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河井案里氏、議員辞職に込められた「ある思惑」(2021年2月5日配信『東洋経済オンライン』)

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議員辞職した河井案里議員。写真は2020年5月の参議院(撮影:つのだよしお/アフロ)

 2019年参院選における巨額買収事件で有罪判決を受けた参院議員の河井案里被告(自民党を離党)が2月3日、議員辞職した。

 案里被告は、2020年6月に同事件で逮捕・起訴された夫で元法相の河井克行被告(自民離党・公判中)とともに、その後の公判で無罪を主張してきた。2020年10月の保釈後も雲隠れしたまま議員活動もせず、「歳費泥棒」と批判されて与党内からも議員辞職を求める声が強まっていた。

■4月25日の統一補選に込められた思惑

 折しも、与党4議員による「銀座の夜遊び」が発覚して、議員辞職や離党に追い込まれたばかり。案里被告の議員辞職には、政権運営への打撃を恐れる菅義偉首相や自民党の二階俊博幹事長の意向も影響したとみられている。

 案里被告の辞職により、4月25日の衆参統一補欠選挙の1つとして参院広島選挙区の補選が実施される。同統一補選では、「鶏卵」汚職に問われた吉川貴盛元農水相(自民離党)の議員辞職に伴う衆院北海道2区と、立憲民主党参院幹事長だった羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う参院長野選挙区の実施が決まっていた。

 これにより4月25日の補選は現時点では3選挙区となるが、自民党はすでに北海道2区の不戦敗を決めている。候補者を擁立している参院長野は「羽田氏の弔い選挙なので勝ち目はない」(地元県連)との見方が支配的だ。

 これに対し、2人区の参院広島は残る現職が立憲民主党所属議員で、「改選をにらむと野党は強力な候補を出しにくく、自民党に勝機がある」(自民選対)とみられている。そのため、統一補選全敗を回避したい自民党の思惑が、案里被告辞職の背景にあるとみられている。

 東京地裁は1月21日、案里被告に懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。これを受けて案里被告は3日午後、山東昭子参院議長宛てに辞職願を提出、同日夕刻の参院本会議で許可された。控訴断念で案里被告の刑も確定した。

 案里被告は3日、「判決内容は納得できないが、政治家として情けなく、政治的責任を引き受けるべきだと考えた」とのコメントを発表した。案里被告は克行被告とともに、東京地検特捜部に逮捕される前日の2020年6月17日に離党。同年8月に始まった一審では無罪を主張して争ってきた。

■「4月総選挙論」の可能性はほぼゼロに

 判決によると、案里被告は2019年3~5月、河井克行被告と共謀し、広島県議4人に現金計160万円を配った。判決は、いずれの県議も案里被告を応援しており、政治資金の処理に必要となる領収書もないことから、現金の趣旨は買収だったと認定した。

 案里被告の辞職に対し、地元の有権者からは「遅すぎる」との声が相次ぎ、ネット上では「受け取った歳費を返せ」などの書き込みがあふれた。

 菅首相は3日夕、「政治に批判が広がっていることを重く受け止めている」と淡々とした表情でコメント。案里被告の後見人とされる二階幹事長は「このような事態に至ったことは誠に残念なことであり、私どもも改めて自らを律するとともに、国民の信頼回復に努めてまいりたい」と苦々し気な表情で語った。

 4月25日の3補選は菅首相にとって就任後初の国政選挙となる。すでに、衆参2補選が決まった段階で、下村博文政調会長が「ダブルで負ければ政局になる」と発言。「政局になるはずがない」と怒った二階幹事長への謝罪と釈明に追われるなど、自民党内は補選の情勢にピリピリしている。

 自民党内では、2補選の実施が決まった2020年末の段階で「状況次第では新年度予算成立後の3月末か4月初旬に菅首相が解散を断行して、補選を吸収する」との戦略も取りざたされた。しかし、1月7日の緊急事態宣言の再発令で4月総選挙論は一気に下火となり、今回の宣言延長で「可能性はほぼゼロ」(自民幹部)となった。

 4月25日の補選は、その時点でのコロナ感染状況や東京五輪開催の可否などによって有権者の反応も変わるとみられる。ただ、ここにきて地方選挙で自民党の惨敗や取りこぼしが相次いでいる。3補選が全敗となれば、10月までに実施される次期衆院選に向けて、自民党内で「菅首相では選挙を戦えない」として「菅おろし」の声が噴き出す可能性もある。

 もし圧倒的な保守地盤の広島補選で自民が勝てば、「1勝1敗1不戦敗でダメージは半減する」(自民幹部)との読みもある。すでに自民広島県連は地元の有力経済人か地元出身のキャリア官僚の擁立に向けて調整を進めている。「保守地盤だから与党が固まれば負けない」との見方が多い。

■浮上した「ウルトラCの秘策」

 ただ、次期衆院選での政権交代を目指す立憲民主など主要野党にとって、「4月25日の補選に全勝すれば、一気に勢いがつく」(立憲民主幹部)のは間違いない。このため、「4年後の改選など考えず、野党統一候補で勝ちにいくべきだ」(同)との声も相次ぐ。

 対する自民党も「公明党とも連携して。万全の選挙態勢で臨まないと、足をすくわれる」(選対幹部)と不安を隠せない。

 そこで、与党内の一部に「ウルトラCの秘策」(自民選対)として浮上しているのが、克行被告の議員辞職による広島3区での補選実施だ。同被告の公判は途中で案里被告と別になり、東京地裁の判決は3月末以降になる可能性がある。広島3区を4月25日の補選に加えるためには、3月15日までに克行被告が議員辞職することが必要だ。

 克行被告はこれまでの公判で徹底抗戦の姿勢を続けており、「議員辞職の気配はまったくない」(被告周辺)とされる。克行被告はもともと菅首相の側近で、辞職した案里被告は二階幹事長の率いる二階派の特別会員だった。そのため、「菅首相や二階幹事長が秘かに圧力をかければ、克行被告も辞職を受け入れるのでは」(自民幹部)との指摘もある。

 「広島3区の特殊な選挙事情」(自民県連)もある。克行被告の離党に伴い、地元では与党としての後任候補擁立で調整が進んでおり、「いつでも臨戦態勢がとれる」(自民選対)からだ。

 広島3区では、公明党が斉藤鉄夫副代表の擁立を決定。自民県連が公募で石橋林太郎県議の擁立を決めて与党内調整が続いていたが、2月5日に二階幹事長の裁定により、斉藤氏への一本化が決まる見通しだ。石橋氏は中国ブロックの単独比例1位で出馬する方向だ。

 立憲など主要野党も同区に野党統一候補を擁立する構えで、与野党全面対決の構図となるのは確実だ。ただ、広島は保守地盤が強く、「危機感の強さで自公が一体となって戦えば負けない」(自民幹部)との声が多い。仮に克行氏が議員辞職して4補選となり、結果的に自民と野党の2勝2敗となれば、「菅首相や二階幹事長の責任論も出ず、政権危機も避けられる」(同)との思惑もある。

■首相長男のスキャンダルも浮上

 ただ、こうした「あからさまな党利党略」(立憲民主幹部)が透けて見えれば、有権者の反発を買って「かえって与党が傷口を広げる」(同)可能性もある。

 衆院予算委員会では4日から新年度予算案の審議が始まった。野党側はコロナ対応の迷走だけでなく、案里、克行両被告の買収事件や与党で相次ぐ政治スキャンダルの追及に全力を挙げる構えだ。

 3日夕刻には『週刊文春』が電子版で菅首相の長男にまつわる疑惑を速報した。4日発売の本誌は「総務省の谷脇康彦総務審議官ら幹部4人が昨年、衛星放送などを手がける会社勤務の菅首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する可能性のある接待を受けた」と報じている。

 菅首相は3日夜、記者団に「まったく承知していない。総務省で適切に対応されると思う」と必死に平静を装った。今後、総務省幹部の処分問題に発展する可能性は大きいとみられている。

 4日の衆院予算委員会で野党から追及された菅首相は、長男と電話で話したことを明らかにしたが、「長男は一民間人でプライバシーもある」と詳しい説明は避けた。そして、「国民に疑念を抱かせないよう総務省でルールにのっとって対応してほしい」と繰り返したが、事実関係でちぐはぐな答弁も目立った。

 まさに「菅首相自身も火だるま状態」(自民幹部)で、「二階幹事長とともに統一補選まで求心力を維持できるかどうかも微妙」(自民長老)になりつつある。政局混迷の中で4月の補選に突入すれば、「与党の小細工など通用せず、本物の政局になる」(選挙アナリスト)との声も広がっている。

泉 宏 :政治ジャーナリスト




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