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飲食だけ強調し過ぎ、買い物カゴからだって感染する(2021年1月31日配信『MBSニュース』)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

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*写真はイメージ© JBpress 提供 *写真はイメージ

 新型コロナウイルス対策の特別措置法と感染症法が改正される。

 1月22日に閣議決定した感染症法の改正案では、新たに刑事罰を設け、入院を拒否した感染者には「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」、保健所の調査を拒否したり虚偽の申告をしたりした場合は「50万円以下の罰金」としていた。

 ところが28日の与野党の修正協議で、前者を「50万円以下の過料」、後者を「30万円以下の過料」とすることで、自民党と立憲民主党が合意。過料は行政罰で、前科の残る刑事罰を取り除いたことになる。

始まる飲食店への過料、だが飲食店だけが悪者なのか

 同様に特措法についても、休業や営業時間の短縮の命令に応じない事業者に、緊急事態宣言が発出されている場合は「50万円以下の過料」、それ以前に新たに設けられる「まん延防止等重点措置」の場合は「30万円以下の過料」としていたものを、それぞれ「30万円以下」「20万円以下」に減額して合意に至っている。

 与党が大幅に譲歩して、罰則を軽くしたものだが、菅義偉首相は合意後のいわゆるぶら下がり会見でこう述べている。

「与野党の関係者の皆さんに感謝申し上げます。政府としては、この合意を尊重して対応してまいりたい、このように思います。この改正によって、飲食の時間短縮など、今まで以上に実効性のあるものになると思ってます。これからこの感染を縮小させるために全力で頑張ってまいります」

 その翌日から、改正案は衆議院本会議で審議入りし、来月3日には成立する見込みだ。

 特別措置法の改正案が大きく見直されたとはいえ、明らかに飲食業の“取締り”を念頭に置いたものだ。しかし、それで菅首相が言うように「感染の縮小」に「実効性のあるものになる」のだろうか。言い換えれば、飲食業だけが感染拡大の悪玉なのだろうか。

年明けに感じた喉の痛みと微熱

 白状すると、この1月に私は民間の医療機関でPCR検査を受けた。その事情から話せば、年明け早々のある朝、喉の痛みを感じたからだ。それは、私の場合、典型的な風邪の初期症状だった。そこから咳が出てくると、それが夜になると止まらなくなる「咳喘息」を持っている。それだけに、新型コロナウイルスによる肺炎には用心していた。

 とは言え、感染経路が思い当たらない。2週間前までの記憶をたどっても、人との接触は控えていたし、食事も自宅で済ませていた。同居人もいない。

 喉の痛みは2日続き、微熱があった。そこへ人と会う仕事のアポイントも入ってくる。それに応じていいものか、迷う。

 そこでその日の夕刻に、東京都の発熱相談センターに電話した。昨年末に死亡した立憲民主党の羽田雄一郎参院幹事長が、直前に問い合わせたところだ。

「買い物カゴからも感染します」

 何度もかけ直して、ようやく女性の相談員とつながる。

 そこで私は、自分の症状と感染の心あたりのないことを強調して伝えた。その時に、こう言われたのだ。

「いまは、真面目にコンビニやスーパーしか往復していないのに、感染している人も出ているんです」

 そして、こう続けた。

「どうやら、買い物カゴから感染しているとみられています」

 驚いて聞き返すと、買い物カゴからも感染する、と彼女は繰り返した。

「ウイルスが付着した買い物カゴを触った手で、そのまま口や鼻などを触れば、感染します」

 付け加えれば、その手で眼に触れても感染する。それが東京都の見解だった。しかも、現場の相談員が語ったことだ。

「飛沫」以外の接触感染ももっと警戒すべきではないのか

 政府や専門家は、東京都で6割を占める感染経路不明の多くが飲食であるとして、とにかく飲食の自粛を喧伝している。そこに実効性を持たせるため、というよりは“取締り”を可能にするために、特措法の改正がある。しかし、現実には飲食業ばかりではなく、生活の中にもっと多岐にわたる感染経路があることを、東京都の相談員は語っている。

 だとしたら、スーパーやコンビニといった小売店へも、買い物カゴの消毒を実施させるなどの対策を徹底すべきはずだ。もちろん、買い物カゴやカートの消毒を実施している店舗はあるだろう。だが、一度目の緊急事態宣言が発出された昨年の4月時点よりも、その警戒感は緩んでいるように見受けられる。そうでなければ、東京都の相談員があんな発言をするはずもない。

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*写真はイメージ© JBpress 提供

 実際に買い物に出かけてみれば、最近ではマスクもせずに店舗に入ってくる若者もいる。カゴばかりでなく、やたらと商品を手にとって品定めしては、もとに戻す人たちも少なくない。対して、店員による積極的な感染防止の呼びかけや啓蒙もない。どこか醒めて常態化している。モノが売れればそれでいい。店に損害がなければそれでいい。

 さらに人が指で触れるのなら、銀行のATMはどうなのか。券売機はどうなのか。感染力が高いとされる変異株も市中で見つかっている。緊急事態宣言下にあって、もっと感染リスクと対策を周知徹底させる必要があるはずだ。そのほうが実効性は高い。ところが、小池百合子東京都知事も注意喚起しない。感染した可能性を前提に、相談員がはじめて教えてくれる。

銀座の高級クラブに出入りしながら飲食店への罰則導入に賛成する与党幹部

 確かに、アルコールが入って大きな声が出やすい飲食は、それだけ感染リスクも高くなるはずだ。だが、いつの間にか、その方向にだけ眼が向いてしまって、罰則を設ければ済むという安直な発想に政府や自治体の感染対策が偏りつつあるのではないか。もっといえば、国民の視線をそちらに集中させて、それで対策は万全であるとするプロパガンダ。それで「真面目」な国民が買い物カゴから感染する。

 反対に「不真面目」で言えば、飲食店には午後8時までの時短営業を要請し、同時刻以降の不要不急の外出の自粛を呼びかけながら、政権与党である自民党の松本純国対委員長代理と、公明党の遠山清彦幹事長代理(いずれも当時)がそれぞれ、その時間を過ぎても銀座の高級クラブに出入りしていたことが発覚している。そんな輩が、これから飲食店に罰則を強いる改正案に賛成して、議論もそこそこに短時間での成立を急ぐ。

 どこか戦時中の日本を彷彿とさせる。徴兵された兵隊は前線に立たされ、補給を絶たれて餓死者も出ているというのに、将校は安全な場所で酒も嗜んでいた。国民へは本当の戦況を伝えず、事実を語れば非国民と取り締まられる。国民を守るべき軍隊が戦争をはじめて、国土を焦土と化した。

 幸いなことに私の場合は、発熱相談センターで対応可能な医療機関を紹介され、すぐにPCR検査を受けることが決まった。さらに幸いなことに、検査結果は陰性だった。それも中1日で結果が伝えられた。報じられているように2日以上かかるものでもなかった。

 この経験からすれば、政府の上から目線の感染対策の在り方と、市井の最前線での現状と認識にはズレがあるように思えてならない。もっと実効性のある、基本的な対策はとられて然るべきだ。せめて、買い物にも注意が必要なことは、もっと多くの日本人に知られてもいいはずだ。




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