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郷原信郎「これだけは言いたい!」 ;「罰則導入」法案を提出し結局は削除 菅政権のお粗末ぶり(2021年2月2日配信『日刊ゲンダイ』)

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郷原信郎弁護士
元東京地検特捜部検事。1955年、島根県生まれ。東大理学部卒。83年検事任官。「告発の正義」(ちくま新書)、「虚構の法治国家」(講談社)など著書多数。

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これはお粗末だった(閣議での菅首相)

 1月22日に閣議決定された感染症法改正案で、入院拒否や入院先からの逃亡をした感染者に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科す罰則導入が含まれていたことに対して、野党やマスコミから批判が高まり、修正協議の結果、感染者に対する罰則はすべて削除されることになった。

 罰則を導入することで、検査や感染報告を躊躇させることになり、かえって感染拡大につながりかねないという実質的面からの反対が大部分だが、私が指摘したのは、「入院勧告」に従わない場合に「入院措置」をとることを認めている現行法に、法改正により、新たに「入院措置」に応じなかった場合の罰則が導入された場合、「入院措置」と罰則適用がどういう関係になるかという点だった。

感染症法の「入院措置」も、その規定の文言が、精神保健福祉法の「措置入院」(自傷他害の恐れのある精神障害者を強制的に入院させる措置)と同じなので、感染症法の「入院措置」も有形力をもって強制的に入院させることができる措置のように思える。厚労省は、本人の意思にかかわりなく入院させることができる「即時強制」と説明しているようだ。

 しかし、そうだとすると、改正案が「入院措置が実施される者」が入院しなかった時に罰則を適用するというのは、どういう意味なのか。本人の意思と関わりなく、強制的に入院させることができるのなら、罰則をもって強制することと矛盾するのではないか。

 そして、もうひとつの対象行為が「入院した者が入院期間中に逃げた場合」だが、こちらについては、逃亡者を再度入院させる「入院措置」の規定がないので、「入院拒否」のように、即時強制と間接強制の関係が問題になることはない。しかし、なぜ、「逃亡者を入院させる措置」を定めないで、いきなり罰則を導入しようとするのか。

通常、罰則の付いた法改正を行う時には、所管官庁が、法改正案を法務省刑事局に持ち込み、「罰則審査」を受ける。罰則審査では、そのような罰則を設ける必要性と、罰則の構成要件の明確性、法定刑の相当性などが審査される。

 このような疑問だらけの感染症法改正案の罰則導入について、どのような審査が行われたのだろうか。「入院措置」がどのような場合に、どのような要件で実施されるのかを十分に確認したのだろうか。

 結果的には、刑事罰の規定はすべて削除されることになったが、そもそも、感染対策の面から全く必要がなく、しかも、法律の枠組み上も疑問がある罰則導入の法案を閣議決定し、国会提出したこと自体に重大な問題がある。所管の厚労省が検討した上で提案したのではなく、度重なるコロナ感染対策の失策を挽回するために官邸主導で罰則を導入しようとしたのであろうか。そうだとすれば、感染対策を担う内閣として、あまりにお粗末だ。




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Author:gogotamu2019
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