリ氏)と追及した。

もともと修正含みだった協議は、野党主導で進み始めていた。とりわけ問題視していたのが感染症法改正案で入院を拒んだ感染者への刑事罰として盛った「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の規定だ。この場合は前科として残る。立民の枝野幸男代表は懲役刑の導入に「到底容認できない」と削除を要求した。

与党側ものりしろの用意はあった。自民党幹部は協議前から「感染症法改正案の懲役刑削除と罰金減額はやむを得ない」と漏らした。懲役の削除で譲歩し、刑事罰の罰金は残す戦略だったとみられる。

結果的に、立民が要求した刑事罰をすべて削除するまで譲歩した。罰金についても行政罰の過料とし、特措法改正案では緊急事態宣言下で事業者が時短営業や休業の命令に従わない場合の過料も「50万円以下」から「30万円以下」に下げた。

事実上の丸のみだった。「誤算だった」と首相周辺は話す。

決定打となったのが27日公表された厚生労働省の部会での議事録だった。感染症法改正案を審議した15日の厚労省の厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の感染症部会で、罰則の創設に反対意見が多数出ていたとの内容だった。

議事録➡ここをクリック

委員から罰則導入について「実効性があると納得できない」「罰則まで組み込む必要があるのか」と慎重論が相次いだにもかかわらず、部会長は「結論は事務局から提案された方針でよしとする」と引き取ったという。

「こんなのが出たら国会審議はもたない。廃案になる」。議事録の内容を把握した森山裕国対委員長は27日夜、国会内で坂井学官房副長官らと会い、刑事罰を撤回せざるを得ないとの認識で一致した。菅義偉首相にも伝達し、了承を得た。

与党幹部には過去のトラウマが脳裏をよぎった。2007年に旧社会保険庁の年金記録問題が浮上。「消えた年金問題」疑惑を払拭できぬまま同年参院選に突入し大敗した。

18年にも厚労省の裁量労働制を巡る調査で不適切なデータが次々と発覚し、働き方改革関連法案から裁量労働制拡大を切り離した。世論の強い反発を浴びた案件はいずれも厚労省で起きた。

目下、新型コロナ対応や「政治とカネ」を巡る問題を受け、菅内閣の支持率は急落している。刑事罰の導入を強行すれば、野党側から強権的とのレッテルを貼られかねない。今回の野党への譲歩幅は想定外ながら、丸のみにカジを切って野党の攻撃材料を減らしたいとの首相の打算も透ける。




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Author:gogotamu2019
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