FC2ブログ

記事一覧

ヘイト野放し、第三者機関で人権守れ 安全に使える環境整備が必要 宮下萌弁護士(2021年1月30日配信『東京新聞』)

<プラットフォームと「表現の自由」>㊦

 ―ネット上の表現の規制のあり方について再び議論が高まっている。

 まず日本では、とりわけ在日コリアンや移民などの人種的、民族的マイノリティーに対するヘイトスピーチや人権侵害が野放しになっている現状をふまえる必要がある。ドイツでは法律で、会員制交流サイト(SNS)事業者に違法な投稿についての削除義務などを課しており、「表現の自由」を手厚く認める米国にも、そもそも「差別は許されない」という規範や対抗言論の土壌がある。日本は法的な規制もなく、プラットフォーム(PF)の自主規制も甘いまま。2016年にできたヘイトスピーチ解消法は理念法で、具体的な禁止措置すらない。

 ネット上のヘイトスピーチは、不特定多数を対象としたものが多くみられる。この場合、個人の人権侵害とは捉えにくいため、損害賠償請求の対象にならず、民法上の不法行為を問うのが難しい。まずは不特定の者に対するものも含めてヘイトスピーチを禁止、違法と法律で定めることが重要だ。その上で、PF事業者の取り組み強化など、多層的な対策が求められる。

―「ネットと人権法研究会」では、被害救済のモデル法案を提示している。

 現状では、投稿の削除請求をした場合、すぐに応じる事業者もあれば、裁判手続きを必要とする事業者もある。ネット上のどこで人権侵害があったかで差が出るのも、被害者から見ればおかしな話。裁判は金銭的、時間的、手続き的なコストも大きい。明らかなポリシー違反に当たる投稿は、事業者がまずは迅速に削除すべきだと考える。

キャプチャ8
宮下萌弁護士

 一方、事業者任せでは恣意しい的な判断もありうるし、ヘイトスピーチかどうかの判断が難しいケースもあるだろう。私たちは独立性と専門性を持つ第三者機関の設立を提案している。明確にポリシー違反とは言えないグレーな部分の判断を第三者機関に委ね、事業者が発信者情報開示や投稿記事の削除の要請に応じない場合は、具体的な理由を求めるなどの仕組みだ。

 ―PFに何を求めるか。

 人権に対する企業の責任を問う声は高まっており、日本政府も昨年「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定した。PF事業者は人権侵害の主体になりうると同時に、予防や被害救済の責任もあるという自覚を持ってほしい。新型コロナの下、ネット上の人種差別がリアルな暴力に発展している事例は世界中にある。ヘイトスピーチはただの嫌悪表現ではなく、差別の扇動だ。ネットが重要なインフラとなる中、誰もが安心して使える環境の整備がPFには求められる。

 みやした・もえ 弁護士と研究者らでつくる「ネットと人権法研究会」のメンバー。国際人権NGO「反差別国際運動(IMADR)」特別研究員。



トランプ氏のアカウント凍結で気づいた「手のひらの上の自由」 水谷瑛嗣郎・関西大准教授(2021年1月28日配信『東京新聞』)

<プラットフォームと「表現の自由」>㊤

 「暴力の扇動」を理由に、米国のトランプ前大統領のツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)アカウントが凍結され、ネット上の「表現の自由」を巡る議論が高まっている。プラットフォームという新たな権力とどう向き合うのか。SNSという言論の場の自由や健全性は、誰がどう守るべきなのか。識者に聞く。(聞き手・小嶋麻友美)

 ―トランプ氏のツイッターはどんな「場」だったのか。

 ただの私的なアカウントではなく、裏には担当官もいて戦略的、組織的な政府の広報装置として使われてきた。多くの人々がここで発信される情報に触れ、返信によって直接反論もできる公共的な場でもあった。その半面、支持者を扇動する誘導装置にもなり得る。

 情報のコントロールも権力作用の一つ。ネットによって政府はマスメディアを介さず力を使えるようになったが、今回はプラットフォーム(PF)がそれに対抗した形だ。死者も出る事態でPFがポリシーに従って行動したことは否定されるべきではないが、同時に、一国の大統領をだまらせられるPFの権力に、私たちは気づいてしまったということだ。

 ―国民や国とPFとの関係はどうあるべきか。

キャプチャ

 憲法学は権力をしばること、乱用させないことを意識してきた。表現の場の多くは今、デジタル空間にあり、それをデザインしているのがPF。私たちはネットやSNSで「表現の自由」を手に入れたように見えるが、それはPFの「手のひらの上」の自由だ。今回トランプ氏に向いた力は、私たちにも向けられる。

 警戒しなければならないのは、この力が民主政治を揺るがしかねないことだ。PFの経営陣は民主的に選出されたわけではなく、ビジネスで有利に働くように、政府や政治家への「圧力」として乱用することがないと言い切れない。政治家もこの力を無視しきれないだろう。

キャプチャ2JPG
水谷瑛嗣郎・関西大准教授(本人提供)

 国家と個人の間にあるPFという権力体を、どうコントロールするか。法律も駆使して、事後検証の仕組みを取り入れるなど、PFの「透明性」を高めることがまずは肝心だろう。

 ―日本にとってはPFの多くが海外企業だ。

 ツイッター社は米国の政治体制には責任を果たそうとするだろうが、彼らにとって外国の日本に、同様のインセンティブが働くだろうか。民主政には縁遠い中国の巨大PFにも、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」のように日本社会に浸透しているものがある。現代のデジタル空間は、国境を越えて私たちに影響を及ぼす権力がたくさんある複雑な構造だ。PFに日本の民主政に責任を担ってもらうため、法によるコントロールは不可欠だ。

 これまで国家が表現の空間に入ること、特にコンテンツ規制には警戒が必要とされてきた。今後は政府にも、言論空間の環境を整えるような役割がより求められるだろう。





スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ