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発達障害「生きづらさ」を生きる第3部(2) 周囲の理解と本人の気づき 8割の職場が研修せず(2019年7月30日配信『産経新聞』)

 「彼との衝突が苦になって、アルバイトの学生が何人も辞めました」

 大阪府内のコンビニエンスストアのオーナー、星野貴さん=仮名=はため息をついた。「彼」とは、10年ほど前から同店でアルバイトで働く40代の男性だ。

 最初は、男性が黙々と仕事に取り組む姿勢に「単に真面目な人」だと感じていた。だが、少しずつ違和感を覚えるようになった。

 仕事の手順はいつも決まっていて、唐揚げなどの揚げ物があまり売れない時間帯でも調理を始め、レジの前に客が並んでいても、決まった時間に掃除をして手伝おうとしない。

 星野さんの注意も頑として受けつけない上、冗談が通じないから他の店員との軋轢(あつれき)も絶えない。

 ちょうど、発達障害という言葉が世間で認知され始めたころ。「もしや、彼がそうなのか」と思い、専門書を手に取った。《特定のものやことがらにこだわる》《厳密にルールを守ろうとする》《相手の反応や状況を察するのが難しい》。書かれている発達障害の一つ、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴が、ぴったりと男性に当てはまったと感じた。

 ある日、店員の間で共通の知人女性が話題にのぼった。女性は会話のキャッチボールができず、意思疎通をすることが困難という。男性が女性についてこう話していたのを聞き、星野さんは驚いた。

 「あの人は発達障害で、僕たち普通の人間とはちがうんです」。男性は、自身が発達障害かもしれないという自覚はなかった。


 平成28年の厚生労働省の調査によると、全国で医師から発達障害と診断された人は48万1000人(推計値)。このうち成人は、およそ半数の24万3000人にのぼる。

 企業研修を手がける「カレイドソリューションズ」(東京都新宿区)が、企業の人事担当者を対象に今年5月に行った意識調査では、9割以上が「職場などで発達障害のある人と関わった経験がある」と回答。その一方、「従業員に対して発達障害のある人への対応などを学ぶ研修を行っている」と答えたのは、2割に満たなかった。

 同社代表の高橋興史(こうじ)さん(42)は「具体的に何をしたらいいのか分からない企業が多いのでは」と分析する。今後、専門のプログラムを研修に取り込むことを検討しており、「対応の仕方さえわかれば、職場の生産性は上がる」と語る。

 発達障害のある人はできないことや苦手なことが多く、業務への向き不向きも障害のない人に比べて大きい。円滑な職場づくりのためには周囲の理解とサポートが不可欠で、場合によっては配置換えなどを行う必要もあるという。

 ただ、必ずしもそうした方策を講じることのできる職場だけではない。星野さんはアルバイト店員の男性に対し、専門書から得た知識をもとに、どう接するかを考えた。仕事は一度に一つのことだけを頼み、柔軟さが求められるものについては他の人に任せるようにした。

 そうすると、男性ができることは限られ、他の店員へのしわ寄せは大きくなった。「1人の店員が複数の業務をこなさなければならないコンビニで、仕事をどう配分したらいいのだろうか」

 実は男性に限らず、発達障害と思われる店員はこれまでも複数いた。注意しても同じミスを繰り返す人や、ささいなことでパニックになる人。そうした人たちがコンビニで働く場合、どんな仕事をしてもらうのがいいのか。

 星野さんはいまも答えを導き出せない。「本人が障害を自覚していたら適性に合った職業選択もできるし、周りも配慮できる。でも、自覚がない場合、臨機応変な対応が求められる職場では、お互いに困惑するだけなんです」

 大人の発達障害 生まれつき、脳機能の発達が偏ることで生じる発達障害は、幼少期に適切な療育を受けることが望ましいが、程度が比較的軽く知的水準が高い場合は、「性格や個性の問題だ」などと誤解されて社会人になるまで見過ごされるケースが少なくない。

 近年、発達障害の認知度の高まりに伴って受診する大人も増えている。平成28年には発達障害者支援法が改正され、それまで主に子供を対象に行われてきた支援をすべての世代が受けられるよう内容が充実された。

 大人の場合、仕事を先延ばしにする傾向があったり、金銭や時間の管理が苦手だったり、交通事故を起こしやすかったりするなどさまざまな症状がある。さらに、鬱病やアルコール依存症、パーソナリティー障害などを合併し、より症状が複雑化する場合もある。




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