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遺影のない追悼式(2019年7月30日配信『沖縄タイムス』-「大弦小弦」)

 昨年審査を担当した中学生人権作文コンテストで心に残った一編がある。中学2年の女生徒がつづった、自閉症と知的障がいのある妹との日常。曜日ごとにヘアピンを決めて、細かいことによく気付く妹と手をつなぎ、ゆっくり登校する時間が大好きだという

▼相模原市の知的障がい者施設で19人もの命が奪われた事件に憤りを覚え、記した。「私たち家族は、妹がいての家族」「困ることよりも喜びや楽しみの方がたくさんあると、自信を持って言えます」。実感のこもる言葉に共感した

▼世間を戦慄(せんりつ)させた事件から3年。意思疎通の取れない人を「心失者」と呼び、「障がい者はいなくなればいい」と供述した元職員の被告は考えの核心を変えていないという

▼共同通信が全国の知的障がい者家族に実施したアンケートで約8割が「社会の関心が薄れている」と回答。差別解消の取り組みを求める意見は7割を超えた。事件の風化や障がい者理解が進まない状況への懸念が浮かぶ

▼ネット上では被告のゆがんだ主張に同調せずとも、人の価値を「生産性」で測る風潮が見受けられる。役立つか、役立たないかで線を引く狭量な社会が障がい者や家族を苦しめる

▼神奈川県が開いた追悼式には遺影がなかった。遺族が偏見を恐れて実名を公表できない社会とは何か、一人一人が考えたい。




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