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(論)総務省接待 (2021年2月5・6・7・8・9・10・13・14・・17・18・19・20・21・22・23・24・25・26・27・28・3月2・3・4・5・6・7・8・9・10・12・13・14・15・16・17・18・19・20・21・2・25・27日・4月3日)

地方自治体の職員が食糧費を使って中央官僚…(2021年4月3日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 地方自治体の職員が食糧費を使って中央官僚らをもてなす。「官官接待」が全国で問題になったのは四半世紀前。宮城県庁では食糧費を使った懇談会が実際には開かれていなかったり、カラ出張で裏金が作られたりしていた

▼「あしき慣習」として県政史に汚点を残した。湯水のように使われた血税は利子分も含め約9億円。県は管理職全員による返済を1996年に始め、終わったのは2003年だった。実に77カ月もかかった

▼自民党幹部が「これで総務省の接待問題は幕引きだ」と言ったという。2021年度予算が成立し、国会論戦がヤマを越えたからだ。官僚たちは平気でうそをつき、ばれたら「記憶にない」とごまかした。省を率いる大臣は審議中、幹部に「記憶にないと言え」と指示した疑いを持たれた

▼「食糧費の使途の実態を明らかにする。これは相談ではなく指示だ」。不正支出に揺れた宮城県で当時の浅野史郎知事は幹部に命じた。当然の判断で返済をたたえるつもりはない。それでも納税者への最低限の筋を通したように映る

▼浅野氏の語録からもう一つ。「役所の常識は、世の中の非常識」。菅義偉首相の長男正剛氏の関与を中心に「菅官接待」への疑問は置き去りにされた。巨大官庁は「常識」を押し通すつもりだろうか。





総務省の疑惑 国会はさらなる究明を(2021年3月27日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政府の新年度予算が成立し、通常国会は後半に入った。

 これまでの論戦では、菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が勤める東北新社やNTTによる総務省幹部の接待問題が焦点になった。

 東北新社を巡っては、同社が外資規制違反に気づき、衛星放送事業の子会社への承継を総務省に提案したとする時期に同省へ提出した関係書類が明らかになった。

 外資規制違反を「認識していなかった」との総務省の主張に疑義が生じている。違法状態を黙認して認可したのではないか。

 東北新社からの接待は事業承継の前後に繰り返されている。

 総務相経験者で総務省に強い影響力を持つ首相への忖度(そんたく)が働き、接待によって行政がゆがめられた可能性はないのか。国会は引き続き徹底究明する必要がある。

 総務省は東北新社の外資規制違反で、子会社が承継した衛星放送事業の認可を5月1日付で取り消すと発表した。問題はいつ違反を認識したかである。

 新たに判明した書類は2種類あり、当初は東北新社が別の3社から衛星放送事業を承継する内容だった。その後、東北新社を含む4社から同社の子会社へ承継する内容に変更された。

 明らかに不自然な変更にもかかわらず、総務省の担当者は理由を尋ねなかったのだろうか。

 厳格な審査が求められるのに、問いたださなかったとすれば怠慢と言うほかない。

 東北新社は外資規制違反について、2017年8月に当時の幹部が総務省情報流通行政局総務課長だった鈴木信也電波部長に面会して報告したと説明する。

 ところが、鈴木氏は国会で「記憶は全くない」と繰り返している。しかも、鈴木氏が答弁しようとした時に、武田良太総務相が「記憶がない」と発言し、野党側は答弁を指示したと追及した。

 武田氏は指図するつもりはなかったと釈明するが、本人の意思と異なる答弁を強要したとみられても仕方がない。

 武田氏は昨年11月にNTTの澤田純社長と会食していたことが判明した。他に出席者がおり、澤田氏と業務に関わる話はしなかったと主張する。

 だが、同社がNTTドコモの完全子会社化を進め、政権の看板政策の携帯電話料金引き下げに関心が集まっていた時期と重なる。

 襟を正さなければならない立場であり、国民が疑いの目を向けるのは当然といえよう。





武田総務相の国会発言 不真面目にもほどがある(2021年3月25日配信『毎日新聞』)

 放送事業会社「東北新社」の外資規制違反に関する国会審議で、武田良太総務相が総務省幹部に明確な答弁を控えるよう指示した疑いが浮上した。

 この問題では、規制違反に気づいた同社の担当者が総務省にその事実を報告していたかどうかが焦点になっている。

 野党議員が衆院予算委員会で、報告の有無を同省幹部に確認した際、武田氏は閣僚席から「記憶がない」という言葉を発した。幹部はその後、「記憶にございません」との答弁を繰り返した。

 武田氏は、答弁について指図や命令をすることはないと釈明した。だが、省庁のトップが部下を目の前にして言葉を放てば、指示と受け止めるのが普通だ。「なぜか、無意識というのか口に出た」という説明では納得は得られない。

 東北新社が規制違反を報告していれば、総務省が違法状態を見過ごしたことになる。双方の言い分は食い違っているが、武田氏の態度は真相究明に背を向けているとみられても仕方がないだろう。

 NTTによる接待問題でも、不真面目な国会対応が続いている。

 社長との会食の有無について、「国民の疑念を招くような会合、会食に応じることはない」と繰り返し、回答を1週間避け続けた。一転して会食を認めたのは、週刊文春が報じてからだ。

 大臣規範は、関係業者からの供応接待など「国民の疑惑を招くような行為」を禁じている。抵触しないのなら、最初から会食を認めて説明すれば済んだ話だ。

 質問に正面から答えず、報じられると認めるという一連の対応が、国民の疑念や政治不信を増幅させているのではないか。

 会食があった昨年11月は、NTTがドコモの完全子会社化を進め、携帯電話料金の引き下げを巡る対応も注目されていた時期だ。

 武田氏は、別の経済人に誘われて参加した会食であり、社長がいることは知らなかったと弁明している。だが、他の出席者も把握せずに参加したという説明はあまりにも不自然だ。

 疑惑の目が向けられている組織のトップであることを、武田氏は自覚すべきだ。国会を軽んじる姿勢を改めなければ、信頼回復はおぼつかない。





会食の心得(2021年3月24日配信『新聞』-「明窓」)

 ある町長が議会で「ここにいる議員の半数は勉強していない」と述べた。これに対し「失礼ではないか」と町議たちに発言の撤回を求められた町長は、「ここにいる半数の議員はよく勉強している」と再答弁した

▼よく聞くと、発言を訂正しているようで全くしていない。話の表と裏を入れ替えたような言葉のマジックに町議たちはけむに巻かれたようで、互いに顔を見合わせた

▼同じ意味でも言い回しによって印象ががらりと変わる例え話である。鳥取大でデータ分析などを研究している桑野将司教授から聞いた講義をヒントに敷衍(ふえん)してみた。桑野教授によると、この手のレトリック(表現の仕方)による罠はアンケート調査などで多用されている

▼語順効果もその一つ。ビジネスなどに利用されるアンケートの質問では、後に来る文言ほど回答者の印象に強く残る。「値段は高いが、性能は良い」と説明されれば性能に、「性能はイマイチだが、値段は安い」と売り込まれると値段の方に消費者の関心は向けられる傾向があるという

▼語順効果を意識してかどうか「会食はしたが、やましいことはしていない」と、総務省幹部への接待問題を巡る国会質疑で繰り返された答弁。会食の負のイメージを「やましいことはしていない」と潔白の言葉で上書きして打ち消そうとする。そんな釈明に追われる前に、「李下(りか)に冠を正さない」会食の心得を学ぶべし。





ウミウシの自切(2021年3月22日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 潮が引いた浜辺などに見られるウミウシの一種、コノハミドリガイは変わった「特技」を持つ。頭より下の体を自分で切り取って、やがて心臓を含め大部分を再生できるのだ

▼奈良女子大の大学院生と教授が発見した。産卵を抑制する寄生者を排除するためと考えられている。頭部が活発に動き回って餌を食べ、約3週間で元通りに。なかなかのしたたか者である。研究成果は今月、米科学誌で紹介された

▼切ってもまた生えてくるといえば、これまではトカゲのしっぽだった。「桜を見る会」疑惑で、安倍晋三前首相の公設第1秘書が略式起訴され、安倍氏自身は不起訴となった際に、この言葉が人々の口の端に上った

▼しっぽどころか、体の大事な部分をも切り捨てて再生しようとするのは「ウミウシの自切(じせつ)」に例えられようか。総務省の中枢を担い、菅義偉首相の「懐刀」と言われた前総務審議官の辞職はそれを思わせる

▼求められるのは、首相の長男が勤める放送事業会社からの接待に甘んじてきた組織体の一新だ。武田良太総務相は「私自ら先頭に立ち、国民の信頼回復に努める」と省の再生へ動き回るが、自身もNTT社長との会食を認め、改革の行方は心もとない

▼ウミウシの別名「雨虎(あめふらし)」は春の季語でもある。<雨虎甘言の世に在りつづく>(中尾寿美子)。なにやら、権力者への忖度(そんたく)がはびこる今の世を暗示するような一句である。





「私のポリシー 会食は断らない、でも払わない-某広報官」(2021年3月21日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 「役人の幹部モグモグよく覚え-令和川柳」。本紙窓欄に人気の投稿コーナー「ワンショット」がある。2月初めに総務省の接待問題が発覚してから、膝を打つような力作が続々と寄せられている

▼「秀作ぞろいで選ぶのが大変」。担当者泣かせの日々である。「役人の子はにぎにぎをよく覚え」。江戸川柳で有名な句だ。「令和川柳」はそれを見事にもじってみせた。「にぎにぎ」が賄賂なら「モグモグ」は会食接待だ

▼国家公務員倫理規程では、利害関係者との会食は、割り勘でも1万円を超えれば、事前届け出がいる。なのに7万円を超す酒池肉林のような接待を、当時の総務審議官で前内閣広報官は放送事業会社からただで受けていた。しかも首相長男が同席だ

▼「飲み会を絶対に断らない女」。この人は若者向けの動画でこう自己紹介し、プロの心得を指南していた。そこでワンショットが一撃。「私のポリシー 会食は断らない、でも払わない-某広報官」。一連の接待は延べ39回あり、11人の省幹部が処分された。問題究明の途中に今度はNTT接待が急浮上する

▼次官候補と目されていた省のエースは接待まみれで辞職した。閣僚を含め接待疑惑は底なしの様相だ。前政権では「森友」「加計」「桜」…。現政権が引き継ぐのは身内の不祥事ばかりなのか

▼情けない政権リレーには「お互い家族には苦労します-安倍前首相」とワンショット。強きをくじき、ニヤリとさせる。本紙自慢の言葉の狙撃手は虎視眈々(たんたん)と狙っている。





官僚の接待/倫理法見直し新たな規範を(2021年3月20日配信『河北新報』-「社説」)

 総務省の接待問題を巡り、NTTの社長と東北新社の社長が国会に呼ばれ、会食の事実を認めた。

 接待攻勢によって、行政の政策決定がゆがめられたかという核心部分は明らかにされなかった。

 実態解明には程遠く、この問題に早くけりをつけたい政権の影もちらつく。

 東北新社の外資規制違反について「違法性を報告した」とする会社側と「記憶にない」を繰り返す総務省との間で食い違いも生じている。

 疑念はさらに深まった。第三者委員会の徹底した調査を求めたい。

 そもそも端緒となったのは、利害関係者からの接待供応を禁ずる国家公務員倫理法の絡みだった。

 法令と規程は金品の授受を禁止し、割り勘でも自己負担分が1万円を超えるケースでは事前の届け出を義務付けている。

 どこまで利害関係者なのかを含め、運用に当たって、線引きの分かりにくさを指摘する声は以前からあった。

 NTTの澤田純社長は参考人質疑で「倫理法上の問題はないと安易に考えていた。認識が甘かった」と証言した。 事態改善の司令塔になるべき武田良太総務相は「疑念を招くような会食に応じたことはない」と、大臣規範についてけむに巻くだけの答弁に終始した。

 すっかり形骸化していたことを示す発言だ。抜け道と思われる事例も、ぞろぞろと出てきた。

 辞職した谷脇康彦前総務審議官は、NTTから示された5000円を会費として支払い、法に抵触しないと思ったと説明した。

 一般の感覚とのずれはすさまじく、もはや現行法に代わる新たなルールに基づく倫理規範を作るしかない。

 まず、利害関係者からの接待は受けないこと。情報交換や要望のヒアリングは日中に役所で行う。

 これまでも夜の席ではなく、白昼に片付けてはという声はあった。

 夜だと、おしなべて高級店を用意するから、役人は支払わずに業者の交際費で飲み食いすることになる。

 しかし、日中は翌日の国会の答弁書作りや法案作成に追われ、時間を割けないなどを理由に改善されなかった。

 働き方改革の出番だろう。ゆっくり答弁書を準備できるように、国会議員も協力し、早めに質問を通告する仕組みにしてはどうか。
 与党への説明にITを活用し、効率化を進めてもいい。会食を伴う交流になった場合、文書に記録し、開示する透明化も一手だろう。

 他方で政策を立てる時に、業界事情や課題を知るのは重要である。行き過ぎた制限は活発な議論の場を奪う。

 明確なルールの制定と意識向上の双方を推し進めて国民の理解を得るほかない。



故ケネディ米大統領に仕えた閣僚たちはかつ…(2021年3月20日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 故ケネディ米大統領に仕えた閣僚たちはかつてこう呼ばれた。「ベスト・アンド・ブライテスト」。最良にして最も聡明(そうめい)なというほどの意味で、わが国の高級官僚の優秀さを表す代名詞にもなった

▼その栄光は見る影もない。総務省を舞台にした幹部接待問題はもはや泥沼の様相。要領を得ない国会答弁を繰り返して失笑を買うわ、出世競争のトップランナーがあえなく途中棄権するわ。ついつい代名詞の対義語を探してしまう

▼接待の目的は意見交換だという。だが、官にお座敷がかかるのは許認可という生殺与奪の権を握っていればこそ。まして最高権力者の寵愛(ちょうあい)を一手に受ける重臣が接待相手とあっては、粗相は禁物だったろう

▼『タテ社会の人間関係』の著者で社会人類学者の中根千枝さんが書いている。「保護は依存によって応えられ、温情は忠誠によって応えられる」。おらが会社の安寧を接待という依存で、官僚としての栄達を忖度(そんたく)という忠誠で保全しようとする行動原理が国の土台をむしばむ

▼それにしても魚心と水心が交錯する宴席は双方、気骨(きぼね)が折れたことだろう。「国民全体の奉仕者」たるべく青雲の志を抱いて入省したはずの官吏が、いつの間にか個別の奉仕者に成り下がる。気骨(きこつ)を折ってしまうのはなぜか。重い問いが残る。





総務相への接待 疑惑招かぬという詭弁(2021年3月20日配信『東京新聞』-「社説」)

 武田良太総務相が澤田純NTT社長らとの会食を認めた。大臣規範は関係業者との接触に当たり、供応接待を受けることを禁じている。国民の疑惑を招かないと強弁するのは詭弁(きべん)ではないのか。

 武田氏はこれまでの国会質疑で「国民が疑念を抱くような会食、会合に応じたことはない」と繰り返し、NTT側との会食の有無については明言を避けてきたが、週刊文春の報道後、一転して昨年11月、都内のホテルで澤田氏と葛西敬之JR東海名誉会長、遠藤典子NTTドコモ独立社外取締役と会食したことを認めた。

 武田氏は事実確認のために、国会での貴重な審議時間を浪費させたことになる。猛省を促したい。

 武田氏によると滞在は1時間以内で食事は取らず、ビールを2、3杯飲み1万円を支払った。要望や依頼は受けていない、という。

 会食当時はNTTがドコモの完全子会社化に向けた株式公開買い付け(TOB)を実施中で、菅義偉首相が推進する携帯電話料金の引き下げを巡るドコモの対応が注目されていた時期でもある。

 大臣規範は関係業者との接触に当たり、国民の疑惑を招くような行為をしてはならないと定め、例示として供応接待や贈り物、便宜供与を受けることを挙げる。

 通信行政の責任者である総務相が関係業者の社長と会食するのは短時間でも厳に慎むべきだった。厳しく身を処さねばならない。
 NTTによる接待問題では自民党の野田聖子、高市早苗両氏が総務相在任中に社長らと会食したことを認めた。武田氏と同様「疑惑を持たれるような会合ではない」と強調するが、疑惑を招くかどうか決めるのは会食した大臣の側でなく、国民の側だ。会食した本人たちがいくら「疑惑を招かない」と主張しても説得力に乏しい。

 総務省は第三者委員会の「情報通信行政検証委員会」を設け、NTTや放送事業会社「東北新社」による同省幹部への一連の接待が行政に影響を与えたか否かに関する検証を始めた。歴代の総務相や副大臣、政務官の政務三役からも聞き取る方向だという。

 利害関係者と政権中枢との関係の近さや、会食接待などにより、行政の公平、公正性が損なわれることがあっては断じてならない。

 国政調査権や行政監視機能を有する国会とも連携しつつ、事実関係を徹底的に究明し、法令違反があれば厳しく処断すべきだ。国民から疑惑を招かぬよう、政治家が自ら身を律するのは当然である。



[武田総務相の答弁]国会軽視の度が過ぎる(2021年3月20日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 あまりに不誠実で国会を軽視した発言である。

 一連の総務省接待問題で、新たに武田良太総務相が国会で「記憶がないと言え」と幹部に指示した疑いが浮上している。

 放送事業会社「東北新社」の外資規制違反を巡る審議で、立憲民主党が映像分析から武田氏による答弁指示の疑いを指摘。幹部は指示を受けたとされる直後「記憶はございません」と答弁していた。

 武田氏は18日の衆院総務委員会で、発言は認めたものの答弁指示の意図は否定した。19日の参院予算委員会では「誤解を与えたのであれば申し訳ない」と謝罪している。だが、部下に対するこの発言が指示でないとしたらどのような意味か。国民に分かる説明を一切行っていない。

 接待問題に関する武田氏の不誠実な国会答弁はこれだけにとどまらない。

 NTTが総務相経験者ら政治家も接待していたことが明らかになり、国会で会食の有無をただされた武田氏は、会食を認める18日までの1週間「国民の疑念を招くような会食や会合に応じることはない」と繰り返し、回答を避けた。答弁拒否との野党抗議に自民党側も「同感だ」と言わざるを得ないほどだった。

 「文春オンライン」の報道を受け一転、昨年11月の会食を認めた後も「出席者から特定の許認可に関する要望、依頼を受けたことはない」と答弁。関係業者からの供応接待を禁じる大臣規範に抵触しないと主張した。ただし、抵触するかどうか判断するのは国民の側であって、規制を受ける側の政治家本人ではない。

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 大臣規範は2001年の省庁再編の際、「政治主導」の名の下に各省庁の役職に就く政治家が大幅に増えたことに伴い閣議決定された。関係業者との接触の際は「供応接待を受けること」で「国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と定める。

 一方で公務員倫理規程などと異なり費用負担や例外などの具体的な規定を欠き、罰則もない。政治家の良心に任されている部分が大きいのだ。岡田直樹官房副長官は18日の記者会見で「政治活動の一環として、企業の方々と意見交換するのはあり得る」と、会食した武田氏を擁護する姿勢を示した。

 ただ、意見交換に酒食が伴う必然性はないし、まっとうな政治活動であれば、武田氏のように報道後ようやく認める必要もないはずだ。一連の対応そのものが「国民の疑惑を招く」結果になっている。

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 この間の答弁を巡り、ツイッター上では「もう政府の国会答弁を誰も信用しないだろう」「疑念を招く会食そのもの」「虚偽答弁が当たり前になっている」などと非難する投稿が相次いでいる。

 総務省は今、菅義偉首相の長男が勤める東北新社やNTTによる官僚への接待という不祥事で揺れている。そのトップである武田氏がさらに不誠実な国会答弁を重ね、国民の不信と疑惑を増幅させた責任は極めて重い。収拾への指導力発揮どころか事態の悪化を招いた武田氏は、職を辞して政治責任を取るべきだ。





しらを切る(2021年3月19日配信『高知新聞』-「小社会」)

 しらを切る―。知っているのに知らないふりをする、しらばくれる意と広辞苑にある。頭に浮かんだのは、ご存じ夏目漱石「坊っちゃん」の一節だ。
 
 松山の中学校に赴任して間もなく、宿直当番の夜。ふとんに入ると数十匹のイナゴが飛び出してきた。手荒く迎える生徒のいたずらだが、寄宿生たちはとぼけている。坊っちゃんは〈証拠さへ挙がらなければ、しらを切る積(つも)りで図太(ずぶと)く構へて居やがる〉と憤る。
 
 こちらも証拠さえ挙がらなければ、しらを切り通す腹だったのだろうか。NTT側との会食の有無を国会で問われ続けていた武田良太総務相がきのう、社長と会食した事実を認めた。週刊誌に同席者の証言を報じられ、ようやく説明に転じた形になる。
 
 総務相が呪文のように繰り返してきた国会答弁も違和感がある。「国民の疑念を招くような会食に応じたことはない」。疑念を持つかどうかは本人ではなく、説明を聞いた上で国民が判断することだろう。強弁、すり替え、はぐらかし。国会軽視という前政権の「負の遺産」を思う。
 
 それにしても証拠を突きつけられないと答えない、国会の劣化した風景が気になる。音声が出てくるまで官僚が記憶を失っていた放送業界の話題、NTTとの会食…。週刊誌が報じるたびに一つ、また一つ。
 
 時間を浪費せぬよう、国権の最高機関では誠実に願いたい。詰問にしらばくれる明治期の中学生ではないのだから。
 


国民の側の常識(2021年3月19日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 右か左か、どちらかを選べと言われたとする。どちらへ進んでも、ひどい目に遭うことは分かっている。しかし選ばないことは許されない。こんな難題を突きつけられた時、どうやって切り抜ければよいのか

▼答えを探しての答弁だったと思われる。NTTの澤田社長と会食したかどうかを国会で問われ、「国民の疑念を招くような会食や会合に応じることはない」とオウムのように繰り返してきた武田良太総務相である

▼とうとう週刊誌に会食していた事実を報じられ、認めざるを得なくなった。国民のだれもが「やっぱり」と思ったのではないか。「個別の事案については答えを差し控える」とも言ってきたが、会食していたために答えられなかったのである

▼会場とされる都内ホテルの日本料理店のメニューは、一見の価値がある。一番高価な特別会席というコースは、ひとり4万2350円だとか。身近なところではちょっとお目にかかったことがない。一度訪ねてみたいもの、もちろん見学だけだが

▼会食を認めた武田大臣の言い分は「ビール2、3杯程度いただき退席した」「1万円を支払っている」だった。詮索も過ぎるとこちらの身が卑しく思えてしまうが、官民双方の費用はどこから出たのだろう。職務上必要な会談だったと言うのなら、やはり役員らが同席したJR東海やNTTの経費か。大臣の分はどうだろう

▼大臣の言うように「国民の疑念を招いていない」かどうか。判断するのは会食した本人ではなく、国民の側の常識である。





黒沢明監督の名が世界に知れ渡るきっかけと…(2021年3月18日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 黒沢明監督の名が世界に知れ渡るきっかけとなったのは、1951年、前年に日本で公開された『羅生門』がベネチア国際映画祭でグランプリに当たる金獅子賞を受賞したことだった。翌52年には米アカデミー賞の名誉賞にも輝いた

▼平安時代の京の都を舞台に、侍の死体を巡り、盗賊と侍の妻、侍の霊がそれぞれの言い分を述べる。侍を殺したのは盗賊か。それとも妻か。あるいは自殺か。3人の証言は食い違うが、いずれもうそをついていることが、一部始終を目撃していた杣(そま)売りによって明かされる

▼映画のように複雑ではないものの、こちらの真偽はどうなのだろう。放送事業会社「東北新社」の外国資本規制違反の処理を巡って、同社と総務省の説明が真っ向から対立している

▼「子会社への事業承継を提案した」と東北新社社長。一方、報告相手とされる幹部は「記憶にない」を繰り返す。どちらかがうそをついているのか。それとも、2人とも本当のことを隠しているのか。社長の話の方が詳細で真に迫っているようにも思える

▼総務省は、この問題を第三者委員会で検証する。映画は芥川龍之介の短編小説2作が原作で、その一つは『藪の中』。まさか、説明の食い違いをそのままに、「真相はやぶの中」と結論づけることはあるまい。



肝心なところははぐらかす(2021年3月18日配信『神戸新聞』-「正平調」)

「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)」は平安時代の歌謡集である。「このごろ京(みやこ)にはやるもの」で始まるのは、よく知られたその一つだ。もじって国会版をつくってみる

◆このごろ都にはやるもの、問うて返るは、「記憶にない」やら「控えさせていただきます」やら、接待ありやとただしてみれば、「疑念を招くような会食に応じたことはない」、知らぬ言えぬでほおかぶり

◆総務省幹部らの接待問題である。肝心なところははぐらかす。シェークスピアの「ハムレット」に、「言葉は宙を舞い、思いは地に残る」というせりふがある。永田町も言葉は舞う。そして、疑いが地に残る

◆1976年の国会が重なってくる。政界を揺るがせたロッキード事件である。国会の証人喚問に応じた渦中の人物が、ぶっきらぼうに連発したのは「記憶がありません」だった。野党の追及はむなしく空を切った

◆2度、3度と首を振り続ければ逃げきれる。これを機に、悪弊が永田町にすみついたのかもしれない。宴席がまつりごとをゆがめたのでは、という大事な問題だ。「記憶にない」の連鎖をどこかで断たないと

◆ことは国会で終わらない。何かと「忘れました」で言い逃れる若者がいるのは証人喚問が手本と、ある作家が当時の本紙で嘆いていた。国会の罪は重い。




飲食から見えるもの(2021年3月18日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 その家のメニューを完全に考えることができたら、そのドラマはうまく書けると思った。そう言うほど食事のシーンを大切にした。今年没後40年の脚本家・作家向田邦子さん

▲大ヒットしたホームドラマ「寺内貫太郎一家」はテロップでメニューまで出した。「何を食べるかで、いきいきとした暮らしぶりが出るのよ」。味わいある作品のミソを「お茶をどうぞ 向田邦子対談集」(河出文庫)で見つけた気がした

キャプチャ

▲こちらの飲食シーンは国民の目にどう映っているか。1人1回7万円超えもある。NTTや東北新社による総務省幹部接待問題である。放送、通信行政がゆがめられたのではないかとの疑念が深まっている

▲武田良太総務相がNTT社長らと会食していた可能性が高いことがきのう分かった。これまで武田氏は国会でNTT側との会食の有無を聞かれても「疑念を招くような会食に応じることはない」と同じせりふを繰り返し、正面から答えなかった。問題になっている組織のトップとして真相を明らかにする姿勢に疑問符がつく

▲官僚は「記憶にない」と答弁する。疑惑や問題が取り沙汰されるたび目にしてきたシーンは今回も

▲許認可など政策への接待の影響を検証する第三者委員会は総務相ら歴代政務三役や、接待を受けて退職した元幹部も聞き取り対象にする。関係者は自ら真相究明に尽くさなければならない。茶番劇は許さないと国民はじっと見ている。



ふに落ちないこと(2021年3月18日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 新聞を読んでいると「どうして?」とふに落ちないことがたまにある。詳細を知れば、大抵はなるほどと納得いくが、最初に感じた疑問の方が心に残る。例えば最近では、埼玉県の小学校給食で起きた珍事。

 皿うどんを食べた児童と教員の計7人の歯が欠けた。原因は麺の揚げすぎだが、そんなに硬くなるものか、と驚いた。乳歯が生え変わる時期の児童が多かったのも一因のようだ。それにしても、校長らが先に食べる検食では異常がなかったのか、と考えてしまう。

 大相撲の横綱白鵬関が途中休場したのも寝耳に水だった。負けが込んで休場する例はよく聞く。白鵬関は初日から2連勝しての休場だ。ただ昨年8月に手術した右膝の不調を聞くと、やむを得ない判断だったのだろう。ぼろぼろに負ける姿は見せないという意地も感じる。

 今、世間を騒がす最大の疑問は、総務省幹部への違法接待だろう。国会ではまたぞろ「記憶にございません」の連発で納得には程遠い。核心は放送・通信行政がゆがめられたかどうかだ。そもそも官僚と業者による夜の会食がコロナの自粛下でも続いていたこと自体、国民の感覚とかけ離れている。

 この時代に、まだそんな会食があるのかと驚きだ。官僚は所管でなくても業者との宴会を原則禁止にすべきではないか。情報交換や懇親は昼間に役所の会議室でできる。国会議員が率先して範を示していい。李下(りか)に冠を正さず。公職にある者は心得ていたい。





接待問題社長招致 深まる疑惑、証人喚問を(2021年3月17日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 一連の総務省接待問題を巡る疑惑はさらに深まったと言わざるを得ない。放送事業会社東北新社が放送法違反を認識し、子会社に衛星放送事業を引き継ぐことで解消しようとしていた疑いが浮上した。

 同社はこの案について同省課長に相談したという。しかし、この当時の課長は「記憶は全くない」と述べている。

 同社による接待はこの前後を含め延べ39件。うち21件に同社幹部だった菅義偉首相の長男正剛氏が出席していた。その結果、違反に関連して同省が便宜を図ったことはなかったのか。徹底解明しなければならない。

 鍵となるのは国会招致された中島信也社長の証言だ。同社は2017年8月、外資比率が放送法規制対象の20%を上回る違法状態にあると認識。数日後、幹部が同省課長に面会して伝え、解消のために子会社への事業承継を提案したという。

 その後、同社は受け皿となる子会社を設立して同年10月には承継手続きを終了。これを最終的に決裁したのが後に同社から1回7万円超の高額接待を受けていた当時の総務省局長、山田真貴子前内閣広報官だ。

 中島氏の証言は民間企業のトップが国会という公開の場で行ったものであり、極めて重い。証言内容の通りであれば、同省が脱法行為を後押ししたことにもなりかねない。

 同社の違反は今月に入って判明。同省は事業認定取り消し手続きに入ったが、4年以上も違法状態を放置したその責任は重大だ。同省は違反を知っていて黙認したのか。何らかの回避策を示唆したことはなかったのか。疑念はますます強まる。

 中島氏招致によって新たな疑惑が浮上したこと自体、同省主導の調査には限界があるということだ。国会には憲法62条に基づく国政調査権がある。偽証を罰することができるなど強制力を伴う証人喚問を通じ、徹底調査すべきではないのか。

 国会には、接待問題の渦中にある澤田純NTT社長も招致された。澤田氏は自身と幹部らによる接待を陳謝、一部の会食を認めた。ただし菅首相や武田良太総務相との会食の有無については「公開すると事業に影響がある」として明らかにしなかった。国会議員との会食の機会は与野党問わずにあるとした。

 澤田氏らの接待を受けた前総務審議官の谷脇康彦氏は停職処分を受け辞職、同省局長が減給となった。接待を受けた官僚が懲戒処分される一方、接待したとされる側が国会で個別、具体的に答えるのを避ける現状では疑いは深まらざるを得ない。

 同省接待問題では官僚だけではなく、政治家も対象になっていた疑いがある。利害関係者や関係業者による接待を通じ、行政がゆがめられるようなことは許されない。国会には国権の最高機関として、あらゆる手段を尽くして国民の前に事実関係を明らかにする責務がある。



総務省接待問題 多くの疑問が積み残しだ(2021年3月17日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 疑念はさらに深まったといえる。

 放送事業会社「東北新社」の外国資本規制違反が、総務省に見過ごされた問題である。

 菅義偉首相の長男正剛氏が勤務する同社は、総務省幹部を繰り返し接待し、正剛氏も同席していた。接待の見返りに違法状態を容認した疑いがある。

 衆参の予算委員会では、参考人として出席した中島信也社長と、総務省側の説明が対立した。

 中島社長の説明は具体的だ。2017年8月4日に放送法の外資規制違反を認識し、9日ごろに総務省の課長に報告。違反状態を解消するために子会社を設立し、問題の衛星放送事業を継承する案も提案したと説明している。

 これに対し、当時の課長はきのうの衆院予算委で「記憶は全くない」と述べ、日程管理の手帳やメモ、名刺などもないと説明した。ただし、総務省の面会記録などは明らかにしていない。

 外資規制違反が判明すれば、総務省はその時点で放送事業の認定を取り消す必要がある。

 中島社長の説明が正しければ、総務省は違法性を認識したまま、子会社への事業継承を認めたことになる。単純な事務的ミスとの釈明は成り立たない。

 子会社への事業継承を最終的に決裁したのは、当時情報流通行政局長だった山田真貴子・前内閣広報官だ。山田氏は19年11月に同社から高額接待を受けたことが分かっている。国会に証人喚問などで招致し、同社との関係や手続きの過程を明らかにすべきだ。

 菅首相の長男への忖度(そんたく)で公平、公正であるべき行政がゆがめられたのなら看過できない。総務省は元検事の弁護士ら第三者でつくる検証委員会をきょう発足させる。全員が外部委員で手法や対象も検証委に一任する方針という。厳正な調査を求める。

 NTT社長らが費用の大半を負担し、政務三役や総務官僚らと会食していた問題も、事実は明らかになっていない。澤田純社長は衆参予算委で業務の依頼は否定した上で「個別の会食については控える」として詳細を話さなかった。

 依頼はなかったとしても、接待自体に違法性も疑われる。検証委で詳しく調べるべきだ。

 東北新社とNTTから接待された谷脇康彦・前総務審議官は辞職願を出し、受理された。野党から「口封じではないか」との指摘も出た。全容解明には谷脇氏の証言が必要だ。退職後も国会や検証委の調査に協力するよう、総務省は強く要請しなくてはならない。



総務省接待問題 疑念は解消されぬままだ(2021年3月17日配信『新潟日報』-「社説」)

 過剰接待で、行政がゆがめられたことはなかったのか。接待をした業者側は依頼などを否定したが、問題の核心が明らかになったわけではない。

 疑念は解消されていない。接待問題を検証する第三者委員会は17日に初会合が開かれる。全容の徹底的かつ迅速な解明に向け、政府、国会は力を尽くさなければならない。

 総務省幹部への接待問題を巡り、国会でNTTの澤田純社長と放送事業会社「東北新社」の中島信也社長に対する参考人質疑が行われた。

 両社長はともに15日の参院予算委集中審議、16日の衆院予算委に出席した。

 澤田氏は接待問題について陳謝したものの、総務省幹部への接待や国会議員との会食を通じて業務関係の依頼をするなどしたことはないと明言した。

 総務省幹部への接待ではその時期などから、官房長官当時の菅義偉首相が言及した携帯電話料金引き下げやNTTドコモの完全子会社化との関連が取り沙汰されてきたが、否定した。

 ただ、NTTの接待や会食攻勢にはやはり驚かされる。庶民感覚とは懸け離れた高額で、総務省幹部だけでなく歴代総務相や副大臣にも及んでいた。

 澤田氏は質疑で「日ごろから与野党国会議員をはじめ、各界有識者と懇談する場を設けている。業務上の要請、あるいは便宜を受けるという話はしていない」と述べた。

 だが、とりわけ許認可などを通じて利害が絡む可能性がある総務省に関して、それで通用するだろうか。

 NTTの総務省接待が問題視されているのは、癒着やなれ合いにつながることが懸念されるからだろう。当事者が否定すれば容易に理解されるという問題ではないはずだ。

 澤田氏が首相や武田良太総務相と食事をしたことがあるかを問われ「個別にどなたと会食したか否かを公開すると事業に影響がある」と答えたのは、そうした認識からではないのか。

 「国民の疑念を招くような会食、会合に応じたことはない」と強調してきた首相や武田氏の物言いにも、ならばなぜ明確に言わないのかと矛盾を感じる。

 東北新社の中島氏は接待の目的は「懇親」とし、「手心を加えるよう依頼した事実は確認されていない」と述べた。

 東北新社を巡っては、外国資本規制を巡る放送法違反について総務省との主張が真っ向から食い違う事態が起きている。

 中島氏は東北新社側は2017年8月に違反を認識し、総務省側との面会で伝えていたと証言した。

 これに対し、報告の相手とされる総務省の鈴木信也電波部長は「外資規制違反のような重要な話を聞いたら覚えているはずだ。記憶は全くない」と反論している。

 まさに規制に関わる重要問題で、なぜ法律違反が見逃されたのか。事は放送行政の在り方を問うている。真相を国民の前に明らかにしてもらいたい。



接待問題巡る国会質疑(2021年3月17日配信『福井新聞』-「論説」)

癒着疑惑深まるばかりだ

 総務省幹部らへの接待問題を巡り、衆参両院の予算委員会は参考人として東北新社とNTTの社長の出席を求め、集中審議を行ったが、国民の納得を得られたとは到底言い難い。

 とりわけ、問題視されるのは、東北新社の外国資本の出資比率が放送法に違反していた事実を総務省が把握した時期に関して、双方の主張の食い違いが明確になったことだ。

 東北新社の中島信也社長は、2017年8月に当時幹部だった木田由紀夫氏が違反状態を解消するため、子会社への事業承継を面会して伝えたと明言。報告相手とされる総務省の鈴木信也電波部長は16日の衆院予算委で「記憶は全くない」と述べている。

 総務省は今月になって外資規制違反を知ったとしているが、4年前に報告を受けたまま放置し、さらには子会社への承継を認可したとすれば、規範意識の欠如どころか、脱法行為に手を貸し行政をゆがめさせたと言われても仕方がない。

 野党が「どちらかが、うそをついている」として、偽証罪に問われる証人喚問を求めるのも当然だろう。木田氏に加え、接待のキーパーソンとされる菅義偉首相の長男である菅正剛氏を招致すべきだ。子会社承継の件で最終決裁の情報流通行政局長を務めていた山田真貴子前内閣広報官の出席も欠かせない。東北新社の「特別扱い」を徹底的に解明する必要がある。

 一方、NTTの澤田純社長も東北新社の中島社長同様に、一連の接待を巡り、国家公務員倫理法に基き、「利害関係者」との接待や金品贈与などを禁止する倫理規程への認識不足を陳謝したものの、業務上の働き掛けは否定した。しかし、総務審議官だった谷脇康彦氏に対する接待は、官房長官当時の菅首相が携帯電話料金引き下げに言及した後相次ぎ行われ、澤田氏の釈明はにわかには信じ難い。

 問題は、停職3カ月の懲戒処分を受けた谷脇氏が辞職願を出し受理されるなど総務省の幹部官僚のみが責任を取らされていることだ。NTT側は17~20年にかけて総務相経験者の高市早苗、野田聖子両衆院議員や副大臣ら政務三役と会食した。だが、いずれも接待とは認めず、「懇親会」「返金した」などと大臣規範への抵触を否定している。

 これでは「政官業」の癒着に対する国民不信は払拭(ふっしょく)されないままだ。官僚や民間人だけでなく、飲食のもてなしを受けた政治家こそが国会の場で説明責任を果たすべきだ。そもそも大臣規範には罰則や処分といった規定はなく、これが規範意識を低下させているとの指摘がある。厳正な調査とともに、国会公務員倫理規程や大臣規範の改正にも取り組むべきだ。



総務省の接待問題 徹底調査で事実の究明を(2021年3月17日配信『山陽新聞』-「社説」)

 放送・通信行政がゆがめられたとの疑惑が深まったと言わざるを得ない。

 放送事業会社「東北新社」が放送法の外資規制に違反していたことが分かった。放送局は報道や番組を通じて政治や社会に多大な影響力を持つため、外国資本によって支配されることを防ぐ目的で、その出資比率を20%未満とするよう定められている。

 だが東北新社はBSの洋画専門チャンネルの認定を申請した2016年10月時点で20%を上回っていた。総務省は違反を見抜けず、17年1月に認定した。当該の事業は現在、子会社が承継しているが、手続きに「重大な瑕疵(かし)」があったとして認定は取り消される見通しだ。当然だろう。

 外資比率は有価証券報告書などの公開資料で確認できる。なぜチェックを素通りしたのか。公共性の高い電波の使用許可を、そのようなずさんな手続きで行っていたとしたら問題は極めて大きい。

 さらに子会社への事業移管を巡る経緯でも不透明さは否めない。

 衆参両院予算委員会に参考人として出席した中島信也社長によると、17年8月に外資規制を超えていると気づき、社員が総務省の担当者に会って伝えた。併せて違法状態を脱するため事業の受け皿となる子会社を新設する案を示し、認可について相談したという。総務省側は文書やメモにないなどと面会の事実を否定している。

 子会社への移管を最終的に決裁したのは当時、総務省の担当局長だった山田真貴子・前内閣広報官だ。東北新社は少なくとも16年以降、総務官僚への接待を重ねており、山田氏も一連の接待問題で辞職している。

 中島氏の証言が事実なら、総務省は取るべき措置を取らず脱法行為を後押ししたことになる。真相を徹底解明しなければならない。

 NTTによる接待問題についても疑念が強まっている。総務省官僚や歴代総務相ら政治家に対する過剰な接待が次々と明らかになり、昨日は谷脇康彦・前総務審議官が辞職願を出し、受理された。

 一方、予算委に参考人招致された澤田純社長は認識の甘さを陳謝しつつも業務上の依頼をしたり、便宜を受けたりしたことはないと釈明した。とはいえ、NTTは株式を保有する政府とは密接な関係にある。接待の常態化が何らかの形で影響したのではと勘繰られても仕方があるまい。

 総務省は幹部職員ら144人を調査するチームを始動させた。また元検事の弁護士ら有識者による第三者委員会も設け、利害関係にある企業への不公正な扱いがなかったかを検証する。

 総務省と放送・通信事業者が癒着を続けた結果、行政判断に手心が加えられたことがないか調査を尽くす必要がある。事実の究明と責任の追及を徹底しなければ、国民の信頼回復は望めない。



接待問題の国会質疑 「茶番」まだ続けるのか(2021年3月17日配信『中国新聞』-「社説」)

 総務省の接待問題で、放送事業会社「東北新社」と通信大手NTTの両社長が連日、国会に招致され、質疑が交わされた。ともに接待の目的や会話の詳細な中身などは明らかにせず、行政がゆがめられていたとの疑惑が晴れることはなかった。

 それどころか、NTT側との会食の有無さえ答えない菅義偉首相や武田良太総務相と口裏を合わせたかのような答弁も目立った。こんな「茶番」をいつまで続けるつもりなのか。

 モリカケや「桜を見る会」問題に象徴される安倍前政権の延長なのだろう。政治の私物化である。身内や仲間、支持者を特別扱いする姿勢に、公平であるべき官僚や、業界まで感化されていないか。そんな体質まで掘り下げた解明が求められる。

 国会質疑では、官僚との癒着を疑わせる証言が、東北新社の中島信也社長から出た。同社は2017年8月、放送法で定められた外資規制に違反していることを認識し、総務省の担当課長に面会して伝達、違法状態を回避するため子会社を新設して事業を引き継がせる案まで相談していた、という。

 事実なら、総務省が違法状態を見過ごし、回避策にも協力したことになる。ただ当時の担当課長は「報告を受けた記憶は全くない」と国会で答えた。主張が真っ向から食い違っている。

 「記憶がない」という言葉がくせものだ。例えば接待問題の発覚時、関係幹部は業務に関する話題が出た「記憶はない」と、しらを切っていた。ところが録音された音声が公開され、認めざるを得なくなった。その時と同様、証拠が出てこない限り言い逃れられる―。そう考えていると疑われても仕方あるまい。

 そもそも接待攻勢は外資規制違反と関わりはないのか。総務相を務め、省内に影響力を持つ菅首相を念頭に、長男のいる東北新社に忖度(そんたく)したのではないか。疑問が次々に浮かぶ。

 一方、NTTの澤田純社長は「日ごろから各界有識者と懇談する場を設けている」と説明した。与野党の国会議員を含め多くの人と懇談しているから、総務省の大臣や幹部との会食は問題ないと言いたいのだろうか。通信や放送事業の許認可権を握る総務省の関係者と、何の権限もない国会議員を同列に論じることに無理がある。

 澤田社長は、菅氏や武田氏との会食の有無については「公開すると事業に影響がある」として明らかにしなかった。まともに答えなかった両氏に忖度したのだろうか。

 武田氏は、菅氏の長男との会食は「なかった」と国会で答えていた。にもかかわらずNTTについては「個別のことには答えない」と逃げるのでは筋が通るまい。国会軽視も甚だしい。

 総務省は、第三者でつくる検証委員会を設け、接待が行政に影響を与えたか調べる方針だ。きのう辞職を認めた谷脇康彦・前総務審議官ら退職した幹部に対しても、在職中の接待について厳しく調べるべきである。

 国民の疑いを晴らすには、まず事実関係を明らかにすることが必要だ。参加者や事業者側の狙い、会話の中身、費用負担の状況などである。それが分かって初めて、禁じられている行為かどうか、はっきりする。判断するのは、国民であって、会食の当事者たちではない。



総務省接待問題 政官業癒着の疑念深まるばかり(2021年3月17日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 政官業の癒着で放送、通信行政がゆがめられたのではないかとの疑念は深まるばかりだ。

 総務省幹部への違法接待問題で、衆参両院の予算委員会は放送事業会社「東北新社」とNTTの社長を参考人招致した。両社長は陳謝しつつ、業務上の働き掛けを否定した。繰り返された接待の目的や中身に関する説明は国民が納得できるものだったとは言えない。真相を徹底究明しなければならない。

 東北新社が放送法の外資規制に違反していた問題で、ずさんな許認可行政が浮き彫りになっている。問題のBS放送は2016年10月に東北新社が申請し17年1月に総務省から認定された。この時点で既に放送法で定められている外資比率20%未満を超えていた。

 予算委では、総務省が外資規制違反を認識した時期を巡り食い違いが鮮明になった。東北新社の中島信也社長は、17年8月4日に違反を認識し同月9日ごろ幹部の木田由紀夫氏が総務省に面会で伝えていたと証言。規制に抵触した状態を回避するため、子会社を新設し衛星放送事業を承継する案を相談したという。東北新社は10月、事業を子会社に承継させている。

 面会相手とされる鈴木信也電波部長は「記憶は全くない」と否定。東北新社側は衛星・地域放送課長が休暇中だったため鈴木氏に面会したと説明した。東北新社側の証言が事実であれば総務省が違法性を認識したまま子会社の承継を認めたことになり、看過できない。

 菅義偉首相の長男らによる東北新社の接待は16年から続いており、関連が疑われるのは仕方あるまい。最終的に決裁した局長は接待問題で辞職した山田真貴子前内閣広報官だった。野党は証人喚問を求めており、政府与党は応じるべきだ。

 NTTの澤田純社長は接待で業務上の依頼や便宜はなかったと明言した。NTTドコモの子会社化との関連も否定した。しかし接待問題で更迭され辞職した谷脇康彦前総務審議官は携帯電話料金引き下げを先導しており、接待時期は官房長官当時の菅首相が携帯電話料金の引き下げに言及した時期と重なる。

 一方、NTTは歴代総務相らと会食していたことが判明している。澤田社長は菅首相や武田良太総務相との会食の有無について「公開すると事業に影響がある」などとして明かさなかった。武田総務相や菅首相は「疑念を招くような会食はしていない」と会食したかどうかに答えていない。既に国民の疑念を招いている以上、曖昧な説明では済まされない。自ら事実を明らかにせねばならない。

 総務省は東北新社やNTTによる接待が行政に影響を与えたかどうかを検証する第三者委員会を設置、きょう初会合が開かれる。行政への不信を招いた政府の責任は大きい。菅首相は指導力を発揮し疑惑解明に尽くさなければ信頼回復はできないと肝に銘じるべきだ。



【東北新社BS】子会社になぜ承継できた(2021年3月17日配信『高知新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」の中島信也社長がきのうまでの衆参両院の予算委員会で、外国資本規制を巡る放送法違反に関して証言した。総務省が違法性を知りながら事業承継を認めたととれる内容だ。同省の担当者と主張が食い違う。真相解明へ厳格な調査が求められる。

 東北新社は2016年10月にBSの洋画専門チャンネル「ザ・シネマ4K」の認定を申請し、2017年1月に総務省から認定を受けている。この時点で既に外国資本の出資比率が規制対象の20%を上回っていた。

 そうした状況にもかかわらず、ずさんな申請を行った企業側の姿勢が問われるのは当然だ。

 それにも増して、この事態を把握できなかった総務省の認定手続きの甘さを見過ごすわけにはいかない。「重大な瑕疵(かし)」があったと不備を認めているが、あまりにもずさんで責任感が欠けている。

 証言では、違法状態を東北新社が認識したのは17年8月4日で、社幹部が9日ごろに当時の総務省課長に面会したとする。さらに、規則に抵触した状態を回避するため子会社を新設し、問題の衛星放送事業を承継することを提案したと述べた。

 この証言について、報告相手とされる担当者は「報告を受けた記憶は全くない」と否定し、主張は対立している。結果として、子会社は9月に設立され、10月には承認手続きを終えている。

 違法性の認識は焦点だ。決裁したのは当時の担当局長で、接待問題で辞任した山田真貴子前内閣広報官だった。シネマ4Kの認定は取り消す方針となった。それがどのような手続きの中で先に認定されたのか解明されなければならない。

 衆参予算委にはNTTの澤田純社長も出席した。総務省幹部への接待や国会議員との会食を通じて業務上の依頼をしたり、便宜を受けたりしたことはないと明言した。携帯電話料金引き下げが話題になったかどうかについては否定した。

 NTTからの接待発覚で更迭された前総務審議官の谷脇康彦氏は停職3カ月の懲戒処分となった。巻口英司国際戦略局長との2人が利害関係者からの接待を禁じる国家公務員倫理法の倫理規程に違反したと認定された。谷脇氏は辞職した。

 総務省は、鈴木茂樹前事務次官と秋本芳徳前情報流通行政局長が澤田社長から接待を受けたことを明らかにした。谷脇氏と巻口氏との4件と合わせ、接待は計5件になった。

 倫理規程に抵触し、処分される恐れがある接待をなぜ受けたのか、一連の接待が行政に影響を与えなかったか明らかにする必要がある。

 NTT側による歴代総務相ら政務三役への「接待攻勢」も明らかになっている。菅義偉首相や武田良太総務相は自身の会食の有無には直接答えていない。

 「国民の疑念を招くような会食に応じたことはない」。そんな言葉を重ねている。どのような会合だったのか分からなければ疑念はかえって膨らんでしまう。



接待問題で国会質疑(2021年3月17日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆癒着体質への疑念拭えない◆

 接待攻勢の狙いは何か。行政がゆがめられることはなかったのか。規範意識の欠如は浮き彫りになったものの、「政官業」の癒着体質への疑念は拭えないままだ。通信、放送行政を所管する総務省幹部への違法接待問題で、参院予算委員会はNTTと東北新社の社長が出席し集中審議を実施した。だが、国民の納得を得られたとは言い難い。

 予算委審議では、東北新社の衛星放送事業に関する外国資本の出資比率が放送法に抵触していた事実を総務省が把握した時期を巡り、双方の主張の齟齬(そご)が明確になった。

 東北新社の中島信也社長は、子会社に事業を引き継ぐ前の2017年8月に幹部が当時の同省担当課長に面会して伝えたと明言。これに対し、吉田博史情報流通行政局長は同課長が「報告を受けた覚えはない」と答えたとして認めなかった。

 総務省が規制違反を放置し、子会社への継承を認可したとすれば、規範意識の欠如に加え、別の疑念が湧いてくる。

 菅義偉首相の長男が勤める東北新社に対する「特別扱い」だ。担当課長で現在の総合通信基盤局電波部長を国会に呼ぶことになったが、最終決裁者で情報流通行政局長を務めていた山田真貴子前内閣広報官の出席も求めるべきだ。併せて総務省は面談記録や関連メールの有無も徹底的に調べる必要があろう。

 NTTの澤田純社長も中島社長も一連の接待を巡り、国家公務員倫理法に基づく倫理規程の認識不足を陳謝する一方で、業務上の働き掛けは否定した。だが、会食時期と突き合わせれば、両社長の釈明はにわかに信じ難い。総務審議官を更迭された谷脇康彦氏=辞職=に対するNTT側の接待は、官房長官当時の菅首相が携帯電話料金引き下げに言及した後、立て続けに行われている。

 東北新社の接待も、子会社の衛星放送認可の更新時期にあたる昨年12月に頻繁に行われたことが疑問視されている。接待には菅首相の長男が同席していたケースも少なくなかった。

 NTT側は17~20年にかけて総務相経験者である高市早苗、野田聖子両衆院議員や副大臣経験者とも会食した。高市、野田両氏を含め全員が接待と認めず、大臣規範への抵触を否定したが、総務行政を巡る「政官業」の関係に対する国民の不信払拭(ふっしょく)には、官僚や民間人だけでなく、供応を受けた政治家も国会の場で問いただすべきだ。

 再発防止に菅首相が真剣に取り組むつもりがあるのなら、総務省が設置する第三者委員会に対し厳格かつ透明性ある調査を指示すべきだ。同時に軽視された国家公務員倫理規程や大臣規範の改正検討が求められる。



[総務省と業界] 癒着の疑念は晴れない(2021年3月17日配信『南日本新聞』-「社説」)

 総務省幹部らへの接待や国会議員との会食を巡る問題で、NTTの澤田純社長と放送事業会社「東北新社」の中島信也社長が衆参両院の予算委員会に参考人として出席した。

 両氏は業務に有利な取り計らいを依頼したことはないと明言。だが、接待や会食の目的が「懇親を図るため」(中島氏)という説明だけで国民の納得は得られまい。

 東北新社が放送法の外資規制に違反していたことが明らかになっている。中島氏は同社が違法性を認識し総務省側に伝えていたと証言した。同省は面会の事実を否定しているが、徹底的に調査すべきである。

 東北新社は2016年10月、BSの洋画専門チャンネル「ザ・シネマ4K」の認定を申請し、17年1月に総務省から認定を受けた。その時点で外国資本の出資比率が20%を上回り違反した状態だったが、ずさんな申請と認定手続きのため見過ごされた。

 中島氏の証言では同社は17年8月、違法状態を解消するため子会社を新設し「ザ・シネマ4K」事業を引き継ぐ案を総務省側に相談したという。当時の同省担当課長はきのうの衆院予算委員会で「報告を受けた記憶は全くない」と反論、主張は食い違っている。

 だが、結果的に子会社は設立され、同年10月には承継手続きを終えている。中島氏の証言通りなら、総務省は違法性を認識したまま子会社への承継を認めていたことになり、単なる審査ミスとは言えなくなる。

 こうした経緯は総務省の規範意識の欠如だけでなく、菅義偉首相の長男が勤務する東北新社を特別扱いしたのではないかとの疑念も湧いてくる。最終決裁者は当時、情報流通行政局長を務め、辞職した山田真貴子前内閣広報官である。

 山田氏を国会に招致して事情を聴くとともに、総務省は関連するメールの有無などを改めてチェックし、癒着の疑いを晴らすべきだろう。

 NTT側は17~20年にかけて総務相経験者である高市早苗、野田聖子両衆院議員や副大臣経験者とも会食した。高市、野田両氏を含め全員が接待と認めず、大臣規範への抵触を否定した。

 だが、官僚や民間人だけでなく、供応を受けた政治家も国会の場で説明しなければ、国民の不信は拭えまい。

 総務行政を巡る政官業の不適切な関係は19年12月、かんぽ生命保険の不正販売を巡り、総務事務次官が行政処分の検討状況などを日本郵政側に伝えていたことでも浮き彫りになった。

 総務省は一連の接待で放送・通信行政がゆがめられたかどうか究明する第三者委員会を近く立ち上げる。菅首相は同省と許認可権限のある業界との不適切な関係に終止符を打つために厳格かつ透明性ある調査を指示すべきだ。



総務省接待問題 真相解明にはほど遠い(2021年3月17日配信『琉球新報』-「社説」)

 疑念は深まるばかりだ。このまま当事者が真実を語らない限り、国民の不信を払拭(ふっしょく)することは不可能だ。

 総務省幹部に対する接待問題で、衆参の予算委員会はNTTの澤田純社長と放送事業会社「東北新社」の中島信也社長に対する参考人質疑を行った。真相解明にはほど遠く、総務省側も含め、事実を明らかにしようという態度は希薄だった。

 その中でも重大な事実が明らかになった。東北新社が2017年8月の時点で放送法の外資規制違反を認識し、総務省側に面談で伝えていた。その後、違反状態を解消するため子会社を設立して衛星放送事業を承継し、その経緯も総務省に報告していたのだ。

 ところが、当時の総務省担当課長は面談の事実について「記憶にない」と否定した。双方の説明は食い違っている。

 外資規制違反の判明から子会社への事業承継までの手続きは極めてずさんだ。

 本来ならば、外資規制違反が発覚した段階で東北新社の放送事業者としての認定は取り消されるべきではなかったか。それにもかかわらず、子会社への事業承継によって違法状態を回避し、それを総務省は認めたのだ。

 極めて安直な手法だ。東北新社と総務省が共に違法状態の隠ぺいを図ったと言われてもしかたがない。東北新社は放送行政に対する認識が甘く、順法意識が欠落していると断じざるを得ない。それを容認した総務省も同様だ。監督官庁としての存在意義を失っている。総務省は東北新社に手心を加えたのではないかと国民は疑っている。

 一方、NTTによる総務省高官への接待では携帯電話料金の引き下げやNTTドコモ子会社化などへの影響が疑われている。NTTの澤田社長は「業務上の要請、あるいは便宜を受けるという話はしていない」と述べた。武田良太総務相は「国民の疑念を招くような会食には応じたことはない」と繰り返すばかりだった。

 これらの疑念を晴らすため衆参の予算委員会の参考人招致があったはずだ。ところが、政治家相手の会食の実態や便宜供与の有無など多くの疑問点は未解明のまま終わった。しかも、接待問題に深く関わった谷脇康彦前総務審議官が辞職した。これでは実態解明が遠のくばかりではないか。

 安倍政権下で起きた森友・加計問題でも官僚の虚偽答弁が繰り返され、真相は明らかにされなかった。それと同じことが繰り返されているのである。関係官僚の処分だけで幕引きを図ることは到底容認できない。

 武田総務相は接待問題を検証する第三者委員会を週内に発足させる。

 官民の癒着による行政のひずみと忖度(そんたく)政治の横行に国民はがく然としている。今後の検証・調査活動で事実を解明し、国民の前に公表することが政府の最低限の責務だ。



「偉くなるため」努力した官僚の末路(2021年3月17日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★官僚について語る時、一部の不健全な考えを持つ官僚の不祥事を取り上げてすべての官僚がダメだとか、けしからんというのはいかがなものかという指摘がある。同様に警察官、自衛官、教師、医者など国民の信頼を軸に働く人たちの中に問題を起こすものがいる度、大半はまじめに働いているという声が出る。その通りだと思う。だが最近、本当にそうといえるだろうかと思うことが多い。なぜならこれらの仕事は相互チェックの機能が数多く働き、不祥事が見えやすい仕組みが出来上がっている。

★ところがここにきて急増しているのは、幹部が「いいからやれ」「とにかく言うとおりにしろ」などの強引で超法規的命令を場合によっては上司の立場を飛び越えた、本省のとてつもない偉い人から言われたりしている。その幹部も政務、または政治的な思惑から隠蔽(いんぺい)工作や省益を守るために断れない場合もあるようだ。その原因は内閣人事局などの人事が政治的にゆがめられたり、特定の政治家に重用されたものが省内で力をつける傾向だ。それを守って働いてきた前総務審議官・谷脇康彦は停職3カ月の懲戒処分を16日受け、辞職した。これが“偉くなるため”に努力した官僚の末路だ。

★今、幹部職員の汚職を抱えているだけで農水省、総務省が浮かぶが、他省庁も計り知れない闇を抱えている。財務省もいまだに解決しない問題を抱える。幹部職員の幾人かは逃げ切った者もいる。それがあなた方の人生なのか。そんなために一生懸命学んできたわけではないだろう。昨今の社会情勢の中で国家公務員の給料は決して安くはない。官舎をはじめ福利厚生も手厚い。たいていの公務員は民間よりも多くの部分で恵まれている。それなのに倫理観も社会規範も失っていくのはなぜなのか。幹部に裁定が下ると「あいつはしくじった」「やりすぎた」という声が必ず省内から上がる。誰もが「俺ならうまくやれる」と思っているのか。





総務省接待問題 疑惑解明にはほど遠い(2021年3月16日配信『北海道新聞』-「社説」)

 参院予算委員会は集中審議を行い、総務省幹部への接待問題を巡ってNTTの澤田純社長と放送事業会社「東北新社」の中島信也社長が参考人として出席した。

 両氏は一連の接待について陳謝したものの、目的や会話の内容などを明確に語ることはなかった。

 これでは、違法性のある接待によって行政がゆがめられた可能性があるとの疑惑が解明されたとは言い難い。国会は引き続き真相究明に尽くさなければならない。

 澤田氏は総務省幹部への接待が「常態化していたわけではない」と述べ、接待を通じた業務上の依頼や便宜供与は否定した。

 では、なぜ接待したのか。

 菅義偉首相が官房長官時代に携帯電話の料金値下げに言及した後に、旗振り役だった谷脇康彦前総務審議官が最初の接待を受けた。

 同社がNTTドコモの完全子会社化に動いたころにも、幹部が接待されている。

 秋本芳徳・前情報流通行政局長も澤田氏から接待を受けていた。

 NTTは国が3割出資し、役員異動や事業計画策定も総務相の認可を受ける。

 澤田氏は「私から料金や子会社化について話したことはない」と釈明したが、襟を正さなければならない立場なのに接待を重ねていた。国民は納得しまい。

 武田良太総務相は澤田氏らと会食した事実があるかを問われ「国民の疑念を招くような会合に応じることはない」と繰り返した。

 自民党の野田聖子、高市早苗両氏は総務相在任時にNTT幹部と会食していた。

 武田氏のかたくなな答弁は疑いを強めている。こんな大臣の下で事実の究明が期待できようか。

 中島氏は、東北新社の担当者が放送法の外資規制違反に気づいた2017年8月に総務省の担当課長と面談し、違法状態の回避策として子会社への衛星放送事業継承を提案したと明かした。

 事実なら、総務省は違反を認識しながら子会社への事業継承を認可したことになる。同社に務める首相の長男正剛(せいごう)氏らからの接待との関連性にも疑惑が深まる。

 総務省側は、当時の担当課長が「その報告を受けた記憶がない」と説明しているとし、関連の文書やメモも残っていないと強調する。あいまいな説明ではなく、徹底した調査が求められる。

 中島氏は接待問題で引責辞任した前社長の後を引き継ぎ、直接の当事者ではない。前社長と正剛氏の国会招致が欠かせない。



接待問題で国会質疑 拭えない癒着への疑念(2021年3月16日配信『東奥日報』-「時論」/『茨城新聞』-「論説」)

 接待攻勢の狙いは何か。行政がゆがめられることはなかったのか。規範意識の欠如は浮き彫りになったものの、「政官業」の癒着体質への疑念は拭えないままだ。

 通信、放送行政を所管する総務省幹部への違法接待問題である。参院予算委員会はNTTと東北新社の社長の出席を求め、集中審議を実施したが、国民の納得を得られたとは言い難い。

 予算委審議では、東北新社の衛星放送事業に関する外国資本の出資比率が放送法に抵触していた事実を総務省が把握した時期を巡り、双方の主張の齟齬(そご)が明確になった。

 東北新社の中島信也社長は、子会社に事業を引き継ぐ前の2017年8月に幹部が当時の同省担当課長に面会して伝えたと明言。これに対し、吉田博史情報流通行政局長は同課長が「報告を受けた覚えはない」と答えたとして認めなかった。

 総務省が規制違反を放置し、子会社への継承を認可したとすれば、規範意識の欠如に加え、別の疑念が湧いてくる。菅義偉首相の長男が勤める東北新社に対する「特別扱い」だ。担当課長で現在の総合通信基盤局電波部長を国会に呼ぶことになったが、最終決裁者で情報流通行政局長を務めていた山田真貴子前内閣広報官の出席も求めるべきだ。併せて総務省は面談記録や関連メールの有無も徹底的に調べる必要があろう。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」とし、接待を受けたり、金品を贈与されたりすることを禁止している。

 NTTの澤田純社長も中島社長も一連の接待を巡り、倫理規程の認識不足を陳謝する一方で、業務上の働き掛けは否定した。だが、会食時期と突き合わせれば、接待目的に関する両社長の釈明はにわかに信じ難い。総務審議官を更迭された谷脇康彦氏=官房付=に対するNTT側の接待は、官房長官当時の菅首相が携帯電話料金引き下げに言及した後、立て続けに行われている。

 東北新社の接待も、子会社の衛星放送認可の更新時期にあたる昨年12月に頻繁に行われたことが疑問視されている。接待には菅首相の長男が同席していたケースも少なくなかった。中島社長は接待の理由を「顔つなぎ」と説明したが、高額な飲食費とともに国民の納得は得られまい。

 NTT側は17〜20年にかけて総務相経験者である高市早苗、野田聖子両衆院議員や副大臣経験者とも会食した。高市、野田両氏を含め全員が接待と認めず、大臣規範への抵触を否定した。

 だが、総務行政を巡る「政官業」の関係に対する国民の不信払拭(ふっしょく)には、官僚や民間人だけでなく、供応を受けた政治家も国会の場で問いただすべきだろう。

 大臣規範は閣僚、副大臣、政務官の政務三役が対象。関係業者から接待を受けるなど「国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と規定しているが、罰則や処分に関する規定はない。

 それが政務三役在任中の規範意識を低下させているのではないか。再発防止に菅首相が真剣に取り組むつもりがあるのなら、総務省が設置する第三者委員会に対し厳格かつ透明性ある調査を指示すべきだ。同時に軽視された国家公務員倫理規程や大臣規範の改正検討が求められる。



接待問題で2社長招致 疑惑は解消されていない(2021年3月16日配信『毎日新聞』-「社説」)

 総務省幹部に対する接待問題で、NTTの澤田純社長と放送事業会社「東北新社」の中島信也社長に対する参考人質疑が参院予算委員会で行われた。

 両社長は陳謝したが、疑惑の解明は進まなかった。

 中島氏の説明によると、東北新社は放送法が20%未満と定めている外資規制を上回ったまま、2016年に衛星放送事業の認定を申請した。翌年に気づいて総務省の担当課長に報告したという。

 事実とすれば、違反が見逃されていたことになる。だが、担当課長は報告を受けた覚えはないと主張しているという。

 この時期は、総務省幹部らが同社に勤める菅義偉首相の長男らから接待を受けていた。見返りとして違反を見逃したのではないかというのが疑惑のポイントだ。

 省庁幹部は事業者との面会記録を作成しているはずだ。不正を否定するのなら、記録を開示して自ら疑惑の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ。

 NTTによる接待問題では、新たに総務省の当時の幹部2人が澤田氏の接待を受けていたことが明らかになった。

 澤田氏は3回の会食を認めたが、業務上の要請や便宜に関する話はしていないと説明した。携帯電話料金引き下げと接待の時期が重なることについては、関係を否定した。NTTドコモの完全子会社化は「インサイダー情報で誰にも話をしていない」と強調した。

 NTTの接待問題は、歴代総務相にも広がっている。だが、澤田氏との会食の有無を問われた首相と武田良太総務相は「国民の疑念を招くような会食に応じることはない」と述べるだけだった。

 自ら会食の中身について明らかにすべきだ。それが示されなければ、疑惑の有無を国民は判断しようがない。

 総務省は週内に第三者委員会を作り、検証を始めるという。国会も、予算案の審議が終了しても追及を続ける必要がある。

 首相は総務省への強い影響力を背景に政治家として実力を蓄えた。その中で配慮やそんたくが生まれ、行政がゆがめられたのではないかという疑念が出ている。

 首相は長男の国会招致を含め、主体的に一連の疑惑解明に努めるべきだ。



総務省接待問題 なれ合い生んだ可能性ないか(2021年3月16日配信『読売新聞』-「社説」)

 度重なる接待を受けることで、特定の企業とのなれ合いが生じていなかったか。放送・通信行政への影響について、政府は真摯しんしに調査し、説明責任を果たしてほしい。

 参院予算委員会で、放送関連会社「東北新社」の中島信也社長とNTTの澤田純社長に対する参考人質疑が行われた。

 菅首相の長男が勤務する東北新社の接待問題を機に、総務省幹部が両社との間で、国家公務員倫理規程に違反する会食を重ねていたことが判明した。

 公務員が利害関係を持つ企業から接待を受ければ、なれ合いや癒着が疑われかねない。ルール違反が常態化していたことを総務省は深刻に受け止めるべきだ。

 野党は質疑で、東北新社が放送法の外資規制に違反していたことを追及した。接待攻勢で行政が歪ゆがめられていないかどうかが焦点だったが、十分な解明に至らなかったのは残念だ。

 放送法は、放送事業者の外資比率を20%未満とするよう定めている。だが、東北新社は2016年に衛星放送事業の認定を申請した際、20%を超えていたという。

 外資規制は、公共の電波を利用する放送事業で、外国資本が世論を誘導することを避けるための規定だ。武田総務相が認定取り消しを表明したのは当然である。

 中島氏は「担当者の単純ミスだった」と釈明した。東北新社側の申請を鵜呑うのみにし、違反を見逃した総務省の責任は大きい。

 17年に問題を認識した際の対応を巡って、双方の主張には齟齬そごが生じている。中島氏は「総務省の担当者に報告した」と述べたが、総務省局長は「当時の担当者は、報告を受けた覚えはないということだった」と答弁した。

 なぜ、こうした事実関係で認識が食い違っているのか。総務省が違反を知りながら、放置していたのであれば問題だ。水掛け論で終わらせることは許されない。当時の経緯を詳しく調べ、事実を解明することが重要である。

 野党は、NTT幹部が歴代の総務相や総務副大臣と会食していた問題についても取り上げた。大臣規範は、閣僚らが関係業者から接待を受けることを禁じている。

 澤田氏は「大きな迷惑をかけた」と陳謝する一方で、業務上の要請はなかったと強調した。

 閣僚が関係者と意見交換し、政策決定の参考にすることは、利権に絡まない限りありうるが、国民に疑念を持たれるような行動は厳に慎まなければならない。



「携帯電話の料金は今よりも4割程度下げる余地がある」(2021年3月16日配信『日本経済新聞』ー「春秋」)

「携帯電話の料金は今よりも4割程度下げる余地がある」。当時、官房長官だった菅義偉首相のこの発言が号砲であった。携帯料金引き下げはその後誕生した菅政権の看板政策として掲げられ携帯各社は値下げに着手。NTTがNTTドコモを完全子会社化するに至る。

▼民業への政治の介入とも思える危うさをはらみながらも、なかなかにエキサイティングな展開ではあった。だがその裏でNTTによる総務省幹部への接待攻勢が繰り返されていた。この事実が明るみに出て、とたんに興ざめである。政官業の出来レースを見せられていたのではないか、との疑念さえ抱かせる事態となった。

▼その接待問題できのう、NTTの社長が国会に招致され、陳謝した。総務省幹部らと会食はしたが業務上の依頼をしたり便宜を受けたりしたことはない、との説明であった。確かにお願いごとを具体的に口にすることはなかったかもしれない。だがなぜ接待がこの時期なのか、接待元はNTTだけなのか。疑問は尽きない。

▼かつて旧大蔵省の職員が銀行から過剰な接待を受け、贈収賄事件として摘発された。接待する銀行側の担当者は、標的である役所の英語名で「MOF担」とよばれていた。ところが今回の問題では官僚にとどまらず、総務相など政務三役経験者らの名前まであがる。ことの本質は役所を超えたところにあるのかもしれない。



総務省の接待問題 疑念晴らす明確な説明を(2021年3月16日配信『産経新聞』-「主張」)

 総務省幹部らが放送事業会社「東北新社」とNTTから接待を受けていた問題で、参院予算委員会に両社の社長が参考人として出席した。

 東北新社は、放送法の外資規制基準に抵触したまま衛星放送事業の認定を受けており、総務省の審査体制と接待の関係が疑われている。

 総務省はすでに認定の取り消しを決め、外部有識者で構成する検証委員会を設けて近く調査を始める方針だが、焦点は接待を通じて行政がゆがめられていなかったかの一点にある。

 ところが武田良太総務相は委員会で「申請書のミスが主たる原因とはいえ、総務省の審査も十分ではなかった」と、ミスと杜撰(ずさん)な審査に問題を矮小(わいしょう)化してしまった。そこに「接待」がどう関わったのか。検証委員会が調査すべき最優先課題である。

 放送法では衛星放送事業者の外資出資比率を20%未満と定めている。4年前に認定を受けた東北新社は当時の外資比率が20%を超える違法状態だった。同社の中島信也社長は予算委で「認定から約半年後に違法性を認識し、総務省担当部署と面談して報告した」と説明したが、総務省側は報告を受けた事実はないと否定している。真相は闇の中のままだ。

 NTTの澤田純社長は総務省官僚に対する接待の回数などは示したが、国会議員に対する接待については明言を避けた。「個別にどなたと会食したか否かを公開すると事業に影響がある」と述べる一方で、「日ごろから与野党国会議員をはじめとして懇談する場を設けている。業務上の要請、便宜を受けるという話はしていない」とも語った。これは矛盾している。問題のない懇談が事業に影響する理由が分からない。

 菅義偉首相、武田総務相は「国民の疑念を招くような会食、会合に応じたことはない」と述べ続けている。NTT側の証言と合わせて推し量れば、会食の事実はあったのだろう。それを否定とも肯定ともつかぬ答弁を繰り返すから、疑念がいや増すのだ。

 現実的で実効性ある政策を打ち出すには民間事業者との意見交換が必要な場合もある。国家公務員倫理規程の対象外である政治家と官僚を一律に論じることはできない。疑念を招く心配がないなら、まず事実を明確に説明するところから始めてはどうか。



NTT接待問題 疑惑の払拭には程遠い(2021年3月16日配信『東京新聞』-「社説」)

 NTTの澤田純社長が参院予算委員会で総務省幹部への接待を謝罪した。一方、業務上の依頼行為は全面的に否定した。ただ公益企業による接待自体に違法性があり、疑惑の徹底的な解明が必要だ。

 接待の席には澤田社長や鵜浦博夫相談役(前社長)らが出席していた。経営トップらが率先して所管官庁の幹部を接待しており違法性の有無以前に企業倫理が欠如していたと批判せざるを得ない。

 しかも接待場所はNTTの関連会社が経営する会員制レストランで人目を避けたと見られても否定は難しい。その接待で「業務上の要請や便宜を受けるという話はしていない」(澤田氏)と弁明しても、うのみにする国民がいるだろうか。疑惑払拭(ふっしょく)には程遠い。

 接待では毎回、かなり高額の料金が支払われていた。その原資の大半は、NTTの消費者が支払った通話料などの料金であることも強く指摘しておきたい。

 一連の接待が行われた間、NTTドコモの子会社化や携帯電話の値下げなど、同社にとって大きな案件が動いていたことも見過ごせない。接待が大型案件と関係があったのかどうか、外部の有識者でつくる政府の第三者委員会は徹底的に調査するべきだ。

 1980年代後半に発覚したリクルート事件でNTTは、初代社長の真藤恒氏が未公開株を受け取り有罪判決を受けた。事件後、NTT内部では職員の倫理意識を高める研修が繰り返し行われたはずだ。だが今回の接待行為を見る限り、過去の反省はまったく生かされていなかった。

 澤田社長は、所管業界の接待を受けることが公務員にとっても国家公務員倫理法に抵触する可能性があることは熟知していたはずだ。接待を受けた側に問題があることは当然だが、行った企業の行為も厳しく問われるべきだ。

 NTTは人と人とをつなぐ通信事業を主軸としており、災害時などに国民の命を守る社会インフラの一つを担っている。国が株式の3割超を保有しているのも公益性の高さ故である。このため幹部のみならず職員全体に公務員並みの公共意識が求められる。

 今後、NTTには幹部を中心に企業倫理への意識を根底から見直す作業が求められる。その際、接待に出席したトップ自身が改革を先導するには無理がある。

 経営陣を刷新した上で問題を深く検証し、再出発を図るのが企業ビジネスの常道である。 



根深い官業癒着/厳正調査でうみ出し切れ(2021年3月16日配信『神戸新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題が、衛星放送事業の認定取り消しという事態に発展した。

 総務省幹部への高額接待は、NTTでも発覚した。その相手は総務相経験者ら国会議員にも広がるなど、底なしの様相を見せる。

 15日には、接待問題の発端となった東北新社から中島信也社長、NTTからは澤田純社長が、参院予算委員会に参考人として招致された。

 両氏は一連の問題を陳謝したが、働きかけは否定した。官と業との根深い癒着で行政がゆがめられていないか、徹底的に究明すべきだ。

 東北新社が4年前にBS放送「ザ・シネマ4K」の認定を申請した際、外資比率は20%以上あり、20%未満と定める放送法に違反した状態だった。だが総務省の担当者は申請書の記入欄を見ただけで問題ないと判断し、そのまま認定したという。

 審査や認定の手続きが進むさなかにも、東北新社による総務省幹部らへの接待は繰り返されていた。関連はなかったのか、疑念は募る。

 同社からの接待で懲戒処分を受けた谷脇康彦前総務審議官らは、NTTからも高額接待を受けていた。

 携帯電話の料金引き下げは菅政権の看板政策の一つであり、実務の責任者が谷脇氏だった。国会で澤田社長は「業務上の要請や便宜を受けるような話はしていない」と否定したが、個別の会食の相手や内容については正面から答えなかった。

 自民党の野田聖子、高市早苗両衆院議員も総務相在任中、NTTとの会食に応じていた事実を認めた。「私的な会合」と接待を否定したが、関係業者から供応接待を受けることなどを禁じる国務大臣規範に抵触する可能性がある。

 一方、武田良太総務相は接待の有無について明言を避ける答弁を連発している。なぜ説明できないのか。

 会食の届け出数と実態の乖離(かいり)も看過できない。同省では、利害関係者と会食する際に必要な事前届け出が過去5年間で8件しかなかった。実際には幹部が会食を繰り返しており、倫理観の欠如は甚だしい。

 武田総務相は、接待問題を検証する第三者委員会を週内に発足させる方針を表明した。自浄作用が働かない組織体質の劣化は深刻である。

 過剰な飲食接待が連綿と繰り返された裏で何があったのか。厳正な調査でうみを出し切らなければ、国民からの信頼回復は望めない。

 いずれの問題も、総務省に強い影響力を持つ菅首相の権力基盤と密接に関わる。「長男とは別人格だ」などと釈明を重ねてきたが、それでは通らない。官業癒着の徹底解明に、今こそ指導力を発揮すべきだ。



「接待」問題質疑 国民の疑念深まるばかり(2021年3月16日配信『西日本新聞』-「社説」)

 まさに行政がゆがめられていた-。それが真相ではないか。総務省の幹部が高額接待を繰り返し受けていた上、許認可の審査もずさんだった実態が、国会審議でもあぶり出された。

 参院予算委員会はきのう、中島信也・東北新社社長、澤田純・NTT社長を参考人招致し、一連の接待問題で質疑した。

 特に質問が集中したのは、総務省が東北新社のBS4K放送の事業認定を取り消す方針を決めた外資規制違反の件だ。

 東北新社が2016年10月に事業申請し、翌17年1月に認定され、同10月に子会社に承継された。申請時点から、東北新社の外資比率は放送法が定める「20%未満」を超えていた。中島社長はこの経緯を認めて陳謝した上で、外資規制について担当社員の認識が不足していた、と釈明した。

 武田良太総務相は「主な原因は東北新社にあった」としつつ「総務省にも問題があった」と述べた。これは本末転倒ではないか。事業申請では、ミスや不備がないよう指導・監督するのが行政の責務だ。その点こそ、まず問われるべきである。

 中島社長からは重大な発言もあった。東北新社は子会社に事業承継する前の17年8月に違反に気付き、総務省にも報告したが、そのまま承継が認められたという。これに関し、同省側は「担当職員に報告を受けた覚えがない」との説明に終始した。極めて不可解な話である。

 同省の審議官らへの接待は16年から続き、東北新社に勤める菅義偉首相の長男が同席した例が多かった。加えて、子会社への承継認定は、接待を受けた1人で内閣広報官を辞任した山田真貴子氏(当時は同省情報流通行政局長)が決裁していた。

 審査は事業者の申告に基づく形式的な内容で、外資比率を実際に確認する仕組みはなかったという。事実なら制度の抜け穴であり、違反が意図的に見逃された疑いも拭えない。事実関係のさらなる究明が欠かせない。

 接待の目的について中島社長とNTTの澤田社長は「意見交換」が基本で、便宜供与の要請などはなかったと説明した。事実だろうか。NTTは総務相経験者2人とも会食をしていた。

 菅首相と武田総務相は「国民の疑念を招くような会食に応じたことはない」と繰り返しながら、NTTとの会食の有無については明言を避けている。この点も釈然としない国民は多いのではないか。

 武田総務相は週内に第三者による検証委員会を立ち上げる考えを示した。野党はこれと並行して首相の長男らの国会参考人招致や特別委員会設置を求めている。与党は応じるべきだ。



接待問題で国会質疑(2021年3月16日配信『佐賀新聞』-「論説」)

規範意識の深刻な欠如だ

 接待攻勢の狙いは何か。行政がゆがめられることはなかったのか。規範意識の欠如は浮き彫りになったものの、「政官業」の癒着体質への疑念は拭えないままだ。

 通信、放送行政を所管する総務省幹部への違法接待問題である。参院予算委員会はNTTと東北新社の社長の出席を求め、集中審議を実施したが、国民の納得を得られたとは言い難い。

 予算委審議では、東北新社の衛星放送事業に関する外国資本の出資比率が放送法に抵触していた事実を総務省が把握した時期を巡り、双方の主張の齟齬(そご)が明確になった。

 東北新社の中島信也社長は、子会社に事業を引き継ぐ前の2017年8月に幹部が当時の同省担当課長に面会して伝えたと明言。これに対し、吉田博史情報流通行政局長は同課長が「報告を受けた覚えはない」と答えたとして認めなかった。

 総務省が規制違反を放置し、子会社への継承を認可したとすれば、規範意識の欠如に加え、別の疑念が湧いてくる。

 菅義偉首相の長男が勤める東北新社に対する「特別扱い」だ。担当課長で現在の総合通信基盤局電波部長を国会に呼ぶことになったが、最終決裁者で情報流通行政局長を務めていた山田真貴子前内閣広報官の出席も求めるべきだ。併せて総務省は面談記録や関連メールの有無も徹底的に調べる必要があろう。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」とし、接待を受けたり、金品を贈与されたりすることを禁止している。

 NTTの澤田純社長も中島社長も一連の接待を巡り、倫理規程の認識不足を陳謝する一方で、業務上の働き掛けは否定した。だが、会食時期と突き合わせれば、接待目的に関する両社長の釈明はにわかに信じ難い。総務審議官を更迭された谷脇康彦氏=官房付=に対するNTT側の接待は、官房長官当時の菅首相が携帯電話料金引き下げに言及した後、立て続けに行われている。

 東北新社の接待も、子会社の衛星放送認可の更新時期にあたる昨年12月に頻繁に行われたことが疑問視されている。接待には菅首相の長男が同席していたケースも少なくなかった。中島社長は接待の理由を「顔つなぎ」と説明したが、高額な飲食費とともに国民の納得は得られまい。

 NTT側は17~20年にかけて総務相経験者である高市早苗、野田聖子両衆院議員や副大臣経験者とも会食した。高市、野田両氏を含め全員が接待と認めず、大臣規範への抵触を否定した。

 だが、総務行政を巡る「政官業」の関係に対する国民の不信払拭(ふっしょく)には、官僚や民間人だけでなく、供応を受けた政治家も国会の場で問いただすべきだろう。

 大臣規範は閣僚、副大臣、政務官の政務三役が対象。関係業者から接待を受けるなど「国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と規定しているが、罰則や処分に関する規定はない。

 それが政務三役在任中の規範意識を低下させているのではないか。再発防止に菅首相が真剣に取り組むつもりがあるのなら、総務省が設置する第三者委員会に対し厳格かつ透明性ある調査を指示すべきだ。同時に軽視された国家公務員倫理規程や大臣規範の改正検討が求められる。(共同通信・鈴木博之)



総務省接待問題 深まる疑念さらに解明を(2021年3月16日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 総務省幹部らへの接待問題に関し、参院予算委が会食を催していたNTTの澤田純社長と放送事業会社「東北新社」の中島信也社長を参考人招致した。なぜ両社は情報通信や放送を所管する同省関係者と会食を重ねていたのか。それによって行政がゆがめられることはなかったのか。国民から見れば当然の疑念だが、この日のやりとりで問題の核心を解明することはできなかった。

 約3年前に社長に就任した澤田氏は、自身と総務省幹部との会食がこれまで3回あったと説明。意見交換が目的で、業務上の依頼をしたり、便宜を受けたりしたことはなかったと否定した。菅義偉首相や武田良太総務相との会食についても聞かれたが、「個別にどなたと会食したか否かを公開すると事業に影響がある」として明かさなかった。

 国家公務員倫理規程に違反する官僚接待を繰り返していた東北新社の中島社長も、会食目的を「顔つなぎだった。具体的な目的ではなく、いつもお世話になっているから誘った」と答えた。

 しかし、NTTは事業計画や取締役選出について、総務省から許認可を受ける立場にある。携帯電話料金引き下げなどを巡っても、行政と緊張関係にあった。

 一方、東北新社も衛星放送事業の外資規制に違反していたことが分かっており、その対策を巡って総務省とやりとりをしていたという。

 これらの状況と高額な会食接待の関係について、十分に疑念が拭われたとは言えない。

 一連の不祥事発覚後、総務省幹部らは報道で表面化した事実だけを認め、その他の接待を受けたことなどを否定した。ところが新たな証拠を示されると前言を翻し認める対応を繰り返している。

 総務省は内部調査を始めたが、15日になってもさらに前事務次官と前情報流通行政局長がNTTから接待を受けていたことが判明。次から次に対象者が拡大し、調査の限界をあらわにしている。

 今後は幹部144人を対象に、問題の2社に限らず、広く民間業者から接待を受けていないかを改めて調査するとしている。それとは別に、2社の接待によって行政がゆがめられなかったかを検証する第三者委員会も、週内に発足させる。客観性を担保しつつ調査を進め、結果をつまびらかにしてもらいたい。

 見過ごせないのは、武田総務相が自身の会食の有無について明言を避けていることだ。この日の質疑でもNTT関係者との会食を問われ、「国民の疑念を招くような会食、会合に応じたことはない」と繰り返した。明快に有無を答えられなければ、疑念を持たれても仕方ない。このままでは国民の信頼は得られないだろう。

 16日には衆院が両社長を招き、参考人質疑を続ける。野党は違法接待を受けていた山田真貴子前内閣広報官の証人喚問などを求めており、引き続き国会での徹底した解明が求められる。



[2社長を参考人招致]地に落ちた行政の信頼(2021年3月16日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 業者による接待攻勢によって、行政が歪(ゆが)められることはなかったのか-疑惑は深まるばかりである。

 総務省幹部らが放送事業会社「東北新社」やNTTから高額な接待を受けていた問題で、参院予算委員会は、東北新社の中島信也社長とNTTの澤田純社長の出席を求め、集中審議した。

 放送法に基づく外資比率規制に違反していたにもかかわらず、総務省はなぜ、東北新社の申請通りBSの洋画専門チャンネル「ザ・シネマ4K」の衛星放送事業を認定したのか。

 申請した側の中島社長は「認識不足による単純な計算ミス」と謝罪し、審査した側の武田良太総務相は「審査が十分でなかった」ことを認めた。

 申請の段階で業者があり得ないミスを犯し、調べれば分かることを調べもせずに総務省がOKを出したというのである。

 放送行政とは、これほどいいかげんだったのか。信じられないような話だ。

 東北新社に勤める菅義偉首相の長男が複数回、接待に同席したことで官僚が「忖度(そんたく)」し、結果として行政が歪められたのではないか、という疑念が生じるのは当然である。

 中島社長によると、東北新社は事業の認定を受けたあと規制違反に気付き、その旨を総務省の課長に伝えた。

 ところが、総務省の担当者は「報告を受けた覚えはない」と真っ向から否定している。これほど重大な問題であるにもかかわらず、関連文書も残っていないという。

■    ■

 NTT側は総務省幹部のほか、総務相経験者や副大臣経験者とも会食した。

 澤田社長は業務上の働き掛けは否定したが、倫理規定に対する認識不足を陳謝した。

 総務省の大臣・副大臣経験者や現職幹部が、東北新社やNTTから高額接待を受けていたことは、国家公務員倫理法に基づく倫理規程や、「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」に違反する疑いが濃厚だ。

 倫理観や規範意識の欠如は、職務の公正性に対する信頼を傷つける。

 武田総務相は、東北新社やNTTからの接待について、この日の国会でも、「個別の案件」という理由で、答弁を拒否した。

 「会食をしたことがあるか」と何度質問しても答弁を拒否し、答弁拒否の理由も明らかにしないまま「国民が疑念を抱くような会食に応じたことはない」と一方的に答えるだけ。国会軽視の姿勢は目に余る。

■    ■

 総務省は、外部の有識者による検証委員会を設置する考えだが、委員会にゲタを預ける手法には注意が必要だ。

 まずは国会が国政調査権を行使し、当時、この問題にかかわった山田真貴子・元総務審議官や、菅首相の長男正剛氏ら関係者を証人喚問し、真相究明を徹底すべきである。

 菅首相は、再発防止と信頼回復に努めなければならない立場にあるが、国会答弁では、その意欲も問題の重大性に対する認識も、まったく伝わってこなかった。







通信・放送行政の疑念拭う徹底調査を(2021年3月15日配信『日本経済新聞』―「社説」)

 総務省幹部の接待問題をめぐり、武田良太総務相が第三者による検証委員会を週内に立ち上げると表明した。同省は利害関係者からの過剰接待が次々に明るみに出ている。通信・放送行政への信頼を取り戻すため、今度こそ徹底した調査を急ぐ必要がある。
 
 質疑を終え、一礼して参院予算委を退出するNTTの澤田社長㊧と東北新社の中島社長(15日)
参院予算委員会は15日、NTTの澤田純社長や放送関連会社「東北新社」の中島信也社長を参考人招致した。両氏は会社側が招待した総務省幹部が国家公務員倫理規程違反で相次いで処分されている現状について謝罪した。

 総務省は同日、NTTによる接待の追加調査報告を公表した。すでに明らかになった谷脇康彦・前総務審議官らに加え、新たに2018年に秋本芳徳・前情報流通行政局長と当時総務審議官だった鈴木茂樹・前事務次官も接待を受けていた事実が判明した。

 NTT側は自民党の歴代の総務相や総務副大臣らとも会食し、関係業者からの供応接待を禁じた大臣規範に抵触するのではないかと指摘されている。一連の会食は安倍前政権が携帯電話料金の引き下げに動いた時期と重なり、野党は通信政策の公平性や透明性をゆがめた可能性を追及している。

 東北新社は16年以降に総務省職員をのべ39件接待し、うち21件に同社に勤務する菅義偉首相の長男が出席した。同社は17年に総務省から衛星放送の認定を受けた際、放送法の外資規制に違反していたと最近になって判明した。

 中島社長は予算委で、17年8月時点で外資規制違反の可能性に気づき、違反を避けるため衛星放送事業の子会社への承継を総務省に提案したと明かした。総務省幹部は「当時の文書やメモでそのような報告はなかった」と述べ、説明が食い違っている。

 総務省が近く設置する検証委員会は、法曹関係者らで構成する。民間事業者との接点が多い情報通信を担当する本省の課長級以上と次官、官房長、会計課長など官房幹部を経験した現役職員も対象に調査するという。接待や金品授受などの全容解明に加え、通信・放送行政がゆがめられた事実の有無が重要なポイントだ。

 政府は国家公務員の倫理規程違反の根絶だけでなく、過去の閣僚や副大臣らに大臣規範から逸脱する行為がなかったのかも調査し、是正策を講じるべきだ。公正な行政への疑念が生じないよう襟を正していく必要がある。



見えざる手(2021年3月15日配信『高知新聞』-「小社会」)

 携帯電話をスマートフォンに替えて随分たつが、いまだに扱いに慣れない。最近ようやく同僚とLINE(ライン)を始めた程度。各種アプリのダウンロードさえ、戦々恐々の体たらく…。
 
 それでもいいと高をくくっていたが、そういうわけにもいかなくなった。携帯各社が始めた料金引き下げ。手続きについて、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社はオンライン申し込みに限定している。
 
 これだとスマホやネットを使いこなせる人は安い契約を結べよう。一方で小欄のように不慣れで、店頭に行かないと分からない者は高い料金のまま。何と理不尽な。地団駄(じだんだ)を踏んでいたら、店舗でも申し込める会社が出てきた。まっとうな市場の競争原理であろう。
 
 「消費者の利便性を第一に、より分かりやすく」。商いの鉄則だろうが、これもないがしろにされてきたようである。総務省幹部への違法接待で、NTTと放送事業会社「東北新社」の社長がきょう国会に参考人招致される。
 
 接待攻勢は衛星放送の認可が更新される直前だったり、官房長官時代の菅首相が携帯料金値下げに言及した時期に重なったりしている。高額接待の目的は何か。核心が分からないままでは、携帯料金引き下げも素直には喜べない。
 
 人間の自由な意思と競争が巧みに均衡を保つ。市場にはそんな「神の見えざる手」が働くという。真相を究明する見えざる手が、国会にありやなしや。





東北新社認定取り消し なぜ不正が見逃されたか(2021年3月14日配信『毎日新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」が放送法の外資規制に違反していたと政府が認め、子会社の衛星放送事業の認定取り消しを決めた。菅義偉首相の長男ら同社幹部が総務省幹部を接待していた問題が追及される中で明らかになった。

 放送法は、衛星放送事業者の外資比率を20%未満と定めている。

 東北新社は2017年1月に認定を受けた。当時は20%未満として申請していたが、改めて確認すると実際には20・75%だった。

 保有比率が1%未満の外国人株主を除いて計算したミスだと説明しているという。

 武田良太総務相は「総務省の審査も十分でなかった」と述べた。

 認定にあたり、有価証券報告書などによる確認を一切していなかったという。これでは事業者の申請をうのみにしていることになる。そこまで仕事をしていなかったというのは不自然だ。

 接待問題では、総務省幹部11人が処分された。接待の一部は申請や認定の時期とも重なる。関連はなかったのだろうか。

 総務省幹部に対しては、NTTによる接待も問題になっている。その相手は官僚だけでなく、国会議員にも広がっている。

 総務相を務めた自民党の野田聖子、高市早苗両衆院議員ら歴代の政務三役4人がNTT幹部との会食を認めた。私的な会合だと述べ、接待を否定しているが、関係業者からの供応接待を禁じた大臣規範に抵触する可能性がある。

 武田氏がNTTとの会食の有無について答弁を避け続けていることも問題だ。何かを隠していると勘ぐられても仕方がない。説明できないのであれば、国民からの信頼回復は望めない。

 一連の接待で行政がゆがめられたのかどうかが疑惑の核心だ。

 同省は、検察官出身の弁護士ら外部有識者による検証委員会を作るという。当初はトップに副総務相を据えようとしたが、批判を浴びて方針転換した。実態解明への本気度が疑われる。

 衆参両院の予算委員会はそれぞれ、週明けに東北新社とNTTの社長を参考人として招致する。「調査中」などを理由に、口をつぐむことは許されない。

 接待の裏で何があったのか。事実を徹底的に究明すべきだ。



神様にも恥じない倫理を(2021年3月14日配信『南日本新聞』-「南風録)

 祭りや神事の後、参加者が共に飲食することを「直会(なおらい)」という。慰労会みたいなものと思っていたが、これもまた儀式の一部であることを民俗学者、柳田国男の著書「毎日の言葉」に教えられた。

キャプチャ

 神様をお迎えして同じ場所で同じ物を食べる行為自体に、特別な意味があるのだという。昔の人はそんな時、賜り物である食べ物を頭の上に押し頂いてから口に運んでいたはずで、食事を「いただく」の由来と柳田はみる。

 食にありつけることを感謝しつつ、顔を突き合わせて箸を運ぶ。こうして連帯感を育むのは神事に限らず、今も昔も変わらない。だが、世の中には賜り物の出どころに無頓着な面々がいるようだ。

 総務省幹部が利害関係にある民間事業者から高額接待を受けていたことが、相次いで明らかになった。疑惑は歴代総務相ら政治家にも飛び火し、意見交換の場だったとか、飲食代は返金したとか、弁明に追われている。

 利益誘導はなかったのか、表沙汰にならないよう息を潜めている人は他にはいないか、徹底的に調べるべきだ。個人的な会食というなら、癒着を疑われる場に顔を出すことと倫理観の折り合いをどうつけているのか、説明が聞きたい。

 連帯感でつながるべき相手かどうかの判断基準が、国民感情とかけ離れていては困る。政治は「まつりごと」ともいう。神様にも恥じない倫理を求めるのは高望みだろうか。



答弁拒否とは寝ぼけてるNTT社長(2021年3月16日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★15、16の両日行われる参院予算委員会の集中審議では東北新社やNTTの官僚や政治家、政務三役への会食が主なテーマとなった。だが、ごちそうになった段階で、そこに職務権限の有無や仕事の話をしたか否かの問題の前に会食ではなく接待というべきだと双方が認識すべきだ。片方が一方的にその会合の支払いを持ったのならば、そこで接待になるのではないか。

★NTT社長・澤田純は質疑で首相・菅義偉との会食はあったかの問いに「NTTは3分の1の株を政府が保有している特殊会社だ。それと同時に上場会社でもある。上場会社の社長が個別にどなたかと会食をしたか否か、これを公の場で公開することは事業に影響を与えるものだと考えている。個別の会食については控えさせていただきたい」と答弁を拒否した。政府が株を保有する特殊会社だからこそ、政界関係者との会食が1つ1つ疑念や疑惑を持たれるのだから、会食自体を慎重にすべきだ。答弁の性質があべこべだ。既にその会食が問題となって国会にまで呼ばれているのだから、控えること自体無意味だ。上場会社の品格すらないといえる。いずれにせよ、ほとんどの国民はNTTに支払いこそあれ、支払ってもらうことなどまずない。澤田は堂々と寝ぼけたことを言っているにすぎない。

★一方、総務省は13日、利害関係者と会食する際に必要な省内の届け出が過去5年間で8件しかなかったと公表した。形骸化していたのか、業者との会食は監督官庁の当然の役得と考えていたか、接待をされることを承知で利害関係者の誘いに乗っていた実態が明らかになった。加えて総務省は15日、NTTによる高額接待の調査は、放送や情報通信を担当する部局の課長級以上など現役職員144人を対象に広げたと発表した。大蔵省は軽い気持ちで接待を受けていたものの、最後は逮捕者を出し、大蔵省は解体された。お仕えした菅“大臣”は守ってくれない。



総務省の接待問題(2021年3月16日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

行政ゆがめた疑惑は深まった

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送関連会社「東北新社」とNTTによる総務省の接待問題が深刻な広がりを見せる中で、参院予算委員会で集中審議が行われました。東北新社の中島信也社長とNTTの澤田純社長が参考人として初めて国会に出席しました。中島氏は、正剛氏が接待に出席したことの狙いについてはごまかしの答えに終始し、澤田氏も総務相ら政治家への働きかけはなかったなどと主張しました。しかし、説得力はありません。高額接待で行政がゆがめられた疑いは深まるばかりです。

外資規制違反なぜ見逃す

 放送法は放送事業者に対する外国株主の議決権を20%未満と規定しています。東北新社が2016年10月にBSチャンネル「ザ・シネマ4K」の事業認定を申請した際、外資比率が20%を超えていたのに認められ、17年1月に認定を受けました。なぜ総務省が見過ごしたのか、異常な接待との関連が問題になりました。

 国会に出席した中島社長は、17年8月初めになって外資規制に違反していることに気付いて総務省に伝えたと説明しました。総務省側は、東北新社から外資規制違反が報告された記録もないと繰り返し、説明の食い違いが際立ちます。「ザ・シネマ4K」は、東北新社から子会社の東北新社メディアサービスに承継されました。承継にあたっても、総務省のチェックが入っていなかったなどとは、まったく不可解です。

 子会社への承継を決裁した際の、総務省の最上位の幹部は、当時情報流通行政局長だった山田真貴子前内閣広報官でした。同氏は東北新社から高額の接待を受けていました。接待への見返りや、正剛氏の父親、菅首相への忖度(そんたく)はなかったのか。衛星放送の電波割り当てについても、東北新社に有利な政策変更がなされた疑いも消えません。

 総務省の幹部職員だけでなく政務三役らを接待していたNTTの澤田社長は、会食で便宜を受ける話はしていないなどと言い張りました。菅首相も武田良太総務相も、会食したのかどうかさえ答えません。疑惑解明に背を向ける姿勢は大問題です。

 接待が増加したのは、菅首相が官房長官時代から推進してきた携帯電話料金の値下げの動きが進められた時期です。NTTがドコモを完全子会社にして、料金を値下げしようとした動きとも重なります。一連の接待が、総務省がNTTを利する取り計らいをするきっかけにならなかったのか。究明が必要です。

 携帯電話料金という国民生活に深くかかわる問題で行政がねじ曲げられたとすればことは重大です。国民・利用者のためにも疑惑の解明は不可欠です。

菅正剛氏も国会へ呼んで

 NTTの総務省幹部の接待では、総務省は秋本芳徳前情報流通行政局長も会食していたことを新たに発表しました。総務省は対象を広げて調査するとしていますが、同省任せにはできません。

 中島社長や澤田社長だけでなく、東北新社関連会社の木田由紀夫前社長らや正剛氏を国会に呼んで、事実をただすべきです。接待が明らかになった、総務相、総務副大臣、政務官の政務三役経験者も国会に招致し、真実を語らせることが求められます。





総務省の疑惑 国会での究明急がれる(2021年3月13日配信『北海道新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」が放送法の外資規制に違反していたにもかかわらず、事実と異なる申請をしていたとして、武田良太総務相は衛星放送事業の認定を取り消すと発表した。

 武田総務相は「東北新社の申請書におけるミスが主たる原因だったとはいえ、総務省の審査も十分でなかった」と陳謝したが、単なるミスでは済まない。

 東北新社は菅義偉首相の長男正剛氏が勤務し、総務省幹部への接待を繰り返していた。

 それが甘い審査につながった可能性はないのか。国会で経緯を詳しく検証し、公正であるべき行政がゆがめられていないかを徹底的に究明しなければならない。

 東北新社は2016年10月に衛星放送事業の認定を申請した時点で、外資比率を20%未満としていたが、実際は放送法に違反する20%以上だった。

 放送法の外資規制は公共の電波を利用する放送の独立性を保つのが目的だ。厳格にチェックすべき項目であり、軽微な違反ではない。

 東北新社は16年以降、総務省幹部に延べ39回、60万円超の接待を重ねていたことが明らかになっている。総務省は接待を受けた幹部11人を処分し、山田真貴子前内閣広報官が辞職した。

 山田氏は17年10月に東北新社が衛星放送事業を子会社に継承した際、情報流通行政局長として最終的な決裁をしている。

 総務相経験者の首相は総務省に強い影響力を持ち、山田氏を重用してきた。しかも長男が勤務する東北新社を巡る問題で、行政への不信を招いた責任は免れない。

 総務省の接待問題では、自民党の野田聖子幹事長代行と高市早苗衆院議員が総務相在任中に、坂井学官房副長官と寺田稔衆院議員が総務副大臣時代にNTT幹部と会食していたことが判明した。

 関係業者からの供応接待を禁じた大臣規範に触れる可能性があるが、4人は「接待ではない」などと釈明する。

 当事者が一方的に接待を否定しても説得力がない。会食の目的や交わされた会話を詳細に調べ、客観的に判断する必要がある。

 週明けには、衆参両院の予算委員会にNTTの澤田純社長と東北新社の中島信也社長が参考人として招致される。一連の疑惑について、きちんと答えてもらいたい。

 規範には罰則がない。両社から接待を受けた総務省幹部は処分されており、政治家に甘すぎる。見直しを検討すべきだ。



総務省接待疑惑 国会で事実解明進めよ(2021年3月13日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 放送事業会社・東北新社による総務省幹部に対する違法接待問題をきっかけに、今度はNTTが過去の総務相ら政治家や官僚に高額な接待を繰り返していた疑惑が浮上した。

 総務省は外部有識者による第三者委員会を設置し東北新社、NTTの会食接待の検証を行うとしている。しかし総務省が設置主体となる組織で、歴代の大臣経験者も対象に含む調査がどこまで徹底できるか疑問だ。国会の開かれた場でこそ真相究明に取り組むべきだ。

 東北新社に勤める菅義偉首相の長男らによる違法接待で懲戒処分を受けた谷脇康彦前総務審議官ら幹部2人がNTTの接待を受けていた。NTTは事業計画や取締役選出に関し総務省の許認可を必要とする。国家公務員倫理規程で定める「利害関係者」だ。利害関係者から接待を受けることは禁止されている。

 谷脇氏は3件で計約10万7千円の接待を受けていた。うち1件だけ5千円を自己負担したが、応分負担には程遠い。しかも国会では、東北新社以外とは「倫理法令に違反する会食はない」と明言していた。総務省も内部調査に基づき「他に違反はなかった」と説明した。

 谷脇氏には虚偽答弁の疑いがある。更迭されたのは当然だ。さらに事実関係を解明することが必要だ。総務省のずさんさも目に余る。内部調査の経緯と責任の所在を明らかにすべきだ。

 自民党の野田聖子幹事長代行と高市早苗衆院議員は総務相在任中にNTT幹部と会食していた。副大臣経験者2人も同様だった。野田、高市の両氏は会食の事実を認める一方、自己負担したなどとして接待ではないとの認識を表明している。

 総務省は第三者による検証委員会で野田氏ら政治家も含め調査する方針だ。武田良太総務相は当初、第三者委のトップに副大臣を充てる方針だったが、副大臣秘書がNTT側と会食していたため撤回した。こうしたことも国民の疑惑を膨らませるばかりだ。

 東北新社の放送法違反も判明した。放送法は衛星放送の認定事業者の外資比率は20%未満と規制。東北新社は認定を申請した時点で20%以上だった。認定後は子会社に事業を承継した。東北新社からミスとして報告を受け、総務省はBSの洋画専門チャンネル「ザ・シネマ4K」の認定を取り消す方針だ。

 違反を見逃した総務省の責任は重い。総務省は接待により行政がゆがめられたことはないとするが、事業承継手続きを最終決裁したのは当時、総務省に在籍し、その後接待を受けた前内閣広報官だ。第三者委とはいえ、省主導の調査は信頼し難い。

 与野党は東北新社とNTTの社長を国会に招致することで合意した。野党は野田氏、高市氏らの招致も要求したが、与党は拒否。客観性や透明性を担保するには、国民の代表である国会による調査以外に道はない。



総務省と電波 ふさわしい担い手か(2021年3月13日配信『東京新聞』-「社説」)

 違法状態にもかかわらず「東北新社」の衛星放送事業はなぜ認定されたのか。高額接待と関係はないのか。一連の接待問題は総務省が放送・電波行政の担い手として適格なのか、疑問を投げかける。

 武田良太総務相がきのう放送事業会社「東北新社」の子会社「東北新社メディアサービス」が承継している衛星放送事業の認定を取り消す方針を明らかにした。

 放送法の規制に違反し、外資比率が20%以上だったにもかかわらず、事実と違う東北新社の申請通りに認定した総務省の手続きに重大な瑕疵(かし)があったという。

 対象はBS放送「ザ・シネマ4K」。17日に非公開で聴聞を行い、子会社側に弁明を求める。

 法律に違反していた以上、認定の取り消しは当然だ。

 しかし、なぜ放送法違反が見逃され、東北新社側の誤った申請通りに事業が認められたのか。

 総務省側は、有価証券報告書など公開資料で外資比率が20%以上となっていることを、担当者が知らなかったと説明している。
 国民の共有財産である電波の使用認可を、そのようなずさんな手続きで行っていたとしたら極めて重大だ。子会社への事業移管を決裁した当時、情報流通行政局長だった山田真貴子氏を含む担当者の厳正な処分を求める。退職済みという言い訳は通用しない。

 しかし、瑕疵だったとする同省の説明は、にわかには信じ難い。

 同省幹部は、菅義偉首相の長男・正剛(せいごう)氏が勤める東北新社側から高額接待を繰り返し受けていたからだ。外資比率という違法行為を見逃し続けたのは、接待の見返りではなかったのか。国民にそう勘繰られても仕方があるまい。

 衆参両院予算委員会がそれぞれ参考人として呼ぶ東北新社の中島信也社長は就任したばかりだ。

 実際に接待していた前社長の二宮清隆氏やメディアサービス社の木田由紀夫前社長、正剛氏も証人か参考人として国会に呼び、接待の狙いなどをただす必要がある。

 山田氏や谷脇康彦前総務審議官ら接待された側にも公平、公正であるべき行政判断に手心を加えたことがないと断言できるのか、問いたださねばなるまい。

 東北新社やNTTによる高額の接待攻勢は、総務省の官僚が放送・電波行政の担い手としてふさわしいのか、疑問を生んだ。
 放送・電波行政は、かつての電波監理委員会のような政府から独立した行政機関が担うにふさわしい。検討すべきだと考える。



東北新社の認定 首相への忖度なかったか(2021年3月13日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」の衛星放送事業の認定が取り消される見通しになった。

 外資比率が放送法の規制に違反して20%を超えていたのに、総務省が見過ごして認定していた。対象は2017年1月に認定されたBS放送「ザ・シネマ4K」だ。

 菅義偉首相の長男正剛氏が勤務している同社は、認可の権限を持つ総務省幹部に接待を繰り返していたことが分かっている。接待には正剛氏も出席していた。

 現時点では接待との関連は不明だ。検証しなければならないことは多い。行政がゆがめられた疑念は拭えない。

 まず違反を見過ごした理由だ。

 東北新社の公開資料では外資比率が20%以上となっていた。総務省の説明では、担当者がそうした資料の存在を知らず、同社が「20%未満」と事実と異なる内容で申請した書類を認定したという。

 調べれば違反は簡単に分かるはずだ。「チェックが十分ではなかった」とする武田良太総務相の説明では納得できない。

 本来は一度認定したとしても、違反が発覚すれば、取り消す必要がある。それなのに総務省は認定の状態を放置した。

 東北新社は17年10月に事業を子会社に移管し、違法状態が解消されている。最初の認定自体が違法だったのだから、子会社への移管は認められないはずだ。あまりにずさんな手続きである。

 この手続きを決裁したのは、情報流通行政局長だった山田真貴子・前内閣広報官だ。山田氏は19年11月に同社から高額接待を受けたことが分かっている。当時の同社との関係や移管を認めた理由などを詳細に調べる必要がある。

 加藤勝信官房長官は当初、退任した山田氏を、接待問題の調査対象にしない意向を示していた。その後の問題の拡大で、総務省が山田氏を調査対象にすると明らかにした。菅首相の甘い認識も浮き彫りになったといえる。

 武田総務相は第三者による検証委員会で接待問題を調査するという。メンバーには総務省職員を入れず、「客観性、中立性を築き上げる」とする。

 検証委トップに就任予定の副大臣には、関係者がNTTから接待を受けた疑惑が出ている。これでは客観性、中立性は担保できない。人選を見直すのが当然だ。

 今回の問題の本質は、現在も省内に大きな影響がある菅首相に忖度(そんたく)し、幹部が行政をゆがめたのかどうかだ。調査への疑念を払拭(ふっしょく)しなければ国民は納得しない。



総務省接待問題 不信の念が膨らむ一方だ(2021年3月13日配信『新潟日報』-「社説」)

 高額の費用をかけた会食に、官僚だけでなく、大臣ら政治家も参加していた。接待問題はどこまで広がるのか。国民の不信感は膨らむばかりだろう。

 総務省の接待問題が連日のように世間を騒がせている。

 NTT側から総務省幹部への高額接待に関する調査の中間報告が8日、公表された。谷脇康彦総務審議官が3件計10万7千円、巻口英司国際戦略局長が1件5万1千円の接待を受けていたと認定された。

 いずれも国家公務員倫理規程に違反する疑いが強いとされ、谷脇氏は8日付で官房付に更迭となった。

 谷脇氏は先月、菅義偉首相の長男正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」からの違法接待で減給の懲戒処分を受けた。しかも国会などで東北新社以外に違法接待は受けていないと説明していたのに、それが覆った。

 放送、通信行政への信頼を失墜させた谷脇氏の責任は極めて重い。更迭は当然だ。

 新たな疑惑も判明した。

 今週発売の週刊文春は、NTTの澤田純社長らが総務相当時の野田聖子・自民党幹事長代行や高市早苗衆院議員を接待していたと報道した。副大臣だった2氏の接待疑惑も報じられた。

 国務大臣規範は、関係業者から供応接待を受けることを「国民の疑惑を招くような行為」として禁じている。

 野田氏、高市氏とも会食の事実については認めたが、「懇談会」「意見交換」などとして接待については否定した。

 会食の中で要望や頼み事はなかったとした。谷脇氏ら官僚も利益誘導につながる話はなかったなどとしている。

 利益誘導などもちろん許されない。一方で、業者側に高額な費用を負担してもらう会食に参加していたという自身の行為そのものが問題視されているとの認識はあるのだろうか。

 そうした関係が、見えないところで癒着やなれ合いを生み、行政の公平性や公正性をゆがめ、国民に不利益をもたらすのではないか。問われているのはそこだろう。

 いずれにしても不可欠なのは全容の徹底解明だ。

 谷脇氏がNTTから接待を受けた2018年9月は政府が求める携帯電話料金引き下げへの対応が焦点となっていた。NTTによる接待があった時期は経営の重要な節目に重なる。

 東北新社は放送法の外資規制に違反しながら衛星放送事業の認定を受けていたが、接待問題との関連はないのか。

 武田良太総務相が国会でNTT幹部との会食があったかどうかを再三問われ、明言を避け続けているのも気に掛かる。

 総務省は違法接待問題について第三者委員会で検証する方針を示しているが、さまざまな疑問について国会も含め解明に当たる必要がある。

 週明けの国会にNTTの澤田社長や東北新社の中島信也社長が招致される。接待の狙いや他の総務省接待の有無などを、厳しくたださなければならない。



総務省「接待」問題 癒着、根こそぎ解明せよ(2021年3月13日配信『中国新聞』-「社説」)

 放送や通信事業の許認可権を握る総務省の「接待」問題が、底なしの様相を呈している。放送関連会社「東北新社」の違法接待を受けた省幹部が処分されたばかりなのに、利害関係者との癒着疑惑が新たに発覚した。

 官僚が、東北新社による放送法違反を見過ごしていた。さらに大臣をはじめ歴代の政務三役が通信大手NTTの「接待」を受けていた疑惑も浮上した。真相の徹底的な解明が急がれる。

 東北新社は2017年1月、放送法の定めた外資の出資比率を満たしていなかった。それでも衛星放送事業の認定を総務省に申請して認められた。

 違反だったとの指摘を受け、総務省は、子会社に引き継がれた衛星放送の認可を取り消す手続きを始めた。当然だろう。

 問題はなぜ違反に気付かなかったか、である。武田良太総務相はきのう「重大な瑕疵(かし)があった」と不手際を認めた。二重にチェックするなど万全の態勢を敷いていなかったようだ。

 省幹部はNTTにも接待されていた。発覚したのは、東北新社による接待以外に「違反はなかった」との内部調査結果を国会に示した後だった。どこまで緩んでいるのか。組織として自浄能力を欠いている。

 追い打ちをかけたのが、高市早苗、野田聖子両元総務相らもNTTの「接待」を受けていた疑惑である。関係業者から供応接待や贈り物、便宜供与を受けるなど、国民の疑惑を招くような行為を禁じた「大臣規範」に抵触する恐れがある。

 本人らの言い訳がふるっている。「プライベートな懇談会」「意見交換」など規範に反していない会食だと強調する。

 しかし疑惑を招くような行為かどうかを判断するのは国民である。会食に応じたり誘ったりして疑惑を持たれている人に、そんな権利はなかろう。そもそも特定の会社の会食だけに応じていたなら、行政は既にゆがめられたと言えよう。

 総務省はこの問題で、有識者による検証委員会トップに新谷正義・副大臣を充てる方針だった。予定されていたNTTとの会食はコロナ禍で流れたが、公設秘書が昨年秋に会食に応じたという。適任とは到底言えない。

 身内による調査には甘さや限界がある。NTTによる接待疑惑は、内部調査では出てこなかった。独立性・透明性を確保できる第三者によって根こそぎ解明することが必要だ。

 菅義偉首相が、行政や政治への信頼回復を目指すのであれば徹底調査を指示すべきである。もちろん、疑惑を抱える政務三役も対象に含めねばならない。

 というのも、政官業の癒着は総務省だけの問題ではないからだ。農林水産省では、鶏卵生産大手から現金を受け取ったとして収賄罪で吉川貴盛元農相が在宅起訴され、「接待」を受けていた省の幹部が処分された。内閣府ではカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件では、元副大臣が収賄などの罪で起訴されている。

 安倍前政権以来の体質の表れだろう。長期政権のおごりがあるかもしれない。森友、加計学園問題や「桜を見る会」を振り返っても、内輪びいきや忖度(そんたく)が目に余った。癒着を生む土壌にまで切り込む好機とも言える。うみを出し尽くさない限り、再発防止はおぼつかない。



疑惑のまな板の鯉が…(2021年3月13日配信『中国新聞』-「天風録」)

 示し合わせているのだろうか。NTT接待疑惑で名前の浮かんだ歴代総務相ら政治家が何やら、判で押したように予防線を張っていた。「国民の疑念を招くような会食や会合に応じたことはない」

▲何のことはない。疑念の2字を疑惑と入れ替えれば、大臣規範の一節をなぞっただけ。ここが防御ラインと踏んだと見える。事実を問い詰める相手に真正面から答えず、はぐらかす「ご飯論法」を思わせる。否、こちらは新手の「会食論法」だろう

▲黒白をつけるのは、まだ今からである。疑惑のまな板に載せられた格好の「鯉(こい)」が、とやかく言う幕ではあるまい

▲肝心の検証委員会は、忖度(そんたく)抜きの独立色が骨抜きとなる気配もある。検証委トップの座には驚くことに、新谷正義総務副大臣が就くと目されていた。本人の会食こそコロナ禍で流れたものの、右腕の公設秘書がNTT側から接待を受けていたと聞く。さながら、まな板の上の鯉が包丁を握るようなものでないか

▲総務省幹部の違法接待が明るみに出た時に、どうして誰も名乗り出なかったのだろう。いっそ閣僚は、新聞各紙やNHKの報じる首相動静に倣い、会食の相手や話題を自ら洗いざらい公にすればいい。



【東北新社問題】確認不十分で済むのか(2021年3月13日配信『高知新聞』-「社説」)

 総務省官僚への違法接待を繰り返していた放送事業会社「東北新社」の衛星放送事業について、総務省は一部の認定取り消しを決めた。武田良太総務相が明らかにした。

 放送事業を行う企業に対しては、法人や団体など外国資本の出資する割合が全体の20%未満であるよう法で規制されている。ところが同社は2016年10月、同省に認定を申請した時点で実際は20%以上だったのに、20%未満としていた。

 5日の参院予算委員会で立憲民主党議員から質問され、総務省の担当局長は「事実であれば違反の可能性が高い」と答弁していた。

 認定取り消しについて、武田氏は「チェックが十分でなかった」として、東北新社からも申請にミスがあったと報告を受けた、と説明した。だが公開されている有価証券報告書を少し調べれば当時、同社の外国資本の出資割合が20%以上だったことは分かったはずだ。同省の担当者は知らなかったという。

 チェック不十分、ミスが原因で済む問題ではなかろう。

 放送事業者に対する外資規制は、公共の電波が国民の財産であるという観点がある。国外の特定の勢力が支配する事業者に、国民の財産が悪用されてはならない。それを防ぐのが目的で、放送法の根幹に関わる問題ともいえる。

 衛星放送事業の認定を受ければ、利潤につながる。東北新社は子会社が運営する衛星放送が八つのチャンネルを持ち、売り上げの柱の一つとなっているほどだ。

 こうした経緯がありながら、総務省の官僚は16年以降、違法な接待を受け続けてきた。武田氏は「行政がゆがめられた事実はない」と繰り返す。だが、官僚の違法接待に始まり、新たな事実がこれほど明らかになっては、その言葉にどれほど説得力があろう。本当に行政はゆがめられていないのか。

 東北新社は衛星放送事業の認定を受けた後、外資比率が20%以上のままで事業を子会社に移している。当時総務省で担当局長だった山田真貴子・前内閣広報官がこの手続きを決裁したことも分かっている。

 総務省官僚に法外な額の接待をしていたNTTが、総務相在任時の野田聖子・自民党幹事長代行や高市早苗衆院議員らにも接待していたことも報じられた。総務省の接待問題はさらに広がる様相をみせている。

 大臣、副大臣ら政務三役は規範で関係業者から供応接待を受けることが禁じられている。高市氏は飲食の際に手土産を持参していたなどと反論している。野田氏は報道後に飲食代を支払った上で「懇談会という認識だった」とし、共に接待ではないと主張する。

 政治家や官僚と、利害関係のある事業者との結び付きに国民の疑念は膨らみ続けているのが現実である。総務省は歴代政務三役も含めて第三者による検証に着手する。武田氏は「信頼回復に努める」とも口にするが、何より全容を明らかにしないことには到底、信頼は得られない。





総務省接待問題 国会の場で調査尽くせ(2021年3月12日配信『東京新聞』-「社説」)

 谷脇康彦総務審議官の更迭は当然だが、身内の調査には限界もある。NTTによる歴代総務相ら政治家に対する接待も明らかになった。国会は国政調査権を行使し、徹底的に究明する必要がある。

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」側からの高額接待で減給処分を受けた谷脇氏が、NTTからも高額接待を受けていた。総務省は同氏を官房付とした。事実上の更迭だ。

 谷脇氏は東北新社を巡る同省の調査や国会答弁で他に違法接待はないと答えていた。NTTからの違法接待を把握できなかった身内調査の限界だ。同省が外部有識者で構成する検証委員会を設ける方針に転じたのは当然だ。

 国権の最高機関である国会での虚偽答弁は、さらに重大である。

 許認可権を持つ官僚を、利害関係者が接待することは、行政の公平、公正性を著しく害する。国会は、接待した側された側の双方を証人または参考人として呼び、徹底的に追及すべきである。

 解せないのは谷脇氏らと同様、高額接待を受けた山田真貴子氏が一連の調査対象から外されていたことだ。すでに総務省を退職し、内閣広報官も辞したとの理由だったが、とても納得できない。

 そもそも山田氏が東北新社やNTTから高額接待を受けたのは、現職の総務審議官当時である。

 また、東北新社が衛星基幹放送事業者として認定を受けた後、外資比率が放送法の規制上限を超えたにもかかわらず、総務省は認定を取り消さず、子会社への事業移管も認めた。この移管を決裁したのは情報流通行政局長だった山田氏であり、無関係たり得ない。

 違法状態がなぜ見逃されたか。認識しながら事業移管を認めたのか。重大な疑義がある以上、国会による調査に応じるべきだ。
 NTTによる接待は谷脇、山田両氏らだけでなく、総務省に関連する政治家にも広がっていた。

 週刊文春の新たな報道によるとNTT側は総務相在任当時の野田聖子自民党幹事長代行、高市早苗衆院議員、総務副大臣当時の坂井学官房副長官や寺田稔衆院議員を接待していた。関係業者からの供応接待を禁じる国務大臣規範に抵触する可能性がある。

 衆参両院の予算委員会はそれぞれ週明けに、NTTの澤田純社長を参考人として招致する。

 国会は、再発防止策を講じるためにも、事実関係を徹底的に解明すべきだ。それが与野党を問わず国民から負託された責務である。



[東北新社認定取り消しへ]あり得ない見逃しなぜ(2021年3月13日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 総務省幹部への高額接待を繰り返していた放送事業会社「東北新社」が、衛星放送事業の一部の認定を取り消される見通しとなった。放送法で定める外資規制への違反が明らかになったためだ。

 違法であれば取り消しは当然である。ただ、それで幕引きにしてはならない。

 衛星放送事業の取り消しは過去に1件しかない。異例の事態だ。あり得ない違反見逃しがなぜ起きたのか。チェック機能がなぜ働かなかったのか。菅義偉首相の長男らによる一連の接待との関連を含め、徹底的な調査が必要だ。

 放送法は外資による支配を防ぐ目的で、基幹放送事業者に対し外資の比率を20%未満に制限している。

 ところが東北新社は外資比率が20%を超えていたにもかかわらず2017年1月、BS放送「ザ・シネマ4K」の認定を受けた。その後、子会社への承継も認められた。

 この問題は、5日の参院予算委員会で立憲民主党の議員の指摘で明らかになり、武田良太総務相は12日、認定の手続きに「重大な瑕(か)疵(し)」があったと認めた。

 総務省によると、担当者が有価証券報告書などの公開資料で外資比率を確認せず、報告書と齟(そ)齬(ご)のある申請書類でそのまま認定したという。

 本当に確認不足なのか。識者は「外資比率は重要な項目で、見逃すことはあり得ない」と指摘する。

 もし違反を見抜けなかったとすれば許認可権を持つ行政としてあまりにもずさんだ。放置した側の責任も厳しく問われなければならない。

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 総務省はいつの時点で問題を把握していたのか。

 12日の参院予算委では、東北新社が事業を子会社に引き継ぐ前の時点で、規制に抵触する可能性があると認識し、総務省に伝えていたと説明していることが分かった。一方で総務省の担当者は「報告を受けた覚えはない」とし、主張が食い違っている。

 週明けには東北新社の社長の参考人招致が予定されている。納得できる説明を求めたい。

 東北新社による総務省への接待問題では、計13人が延べ39件の接待を受けていたことが分かっている。

 「ザ・シネマ4K」を子会社に移す手続きを最終的に決裁したのは、そのうちの1人、山田真貴子前内閣広報官。当時は情報流通行政局長だった。

 事業者と官僚の「近すぎる関係」は認定と関わりがあるのか、放送行政がゆがめられた事実はないのか、疑念は深まるばかりだ。

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 総務省を巡っては幹部がNTTからも高額接待を受けていたことが分かった。

 さらに野田聖子自民党幹事長代行ら総務相経験者らとNTT側との会食も明らかになった。

 武田総務相は「疑惑を招く会食に応じたことはない」と繰り返すもののNTTとの会食の有無は答えず、国民の不信を招いている。

 問題は根深く、底なし沼の様相を見せる。総務相を経験し、今も省内に影響力を持つ菅首相の責任も問われている。



「会食したが接待ない」ご飯論法だろう(2021年3月13日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★昨今の国会の議論だけ聞いていて、与党の発言をまとめただけでも、これをまっとうな政治と呼んでいいのかと思うことばかりだ。安倍政治の延長が通用すると感じているのはその恩恵を受けていた関係者だけで、安倍政権がつくり上げた方便がまかり通る時代ではない。安倍政権では詭弁(きべん)を弄(ろう)して不都合を合法的にするため疑惑が向けられた首相夫人を私人とするなどの閣議決定が多く行われてきた。

★安倍政権時代の不始末を覆い隠すために以下の発言を閣議決定でもして、逃げ切ったらいかがか。無論、そんなことを選挙前にやってみたらいい。いくら何でも政権の犯罪を国民は見逃さない。

★NTT側からの接待で前総務相・高市早苗は自身のホームページに「大臣も副大臣も『通信事業の許認可に直接関わる』ことなどない。『最終決裁』をするのは、大臣や副大臣ではなく局長だ」とした。「大臣は決裁には関わらない」はぜひ閣議決定すべき案件だろう。加えて「会食はしたが接待は受けていない」というご飯論法も早急に閣議決定すべきだ。というのも自民党幹事長代行・野田聖子は総務相在任中にNTT幹部と会食したが、最近会食費を支払い「総務省とは関わらないプライベートの会合」「私的懇談会」と言い出した。さしずめ「接待の定義は確定していない」というところか。

★法相・上川陽子は総務副大臣退任後にNTT幹部から接待を受けていたとの報道には答えず「さまざまな方々と懇談を持ち、意見交換することは必要な政治活動。意見を聞かせてもらうあらゆる機会を大切にしている」とした。つまり職務権限がなければ接待とは言わないとの理屈を、編み出したのだ。これも早めに閣議決定しないと。ほかにもたくさんあるが、今日はここまで。



NTT政治家接待(2021年3月13日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

際限なく広がる疑惑は深刻だ

 NTTによる総務省をめぐる高額接待は、幹部職員にとどまらず総務相や副大臣ら自民党の政治家にまで及んでいたことが11日発売の『週刊文春』の報道で明らかになりました。名前が挙がった総務相経験者らは会食の事実を認めました。疑惑は文字通り底なしです。閣僚などが関係業者から接待されることは大臣規範に反します。接待の席で職務権限にかかわる話が出ていれば、収賄罪につながりかねない問題です。通信行政がゆがめられた疑いは一層深まりました。国会での徹底解明が急務です。

総務相や副大臣が次々と

 『文春』によれば、総務相在職中に接待されたのは野田聖子・自民党幹事長代行(2017年11月と18年3月の2回)、高市早苗衆院議員(19年12月と20年9月の2回)です。場所はいずれもNTTグループの迎賓館でした。総務副大臣経験者では坂井学内閣官房副長官(18年6月に1回)、寺田稔衆院議員(20年9月に1回)です。

 過去7年間では同迎賓館で接待された総務省政務三役(大臣、副大臣、政務官)経験者は十数人にのぼり、1人の費用は酒代込みで3万~5万円に設定されていたといわれます。通信行政に関係する自民党政治家がNTT接待にどっぷり漬かった実態が浮かびます。

 野田氏は「仕事についてはほとんど話していない」と述べ、高市氏は「(許認可などに関する依頼は)皆無です」などと主張します。しかし、関係業者と接触する際、「国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」とした大臣規範に照らせば逸脱は明白です。野田氏は1回分の飲食代を支払わず、坂井、寺田の両氏は全額NTT側の負担でした。武田良太総務相は自らのNTT接待の有無さえ答えません。疑念は膨らむばかりです。

 見過ごせないのは、18~20年の3年間の政務三役への接待が26回と、その前の3年間の3倍近いハイペースだと『文春』が報じたことです。菅義偉首相が官房長官当時、携帯電話料金の大幅引き下げを言い出したのが18年です。競争激化で利益率が業界3位に転落したドコモを、NTTが完全子会社にしてテコ入れする動きを強めた時期にも重なります。

 NTT接待で更迭された総務省の谷脇康彦前総務審議官は、接待の席で携帯料金値下げが話に出たことを認めています。首相の看板政策と結びついた疑惑をあいまいにできません。

 NTTは政府が株式を保有し、取締役の選任などで総務相の認定を受けます。政府と密接な関係にあるNTTの政治家接待の常態化の大本にメスを入れなければなりません。

何のためだったかを語れ

 総務省は、首相の長男・菅正剛氏が勤務する放送関連会社「東北新社」の衛星放送事業の認定を一部取り消す手続きに入りました。申請時に法律違反があったという理由です。総務省はなぜ違反を見抜けなかったのか。同社から繰り返された接待や菅首相への忖度(そんたく)はなかったのか。謎だらけです。認定取り消しでは済まされません。

 週明けの国会にはNTTの澤田純社長、東北新社の中島信也社長が招致されます。接待の全体像や狙い、行政に与えた影響などについて余すことなく語る責任があります。菅首相は解明を総務省任せにする姿勢を改める時です。





歌舞伎や狂言で、例えば「きょうは殊更に粗…(2021年3月12日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 歌舞伎や狂言で、例えば「きょうは殊更に粗略なきよう計らえよ」というせりふがあるとすると、ちょっと間を置いて「…なあ」と付け加える。相手も同じように、何か言った後に「なあ」

▼大抵は何か悪巧みの計画があって、計画をほのめかした後に「なあ」と言う。承知したという返答をにおわせて、相手も「なあ」と言えば、合意の成立だ。これが「なあなあ」の始まりだと小池章太郎『芸能語源散策』が言っている

▼通信事業者と監督官庁は、なあなあの関係なのだろう。NTTから高額な接待を数回にわたって受けたとして、総務省の審議官が更迭された。同席者も含めて、会食の場では互いに「…なあ」「…なあ」という会話が交わされていたか

▼問題の根っこにあるのは、総務省が持つ強大な権限だ。電波の周波数の割り当てだけでなく、事業計画や役員の選出など人事にまで同省の認可が必要だという。関係が深い企業と役所の不透明なつながりは昔からの問題だが

▼泥沼に沈み込む様子を表現する言葉に「ずぶずぶ」がある。なあなあで始まった総務省の違法接待問題は、今やずぶずぶの底なし沼の様相を見せている。過去の贈収賄事件の反省に立って制定されたはずの国家公務員倫理法が、まるでザル法だった現実に驚くばかりだ。



相次ぐ違法接待 「菅支配」のおごりだ(2021年3月10日配信『茨城新聞』-「論説」)

 総務省は、事務方ナンバー2である谷脇康彦総務審議官らがNTT側から高額接待を受けていた問題で、国家公務員倫理規程に違反する疑いが強いとする中間報告を公表、谷脇氏を官房付に更迭した。菅義偉首相が幹部人事を通じ支配してきたとされる総務省で、なぜ「違法接待」が相次ぐのか。総務官僚による首相への「忖度(そんたく)」の一方で、首相の重用を背景に「接待されても問題はない」との「おごり」があったと見られても仕方あるまい。

 中間報告によると、谷脇氏は2018年9月以降、3件で約10万7千円、巻口英司国際戦略局長が20年6月の1件で約5万1千円の会食接待を受けていた。NTT側は澤田純社長や岩本敏男NTTデータ相談役らが供応。谷脇氏の自己負担は最初の1回のみで5千円、巻口氏は1万円だった。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」とし、接待を受けたり、金品を贈与されたりする行為を禁止している。

 NTTは事業計画や取締役選出について総務省の許認可が必要な利害関係者に当たる。5千円のみで「参加費として応分の負担をした」との谷脇氏の釈明は国民感覚からかけ離れている。谷脇氏は総合通信基盤局長在任時から、官房長官だった菅首相が打ち出した携帯電話料金引き下げを推進してきた。首相の信任が厚く、それが慢心を生んだのではないか。

 総務省では先月、菅首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」による違法接待が週刊文春の報道で発覚。谷脇氏を含む11人が減給などの処分を受けたばかり。

 谷脇氏は処分後、国会で東北新社以外と「倫理法令に違反する会食はない」と明言。総務省も内部調査で「他に違反はなかった」と説明していた。野党が「虚偽答弁」であり、ずさんな調査だと批判するのも当然だ。

 巻口氏の接待には、総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官が同席していた。総務省は谷脇、巻口両氏への聞き取りからNTTと「利益誘導につながる話はなかった」としているが、山田氏の聴取も不可欠なはずだ。

 山田氏は東北新社の違法接待が判明後、「体調不良」を理由に内閣広報官を辞職。加藤勝信官房長官は「一般の方なので政府が事実確認する立場にない」と述べた。澤田NTT社長は国会招致されることになったが、放送行政をゆがめる不正の有無を含め全容解明するつもりがあるか疑問だ。

 東北新社に関しては、衛星放送基幹事業者の認定後、外国資本の出資比率が20%を上回り、放送法に違反していたことも分かった。同事業者の地位は子会社に引き継がれたが、その最終決裁をしたのは山田氏だった。

 菅首相への忖度から東北新社を特別扱いすることはなかったかを徹底調査し、NTT問題と併せ関係者への聴取全容を開示しなければ、行政不信は解消されない。

 そのために行政府の長として菅首相は指導力を発揮すべきだ。だが首相は総務省任せの姿勢を変えておらず、自身の政治責任については「国民の信頼を回復し、期待に応えていくのが責任だ」と繰り返すだけだ。これでは再発防止につながるかおぼつかない。政権中枢に近ければ近いほど「おごり」が巣くい、まん延していくことを憂慮する。



役人につけるクスリ(2021年3月10日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 20年余り前、官僚の大物OBが現役に苦言を呈して話題になった。元運輸事務次官で、JR東日本初代社長の故住田正二氏が役人を批判する著作を連発した。そのうちの一冊のタイトルが「役人につけるクスリ」である

▲規制緩和が求められた時代に強大な権限を握る役所に盾突いた格好だ。役人について「頭がいい。名を捨てて実を取るとか、骨抜きにするとかは大の得意」と分析。その上で「政治指導者がしっかりし、世論が後押しすれば『官』は必ず折れる」と対処の仕方を指南する

▲接待が問題となっている最近の官僚には、どんな「クスリ」を処方したらいいのだろうか。放送事業会社からの違法接待が発覚していた総務省では、事務方ナンバー2らがNTT側から高額の接待を受けていたことも明らかになった

▲行政の公正さが疑われる利害関係者からの接待に応じた官僚に弁解の余地はない。同時に政権が強力な人事権で霞が関を掌握してきた構造も問題だ。厚遇されておごり、左遷されないよう忖度(そんたく)する官僚が浮かぶ

▲住田氏もかつて、相次ぐ行政の不祥事はおごりから生まれると断じた。そして政治家が官僚を操縦できるのは「抵抗したら出世に響くから勝ち馬に乗るのだ」と解き明かす

▲やはり今の役人の問題の核心は政権にある。にもかかわらず首相らの言動をみると当事者意識が薄い。何よりも政治家につける「クスリ」の処方を優先した方がいいようだ。



総務相接待問題 省内調査の信頼も失った(2021年3月10日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 武田良太総務相が8日、NTT側からの高額接待に関する調査の中間報告を公表。同省幹部2人について国家公務員倫理規程に違反する疑いが強いと認定し、うち谷脇康彦総務審議官を更迭した。

 同省は先月24日に、菅義偉首相の長男が勤める東北新社からの接待を巡る懲戒処分を発表。その際「他に倫理法令違反はなかった」としていたが、報道を受けての後追い調査で完全に覆った形だ。これまでの省内調査のずさんさは否めず、調査自体の信頼も失ったと言わざるを得ない。

 中間報告によると、谷脇氏が2018年から20年にかけて3件計約10万7千円、巻口英司国際戦略局長が20年に1件約5万1千円の接待を受けていた。

 谷脇氏は、東北新社からの違法接待でも懲戒処分を受けている。だが、その他の利害関係者からの接待については、同省の当初調査では「ない」とされ、国会でも谷脇氏自身が「立食パーティーなどでの懇談だけ」と答弁していた。

 それが、東北新社による接待をスクープした週刊文春が、NTT側からの高額接待も報じると、谷脇氏らは一転して事実と認めた。総務省の対応は後手後手に回っており、国民の不信感は増すばかりである。

 武田総務相は8日の記者会見で、「違反行為がないか再三確認したにもかかわらず、新たな違反が確認されたことは甚だ遺憾」と述べたが、身内による省内調査の限界を自ら認める発言だろう。

 総務省、そして政府が本気で信頼回復を図るつもりがあるのならば、今後の調査については第三者機関を設置するとともに、国会では、うその証言が罰せられる証人喚問に、関係者を積極的に応じさせるべきではないか。

 その際ポイントとなるのは、接待の全容の解明とともに、それが国家公務員倫理規程だけにとどまる問題かということだ。

 通信行政の取り仕切り役であった谷脇氏がNTT側から接待を受けた時期は、総務省から通信業界への携帯電話料金値下げ要請や、NTTのNTTドコモ完全子会社化発表と重なる。

 東北新社については、4年前に外資規制に違反する状態になっていながら、衛星放送の事業認定が取り消されていなかったことが、国会での野党の指摘で明らかになった。同社が認定を受けた地位を子会社に引き継いだ際の決裁者は、当時の総務省情報流通行政局長で、同社から接待を受け内閣広報官を辞職した山田真貴子氏だ。

 一連の問題の発端は首相の長男による接待である上に、谷脇氏、山田氏ともに首相に近い存在とされている。首相の説明責任も問われよう。

 さらに、もしも接待が行政のゆがみにつながっていたのであれば、汚職事件に発展する可能性もある。既に市民団体が、「接待は贈収賄容疑に当たる」との告発状を東京地検特捜部に提出している。刑事捜査においても、真相究明が尽くされることを求めたい。



[NTT接待] うみを出し切るべきだ(2021年3月10日配信『南日本新聞』-「社説」)

 総務省幹部が放送事業会社「東北新社」に続き、NTTからも高額接待を受けていたことが明らかになった。

 同省は調査の中間報告で、事務方ナンバー2の谷脇康彦総務審議官らが国家公務員倫理規程に違反する疑いが強いと認定した。東北新社からの違法接待で懲戒処分となった谷脇氏を8日付で更迭したのは当然だ。

 通信事業関係者による違法な接待は両社以外にはなかったのか。不祥事の連鎖に国民の不信は深まるばかりである。第三者を交えた徹底調査で、うみを出し切らなければならない。

 中間報告によると、谷脇氏は3件で計約10万7000円、巻口英司国際戦略局長が1件で約5万1000円の接待を受けていた。NTTの澤田純社長らと同席し、谷脇氏は3件のうち1件で5000円、巻口氏は1万円を自己負担し、残りはNTT側が支払った。

 NTTの事業計画や取締役選出には総務省の許認可が必要なため、総務省にとってNTTは倫理規程が定める「利害関係者」に当たる。中間報告は「利益誘導につながる話はなかった」としたが、にわかには信じがたい。

 というのも、総務省は東北新社からの接待を巡る調査報告で「他に倫理法令違反はなかった」としながらNTTの接待が発覚、1週間余りで調査のやり直しに追い込まれたからだ。

 総務省は今後、接待で行政がゆがめられたのではないかという疑念を晴らす必要がある。ずさんな調査でお茶を濁すことは許されない。

 谷脇氏が接待を受けた2018年9月の前月、当時の菅義偉官房長官は携帯電話料金には4割の引き下げ余地があると強調した。NTTが、こうした「菅案件」に奔走する立場だった谷脇氏から情報を得るため、会食に招いたと考えるのが自然だろう。

 与野党は15日の参院予算委員会集中審議にNTTの澤田社長を参考人招致することで合意した。谷脇氏は「携帯電話料金は話題に出たと思う」と認めている。澤田氏には接待の目的や会話の詳細など明らかにしてもらいたい。

 巻口氏の接待には、体調を崩し辞職した山田真貴子前内閣広報官も同席していた。他の通信事業者による接待の有無を含め、山田氏からの聴取も不可欠だろう。

 菅首相が幹部人事を通じて支配してきたとされる総務省の幹部らが、なぜ接待攻勢を受け、それに応じてきたのか。首相への忖度(そんたく)の一方、首相の重用がおごりを生み、倫理感がまひしたと考えざるを得ない。

 首相の長男正剛氏が勤める東北新社を巡る問題でも放送行政への影響など疑問は解消されていない。首相は指導力を発揮して事実の解明に取り組み、総務省と放送・通信業界の関係に風穴を開けるべきである。







首相の重用 慢心生んだか/相次ぐ違法接待(2021年3月9日配信『東奥日報』-「時論」)

 総務省は、事務方ナンバー2である谷脇康彦総務審議官らがNTT側から高額接待を受けていた問題で、国家公務員倫理規程に違反する疑いが強いとする中間報告を公表、谷脇氏を官房付に更迭した。

 菅義偉首相が幹部人事を通じ支配してきたとされる総務省で、なぜ「違法接待」が相次ぐのか。総務官僚による首相への「忖度(そんたく)」の一方で、首相の重用を背景に「接待されても問題はない」との「おごり」があったと見られても仕方あるまい。

 中間報告によると、谷脇氏は2018年9月以降、3件で約10万7千円、巻口英司国際戦略局長が20年6月の1件で約5万1千円の会食接待を受けた。NTT側は澤田純社長や岩本敏男NTTデータ相談役らが供応。谷脇氏の自己負担は最初の1回のみで5千円、巻口氏は1万円だった。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」とし、接待を受けたり、金品を贈与されたりする行為を禁止している。

 NTTは事業計画や取締役選出について総務省の許認可が必要な利害関係者に当たる。5千円のみで「参加費として応分の負担をした」との谷脇氏の釈明は国民感覚からかけ離れている。谷脇氏は総合通信基盤局長在任時から、官房長官だった菅首相が打ち出した携帯電話料金引き下げを推進してきた。首相の信任が厚く、それが慢心を生んだのではないか。

 総務省では先月、菅首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」による違法接待が週刊文春の報道で発覚。谷脇氏を含む11人が減給などの処分を受けたばかり。

 谷脇氏は処分後、国会で東北新社以外と「倫理法令に違反する会食はない」と明言。総務省も内部調査で「他に違反はなかった」と説明していた。野党が「虚偽答弁」であり、ずさんな調査だと批判するのも当然だ。

 巻口氏の接待には、総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官が同席していた。総務省は谷脇、巻口両氏への聞き取りからNTTと「利益誘導につながる話はなかった」としているが、山田氏の聴取も不可欠なはずだ。山田氏は東北新社の違法接待が判明後、「体調不良」を理由に内閣広報官を辞職。加藤勝信官房長官は「一般の方なので政府が事実確認する立場にない」と述べた。澤田NTT社長は国会招致されることになったが、放送行政をゆがめる不正の有無を含め全容解明するつもりがあるか疑問だ。

 東北新社に関しては、衛星放送基幹事業者の認定後、外国資本の出資比率が20%を上回り、放送法に違反していたことも分かった。同事業者の地位は子会社に引き継がれたが、その最終決裁をしたのは山田氏だった。

 菅首相への忖度から東北新社を特別扱いすることはなかったかを徹底調査し、NTT問題と併せ関係者への聴取全容を開示しなければ、行政不信は解消されない。

 そのために行政府の長として菅首相は指導力を発揮すべきだ。だが首相は総務省任せの姿勢を変えておらず、自身の政治責任については「国民の信頼を回復し、期待に応えていくのが責任だ」と繰り返すだけだ。これでは再発防止につながるかは疑わしい。政権中枢に近ければ近いほど「おごり」が巣くい、まん延していくことを憂慮する。



谷脇総務審議官を更迭 もはや内部調査は限界だ(2021年3月9日配信『毎日新聞』-「社説」)

 身内による甘い調査を何度、繰り返すのか。

 総務省の幹部がNTTから接待を受けていた問題で、同省はきのう、中間報告をまとめた。谷脇康彦総務審議官を大臣官房付に更迭する人事も発表した。

 ただし、中間報告は「週刊文春」の報道を後追いしたに過ぎない。新たな報道があるたびに、あわてて再調査しているのが実態だ。

 報告によれば、谷脇氏はNTTの社長らと計3回会食していた。1人当たり6万円余に上ることもあった。改めて癒着ぶりに驚く。

 谷脇氏は菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」側から接待を受けた問題で減給の懲戒処分を受けていた。

 武田良太総務相は「前回(東北新社の)調査の際に、再三確認したにもかかわらず、新たな違反が疑われる行為が確認され、甚だ遺憾だ」と語った。甘い調査だったと自ら認めているようなものだ。

 しかも、谷脇氏は3回とも「先方から提示された金額を払った」と国会で答弁していた。ところが、このうち2回は払っていなかったことが調査で分かった。

 虚偽答弁だった可能性が高い。国会での説明が必要だ。

 中間報告では、昨年6月、巻口英司国際戦略局長が、先に内閣広報官を辞職した山田真貴子氏(当時総務審議官)とともにNTT側と会食したことも認定された。

 無論、これで決着とはいかない。一連の接待は、菅首相が官房長官時代、携帯電話料金の値下げを進め始めた時期と重なる。接待はこれに関係していたのかどうか。疑問の核心は不明なままだ。

 東北新社の問題でも、同社がBS4K放送の認定を受けた後、放送法の外資規制に違反していたのに、認定が取り消されなかった事実が新たに判明した。

 これも首相の長男らによる接待との関係は未解明だ。

 総務省は一部の外部識者を交えて内部調査を続けるというが、もはや限界がある。完全に独立した第三者委員会を早急に設置して調査し直すことが不可欠だ。

 菅首相はきのうの国会で武田総務相の責任について「真相を究明し、総務省を立て直してほしい」と語った。ならばいっそう厳しい調査を指示すべきだろう。



広辞苑にも載っているから…(2021年3月9日配信『毎日新聞』-「余録」)

 広辞苑にも載っているから、割り勘を「ダッチアカウント(オランダ人の勘定)」というのはご存じの方も多かろう。実際、オランダでは上司や先輩が目下に食事をおごる習慣はなく、食事は自弁が常識という

▲「ダッチ」を、ケチ、間に合わせの、質の悪い、酒の上の……といったマイナスイメージに用いたのは英国人である。「ダッチカレッジ(酒の上の空元気)」「ダッチメタル(人造金)」という感じだ

▲17世紀に両国が対立した時代の名残で、その後英国が覇権国になったのがオランダ人には不幸だったかもしれない。しかし質素・倹約を重んじる合理的文化が悪いはずもない。同じく割り勘を用いることも多い日本人にはそう思える

▲NTTから3度にわたり計10万円を超える接待を受けた総務省の谷脇康彦(たにわき・やすひこ)審議官が更迭された。これまで会費を払ったと説明していた谷脇氏だが、3度のうち払ったのは1回で、金額は5000円だった。これでは割り勘にほど遠い

▲個々の金額の多寡はともかく、この間の総務省の接待疑惑で目に余るのは役人たちの国会での答弁のでたらめである。この先まだまだどんな癒着が潜んでいるのか、聞いていてそら恐ろしくなる。国会はもっと怒ってくれないと困る

▲「身は軽くもつこそよけれ軽業(かるわざ)の綱のうえなる人の世渡り」。狂歌では身軽織輔(みがるおりすけ)を名乗った江戸の戯作者(げさくしゃ)、山東京伝(さんとうきょうでん)は日本での割り勘払いの創始者といわれる。身にまとわりついたものの重さで綱から落ちた人は京伝の時代もいたようだ。



参院集中審議 接待が行政を歪めていないか(2021年3月9日配信『読売新聞』-「社説」)

 「官」と「業」の不適切な関係が、次々と明るみに出ている。高額な接待によって行政が歪ゆがめられなかったか、政府は調査を徹底すべきだ。

 参院予算委員会で集中審議が行われ、野党は、総務省幹部の接待問題に焦点を当てた。谷脇康彦総務審議官らが、NTTの澤田純社長らから接待を受けていた。

 総務省の中間報告によると、谷脇氏への接待は2018年から昨年にかけて、計3回で10万円超あったという。総務審議官だった山田真貴子・前内閣広報官と、巻口英司国際戦略局長も昨年、1人約5万円の接待を受けていた。

 総務省は、NTTの事業計画などの許認可権を持っている。過剰なもてなしを受けることが、利害関係者からの接待を禁じた国家公務員倫理規程に違反しているのは、明らかである。

 菅首相は、携帯電話料金の値下げを通信業界に求めてきた。NTTは昨年、NTTドコモを完全子会社化すると発表した。

 この時期に何の目的で接待が行われたのか。政府と業界の癒着が疑われれば、政権の看板政策が揺らぐことになる。首相は重く受け止める必要がある。

 武田総務相は先月、首相の長男が勤める「東北新社」の接待問題に関し、倫理規程に抵触する事例は他にない、と強調していた。

 NTTからの接待が発覚したことを受け、総務相は予算委で「行政に対する信頼を失墜させてしまった」と述べ、陳謝した。谷脇氏を更迭したのは当然である。

 政府は、検事出身者などを入れて再調査する方針だ。だが、退職した山田氏は対象から外すという。身内に甘い姿勢を取っていては、国民の理解は得られまい。

 東北新社を巡っては、4年前に外資規制に違反していたにもかかわらず、衛星放送の業務認定が取り消されなかったことが、論戦で取り上げられた。

 放送法は、業務認定の条件として、外資比率が20%未満であることを定めている。公共性が高い電波の利用は、国民の利益を優先すべきだという観点からだ。なぜ違反状態が容認されていたのか。

 首相の長男の存在が省の判断に影響した可能性はないのか。総務省は明らかにせねばならない。

 新型コロナウイルス対策に関して、野党は、医療従事者の確保や保健所の体制強化が進んでいないと批判した。感染症対策の不備をあげつらうだけでは、医療現場などの状況は好転しない。建設的な提案を心がけてもらいたい。



総務省の接待問題 首相が綱紀粛正の先頭に(2021年3月9日配信『産経新聞』-「主張」)

 総務省幹部がNTTによる高額接待を受けていた問題で、武田良太総務相が8日、中間報告を公表した。谷脇康彦総務審議官が3件、巻口英司国際戦略局長が1件の接待を受けたと認定され、谷脇氏は同日付で官房付に異動となった。事実上の更迭である。

 武田総務相は谷脇氏について「倫理法令に違反する行為がないか再三確認したにもかかわらず、新たな違反が疑われる行為が確認されたことは甚だ遺憾だ」と述べた。

 国家公務員倫理規程は利害関係者からの接待を禁じている。谷脇氏は東北新社による接待を受けていたことがすでに判明しており、減給処分を受けたばかりだ。

 高級官僚と事業者の不透明な関係が改めて浮き彫りになったことで、違反行為が繰り返される同省の体質に問題があったと疑わざるを得ない。

 同省は事業者による接待について調査を実施するが、谷脇氏は国会でも東北新社以外からの接待は否定していた。それだけに新たな違反行為の発覚は深刻に受け止めるべきで、調査方法の見直しも必要だろう。接待により行政がゆがめられることはなかったか。その検証も必要だ。

 谷脇氏は一貫して通信行政を歩んできた。菅義偉政権が看板政策として掲げる携帯電話料金の引き下げでも、省内で主導的な役割を果たしてきた。そうした人物がNTTと会食を重ねていた事実は重い。行政に対する国民の信頼を揺るがす行為である。

 谷脇氏は国会で「会食では先方が提示した金額を支払った」と釈明したが、倫理規程は公務員が費用の一部を負担しても、それが十分でなければ接待にあたるとして禁じている。割り勘でも1万円を超える場合には届け出が必要で、その届けもなかった。

 谷脇氏が国会答弁や省内の調査で「違反はない」と繰り返したのは虚偽だったと批判されても仕方がない。認識不足が本当なら、これは資質の問題である。

 首相は8日の参院予算委員会で「武田氏にしっかりと真相究明してもらい、総務省を立て直してほしい」と述べたが、総務省や農林水産省で相次いだ接待問題は、政府全体の責任として厳しく認識しなければならない。そのうえで首相は公務員の綱紀粛正の先頭に立ってもらいたい。



相次ぐ違法接待/政権中枢近くにおごり(2021年3月9日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 総務省は、事務方ナンバー2である谷脇康彦総務審議官らがNTT側から高額接待を受けていた問題で、国家公務員倫理規程に違反する疑いが強いとする中間報告を公表、谷脇氏を官房付に更迭した。

 菅義偉首相が幹部人事を通じ支配してきたとされる総務省で、なぜ「違法接待」が相次ぐのか。総務官僚による首相への「忖度(そんたく)」の一方で、首相の重用を背景に「接待されても問題はない」との「おごり」があったと見られても仕方あるまい。

 中間報告によると、谷脇氏は2018年9月以降、3件で約10万7千円、巻口英司国際戦略局長が20年6月の1件で約5万1千円の会食接待を受けていた。NTT側は澤田純社長や岩本敏男NTTデータ相談役らが供応。谷脇氏の自己負担は最初の1回のみで5千円、巻口氏は1万円だった。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」とし、接待を受けたり、金品を贈与されたりする行為を禁止している。NTTは事業計画や取締役選出について総務省の許認可が必要な利害関係者に当たる。5千円のみで「参加費として応分の負担をした」との谷脇氏の釈明は国民感覚からかけ離れている。

 谷脇氏は総合通信基盤局長在任時から、官房長官だった菅首相が打ち出した携帯電話料金引き下げを推進してきた。首相の信任が厚く、それが慢心を生んだのではないか。

 総務省では先月、菅首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」による違法接待が週刊文春の報道で発覚。谷脇氏を含む11人が減給などの処分を受けたばかり。

 谷脇氏は処分後、国会で東北新社以外と「倫理法令に違反する会食はない」と明言。総務省も内部調査で「他に違反はなかった」と説明していた。野党が「虚偽答弁」であり、ずさんな調査だと批判するのも当然だ。

 巻口氏の接待には、総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官が同席していた。総務省は谷脇、巻口両氏への聞き取りからNTTと「利益誘導につながる話はなかった」とするが、山田氏の聴取も不可欠なはずだ。

 山田氏は東北新社の違法接待が判明後、「体調不良」を理由に内閣広報官を辞職。加藤勝信官房長官は「一般の方なので政府が事実確認する立場にない」と述べた。澤田NTT社長は国会招致されることになったが、放送行政をゆがめる不正の有無を含め全容解明するつもりがあるか疑問だ。

 東北新社に関しては、衛星放送基幹事業者の認定後、外国資本の出資比率が20%を上回り、放送法に違反していたことも分かった。同事業者の地位は子会社に引き継がれたが、その最終決裁をしたのは山田氏だった。

 菅首相への忖度から東北新社を特別扱いすることはなかったかを徹底調査し、NTT問題と併せ関係者への聴取全容を開示しなければ、行政不信は解消されない。

 そのために行政府の長として菅首相は指導力を発揮すべきだが、首相は総務省任せの姿勢を変えておらず、自身の政治責任については「国民の信頼を回復し、期待に応えていくのが責任だ」と繰り返すだけだ。これでは再発防止につながるかおぼつかない。政権中枢に近ければ近いほど「おごり」が巣くい、まん延していくことを憂慮する。



【広がる官僚接待】政権に解明意欲はあるか(2021年3月9日配信『高知新聞』-「社説」)

 官僚の接待問題が拡大している。総務省幹部がNTTから高額接待を受けていたことが分かり、それに関する調査の中間報告は、2人4件が国家公務員倫理規程に違反する疑いが強いと同省が認定した。

 それによると、谷脇康彦総務審議官が3件で計約10万7千円、巻口英司国際戦略局長が1件約5万1千円の接待を受けていた。
澤田純NTT社長が出席した事例もある。谷脇氏は官房付に更迭された。

 倫理規程は、過去に不祥事が相次いだことから設けられた。許認可や補助金の交付を受けた企業など利害関係者から、接待を受けることを禁じている。

 NTTの事業計画や取締役選出には総務省の許認可が必要となる。両氏はNTTが利害関係者に該当すると認識していたという。

 それにもかかわらず出席して、自己負担は谷脇氏がうち1回分の5千円、巻口氏は1万円にとどまっている。費用を自己負担すれば利害関係者との飲食は可能だが、この負担金額で賄えたと思ったのだろうか。倫理規程の形骸化は深刻だ。

 一方で調査報告は、聞き取りを踏まえて「個別事業に関し、利益誘導につながる話はなかった」とする。しかし、どれほど実態を把握できているか疑問が残る。

 菅義偉首相の長男が勤務する放送事業会社「東北新社」による接待で事実上更迭された局長は、会食の際に衛星放送に絡む話題はなかったとしていた。ところが、録音した音声が公開されると一転して認めることになった。虚偽答弁が行われていたのは、つい最近のことだ。

 森友、加計学園問題や桜を見る会の問題でも浮上した国会軽視の姿勢が、相変わらず続いている。その場をやりすごしさえすれば大丈夫という風潮がはびこっているようで、極めて大きな問題だ。

 総務省はほかにも違法な接待がなかったか、2氏とNTT以外にも対象を広げて調査を続けるとする。それ自体は当然と言える。

 忘れてはならないのは、総務省は以前、東北新社以外に違法な接待事案は認められなかったとの結論を出していたことだ。それなのに、間もなくNTTが発覚した。調査の甘さは明らかだ。

 次々と発覚する状況は、身内の調査では限界があることを示している。行政がゆがめられなかったかを解明するには、より厳しい姿勢で臨む必要がある。第三者による調査でなければ、その結果も信頼を得られはしない。

 東北新社を巡っては、外国資本の出資比率が放送法に違反していたことが明らかになった。総務省から受けた高精細の「BS4K」の衛星基幹放送事業者としての認定が取り消される局面だ。

 接待と法令違反が関連しているかどうかは不明だが、疑念を持たれることは間違いない。行政の公平性、透明性が守られてこそ、政策への信頼が高まる。徹底した調査が必要で、菅政権の姿勢が問われる。



根深い官業癒着 総務省はうみを出し切れ(2021年3月9日配信『西日本新聞』-「社説」)

 官と業の癒着が芋づる式に発覚し、国政への信頼が揺らいでいる。もはや総務省だけの身内の調査で事を収めようとしても国民の理解は得られまい。

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から幹部複数が繰り返し接待を受けていた総務省で、新たに二つの重大な事実が明るみに出た。

 一つは、一連の接待で懲戒処分を受けた谷脇康彦審議官らが利害関係のあるNTTからも高額接待を受けていたことだ。総務省は延べ4回の接待を認めた上で、国家公務員倫理規程に違反した疑いが強いとして、谷脇氏の更迭人事を発表した。

 「利益誘導の話はなかった」としているが、官業の癒着が放送と通信の両分野に及んでいたことは看過し難い事態だ。接待により行政がゆがめられていないか、徹底解明すべきだ。

 NTTは国が関与する特別な事業者だ。1985年の民営化後も政府が株の3分の1以上を保有し、役員選任や事業計画は総務相が認可している。NTT法は職務に関する賄賂の授受を禁じるなど、社員に公務員に準じる高い倫理を求めている。そうした意味では今回、NTT側の姿勢も厳しく問われよう。

 もう一つは2017年1月に「BS4K」の基幹放送事業者の認定を受けた東北新社の外資比率が放送法に違反していた問題だ。地上波やBSなどの基幹事業者の外資比率は20%未満との縛りが設けられている。電波の利用は公共性が高く、国民全体の利益を優先するためだ。

 東北新社は認定申請時に19%台で、その後20%を超えていながら認定は取り消されず、基幹事業の地位は子会社が承継している。この承継の認可を決裁したのは接待問題で内閣広報官を辞任した山田真貴子氏(当時は総務省情報流通行政局長)という。これは行政の許認可の妥当性が疑われる問題だ。

 菅首相は総務相当時から放送の多様化や通信の自由化、携帯電話料金の値下げといった政策に深く関わってきた。接待問題に関し「何も知らなかった」「結果的に国家公務員倫理に反する行為があり申し訳ない」などと人ごとのような釈明を続けているが、それでは通らない。

 首相がこの期に及んでも総務省に事実関係の調査を委ねている点も理解に苦しむ。身内の調査では掘り下げが甘く、問題の官僚が国会で虚偽に近い答弁をしている。やはり第三者機関による厳正な調査が不可欠だ。

 発覚した接待は氷山の一角であり、実態はなお闇に覆われているとの指摘もある。首相の責任で調査の網を全省庁に広げ、霞が関全体を厳しく律することが国民の信頼を回復する道だ。



「接待漬け」(2021年3月9日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 難解な批評で知られる小林秀雄だが、その語り口は親切で分かりやすかったらしい。1974年の鹿児島での講義で、「言葉」について学生から聞かれて答えている

▼「人間は、自分の得意なところで誤ります。自分の拙いところではけっして失敗しません。得意なところで思わぬ失敗をして不幸になる。言葉もそれと同じだな。あまり使いやすい道具というのは、手を傷つけるのです」(『学生との対話』新潮社)

キャプチャ

▼菅義偉首相にとって総務省は、まさにその得意分野だったに違いない。自分の総務大臣時代に長男を秘書官に登用し、まるで天下りのように放送事業会社に転職した長男から、今になって足を引っぱられている

▼長男から違法接待を受けた総務審議官も、携帯電話料金値下げなど首相肝いりの看板政策を、一手に取り仕切っていた。政権の威光を受け、さぞかし民間ににらみを効かせていたことだろう。おそらく得意の絶頂期にあったところで、きのう更迭された

▼一連の不祥事で見えてきたのは「接待漬け」になっている役人の姿だった。ほかにはないかと問われ、もうありません、と答える。ところが新たな証拠が暴露され、ありました、と認めざるを得なくなる。うそのばれた幼児の振る舞いのようで何とも情けない

▼人は誤りをおかすこともある。うそや隠しだても人間らしい、と小林秀雄風に考察を深めたいところだが、そんな気にもなれない。誠実さや潔さという言葉はどこに消えたのだろう。便宜や忖度[そんたく]ばかりがまかり通る。



NTT総務省接待(2021年3月9日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

底なしの癒着を徹底解明せよ

 総務省は、NTTによる同省幹部への接待に関する調査の中間報告を発表し、高額接待を受けていた同省事務方ナンバー2の谷脇康彦総務審議官を事実上更迭しました。谷脇氏は放送関連会社「東北新社」から接待されていたことも発覚しています。業者からの接待は、農林水産省でも明らかになり、事務次官らが処分されています。癒着はいよいよ深刻な様相です。幹部職員に対する異常な接待が相次いでいる問題は、公務員倫理規程に違反するだけでなく、行政をゆがめた贈収賄疑惑としても徹底究明が不可欠です。

行政ゆがめた疑いさらに

 NTTによる総務省幹部接待問題は、4日発売の『週刊文春』がスクープしました。谷脇総務審議官が2018年~20年に3回、NTT関連の会員制高級レストランで、高額の接待を受けていたなどと報じました。総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官と巻口英司国際戦略室長も20年6月に1回接待を受けたとされます。谷脇氏の接待には、金杉憲治外務審議官も同席していました。

 総務省の8日の中間報告では、谷脇氏の接待総額は約10万7000円で、山田氏と巻口氏の接待金額は約5万1000円だったと記載しました。谷脇氏と巻口氏はそれぞれ5000円から1万円を支払ったといいますが、接待での飲食単価はその額を大きく上回っています。

 NTTは取締役の選定などで総務相の認可を受ける総務省の利害関係者です。国家公務員倫理規程に反していたことは明白です。

 谷脇氏は先月の国会で、東北新社のほかには規程違反の接待はないと述べ、総務省も同様の説明をしていました。総務省の調査がおざなりだったことは重大です。監督する立場の、武田良太総務相の責任は免れません。

 谷脇氏らがNTTから接待を受けたのは、総務省に強い影響がある菅義偉現首相が熱心に推進する携帯電話料金の値下げとの関連が疑われます。谷脇氏は総務審議官に就任する前はNTTを所管する総合通信基盤局長などを歴任しており、さらなる調査が必要です。

 菅首相の長男・正剛氏が勤める東北新社による接待も、全体像は不明のままです。衛星放送の周波数割り当てや認定更新などをめぐる疑惑が強まっています。

 収賄罪で在宅起訴された菅首相側近の吉川貴盛元農水相とともに鶏卵生産会社「アキタフーズ」に接待され、処分された農水省事務次官らの問題もあいまいにできません。贈収賄に直結します。

 各省庁の幹部職員らの企業との癒着が横行しているのは、行政の私物化を常態化させてきた、安倍晋三前首相と菅首相の2代の政権にわたる官邸主導の強権的な“霞が関支配”と無関係ではありません。政権自体の責任が厳しく問われます。

関係者の国会招致不可欠

 世論調査で東北新社から総務省幹部職員が接待を受けていたことについて「問題がある」という回答は8割を超します。(「読売」8日付)。

 菅首相は武田総務相任せではなく、相次ぐ接待問題の全容を自ら調査し、国民に明らかにすべきです。NTTや東北新社関係者の国会招致を実現し、真相を解明することが求められます。





「値踏み」(2021年3月8日配信『東京新聞』‐「筆洗」)

 劇作家の井上ひさしさんは飲食店に入れば、箸の袋やコースターに何を食べたか、誰と食べたかに加えて、値段までメモしていたそうだ。帰宅後、これを日記帳に貼る

▼どうしてそんなことまでと娘さんが尋ねたそうだ。「値段をつけておけば、10年後20年後に資料になるかもしれない」。きっと井上さんに店の名と料理を教えれば、値段をぴたりと当てただろう

▼こちらの「値踏み」は相当、ひどい。総務省幹部がNTTから高額接待を受けていた問題である

▼NTT側を含めた四人で約19万3000円の会食。だいたい1人あたりが4万8000円となるが、この総務省幹部、会費として5000円を支払い、これで自分も応分の負担をしたと考えていたという。5000円の身銭を切っているのだからまるっきりの接待とは違うとでもおっしゃりたいのか

▼当日、どんな料理が並んだのかは知らぬが、出てくる料理や酒の量でおよその総額と人数分の割り算で自分がいくら払うべきなのかを想像し、時に震えながら箸を進めるというのが、普通の会食だろう。払うべき金額を約10分の1で見積もるとはえらい役人さんにしては数字に弱すぎる

▼仲間うちの飲み会でこんなことをすれば、あとでなにを言われるか。決めつけるわけにはいかぬが、勘定にびくびくなんぞしていなかったのだろうと疑っている。人が払う金なら割り算の必要はない。





総務官僚接待 徹底調査で全容の解明を(2021年3月7日配信『新潟日報』-「社説」)

 他に違法な接待はない。そう結論付けていた先の総務省の調査は何だったのか。

 武田良太総務相が徹底調査を指示したのは当然だ。むしろ約束をしっかり守り、今度こそ国民に全容を明らかにできるか注視したい。いいかげんな調査は御免である。

 またしても、谷脇康彦総務審議官ら総務省幹部の違法接待疑惑が発覚した。今度の相手はNTTだという。社長らから、高額に上る飲食接待を受けていたとされる。

 NTTは事業計画や取締役選出について総務省の許認可が必要だ。省幹部にとっては国家公務員倫理規程が定める利害関係者に当たり、接待内容によっては法令に触れる可能性がある。

 疑惑を報じた週刊文春によると、谷脇氏は2020年7月までに計3回、NTTの澤田純社長ら幹部と会食。計17万円以上の接待を受けた。

 巻口英司国際戦略局長も20年6月、総務審議官だった山田真貴子・前内閣広報官とともに澤田氏らと会食、代金を一部しか払わなかった。飲食代は4人で計33万円だった。

 総務省側の参加者は5千円や1万円を払っていたという。

 人事院は接待に関して、本来の費用に比べて支払いが不十分で、差額を先方が負担した場合は倫理規程に違反するとの見解を示した。

 谷脇氏と山田氏は、菅義偉首相の長男が勤務する放送事業会社「東北新社」からも違法な接待を受けていた。谷脇氏は懲戒処分を受け、山田氏は広報官を事実上引責辞職している。

 総務省では倫理規程に反した業者接待を受けることが常態化していたのではないか。新たな問題の発覚を受け、改めてそんな疑念が膨らむ。

 接待問題を巡る総務省側の対応も、不信感に拍車を掛ける。

 総務省は東北新社からの接待を巡る懲戒処分を発表した際、「他に倫理法令違反はなかった」としていたが、1週間余りで調査をやり直すことになった。

 東北新社以外から違法な接待を受けていないとしてきた谷脇氏の説明も揺らいでいる。本人は会食でやましい点はなかったことを強調するが、国民がどこまで納得するか。

 通信各社への許認可権を持つ総務省で、谷脇氏は菅政権の看板政策である携帯電話料金引き下げを主導してきた。首相の評価は高いとされる。

 高額の費用をかけ、谷脇氏をはじめ総務省幹部と会食することでNTT側は何を狙っていたのか。そこが最大の焦点だ。

 総務省接待問題が浮き彫りにしたのは、政官業のゆがんだ関係だろう。それが国民に不利益を与えていないか、メスを入れてほしい。東北新社の放送法違反も明らかになった。組織の保身のための調査は許されない。

 野党はNTT社長の国会招致を求めている。首相長男の招致や山田氏への再調査も含め、政府、国会は、国民に接待問題の真相を明らかにするために必要な手だてを尽くすべきだ。



予算案衆院通過/疑惑は見過ごしにできぬ(2021年3月7日配信『神戸新聞』-「社説」)

 総額106兆円を超える過去最大規模の2021年度政府予算案が衆院を通過し、年度内の成立が確実となった。

 首都圏の緊急事態宣言が再延長されるなど、新型コロナウイルス対応は正念場だ。だが、コロナ関連対策が盛り込まれた予算案に野党側が徹底抗戦を避けた側面もあり、中身の議論が尽くされたとは言い難い。

 医療体制の確保や影響を受けた国民生活への支援は十分か。歳出膨張で遠ざかる一方の財政再建にどう取り組むか。参院に移った論戦の場で、残された課題を詰めなければならない。

 これまでの審議で多くの時間を費やしたのは、政府、与党で相次ぐ不祥事の追及だった。

 菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が勤める放送関連会社から高額接待を受けていたとして処分された総務省の谷脇康彦総務審議官らが、NTT首脳とも高額の会食をしていたことが発覚した。携帯電話料金値下げなど看板政策との関連が取りざたされ、政権を揺るがしかねない事態だ。

 だが、際立つのは問題に正面から答えようとしない首相の姿勢だ。4日の参院予算委員会では、NTT側との会食を「承知していなかった」とし、谷脇氏の進退にも言及を避けた。

 疑惑を解明しようとする姿勢に欠けたままでは、建設的な議論など望むべくもない。

 農水省でも鶏卵生産大手による接待問題が判明し、行政の公正さに一層の疑念が持たれている。緊急事態宣言下で自民、公明両党幹部が高級クラブに出入りしていた問題も発覚した。

 長期政権で生じた緩みやおごりが深刻さを増しているのではないか。内閣支持率の続落傾向の要因は後手に回ったコロナ対策への批判ばかりではないと厳しく受け止めるべきだ。

 コロナ対策では、首相が切り札と頼むワクチンの接種日程の遅れが指摘される。感染拡大が懸念される変異株への対応も焦点だ。東京五輪・パラリンピックの開催判断も迫られる。

 いずれも国民の理解と協力が不可欠な取り組みだ。政治への信頼を回復するためにも、政権中枢に関わる疑惑を見過ごし、予算案とともに「通過」させるわけにはいかない。首相は、真摯(しんし)に論戦に臨まねばならない。



総務官僚の接待 癒着構造の解明が必要だ(2021年3月7日配信『山陽新聞』-「社説」)

 新たにNTTによる総務省幹部の高額接待が明るみに出た。国家公務員倫理規程がここまで形骸化していることに驚きを禁じ得ない。

 総務省は、菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から高額な接待を受けたとして幹部らの処分を先月下旬、発表したばかりである。「ほかに倫理規程違反はない」としていたにもかかわらず、わずか1週間余りで調査のやり直しを迫られることになった。

 総務省はNTTを含む通信事業者との会食の有無など、実態把握を急ぐとしている。元検事の弁護士も調査に加わるという。国民の納得を得るためには透明性が高く、厳格な調査が求められよう。

 NTTは民営化前の旧電電公社の電話回線網など公共の資産を受け継いでいることから、国が株式の3分の1超を握る大株主である。事業計画の策定や役員の異動なども総務省の認可が必要となっており、総務省幹部にとって、NTTの幹部が倫理規程の定める「利害関係者」に該当するのは明らかだ。

 週刊誌の報道によれば、NTTの澤田純社長らが谷脇康彦総務審議官を含む総務省の幹部数人を接待していた。谷脇氏は2020年7月までに計3回会食し、計17万円以上の接待を受けた。

 国会で谷脇氏は会食の事実を認め、「先方が提示した金額」として1回5千円を支払ったとし、倫理規程に抵触しないと考えていたと釈明した。しかし、人事院は接待について、本来の費用に比べて支払いが不十分で、差額を先方が負担した場合は倫理規程に違反するとの見解を示している。完全に割り勘にする場合も、1万円を超える場合は事前の届け出が必要だが、谷脇氏はそうした届け出もしていなかった。そもそも倫理規程の趣旨を理解していなかったのではないかと言わざるを得ない。

 NTTからの接待は、20年6月に当時総務審議官だった山田真貴子・前内閣広報官らも受け、代金を一部しか払わなかったと報じられている。体調不良を理由に辞職した山田氏について、政府は辞職済みで一般人になったとして再調査しない方針を示しているが、事実確認もしないとは到底、納得できない。

 菅首相はかつて総務相も務め、総務省に強い影響力を持つことで知られる。首相就任後は携帯電話の料金値下げを看板政策の一つに掲げてきた。特に首相の信任が厚いとされていたのが谷脇氏で、首相から直接指示を受け、実務を取り仕切っていたという。

 接待が常態化していたとすれば、癒着によって政策判断にゆがみがなかったのかという疑念が生じる。しかし、菅首相は「総務省が調査を始めたと承知している」などと語るだけだ。首相が先頭に立ち、うみを出し切るつもりで徹底調査しなければ、国民の不信は募るばかりである。





NTT高額接待 泥沼の癒着 全て解明を(2021年3月6日配信『北海道新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で懲戒処分となった総務省の谷脇康彦総務審議官が、NTTからも高額の接待を受けていたことが明らかになった。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程が禁止する「利害関係者からの接待」に当たる疑いが濃い。

 総務省は東北新社からの接待を巡る調査結果と幹部11人の処分を発表した際、他に違法接待はないと説明していた。調査の甘さを露呈したと言うほかない。

 武田良太総務相は「可能な限り対象職員を広げて徹底的に調査する」と述べた。8日に中間報告を出す方針だが、内部の聞き取りだけでは信用できない。

 正剛氏をはじめ、一連の問題で接待をした側の関係者を国会に招致し、会食の目的や交わした会話の内容をただす必要がある。

 農林水産省でも業者からの違法接待で幹部6人が処分された。泥沼ともいえる業界との癒着構造が、霞が関全体に広がっていないか。全省庁対象に調査し、全ての実態を明らかにすべきだ。

 NTTの接待問題は週刊文春が報じた。これを受け、谷脇氏は参院予算委で同社の澤田純社長らと3回会食したことを認めた。

 谷脇氏は昨年7月の会食で5千円を負担したとし、「全体額がどれくらいかその時点では分からず、参加費として応分負担したと認識していた」と釈明した。

 文春によると当日の費用は計4人で19万3千円だった。国民感覚からかけ離れた高額接待だ。

 支払いが不十分で、差額を先方が負担した場合は倫理規程違反に当たる。認識不足で済ませようとする谷脇氏の説明は通用しない。

 巻口英司国際戦略局長と総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官もNTTの接待を受けていた。

 巻口氏は会食を認めたものの、山田氏については広報官辞職を理由に政府が事実確認をしない考えを示す。これでは接待の全体像を解明できない。

 国が3割出資するNTTは事業計画などを総務相が認可し、子会社のNTTドコモは携帯電話の電波の免許を受けている。

 携帯電話の料金引き下げを金看板とする政権で、実務の最高責任者を務めるのが谷脇氏である。

 NTTの接待問題は東北新社の疑惑とともに、元総務相として総務省に強い影響力を持つ首相の権力基盤と密接に関わる。首相はそれを自覚して、真相究明に指導力を発揮しなければならない。



結ばない首相像(2021年3月6日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 中島敦の短編小説「文字禍」は、「文字の霊などというものが、一体、あるものか」との問題提起に始まる

▼物語では古代アッシリアの老博士が、一つの文字を見つめているうちにその文字が解体して、意味のない一つ一つの線の交錯としか見えなくなる体験をする。「ゲシュタルト崩壊」と呼ばれる現象だ

▼きのうの菅義偉首相の記者会見を見て、同様の錯覚にとらわれた。テレビ画面に映る年配の男性の、顔や髪形、視線といった外形から、その人が「首相」という意味のある存在に、どうしてもつながってこないのである

▼首都圏の緊急事態再延長については、「大変申し訳ない思いであり、心よりおわび申し上げる」と語っていた。これまで何度聞いただろう。そして、これからは何度聞くのだろう。リーダーとして、どのような責任感で事態打開にあたるのか、決意が伝わってこない

▼これまでも、総務省幹部への接待が問題となった自分の長男について「別人格だ」と言ってみたり、前広報官の辞職が後手後手ではないかと問われて、「私はそのように思っていない」と答えたり。国民の多くが抱く疑問に答えず、保身に走っているように見える

▼かの老博士は、魂が人間を統べるように、文字に霊がなければ単なる線の集合が音と意味を持つことはできぬと気付く。魂のこもった言葉がないと、首相という存在も像を結ばないのだろう



NTTからも接待/利権の構造にメス入れよ(2021年3月6日配信『河北新報』-「社説」)

 総務省幹部の接待問題は、通信事業に大きな影響力を持つ巨大企業に飛び火した。

 放送事業会社「東北新社」からの接待で減給処分を受けた谷脇康彦総務審議官と、内閣広報官を辞職した山田真貴子氏が、今度はNTT社長らから高額の接待を受けていた疑いが強まった。

 谷脇氏は会食していた事実を認めた。NTTは携帯電話料金の引き下げをはじめ、同省とは切っても切れない関係にある。

 紛れもなく利害関係者に当たる。接待を伴う会食を禁じた国家公務員倫理規程に抵触する可能性は高い。

 総務省は再調査に乗りだしたが、新たな事実の判明は、2月の聞き取りがずさんだったということになる。

 行政の中身をゆがめていなかったか、何を話題にしたのか。利権構造を含めて全貌を明らかにし、国会に報告するよう求めたい。

 谷脇氏への処分は、東北新社の接待分だった。今回も事実とすれば、省内にとどまることは許されない。自ら職を辞すべきである。

 接待疑惑は週刊誌が報じた。それによると、谷脇氏は2020年7月までに計3回、NTT側から17万円の供応を受けた。

 山田氏は20年6月、同僚と参加し、NTT側が大半を支払ったという。

 立て続けに夜の接待を受けていたことは、倫理規程が形骸化していたことを裏付けている。

 約20年前、大蔵省(当時)の接待汚職事件で4人が有罪となり、112人を処分したのを機に設けられた。同時に金融庁を発足させ、財政と金融を分離した。

 総務省も、旧郵政官僚の緊張感のなさは目に余る。もう一度立ち戻って組織解体を視野に、大幅な見直しを行ってはどうか。

 国会で事実と異なる答弁をしていた疑いもある。谷脇氏は「東北新社以外に違法な接待は受けていない」と発言していた。

 しかし、NTTとの高級店での会食は、どう見ても倫理規程に触れると考えるのが普通だろう。

 国会は行政の施策をチェックし、国民の視点からこれをただす役割を持つ。

 虚偽答弁だったとすれば、民主主義の根幹である議会制度を軽んじたことになる。ごまかしを図る姿には権力機構の劣化を目にする思いだ。

 総務省において、菅義偉首相の存在は大きい。総務相時代から人事を通じて震え上がらせた。いわば「菅印」の官庁である。

 かつてのロッキード事件、リクルート事件のような「巨悪」とは趣を異にするにしても、政官財のトライアングルを想起させる。

 調査は、国民の疑念に応えるものでなくてはならない。構造的な背景にまで踏み込む勇断さを期待したい。



総務官僚の接待 身内調査の限界が明白だ(2021年3月6日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男正剛氏が勤める「東北新社」から繰り返し接待を受けていた総務省の幹部が、NTTからも高額の接待を受けていたことが分かった。

 NTTは事業計画や取締役の選出について、総務省の許認可が必要だ。国家公務員倫理規程が接待を禁止する利害関係者に当たる。

 接待を受けていた谷脇康彦総務審議官は、東北新社以外からの違法接待を国会で否定してきた。虚偽答弁の疑念が大きく、看過できない。責任は重い。

 総務省は東北新社以外からの違法接待はないとの調査結果を公表したばかりだ。身内による甘い調査だったことは明らかだ。

 総務省は今回の問題では、元検事の弁護士も加わった調査を実施して、実態の把握を急ぐとしている。それでも総務省が主導する調査には限界がある。結論を出しても国民の信頼は得られまい。

 必要なのは、接待問題全体を対象とする第三者調査委員会をつくり、徹底して事実を解明することだ。手法や対象は委員会に一任して、総務省は調査への協力だけに徹するべきだ。

 NTTや東北新社の接待で、行政はゆがめられていないのか。ほかの通信事業者との接待はなかったのか。判明している官僚以外も調べるべきだ。菅首相の長男が東北新社に在籍することの影響も、忖度(そんたく)なく調べる必要がある。

 論点は多い。まず携帯電話料金の引き下げへの影響だ。谷脇氏は菅首相が官房長官時代から掲げる携帯電話料金の引き下げを主導してきた。接待の時期はいずれもNTTを所管する立場だった。

 政策への影響はなかったのか。聞き取りだけでなく、決定過程などを内部文書などに基づいて詳細に検証するべきだ。

 東北新社による接待では、衛星放送の将来像を話し合う有識者会議との関係性だ。

 接待の対象は総務省側の出席者に集中している。会議が昨年12月にまとめた報告書は東北新社の要望に沿った形になったとされる。接待と関連があるのか。見過ごせない問題である。

 納得できないのは、山田真貴子前内閣広報官を政府が調査対象にしないことだ。山田氏は東北新社だけでなく、NTTからも高額接待を受けており、当時の総務省での役職は放送や通信を所管していた。調べるのは当然である。

 「既に退任し、一般の方」(加藤勝信官房長官)という理由を振りかざすようでは、政府の問題解明に対する真剣度が問われる。



「国防軍が近衛兵に押され気味」(2021年3月6日配信『新潟日報』-「日報抄」)

ある市役所の課長がぼやいていた。庁内で「国防軍が近衛兵に押され気味」と、例えを交えて話す。市長と接する機会が多い部課長がその意向をおもんぱかり、市民生活に直結する部局にあれこれ指示を出す。トップには「国防軍の考えはなかなか上がらない」

▼課長によれば市民や国民のために働くのが国防軍なら、トップや君主を守るのが近衛兵という。懸命な働きぶりは同じでも目的と方向が違えば結果は異なる。軍隊に例えることの是非はともかく、近衛兵があまりに幅を利かせると市民の声が政策に反映されなくなる

▼分かりやすいのは霞が関か。菅義偉首相の長男が絡んだ総務省の接待問題は常に首相の影を気にする官僚の姿が浮かぶ。森友学園や加計学園にまつわる忖度(そんたく)ぶりも記憶に新しい。トップへの過ぎた配慮は行政のゆがみを生む

▼民間企業でもあり得る。爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分を混入させた企業がある。ずさんな製造を続けていたのは現場だが、経営陣も把握していた。利益優先の経営陣の意向を、現場が忖度したという側面はなかったか

▼顧客や消費者、末端社員の姿を見ようとせず、トップの顔色をうかがってばかりの組織はひずむ。元会長の報酬隠しの舞台となった自動車メーカーにもそんな気配が漂っていた

▼他人を思いやる心は大切にしたい。肝心なのは思いやりの矢印がどこを向いているか。さまざまな方位に目を向けたい。上ばかり見ていては足元に大きな石が転がっていても気づくまい。



「怒」(2021年3月6日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 中国の范仲淹(はんちゅうえん)という人が昔、官僚の心構えともいうべき文章を書き残している。「天下の憂いに先(さき)んじて憂え、天下の楽しみに後(おく)れて楽しむ」(「岳陽楼記」)。万事、民衆より先に心配し、楽しむのはだれより後になさい-と

◆四字熟語の「先憂後楽」だが、ありがたい教えをまさか逆立ちして読んでいるのか、総務省のお偉方にはこう見えるらしい。「先楽後憂」。優雅なもてなしを楽しみ、後からばれてわが身の今後を心配している

◆エース級幹部らが目の飛び出るような高額接待を受けていたと、またしても報じられた。疑惑の相手方は巨大企業NTTである。気の緩みなどで、とても済まされない

◆名の挙がったその幹部は、菅政権の金看板である「携帯電話値下げ」の旗振り役だという。携帯、NTT、総務省、接待…。連想ゲームであれば、これほど分かりやすいヒントもあるまい。十分、怪しむに足る

◆接待問題ではつい先だって、「1回7万円」のびっくり箱が開けられたばかりである。「これきりです」という彼らの説明は何だったのか。まだ、あるだろう。あるに決まっている。疑いは、ますます深まった

◆ごまかし、露見して、謝る。見飽きた芝居にタイトルをつけるなら「憂」、あるいは「怒」。一字でいい。



高額接待…「議会政治の父」はどう見る(2021年3月6日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★当選25回・議員勤続63年、94歳まで衆院議員を務め、「議会政治の父」といわれた衆院名誉議員・尾崎咢堂(がくどう)を記念し、1960年、国会横に市民の寄付などで記念館がつくられた。72年には衆院に寄贈され「憲政記念館」となった。この地は古くは井伊直弼の屋敷があり、戦前は陸軍省、参謀本部があった場所。ただ、この憲政記念館は21年度中に取り壊されることが決まっている。

★建物は現存するモダニズム建築の1つとして建築家などの評価も高く、存続すべきとの声も上がったが、国立公文書館のデジタル化に伴う建物に生まれ変わる計画だ。そして60年間、館内に併設されていたレストラン「霞(かすみ)ガーデン」が一足先に、5日の午後3時に閉店した。本来、このレストランは修学旅行生の昼食場所としても名高く、また食事をする場所の少ない永田町で庭園を眺めながら食事ができる環境から、政治家や秘書、官僚など政界関係者が憩いの場所として通った。無論、接待に使うような高額な会食用の店でもないし、一般の人も利用することができる、永田町では珍しい施設でもあった。

★5日は衆参両院、与野党の議員や政界関係者、衆院の持ち物ということもあり、議会関係者も数多く詰めかけ、長年レストランを取り仕切った支配人・本田晃に多くの客が声をかけ、60年の歴史に思いをはせた。取り壊しが決まった時は、森友・加計疑惑で公文書の在り方が問われた時期だった。その後のコロナ禍では修学旅行生が消え、地方からの陳情団などの会食もなくなるなど、寂しい時期もあった。尾崎は1903年(明36)から9年間、東京市長を務め、その時、米国へソメイヨシノ2000本を贈り、ポトマック川沿いに植樹された、その縁なのか、ガラス張りの店のテーブルからは見事な桜が咲き誇っているのが見えた。尾崎は今の政治を、どんな風に見ているだろうか。



総務省とメディア(2021年3月6日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 放送に続き通信分野でも、総務省の接待疑惑が次々と明るみにでました。菅義偉首相と長男の正剛氏、山田真貴子・前内閣広報官とくれば…

▼3者に共通するのは、総務省とメディア。首相は総務相時代、NHKに「命令放送」を指示しました。国際放送で北朝鮮の拉致問題に特に留意せよというもの。首相になってからも総務省への影響力は絶大です。一方、メディア関係者との会食も頻繁でした

▼放送事業者・東北新社に勤務する正剛氏は、総務省幹部を接待、会食に同席しました。BS、CS放送の許認可権を持つ総務省に働きかけて自社に有利になるようにした疑惑が浮上しています

▼山田氏が総務審議官だったとき、接待を受けたのも正剛氏から。昨年、首相がNHK番組に出演した際、事前の打ち合わせになかった学術会議問題を持ち出されました。その後、山田氏はNHKに抗議の電話をしたとされています

▼放送行政を一手に握るのが総務省です。1960年から70年代にかけて郵政(現総務)相の主導で、36のテレビ局が開局しました。メディアを取り込みたい政府、テレビとの一体経営をねらう五大新聞。両者の思惑が交錯した結果でした

▼その経緯は、松田浩著『メディア支配』(新日本出版社)に詳しい。著者は昨年11月に亡くなりました。病床にあって推敲(すいこう)を重ねた労作。政権がメディアに介入、メディア側に忖度(そんたく)の土壌が形成される歴史がつづられています。松田氏が健在ならば、総務省の接待問題をどう論評するでしょうか。

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潔白のための方便(2021年3月5日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 平戸藩主松浦静山の随筆集「甲子夜話(かっしやわ)」で「質朴の人なり」と記されたのが、御鷹匠頭(ごたかじょうがしら)の内山七兵衞である。鶏肉が大好物だったが、「常々鳥肉は嫌と稱(しょう)して人前に於て喫することなし」だったそうだ

キャプチャ

▼鷹場を管理する御鷹匠組の責任者。タカが捕らえた鳥を献上しようとする者が後を絶たなかった。だが、受け取れば頼み事を聞き入れなくてはならなくなる恐れがある。「うその嗜好(しこう)」は賄賂を断る口実だった

▼公正な職務遂行に何が必要か。松浦が高く評価したのもその点だろう。権力者に取り入ろうとする者はどこにでもいるもの。権限を握る者は常に留意しなくてはならない

▼こちらは「会食は苦手」と公言しておけば良かったか。官僚接待問題が底なしの様相を呈している。総務省幹部がNTTグループ側から高額の接待を受けていたと文春オンラインが報じた。総務省と農林水産省の幹部らが先週、倫理規程違反で処分されたばかりだ

▼気になるのは背後にちらつく政治家の影。処分対象の会食には菅義偉首相の長男や吉川貴盛元農水相が同席していた。断りづらい事情でもあったのだろうか

▼江戸初期の老中阿部豊後守(ぶんごのかみ)忠秋はウズラ飼育が趣味だった。ところが、これを聞きつけた者が高価なウズラを贈ると、「こんなことならもう飼わない」と宣言し、すべてのウズラを放してしまったとか。トップが自らお手本を示した好例である。



NTTも総務官僚接待 根深い癒着構造の解明を(2021年3月5日配信『毎日新聞』-「社説」)

 総務省幹部らが業界関係者から、またも高額な接待を受けていた疑惑が明らかになった。

 谷脇康彦総務審議官らが今度は、NTTの社長らと会食し、飲食代を負担してもらっていた。

 NTTは総務相から事業計画などの認可を受けており、利害関係者からの接待を禁じる国家公務員倫理規程に違反する可能性がある。同省は調査を始めた。

 谷脇氏は2018年以降に3回会食したことを認めた。巻口英司国際戦略局長は昨年6月に会食したことを、同省の調査に認めているという。

 最初に報じた週刊文春によると、飲食代の総額は谷脇氏の3回で計58万円超だったという。昨年6月の会食は33万円で、これには総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官も参加していたという。

 谷脇氏と山田氏は、放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らからも、飲食代などの接待を受けていた。

 国会で谷脇氏は、NTTから示された金額を支払っており、倫理規程には抵触しないと認識していたと説明した。このため、東北新社以外の放送や通信の事業者とは倫理規程に違反する会食はしていないと答弁してきたという。

 だが、利害関係者との会食は、割り勘であっても自己負担分が1万円を超える場合は事前届け出が必要だ。谷脇氏は届け出もしていなかった。倫理規程の趣旨を理解しているのか疑わざるを得ない。

 谷脇氏は、総務省に強い影響力を持つ首相に近いことで知られる。政権の看板政策である携帯電話料金引き下げの旗振り役だ。

 首相は官房長官時代に「携帯料金は4割値下げできる」と発言し、通信事業者に値下げを迫った。一連の接待が始まった時期と重なる。関係はないのだろうか。

 NTTは菅政権の発足後、NTTドコモを完全子会社化すると発表し、社長も交代させた。携帯料金値下げに応じる考えも示した。

 もはや官僚の倫理問題にとどまらない。官業の異様な癒着の構造にメスを入れなければならない。

 ところが、首相は「総務省が徹底して調査をされると思う」と答弁するだけだ。疑惑の全容解明に努め、国民の政治不信を払拭(ふっしょく)すべきだ。



「本多侯はとかく賄賂をとられる…(2021年3月5日配信『毎日新聞』-「余録」)

 「本多侯(ほんだこう)はとかく賄賂(わいろ)をとられる……侯は取り入りやすいので、色々な人が出入りして気安くなっているよし」。江戸時代の風聞書「よしの冊子」の一節で、幕府の若年寄・本多忠籌(ただかず)についての評判という

▲この風聞書、老中・松(まつ)平(だいら)定信(さだのぶ)の側近が隠密(おんみつ)などを使って集めた幕府の役人のうわさなどが記されている。忠籌は寛政の改革で定信の右腕だったが、やがて立った悪い評判もちゃんと報告されていた(山本博文(やまもと・ひろふみ)著「武士の人事評価」)

▲官房長官時代から幹部官僚の行状ににらみをきかせた菅義偉(すが・よしひで)首相の役人操縦を、これまで何度か定信の「よしの冊子」ばりと評した小欄である。ならば自らが重用した総務省の役人たちの接待漬けを知っていたのか知らなかったのか

▲首相長男の勤める放送事業会社、東北新社の接待で処分者多数が出た総務省で、今度はNTTによる高額接待疑惑が明るみに出た。週刊文春は谷脇康彦(たにわき・やすひこ)総務審議官や当時同審議官だった山田真貴子(やまだ・まきこ)前内閣広報官らの参加を報じている

▲うち谷脇審議官はNTT側との会食があったことは認めたが、省内の調査を理由に詳細な説明は避けた。すでに東北新社による接待で懲戒処分を受けている谷脇氏は、他には倫理規程違反の会食はしていないと国会で答弁をしていた

▲政権が掲げる携帯料金値下げの推進役を務めてきた谷脇審議官だという。長男の会社の接待に続き、今度は政権の目玉政策の舞台裏での高額接待である。江戸時代ではあるまいし、ここは首相の説明がほしい。



政府は違法接待の全容解明を(2021年3月5日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 総務省がNTTから高額接待を受けたと報道された複数の幹部の調査を始めた。国家公務員倫理法に基づく倫理規程違反の可能性があり、相次ぐ不祥事が行政への信頼を揺るがしている。政府は違法接待の有無を全省庁で調査し、再発防止策を徹底すべきだ。

 総務省は放送関連会社「東北新社」からの接待で幹部11人を2月24日に処分した。その際の調査を踏まえ、国会で「他に違反はなかった」と説明したばかりだ。NTTとの会食が規程違反にあたるのなら国会軽視も甚だしい。

 週刊文春は総務省の谷脇康彦総務審議官が2018年9月~20年7月の計3回で17万円超、当時は総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官と巻口英司国際戦略局長が昨年6月に1人あたり約5万円の接待を受けたと報じた。

 招待したのはNTTの澤田純社長らで、谷脇、巻口両氏は会食の事実を認めた。谷脇氏は参院予算委員会で「会食では先方が提示した金額を負担した」と述べたが、飲食費の総額など詳細は確認中だとした。費用を一部負担しても接待に該当する場合がある。

 国家公務員倫理規程は利害関係者からの接待を禁止し、費用を自己負担する場合も1万円を超えれば届け出がいる。NTTは取締役選任などで総務相の認可を受け、グループのNTTドコモが携帯電話電波の免許を受けている。

 谷脇、山田両氏は東北新社の接待でも当事者だった。

 加藤勝信官房長官は国会や記者会見で山田氏に事情を聴くのかと問われ「すでに退任し、一般の方になっている。政府は確認する立場にない」と述べた。退職すれば過去の行動をすべて不問に付すような態度は許されない。

 菅義偉首相は5日の参院予算委員会で、総務、農林水産両省で相次ぐ接待問題について「私が先頭に立って綱紀粛正、国民に信頼されるようしっかり対応したい」と述べた。もはや各省に対応を委ねる段階ではなく、政権として全容解明に乗り出すべきだ。



相次ぐ接待発覚 全省庁対象に調査せよ(2021年3月5日配信『東京新聞』-「社説」)

 総務省幹部がNTTからも接待を受けていたことが明らかになった。利害関係者との会食は公務員倫理に明確に反する。氷山の一角ではないのか。官僚接待の有無を全省庁で調査するよう求める。

 総務省幹部の接待漬けはもはや「底無し」と言わざるを得ない。

 週刊文春によると、谷脇康彦総務審議官や総務審議官当時の山田真貴子前内閣広報官らが、澤田純社長らNTTからも高額の会食接待を受けていた。

 谷脇氏は会食への参加を認め、総務省が調査を開始したという。

 谷脇氏は、菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」から高額の接待を受け、懲戒処分を受けたばかり。同様の高額接待を受けた山田氏も給与を一部返納の上、体調不良を理由に内閣広報官を辞職している。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、利害関係者から金銭・物品の贈与や接待を受けることを禁止している。自己負担する場合でも、一万円を超える見込みの会食は事前の届け出が必要となる。

 報道によると谷脇氏は2018年9月〜20年7月に計3回で17万円超、山田氏と同省の巻口英司国際戦略局長は昨年6月、1人当たり約5万円の接待を受けた。NTTは利害関係者に当たるが、谷脇氏らは届け出ていなかった。

 国家公務員倫理法は、1998年に発覚した大蔵省接待汚職事件を受けて制定されたものだ。違法な接待がいまだに横行していることには、驚きを禁じ得ない。

 さらに谷脇氏は1日の衆院予算委で、東北新社以外に利害関係者に該当する事業者からの接待があるか否かを問われ、「業界団体の立食パーティーなどの場で懇談、あるいは勉強会でご一緒するケースはあった」と、同社以外からの違法接待を否定していた。
 報道後に一転認めたが、自らの接待隠しのために国会で虚偽答弁した事実は不問にできない。谷脇氏は菅首相に近く、次期事務次官候補ともされるらしいが、国会で平気でうそをつく人物はもはや有資格者たり得ない。

 霞が関官僚に対する利害関係者の接待はどこまで広がっているのか、接待により公平・公正であるべき行政が歪(ゆが)められたことはないのか。国民の疑念は尽きない。

 この際、全省庁を対象にした接待の実態調査を行い、霞が関にたまった膿(うみ)を出し切るべきではないか。そして公務員は全体の奉仕者であり、一部の奉仕者でないことを、改めて徹底すべきである。





相次ぐ官僚接待問題 核心を解明せず幕引きできない(2021年3月4日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 行政がゆがめられたのではないかと国民から疑念や不信を招くような官僚の不祥事が相次いでいる。総務省に続いて農林水産省でも利害関係者からの接待で職員が処分された。

 農水省は、鶏卵を巡る贈収賄事件で在宅起訴された鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの元代表から会食の接待を受けたとして、枝元真徹事務次官ら計6人を処分した。

 しかし、調査は対象の時期や職員を限定しており、不十分で問題意識を欠くと言わざるを得ない。野上浩太郎農相が対象の期間や職員を広げて追加的調査を実施する意向を示したのは当然である。徹底した調査で違法接待の全容を明らかにしなければならない。

 会食には菅義偉首相に近く、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相が参加していた。接待を受けたのは2018年10月と19年9月の2回。会食費は1人当たり1回2万円余りで、両方参加した幹部は計約4万5千円だった。いずれも利害関係者に当たるアキタフーズが会食費を負担していたという。

 農水省によると、元代表が同席することを把握していた職員もいたが、事前や事後の届け出などはしていなかった。手土産を受け取った幹部もいたが、記録がなく処分の対象にならないという。会食の趣旨については職員らの記憶が定かでなく特定できなかったとする。

 調査が単なる聞き取りになってはいないか。記録がなく、記憶が曖昧だとしても、詳しい事情聴取をし、その内容と事実を照らし合わせることで会食の実態を解明するべきだ。

 枝元事務次官は利害関係者との会食について「意識がそこまで回らなかった」と弁明する。だが元代表による接待攻勢の背景には、畜産分野の中で養鶏・鶏卵業界は牛や豚に比べ予算規模が小さいという事情がある。業界のために政治家や有力官僚を頼ろうとした可能性は否定できない。その意図に事務次官という立場の人間が気付かなかったという弁明は不自然だ。

 官公庁職員には「大臣から誘われれば断れない。誰が費用を払ったか会食の場で確認するのは立場上難しいのではないか」という声があるが、看過できない。国家公務員倫理規程では、許認可や補助金、検査の対象となる利害関係者からの金銭・物品の贈与や接待などを禁止している。ゴルフや旅行は割り勘でも禁止だ。官僚ならば誰が費用を払ったか分からないような会食に出席してはならない。

 首相の長男正剛氏らによる総務省幹部接待問題は山田真貴子内閣広報官の辞職に発展した。疑惑の核心が解明されないまま幕引きを図ろうとする官邸の対応が傷口を広げている。

 一連の不祥事で、官房長官時代から人事権を背景に官僚組織を掌握してきた首相の責任は重い。首相自ら問題の調査を主導し、説明責任を果たさねば政治や行政の信頼回復は難しい。



ぶらぶらしていたから―(2021年3月4日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 ぶらぶらしていたから―。総務相を務めていたとき、自身の長男を大臣秘書官にとりたてた菅首相。週刊誌の記者に理由を問われ、そう答えたことがあります

▼当時、自民党内の議員世襲に改革を訴える急先鋒(せんぽう)として売り出していた菅議員。ところが定職のない息子を、みずからの手で公職に就かせていたことがわかり、週刊誌にやゆされていました。「自分の子供には甘い“親バカ”」ではないかと

▼菅首相や政権の人事が至る所で問題を引き起こしています。長男の秘書官起用に深くつながっている総務省の接待漬け。高額接待を受けていた内閣広報官をかばい、行政をゆがめた疑惑を覆い隠そうとしています

▼こんな冗談のような人事も。夫婦別姓に反対する丸川珠代氏を男女共同参画相や五輪相にすえる。以前、年越し派遣村で「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのか」と言い放った坂本哲志氏を1億総活躍や孤独・孤立対策の担当相に任じる

▼人事権を伝家の宝刀のようにふるい、周りを従えてきた菅首相。著書には「人事権はむやみに行使するものではない」「まちがっても恣意(しい)的に利用してはならない」と、恥ずかしげもなく(『政治家の覚悟』)

キャプチャ

▼そこには、世の中には国民の感覚からかけ離れた「当たり前でないこと」が数多くある。それをただし「当たり前」を実行する。そして、国民から信頼される政府をめざしたいと。コロナ禍にありながら、政権の不祥事が次つぎとふきだすいま、それこそ悪い冗談か。





内閣広報官の辞職 信頼回復に全力を尽くせ(2021年3月3日配信『産経新聞』-「主張」」)

 山田真貴子内閣広報官が辞職した。体調不良を訴え入院したためだ。

 総務審議官当時に菅義偉首相の長男、正剛(せいごう)氏らから7万円超の高額接待を受け、問題化していた中での辞職である。

 内閣広報官は、首相の記者会見などを仕切る重職で、首相官邸の顔ともいえる存在だ。厳しい世論の批判にさらされる中、問題発覚後も山田氏を続投させた首相の判断は甘かった。

 コロナ禍への対応など、菅政権が取り組むべき課題は多い。大きく損なわれた政権への信頼を回復するためにも、菅氏は先頭に立ち、自らの言葉で真摯(しんし)に国民に語りかける姿勢が求められる。

 菅氏は接待問題について「私の家族が関係をし、公務員が国家公務員倫理法に違反する行為をすることになったことについて申し訳ない」などと陳謝した。

 接待には、総務相経験者として総務省に強い影響力を持つ首相の長男が関わっていた。当初は長男について「別人格」とするなど人ごとのような発言をし、対応が後手に回った。

 菅氏は大阪など6府県が緊急事態宣言の先行解除の決定を受けた2月26日、記者会見を見送った。山田氏が司会役のため、会見をとりやめたとの見方が出ていた。新型コロナとの戦いの渦中なのに身内をかばおうとした結果、逆に山田氏の辞職を招いた感がある。

 山田氏は総務審議官だった令和元年11月、東北新社社長や正剛氏らと会食し、約7万4千円分の接待を受けた。首相の厳重注意を受け、給与月額の6割の自主返納を表明した。総務省は減給など計11人の処分を発表している。

 正剛氏らとの会食が、国家公務員倫理法に基づく倫理規程が禁ずる利害関係者からの接待に当たるためである。同法は旧大蔵省の接待汚職の反省から平成12年に施行された。その遵法(じゅんぽう)意識どころか官業のなれ合いが復活している。

 武田良太総務相は「現段階で行政が歪(ゆが)められた事実は確認されていない」と述べたが、真相解明にはほど遠い。副大臣をトップに省内で検証するというが、お手盛りの調査は許されない。

 折から国会では一般会計総額106兆6097億円となる令和3年度予算案が衆院を通過した。予算の適切な執行には国民の理解が不可欠だ。菅氏は政治不信の払拭に努めるべきである。



まさしく国家の危機である(2021年3月3日配信『産経新聞』-「産経抄」)

「民間銀行との会合から帰ろうとしたら雨が降ってきた。そのとき、相手から傘を借りるのは、いいのか、悪いのか」。旧大蔵省で笑い話のような議論がなされたことがある。

 ▼平成10年、大蔵省は、過剰接待問題で厳しい批判にさらされていた。いわゆる「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」である。当時「官庁の中の官庁」として霞が関に君臨していた大蔵官僚が、こともあろうに風俗店でいかがわしい接待を金融機関から受けていた。

 ▼贈収賄事件に発展して、官僚4人が逮捕され、112人が処分を受けた。事件は大蔵省解体の引き金にもなった。冒頭のような議論の延長線上に作られたのが、国家公務員倫理法である。

 ▼山田真貴子内閣広報官は結局、辞職に追い込まれた。総務審議官当時に、菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から、7万円を超える会食接待を受けていた。すでに処分が発表されている他の総務省幹部を含めて、倫理法の趣旨は十分承知しているはずである。山田氏を続投させる意向だった首相の対応は、完全に後手に回った。政権への打撃は避けられない。いや、事態はもっと深刻である。

 ▼国家公務員離れが指摘されて久しい。キャリアと呼ばれる幹部候補の「総合職」の志願者数は令和2年度では過去最少となった。合格者数で常にトップとなる東大でも、減少が目立つ。長時間労働や深夜残業など「ブラック企業」のイメージが敬遠されて、給与面でも恵まれている大手企業に流れているようだ。一方で、若手官僚の退職が相次いでいる。

 ▼一連の不祥事によって官僚バッシングが激しくなれば、その傾向に拍車がかかる。若きエリートたちが国のために働く気概を失えば、まさしく国家の危機である。



相次ぐ官僚接待/「強い官邸」が招くおごり(2021年3月3日配信『神戸新聞』-「社説」)

 山田真貴子内閣広報官が辞職した。総務審議官だった頃に菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が勤める放送関連会社「東北新社」から1回7万円超の高額接待を受けていた。

 事実を認めて陳謝し、給与の一部を自主返納したが、辞職は否定していた。菅首相も職務を継続させる意思を示していた。

 一転、職を辞したのは、批判の高まりに抗しきれなかったためだろう。「体調不良」を理由とするが、事実上の引責である。

 だが山田氏は国会でも曖昧な説明に終始し、説明責任を果たしたとは言えない。東北新社が山田氏や総務省幹部を「接待漬け」にした目的や背景など、疑惑の核心は解明されておらず、「幕引き」にはできない。

 首相も任命責任を厳しく問われることになる。

 山田氏は首相の信任が厚く、安倍内閣でも女性初の首相秘書官に起用されるなど重用された。だが首相が2月26日の緊急事態宣言の一部解除決定で広報官が仕切る記者会見を開かなかったことが「山田氏隠し」と批判された。政権の対応は、遅きに失したと言うしかない。

 総務省は正剛氏らを「利害関係者」と認定したが、山田氏は国家公務員倫理規程違反の処分の対象外とされた。処分を受けた同省幹部11人のうち谷脇康彦総務審議官ら多くはポストにとどまり、首相が口にする「深い反省」は言葉だけの印象だ。

 農林水産省の幹部らも、鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの秋田善祺(よしき)元代表との会食に同席していた。接待の舞台となった東京・日比谷の和食店では、1人当たり2万円を超える会食費を2回、アキタフーズが負担しており、農水省は枝元真徹(まさあき)事務次官ら6人を処分した。

 会食には首相に近く、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農水相が在任中に参加しており、職員らは吉川氏の誘いで同席したとされる。

 安倍内閣から続く「長期政権」の下で、官僚組織の「緩み」「おごり」も深刻さを増している。

 官僚は人事権を握る「強い官邸」におののき、忖度(そんたく)を強いられる。安倍政権の森友、加計学園問題や桜を見る会では、虚偽答弁や公文書改ざんなどの不正行為を招いた。

 倫理規程は、旧大蔵省の汚職事件を受けて施行されたが、官僚接待は後を絶たない。民間企業と接点が多い官庁は総務省や農水省に限らず、「氷山の一角」との見方もある。

 長く官房長官として人事を掌握した首相の責任は決して軽くない。第三者を入れた徹底調査で事実を解明する。政治と官僚のひずみを解消する先頭に首相自身が立たなければ到底、信頼回復は望めない。



官僚の不人気(2021年3月3日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 毎週月曜日の本紙経済特集面で長く続くのが「ヒットのヒント」というコーナー。ヒット商品の秘密やアイデアが紹介されている。業種も商品もさまざまだが、共通するのは徹底的な顧客目線でニーズに対応している点だ

▲2022年に卒業する大学生らの就職活動が本格始動した。新型コロナウイルス禍で企業が採用数を絞り、就職のハードルは高い。こうしたヒット商品を提供している企業は軒並み人気で、例年以上に狭き門だろう

▲逆の傾向にあるのが国家公務員の採用。受験申込者は4年連続減少し、20年度は過去最少だった。深夜残業や長時間労働といった激務が不人気の要因とみられ、働き方改革などによるイメージ改善が求められている

▲その助けにはなるまい。総務省と農林水産省の幹部らが処分された接待問題だ。高額の接待をした事業者は菅義偉首相の身内や大臣と関わりがある。人事権を握る政権に官僚が忖度(そんたく)し、政策をゆがめたとの疑惑は依然、解明されていない

▲総務省幹部は国会で「記憶にない」と連発。動かぬ証拠が出ると、答弁を一転させた。内閣広報官は体調不良を理由に入院し、説明責任を果たさないまま辞職。業界との癒着、権力者へのごますり…。国民不在の醜態がどれだけ若者を幻滅させているか

▲国家公務員の職務は重要で、やりがいもあるはずだ。人気回復へ、まずは奉仕すべき相手を間違えず、国民目線に立つことから出発を。



予算案衆院通過(2021年3月3日配信『佐賀新聞』-「論説」)

信頼損なった責任重い

 一般会計総額が約106兆6千億円と過去最大となる2021年度予算案が衆院を通過、年度内の成立が確定した。

 社会保障費や防衛費の増加、新型コロナウイルス対策費が歳出膨張の要因だが、衆院の審議では、政府、与党の相次ぐ不祥事が焦点となり、社会保障制度の在り方や財政再建への取り組みなどの議論は深まらなかった。

 不祥事の責任は全て政府、与党にある。審議の過程で目立ったのは後手に回る対応と、それに対する説明の不足だ。その結果として国民の信頼を損なった責任は重い。

 政権が今後、取り組まなければならない課題は、国民に引き続き不自由な生活を強いる新型コロナ感染症対策や、丁寧な周知・広報が必要な全国でのワクチン接種、万全な感染防止と市民ボランティアの支援が求められる東京五輪・パラリンピック開催など、いずれも国民の理解と協力が欠かせないものだ。信頼を取り戻す真剣な取り組みが政権に求められている。

 国民との信頼関係は政権運営の基盤だ。この基本に対する菅義偉首相の認識の甘さを露呈したのが、総務官僚時代に放送事業者の接待を受けていた山田真貴子前内閣広報官の進退問題と言える。

 首相の長男が勤める会社からの接待が明らかになった後も、首相は「女性の広報官に期待している」と続投させた。

 だが、内閣広報官は首相の記者会見の進行役を務めるとともに、内閣の重要政策の広報を担う内閣と国民をつなぐパイプ役だ。山田氏は結局、体調不良を理由に辞職したが、首相の続投判断は国民との信頼関係への目配りを欠いたものだったと言わざるを得ない。

 さらに、山田氏の辞職後も首相はあくまでも体調不良が理由だとし、不祥事に何のけじめも付けていない。これで国民の理解が得られると考えているのだろうか。

 相次ぐ不祥事は、自民、公明両党の長期政権下で生じた規律の緩み、おごりの表れと言うしかない。新型コロナの緊急事態宣言下に自民、公明両党幹部が高級クラブに出入りしていた問題では国会や党の役職辞任で済ませようとしたが、その後、離党や議員辞職に追い込まれた。自民党は他の議員にも離党が拡大した。

 総務、農水両省幹部が受けていた接待は明白な国家公務員倫理規程違反だ。首相には最高指導者として政権の規律を引き締める責務がある。官僚接待では行政がゆがめられた事実はないのか。国会で引き続き徹底解明に取り組むべきだ。

 国民が今、一番知りたいのはワクチン接種の計画だろう。これに関しても、政府の説明は不十分だ。一般の国民はいつになったら接種できるのか。全国知事会は緊急提言で、接種計画の全体像を明示し、正確な情報を提供するよう求めた。

 新型コロナ対応を巡る予算委員会審議では、与野党の基本的な考えの違いが明確になった。立憲民主党などは「ゼロコロナ」を目指すべきだと主張し、首相が経済重視に固執して「物事を楽観的に見過ぎている」と批判。首相は「地域経済に欠かせない政策を進めてきた」と反論した。

 感染症対策は息の長い取り組みになる。参院の審議でも対策の基本軸をどこに置くのかの議論を深めてもらいたい。政府には野党の主張にも耳を傾け、理のある対策は取り入れるよう求めたい。(共同通信・川上高志)



山田広報官辞職 疑惑は残されたままだ(2021年3月3日配信『琉球新報』-「社説」)

 これで幕引きとはならない。総務省に対する接待攻勢の裏に何があったのか疑惑は残されたままだ。

 放送事業会社・東北新社に勤める菅義偉首相の長男正剛氏側からの高額接待を批判された山田真貴子内閣広報官が辞職した。体調不良が辞職の理由だが、事実上の引責辞任である。それでも高額接待の責任を取ったとは言えない。

 接待問題で総務省は幹部ら9人を減給や戒告の懲戒処分にするなど11人を処分した。ところが、武田良太総務相は処分対象者のほとんどを現職に留め置くなど身内に甘い処分だった。

 菅首相が広報官に抜てきした山田氏への対応も誤った。山田氏が辞任する用意があると伝達していたのに官邸は続投で乗り切れると判断した。首相の任命責任が問われる事態を避けたかったのだろう。官邸側の保身によって対応は後手に回り、傷口を広げた。

 今後、東北新社の接待攻勢が何を目的としたものなのか、放送行政がゆがめられなかったかが明らかにされなければならない。

 東北新社と総務省幹部らの会食は2016年7月から20年12月にかけ延べ39件行われた。この間の東北新社に関する許認可への影響の有無について具体的に調査し、解明すべきだ。内部調査で明らかにならなければ、第三者機関による調査も必要である。

 菅正剛氏の存在や果たした役割についても明らかにするべきだ。菅首相が総務相時代、正剛氏は秘書官を務めていた。その後の東北新社への就職は「天下り」と見られても仕方ない。一連の問題で菅首相は「私と長男は別人格」と抗弁したが、ほとんど説得力を持たない。首相は接待問題について自らの言葉で明らかにすべきだ。

 菅首相は総務相時代、自身の政策に異議を唱えた課長を更迭した過去がある。今も総務省に対し影響力を及ぼしているみられている。強権を誇る首相と忖度(そんたく)する官僚という構図が問題の背景にある。

 昨年9月に菅政権が発足して以来、疑惑や不祥事が次々と判明した。ところが菅首相は疑惑を明らかにし、国民の信を取り戻そうという姿勢からほど遠い。

 「桜を見る会」の前夜祭会場だったホテル側が作成した明細書が明らかになり問題が再燃したが、菅首相は再調査を拒んだ。吉川貴盛元農相が在任中、広島県の大手鶏卵会社前代表から現金を受領し、収賄罪で在宅起訴された問題でも菅首相は「大変残念」と述べるだけで実態解明には踏み込まなかった。

 田中氏の問題でも菅首相は先月26日、緊急事態宣言一部解除を受けた会見を開かず「山田氏隠し」と批判された。

 菅首相の態度は責任回避に終始するものであり、国民の不審は高まるばかりだ。今回も山田氏辞職で済む話ではない。説明責任を果たすべきは菅首相である。



飲み会を断らない女?(2021年3月3日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 職場での男性像、女性像を探る調査で「ハイディーとハワード実験」というのがある。Aグループには女性名詞のハイディーを主語に、Bグループの主語は男性名詞のハワードにして、成功した経営者の文章を読んでもらう

▼ストーリーは「強烈な個性の持ち主で著名な経営者にも顔が広く、人脈を駆使して成功した」という内容。結果はハワードの方が好感度が高く、ハイディーには「自己主張が激しく一緒に働きたくない」との印象を抱いたという

▼成功する男性の好感度は高いが、同じ資質でも女性の場合は嫌われる結果となった。発信する性別によって受け手の印象が変わるのは偏見と言える

▼女性初の内閣広報官・山田真貴子氏が「飲み会を断らない女」として話題になった。もし男性広報官が「飲み会を断らない男」と発言したら、これほど話題になっただろうか

▼接待を受けたことは大問題で、辞任は妥当な決断だった。だがその発言部分だけを切り取った動画のニュース性には疑問に感じる。「女性は控えめで、出世を望むあざとさはいただけない」という思い込みがなかったか。ある意味「わきまえない女」と見られている

▼「ハイディーとハワード実験」から学ぶことは「嫌われるかもしれない」と成功を恐れることではない。能力のある女性が遠慮せず、自信を持って、正しく評価される社会となることだろう。





山田広報官辞職 首相の任命責任は重い(2021年3月2日配信『北海道新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社「東北新社」から、総務審議官時代に7万円を超える高額の接待を受けていた山田真貴子内閣広報官が辞職した。

 政府の説明によると、山田氏は体調不良で入院しているという。接待問題への批判がやまず、事実上の引責とみられる。

 辞職を受け、首相は首相官邸で記者団に答えて「国会審議の重要な時期に職を辞す事態に至り、大変申し訳なく思う」と陳謝した。

 首相は当初、給与の一部返納にとどめて続投させた。

 内閣の重要政策を国民に知らせる責任者の広報官は政治任用の特別職だ。国家公務員倫理法に基づく倫理規程に違反した人物では、行政の信頼は保てない。

 接待の事実が判明した時点で辞職すべきだった。対応が後手に回ったと言わざるを得ず、首相の任命責任は重い。

 政府は新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言を6府県で解除するのに当たって、内閣記者会が求めた首相の記者会見を拒否し、囲み取材で済ませた。

 会見を取り仕切る山田氏を表に出したくなかったのではないか。

 ほとぼりが冷めれば批判も収まると思ったのだろうが、コロナ禍で政府が国民に行動自粛への協力を求めているさなかに到底理解の得られない対応だ。

 山田氏が辞職しても、総務省幹部が相次いで接待に応じたのはなぜか、便宜供与はなかったのかなどの疑問が消えるわけではない。

 総務省は接待問題で幹部11人を処分したものの、いまだに「会食時は利害関係者と認識していなかった」との釈明を続けている。

 東北新社は社長が引責辞任し、正剛氏を懲戒処分にした。

 だからといって、これでうやむやにはできない。正剛氏ら会社側の関係者の国会招致が欠かせない。山田氏も体調が戻り次第、国会で再度説明する必要がある。

 首相は責任を自覚し、山田氏や正剛氏に説明を促すべきだ。

 農水省の枝元真徹(まさあき)事務次官ら幹部6人が処分された接待問題も疑惑解明にはほど遠い。

 鶏卵を巡る贈収賄事件の裁判を理由に、在宅起訴された吉川貴盛元農水相と贈賄側の鶏卵生産大手元代表の聞き取りをしていない。

 枝元氏はきのうの衆院予算委員会で、接待の際に「たぶん養鶏の話題も出た」と述べ、鶏卵事業が話題になった可能性を認めた。

 事件と接待のつながりについて、国会で真相究明が求められる。



付き合いの深さを思わせる(2021年3月2日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 久しぶりに友が訪ねて来る。テーブルには心尽くしの手料理。学校時代の思い出や近況を語り、しばらく会っていなかった空白の時間を埋める。ただ楽しい時を過ごしてほしい。それがもてなす際の気持ちだろう

▼ただし特別な狙いがあってのもてなしもある。約200年前、フランスの政治家ブリア・サヴァランは「食事は政治の手段」とずばり指摘。「人民の運命は宴会において決せられた」と著書「美味礼讃」で書いた

▼その歴史に触れ、さらに説く。供応する者とされる者の間に食卓はつながりを生み出す。その結果、会食者はある種の影響を被りやすい―。同じ食卓を囲むと確かに心が通じ合う。相手に影響力を行使しやすくなるということだ

▼霞が関官僚らと民間人が飲食する場合はどうか。放送事業会社東北新社の接待問題で総務官僚11人が減給処分などを受けた。総務省幹部時代、1回7万円超の接待を受けた内閣広報官は辞職。同社部長で子会社役員だった菅義偉首相の長男正剛氏らが供応していた

▼会食の音声データを聞いた。専門用語をポンポン使って話が弾む。付き合いの深さを思わせる。子会社の衛星放送の許認可権を握る監督官庁、菅氏の総務相時代に秘書官だった長男ら。一線を画すべき両者は「特別な関係」にあったのではとの疑いが残る

▼一連の接待によって行政がゆがめられたことはなかったのか。それが問題の核心だ。「食事は政治の手段」との言葉を振り返る時、疑念は強まる。



山田内閣広報官が辞職 対応はまた後手に回った(2021年3月2日配信『毎日新聞』-「社説」)

 遅すぎる判断だったというしかない。ここまで放置してきた菅義偉首相の責任は極めて重い。

 首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から7万円余の接待を受けていた山田真貴子内閣広報官がきのう、辞職した。

 山田氏は体調不良で入院し、「広報官としての職務を続けられない」と辞表を提出したという。

 しかし実態は、世論の批判が収まらず、追い込まれた末の引責辞職である。

 一般常識をはるかに超える高額接待だっただけではない。山田氏が当初、会食の「記憶はない」と説明していた点も看過できない。総務省が会食を調べた報告書をまとめると、一転して認めて謝罪したものの、その後も詳細については曖昧な国会答弁を繰り返した。

 政府の政策を国民に説明するのが内閣広報官だ。それがこの姿勢では政府全体への信頼を失う。

 同時に菅首相も「女性の広報官として期待している」と、山田氏を続投させる考えを示し続けた。これも理解できない対応だった。

 菅首相は総務相時代から山田氏に期待してきたという。今回の辞職後も、首相は「残念だ」と言うだけだ。首相の任命責任を問われても答えをはぐらかした。

 本当にこのままで乗り切れると考えていたのだろうか。だとすれば、全く感覚がずれている。

 新型コロナウイルス対策と同様、今回も対応が後手に回った。首相への不信や不満がいっそう広がるだろう。

 菅首相は先週、緊急事態宣言の一部解除にあたって記者会見を開かなかった。会見の司会役である山田氏を隠すためではなかったかとの疑念は消えない。

 しかも会見に代わって行われた記者団の取材では「同じような質問ばかりではないでしょうか」といら立って質問を打ち切った。冷静さを失っているのではないか。

 総務省の接待問題では、東北新社が放送事業に関して何らかの優遇措置を受けたのではないかという疑惑の核心がなお未解明だ。

 山田氏が入院したことで、国会への招致は見送られた。だが体調が回復したら、国会できちんと説明すべきだ。逃げたり、ごまかしたりしないことが、菅政権にとって信頼回復への一歩となる。



山田広報官辞職 疑問に答えぬ不誠実(2021年3月2日配信『東京新聞』-「社説」)

 山田真貴子内閣広報官が辞職した。体調不良が理由であり、高額接待の責任を取ったわけではない。衆院予算委員会にも欠席した。国民の疑問に答えぬままの退場は、あまりに不誠実ではないか。

 現職の総務審議官当時、菅義偉首相の長男・正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社「東北新社」から7万4千円超の高額接待を受けていたとなれば、内閣広報官としてもはや適任とは言えない。とはいえ、辞職したり、給与の一部を返納したりすれば済む話でもない。

 山田氏を含む総務省幹部への一連の接待が、国家公務員倫理法に基づく倫理規程に反するのは当然としても、さらに追及すべきは東北新社への便宜の有無である。

 接待時期が、同社関連の放送事業の許認可時期と重なるのは、単なる偶然なのか。その点を明らかにすることなしに、この問題に終止符を打つことはできない。

 山田氏は先月25日に続き、きのう1日の衆院予算委員会への出席も求められていた。当初は自ら辞表を提出することはないと言いながら、一転して、委員会直前の辞職と国会欠席である。

 この間、何があったのか、体調不良だけが理由なのか。山田氏と任命権者の首相は国民に説明する義務から逃れられない。

 そもそも首相は緊急事態宣言の六府県での先行解除を発表した26日、記者会見を見送り、官邸玄関で取材を受けるにとどめた。

 首相が会見の場で一部解除の理由を説明し、引き続き感染防止への協力を呼びかけるべき局面だ。にもかかわらず、会見を見送ったのは、司会を務める山田氏を、追及の矢面に立たせないためと受け止められても仕方があるまい。

 山田氏は月額給与の10分の6相当額を自主返納したが、総務省を退職したとして倫理規程に基づく処分も受けていない。今回の辞職も体調不良が理由で、高額接待を受けた責任問題はうやむやだ。

 国会は、山田氏の体調が回復次第、参考人か証人として出席を求め、接待の詳細について引き続き追及すべきである。

 接待問題が発覚しながら山田氏を続投させた首相の責任も重大だ。後手の対応は政治への不信を募らせ、国会審議にも影響も与えた。

 長男は別人格とはいえ、首相との関係が、接待の申し出を断りづらくした面はないのか。

 森友・加計両学園や「桜を見る会」の問題と通底する、政権中枢に近い者を優遇する政治の在り方そのものが問われている。



冷たい眼差(まなざ)しが見えていない(2021年3月2日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 <太いやつどうして九両三分二朱>。落語ファンならおなじみの古川柳だろう。かつての窃盗は10両が量刑の分かれ目だったそうだ

▼10両を盗み、捕まれば、首が飛ぶ。それを恐れて、ず太いやつは10両にぎりぎり届かぬ9両3分2朱だけ盗んだというが本当か

▼決して盗んだわけではない。が、お役人が利害関係者から7万円を超える接待を受けていたとあれば、これが6万円でも5万円でも世間は収まるまい。菅義偉首相の長男が勤務する放送事業会社「東北新社」側から高額の会食接待を受けた山田真貴子内閣広報官がついに辞職した

▼最近、よく耳にする「キャンセルカルチャー」とは失言や問題を起こした人物を徹底的に攻撃し、排除に追い込む風潮のことだそうだ。その是非はともかく、エリートの不祥事、しかも一般市民の金銭感覚とはかけ離れた高額ゴチとくれば、世間が「キャンセル(辞めて)」と叫ぶのも無理はない

▼しかも首相のお坊ちゃんもからんでいる。給与自主返納で済むはずがなく一時、山田さん続投で決め込もうとした首相官邸も世の中の冷たい眼差(まなざ)しが見えていない

▼体調を崩し、入院したと聞く。ただだったはずの和牛ステーキと海鮮料理は途方もなく高くついた。ご病人にあまり皮肉も言いたくないが、「東北新社」に食べ歩きのCS番組でも作ってもらえばよい。さぞや口は肥えている。



内閣広報官辞職 癒着生んだゆがみに迫れ(2021年3月2日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 内閣広報官の山田真貴子氏が辞職した。総務省勤務時に、菅義偉首相の長男らから高額接待を受けていた。引責と言っていい。

 国会は接待問題の追及を緩めてはならない。長男が勤める放送事業会社「東北新社」からの接待を、総務省の幹部がなぜ受け続けたのか。放送行政にどう影響したのか。真相は依然、分かっていない。

 山田氏は旧郵政省(現総務省)出身で、安倍前政権時の2013年、女性初の首相秘書官に起用された。省に戻った後、情報流通行政局長、事務次官に次ぐ総務審議官を歴任した。

 接待を受けたのは審議官の時だった。山田氏は当初、「会食をした明確な記憶はない」と説明していた。2月25日の衆院予算委員会で謝罪した一方、東北新社からの「働き掛けはなかった」「利害関係者かどうかのチェックが十分でなかった」と釈明した。

 幹部13人が39回にわたって接待を受けたことが、総務省の調査で判明している。証拠を突きつけられ、「記憶にない」から一転して事実を認めたのは、他の幹部も同じだ。自ら事実を明かす誠実さが感じられない。

 山田氏は辞意を示したものの、事態の悪化を避けたい首相が続投にこだわった。6府県の緊急事態宣言解除に伴う記者会見を官邸が拒んだため、進行役である「山田隠しだ」と批判する声が、与党からも上がっていた。

 衛星放送の視聴者を増やす狙いから、当時は東北新社の子会社が手掛ける番組の許認可が危ぶまれる状況ではなかったという。だとすれば、頻繁に接待を重ねた動機が判然としない。

 考えられるのは官僚による忖度(そんたく)だ。菅氏は総務副大臣、総務相を務め、いまも省内に強い影響力がある。長男は総務相時代の秘書官だった。「審議官が会食に応じるなんて考えられない」との他の放送事業会社の証言もある。

 官業の癒着以上に、官邸が人事権を掌握して恣意(しい)的に官僚を支配する「構造のゆがみ」の方が深刻なのではないか。

 菅首相は、きのうの衆院予算委で「国民の信頼を大きく損なう事態になったことは深く反省しなければならない」と、人ごとのように述べただけだった。

 総務省は近く、副大臣をトップに有識者を含めた検証委員会を発足させる。外部の委員だけで構成すべきだ。証言する職員が不利益を被らない仕組みを設け、事の本質に迫らなくてはならない。



山田広報官辞職 真相をうやむやにするな(2021年3月2日配信『新潟日報』-「社説」)

 不祥事で社会の注目を浴びることになった渦中の人物が辞職した。とはいえ、疑念が解消されたわけではない。

 懸念するのは、これで一区切りといったムードが生まれることだ。行政の信頼性の根幹に関わる問題の真相をうやむやにしてはならない。

 総務審議官当時に菅義偉首相の長男正剛氏らから7万円を超える接待を受けていた山田真貴子内閣広報官が1日、体調不良により辞職した。

 加藤勝信官房長官は衆院予算委員会で、山田氏は体調不良で病院を受診、2週間程度の入院と加療が必要と診断され、入院したと説明した。

 山田氏は高額接待が問題視され、野党から辞職を求める声が上がっていた。

 しかし首相は先週、続投させる意向を示し、山田氏も足並みをそろえるように国会答弁で辞職を否定していた。

 それが一転した。体調不良というが、批判がやまない中、事実上高額接待問題で辞職に追い込まれたということだろう。

 内閣広報官は首相記者会見の仕切り役だ。不祥事で疑念を持たれながら仕事をこなせるかとの見方も出ていた。国民の信頼を欠いたままでは、職務遂行は困難だったに違いない。

 注目したいのは、山田氏の進退を巡る経緯だ。

 山田氏は当初から接待問題の責任を取って辞める腹づもりがあったとされる。だが政権は問題の深刻さがさらに印象付けられることを危惧し、首相の意を受けた加藤官房長官らが回避に動いたという。

 問題の責任を明確化するよりも、政権に批判の矛先が向かわないよう影響を抑え込むことが重要だったのだろう。

 首相の保身最優先は、1日の国会審議でも鮮明だった。

 山田氏辞職を受け、野党からは首相の責任を問う声が出た。しかし首相は入院などが辞職理由とし、「そういう状況であれば仕方ない」と述べるだけで、自身の責任には触れなかった。

 正剛氏の関与がなければ接待問題は起きなかった、官僚にとって首相と長男は別人格ではないのでは、と追及されても「私が答弁することじゃない」など人ごとのようにかわし続けた。

 新型コロナウイルス対応を巡る重要局面に政府が置かれている中、自らの保身にきゅうきゅうとするような対応では首相の求心力が低下し続け、政府が機能不全を起こして国民に不利益を及ぼさないか。

 忘れてならないのは、正剛氏が勤める「東北新社」の接待の目的や、行政がゆがめられていなかったかなど核心部分が明らかになっていないことだ。

 正剛氏らによる接待は、衛星放送の見直しを議論する専門家会議の最中に、会議事務局を務めていた幹部を接待した会食が大半を占める。1日の予算委では野党がこう指摘した。

 国会や政府は農林水産省の接待問題も含めて徹底的に真相を明らかにし、国民の前に示さなければならない。



江戸時代、罪人に処罰を下すとき罪の…(2021年3月2日配信『福井新聞』-「越山若水」)

 江戸時代、罪人に処罰を下すとき罪の軽重に応じて使う言葉が決まっていた。「不束(ふつつか)」はちょっとした間違い。「不埒(ふらち)」は道理に外れてけしからぬことで、手鎖以上の刑とされた

▼もっと厳しいのが「不届き」で、追放刑以上の重罪に相当する場合に使われた。さらに「重々」「至極」という加重語があり、最上位は「不届き至極」。これは藩主への反逆など死罪に処すべき極刑を表す。いずれの用語も判決の末尾に書かれ、罪人に言い渡される

▼分かりやすい歴史解説で知られた故山本博文さんは「不届き至極」の事例を自著で紹介している。会津藩(現福島県)の武士長井九八郎は、財政再建策として藩札の発行を提案した。しかし簡易な木版印刷ゆえに偽札が横行。貨幣価値は暴落し国中が大混乱に陥った

▼藩主の下した決断はこうだ。藩札発行で武士も庶民も大変苦しんだ。その罪は軽くなく「不届き至極に思(おぼ)し召され候(そうろう)。御成敗仰せ付けらるべく候へども、切腹仰せ付けらる」。本来は斬首に値するが、それは許し切腹を命じる―。つまり自分で責任を取れということ

▼総務審議官当時、菅義偉首相の長男らから高額接待を受けた山田真貴子内閣広報官が、体調不良を訴え辞職した。一連の問題は首相がらみの官民癒着が疑われる。先の判決のように、詰め腹を切らされたわけではないが、何とも後味の悪い決着である。




2021.03.02 05:00
【山田広報官辞職 】首相の責任が問われる(2021年3月2日配信『高知新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らから高額の接待を受け、批判されていた山田真貴子内閣広報官が辞職した。

 山田氏は2月25日の衆院予算委員会に参考人として出席した際、野党議員の質問に「職務を続けていく中で改めて反省したい」などと答え、辞職を否定していた。

 28日に体調不良で病院を受診し、2週間程度の入院と加療が必要と診断された。病院から連絡し、辞意を伝えたという。

 2019年、総務省総務審議官だった山田氏は同社から7万4千円に上る接待を受けたことが明らかになり、辞意を漏らしたが、首相官邸幹部が「辞める必要はない」と慰留したとされる。

 慰留は首相の意を受けたと考えて間違いない。山田氏は13年、当時の安倍政権で首相秘書官となって15年まで務めた。総務省で退官を迎えた後、昨年内閣広報官に就任した。総務副大臣、総務相を歴任して総務省に強い影響力を持つ首相は山田氏を抜てきし続けた。

 その山田氏が辞職すれば、政権への打撃は大きいと想定し、慰留に努めたのではないか。ところが、山田氏は辞職する道を選んだ。山田氏に衆院予算委で答弁させ、幕引きを図ろうとしたところが、かえって波紋を広げてしまった。世論を見誤ったのは否めまい。首相の判断ミスというしかなく、厳しく責任を問われなければならない。

 接待について総務省は、国家公務員倫理法に基づく国家公務員倫理規程が禁じる利害関係者からの違法接待と認めている。総務省は事務方トップの事務次官級に当たる総務審議官ら11人を懲戒処分とした。山田氏は現在は特別職の国家公務員で首相から厳重注意処分を受けた。

 それでも批判は収まらなかった。先に新型コロナウイルス緊急事態宣言の一部解除に当たり、首相が記者会見を開かなかったことでも、会見では通常、山田氏が司会をすることから関連が指摘された。

 国家公務員倫理法は、官僚が収賄罪に問われた旧大蔵省の接待汚職がきっかけとなり施行された。

 倫理規程で公務員は国民全体の奉仕者であるとして、利害関係者から供応接待を受けることを禁止している。給与を自主返納したとはいえ、山田氏の行動は到底、許されるものではない。

 東北新社側は「重大な事態を招いた」として社長が引責辞任し、首相の長男も懲戒処分を受けている。

 解せないのは首相が「長男とは完全に別人格だ」と述べ、人ごとと捉えているように映る点だ。接待した側は首相の威光を利用し、された側は忖度(そんたく)、保身に走ったとも取れる。

 首相は自らに異を唱える官僚には「反対するなら異動してもらう」と公言している。強権的な一方で、意に沿う者は厚遇しようとする。そんな姿勢が生み出した問題ともいえ、人ごとではない。行政府の長として首相は国民の疑念に誠実に応える必要がある。



無分別(2021年3月2日配信『高知新聞』-「小社会」)

 仏教由来の言葉には、もともとの意味とは違う使われ方をしているものがあって興味深い。例えば「言語道断」。

 本来は「仏教の奥深い真理はことばで説明することができないこと」(広辞苑)を指す。それがいつの間に、とんでもないことだ、もってのほかだ、という悪い意味合いに転じたのだろうか。

 「無分別」もそう。分別がない、思慮が足りない趣旨で使われるが、宗教評論家のひろさちやさんによると、仏教の教えは「分別するな」。つまり無分別はよいことで、必要のない区別、差別をしないように説く。色眼鏡で見たり、自分の常識にとらわれたりするなというのだろう。

 衛星放送関連会社に勤務する菅首相の長男らによる総務省幹部接待問題。接待を受けた総務省出身の内閣広報官がきのう辞職した。真相が分からないまま幹部は早々に処分され、内閣広報官も去ったことになる。

 世間から官僚や政権に「無分別だ」「言語道断だ」との批判が出るのも無理はない。相手が利害関係者なのは、普通に考えれば分かる。権力者への忖度(そんたく)も疑われ、国会などでの究明が求められる。

 仏教への造詣が深いロボット工学者の森政弘さんがかつて著書で述べている。仏教の無分別を習得すれば、「何が虚で、何が仮で、何が実であるかが、はっきりとわかる」と。俗世間の無分別であれ、仏教の無分別であれ、接待問題が道理から外れているのは確かだ。



内閣広報官辞任(2021年3月2日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 40年以上続いた月曜夜の時代劇「水戸黄門」。葵(あおい)の印籠をかざして、悪代官らをひれ伏させるお決まりのパターンが人気だった。だが、長い番組の歴史の中で印象に残るちょっと変わったパターンがあった。

 場所は、将軍のお膝元の江戸城。ここでは印籠の効果もない。そこで、よからぬことを企てる幕閣の重臣に黄門さまが繰り出したのが、自身が「家康の孫」であることを前面に出すというウルトラC。光圀と同格の重臣らも、これには思わず「ハハーッ」となった。

 もちろんフィクションだが、このシーンを見たときに「強大な権力者の親族という威光」についてあれこれ考えさせられた。主権在民の現在、最高権力者の親族といえども威光はない。竹下登元総理の孫であるタレントのDAIGOさんなどは、ネタにしていたくらいだ。

 だが、これはあくまで一般市民の話。”霞が関の住人”となると話は違ってくるようだ。菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社による接待問題。総務省の職員11人が処分され、きのう山田真貴子内閣広報官が辞任する事態となった。首相の息子の接待を断ることは彼らにとって何を意味するのか。

 国民の奉仕者としての自覚と倫理観のなさを糾弾すべきか、それとも”宮仕え”の悲哀に多少の同情を寄せるべきなのか。いずれにせよ真相の究明は必要だ。かの時代劇のように、不正に関わった当事者のみが詰め腹切らされて大団円―とはならないだろう。



身内にやさしく国民置き去りの政治(2021年3月2日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★衆院予算委員会の開催までも遅らせるなど、最後の最後まで国民のための内閣広報官ではなく自己都合の国家公務員という名の上級国民が辞表を提出した。加減が悪く入院中だというから心配だが、最近の自民党議員の常とう手段が入院して辞表、またはしばらく入院してケロッと国会に戻ってくるやり方が続いているので、どうしてもうがってみたくなってしまう。辞職後も退院され、元気になられ飲み会を断らないまでに回復されたら、改めて内側ではなく、国民に向けた説明責任を都合の悪いことだけ記憶がなくなったり、あいまいになることなく果たしてもらいたい。

★昨今の身内にやさしく国民置き去りの政治はどうやって正せるのか。高級官僚として上り詰めた人物だからこそ語れることをきちんと国民に語ってもらいたい。総務省は相変わらず調査委員会を立ち上げ、なぜ発覚したのか、情報源の特定に血道をあげているようだが、本来は国家公務員倫理規程がなぜほごにされているのかを外部を入れて検証するべきだ。オリンピック(五輪)を前にパワハラ、セクハラ、暴力が横行していたアマチュアスポーツ界は多くの競技団体で選手たちが声を上げ、今までの失敗を正そうと努力した。なぜそれができないのか。また大臣の責任はないのかと問われるべきだ。

★過去の不祥事からいまだに財務省は接待と聞くだけで身構えるという。総務省旧自治系の連中は、地方で接待の実態を突きつけられ住民訴訟を受け、損害賠償を払っている経緯がある。自分がのんだ分を返したのならいざしらず、たまたま赴任した時期に敗訴して、のんでもないのに役職に応じて返還させられた事例はいくらでもあり、倫理法以降、割り勘でない飲み会はなくなった。だからこそ郵政系ののんきな対応が霞が関内でも異様に映る。政治家が官僚を骨抜きにしたのだろうが、それだけでもあるまい。



山田広報官の辞任(2021年3月2日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

続投させた首相の責任免れぬ


 菅義偉首相の長男・菅正剛氏が勤める放送関連会社「東北新社」から高額接待を受けた山田真貴子内閣広報官が辞任しました。異常な接待は2月22日発表の総務省調査の過程で判明しました。山田氏は処分されず給与の一部を自主返納しただけだったこともあり、国民の批判と怒りが渦巻いていました。問題発覚後も「今後とも職務の中で頑張ってほしい」と山田氏を続投させた首相の責任が改めて問われます。総務省でまん延していた接待が行政をゆがめた疑惑の解明を終わらせてはなりません。

国会出席予定の朝に突然

 山田氏は1日の衆院予算委員会で答弁する予定でした。委員会開会の直前に体調不良による入院が明らかにされ、閣議で辞任が決定されました。あまりに突然です。

 東北新社問題では、利害関係者からの接待を禁じた国家公務員倫理規程違反で総務省幹部ら11人が懲戒処分されました。山田氏は総務審議官時代の2019年11月、正剛氏や東北新社社長ら5人から接待されました。倫理規程に反した行為だったのは明白です。国民が驚いたのは、一晩の飲食単価です。和牛ステーキや海鮮料理が提供され、1人あたり7万4000円超にのぼりました。他の総務省幹部の単価(最高は谷脇康彦総務審議官の4万7000円超)も決して少額ではありませんが、それと比べてもずば抜けた額です。

 国民の生活実態からかけ離れた飲食に批判が集まりましたが、菅政権は給与自主返納で済ませ、世論に完全に背を向けました。首相は「真摯(しんし)に反省している」「女性の広報官として期待しているので、そのまま専念してほしい」(2月24日)と擁護し、辞任を拒みました。

 首相が緊急事態宣言の一部解除についての記者会見を行わず、官邸ホールでの記者との一問一答のやりとりにとどめたこと(26日)も不信を増幅させました。山田広報官が司会する記者会見をやめたのは、接待問題で追及されるのを避けたい「山田氏隠し」の思惑だとの指摘が相次ぎました。コロナ対策の節目だというのに、国民に丁寧に語る機会を事実上放棄したことは、危機における国政トップとしての資格が疑われます。発覚から1週間、国民の声に逆らって、山田広報官続投に固執し続けた菅政権の姿勢は重大です。民意に耳を傾けようとしない菅政権の独善体質を浮き彫りにしています。

 菅首相が総務省の接待問題の解明に後ろ向きであることが大問題です。首相が正剛氏を総務相秘書官に起用したことが、接待問題の源流にあることは動かせない事実です。首相自身も政治献金を受けるなど、東北新社と「特別の関係」にあった疑いも濃厚です。首相は態度を改め、真相を明らかにするため役割を果たすべきです。

政官業癒着の闇解明せよ

 東北新社の接待攻勢が、衛星放送の周波数割り当てや、衛星利用料金の引き下げをめぐる政策決定の重要な時期だったことが、野党の国会質問で追及されています。国家公務員倫理規程違反にとどまらず、贈収賄事件としての可能性も浮上しています。吉川貴盛元農林水産相の汚職事件にからむ鶏卵生産会社アキタフーズからの農水省幹部接待も農水行政をゆがめた疑惑として深まりをみせています。政官業癒着の闇をあますところなく明らかにする時です。





相次ぐ接待問題 緩みの本を断ち切らねば(2021年2月28日配信『新潟日報』-「社説」)

 利害関係者から接待を受けた官僚の処分が続いている。なぜ行政の公平性、公正性を疑わせるようなことが相次ぐのか。

 菅義偉首相の長男正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」側から7万円超の会食接待を受けた山田真貴子内閣広報官が、国会で高額接待を受けたことを陳謝した。

 25日の衆院予算委員会で「利害関係者であるかどうかのチェックが十分ではなかった。心の緩みがあった」と釈明した。

 首相長男らとの関係や会話については「記憶にない」などと述べるにとどまり、東北新社からの働き掛けはなかったとして辞任を否定した。

 問題の核心は、なぜ「心の緩み」が生じたかだ。

 山田氏は、菅首相が強い影響力を持つ総務省の出身だ。首相の評価も高く、放送行政などで要職を歴任してきた。

 山田氏については首相が早々と続投させる意向を表明した。人事を権力掌握の要と位置付ける首相にとって象徴的な存在とされる。

 第2次安倍政権以降、官邸が幹部官僚人事の主導権を握った。官邸に重用された官僚におごりが生じたことが接待問題の背景と指摘される。

 政官のゆがんだ構図が、業界に付け入る隙を与えたということだろう。国民をないがしろにするような政官の関係にあきれるばかりだ。

 接待問題では、総務省に続き農林水産省でも国家公務員倫理法に基づく倫理規程に違反していたとして、事務方トップの枝元真徹事務次官ら職員6人が処分された。

 6人は、鶏卵を巡る贈収賄事件で在宅起訴された鶏卵大手「アキタフーズ」グループ元代表から2018年と19年に計2回、会食の接待を受けた。1人当たり1回2万円余りだった。

 収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相も同席していた。

 元代表は当時、家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア」の国際基準緩和などを求めていた業界を取りまとめ、元農相らに働き掛けていた。農水省は、アキタ社は利害関係者に当たると判断した。

 国家公務員倫理規程は、旧大蔵省の汚職事件を受けて2000年に施行された。

 一連の処分は、規程が形骸化していることを物語るものだろう。他の府省庁は大丈夫か。

 看過できないのは、首相の逃げの姿勢が際立つことだ。

 首相は24日、総務省の接待問題について「私の長男が関係して結果的に違反行為をさせてしまった」と陳謝したが、事実解明に指導力を発揮しようとの姿勢はうかがえない。

 新型コロナウイルス緊急事態宣言の一部解除を決めた26日、首相は記者会見をせず、野党から「山田氏隠し」と批判された。

 3月1日には首相出席の衆院予算委集中審議が開かれ、接待問題が取り上げられる見通しだ。「緩み」の本を絶つためにも、徹底審議で政権の責任を厳しく問わねばならない。



見ている国民は興ざめである(2021年2月28日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 肩で風を切ると言えば、肩を怒らせ得意げに歩くこと。真偽は別として、やくざの歩き方に例えられる。東映のやくざ映画が全盛だった頃、見終えた観客の後ろ姿もそんなふうだったらしい

▼やくざ路線が影を潜めて久しい。そんな中、主役を張る作品が相次ぎ公開された。『ヤクザと家族 The Family』と『すばらしき世界』。いずれも刑期を終えた主人公が更生に努めるさまを、今の実像に重ねて描く。立ちはだかる法や世間の目。風を切るどころか、下を向くしかない。もがく姿に、つい情が移ってしまう

▼反社会的勢力。分かっていながら映画に引き込まれると善悪の境目が分からなくなる。社会からの排除は当然の報いだろうか、と。かつて、やくざ映画が大衆の共感を得たのは、悪ではあるけど正義があり筋を通したから。もっと悪い敵や不条理と闘う姿に喝采が起きた

▼官僚たちが主役を張る今の国会劇場は、親分への忠誠が動機らしい点は映画と似ている。一方、決定的に違うのは正義が見えないこと。優秀なはずなのに妙に忘れっぽかったり、道理が通らなかったり。見ている国民は興ざめである

▼省庁もある面、結束したファミリー。逆らうと怖い親分だとしても、官僚側に全く下心がないと言い切れるだろうか。国民を向いて仕事をするのが正義である

▼映画の主人公は自らを悪とわきまえていた。ほんの一部だろうけれど、善と信頼していた官僚に裏切られる場面が続く。これを機に更生してほしいと国民は願っている。



接待で相次ぐ処分(2021年2月28日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

癒着を広げた政治の責任重大

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤務する放送関連会社「東北新社」からの接待で総務省幹部ら11人が処分されたのに続き、農林水産省の幹部6人が鶏卵生産会社「アキタフーズ」からの接待で処分されました。いずれも利害関係者の接待を禁じた国家公務員倫理規程に違反したものです。官庁の主要幹部が立て続けに接待問題で処分されたことは、菅政権下のモラル崩壊の深刻さを浮き彫りにしています。行政がゆがめられた疑惑は一層深まっています。処分だけで幕引きすることは許されません。徹底究明が不可欠です。

行政ゆがめた疑惑深まる

 アキタフーズ問題では、同社前代表から現金500万円を受け取った吉川貴盛元農水相(議員を辞職)が収賄罪で在宅起訴されています。元農水相には、家畜飼育の国際基準が業者の不利にならないようにすることや日本政策金融公庫からの業界への融資拡大で便宜を図った疑いが持たれています。

 処分された枝元真徹事務次官ら農水省幹部6人へのアキタフーズ側の接待は、吉川元農水相が同席していました。同社からの現金提供が発覚し内閣官房参与を辞職した西川公也元農水相らが加わったこともありました。同社の接待は、今回処分されたケース以外もあると指摘されています。政官業の癒着の根深さを示しています。

 ところが農水省は、吉川元農水相の収賄事件についても、幹部接待問題でも、行政にどんな影響を与えたのか明らかにしません。隠蔽(いんぺい)姿勢を即刻改めるべきです。吉川元農水相は昨年の自民党総裁選で菅氏の選対事務局長を務めるなど政権中枢にいた人物でもあり、疑惑はあいまいにできません。

 東北新社の総務省幹部への接待が放送行政をゆがめた疑いは、ますます濃厚です。同社も加盟する衛星放送協会の要望に沿って人工衛星の利用料の低減が図られた可能性などが国会で追及されています。総務省は幹部の処分後、検証委員会を立ち上げましたが、同省任せでは、お手盛りの調査になりかねません。正剛氏ら東北新社関係者の国会招致が必要です。

 官僚の接待問題が後を絶たないことは重大です。100人以上が処分された旧大蔵省接待汚職(1998年)後に、関連業者からの接待や贈与などを原則禁止にした国家公務員倫理法が制定され、同法に基づく倫理規程が2000年に施行されましたが、事実上骨抜きになっていることを、今回の事態は改めて示しています。

 総務省でも農水省でも接待漬けの背景を徹底究明するとともに、関係者を厳しく処分することが重要です。総務審議官の時に一晩で1人7万4000円超の接待を受けた山田真貴子内閣広報官を続投させる菅政権の姿勢は大問題です。山田氏は辞任しかありません。

政権中枢の姿勢問われる

 問われるのは菅首相ら政権中枢の責任です。安倍晋三前首相の「森友」「加計」「桜を見る会」をはじめとする一連の国政私物化疑惑では、官僚が首相の意向を忖度(そんたく)し、情報隠蔽や国会での虚偽答弁など、政治と行政のモラルを崩壊させました。官房長官時代などに人事権をふるい官僚を従わせた菅首相の手法が、官僚組織に与えた負の打撃も計り知れません。「安倍・菅政治」を一掃し、公正・公平な政治を取り戻すことが必要です。





相次ぐ官僚の接待問題 すさまじいモラル崩壊だ(2021年2月27日配信『毎日新聞』-「社説」)

 官僚が利害関係者から接待を受ける不祥事が相次いでいる。

 総務省と農林水産省の幹部らが、国家公務員倫理規程違反で処分を受けた。許認可権を握る省庁の事務方トップ級と関係業者の癒着ぶりにあぜんとする。

 総務省は、放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らから接待を受けていた幹部11人を処分した。

 山田真貴子内閣広報官も同省総務審議官時代に、長男らとの会食で7万円超の接待を受けていた。

 山田氏は「心の緩みだった」と国会で陳謝したが、「女性の目線を踏まえ、自らを改善していきたい」と辞任は否定した。

 長男の同席については「私にとって大きな事実ではない」と述べるだけだった。なぜ参加したのか、納得のいく説明はなかった。

 山田氏は内閣の重要政策を広報する責任者だ。国民との信頼関係が欠かせない職務であり、続投は理解できない。

 首相が緊急事態宣言の一部解除にあたって記者会見を開かなかったのは「山田氏を隠すためではないか」との疑念も生まれている。既に政府広報の支障になっているのではないか。

 農水省は鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループを巡る汚職事件に関連し、事務次官ら6人を処分した。当時の吉川貴盛農相に誘われ、アキタ側から接待を受けた。

 吉川氏は自民党総裁選で首相の選対幹部を務め、首相に近い。

 「政と官」の関係がゆがみ、官僚は首相官邸の顔色をうかがうばかりで、国民を向いて仕事をするという基本を踏み外している。



官僚の違法接待 第三者組織で解明進めよ(2021年2月27日配信『山陽新聞』-「社説」)

 なぜ利害関係者から高額の接待を受けたのか。それが放送行政にどんな影響を与えたのか。疑惑の核心部分は解明されておらず、このままでは国民の疑念は拭えまい。

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」からの接待問題で、総務省は国家公務員倫理法に基づく倫理規程に違反した違法接待だったと認定し、幹部9人を減給や戒告の懲戒処分とするなど計11人の処分を発表した。

 総務省の調査によると2016~20年に、事務次官級の総務審議官をはじめとする幹部ら計13人が延べ39件の接待を受けていた。会食の半分以上に菅首相の長男が出席していた。費用はほぼ毎回、東北新社側が支払い、同社側の負担は60万円を超す。

 接待を受けた中には、菅首相の信任が厚いとされる山田真貴子内閣広報官も含まれ、総務審議官だった当時、1回の会食で7万円超の接待を受けていた。山田氏は総務省を退官して特別職に就いているために総務省の処分対象からは外れたが、給与月額の6割を自主返納するとしている。

 国会審議への影響を回避するため、総務省は処分発表を急いだとみられる。しかし、調査は不十分で、これで幕引きとするわけにはいかない。

 国会に招致された山田氏は東北新社との会食について「一般的な懇談で、働き掛けはなかった」「利害関係者であるかどうかのチェックが十分ではなかった」などと釈明したが、額面通りには受け取れない。放送行政の許認可に関わる総務省幹部が、日常的に特定の事業者から接待を受けていたことが異常である。

 菅首相の長男は衛星放送を手掛ける東北新社の子会社の役員も務め、接待は衛星放送の認可・更新時期に集中していた。処分を受けた総務省幹部は同業他社との会食は否定しており、東北新社への特別扱いが際立つ。徹底した調査が求められよう。

 武田良太総務相は、副大臣を長とする検証委員会で調査を続ける方針を示したが、首相の長男が絡む案件であり、内部調査に限界があるのは明らかである。放送行政がゆがめられた事実の有無を確認するには、独立した第三者組織で調査を進めるべきだ。

 総務省の幹部らが処分された翌日には、農林水産省が倫理規程に違反したとして事務次官を含む幹部6人の処分を発表した。鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの元代表と吉川貴盛元農相との会食の席に同席し、業者側が飲食代を支払ったという。

 処分の根拠となっている国家公務員倫理法は旧大蔵省の接待汚職事件などを受け、2000年に施行された。官僚接待が後を絶たない現状をみると、倫理規程は形骸化しているのではないかと疑わざるを得ない。民間企業との接点が多い省庁はほかにもある。行政の公平性を損なう行為がないか、全省庁を対象に調査すべきではないか。





官僚の接待問題 癒着の実態解明が必要(2021年2月26日配信『毎日新聞』-「社説」)

 贈収賄事件で在宅起訴された鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの秋田善祺(よしき)元代表から国家公務員倫理規程に違反する接待を受けたとして、農林水産省は枝元真徹(まさあき)事務次官ら6人を処分した。

 接待には元代表とともに在宅起訴された吉川貴盛元農水相も同席していた。

 総務省も農水省に先立ち、菅義偉首相の長男正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で幹部11人を処分している。

 倫理規程は1998年の旧大蔵省の接待汚職をきっかけに作られた。その後も官僚の接待問題がたびたび明らかになったものの、相次ぐ発覚は尋常ではなく、形骸化が極まったといえる。

 しかも、処分は倫理規程が禁じる「利害関係者からの接待」を外形的に認定しただけだ。接待の結果、利益供与はなかったかの調査が尽くされたとは言い難い。

 内部の聞き取り以外に、国会や第三者機関で癒着が疑われる構造の実態を解明する必要がある。

 農水省によると、接待は2018年10月と19年9月の計2回で計7人が参加した。既に退官した1人を除き、枝元氏ら3人を減給、3人を戒告などの処分にした。

 同省は「その場で費用負担を確認しなかった過失がある」と結論づけた。総務省も「利害関係者かどうかのチェックが不十分だった」などと説明する。

 しかし、注意を欠いた程度の「過失」で済む話ではない。特定の利害関係者から接待を受けること自体が行政の公正性を疑わせる。

 農水省は贈収賄事件を受けて第三者委員会を設置して調査している。総務省は内部の検証委員会に外部有識者を参加させる方針だ。

 お手盛りではなく、接待の目的や交わされた会話の内容などについて徹底的な調査が求められる。

 総務省の接待問題では、総務審議官時代に1回7万円超の飲食代を負担してもらった山田真貴子内閣広報官が衆院予算委員会に参考人として招致され、陳謝した。

 一方で辞任は否定した。同省を退官したため処分対象から外れたとはいえ、倫理規程に違反した人物は内閣の重要政策を広報する責任者として不適格だ。

 今回の接待の背景には首相や閣僚の存在がある。省庁幹部の人事権を首相官邸が握り、官僚の規範意識より忖度(そんたく)が優先して働いた帰結ではないか。

 菅首相は枝元氏や長男の国会招致を主導し、政官のゆがみを正す姿勢を明確にすべきだ。



総務省の違法接待/なれ合いにけじめを付けよ(2021年2月26日配信『河北新報』-「社説」)

 豪華な料理に不自然さを感じなかったのだろうか。働き掛けや見返りは本当になかったのか。疑いが何一つ解消されていない。

 山田真貴子内閣広報官が総務審議官だった際に受けた7万円超の接待が違法と認定され、衆院予算委員会に招致された。山田氏は安倍晋三前首相と菅義偉首相に重用され、現在は首相記者会見の司会役を務めるなど内閣の中枢にいる人物だ。

 接待役は放送事業会社「東北新社」に勤める菅首相の長男正剛氏ら。総務省の利害関係者だ。山田氏は「利害関係者かどうかのチェックが十分でなかった。心の緩みがあった」と釈明した。

 接待に応じれば、何らかの便宜を図る意識が生まれるのではないか。業者側の狙いを読めなかったのか。それともごちそうになることに何の抵抗もなかったのだろうか。「緩み」は後付けの理由としか聞こえない。

 この問題で国家公務員倫理法に基づき総務省幹部ら11人が処分された。山田氏は特別職のため、総務省の処分対象とはならず、給与の一部返納で責任を取るという。

 放送事業会社と総務省幹部のなれ合いの構図が透けて見える。業者側は菅首相の長男である。首相は長男が関係したことについて「申し訳なく思っている」と陳謝したが、責任をもってけじめを付けようとする意思が見えない。

 首相は山田氏について「真摯(しんし)に反省している。今後とも職務の中で頑張ってほしい」と述べたが、厳重注意止まりだ。倫理規定違反のゆがんだ関係が発覚したにもかかわらず、責任を厳しく問わない姿勢は身内に甘く、かばっているとしか映らない。

 山田氏は予算委で「一般的な懇談だった。働き掛けはなかった」と強調し、東北新社との会食は1回だけだったと説明した。

 しかし、釈明を真に受けるわけにはいくまい。

 首相の長男は、総務省から衛星放送の認可を受けた子会社の役員を兼務する。衛星放送事業は近年、動画配信サービスに押され、業績が伸び悩んでいる。親の威光を頼りに事業を有利に進めようとしたのでないか。

 接待を受けた幹部らが出席する総務省の有識者会議で昨年秋、東北新社が加盟する衛星放送協会が衛星利用料金などの低減を要望していたことが明らかになっている。

 接待問題は倫理規定違反にとどまらない可能性がある。

 刑法の贈収賄罪は、公務員が便宜を図っていなくても、職務に関係のある業者から接待を受ければ成立する。弁護士らでつくる市民団体は、総務省幹部らを告発する準備を進めている。

 菅首相は早期に幕引きしたいのだろうが、またも露呈した霞が関のゆがみに批判が渦巻いている。首相長男の国会招致が不可欠である。



落語家の桂歌丸さんの趣味は化石の収集だっ…(2021年2月26日配信『河北新報』-「河北春秋社説」)

 落語家の桂歌丸さんの趣味は化石の収集だった。ぶらっと入ったデパートで化石の即売会が開かれていて、思い切って恐竜の卵の化石を買った。家に持って帰ると、奥さんが「何買ってきたの」「幾らしたの」

▼正直に「7万円…」。そう言うと、奥さんは「7万円でどのくらい生の卵が買えると思ってるの、お父さん」。食べられない卵の化石に大金を払うなんて、理解に苦しむものだったらしい。歌丸さんが著書『極上人生』に書いている

キャプチャ

▼こちらも金7万円也…だそうだ。「飲み会を絶対に断らない女」。自分でそう言っている山田真貴子内閣広報官が業者の接待で飲み食いした食事代だ。歌丸さんの奥さんのように家計を預かっている人は「どのくらい生の卵が-」と驚きそう

▼高級料亭でごちそうになり、お土産が付いて、帰りのタクシー券まで。至れり尽くせりの供応だ。業者の接待やプレゼントにすっかり慣れっこになっているとしか思えない。これで「真摯(しんし)に反省している」と言われても

▼歌人の島田修二さんに<サラリーの語源を塩と知りしより幾程(いくほど)かすがしく過ぎし日日はや>。作者は自注で「勤め人のもらう金の清さ、本当に清潔な、いわば汗を変えたもの」と書いている。山田さんも次からは高級和牛ステーキは自分の給料で。



総務省の接待問題/徹底解明で国民の疑念拭え(2021年2月26日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の親族が勤める企業からの違法な接待で、行政の公平性に疑念を生じさせた責任は極めて重大だ。

 総務省は菅首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で、会食は国家公務員倫理規程が禁じる利害関係者からの接待と認め、谷脇康彦総務審議官ら計11人を処分した。

 菅首相は、総務審議官当時に接待を受けた山田真貴子内閣広報官を厳重注意とし、山田氏は給与の一部を自主返納する。

 同省の調査によると、幹部ら計13人は、2016年7月~20年12月に、同社から延べ39件の接待を受けた。利害関係者に当たらないと安易に判断し、不用意に接待や贈与を受けたとしている。幹部らがこうした甘い認識のまま違法な接待を広範に受けていたとしたら、事態は深刻だ。

 武田良太総務相は処分発表の会見で、同社以外からの接待はなかったとしている。事実がその通りであれば、同省幹部らと同社との関係は際立っている。なぜ、同社が接待攻勢をかけ、幹部らが応じたのか。放送行政をゆがめるような判断はなかったのか。事実関係や背景などを徹底解明し、国民に説明しなければならない。

 総務省幹部は国会で、長男と会食した際、放送業界の話題が出たかどうかを問われ、当初は「記憶はない」としていた。しかし、週刊誌報道で会食時の録音とされる音声が公開されると「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と一転して認めた。

 こうした幹部の釈明で、国民の不信感を拭うことができるとは到底思えない。国民の信頼は大きく損なわれている。同省は副大臣をトップとする検証委員会を設け、行政がゆがめられた事実の有無などを調査する。第三者を交えて実効性ある調査を行い、疑念を払拭(ふっしょく)することが急務だ。

 武田総務相は処分発表の記者会見で、長男との会食を巡り、菅首相への配慮があったとの見方を否定している。

 長男は菅首相が総務相時代に秘書官を務めていた。この当時に知り合った幹部もいるという。忖度(そんたく)で同社を特別扱いし、接待に応じていたとの疑念を持たれても仕方がないだろう。

 菅首相は当初、自身と長男は「別人格」と述べてきた。国民の意識とかけ離れていたとは言えまいか。処分の発表後に「長男が関係して結果的に違反行為をさせてしまった。国民におわびをしたい」と陳謝した。国民の信頼を取り戻す真摯(しんし)な姿勢が求められる。



大正・昭和の法学者、末弘厳太郎が戦前…(2021年2月26日配信『毎日新聞』-「余録」)

 大正・昭和の法学者、末弘厳太郎(すえひろ・いずたろう)が戦前、役人になる若者への三つのアドバイスを記した「役人学三則」である。「およそ役人たらんとする者は平素より縄張り根性の涵養(かんよう)に努むることを要す」はその第3条だ

▲こう記せば、役人への皮肉だと分かっていただけよう。第1条は万事広く浅く理解するよう努め、個別・特殊の事柄に興味を集中してはならない。第2条は法規をたてにとって形式的理屈をいう技術を習得せねばならないというのだ

▲「イベントやプロジェクトに誘われたら絶対に断らない。飲み会も断らない」とは、現代の若者への辣腕(らつわん)女性官僚のアドバイスである。当人は「飲み会も絶対に断らない女」とのことで、こちらは皮肉や風刺で言っているわけではない

▲総務省勤務時に菅義偉(すが・よしひで)首相の長男の勤める放送事業会社から1回7万円の接待を受けていた山田真貴子(やまだ・まきこ)内閣広報官である。給与の一部を自主返納し、国会で陳謝するはめとなり、先年動画で語った飲み会発言まで注目されてしまった

▲菅首相が強い影響力をもつ総務省で栄達し、内閣広報官に抜てきされたという山田氏だ。チャンスに挑戦し、人脈を広げよと若者に呼びかけた先の発言だが、今思えばつかんだ人脈やコネにひそむ落とし穴も警告しておくべきだった

▲7万円接待発覚にも首相は広報官を続投させるというが、さて国民は納得するのか。「政権首脳とのコネを最優先し、その意をそんたくすべし。ただしその危険も忘るべからず」。令和役人学の第1条だ。



接待官僚の処分 「国民の奉仕者」胸に刻め(2021年2月26日配信『産経新聞』-「主張」)

 菅義偉首相の長男が勤務する放送会社「東北新社」から総務省幹部が過剰な接待を受けていた問題で、同省は11人を国家公務員倫理規程違反で処分した。山田真貴子内閣広報官も総務審議官当時に接待を受けたため、給与を自主返納して厳重注意された。

 利害関係者との会食に対する処分である。接待による働きかけで放送行政が歪(ゆが)められなかったか。同省は検証委員会を設けるが、徹底した真相の解明が不可欠である。身内によるおざなりな調査にとどまれば、大きく揺らいだ国民の信頼を取り戻せまい。

 官僚の規律の緩みが目に余る。これを契機に中央官庁全体で、利害関係者らからの接待などの実態について調べる必要がある。

 総務省によると、東北新社からの接待は5年前から合計で延べ40件近くあり、うち21件で首相の長男が出席していた。東北新社の子会社は、同省が許認可権限を持つ衛星放送事業を行っており、国家公務員倫理規程が会食などを禁じる利害関係者にあたる。

 このため同省は接待を受けた谷脇康彦総務審議官ら7人を減給、2人を戒告、残り2人を訓告と訓告相当とする処分を下した。事務方ナンバー2の総務審議官や衛星放送業務の担当局長らが、癒着が疑われる行為を繰り返していたのは深刻な事態だ。

 同省幹部らは東北新社以外の事業者との会食はなかったと説明している。それならなぜ同社だけと接触したのか。首相が総務相時代に秘書官を務めた長男らから具体的な働きかけがなかったのかを明らかにしなければならない。

 25日の国会で野党から追及を受けた山田氏は、東北新社側から高額な接待を受けたことを謝罪した。事業に関する働きかけは否定したが、これで国民の納得が得られたとは思えない。

 同日には農林水産省も、収賄で在宅起訴された吉川貴盛元農水相と鶏卵大手「アキタフーズ」の前代表の会食に参加し、国家公務員倫理規程に違反したとして、同省の枝元真徹事務次官ら6人を処分した。これでは規律の緩みが霞が関の官庁全体に蔓延(まんえん)しているとみられても仕方あるまい。

 国家公務員法は「すべての職員は国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務しなければならない」と定めている。これを重く胸に刻んでもらいたい。



総務官僚の接待 処分で幕引き許さない(2021年2月26日配信『東京新聞』-「社説」)

 総務省は、菅義偉首相の長男・正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社側から接待を受けた幹部ら11人を処分した。しかし、許認可への影響の有無は未解明のままだ。処分を幕引きとしてはならない。

 子会社が衛星放送を手掛けていたとしても、親会社の幹部は利害関係者に当たらないと考えていたのなら、よほど情報認識能力に欠けるか、職務怠慢のどちらかだ。

 そのどちらでも放送・情報分野を所管する省庁の幹部にふさわしいとはとても言えない。

 総務省は正剛氏が勤める東北新社による接待を利害関係者からの違法接待と認め、次官級の谷脇康彦、吉田真人両総務審議官を減給10分の2(3カ月)の懲戒とするなど計11人を処分した。

 また武田良太総務相は、一連の接待が放送行政に影響を与えたか否かを検証するため、副大臣をトップとする検証委員会を立ち上げることを表明した。

 問題の本質は、首相の長男らによる接待が公平・公正であるべき放送行政を歪(ゆが)めたか否かである。

 業務認定が更新された昨年12月の直前に接待が集中するなど、許認可と接待時期の関係から目を背けてはならない。身内の調査にとどまらず、第三者を加えるか、国会に特別委員会を設置するなどして徹底究明すべきである。

 総務審議官当時に接待を受けた山田真貴子内閣広報官は、すでに同省を退職しているため処分対象とならず、加藤勝信官房長官による厳重注意にとどまった。山田氏は給与の10分の6に相当する70万5千円を自主返納するという。

 ただ、7万円超の高額接待を受け、利害関係者との認識もなく、申告もしなかった山田氏は、内閣と国民とを結ぶ広報を担う責任者として適任なのだろうか。公務員への信頼を損ねた責任は重い。野党の辞任要求は当然だ。

 こうした接待が霞が関で常態化していることも極めて深刻だ。農林水産省でもきのう、鶏卵生産大手元代表から接待を受けた事務次官らの処分を発表した。

 役所ぐるみの接待漬けがまん延し、お呼びが掛かれば何のためらいもなく出掛けるのが昨今の霞が関なのか。職務に対する緊張感を欠き、全体の奉仕者であることすら忘れてはいまいか。

 統治機構の根腐れとも言える官僚の堕落は、長期政権の弊害にほかならない。野党は問題追及と同時に、自民党に代わる政権像を示し、善意の官僚とともに政権を担う決意を国民に示すべきである。



政権の指揮官の道は荒れている(2021年2月26日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 天台宗の開祖、最澄が残したありがたい言葉の中に、「道心の中に衣食(えじき)あり、衣食の中に道心なし」がある。仏道を究める心があって、その後に着物や食べ物は付いてくるもの、逆ではありません。いつの時代もいるのだろうが、衣食に気を取られて、大切な道を見失う人への戒めと受け取れよう

▼衣食ならぬ飲食の中に、官と民の関係は存在していたようだ。そんな言葉があるかどうかは知らないが、「官僚の道」を見失っている人がかくも多いとは

▼菅首相の長男が勤める会社から高額接待を受けた山田真貴子内閣広報官が陳謝した。同じ問題で、総務省は接待を受けた十一人の処分を決めた。農林水産省も鶏卵生産大手元代表に接待されたとして幹部六人を処分した

▼綱紀か倫理か、緩みが同時に別の場所に現れているようにみえる。それにしても七万円超の接待とは、想像を超えている。会食で働き掛けはないと山田氏は説明したそうだが、その場だけの問題ではなかろう。そんな接待を受けて企業との関係が変わらないとは思えない。他の接待も解明が必要だろう

▼山田氏は続投だそうだ。崩れた投手を引っ張り続ければ、試合はさらに壊れて、本人の傷も深くなる。立ち直ることもあるから、野球では続投の判断の難度は高いものらしい。首相の采配はどうだろう

▼不祥事が多い。政権の指揮官の道は荒れているようだ。



総務官僚の処分 本質は解明されていない(2021年2月26日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 問題の核心部分が全く不明のままである。

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による総務官僚の接待問題だ。総務省が利害関係者からの違法接待と認め、9人を懲戒処分とするなど計11人を処分した。

 このほか、総務審議官当時に接待を受けた山田真貴子内閣広報官を菅首相が厳重注意している。

 総務省が人事院に提出した報告書は内容が不十分である。

 重要なのは2点だ。官僚がなぜ、東北新社を特別扱いして接待に応じたのか。放送行政がゆがめられていないか、である。

 二つとも明確になっていない。総務省の調査は関係者の聞き取りが中心で解明には程遠い。身内による不十分な「お手盛り調査」といわざるを得ない。

 総務副大臣、総務相を歴任した菅首相は、人事権を背景に大きな影響力を省内に維持している。正剛氏の会社の特別扱いには、首相に配慮しようとした官僚たちの思惑が透けている。

 結果として行政がゆがめられたのであれば、問題は深刻である。徹底調査が欠かせない。首相の政治手法も問われる。

 武田良太総務相は、副大臣をトップとする検証委員会を設け、放送行政のゆがみの有無などを調査するという。第三者が主導し、公文書も調べて結論を出すべきだ。

 本質が明らかになる前に官僚らの処分を決めたことも問題だ。「スピード決着」させたい首相や総務省の狙いが透ける。

 しかも、処分は減給や戒告など軽い内容にとどまっている。これでは国民の理解は得られまい。

 1回だけで約7万4千円分の接待を受けた山田広報官は、給与の一部を自主返納する。本人は辞任の意向を周辺に伝えていたのに、引責辞任で問題が広がることを懸念した首相官邸が、辞任回避で動いたとされる。

 広報官は内閣の政策を国民に説明し、首相記者会見の司会も担当する重要な仕事だ。庶民感覚とかけ離れた接待に国民の不信感が強まる中で務まるのか。

 会見では接待問題に関する質問も出ると予想される。質問者を恣意(しい)的に指名している疑念も出かねない。菅首相は広報官の職務を理解していないのではないか。辞任させるべきだ。

 農水省でも元農相の贈収賄事件で在宅起訴された鶏卵業者との会食に、事務次官ら7人が費用を負担せず同席していた。政治家と官僚の倫理意識の劣化が目に余る。



総務省違法接待/処分で幕引きはできない(2021年2月26日配信『神戸新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男・正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社「東北新社」からの接待問題で、総務省は国家公務員倫理法に基づく規程が禁じる利害関係者からの違法接待と認定し、幹部ら11人の処分に踏み切った。

 事務次官級の谷脇康彦総務審議官以下、局長、官房審議官、課長ら放送行政の中枢を担う幹部が特定の事業者から接待攻勢を受け、軒並み処分される異常事態である。

 総務省の調査では、2016~20年にかけ、13人が計39回の接待を受け、ほぼ毎回、会社側が飲食代を負担していた。幹部らは同社が利害関係者に当たらないと安易に判断し、不用意に接待などを受けたと指摘した。だが霞が関のルールを熟知しているはずの幹部たちだ。額面通り受け取ることはできない。

 接待が繰り返されたのは、長男が役員を兼務する東北新社子会社の衛星放送への新規参入や、事業認定が更新された時期に当たる。東北新社は首相と同じ秋田県出身の創業者(故人)が業界団体トップを務めるなど放送行政に一定の影響力があったとされる。

 このような事業者から日常的に接待を受けること自体、許認可などへの影響が及んでいるとの疑惑を招く行為だ。不用意では済まない。

 だが、東北新社側の接待の目的や、幹部らが同社の度重なる誘いに応じた背景についての説明はなかった。武田良太総務相は「放送行政がゆがめられた事実はない」と主張するが、会食の席でのやりとりも明らかにせず、なぜ断定できるのか。

 首相の影響力について、幹部らは、正剛氏がいるから接待に応じたわけではないと否定する一方、他の事業者との会食には行っていないと説明している。これが事実なら、1社だけ接待に応じた理由は何か。

 疑惑の核心は何も解明されていない。調査結果も、処分も、身内に甘い「お手盛り」と批判が高まるのは当然だろう。

 武田総務相は、検証委員会を設けて調査を続ける方針を明らかにした。第三者を入れた徹底した調査で事実関係を明らかにすべきだ。

 首相の信任が厚い山田真貴子内閣広報官も総務審議官時代、1回7万円超の会食接待を受けていた。きのうの衆院予算委員会で「心の緩みがあった」と謝罪したが、辞任は否定した。国民の目は厳しい。首相会見を仕切る内閣の表舞台に立ち続けられるのかは疑問である。

 官僚の処分で問題に幕を引くことは許されない。総務省だけでなく、菅政権の中枢に関わる問題と認識すべきだ。首相と与党は、野党が求める正剛氏の国会招致に応じ、事実解明に努めねばならない。



独立性のある調査で全容解明を(2021年2月26日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 利害関係者からの違法接待が横行していた。放送行政の公正さに疑念は深まっている。

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は利害関係者からの違法接待と認め、事務次官級の谷脇康彦総務審議官を減給とするなど計11人の処分を発表した。総務審議官当時に1回7万円を超す接待を受けた山田真貴子内閣広報官は特別職のため菅首相が厳重注意し、給与の一部を自主返納するとした。

 総務省の調査では、2016から20年にかけ、放送行政を所管する情報流通行政局の幹部を中心に13人が計39件に上る接待を受けた。会社側の負担は60万円を超す。首相長男は総務省から衛星放送の認可を受けた東北新社の子会社の役員を兼務しており、21件に参加していた。

 ほぼ毎回、会社側が飲食代を負担する「接待漬け」に、事業認可権を握る幹部らが応じた理由は不透明なままだ。幹部らは同業他社と同様の会食はなかったという。東北新社と特別な関係が浮かび上がっている。説明が尽くされないまま問題を幕引きすることは許されない。

 国会答弁で、幹部は衛星放送の話題が上ったかと問われ「記憶はない」などとしていたが、会話の音声が公開されると発言を一転して認める「虚偽答弁」をしてきた。説明に後ろ向きな姿勢と言わざるを得ず、長男らが利害関係者との認識はなかったとの釈明や、「長男の存在が会食に及ぼした影響は確認できない」などとする調査結果をうのみにすることはできない。

 武田良太総務相は「放送行政がゆがめられたことはない」との主張を繰り返してきた。政権へのダメージを抑制したい思惑が透ける。副大臣をトップとする検証委員会で放送行政に影響がなかったか改めて調査するとし、外部有識者の参加を調整しているという。身内による調査では限界がある。独立性と客観性を確保した徹底調査で全容を解明しなければならない。

 接待攻勢の目的は明らかになっていない。近年、衛星放送はインターネットの動画配信サービスに押され業績が伸び悩む。接待は衛星放送の認定の更新時期に集中していた。接待を受けた幹部は衛星放送事業への新規参入拡大を訴える小林史明元総務政務官について「一敗地にまみれないと勘違いのままいってしまう」との発言もしている。放送行政の公正さに疑念が生じるのは当然だろう。

 菅首相は「長男は別人格」としてきたが、総務相当時に長男を秘書官に起用していた。総務省に強い影響力があり、政権の意に沿わない官僚の異動も公言してきた。接待に官僚が首相の影を感じ取った可能性は否定できない。安倍前政権以来はびこってきた官僚の「忖度(そんたく)」が疑われるのは仕方あるまい。野党が求めている長男の国会招致に応じるなど、当事者意識を持って疑惑を解明しなければ政府への信頼は回復できない。



奢られ驕る官僚たち(2021年2月26日配信『中国新聞』-「天風録」)

 【奢(おご)る・驕(おご)る】。難漢字のため新聞はどちらも仮名で「おごる」だが、意味は使い分ける。ところが広辞苑は【傲(おご)る】も含めた単語三つを一つの項目にまとめ、同列に扱う。どうやら語源は一緒らしい

▲「自分は他と隔絶した高いところにあり、質が違うのだと思い上がる意。また、その立場で行動する意」。語釈を読み、なるほどと膝を打った。利害関係者から食事を奢られた総務省の幹部11人が処分を受けた。これこそ、驕れるものは久しからず

▲やはり総務省在職中に菅義偉首相の長男らと1人7万円超の会食をした山田真貴子内閣広報官がきのう、国会で頭を下げた。「心の緩みでございまして…」。だが、月給の一部返納だけで取り返しが付くとは思えない

▲総務省の幹部は、たとえ本人が意識しなかったとしても、首相の長男から奢られた時点で既に、自分は特別扱いされていると驕ったも同然なのだ。国民はそうした不信感を募らせている

▲農林水産省の次官ら6人も元農相とともに、利害関係者から奢られていたという。【霞が関・永田町】国民とは隔絶し、思い上がって行動する人がしばしば確認されるエリア―。そんな語釈があっても不思議ではない。



官僚接待処分 国会主導で真相の解明を(2021年2月26日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による官僚接待問題で、総務省が幹部ら11人の処分を発表した。官僚側は「利害関係者がいるという認識はなかった」と弁明しているが、本当にそうだろうか。公正であるはずの行政がゆがめられてはいないか。疑念が拭えぬままでの幕引きは許されない。国会主導で真相を徹底的に解明すべきだ。

 問題は2月3日、週刊誌のオンライン報道で表面化した。接待を受けたとされたのは4人だったが、総務省のその後の内部調査でほかにも判明。2016年7月から20年12月に、事務次官級の幹部ら計13人が延べ39件の接待を受けていたことが分かった。

 総務省はこのうち課長級1人を除く11人を、国家公務員倫理規程の「利害関係者からの接待の禁止」などに違反したと認定し、懲戒処分などにした。当時総務審議官で現在は内閣広報官の山田真貴子氏については、菅首相が厳重注意とした。

 首相や総務省はこれで問題を収束させたいのだろうが、疑念は膨らむばかりだ。東北新社の子会社は、放送法に基づき総務省から業務認定を受ける立場にある。なぜ総務省幹部を繰り返し接待していたのか。具体的な便宜を図ってもらう狙いはなかったか。首相の総務相時代に秘書官だった正剛氏との関係はどうなのか。総務省はほかの事業者からも接待を受けているのではないか。

 武田良太総務相は副大臣をトップとする検証委員会でさらに調査するとしているが、内部調査には限界がある。独立した第三者に調査を委ねるべきだろう。

 この問題を巡っては、国会で「虚偽答弁」の疑いも浮上した。接待の場で衛星放送の話題が出なかったか聞かれた前情報流通行政局長が「記憶にない」と答弁。しかし、会話の録音が報道で明るみに出ると、一転して「発言があったのだろう」と認めた。

 官僚や大臣による「言い逃れ」のような答弁は、安倍前政権時代から頻発してきた。森友学園問題で、当時の財務省理財局長は学園との交渉記録を「廃棄した」と説明したが、実際には残っていて答弁に合わせるために廃棄したことが判明。「桜を見る会」前日の夕食会問題でも、事実と違う可能性のある前首相らの答弁が少なくとも118回あったと確認された。

 こうした不誠実な答弁がまかり通ってきた背景に、内閣の国会軽視の姿勢がありはしないか。言論の府をないがしろにするのは、主権者たる国民を侮るに等しい。

 総務省不祥事の陰に隠れるように、農林水産省も昨日、事務次官ら6人の処分を発表した。総務官僚と同じく規程に反し、贈収賄容疑で立件された鶏卵生産業者から接待を受けていたという。

 官僚と業者のなれ合いや癒着は、果たしてこれだけだろうか。霞が関全体に緩みはないか。国民の信頼を取り戻したいのであれば、菅首相は率先して疑惑の解明に応じるべきである。



人生で最高額の食事は幾らだったか(2021年2月26日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 接待問題に絡み、家庭や職場で思い出話に興じた方も多いのでは。人生で最高額の食事は幾らだったか、と。ある人は大切な家族の祝い事、ある人はプロポーズする際の勝負ディナー。舞台は人それぞれだが、少なくとも小欄の周りに「7万4千円余」などという御仁[ごじん]はいなかった

▼菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社との違法会食で、総務省は職員11人の処分を決めた。これとは別に、総務審議官当時に接待を受けた山田真貴子内閣広報官は菅首相から厳重注意され、月給の6割に当たる70万5千円を自主返納する

▼山田氏が受けた接待が、お一人さま約7万4千円の飲食だった。メインのメニューは和牛ステーキと海鮮料理。いったいどんな店なのか、と下世話な想像も膨らむ

▼山田氏は昨日の衆院予算委員会に出席し、会食の席で事業に関する働き掛けはなかったとしつつも「心の緩みがあった」と謝罪した。首相の記者会見をそつなく仕切っている時とは異なる、たどたどしい答弁だった

▼総務省は、一連の接待について「行政がゆがめられることがなかったか改めて確認する」としている。だが、ゆがめられたかどうかは別としても、そのような接待が官僚にとって「当たり前」なのかという驚きと不信は消えない

▼視線を県内に戻すと、コロナ禍で困窮する大学生や高齢者が物資の無料配布に列を作っている。度重なる災禍で生活再建の見通しが立たない被災者も多い。接待がまかり通る世界とのあまりの食い違いに暗たんたる思いが募る。



総務官僚の接待処分(2021年2月26日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆国会主導で真相を解明せよ◆

 放送行政をゆがめる便宜供与はなかったのか。なぜ接待攻勢をかけたのか。菅義偉首相の長男、菅正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」側による総務省官僚の接待問題で、国家公務員倫理規程に違反したとして、同省は事務方ナンバー2である総務審議官ら9人を減給などの懲戒処分にした。

 閣僚給与を自主返納する武田良太総務相は検証委員会を設置し、行政に関わる不正の有無について引き続き調べる方針を示した。だが、国会での「虚偽答弁」批判を受けた身内による不祥事の実態をどこまで明らかにできるか疑念は消えない。

 行政監視も担う国会の権威を保つためにも、うその証言が罰せられる証人喚問などを視野に、国会主導で真相を徹底解明すべきだ。

 同省の調査によると、総務審議官だった山田真貴子内閣広報官を含め、計13人が2016年7月から20年12月にかけて、延べ39件の接待を受けた。同省は倫理規程に違反して利害関係者から接待されたとして懲戒処分にした9人のほか、2人を訓告処分などとする。

 山田氏は同省を退職しているため処分対象にならなかったが、19年11月に受けた1回の接待で、支払ってもらった飲食費は約7万4千円に上っていた。山田氏は安倍政権下で首相秘書官を務めた後、同省に戻り、放送行政を所管する情報流通行政局長に就任。総務審議官を経て、菅政権で特別職の内閣広報官に抜てきされた。正剛氏は菅首相が総務相時代に秘書官を務めており、2人の癒着が疑われてもやむを得ない。

 山田氏だけでなく、懲戒処分になった谷脇康彦、吉田真人両総務審議官や秋本芳徳前情報流通行政局長らも菅首相への忖度(そんたく)から接待に応じた疑いが濃厚だ。その延長線上で、衛星放送認可を巡り東北新社側を特別扱いすることはなかったか。弁護士を交えているというが、内部調査には限界があるだろう。

 週刊誌が接待会食時のやりとりとする音声を公開するまで「(衛星放送の話題は)記憶にない」と虚偽と受け止められる答弁を続けたのも、調査のずさんさを浮き彫りにしている。「会食時点で利害関係者がいるという認識はなかった」とも弁明しているが、国民の納得は到底得られまい。

 同省が正剛氏らに加え、首相が重用してきた山田氏や同省幹部への聴取を続けても、通り一遍の結論に終わる可能性は十分ある。同省の人事に影響力を行使してきたとされる菅首相が、こうした対応で収拾を図るなら容認できない。証人喚問要求があれば応じるとともに、第三者機関の再調査も検討すべきだ。



[総務省幹部処分] 不透明な点がまだ多い(2021年2月26日配信『南日本新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は国家公務員倫理法に基づく倫理規程に違反したとして、事務方ナンバー2である総務審議官ら9人を懲戒処分にした。

 首相は総務審議官当時に接待された山田真貴子内閣広報官を厳重注意するとともに、「私の長男が関係して結果的に違反行為をさせてしまった」と陳謝した。武田良太総務相は省内に外部有識者も参加する検証委員会を設け、放送行政がゆがめられた事実の有無などを引き続き調べる方針を示した。

 官僚らが自ら会食を申告せず、週刊誌が音声を公開するまで国会でも虚偽と取れる答弁を続けた経緯を振り返れば、内部の聴取だけでは限界がある。調査能力のある第三者を入れた実効性のある調査で、さらに全容解明を進めるべきである。

 総務省のこれまでの調査によると、山田氏を含む計13人が、2016年7月から20年12月にかけて、延べ39件の接待を受けた。同省は9人のほか1人を訓告、1人を訓告相当とした。東北新社側の負担は総額で約60万8000円に上るという。

 官業癒着の根深さが改めて明らかになった形だが、中でも目を引くのは、首相が重用してきた山田氏の存在である。19年11月に受けた1回の接待で支払ってもらった飲食費は、約7万4000円だった。

 山田氏は、総務省で放送行政を所管する情報流通行政局長などを歴任している。正剛氏が首相の総務相時代に秘書官を務めていたことを考え合わせれば、2人の癒着が疑われても仕方あるまい。

 ほかにも谷脇康彦、吉田真人両総務審議官や秋本芳徳・前情報流通行政局長らほとんどが放送・通信行政の中枢を担ってきた幹部である。安易に接待に応じたのはなぜか。「心の緩みがあった」という釈明では、国民の理解は到底得られないだろう。

 浮かび上がるのは、倫理規程を自覚しながら、首相への忖度(そんたく)で東北新社側からの接待の誘いを断らなかったのでは、という疑念である。正剛氏は現在、総務省から衛星放送の認可を受けた子会社の役員を兼ねる。

 忖度の延長線上で、衛星放送認可を巡って東北新社側だけを特別扱いすることはなかったか。山田氏らは「働き掛けはなかった」と主張しているが、いまだ不透明な点が多い今回の問題について、正剛氏と同社は今後の調査に積極的に協力する必要がある。

 首相が強い影響力を行使してきた総務省と正剛氏らとの間で生じた問題である。官僚の処分だけで収拾を図ることは許されない。行政に対する国民の信頼を取り戻すため、首相には調査を主導する覚悟が求められている。



[後絶たぬ官業癒着]問われる「政治の責任」(2021年2月26日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 接待を巡る官僚の不祥事が後を絶たない。霞が関のモラル低下は深刻だ。

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社から接待を受けていた総務省官僚11人が24日、処分された。「利害関係者からの接待」などを禁じる国家公務員倫理規程の違反であり、行政の公正性への信頼を揺るがすもので当然だ。

 ただ、総務審議官当時に1回で7万円超の接待を受けていた山田真貴子内閣広報官は、厳重注意にとどまった。給与の一部を自主返納するという。

 衆院予算委員会で参考人として出席した山田氏は「公務員の信用を損なうことになり、深く反省している」と謝罪した。だが、信頼回復に努める責任があるとして、辞任は否定した。

 利害関係者からの接待を受けたことには「チェックが行き届かなかった」、長男との関係について詳細は「覚えていない」などと曖昧に答えた。広報官として国民に説明する立場にもかかわらず、責任を果たせていない。

 そもそも、長男が勤める放送事業会社がなぜ接待を繰り返したのか、許認可を巡る便宜供与はなかったのかなど問題の背景、核心部分は明らかになっていない。

 総務省の調査では、山田氏を含め計13人が、2016年7月から20年12月にかけて、延べ39件の接待を受けた。

 「利害関係者」との接待で、放送行政がゆがめられた疑念は深まるばかりだ。減給などの処分による幕引きは許されない。

 独立性を持った第三者機関による調査を政権の責任で早急に行うべきだ。

■    ■

 農林水産省も、鶏卵を巡る贈収賄事件で在宅起訴された鶏卵生産大手グループの元代表から会食の接待を受けたとして25日、事務次官ら計6人を減給処分などにした。これも利害関係者の負担による会食が倫理規程に違反していると判断された。

 相次ぐ官僚の接待不祥事は、国家公務員の倫理規程がもはや形骸化していることの表れである。行政への信頼低下は深刻で、菅政権はこの事態を重く受け止める必要がある。

 不祥事の背景には、安倍晋三前政権時の森友学園や加計学園、桜を見る会などを巡る問題で浮かび上がった政権への「忖度(そんたく)」や、身内への甘さといった構図がある。負の「遺産」を菅政権も受け継いでしまったのか。減給という処分の甘さも指摘されており、国民の理解は得られまい。

■    ■

 菅首相は当初、長男を「完全に別人格」と強調していた。官僚の処分が出たことでようやく「長男が関係して、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことは心からおわび申し上げる」と陳謝した。

 首相には放送行政への疑念を招いた責任がある。国民の信頼を回復するには、謝罪するだけでなく、先頭に立って接待問題の全容を解明し、徹底検証して説明しなければならない。

 そのためにも、首相は野党が求める長男の国会招致に応じるべきだ。



コーヒー1杯にも律していたはずが(2021年2月26日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★結局、安倍・菅政権は公務員と政策で渡り合うことができず、情実的人事権の行使と偏った政治主導で霞が関全体をゆがめたのだろう。安倍政権の時には経産省の役人が官邸を取り巻き、官邸官僚という言葉まで生まれた。それまで霞が関全体で幅を利かせていた財務省が経産省の後塵(こうじん)を拝することになるという霞が関の珍事は既に常識になった。一方、同政権下では官房長官・菅義偉の情報網が政権維持に功を奏す。今度は官邸ポリスという情報をコントロールして政権を維持する手法が用いられていると小説という形での暴露があった。今もそれが続いているのだろう。

★98年、ノーパンしゃぶしゃぶ事件といわれた大蔵省接待汚職事件は公務員の矜持(きょうじ)が問われた。銀行からの接待に鼻の下を伸ばした大蔵高級官僚は大いに接待されたが当時、この店のコースは1万9980円。銀行の担当者は領収書が切れればといくらでも接待した。結果、官僚7人(大蔵省4人、大蔵省出身の証券取引等監視委員会の委員1人、日銀1人、大蔵省OBの公団理事)の逮捕・起訴に発展。起訴された官僚7人は、執行猶予付きの有罪判決が確定した。この責任を取り当時の大蔵相・三塚博と日銀総裁・松下康雄が引責辞任した。また大蔵省は財金分離が進み財務省と金融庁が生まれ解体された。

★憲法15条第2項の「すべて公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」は当然ながら、国家公務員法96条では「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務しなければならない」とされている。またこの事件をきっかけに2000年に生まれた政令「国家公務員倫理規程」の2条では、国家公務員が職務上で関わる8つの事業者・個人を「利害関係者」と厳密に位置づけ、当時はコーヒー1杯飲むのにも官僚は律したが、20年たつと、特定の議員や親族のためにだけ勤務する公務員が増えたということになろうか。これだけの規定があるにもかかわらず、守れない官僚に同情する必要があるだろうか。情けない。(



接待漬けの目的は(2021年2月26日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 半世紀も前のこと。俳優による初めてのデモが東京で決行されました。主な要求は外国語映画の日本語吹き替えに携わる声優の待遇改善。当時、出演料が安いうえに再放送分は支払われないなど、ひどいものでした

▼そのとき激しい怒りを買ったのが経営側の代表だった植村伴次郎氏の発言でした。「役者などは無能であり、次から次に生まれてくる使い捨ての商品みたいなもの」。彼は音声製作会社の最大手であった東北新社の社長でした(日本俳優連合30年史)

キャプチャ

キャプチャ

▼いまや幅広い放送事業に影響力をもつ会社の創業者。伴次郎氏は菅首相と秋田の同郷で、親子にわたって献金を続けていた間柄です。菅首相自身「20年近いお付き合いがある」と国会で答えています

▼そんな親密な関係にあった企業がくり返していた総務省幹部らへの過剰接待。政権は、関係者の減給などで早く幕を引こうとしていますが、肝心の点は何一つ明らかにされていません

▼接待漬けの目的は。放送行政がゆがめられたのではないか。長男が東北新社に勤め、総務相時代から人事権をふるってきた菅首相への忖度(そんたく)は―。「家族の1カ月分の食費よりも高い」と庶民が憤る接待の意図も、菅首相の責任も、うやむやにしてはこうした悪習の根は断てないでしょう

▼いま国民がコロナ禍にあえぎ助けを求めているとき、自分の所有物のように政治を扱う政権与党。それにつき従う官僚。モリカケ・桜とまったく同じ構図です。このまま背を向けるなら前政権のてつを踏むことに。

1973(昭和48)年9月7日付けの「日俳連 外対委ニュース」No.9には、その日の一連の行動が掲載されています。

「要望書」を持参した代表団は各社で懇談、俳優の怒りに対する各局の反応を肌で感じることができた。

「役者風情になにができるか」とたかをくくり、私どもの声に耳を貸そうとしなかった民放各社は、ついに怒った俳優が一つの目的に向かってこれほど早く、これほど強く結束し、これほど思い切った行動に出るとは思ってもいなかったようである。無力と信じ込んでいた俳優の意外な結束に困惑をかくしきれず、各社とも「商法上、契約には何の落ち度もない」と繰り返しながらも「前向きに善処する」と答えざるを得ない状況。訴訟並びに動画へのエスカレートには各社とも極めて強い反応を示し、訴訟は大変困ること、動画へのエスカレートは番組編成上の大問題であることを訴え、実情を調べて何とか善処したいので、いま少し時間をくれと要請する始末。民放五社は直ちに連絡会を持ち、対策の協議を始めた模様で、強く業界を揺さぶった7・28統一行動の成果は高く評価されなければならない。

一方、翌7月29日には、デモと抗議行動に関する総括のための外画・動画等対策委員会が開かれました。出席者からは、いくつかの反省点が述べられたのですが、例えば「絵になる人物の出席が必要である」「スケジュール及び行動内容について早く教えてくれ」「シュプレヒコール、プラカード、ゼッケンを考えるべきであった」など、何時の時代も変わらぬ行動の問題点だったと言えるでしょう。

この日には、発足間もない日俳連も都市センター会議室で全国理事会を開催しており、外対委からのデモの報告を聞いた副会長の毛利菊枝氏は「当理事会としても、初の喜びだった」として、多額のカンパをくださったと、同じ「外対委ニュース」は伝えています。デモと抗議行動を中心に行われた第1次統一行動に引き続き、大々的に展開されたのが8月8日の「24時間出演拒否」の第2次統一行動です。

第1次統一行動によって、俳優の中に闘いの気運は高まっていました。しかし、そうした燃えさかろうとする火に油を注いだのは音声製作会社の中では、当時、最大手であった東北新社の社長であり、紫水会の会長でもある植村伴次郎氏の発言だったと言えるでしょう。週刊明星のインタビューに応えた植村社長は「役者などは無能であり、次から次ぎに生まれてくる使い捨ての商品みたいなもの」と発言し、俳優の激しい怒りを買ったのでした。

怒りが激しければ、その分だけ行動は早くなります。8月4日にマネ協と外対委との合同会議をしている最中、久松保夫氏は突如として24時間の番組出演拒否闘争を提言し、これが多くの同調者を募ることになったのです。また、出演拒否という急先鋒な闘争をすることの有効性について、永井一郎氏は、確実な情報をつかんでいました。それは「ゴールデンタイム枠の外国映画では、現在の制作費でもキャスティング費を4倍に引き上げることが可能だ」ということです。そして、この見通しから「引き上げる見通しがある今こそ、大いに闘いを強化する必要がある」と主張したのでした。出演拒否の実施は8月6日に開かれた外対委の深夜に決定されました。

闘争方針が決定してから実施に移るまでの動きも実に素早いものでした。わずか34時間の間に人員配置、印刷、小道具製作、集会場設定、警察への届け出でが完了し、新聞記者への発表も準備されました。人員配置の中には当日番組の収録が予定されているスタジオでのピケ隊も入っています。「決行!! 24時間の出演拒否」と書かれたプラカードの下に結集した組合員の強い意志によって7本の番組収録が完全に不能に陥ったのでした。

8月8日、再び示威行動を行うために東京・青山の高橋是清記念公園に集結した組合員は187人に達しました。近くには東北新社の本社があります。集まった人達は、隊列を組むことなく、三々五々東北新社へと向かい、村瀬正彦氏を中心とした抗議団が植村社長に会見。俳優の要求を訴えたのでした。

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接待総務官僚処分 首相責任で徹底解明を(2021年2月25日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は事務方ナンバー2の総務審議官ら官僚9人を減給、戒告の懲戒処分、2人を訓告処分などとした。「利害関係者からの接待」を禁じた国家公務員倫理規程に違反したのが理由だ。

 接待したのは同社勤務で子会社役員を兼ねる菅義偉首相の長男・正剛氏ら。会社側は何の目的で接待を繰り返したのか。官僚はなぜ応じたのか。核心部分の疑問は解けていない。

 同業他社による同様の接待はなかったとされ、創業者が本県出身である東北新社と同省の特別な関係が際立つ。元社長らが菅首相側に献金していた経緯もあり、疑念は深まるばかりだ。

 菅政権への国民の不信感も募らざるを得ない。同省は許認可権を握る監督官庁として、子会社の衛星放送を認可している。一部の接待は認可の更新直前に集中していた。行政の判断がゆがめられたことは本当になかったのかどうか。

 同省は副大臣をトップとする検証委員会を設置、放送行政に影響がなかったかを調べる。政権の責任として徹底検証するのは当然だ。ただ内部調査には限界がある。第三者の視点を十分取り入れ、公正で透明性のあるものとしなければならない。

 同省によると計13人が接待を受けていた。2016年7月~20年12月、延べ39件行われ、同社は計60万円余を負担。正剛氏はうち、21件に参加していた。

 額が最も多かったのは有力事務次官候補とみられていた谷脇康彦総務審議官の約11万8千円(計4回)。現内閣広報官の山田真貴子氏は総務審議官当時の19年、1回7万円超の接待を受けていた。処分では官僚1人を利害関係がなかったとして除外。同省を退職している山田氏は給与の一部を自主返納する。

 理解し難いのは、正剛氏らが「利害関係者」との認識はなかった―と官僚が口をそろえた点にある。接待を申し出た相手や出席予定者の肩書を慎重に調べれば、利害関係者か否かはすぐに分かったはずだ。

 その確認もせずに接待を受けたとすれば、あまりに不用意だろう。幹部の行為として信じ難い。本人がいくら否定しても、首相の長男のいる会社であるが故に「忖度(そんたく)」したと見られても仕方がないのではないか。

 正剛氏は菅首相の総務相時代に秘書官を務めた経緯がある。東北新社に入社する際には「総務省とは距離を置いて付き合うよう言った」と、菅首相は国会で答弁。同省幹部との度重なる会食に「驚いた」と述べた。

 一連の接待を見ると、正剛氏は同省との距離を「縮める」役割を担っていたようにも映る。秘書官という経歴や父親の威光を利用していた側面はなかったのか。長男は「別人格」とはいえ、菅首相には政治責任がある。正剛氏への調査も含め、指導力を発揮して事実関係を徹底して明らかにすべきだ。



「忖度(そんたく)」は本来、単純に相手の…(2021年2月25日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 「忖度(そんたく)」は本来、単純に相手の心を推し量ることを言う。相手が権力者や上司で、負の意味合いが濃い使い方をするようになったのは近年のこと。2017年の森友学園や加計学園の問題以降に顕著となった

▼今回も菅義偉首相に対する忖度が背景にあったのではないか。首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題。総務省の幹部9人が国家公務員倫理規程に違反したとして、きのう懲戒処分を受けた

▼菅首相は総務相時代、意に沿わない幹部を更迭したことがあり、今も同省に影響力があるとされる。その長男がいる会社から宴席の誘いがあった。真っ先に菅氏のこわもてが脳裏に浮かんだことだろう。将来のことを考えると、利害関係者であっても付き合わざるを得ない。そう忖度したとしたら、接待を受けたのが東北新社1社だけというのも納得がいく

▼割り勘にすれば済む話なのに、なぜ接待を受けたのか。東北新社の狙いも不明だ。当初は高をくくっていた感のあった総務省も、ようやく真相究明に全力を挙げる考えを示した

▼今のところはっきりしているのは、今回、処分を受けたキャリア官僚たちが国民の方を向いていなかったということ。真面目に仕事をしている多くの職員にとっては迷惑千万この上ない。



総務官僚の接待処分 国会で徹底解明せよ(2021年2月25日配信『東奥日報』-「時論」/茨城新聞』-「論説」)

 放送行政をゆがめる便宜供与はなかったのか。なぜ接待攻勢をかけたのか。

 菅義偉首相の長男、菅正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」側による総務省官僚の接待問題で、国家公務員倫理規程に違反したとして、同省は事務方ナンバー2である総務審議官ら9人を減給などの懲戒処分にした。閣僚給与を自主返納する武田良太総務相は検証委員会を設置し、行政に関わる不正の有無については引き続き調べる方針を示した。だが、国会での「虚偽答弁」批判を受けた身内による不祥事の実態をどこまで明らかにできるか疑念は消えない。

 行政監視も担う国会の権威を保つためにも、うその証言が罰せられる証人喚問などを視野に、国会主導で真相を徹底解明すべきだ。

 総務省の調査によると、総務審議官だった山田真貴子内閣広報官を含め、計13人が2016年7月から20年12月にかけて、延べ39件の接待を受けた。同省は、倫理規程に違反して利害関係者から接待されたとして懲戒処分にした9人のほか、2人を訓告処分などとする。正剛氏は同省から衛星放送の認可を受けた子会社の役員を兼ねている。

 会社側の負担は総額約60万8千円。山田氏は総務省を退職しているため処分対象にならなかったが、19年11月に受けた1回の接待で、支払ってもらった飲食費は約7万4千円に上っていた。山田氏は安倍政権下で首相秘書官を務めた後、総務省に戻り、放送行政を所管する情報流通行政局長に就任。総務審議官を経て、菅政権で特別職の内閣広報官に抜てきされた。正剛氏は菅首相が総務相時代に秘書官を務めており、2人の癒着が疑われてもやむを得ない。

 山田氏だけでなく、懲戒処分になった谷脇康彦、吉田真人両総務審議官や秋本芳徳前情報流通行政局長らも菅首相への忖度(そんたく)から接待に応じた疑いが濃厚だ。その忖度の延長線上で、衛星放送認可を巡り東北新社側を「特別扱い」することはなかったか。弁護士を交えているというが、内部調査には限界があろう。

 週刊誌が接待会食時のやりとりとする音声を公開するまで「(衛星放送の話題は)記憶にない」と虚偽と受け止められる答弁を続けたのも、調査のずさんさを浮き彫りにしたといえる。「会食時点で利害関係者がいるという認識はなかった」とも弁明しているが、国民の納得は到底得られまい。

 正剛氏を「別人格」と言い張っていた菅首相はようやく「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことについては心からおわび申し上げる」と陳謝した。一方で「総務相の下で徹底調査し、事実関係を明らかにしてほしい」との立場は変えていない。

 だが、総務省が正剛氏らに加え、首相が重用してきた山田氏や同省幹部への聴取を続けても、通り一遍の結論に終わる可能性がある。与党は野党の要求を受け、山田氏を衆院予算委員会に参考人として出席させる方針で、首相から厳重注意を受けた山田氏は給与の一部を自主返納する。

 総務省の人事に影響力を行使してきたとされる菅首相が、こうした対応で収拾を図るなら容認できない。行政の公正さへの疑念が残る以上、証人喚問要求があれば応じるとともに、第三者機関の再調査も検討すべきだ。



総務省接待問題で処分 これで幕引きとはいかぬ(2021年2月25日配信『毎日新聞』-「社説」)

 総務省幹部が放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らから接待を受けていた問題で、武田良太総務相はきのう、谷脇康彦総務審議官を減給とするなど11人の処分を発表した。

 総務審議官時代に、1人当たり7万円余の接待を受けていた山田真貴子内閣広報官は、特別職のため総務省の処分対象とはならなかった。ただし、給与の一部を返納するという。

 菅内閣全体を大きく揺るがす事態になってきたと言っていい。にもかかわらず、衛星放送番組の認定などで同社が特別扱いされたのではないかという疑惑の核心部分は、なお未解明だ。

 今回の処分で幕引きするわけにはいかない。武田氏は「省内に検証委員会を作って解明する」と語ったが、独立性が担保された調査でなければ信用されない。

 谷脇氏らが当面、現職にとどまるのも疑問が残る。もちろん調査に協力する必要はあるが、今後も放送行政を責任者として担い続けることができるだろうか。

 加藤勝信官房長官は山田氏についても、早々と「今後も職務に精励してもらいたい」と語った。

 山田氏は安倍晋三前内閣で首相秘書官に女性として初めて起用された。菅首相にも重用されて、現在は首相の記者会見の司会役を務めるなど内閣の中枢にいる。

 きょうの衆院予算委員会に山田氏は参考人として出席する。高額接待を受けた経緯や、自身が関わってきた放送行政について、納得のいく説明をする責務がある。

 東北新社の接待攻勢の背景には一体、何があったのか。

 衛星放送は最近、ネットの動画サービスに押されて契約者数が伸び悩んでいる。このため同社をはじめ放送事業各社は、衛星利用料の値下げを総務省に働きかけていたとも言われる。

 これまでの国会審議で、谷脇氏は「衛星料金低減の要望について(東北新社から)話があった記憶はない」と否定している。しかし仮に東北新社に何らかの便宜を図っていたとすれば、国家公務員倫理規程違反にとどまらない。贈収賄となる可能性がある。

 菅政治のあり方が問われている。まず首相と与党は、長男の国会招致に応じるべきである。



総務官僚接待 処分で幕引きとはいかぬ(2021年2月25日配信『新潟日報』-「社説」)

 「利害関係者」である特定企業側からの接待が常態化していた。1人分の飲食代が7万円以上の高額に上るものもあった。公務員倫理などあってなきがごとしである。

 接待の目的や首相長男の「特別扱い」などを巡る疑問は解明されていない。総務省は検証委員会を設置して調査を継続するというが当然だ。職員の処分で幕引きとはいかない。

 菅義偉首相の長男・正剛氏が勤務する放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省が職員11人の処分を発表した。9人が懲戒処分、2人が訓告処分などとなった。

 国家公務員倫理規程は、許認可や補助金交付を受けた企業など、職務上の利害関係者からは金銭・物品の贈与や接待を受けてはならないと定める。

 総務省は、正剛氏らとの会食を利害関係者からの接待に当たると認定した。

 総務省の調査結果では、接待は2016年7月~20年12月に延べ39件行われ、週刊誌報道で判明した幹部4人以外に9人、計13人が接待を受けていた。正剛氏は21件に参加していた。

 接待には、業者側は東北新社や、総務省から衛星放送の認可を受けた子会社の社長、役員らが参加。総務省側は、放送行政を所管する情報流通行政局幹部を中心に出席していた。

 この中には総務審議官だった山田真貴子・内閣広報官も含まれる。山田氏に関しては1人当たりの飲食代約7万4千円を会社側が負担していた。

 山田氏は現在特別職の国家公務員のため総務省の処分対象から外れ、首相が厳重注意した。

 接待問題の最大の焦点は、放送行政がゆがめられることがなかったかだ。

 官僚側、業者側の答えを基に総務省は「行政がゆがめられた事実は確認されていない」などとしてきた。だが、伝言リレーのような説明で国民の納得を得られるはずがない。

 そもそも総務省の調査や幹部の答弁は素直に受け入れ難い。

 総務省幹部らは接待を受けた相手側を「利害関係者とは思わなかった」と弁明したが、双方の立場を考えればすぐ分かりそうなものだ。国民に誠実に説明する気があるのかどうか。

 正剛氏の「特別扱い」があったかについても、接待された側は長男がいるから参加したわけではないと否定する一方、他の業者との会食には行っていないとの説明もしている。

 東北新社とこれほど深く付き合った理由は何か。疑問は深まるばかりだ。

 総務省は引き続き真相究明に力を入れるとする。ならば会食の席でのやりとりや業者側の接待の狙い、官僚側の出席の動機など詳細を明らかにすべきだ。

 一方、現状では身内によるお手盛り調査の限界も見える。

 野党は正剛氏の国会招致を求めている。事実解明へ、与党はまずは野党の要求に応じるべきだ。首相も陳謝だけでなく、政権トップとして当事者意識を持ち問題に向き合ってほしい。



首相の影を長男の向こうに(2021年2月25日配信『新潟日報』-「日報抄」)

「透明ディスプレー」という技術がある。パネルの表面に映像を表示しながら、背後が透けて見える。例えば人物の映像の向こうに、実際に部屋の壁に掲げられた絵が見える、といった具合だ

▼国内外のメーカーが参入し、市場に投入された製品もある。商業施設や美術館で、背景と組み合わせた新たな演出に使うことが想定される。車のフロントガラスに埋め込んで、地図や速度を表示するといった応用も考えられる

▼ある人物の背後に、別の人が透けて見えたのだろうか。菅義偉首相の長男・正剛氏が勤める放送事業会社による接待問題である。接待を受けた総務官僚は、省内に絶大な影響力を持つ首相の影を長男の向こうに感じたのかもしれない

▼官業の癒着が繰り返された反省から、国家公務員は法律に基づく倫理規程で利害関係者から接待を受けることを禁じられている。放送業界からは「会食に応じてくれるなんて考えられない」との声も漏れる。にもかかわらず、多くの幹部職員が接待を受けていた。1回で1人7万円余りに及んだケースもあったというから、あぜんとする

▼政権の決めた政策の方向性に反対する官僚は異動してもらう-。菅首相は、こう言って霞が関にすごみを利かせたことがある。その威光に逆らえなかったか。それとも、その威光の下でなら許されると思い込んだか

▼本当に行政はゆがめられてはいないのだろうか。表面に映し出されたものだけでなく、その背後にあるものに、よくよく目を凝らさねば。



何を得て、何を失ったのだろう(2021年2月25日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 歌人道浦母都子(もとこ)さんが随筆で書く。「自由にしろ、愛にしろ、何かを得るということは、代(かわ)りの何かを失うこと」。人生を振り返っての述懐である。そうだなと深くうなずいてしまう

◆この方々は何を得て、何を失ったのだろう。菅首相の長男が勤める放送事業会社の接待を受け、処分された総務省のお歴々である。うまい言葉やもみ手にことさら注意をしているわりには、なんとも脇が甘い

◆方針に逆らえば異動してもらうと公言する政権である。その怖い菅さんの身内だったら断れない。だから危うい接待に応じたと、永田町スズメはさえずるが、それで重い肩書を得られても、世間の信頼を失うのに

◆どうも霞が関は忘れっぽい。あまりに品がないので書くのもためらうが、風俗店を舞台に旧大蔵官僚が接待を受ける事件があった。あのときも規律、規律の大合唱だったが、向かい風がやんだらこの体たらく

◆危機にあっての心得。プロ経営者と呼ばれる松本晃さんが、3年前の日経新聞夕刊でこんな体験談を書いていた。「一切隠さず、そこまで言うのかというほどすべてを開示した方があとあと困らない」「情報の小出しはいけない」「ましてウソは厳禁だ」

◆菅政権はどうか。その場をしのぎ、代わりに大事なものを失うか。



国家公務員倫理法が施行されたの…(2021年2月25日配信『山陽新聞』-「滴一滴」)

 国家公務員倫理法が施行されたのは2000年4月である。旧大蔵省を巡る過剰接待など、官僚の不祥事が相次いだのがきっかけだった

▼20年が過ぎ、利害関係者から接待を受けてはならないという倫理規程は官僚に浸透したかと思いきや、そうではないらしい。菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社から総務省幹部が接待を受けていた問題できのう、幹部の処分が発表された

▼接待を受けていたのは13人。1回の接待は1人当たり5千円から2万円台が多かったが、1回で約7万4千円という驚くべき金額もあった。「何を食べると、こういう金額になるのか」。国会ではそんな質問まで飛んだ。食べたのは和牛ステーキと海鮮料理らしい

▼そういえば、昨年12月に菅首相が多人数のステーキ会食に参加して批判を浴びた時も、夜は1人5万円以上する高級店だと話題になった。その上をいく

▼庶民には理解できないほどの高額な飲食代をおごってもらい、「放送行政がゆがめられたということは全くない」(武田良太総務相)と言われても、信じろという方が無理だろう。これで幕引きとはならない

▼庶民の感覚でも一つだけ分かることがある。人事権を使って官僚を意のままに動かすと公言する菅首相。その息子から誘われたら断るのは相当に難しい。首相も「知らなかった」では済まない。





放送行政に疑念招いた責任は極めて重い(2021年2月24日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 浮かび上がったのは、とうの昔に決別したはずの行政と業界のなれ合いの構図そのものである。

 総務省は24日、菅義偉首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」から過剰な接待を受けた幹部11人を国家公務員倫理規程違反で処分した。放送行政への信頼を損なうゆゆしき事態であり、接待した会社側の目的を含めた事実解明を急ぐ必要がある。

 東北新社による総務省職員の接待は2016年以降、のべ39件にのぼった。うち21件に首相の長男が出席していた。同社は傘下に衛星放送子会社を持ち、会食に出席した幹部や首相の長男らは子会社の役員を務めていた。

 総務省は「利害関係者」からの接待に当たると判断し、人事院の国家公務員倫理審査会との調整を経て処分した。谷脇康彦総務審議官ら7人は減給、2人は戒告、残り2人は訓告と訓告相当とした。

 このほか山田真貴子内閣広報官は総務審議官だった19年11月に、1回7万4000円超の接待を受けた。現在は総務省を離れた特別職のため処分対象から外れたが、首相の厳重注意を受けて給与月額の6割を自主返納すると明らかにした。一般職公務員が処分された場合の退職金減額分の返納なども検討すべきだ。

 総務省幹部は東北新社からの飲食代やタクシー券、手土産などの提供が週刊誌で報じられた直後に「利害関係者はいないと認識」「放送業界全般の話題が出た記憶はない」と国会で説明し、すぐに訂正した。森友問題で財務省が事実調査を怠り、虚偽答弁を繰り返した反省が全く生かされていない。

 首相は当初、「長男は別人格だ」と述べ、後に「私の長男が関係し、公務員が違反行為をすることになり大変申し訳ない」と陳謝した。首相は長男を総務相時代に秘書官に起用しており、今回の不祥事の道義的な責任は免れない。

 野党は「接待づけ」ともいえる状況によって、放送行政がゆがめられた可能性を指摘している。東北新社が接待を繰り返した目的はなお不明確であり、幹部の国会招致を早期に実現すべきだ。

 国家公務員倫理法は旧大蔵省の接待汚職などを契機に2000年に施行された。倫理規程は利害関係者による接待、ゴルフ、旅行、金品の贈与などを原則禁止する。政府はルールを逸脱した事例が他にないかどうかを徹底調査し、再発防止策を講じる責任がある。



五シンの戒め(2021年2月24日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 作家の山崎豊子さんの小説『沈まぬ太陽』に、ある会社監査役の座右の銘が出てくる。「私心を捨てる。保身を捨て使命に生きる。邪心を捨てる。野心を捨てる。慢心を捨てる」という「五シンの戒め」である。私たちの日常の仕事にも通じる心構えだ

◆「国家公務員倫理カード」にも似ている。「公正な職務執行に当たる」「職務や地位を私的利益のために用いない」など5項目が記される

◆菅義偉首相の長男が勤める企業による接待問題で、既に判明している総務省幹部4人以外に9人、計13人が接待を受けていたことが明らかになった。仕事上、人脈を広げていくことは大切で、会って語り合い、時に酒を酌み交わす効用を否定するものではないが、たとえ少額でも金銭が動けば公務員の倫理規定に違反する

◆言うまでもなく、国家公務員は「国民全体の奉仕者」。多くの官僚に私心や邪心はなく、公正無私を自らに課していると思いたい。なのに13人も接待に応じたのは、菅首相の長男がいることへの配慮と思われても仕方ない面があるだろう

◆組織の中に長くいると、世間の常識と組織の常識がずれ、誰を向いて仕事をしているのか分からなくなる時がくるかもしれない。そんな時、「五シンの戒め」を思い出したい。加えてもう一つ、「良心」を忘れないように。自戒を込めてそう思う。



首相長男の接待問題(2021年2月24日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆真相解明から逃げるな◆

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は22日、総務審議官だった山田真貴子・現内閣広報官を含む計13人が接待を受けていたと明らかにした。同省は山田氏ら2人を除く11人を懲戒処分などとする方針。首相に近い山田氏の名前が浮上したことで一気に深刻度を増し、菅首相の進退が問われるほどの重大な事態になった。

 国家公務員倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」と定め、接待を受けたり、金品を受け取ったりする行為を禁止している。同省は長男を利害関係者と認めた。

 同省が倫理規程違反の疑いがあるとした接待は2016年から延べ39件に上り、全て東北新社が費用を負担。長男は半数超の21件に参加していた。放送行政を所管する担当部署幹部との会食が大半を占め、放送事業の許認可を巡る接待攻勢の一端が浮き彫りになったと言える。

 行政の公正さへの不信感を再び招いた上、国会審議では「虚偽答弁」疑惑にも発展した。接待を受けた同省幹部は当初、許認可権を持つ衛星放送の話題が出たかどうかについて「記憶にない」とかわし続けた。しかし、週刊誌が会食時の音声を公開すると、事態が一変。

 菅首相も、長男は「別人格」と強調した上で、「誰であっても、国民から疑念を抱かれる行動は控えるべきだ」と一般論での答弁に終始していた。だが、同省調査が公表された22日、衆院予算委員会で「長男が関係し、結果として違反する行為をすることになり大変申し訳なく思っている」と陳謝に転じた。

 長男は、同省から衛星放送の認可を受けている東北新社の子会社役員も兼ねる。会食が集中した昨年12月は衛星放送認可の更新時期であり、便宜供与の疑念を呼ぶのは当然だ。同省調査に対し、「長男がいるから参加したわけではない」と答えた同省幹部もいるが、背景に首相への忖度(そんたく)があったことは十分に考えられる。

 不祥事が起きるたびに聞かされる「記憶にない」発言は、言い逃れのための常套句(じょうとうく)であると国民は見抜いている。安倍晋三前首相と親しい者を優遇したと指摘された森友、加計両学園への反省もうかがえない。「忖度政治」を根絶するため、背景や経緯をきちんと解明し、首相らの責任を明確にすべきだ。

 菅首相は自身を「特別扱い」する意識が働きかねないことを自覚し、行政をゆがめる忖度がはびこらないよう言動で示す必要がある。さらに真相解明前に国会質疑から遠ざけ、幕引きを図るとしたら容認できない。行政への信頼を取り戻すため、国会での真相解明が必要だ。



接待問題の官僚処分 解明なき幕引き許せぬ(2021年2月25日配信『中国新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男ら放送事業会社「東北新社」側から高額な接待を受けていた総務省の幹部11人がきのう処分された。

 利害関係者からの接待や金品の受領を禁じた国家公務員倫理規程に違反したとして減給などの懲戒や、訓告の処分である。行政の公平性への信頼を揺るがした責任は重く、当然だ。

 政府はこの処分で、倫理規定違反に関する調査を終了するという。だが、接待問題に幕引きをすることは許されない。

 多くの官僚が接待を受けた背景を明らかにする必要がある。許認可などを巡り、行政がゆがめられたかどうかなど、徹底的に解明せねばならない。

 「利害関係者とは思わなかった」「利害に関わるやりとりはなかった」…。総務省の調査に対し、接待を受けた官僚は口をそろえているという。しかし、いわば身内の調査への説明をうのみにはできない。

 というのも先に事実上更迭された同省局長の例がある。国会で当初、衛星放送に関する話題は出なかったと「虚偽答弁」。ところが週刊誌報道を受け、話題にしたことを一転、認めた。

 にもかかわらず、武田良太総務相は「行政がゆがめられた事実はなかった」と述べてきた。なぜそう断言できるのか。幕引きを急ぎ、政権へのダメージを抑えたい思惑なのだろう。

 総務省の調査では真相解明は期待できない。同省はきのう、副大臣を長とする検証委員会の設置を明らかにした。だが、独立性や透明性の高い第三者機関による調査が必要だ。

 菅首相にとっては家族が関わった疑惑だ。かばいだてせず、真相解明に尽くすことが責務である。できないのなら、国民の政治不信を一層深める。

 総務省の調査報告によると、接待は5年前から昨年12月にかけて当時同省幹部だった13人に延べ39回も行われた。審議官の1人は4回にわたり飲食代や手土産、タクシー代など計約11万円以上の接待を受けた。

 総務省幹部の接待が1人当たり2万円台までなのに比べ、山田真貴子内閣広報官への出費は際立つ。総務審議官だった2年前、1回で7万4千円もの飲食接待を受けた。一般常識に照らし、考えられない額だ。山田氏は菅首相が内閣広報官に抜擢(ばってき)。同省を退職しており、きのうの処分の対象外だった。

 接待攻勢には一体、どんな背景があるのか。東北新社などの衛星放送事業の会社は近年、インターネットの動画配信サービスに押され、環境が厳しい。そのため業界は人工衛星の利用料引き下げを求めていた。また東北新社の映画専門の子会社は接待を重ねた昨年12月に衛星放送の認可更新が認められた。

 首相長男らの思惑が透けて見えるようだ。では、官僚はなぜ接待を受けたか。政府は山田氏をきょう衆院予算委に出席させるという。他方、首相の長男ら東北新社の幹部も国会招致する必要がある。

 菅首相は「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことは申し訳なく思う」と陳謝した。

 だが官僚だけが処分され、政治家は謝罪しても責任を取らないのは、森友・加計学園、桜を見る会の疑惑と同じだ。首相は前例踏襲を改めると断言したはずだ。自ら責任を取るべきだ。



忖度(2021年2月25日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 それとなく検査日程をほのめかしてもらい、不良債権の評価ではさじ加減に期待する。そんな見返り欲しさに大手銀行マンが大蔵(現財務)官僚の接待にいそしんだ時代があった

▲東京地検特捜部が1998年に立件し、過剰接待事件として刻まれる。収賄罪に問われた接待総額は3千万円以上に達し、その腐敗ぶりは国家公務員倫理規程を制定する流れを加速させた。以降、利害関係者との付き合いは厳しく制限されている

▲菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社による接待問題で、当事者らが処分を受けた。5年間で延べ39件に上る「接待漬け」の実態。内閣広報官に至っては1回7万円超の高級料理でもてなされていた。職業倫理の欠如に開いた口がふさがらない

▲ただで飲み食いは賄賂の原点。処分を受けた面々はそう心得ていたはずである。「他の業者との会食には行っていない」と口をそろえてもいる。それなのに、長男側の誘いには簡単に応じる不自然さ。このまま幕引きとはならない

▲元特捜部長の熊崎勝彦さんは「事件は時代を映す鏡」と語っている。捜査を指揮した旧大蔵省の事件は、護送船団方式が行き過ぎて制度疲労を起こした結果とみる。事件後の金融行政は、過度な管理から競争を促す手法へと転換が進んだ

▲では、総務省の問題は時代の何を映すのか。単なる「息子さん」とあしらえず、誘いを断り切れなかったものである。それは忖度(そんたく)の広がり。



記憶力(2021年2月25日配信『高知新聞』-「小社会」)

 噺(はなし)を覚えることは落語家のイロハのイだろう。立川談四楼さんは著書「記憶する力 忘れない力」で、経験を積むほど記憶する技術は上がり、演ずる喜びが大きくなると書く。ところが、ある年齢から記憶力と忘却力がせめぎ合う。
 
 忘却への対処法は人それぞれだ。昭和の名人、八代目桂文楽は得意ネタの途中で絶句した。登場人物の名前が出てこない。「もう一度、勉強し直してまいります」。客に頭を下げ、袖に引っ込んだ。そして二度と高座に上がらなかった。

 師匠の立川談志はすごかった。噺の細部が出てこなくなると客に尋ねる。「ねぇ、こいつの名前、なんつったっけ?」。客が正解を言うと「偉(えれ)ぇ。俺より落語を知ってらあ」。

 肝心なところで記憶をなくすのは、この人たちの方が上手だろう。菅首相の長男らによる総務省幹部接待問題。利害が絡む衛星放送の話が出たかどうか、官僚は「記憶にない」としてきた。しかし、会食時の音声が出てくると「私の記憶力不足」。もう誰も、額面通りに受け取らないのではないか。

 総務省が接待を受けた幹部らの処分を発表した。ただ、首相の影に行政がゆがめられたのか、核心は未解明のままだ。処分や再発防止策を前面に出して早々に幕引きを図る。前政権ではそれで疑惑が累積した。
 
 幕引きを急ぐ権力の願いはいつも「世間はそのうち忘れてくれる」だろうか。そろそろ世間の記憶力も試されそうだ。



総務省接待の処分(2021年2月25日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

疑惑の徹底解明はこれからだ

 菅義偉首相の長男・菅正剛氏が勤務する放送事業会社「東北新社」から総務省幹部らが接待されていた問題で、同省は職員の処分を決めました。接待された幹部・同省出身者ら13人のうち11人について国家公務員倫理規程違反と認定し、減給の懲戒処分などにしました。しかし、会食に応じた動機、接待が横行した背景、行政に及ぼした影響などについては、依然として闇に包まれています。省内に検証委員会を設置するとしていますが、総務省任せにはできません。

放送行政をゆがめたのか

 総務省は、同省事務方ナンバー2の谷脇康彦、吉田真人の両総務審議官など9人の会食は、利害関係者による接待だと判断し、倫理規程違反にあたるとして懲戒処分にしました。他の2人は訓告と訓告相当にしました。ほとんどが放送行政を担当する部局に関係していました。10人以上の幹部職員が接待で処分されることはまさに異常事態です。同省のモラル崩壊は極めて深刻です。

 総務審議官時に1人1回7万円超の高額接待を受けた山田真貴子・内閣広報官は総務省を退職していることから、同省の処分対象になりませんでした。給与の一部を自主返納し、菅首相は広報官の続投を容認しました。他の幹部職員と比べ桁違いの接待を受けたことへの国民の不信と疑念は募ります。山田氏は25日に国会に招致されます。事実を包み隠さず話すことが最低限の責任です。

 総務省の現段階の調査では、幹部らが東北新社からの接待に漬かった背景は不明のままです。同省が許認可権を持つ衛星放送のチャンネルなどについて接待の席で、どんなやりとりがあったのか。接待によって行政がゆがめられていないのか。当初放送事業が話題になったことは「記憶にない」としていた総務省幹部の釈明は、『週刊文春』の音声データ報道で完全に破綻しました。これ以上事実を隠ぺいしてはなりません。

 幹部らは同社以外の放送事業会社からは接待はなかったとしています。正剛氏が勤務する東北新社を「特別扱い」していたことは疑いの余地はありません。

 解明が不可欠なのは、菅首相の「威光」との関係です。菅氏が総務副大臣と総務相を務めた時からの絶大な影響力はいまも続いているとされます。判明したのべ39回の接待のうち正剛氏は21回同席していました。接待された総務省の少なくない幹部は、菅氏から重用されてきたことが指摘されています。総務省幹部らが首相の意向を「忖度(そんたく)」して接待を重ねていた疑いは強まるばかりです。

首相は説明責任を免れぬ

 正剛氏が主要な総務省幹部と面識ができたのは、首相が総務相時に正剛氏を大臣秘書官に起用したことが契機でした。東北新社創業者と正剛氏を引き合わせたことも首相は認めています。創業者と同郷で20年近い付き合いだと国会で答弁しています。同社から500万円の政治献金を受けています。不可解な点は尽きません。首相は「おわび」を言うだけでなく、解明に責任を果たさなければなりません。首相の長男がからんで行政がゆがめられた疑惑を絶対にあいまいにできません。正剛氏など東北新社関係者や総務省の幹部ら全員を国会に招致し、徹底追及することが急がれます。





総務省接待調査 処分で幕引きはできぬ(2021年2月23日配信『北海道新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男による接待問題を巡り、総務省は既に判明している幹部4人を含め、計13人が会社側から接待を受けていたと発表した。

 このうち11人については、国家公務員倫理法に基づく倫理規程で禁じる「利害関係者からの接待」に該当すると判断し、あすにも処分する方針だ。

 武田良太総務相は衆院予算委員会で「行政がゆがめられた事実は確認されていない」と述べた。

 内部の調査だけで処分しても幕引きにはならない。元総務相で総務省に強い影響力を持つ首相の威光を背景に不透明な行政執行があった疑念が晴れたとは言えない。

 なぜ会食に応じ、どんな会話を交わしたのか。接待の結果、東北新社が放送事業に絡む許認可で優遇されたことはなかったのか。

 長男ら会社側の国会招致や第三者機関で徹底的に調べ、国民の前に明らかにしなければならない。

 総務省によると、東北新社側との会食は延べ39回に及んだ。首相の記者会見を仕切る山田真貴子内閣広報官も総務審議官時代に長男と会食していた。

 接待を受けた職員と会社側が総務省の聴取に「不適切な働きかけはなかった」と答えたという。

 だが、秋本芳徳・前情報流通行政局長らは当初、衛星放送に関する話題が出た記憶はないと国会で説明し、週刊文春の報道を受けて翻した。聴取への言い分も信用できず、調査が甘いのではないか。

 倫理規程で利害関係者からの接待を禁じているのは、便宜供与につながる恐れがあるからだ。疑惑の核心を避けるような調査による形式的な処分では納得できない。

 首相はきのうも「武田総務相の下で徹底して調査し、事実関係を明らかにしてほしい」と人ごとのように語った。

 首相の説明によると、総務相時代に秘書官だった長男を東北新社の創業者との会合に同席させた。

 長男の入社に際しては「総務省とは距離を置いて付き合うように(伝えた)」という。

 東北新社が総務省と利害関係にあると認識していた証左だろう。国会などで、接待攻勢をかけた真意を長男にただす必要がある。

 安倍晋三前首相の妻や友人が関わる学校法人が優遇されたとされる森友・加計問題も表層的な調査でうやむやになっている。

 接待問題では、安倍路線を継承した菅政権の体質そのものが問われていると認識すべきだ。



身内の調査(2021年2月23日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 大化の改新で朝廷から派遣された国司(こくし)が地方行政をつかさどっていたころの話である。目の届かぬところで賄賂を受け取るなど職権乱用を働く者も少なくなかった。これをとがめて、厳格な処分を下したのが孝徳天皇だ

▼大化2年(646年)、東国(あづまのくに)の八道(やつのくに)の国司8人が報告のため難波宮(なにわのみや)に上京した時のこと。考課で2人に不法行為ありと認定されたが、孝徳天皇自ら審査したところ、6人の不正行為とその部下たちの収賄もあきらかになった

▼自著で「汚職は日本書紀の昔から」と記したのは、東京地検特捜部検事としてロッキード事件を捜査した河上和雄さんだったが、身内に甘いずさんな調査も古(いにしえ)より変わらないものなのだろうか

▼総務省幹部4人が菅義偉首相の長男が勤める放送関連会社から接待を受けていた問題で、総務省はきのう、新たに9人が接待されていたと発表した。国家公務員倫理規程に違反した11人が近く処分されるという

▼総務省は文春オンラインが音声データを公開するまで、会食時に放送事業に関する会話があったことすら否定していた。武田良太総務相は先週調査不備を謝罪したが、その姿勢に疑念を禁じ得ない事態だ。処分でこと足れりとはなるまい

▼律令(りつりょう)国家は上位官職の世襲続きで形骸化した。孝徳天皇の厳正な姿勢は群臣の反発を招いてしまうが、私心による職務遂行のまん延の帰結は歴史にある通りである。



共感力(2021年2月23日配信『福島民報』-「あぶくま抄」)

 喜多方市出身のフリーアナウンサー唐橋ユミさんは、テレビやラジオなど幅広い舞台で活躍している。トレードマークとなっているメガネの奥に柔和な笑顔が輝く。お茶の間はもちろん、うるさ型の大物野球解説者をも和ませる。

 レギュラー番組以外にも、各分野の専門家らにインタビューや取材を重ね、心の内を引き出す。これらの経験やノウハウをつづったコミュニケーションの教科書「会話は共感力が九割」を出版した。話術以前に大切な点として「相手に対して興味、関心をもち、尊重すること。つまり共感力」と記す。

 「丁寧なコミュニケーションに努めたい」。我が国の宰相は殊勝な言葉を口にする。だが、その思いは永田町や霞が関では通用しても、世間には響いていないのではないか。支持率は下げ止まったままだ。ただ、追及する野党側の国会質問も感情に走り過ぎ、失笑を買うことすらある。

 官僚たちはトップへの忖度[そんたく]が最優先らしい。虚偽まがいの答弁を繰り返す。そこにコロナ禍で苦しむ人々に寄り添う姿勢は到底、見えてこない。政治家に向ける共感力のうち、せめて半分でも国民に向けてはどうか。世の中がもっと気持ち良くなるはずだ。



総務省幹部ら処分へ 解明の責任は首相にある(2021年2月23日配信『毎日新聞』-「社説」)

 放送行政を巡る癒着ぶりと規範意識の低さにあきれる。

 総務省幹部らが放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らの接待を受けていた問題で、幹部ら計13人が延べ39回会食していたことが明らかになった。同省が内部調査結果を公表した。

 既に認めていた4人に加え、放送行政の担当局を中心に課長ら8人が会食していた。このほか、同省総務審議官を務めていた山田真貴子内閣広報官も参加していた。

 国家公務員倫理規程は、利害関係者から接待を受けたり、金品を受けたりする行為を禁じている。

 首相は国会で、「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことは心からおわび申し上げる」と陳謝した。

 武田良太総務相は近く幹部らを処分するという。だが、それで幕引きとすることは許されない。

 倫理規程違反だけでなく、行政の公正性がゆがめられていないかを解明する必要がある。衛星放送番組の認定などで特別扱いがあれば、贈収賄の疑いも出てくる。

 しかし、総務相は調査終了前の先週、「ゆがめられたことは全くない」と断言した。問題はないという結論ありきの対応にみえる。

 疑惑が浮上した際、完全に否定することで批判をかわそうというのが、安倍前政権からの常とう手段だ。異論や反対意見をあげにくくなり、疑惑に蓋(ふた)をすることにつながりかねない。

 総務相は、包み隠さず調査に協力するよう職員に指示したという。しかし、国会での質問に対して幹部が虚偽答弁をしていたことも明らかになっている。

 同省幹部は、首相の長男がいたから会食したわけではないというが、なぜ同社の接待にだけ繰り返し応じたのかの説明はない。



「世の中は諸事御尤ありがたい御前御機嫌さておそれいる」…(2021年2月23日配信『毎日新聞』-「余録」)

 「世の中は諸事御(しょじご)尤(もっとも)ありがたい御前御機嫌(ごぜんごきげん)さておそれいる」。江戸時代の役人のごますりやご機嫌取りの処世を風刺した狂歌である。御前は殿様か、上司か。今なら近年の政権トップの顔が浮かんでくる

▲はて、これも「御前」のご機嫌を損ねたくない役人たちの大量参集なのか。総務省幹部が放送関連会社に勤める菅義偉(すが・よしひで)首相の長男の接待を受けていた問題で、同省は今までに計13人が延べ39回にわたり会食に参加していたと発表した

▲この問題では週刊文春が公開した録音と食い違う国会答弁をした局長らがすでに更迭されている。同省は24日にも国家公務員倫理規程違反で該当者を処分する予定だが、近年めったに聞かぬみごとな癒着ぶりにはあぜんとさせられる

▲当の長男は首相の総務相時代に政務秘書官に起用され、後に総務省が主管する放送関連業界に転じた人物だった。役人たちが同省人事に影響力をもつ首相へのそんたくから接待の席に赴いたであろうことは、江戸の狂歌師でも分かる

▲前政権の森友問題とも相似形をなす「御前」への役人たちの迎合だった。行政の決定はそれによりゆがめられなかったのか。国の統治組織から合理性を奪い、江戸時代のそれへと先祖返りさせるネポティズム(縁故主義)の毒である

▲時代に合わぬ役人を詠んだ江戸狂歌もある。「世にあわぬ武芸学問御番(ごばん)衆(しゅう)のただ奉公に律儀(りちぎ)なる人」。武芸や学問、まじめに奉公する武士は当世風ではないという。「奉公」は今なら公への奉仕と解釈していい。



総務省接待調査 放送行政の公正に疑念深めた(2021年2月23日配信『読売新聞』-「社説」)

 放送行政の公正さに疑念を生じさせる深刻な事態である。特定の企業からの接待が繰り返された背景や政策決定への影響について、政府は調査を尽くさねばならない。

 菅首相の長男が勤務する放送関連会社「東北新社」からの接待問題について、総務省が調査結果を公表した。国家公務員倫理規程に違反する疑いがある会食は2016年以降、延べ38件に上った。

 公務員と利害関係者との会食は、癒着の温床となり、行政に対する信頼を揺るがしかねない。規範意識の欠如が目に余る。

 調査によると、谷脇康彦総務審議官ら幹部4人に加え、情報流通行政局の課長ら8人が接待を受けていたことがわかった。ほかに、山田真貴子内閣広報官も総務審議官当時に会食していた。

 事務方ナンバー2の審議官をはじめ、衛星放送業務を担う歴代局長、課長らが接待対象となっていた。利益供与が広がっていたことへの真摯しんしな反省が不可欠だ。

 公共財産である電波を配分する総務省は、利害関係のある放送関連会社との癒着が疑われるような接触は避けなければならない。関係者を厳正に処分し、接待が横行した背景を調べる必要がある。

 野党は衆院予算委員会で、一連の接待による放送行政への影響を追及した。東北新社の子会社が手がけるBS放送の事業認定は昨年12月に更新期を迎えており、幹部4人が接待を受けた昨年10~12月と時期が重なるという。

 武田総務相は「放送行政が歪ゆがめられた事実は確認されていない」と強調した。東北新社とどのようなやりとりがあったのかを明らかにせずに、放送行政への影響を否定しても理解は得られない。

 総務省幹部は他の放送事業者との会食を否定している。ではなぜ、東北新社だけから接待を受けたのか、疑念は深まるばかりだ。

 長男は首相が総務相時代に秘書官を務めており、その人脈を利用したのではないか。官僚側も父親である首相を意識して断れなかったとみられても仕方あるまい。

 首相は「長男が関係し、結果として公務員が倫理法に違反する行為をしたことを、心からおわびする」と陳謝した。一方で、「長男と会社の話は一切していない」と述べ、関与を否定した。

 「長男は別人格だ」という首相の認識自体に問題がある。行政の責任を負う立場にある以上、家族も含め、疑念を持たれないよう行動を慎むのが当然だ。首相は事実関係をつまびらかにすべきだ。



総務省接待問題 混乱招いた愚を猛省せよ(2021年2月23日配信『産経新聞』-「主張」)

 速やかな謝罪の機会を逸し、答弁の二転三転がさらなる疑念を招く。政府の危機管理は誤りだらけだ。「森友学園」などの問題で国会を混乱させた反省もみられない。

 国会には新型コロナウイルス対策をはじめとする課題が山積している。いたずらに混乱を長引かせる愚を、これ以上繰り返してはならない。

 総務省幹部らが、放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男から接待を受けた問題で、同省は計13人の職員が接待を受け、うち11人について国家公務員倫理規程上の「利害関係者からの接待」に該当するか、その可能性が高いと認定した。

 菅首相は衆院予算委員会で「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことについては心からおわび申し上げる」と陳謝した。

 接待の事実も、長男が利害関係者に当たることも最初から明白だった。もっと早期に謝罪すべきだった。事態を混乱させたのは「長男と私は別人格」と国会で述べた菅首相の強弁である。

 菅首相が総務相時代に長男を秘書官に起用した。長男はその後、東北新社に勤務し、総務省が許認可権を持つ衛星放送事業に関わる役職に就いた。首相は官房長官時代も含め、一貫して総務省に強い影響力があり、「別人格」の反論には説得力がなかった。

 長男と会食した総務省の秋本芳徳情報流通行政局長は、衛星放送の話題について「記憶はない」と繰り返していた。だが、「文春オンライン」が会話時の音声データを公開すると、一転してこれを認めた。

 秋本氏らは20日付で官房付に異動した。事実上の更迭だが武田良太総務相は「(接待問題と)人事異動は全く関係ない」と述べ、加藤勝信官房長官も「適材適所の配置として行われた」と強調した。誰も信用しない。

 新証拠に転変する役人の答弁や到底信じ難い閣僚の発言が、国民の間に不信感を広げていく。

 武田総務相は調査結果の公表前も後も、「放送行政がゆがめられたということは全くない」と答弁し、撤回も拒否した。

 贈収賄罪など刑事事件に発展する可能性もある事案である。事実関係の説明が二転三転しながら、結果のみの全否定は通るまい。調査は不十分だ。



総務官僚の接待 許認可への影響究明を(2021年2月23日配信『東京新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社による総務省幹部の接待問題は、すでに明らかになった4人にとどまらず、計13人に上った。許認可への影響は本当になかったのか。徹底究明すべきだ。

 役所ぐるみの「接待漬け」という言葉が最も当てはまる。かつての大蔵省接待汚職事件や外務省機密費(報償費)流用事件にも匹敵する国家公務員倫理の逸脱だ。

 総務省はきのう、既に判明している幹部4人以外に9人、計13人の総務省職員が、放送事業会社「東北新社」から接待を受けていたと明らかにした。会食件数は延べ39件。総務審議官だった山田真貴子・現内閣広報官も首相長男と会食していた。

 同省は13人中、山田氏を含む11人について国家公務員倫理規程上の「利害関係者からの接待」に該当、またはその可能性が高いと認定し、衆院予算委員会理事会に報告した。24日にも処分する方向で調整しているという。

 処分内容にもよるが、今後の次官人事に影響する可能性もあるという。厳正な処分を求めたい。

 しかし、処分で疑惑の幕引きとはできない。問題は総務省が持つ許認可権に関わり、そこに多額の金銭やそれと同等のものが介在していれば、汚職事件にも発展しかねない重大事であるからだ。

 首相の長男は菅総務相の秘書官を務めた後、2008年に東北新社に入社。同社の元社長らは12年から18年までの間、計500万円を首相に個人献金していた。

 長男ら同社側による総務省幹部接待は16年から20年にかけて行われ、20年12月には同社子会社の衛星放送事業の認定が更新されている。接待の席で衛星放送事業についてのやりとりがあったことも明らかになっている。同社と首相との関係や接待が許認可に影響することはなかったのか。

 武田良太総務相はきのう「放送行政がゆがめられた事実は確認されていない」と答弁したが、どこまで調査を尽くしたのか。

 振り返れば、安倍晋三前政権以降、森友・加計学園や「桜を見る会」を巡る問題など、首相ら政権中枢に近い関係者らへの優遇が次々と問題となってきた。

 首相の長男による総務省幹部接待と許認可を巡る問題は、それと同じ構図と疑われても当然だ。

 接待した側された側、双方の関係者を国会に証人として喚問し、事実関係や許認可への影響の有無を徹底的に調べ尽くさなければ、国民の不信は解消されまい。



接待問題の拡大 第三者委を設け解明を(2021年2月23日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 個人の問題で済ませるわけにはいかない。

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社による接待問題だ。接待を受けた総務省の職員が、計13人になることが分かった。

 回数は延べ39回に上る。事業会社が長男の影響力を背景に許認可権を持つ総務省に接待攻勢をかけ、官僚側も特例扱いした実態が浮き彫りになったといえる。

 総務省は、うち11人を懲戒処分する方針だ。ただし、それだけでは問題は終わらない。

 まず、聞き取りを中心にした総務省の調査が、信頼できるのかという疑問だ。秋本芳徳・前情報流通行政局長は当初、会食で放送行政に絡む話題はなかったと主張。長男も同様に答えていた。

 それなのに、週刊文春が会話の録音を公開すると双方が主張を一転させた。聞き取りでは真実は明らかにならないだろう。

 焦点は放送行政が不当にゆがめられていないかにある。武田良太総務相はきのうの衆院予算委員会で「確認されていない」と従来の主張を繰り返している。その根拠は、当事者双方の「ゆがめていない」という主張だ。これでは国民の理解は得られまい。

 事業会社の子会社は、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。接待は認定や更新の直前が多い。特例扱いはなかったのか。第三者委員会を設け、事実と事の本質を明らかにするべきだ。

 もう一つは、官僚が接待に応じた理由だ。幹部らは他の放送会社から接待を受けたことはないと説明している。菅首相は総務副大臣、総務相を歴任し、大きな影響力を残す。長男の背後に首相の存在を見ていたとしか思えない。

 首相の責任も大きい。長男は総務相時の秘書官だ。秘書業務で事業会社幹部と知り合い、退任後に入社した。省に許認可権がある企業への入社は天下りに等しい。

 首相はきのうの予算委で、長男が入社する際に「総務省と距離を置くよう注意した」と明らかにした。癒着の危険性を感じていたのか。長男が「別人格」でも、総務省と関係ない企業を選ぶよう、説得することが必要だったのではないか。首相の甘い認識が今回の問題を招いた。

 首相の「身内」が官僚に特例扱いされる構造は、森友・加計学園問題と同様だ。背景には、人事権を通して官僚を支配する安倍・菅政権の権力構造がある。

 行政は公正、公平でなければならない。うみを出し切るには詳細な検証が欠かせない。



首相長男の接待問題(2021年2月23日配信『福井新聞』-「論説」)

便宜供与の疑念が拭えぬ
 会食件数は延べ39件にも上り、「接待漬け」といわれても仕方がないだろう。

 菅義偉首相の長男が勤務する放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は既に判明した幹部4人以外に9人、計13人の職員が接待を受けていたことを明らかにした。13人のうち11人について国家公務員倫理規程上の「利害関係者からの接待」に該当するか、その可能性が高いと認定したとされる。

 問題は、衛星放送などの許認可に関して接待の見返りに便宜供与があったのではないかとの疑念が拭えないことだ。放送行政がゆがめられていたとすれば、首相の進退にも関わる重大な事態と言わざるを得ない。それなのに総務省は24日にも調査結果と処分を公表する方向で調整しているという。内部調査で済ますことなどはあってはならない。検証委員会を設けるなど厳格な調査で責任の所在を明確にしなければならない。

 既に判明していた4人のうち、秋本芳徳情報流通行政局長=20日付で官房付=は許認可権を持つ衛星放送などの話題が出たかどうかに関して「記憶にない」とかわし続けてきた。だが、週刊誌による会食時の音声公開で「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と答弁を変えた。「記憶にない」で早期幕引きを図ろうとしたこと自体が、虚偽であると国民は見抜いている。

 首相の長男は総務省から衛星放送の認可を受けている東北新社の子会社役員も兼ねている。幹部4人との会食が集中した昨年12月は認可の更新時期であり、便宜を図ったとの疑念を呼んでもおかしくない。しかも接待はそれ以前から続いており、会食と東北新社絡みの許認可に関わる時期なども精査する必要があろう。

 首相は22日の衆院予算委員会集中審議で「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことについては心からおわび申し上げ、大変申し訳なく思う」と陳謝した。一方で、長男が東北新社に就職する際に総務省絡みの案件について「(関わらないよう)くぎを刺した」とも述べた。なぜ長男が接待に関わるようになったのか、首相は長男をただすべきだし、それができなければ長男の国会招致に応じるべきではないか。

 安倍晋三前政権では親しい者を優遇したと指摘された森友、加計学園や桜を見る会が問題となったが、今回の接待問題も同じ構図だ。人事権を含め総務省に絶大な影響力を持つ菅首相に、官僚が忖度(そんたく)した結果が長男らとの会食だろう。調査結果を急ぐのもまた忖度ではないか。首相は真相の徹底究明を指示すべきだ。そうでなければ行政への信頼を取り戻すのは難しい。



総務省接待/首相は疑惑解明に努めよ(2021年2月23日配信『神戸新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から、総務省幹部ら計13人が2016年以降、延べ39回の接待を受けていたことが同省の調査で分かった。タクシー券や手土産を受け取ったケースもある。

 国家公務員倫理規程は、許認可を受ける「利害関係者」からの金品贈与や接待を禁じている。長男が役員を兼ねる東北新社の子会社は総務省が許認可権を持つ衛星放送を手がけ、利害関係は明らかだ。

 同省はこのうち11人を処分する方針を固めた。ほかに山田真貴子内閣広報官も総務審議官当時に高額な接待を受けていた。特定事業者からの幹部接待が常態化していたことになり、厳正な処分は当然である。

 ただ問題の核心は、官僚が首相の身内を優遇し、行政の公正性がゆがめられたのではないかという点にある。安倍晋三前首相時代に国民の信頼を失墜させた森友学園、加計学園問題、桜を見る会の疑惑と同じく、官僚の忖度(そんたく)が疑われる事態だ。

 接待が集中した昨年12月は、子会社の衛星放送の認定更新直前だった。首相の権威を利用し、自社に有利な取り計らいを求める狙いがあったと疑われても仕方がない。

 利益供与が賄賂と認定されれば贈収賄事件に発展する可能性もある。処分だけで幕引きはできない。

 総務省は、当事者が否定したため行政への影響はなかったと結論づけた。身内に甘い印象は否めない。

 最も接待回数が多い秋本芳徳・前情報流通行政局長は、週刊文春の報道で問題が発覚した当初、利害関係者との認識はなかったと述べ、放送事業に絡む話題は「記憶にない」と答弁していた。だが、音声が公開されると一転して認めた。

 きのう国会質疑に応じた谷脇康彦、吉田真人両総務審議官も同様の答弁に終始した。曖昧な答弁で逃げ切ろうというなら甚だしい国会軽視である。総務省は第三者を入れて事実関係を再調査し、国会での全容解明に協力する必要がある。

 菅首相は国会で、公務員の違反行為に長男が関係したとして陳謝した。一方で「長男と私は別人格」と距離を置くが、それは通用しない。

 首相は総務相を務め、同省に強い影響力を持つ。長男は総務相秘書官を務めた後、東北新社に就職し、接待の半数に同席していた。倫理規程を熟知しているはずの官僚らが、同社の度重なる誘いに応じたのは首相を意識したからではないか。

 政治家の世襲を批判してきた首相が、身内優遇を黙認するのでは国民の信頼は得られない。総務省に徹底調査を指示し、全容解明に努めるべきである。身内も含めた振る舞いを反省しなければ疑惑は晴れない。



2021.02.23 08:00
【総務省接待問題】行政のゆがみを検証せよ(2021年2月23日配信『高知新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男が勤める放送事業会社による総務省接待問題を巡り、既に判明している幹部4人以外に9人の職員が会社側から接待を受け、計13人が関与していたと同省が報告した。総務審議官だった現内閣報道官も含まれる。会食件数は延べ39件となるとした。

 うち11人が国家公務員倫理規程上の「利害関係者からの接待」に該当すると判断し、人事院との調整を経て処分するという。
 武田良太総務相は、「行政がゆがめられた事実は確認されていない」と述べ、衛星放送の許認可権を巡る同省の判断に影響はなかったとの姿勢を示す。

 ではなぜ、公務員が懲戒処分の対象となるような接待を受けたのだろう。接待のすべてに長男が出席しているわけではないが、首相の身内が関わっていなければ応じなかったのでないかと考えるのが一般的ではないか。首相の影響力が背景にあり、官邸の顔色をうかがっていたとみられても仕方ない。

 思い浮かぶのは、学校法人「森友学園」に大阪の国有地が8億円余り値引きして売却されたケースだ。このときに指摘された官僚の忖度(そんたく)や自身の保身が、今回もあったのではないかと疑われてしまう。

 そうした疑念を晴らさなければならない。事実関係を明らかにして、行政がゆがめられていないかを客観的に検証する必要がある。

 先に事実上更迭された局長は、会食中に衛星放送に絡む話題が出たかについて「記憶にない」とかわしていた。それが音声データを示されると、「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と一転して認めている。

 首相が官房長官を務めた安倍前政権下では、「桜を見る会」前日の夕食会費問題や、森友学園を巡る国会質疑で、ともに100回を超える「虚偽答弁」を重ねてきた。国権の最高機関である国会での説明を軽視する態度がはびこっていることにがくぜんとする。その責任は重い。

 また、疑惑が浮上するたびに、調査や捜査を理由に詳細な回答を拒み、やり過ごそうとする態度が繰り返される。そこには説明責任を果たそうとする姿勢はうかがえず、信頼は得られはしない。

 首相は総務相時代に長男を秘書官に登用した。ここで幹部らとのつながりができたとされ、その後に総務省の所管行政に関係する放送事業会社に勤務している。確かに首相とは「別人格」ではあるが、官僚の見方はそれだけだったろうか。

 首相は、長男が関係して、公務員が倫理規程に違反する行為をしたとして陳謝した。だが、これで幕引きにはならない。身内であるならばなおさら、首相が解明を主導して十分に説明することが欠かせない。

 官僚人事権を誇示する首相の政治手法もあって、行政の公平性や透明性に厳しい視線が向けられている。安倍政権から続く政治の負の側面を拭い去る必要がある。疑念を持たれていることを忘れてはならない。



包み隠さず(2021年2月23日配信『高知新聞』-「小社会」)

 日本には大切な物を紙や布で包む文化がある。行きつけの店は焼き菓子を買うと、必ず店員さんが聞いてくれる。「お包みはどうなさいますか」。安い品でも上等な物を買う気分になる。

 別の店では逆の体験をした。手土産を買おうとしたら、「ご自宅用ですか」。包んでほしいとは言いづらくて困った。せめて「贈り物ですか」と尋ねてほしい。その点、「お包みはどうなさいますか」には気遣いがある。

 包むのは中身の保護だけでなく、見えにくくする、つまり隠す目的もある。贈り物も中身が見えない方が受け取りやすい場合が多い。包むという行為自体が気遣いなのかもしれない。作家の幸田文さんはエッセーで「『包む』には庇(かば)う心がある」と述べている。

 これはいい意味での庇いだろうが、世の中には包み、庇われては困るものがある。菅首相の長男らによる総務省幹部接待問題。長男は放送事業会社に勤務しており、同省も利害関係者と認めている。接待を受けた職員は10人を超えるという。

 どんなやりとりがあったのか、勤める会社に特別な計らいはなかったのか。権力者に近い人物が優遇されたり、周囲が忖度(そんたく)したりして行政がゆがめられた疑いは安倍前政権でも問題になった。うやむやにはできない。

 きょうは「ふろしきの日」でもある。日付の数字が「つつみ」と読めるかららしい。関係者は包み隠さず、国民の納得のいく説明を。



総務省接待問題 第三者機関で徹底解明を(2021年2月23日配信『西日本新聞』-「社説」)

 接待は幹部を中心に13人、延べ39回に及んでいた。公務員の倫理規程違反のレベルを超え、汚職もうかがわせる官民の癒着構図ではないか。これで決着というわけには到底いかない。

 放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男が関与した総務省の接待問題である。同省がきのう、驚くべき調査結果を国会に報告した。

 接待は秋本芳徳前情報流通行政局長ら当初の4人に加え、別の審議官級を含む9人が受け、5年前から続いていた。うち11人は職務上、首相の長男が「利害関係者」に当たるとして処分する方針を示した。他方で、事業の許認可への影響はなかったと結論付けた。

 直ちには認め難い。特定事業者に組織的に便宜を図った疑いはないのか。背景に首相の影響力やそれに対する「忖度(そんたく)」がなかったか。野党はさらに徹底追及する構えだ。当然だろう。

 首相はかつて総務相を務め、長男は秘書官の立場だった。現在、衛星放送を手掛ける東北新社子会社の役員である長男と秋本氏らに利害関係があることは調査を待つまでもなかった。

 首相は問題が週刊文春で報じられた当初「自分と長男は完全に別人格」と語った。秋本氏は「東北出身者らの懇談」などと接待を否定し、放送事業に関する話はなかったと釈明した。総務省は調査中を理由に「利害関係」を認めようとせず、武田良太総務相は調査の終了前から「放送行政がゆがめられたことは全くない」と言い放った。

 文春が接待時の録音データを報じ、放送事業が話題になったことが判明すると一転、総務省は利害関係を認め、処分に先立ち秋本氏と湯本博信前官房審議官の更迭人事を発表した。こうした経緯からみても、調査はずさんかつ不誠実極まりない。

 首相は国会で接待について「自分は全く知らなかった」と弁明する一方、武田総務相の下でさらに調査を進める考えを示した。だが、それで国民が納得できるだろうか。重大な疑惑が発覚しても真摯(しんし)に受け止めず、身内の調査で取り繕って幕引きを図る-という図式は、一連の森友・加計(かけ)学園問題と重なる。

 ここは第三者機関に調査を委ね、事実関係に加え、不祥事が続発する霞が関の体質など問題の背景まで解明すべきだ。

 菅政権のキャッチフレーズは「国民のために働く内閣」だったはずだ。今回は、首相自身の立場も含め、それに強い疑念が生じる事態である。透明性と説得力のある調査を命じる姿勢が首相になければ、国民の政治への信頼は揺らぐ一方だろう。

 首相は自らの責任が問われていることを深く自覚すべきだ。



菅政治の手法を学んだ息子と官僚の関係(2021年2月23日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★一連の総務省接待疑惑は早晩、国家公務員法違反のみならず贈収賄事件化するだろう。その根底にあるのは民主党政権が政治主導のためにつくった内閣人事局を、自民党と安倍政権が政権復帰後、都合よく解釈して官僚の人事権を政権維持のみならず権力保持に利用したり、人事権をかざして無理を通させ、政策をねじ曲げてきたからではないか。つまり、ゆがんだ人事権の掌握に最初の問題があったのではないか。民主党が崩壊し、官僚たちはしばらく政権交代がなくなると察知し、自民党の顔色さえ見ていればやっていけると考えたのかもしれない。それでこのゆがんだ人事査定がまかり通ってきた。

★そうでなくとも首相・菅義偉は総務相時代が政治家としての頂点で、あとは官房長官と首相という道を歩んでいる。官僚を人事で操り、自分に関わった側近官僚を重用。政策は前任の総務相・竹中平蔵の延長だった。しかし、官房長官時代に携帯電話の料金が高いとかみつき、首相になった最初の仕事も携帯電話の値下げだった。いずれも総務省と携帯端末業者の攻防戦が背後にあった。こうなれば郵便、通信、電波と巨大な利権と許認可を背景に官僚と業界をコントロールしてきた菅政治の手法が問われているのではないか。

★その手法を首相の息子は秘書官として間近に接し、帝王学を首相とも近い民間放送事業者・東北新社で発揮することは、別人格でできることではない。その薫陶を受けたことで、官僚たちも必要以上に便宜を図り、コロナ禍の中でも会食の時間を割いてきたのではないか。今後、総務省と首相は因果関係がないと言い続けるだろうが、国民がその説明を信じることはないだろう。首相は自助・共助・公助をうたうがこの政官民の関係に自助は全く見えてこない。



総務省の調査概要(2021年2月23日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

異常な接待漬け 根本にメスを


 放送事業会社「東北新社」に勤務する菅義偉首相の長男・菅正剛氏らによる総務省幹部への接待問題で、同省は調査の概要を国会へ報告しました。利害関係者からの接待を禁止した国家公務員倫理規程に違反した職員は12人にのぼり、接待は2016年からだけでものべ38回にもなることが明らかになりました。接待にどっぷり漬かった異常事態というほかありません。「放送行政はゆがめられてこなかった」(武田良太総務相)などの言い分に全く説得力はありません。これで幕引きを図るのではなく、疑惑を徹底解明すべきです。

主要な幹部がこぞって

 総務省の調査概要によると、接待を受けていた官僚は、すでに明らかになっていた同省事務方ナンバー2の2人の総務審議官、前情報流通行政局長、前官房審議官の4人のほかに、8人の幹部らもいたことが新たに分かりました。接待の回数が38回と当初言われた回数をはるかに上回っていたこともあまりに深刻です。放送行政に関係する部局を中心に総務省こぞって特定業者と癒着していたことはまともな行政の姿とはかけ離れています。これ以外に山田真貴子内閣広報官も総務審議官当時に接待されていました。

 国家公務員倫理規程は利害関係者から接待などを受けるのを禁止しています。幹部らが接待を受けたうえ、手土産やタクシー券まで受け取り、発覚まで同省に報告もしていなかったのは明らかな規程違反行為です。

 問題は一連の接待で放送行政がゆがめられていなかったかです。22日の国会で初めて答弁した2人の総務審議官らは業界全体のことは話しても個別のことは話していないと言い訳しました。しかし、昨年12月の接待の席でBSやCS、衛星放送の認可問題が話題になっていたことは、総務省も認めざるを得なくなっています。接待の時期は東北新社の子会社「スターチャンネル」の認定更新の時期などとも重なります。倫理規程違反にとどめず、放送行政にかかわる問題としての究明が必要です。

 総務省幹部は東北新社以外の事業者からは、こうした接待をほとんど受けていなかったといいます。菅正剛氏は菅首相が総務相だった06年から07年の大臣秘書官でした。接待を受けていた複数の幹部はそれ以来の付き合いだといいます。

 問われるのは自ら疑惑の調査に動こうとしない菅首相の姿勢です。首相自身、総務省に強い影響力があるといわれます。首相の意向も「忖度(そんたく)」して接待に応じ、ここまでまん延させていった可能性は濃厚です。武田総務相は、行政がゆがめられたことを全面否定しますが、何の論証もありません。トカゲのしっぽ切りのような処分で幕引きすることは許されません。徹底して真相を解明すべきです。

行政の公平性に関わる

 正剛氏をはじめ東北新社の関係者、総務省の幹部などを国会へ招致する時です。

 首相を忖度して、首相周辺の人物のために行政がゆがめられた疑惑は、安倍晋三前政権下での「森友」「加計」などと同様の「行政私物化」の構図です。ことは行政の公平性や中立性にかかわる大問題です。菅政権の基本姿勢を正すために、正剛氏による異常な接待問題の徹底解明が不可欠です。





首相長男の接待問題 責任の所在明確化を(2021年2月22日配信『茨城新聞』-「論説」)

行政の公正さへの不信感を再び招き、国会審議をないがしろにする姿勢も改めて浮き彫りにした。放送行政を所管する総務省幹部4人が、放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らの接待を受けていた問題は、国会での「虚偽答弁」疑惑に発展した。

 幹部のうち2人が事実上更迭されたが、責めを負うのは官僚だけなのか。会食接待に応じた背景に菅首相への「忖度(そんたく)」があったことは否定できない。その結果、放送行政がゆがめられていたとすれば、首相の進退にも関わる重大な事態だ。厳格な調査で責任の真の所在を明確にしなければならない。

 総務省によると、幹部4人が長男側と会食したのは、2016年から延べ12回に上り、タクシーチケットや手土産を受け取っていたこともあった。

 週刊誌の報道を受け、内部調査に着手したが、長男らの接待目的や総務省幹部が誘いに乗った理由、会食費用の負担割合などは曖昧なままだ。

 国家公務員倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」と定め、接待を受けたり、金品を受け取ったりする行為を禁止している。長男は、総務省から衛星放送の認可を受けている東北新社の子会社役員も兼ねる。会食が集中した昨年12月は衛星放送認可の更新時期であり、便宜供与の疑念を呼んでも仕方あるまい。

 総務省は、国会審議がストップしてからようやく長男が利害関係者にあたる可能性を認めた。幹部だけでなく菅首相への追及を回避したいとの思惑を感じてしまう。

 首相も長男は「別人格」と強調した上で、「誰であっても、国民から疑念を抱かれる行動は控えるべきだ」と一般論での答弁に終始した。

 だが、総務相時代には長男を秘書官に起用している。総務省側に「特別扱い」する意識が働きかねないことを自覚し、忖度がはびこらないよう言動で示す必要がある。人事権をちらつかせて官僚を従わせていては同様の問題が起きかねない。

 接待を受けた総務省の秋本芳徳情報流通行政局長は、許認可権を持つ衛星放送の話題が出たかどうかについて「記憶にない」とかわし続けた。接待の目的という問題の核心につながるためではないか。

 秋本氏は週刊誌が会食時のやりとりとする音声を公開しても認めなかったが、早期の幕引きを図るためか「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と答弁を変えた。

「記憶にない」発言は、うそが発覚した場合に言い逃れるための常套句(じょうとうく)であると国民は見抜いている。今回も「虚偽答弁」との批判は避けられない。国会軽視と指弾されよう。安倍晋三前首相と親しい者を優遇したと指摘された森友、加計両学園や桜を見る会を巡る問題への反省もうかがえない。

 武田良太総務相は秋本氏と、同じく接待を受けた湯本博信官房審議官を官房付に異動させるものの、両氏の国会招致に応じるとしている。当然の対応である。他の2人を含め懲戒処分が検討されているが、まずは国会での真相解明が先決だ。

 菅首相は総務省の調査にこそ忖度がないよう指示するとともに、自らの責任も率直に認めるべきではないか。そうでなければ行政への信頼を取り戻すのは難しい。



総務省幹部接待 深まる疑惑 徹底的な解明が必要(2021年2月22日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」に勤務する菅義偉首相の長男らによる総務省幹部の接待問題で、国会での「虚偽答弁」の疑いが出てきた。総務省は接待を受けた秋本芳徳情報流通行政局長ら2人を事実上更迭した。

 総務省は放送行政を所管し、首相の長男は衛星放送の認可を受ける側だ。秋本氏は接待の会食で衛星放送が話題になったかどうかについて「記憶にない」と国会で答弁。その後、会食時の音声が公開されると一転して話題になったと認めた。

 秋本氏の対応は国会軽視も甚だしい。首相の権威を背景に、許認可に絡む接待で放送行政がゆがめられたとの疑惑はさらに深まった。幹部の処分で幕引きを図ることは認められない。総務省はきょう問題の調査結果を報告するが、国民の不信感を解消するには真相を徹底的に解明する必要がある。

 問題は週刊文春が報道。総務省の調査によると、幹部4人が接待を受け、タクシーチケットや贈答品も受け取っていた。首相の長男は総務省から衛星放送の認可を受けている東北新社子会社の役員も兼ねており、国家公務員倫理規程が禁じる「利害関係者からの接待」の可能性が高い。会食が集中した昨年12月は認可の更新時期だった。放送行政の公正さに疑念を抱かれるのは当然だ。

 秋本氏は当初、会食の事実は認めたが、「東北出身者の懇談会」と説明。「首相の長男らが利害関係者に当たると認識していなかった」とし、衛星放送に絡む話題は「記憶にない」と突っぱねてきた。だが、12月の会食時とされる音声では衛星放送の審査を巡る自身の発言が明らかになった。首相の長男が「BS」と繰り返す音声を「自分だと思う」と認めたこともあり、もはや言い逃れできないと判断したのだろう。

 トップ官僚が2カ月前の政策に関わる会話を覚えていないというのは極めて不自然だった。自己保身に加え、首相に影響が及ばないよう忖度(そんたく)し、国会で不誠実な答弁を重ねたのではないか。総務省のこれまでの調査もずさんだったことが示され、疑惑の解明は進んでいない。

 秋本氏は同業他社と同様の会食はないとしており、首相の長男だから特別扱いした可能性もある。有力政治家の身内を優遇したり、周囲が忖度したりしたと疑われるのは安倍前政権時の森友・加計学園問題、桜を見る会を想起させる。「政と官」のいびつな関係が一向に改善されない状況は危機的だ。

 菅首相は「長男は別人格」と強調し、問題から距離を置いている。だが、首相は総務副大臣と総務相を歴任し、省内に今も強い影響力を持つ。しかも、長男は総務相時代に秘書官を務めていた。総務官僚が接待を断り切れない背景があることは容易に想像できよう。首相は疑惑が政治不信を深めている事態を重く受け止め、自ら率先して解明に努めるべきだ。



芝居がかった弁明(2021年2月22日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 総務省の黒田武一郎事務次官(元熊本県副知事)は、一昨年の就任に伴う職員訓示で切々と説いた。「省が監督や許認可権を持つ団体とは、節度ある関係を築くように」と

▼12月20日付という年の暮れの異例の登板は、日本郵政グループへの情報漏えいに絡んだ前任者の辞職による。黒田氏は「信頼回復への道は厳しいが、一致団結して乗り越えよう」とも呼び掛けたのだが、おそらく最前列で聞いていただろうこの人たちは、いったいどれほどの真剣さで受け止めたのか

▼放送行政を所管する総務省幹部4人が、放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らの接待を受けていた問題は、国会での虚偽答弁疑惑にまで発展している

▼衛星放送に絡む会話について、情報流通行政局長は「記憶にない」を繰り返していた。ところが、週刊文春が会食時の録音を公表すると、「天を仰ぐような驚愕[きょうがく]の思い」との芝居がかった弁明とともに、一転して「あったのだろう」と認めた

▼接待の全容などの総務省の調査結果はきょう報告される。官僚トップの黒田氏自らが関係者の聴取を担当したという力の入れようだが、部下の虚偽答弁疑惑で「信頼回復への道」がさらに険しくなったことは間違いない

▼副知事時代は県財政の健全化に大なたを振るった黒田氏である。総務省倫理の健全化にも、同様の手腕発揮を期待したいところであるけれども、どうだろう。もしかしたら、覚悟と忖度[そんたく]のはざまで、「すまじきものは宮仕え」と霞が関の空を仰いでおられはしまいか。



菅長男疑惑「ノーパンしゃぶしゃぶ」と同じ(2021年2月22日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★東京五輪・パラリンピック組織委員会の森騒動も一段落したといえようか。この間クローズアップされたのが、同委員会事務総長・武藤敏郎。元大蔵事務次官、日銀副総裁を歴任している。武藤の汚点は98年、大蔵省接待汚職事件(いわゆるノーパンしゃぶしゃぶ事件)が発覚。大蔵省官房長だった武藤自身は接待を受けたわけではなかったが、監督責任を問われて大臣官房総務審議官(現在の大臣官房総括審議官)に一時更迭され、後に主計局長を経て大蔵事務次官に就任した。

★総務省で放送行政や通信行政を所管する部署の幹部、総務審議官・谷脇康彦、同・吉田真人と情報流通行政局長・秋本芳徳、官房審議官・湯本博信が、東北新社に勤める首相・菅義偉の長男から通算12回もの接待を受け、タクシーチケットなどを受け取ったとの疑惑。総務省は20日付で秋本と湯本を官房付に異動させると発表。事実上更迭した。ただ総務省は「通常の人事異動という位置付けだ」と説明した。

★この問題が発覚して以来、首相は「長男とは別人格」と国会で説明してきたが、自身が総務相時代は秘書官をやらせており、首相も東北新社から献金を受けてきた関係。別人格が通るかどうかは世論動向だろう。武藤には迷惑な話だが、この総務省の接待疑惑は、23年前の大蔵省接待汚職事件以来の分かりやすい贈収賄事件に発展するのではないか。この問題は首相の長男ということを除いても元総務相秘書官が退官して衛星放送関連会社に転職し、当時の人脈を駆使して会社と役所をつなぎ便宜供与を図らせたという構図だ。無論、その背景に首相の影を感じたのは分かるが、首相と別人格の息子は秘書官後に口利き屋になったという話だ。首相が息子を助けるために首相と息子は別人格と閣議決定しても、その構造は変わらない。





官僚が胸に刻むべき誇りの高さ(2021年2月21日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 「官庁の中の官庁」と呼ばれる大蔵省(現財務省)で、財政金融の「素人」を自任する政治家が蔵相になった。就任演説がいまに伝わる。「私が田中角栄だ。尋常小学校高等科卒業である」。昭和37年の夏だった。

 ▼目の前にした官僚たちの多くは日本の最高学府、東大の門をくぐった俊秀だが、田中はお構いなしに続けたという。「トゲの多い門松をたくさんくぐってきて、いささか仕事のコツを知っている」(『田中角栄100の言葉』)。後に首相となる人の前日譚(たん)である。

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 ▼官僚機構のピラミッドが田中の与えた一撃で崩れるわけもなく、東大の威光にかげりは見えない。それゆえ東大の代名詞である本郷キャンパス(東京都文京区)の「赤門」が足元に不安を抱えていたとは意外だった。診断で耐震性の低さが分かり、閉鎖されている。

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 ▼加賀藩主が将軍家から妻を迎えるために、文政10(1827)年に建立した。観光客の記念撮影スポットとしても名高い、国の重要文化財である。折しも入試シーズンのさなか、受験生は正門から学内に入るため影響を受けないそうだが、気になるニュースである。

 ▼偶然にも、世上をにぎわす総務省幹部の接待問題では、事実上の更迭となった情報流通行政局長が東大卒という。狭き門をくぐるのに必要な偏差値の高さと、官僚が胸に刻むべき誇りの高さは、必ずしも比例しないらしい。霞が関もまた、足場の診断が必要だろう。

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秋本芳徳・情報流通行政局長

 ▼「敲(たた)いても駄目だ。独りで開けて入れ」と、夏目漱石『門』の一節にある。どこの学窓の門をくぐるかは問題ではない。何を学び、何を身につけるかは自分次第-という文豪の声が聞こえてくる。学問という「門」は、誰の前にも等しく開かれている。腰を低くしてくぐれ、と。



「菅官」接待(2021年2月21日配信『中国新聞』-「天風録」)

 菅大臣(かんだいじん)神社なるお宮が京都市内にあるらしい。菅大臣町という地名も見える。もちろん「学問の神様」菅原道真にゆかりの地だが、「すが」と読む名字の多い東日本に比べ、西日本では「かん」が優勢と聞く

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▲さしずめ「菅官(すがかん)接待」とでもつづめたくなる。菅義偉首相の長男による総務省幹部4人の接待問題である。官僚は、人事権を握る内閣におののき、忖度(そんたく)を強いられる。「気が利かない」との告げ口を恐れ、むしろ買って出た会食だったかもしれない

▲法に背く「官官接待」なら、2000年に法で厳しく規制された。補助金に格段の取り計らいを願い、地方自治体の側が裏金で中央官僚に一席設ける悪弊だった。衛星放送の利害が絡む今回も、構図は似ている

▲首相ジュニアのお膳立てに応じた総務省幹部のうち2人は役職を外され、官房付とやらに。籍はあれども席はなし、沙汰があるまで待て―というお達しらしい。更迭か左遷の類いだろう

▲3月の就職活動解禁が近い。えりすぐりがこぞって目指した「キャリア官僚」人気も陰りが隠せない。受験申込者数は本年度、現在の制度になって過去最少だった。幹部の姿に行く末を重ねて思うこともあるはずだ。



首相長男接待疑惑(2021年2月21日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

包み隠さず事実を語るべきだ

 放送事業会社「東北新社」に勤務する菅義偉首相の長男(元総務相秘書官)が総務省幹部を接待していた問題は、放送行政をゆがめた疑惑としての様相を深めています。会食中に衛星放送の話が出たことを「記憶にない」と言い張ってきた総務省幹部は、「BS」などの発言があったことを認めました。同社関連の衛星放送の認定更新の直前に、接待が続いたことも疑いを強めています。不可解な点が多すぎます。菅政権は、事実を包み隠さず明らかにすべきです。

ごまかしは成り立たない

 東北新社による総務省幹部への接待問題は『週刊文春』(4日発売)が報じました。同省事務方のナンバー2のポストである総務審議官の谷脇康彦、吉田真人の両氏、秋本芳徳情報流通行政局長、湯本博信官房審議官の4人が昨年10~12月、首相長男ら「東北新社」役員から4回接待されていました。同社の子会社スターチャンネルが昨年12月に総務省から業務認定の更新を受けており、接待との関係が問題になっています。

 野党の国会質問に、総務省は、接待は2016年から12回に上ることを明らかにしましたが、詳細は「調査」を理由に答えません。秋本局長は、昨年12月の会食で「BSやCSが話題になった記憶はない」という答弁を繰り返しました。これに対し文春オンラインが17日、この会食時に衛星放送事業に触れた音声データの一部を公表します。すると秋本局長は答えを一転させ、「(首相長男らから)BS、CS、スターチャンネルに関する発言はあったものと今は受け止めている」(19日)と認めました。総務省は、首相長男ら東北新社側も自分たちの発言と認めたことを説明しました。また秋本局長は、首相長男らが、国家公務員倫理規程で接待が禁止されている利害関係者にあたるとの認識もようやく示しました。国会に事実を隠ぺいし、不誠実な虚偽答弁を重ねてきた姿勢は極めて重大です。

 問題なのは、菅首相の政治家としての責任です。総務副大臣と総務相を務めた首相の総務省への影響力はいまも絶大とされます。吉田総務審議官や湯本審議官は、首相長男が菅総務相秘書官時代に知り合ったことを認めています。秋本局長は、他の放送事業者との会食は東北新社ほど多くないと述べています。幹部が接待に応じた背景として、「首相の威光」があったことは疑いの余地はありません。

 首相は東北新社の創業者と元社長から総額500万円の政治献金を受けていたことを認めました。首相は、同社との関係を国民に説明すべきです。総務省は秋本局長と湯本審議官を事実上更迭しましたが、幕引きを図ることは許されません。長男を含めた東北新社側の関係者4人、総務省幹部4人の国会招致は不可欠です。

「特別扱い」許されない

 総務省は22日に調査結果を国会に報告するとしています。その前に武田良太総務相が「放送行政がゆがめられたということは全くない」と断言したことは大問題です。結論ありきの、おざなりの調査で済ましてはなりません。

 行政がゆがめられ、首相周辺に近い人物が優遇される構図は、安倍晋三前政権下の「森友」「加計」「桜を見る会」と共通しています。「特別扱い」と「私物化」の政治を一掃することが急務です。





責任負うのは官僚だけか/首相長男の総務省接待(2021年2月20日配信『東奥日報』-「時論」)

 放送行政を所管する総務省幹部4人が、放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らの接待を受けていた問題は、国会での「虚偽答弁」疑惑に発展した。行政の公正さへの不信感を再び招き、国会審議をないがしろにする姿勢も改めて浮き彫りにした。

 幹部のうち2人が事実上更迭されたが、責めを負うのは官僚だけなのか。会食接待に応じた背景に菅首相への「忖度(そんたく)」があったことは否定できない。その結果、放送行政がゆがめられていたとすれば、首相の進退にも関わる重大な事態だ。厳格な調査で責任の真の所在を明確にしなければならない。

 総務省によると、幹部4人が長男側と会食したのは、2016年から延べ12回に上り、タクシーチケットや手土産を受け取っていたこともあった。週刊誌報道を受け、内部調査に着手したが、長男らの接待目的や総務省幹部が誘いに乗った理由、会食費用の負担割合などは曖昧なままだ。

 国家公務員倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」と定め、接待を受けたり、金品を受け取ったりする行為を禁止している。長男は、総務省から衛星放送の認可を受けている東北新社の子会社役員も兼ねる。会食が集中した昨年12月は衛星放送認可の更新時期であり、便宜供与の疑念を呼んでも仕方あるまい。

 総務省は、国会審議がストップしてからようやく長男が利害関係者にあたる可能性を認めた。幹部だけでなく菅首相への追及を回避したいとの思惑を感じてしまう。

 首相も長男は「別人格」と強調した上で、「誰であっても、国民から疑念を抱かれる行動は控えるべきだ」と一般論での答弁に終始した。

 だが、総務相時代には長男を秘書官に起用している。総務省側に「特別扱い」する意識が働きかねないことを自覚し、忖度がはびこらないよう言動で示す必要がある。人事権をちらつかせて官僚を従わせていては同様の問題が起きかねない。

 接待を受けた総務省の秋本芳徳情報流通行政局長は、許認可権を持つ衛星放送の話題が出たかどうかについて「記憶にない」とかわし続けた。接待の目的という問題の核心につながるためではないか。

 秋本氏は週刊誌が会食時のやりとりとする音声を公開しても認めなかったが、早期の幕引きを図るためか「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と答弁を変えた。

 「記憶にない」発言は、うそが発覚した場合に言い逃れるための常套句(じょうとうく)であると国民は見抜いている。今回も「虚偽答弁」との批判は避けられない。国会軽視と指弾されよう。安倍晋三前首相と親しい者を優遇したと指摘された森友、加計両学園や桜を見る会を巡る問題への反省もうかがえない。

 武田良太総務相は秋本氏と、同じく接待を受けた湯本博信官房審議官を官房付に異動させるものの、両氏の国会招致に応じるとしている。当然の対応である。他の2人を含め懲戒処分が検討されているが、まずは国会での真相解明が先決だ。

 菅首相は総務省の調査にこそ忖度がないよう指示するとともに、自らの責任も率直に認めるべきではないか。そうでなければ行政への信頼を取り戻すのは難しい。



総務省幹部更迭 事実関係の調査徹底を(2021年2月20日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らが総務省幹部と会食を繰り返していた問題で、同省の前局長が会食時に衛星放送事業に関し発言したことを認めた。また長男について、接待を受けることが禁じられている利害関係者であるとの認識を明らかにした。接待により放送行政がゆがめられたのではないかとの疑惑は一層深まった。

 総務省は前局長ら2人を事実上更迭。2人を含む幹部4人の懲戒処分を視野に、早期の収拾を図る。しかし、菅首相に配慮した組織ぐるみの対応だったのではないかとの疑念は払拭(ふっしょく)されていない。総務省は徹底的に調査した上、事実関係と責任の所在を明らかにするべきだ。

 長男は菅首相が総務相だった時代に秘書官を務めた。その後、放送事業会社に就職、総務省から衛星放送事業者の認定を受ける子会社の役員も務める。

 総務省によると、幹部4人が長男らと会食したのは2016~20年に延べ12回に上る。タクシーチケットや手土産を受け取っていたこともあった。

 週刊誌報道を受け、総務省は内部調査に着手。だが、長男らの接待目的や総務省幹部が誘いに応じた理由、会食費用の負担割合などは不明なままだ。

 会食が集中した昨年10~12月は衛星放送事業者の認定の更新時期。前局長は許認可権を持つ衛星放送の話題が出たかどうかについて「記憶にない」と国会で答弁していた。

 週刊誌側が会食の際の長男や前局長の発言を録音したとする音声をインターネット上で公開すると、前局長は発言があったことを認めた。これまでの国会答弁は「虚偽」だったのか。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」と定め、国家公務員が金銭・物品の贈与や接待を受けることを原則禁じている。総務省はこれまでも長男が利害関係者に当たる可能性があるとしていた。前局長自身が、利害関係者と会食し放送事業について発言したことを認めた事実は重い。

 前局長は同業他社の関係者との会食はなかったとしている。長男らによる接待の異例さが際立つ。会食に誘われ断らなかったのは、いまだに総務省内に大きな影響力を持つとされる菅首相の長男が相手だったからではないかとの疑いは拭えない。

 菅首相は長男について「別人格」などと述べ、接待問題は自身と無関係であることを強調している。しかし元秘書官でもある長男が倫理規程に反する行為に関わっていてもなお、道義的責任がないと言えるだろうか。

 長男が勤める放送事業会社の元社長らは12~18年、菅首相に対して計500万円を献金している。首相と長男、放送事業会社、総務省の間に不透明な関係がなかったかとの疑問も生じかねない状況だ。菅首相と総務省は事実関係を明らかにし、説明責任を果たすべきだ。



首相長男の接待/「更迭」は当然 徹底解明を(2021年2月20日配信『河北新報』-「社説」)

 総務省の幹部4人が放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男から接待を受けていた問題は、大きな節目を迎えた。
 武田良太総務相はきのう、秋本芳徳・情報流通行政局長ら2人を官房付に異動させる人事を発表した。事実上の更迭とみられる。このほかの2人を含む4人の懲戒処分も検討しているという。

 接待問題を巡っては、衛星放送の話題が会食で出たかについて、秋本氏はこれまでの国会答弁で「記憶にない」と答えていた。

 しかし、週刊誌が会食中の音声データを報じたのを受け、19日の衆院予算委員会では「今となっては発言があったのだろう」などと一転して認めた。

 国会で虚偽の発言をしていた疑いが強まった。更迭は当然だろう。総務省の調査もずさんだったということになり、野党は「組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)」と反発している。

 今回の人事が、追及を避けて世間の目をそらすためだとしたら、根っこにある疑惑隠しと言われても仕方がない。

 首相や周辺への配慮や忖度(そんたく)で、通信行政の公正さが失われなかったのかどうか、徹底調査を求めたい。

 首相は「長男は別人格」と説明するが、政治不信につながる疑念について、真偽をただすなどの指導力を発揮すべきではないか。

 衆院予算委では今月、接待問題を集中して取り上げた。総務省幹部が長男側と会食した回数は、2016~20年に延べ12回に上る。

 昨年12月に集中した会食では、いずれもタクシー券と贈答品を受け取っていた。

 国家公務員倫理規程は、利害関係者から接待を受けたり、金品を受けたりする行為を禁止している。長男は利害関係者に当たる可能性が高い。

 20年前に施行された国家公務員倫理法と倫理規程は、中央省庁の相次ぐ不祥事を受けて定められた。

 いつしか法令のチェックの目は甘くなり、空文化していたのかもしれないが、頻繁に手土産まで受け取るとは驚く。官僚の変わり身の早さなのだろうか。

 菅首相は、かつて総務相を務め、現在も省内に強い影響力を保っている。

 当時、長男を大臣秘書官に起用しており、総務官僚としてみれば今は民間人でも無視できない相手だろう。

 その背後に、首相に上り詰めた菅氏の存在を見ているのは想像が付く。会食の際に放送事業の話題になったとすれば、ただの会食では済まされまい。

 権力者とその周辺との関係で思い出すのは、安倍晋三前政権の時に起きた森友・加計学園問題だ。

 似通った構造が、やましい政策選択に結び付かなかったのか、国会で明らかにする必要がある。



総務省幹部の更迭 疑惑の解明はこれからだ(2021年2月20日配信『毎日新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らから総務省幹部が接待を受けた問題で、武田良太総務相は会食に同席した4人の幹部のうち、2人を官房付に異動させる人事を発表した。

 今後、国家公務員倫理審査会の調査を待って、他の幹部とともに懲戒処分も検討するという。

 だが、疑惑の解明はほとんど進んでいない。幹部の更迭で幕引きするわけには到底いかない。

 菅内閣の対応は、この問題でも後手に回っている。一連の報道を受け、あわてているのが実態だ。

 官房付となる秋本芳徳情報流通行政局長は早い段階で接待を受けた事実は認めていた。しかし、東北新社の放送事業が、その場で話題に上ったかどうかは「記憶にない」と国会で答弁していた。

 ところが、きのうになって一転して話題になったことを国会で認めた。

 文春オンラインが昨年12月10日に会食した際の会話を録音したデータを公開したため、ウソを貫き通せないと考えたのだろう。

 データには、首相の長男が「BS」などの言葉を繰り返し使っていた内容が録音されていた。

 「森友・加計」問題や「桜を見る会」の疑惑で、虚偽答弁があれだけ批判されたのを忘れたのか。同様の展開になっている。

 今回の問題の核心は、東北新社側が、首相の長男が同社の社員であるという立場を利用して、BSやCS事業の許可や認定を有利に進めようとしたのではないかという点にある。

 音声データで見逃せないのは、元総務政務官の小林史明・自民党衆院議員について、秋本氏が「どっかで一敗地にまみれないと」と語っていることだ。

 官僚の立場を逸脱した口ぶりに驚く。小林氏は別の会社のBS参入を推していたとされる。BS、CSの許認可をめぐり、総務省は一体どんな判断をしてきたのか。いっそう疑問を抱かせる発言だ。

 問題は利害関係者から接待を受けたという国家公務員倫理規程違反にとどまらない。そこに首相に対するそんたくはなかったのか。行政がゆがめられることはなかったのかが問われている。

 首相は厳正な調査を同省に指示し、疑惑を解明する責任がある。



総務官僚の接待 虚偽答弁は許さない(2021年2月20日配信『東京新聞』ー「社説」)

 菅義偉首相の長男らによる総務省幹部四人の接待問題で、政府側による国会での虚偽答弁がまたもや明らかになった。議会制民主主義を愚弄(ぐろう)する振る舞いだ。私たちは虚偽答弁を絶対に許さない。

 国会も随分なめられたものだ。総務省の秋本芳徳情報流通行政局長は、放送事業会社「東北新社」に勤める首相の長男らの会食接待を受けた際、「放送業界全般の話題が出た記憶はない」と国会答弁していた。しかし、音声データが公開されると一転「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と認めた。最初の答弁は虚偽だったことになる。

 今回は週刊文春の報道や、野党の追及により虚偽答弁だったと分かったが、なぜこのようなことが繰り返されるのか。権力中枢に長く座る首相への忖度(そんたく)か、国会を甘く見ているのか。そのいずれだとしても許されざる行為である。

 国会は国権の最高機関であると同時に、唯一の立法機関だ。国民の命を守り、暮らしをより良くするためには、国会で審議を尽くして、法律をつくる必要がある。

 その前提は政府側が正しい情報を示し、議員の質問に真摯(しんし)に答えることだ。政府側が間違った情報を示したり質問に正しく答えなければ、議論の方向を誤らせ、国民に多大な不利益を与えかねない。

 振り返れば安倍前政権下では虚偽答弁が繰り返された。「森友学園」への国有地売却を巡り、事実と異なる政府答弁は139回、「桜を見る会」前日の夕食会でも安倍晋三前首相による国会答弁のうち虚偽答弁は118回に上る。

 秋本氏らの国会対応の背景に、近年の国会での状況から、虚偽答弁でも乗り切れるとの誤った認識があるとしたら極めて深刻だ。

 東北新社の元社長らは、菅首相に計5百万円の個人献金を行っていた。首相自身と長男は別人格とはいえ、無関係とは言い難い。

 総務省幹部の接待時期は、同社の子会社が手掛ける衛星放送の認定更新の直前だ。政治献金や接待が放送行政を歪(ゆが)めることは絶対になかったと言い切れるのだろうか。

 武田良太総務相は秋本氏ら2人を大臣官房付に異動させた。事実上の更迭人事とされるが、これで幕引きとせず、法に基づいて厳正に対処すべきだ。

 国会は真相の徹底究明に向けて国政調査権を駆使すべきだ。もはや虚偽答弁を許してはならない。長男を含め総務省幹部を、虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われる証人として喚問すべきである。



ジャック・ニコルソンさん演じる私立探偵のもとに、謎の女性か…(2021年2月20日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 ジャック・ニコルソンさん演じる私立探偵のもとに、謎の女性から電話がかかる。先日もテレビで放送していたが、ハードボイルド調の傑作映画「チャイナタウン」のちょっと印象に残る場面だ

▼女性は警戒しながら「今おひとり?」。電話の周囲には複数の人間がいたのだが、探偵は言う。「誰だってひとりさ」。人はみな孤独であると言って、会話をつないだ。ぎりぎりかもしれないが、うそはついていない。職業上の倫理からか。うそをつかないことを自らに課した人の言葉のかっこよさである

▼こちらはどうもかっこ悪い。配慮してきたのは、倫理規程より権力だったのではないか。放送事業会社に勤める菅首相の長男らによる接待の問題である。放送業界に関する話題が出たかどうかについて、「記憶にない」と言っていた総務省の局長が、音声データが公開されると答弁を一転させ、「発言があったのだろうと受け止めている」

▼事実上の更迭となった。「記憶にない」は、意図的なうそではないかもしれないが、そんな昔の話でもない。虚偽答弁と言われても仕方がないだろう

▼本当に行政には影響はないのか。首相への忖度(そんたく)でなかったかも疑われよう。虚偽の答弁といい、前政権からの体質は一掃されたようには思えない

▼自らに何を課すか、1人になって考え直した方がいい人が政権にはいるのではないだろうか。



総務省接待問題 行政のゆがみ徹底検証を(2021年2月20日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 行政がゆがめられていないか。疑念は深まる一方である。

 菅義偉首相の長男らが総務省幹部らを接待した問題だ。秋本芳徳情報流通行政局長が、会食時の録音とされる音声を自身の声と認めた。

 長男は放送事業会社に勤め、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受ける子会社の役員も務めている。会食が集中した昨年12月は、別の子会社の衛星放送認定が更新される時期だった。

 12月10日の会食時とされる音声には、長男とされる人物が「BS」と繰り返す様子が記録されていた。秋本氏は当初、衛星放送に絡む話題は「記憶にない」としていたものの、一転して認めた。秋本氏は費用を払わず、タクシーチケットや贈答品も受け取った。

 免許が更新されたのは15日で、会食は5日前だ。更新直前に許認可権を持つ放送行政に絡む意見交換をしていたことになる。

 長男は国家公務員倫理規程が接待を禁じる「利害関係者」に当たる可能性が濃厚だ。

 幹部4人が長男側と会食した回数は、2016年以降で延べ12回に及ぶ。秋本氏はほかの放送事業者からの接待に応じたことはないとしており、長男が勤める会社を特別扱いしたのは明白だ。

 菅首相は総務副大臣と総務相を歴任し、省内に「隠然たる力」を保つとされる。総務相時代には自身の政策に異議を唱えた課長を更迭している。長男は総務相時代の秘書官でもある。

 幹部らは「首相の長男」という立場を忖度(そんたく)して、会食を重ねていたのではないか。放送行政がゆがめられていれば、森友・加計学園と同じ構造であり、政治と官僚の闇は深い。

 菅首相は「長男とは別人格」などとして、接待問題から距離を置いている。問われるのは、官僚人事などで権力を振りかざしてきた首相の政治姿勢である。

 免許更新などに特別扱いがあれば、贈収賄の疑いも出てくる。武田良太総務相は「全くない」と否定している。それならば、更新された過程などを詳細に検証し、国会に報告するのが筋である。

 野党は子会社に衛星放送の事業を認定した18年当時の経緯にも疑問があるとしている。徹底的な調査が欠かせない。

 武田総務相は幹部4人について、懲戒処分を視野に入れていることを明らかにしており、既に秋本氏ら2人を事実上、更迭した。処分だけで問題を終わらせることはあってはならない。



首相長男接待 総務省の国民軽視に驚く(2021年2月20日配信『新潟日報』-「社説」)

 これまでの説明や調査は一体何だったのか。報道を受け、国会などで答えてきた内容がいとも簡単に覆る。総務省のいい加減さにあきれるばかりだ。

 国会でのずさん対応は、国民軽視に等しい。事は行政の信頼性に関わる。22日には接待を受けた幹部が衆院予算委員会集中審議に出席する。国会審議や総務省の徹底的な調査で、事実関係を明らかにすべきだ。

 菅義偉首相の長男らによる接待問題を巡る総務省の国会での説明が揺らぎ、野党の厳しい批判を浴びている。

 問題は、放送行政などを所管する総務省幹部4人が、放送事業会社に勤務する首相の長男らから個別に接待を受けていたというものだ。

 国家公務員倫理規程が禁じる利害関係者からの接待の可能性が指摘され、放送行政がゆがめられたとの疑念を招いている。

 接待を受けた一人、秋本芳徳情報流通行政局長は17日の国会で、会食の際に長男が勤務している「東北新社」の事業や「BS」「CS」などの言葉をやりとりした記憶はないと述べた。

 ところが同じ日に公開された会食時とされる音声データでは長男が「BS」と連呼し、衛星放送事業審査を巡る秋本氏のものとみられる発言もあった。

 19日の衆院予算委で秋本氏は衛星放送に絡む話題について「今となっては発言があったのだろう」と一転して認めた。

 秋本氏は総務省調査に対し当初、「長男らが利害関係者に当たると認識していなかった」と説明していたが、19日には「利害関係者に当たる」との認識を示している。

 報道や音声データの公開がなされなければ、ごまかされたままだったのではないか。そんな不信感が膨らむ。

 武田良太総務相は19日の記者会見で、長男と会食した4人の幹部のうち、秋本氏と湯本博信官房審議官の官房付への異動を発表した。

 事実上の更迭とされるが、19日の衆院予算委で武田氏は、異動は「法案審査を控える中、適材適所の配置」と述べ、接待問題との関連は否定した。

 接待で「放送行政がゆがめられたということは全くない」とした答弁の撤回も拒否した。

 異動の背景には国会審議への影響を避けたい政府、与党の思惑があるとも指摘される。事実解明よりも、幕引きを急いでいるように見える。内向き、ご都合主義との印象が強く、やはり国民不在というほかない。

 看過できないのは、「長男とは別人格」などとして首相が人ごとのような姿勢に終始していることだ。

 長男は首相が総務相時代に秘書官を務めていた。首相は自ら総務省への影響力をアピールしてきた。そうした中で、野党からは「幹部は、首相の息子だから会食を断れなかったとしか思えない」との声も上がる。

 首相は接待問題にしっかり向き合い、事実解明に指導力を発揮すべきだ。他人任せの逃げは許されない。



江戸時代の「誹風柳多留」は、庶民…(2021年2月20日配信『福井新聞』-「越山若水」)

 江戸時代の「誹風(はいふう)柳多留(やなぎだる)」は、庶民の投句を選考した川柳集である。老若男女の生きざまや暮らしぶり、人々の心理や感情の機微が軽妙かつ人間味あふれるタッチで描かれている

▼167編も刊行され、名句は数え切れない。ここでは幕府や藩の役人を皮肉った句を紹介する。「役人の子はにぎにぎをよくおぼえ」。賄賂はもらい慣れており、生まれた子供も「にぎにぎ」はお手のもの。寛政の改革で「柳多留」から削除されたエピソードがある

▼次にこの一句。「鯛(たひ)ぐらゐただうんうんと御挨拶(ごあいさつ)」。おめでたいタイの進物ぐらいでは無愛想にうなずくだけ。現金でなければ喜ばない役人根性にチクリと嫌みを言う。士農工商の身分があったご時世とはいえ、下々の目はごまかせませんよ―。作者の観察眼は鋭い

▼幾星霜が過ぎ、令和の時代になっても役人への接待攻勢は続いている。衛星放送の許認可権を持つ総務省幹部らが、放送事業会社社長らと会食していたことが分かった。しかも接待側に菅義偉首相の長男が同席したと聞けば、国民が疑惑の目を向けるのは当然である

▼当初、衛星放送に関する話題は「記憶にない」と答弁していた総務省幹部も、録音を示され一転して認めた。利害関係者による供応接待は法に触れる恐れもある。政府は間髪入れず2人の更迭人事を発表したが、毎度の「うやむや戦術」はご法度である。



言葉にウソはあっても声までは偽れない(2021年2月20日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 娘の命を奪い、闇に消えた誘拐犯を追うべく、父親はひとり、ある行動を起こす。頼るのは、耳が記憶している脅迫電話の声のみ。父はしかし言う。「同じ声を聞けばわかる」。横山秀夫さんの小説「64(ロクヨン)」である

◆言葉にウソはあっても声までは偽れない。「これはあなたの声でしょう」と突きつけられれば、観念するほかない。くだんの総務省幹部もあっけなく“落ちた”らしい

◆放送関連会社に勤める菅首相の長男らから接待を受けていた問題である。その席で総務省と利害のかかわる衛星放送の話はしなかったと幹部は説明してきたが、週刊文春が音声データを暴露し、追いつめられた

◆「それは確かにわたしの声だが、そういう会話は記憶にない」。われながら苦しい言い逃れだと、そのエリート官僚もわかっていたに違いない。一夜明けて、いかにも渋々と「発言はあったのだろう」と認めた

◆ウソはこれ一つでござります、という人の話はウソかホントか。ここぞのところで「記憶をなくす」政治家に官僚。毎度のことながら、よく言う。当座をしのげばそのうち、世間も忘れると思っているのだろう

◆まさか。国民の記憶力をなめてはいけない。だれがどんなウソを言ったのか、耳は忘れない。絶対忘れまい。



総務省幹部接待 首相が率先し事実解明を(2021年2月20日配信『山陽新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の長男らによる総務省幹部の接待問題が連日、国会で厳しく追及されている。放送行政の公平性がゆがめられた疑念も出ており、徹底的な調査による実態解明が求められる。

 発端は、放送行政を所管する総務省の幹部が、放送事業会社に勤務する菅首相の長男らから接待を受けていた、とする週刊誌報道だった。幹部は秋本芳徳情報流通行政局長、湯本博信官房審議官ら4人。総務省のこれまでの調査によると、接待は2016年以降、延べ12回に上り、飲食代のほか、タクシーチケットや手土産も受け取っていた。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程では、省庁の許認可や補助金の交付を受けた企業などの職務上の「利害関係者」から、金銭・物品の贈与や接待を受けることを禁じている。菅首相の長男は、放送事業会社「東北新社」に勤め、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けた子会社の役員も務める。同省は長男が利害関係者に該当する可能性を認めている。

 疑念が生じるのが、繰り返し接待を受けていた総務省幹部が、何らかの便宜を長男側に図っていたのではないかということだ。直近の昨年12月の会食の直後には、子会社が総務省から衛星放送の認可更新を認められている。

 会食で、衛星放送の話題が出たかどうかを国会でただされ、秋本氏は「記憶はない」と答弁したが、週刊誌が会食時の音声を公開すると一転して、衛星放送が絡む会話をしていたことを認めた。

 総務省はきのう、秋本氏と湯本氏を20日付で官房付に異動させると発表した。武田良太総務相は今後、調査結果を踏まえて4人を懲戒処分にする可能性を示している。

 ただ、4人の処分で幕引きにしてはならないだろう。国会で、武田総務相は「放送行政がゆがめられたということは全くない」と答弁したが、何の根拠も示していない。総務省は調査中を理由に、詳しい説明を避けている。

 野党は、長男の勤務先の子会社に、総務省が衛星放送の事業を認定した18年当時の経緯に不透明な点があることも指摘している。事業者を審査する基準の改正や、事業の認定は適正に行われたのか。総務省は徹底的に調査し、国会で説明を尽くさなければならない。

 菅首相は国会で、自身と長男とは「別人格だ」と強調したが、国民の感覚からはかけ離れている。長男は首相が総務相時代に秘書官を務めていた。首相の存在があるから、同省幹部が長男の誘いに応じたとみるのが普通だろう。

 安倍晋三前政権では森友、加計学園問題などで首相の身近な人物への優遇が疑われ、官僚の忖度(そんたく)も問題になった。今回の接待問題も同様の構図が見て取れる。菅首相は自らの責任を重く受け止め、先頭に立って事実解明を進めるべきだ。



首相長男の接待問題 公平損なう忖度またか(2021年2月20日配信『中国新聞』-「社説」)

 放送行政を所管する総務省の幹部が、放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らから高額接待を受けていた問題で、きのう政府は同省の局長ら2人を事実上更迭すると決めた。

 週刊誌が公開した、会食時の録音とされるやりとりの音声について、この局長と首相長男の双方が自らの声と認めている。

 利害関係者から接待・金品の受領を禁じた国家公務員倫理規程に抵触するのは間違いない。

 行政の公平性を揺るがす重大問題である。しかもその背景に官僚の「忖度(そんたく)」が働いたことも疑われる。

 というのも菅首相は、総務副大臣と総務相を歴任しており、今も同省に影響力が強いとされる。総務相時代には長男を大臣秘書官にしてもいた。

 そのような事情をくんだ官僚が首相長男からの誘いを断れなかったばかりか、首相側に配慮して国会で「虚偽答弁」をした疑いがある。

 安倍政権時にも森友・加計学園問題でみられた忖度政治ではないか。

 行政への信頼を損なう疑惑である。接待された局長や審議官ら幹部4人の更迭、処分で幕引きとはならない。首相長男らにも国会で事情を聴くなどして、徹底的に解明せねばならない。

 当然、首相も国会で説明した上で、自らも責任を取らねばなるまい。

 首相の長男は、番組制作や衛星放送などの会社「東北新社」に勤務している。その子会社は総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けており、首相長男が取締役でもある。週刊誌が公開した、昨年12月の会食時とされる音声では「BS」などの言葉を連呼していた。衛星放送事業が話題だったのだろう。

 一方、接待で会食費やタクシー代の提供を受けていた局長はこれまで「要望を受けた記憶はない」などと答弁。おとといも国会で衛星放送の話題は「記憶にない」と、かわしていた。

 ところがきのう一転、放送に絡む話題を認めた。首相長男についても「利害関係者だ」とした。接待を受けて、許認可権を持つ放送行政に絡む意見を交わしたことが明らかになった。

 「虚偽答弁だ」という批判は避けられない。背景には菅首相への波及を回避する意図もあったのか。行政をゆがめた疑惑として追及せねばならない。

 献金についても野党は問題視している。菅首相は東北新社の創業者親子から、2018年までに計500万円の個人献金を受けていた。数回にわたって会食したことも認めている。

 首相長男らによる接待問題について、政府は「調査中」を理由に具体的な説明を避け、曖昧な答弁を繰り返してきた。また菅首相も「私と長男とは別人格だ」「長男にもプライバシーがある」などと述べて、問題から距離を置いていた。

 ところが「音声」が決定打となり、疑惑は一気に深まった。

 モリカケ疑惑であれほど問題になったのに脈々と続く忖度政治に驚き、あきれるばかりだ。

 首相長男の国会招致を、野党が求めてきたが、これまで与党は応じていない。だが、真相の解明には不可欠である。

 別人格だという長男を、菅首相もかばい立てはするまい。政治不信をこれ以上深めぬよう、疑惑解明を主導すべきだ。



総務省幹部接待 責任の所在明確化を(2021年2月20日配信『佐賀新聞』-「論説」)

 行政の公正さへの不信感を再び招き、国会審議をないがしろにする姿勢も改めて浮き彫りにした。菅義偉首相の進退が問われるほどの重大な事態だ。

 放送行政を所管する総務省幹部4人が、放送事業会社「東北新社」に勤める首相の長男らの接待を受けていた問題は、国会での「虚偽答弁」疑惑に発展した。幹部のうち2人が事実上更迭されたが、責めを負うのは官僚だけなのか。会食接待に応じた背景に首相への「忖度(そんたく)」があったことは否定できない。首相は自身を含め責任の真の所在を明確にすべきだ。

 総務省によると、幹部4人が長男側と会食したのは、2016年から延べ12回に上り、タクシーチケットや手土産を受け取っていたこともあった。

 週刊誌の報道を受け、内部調査に着手したが、長男らの接待目的や総務省幹部が誘いに乗った理由、会食費用の負担割合などは曖昧なままだ。

 国家公務員倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」と定め、接待を受けたり、金品を受け取ったりする行為を禁止している。

 長男は、総務省から衛星放送の認可を受けている東北新社の子会社役員も兼ねる。会食が集中した昨年12月は衛星放送認可の更新時期であり、放送行政への影響について疑念を呼ぶのは当然だ。総務省は、国会審議がストップしてからようやく長男が利害関係者にあたる「疑義は否定できない」との認識を示した。幹部だけでなく、菅首相への追及を回避したいとの思惑を感じてしまう。

 首相も長男は「別人格」と強調した上で、「誰であっても、国民から疑念を抱かれる行動は控えるべきだ」と一般論での答弁に終始した。

 だが、総務相時代には長男を秘書官に起用している。総務省側に「特別扱い」する意識が働きかねないことを自覚するとともに、行政をゆがめる忖度がはびこらないよう言動で示す必要がある。人事権をちらつかせて官僚を従わせていては同様の問題が起きかねない。

 接待を受けた総務省の秋本芳徳情報流通行政局長は、許認可権を持つ衛星放送の話題が出たかどうかについて「記憶にない」とかわし続けた。接待の目的という問題の核心につながるためではないか。週刊誌が会食時のやりとりとする音声を公開しても認めなかったが、同省上層部が隠しきれないと判断したのか、「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と答弁を変えた。

 不祥事が起きるたびに聞かされる「記憶にない」発言は、うそが発覚した場合に言い逃れするための常套句(じょうとうく)であると国民は見抜いている。今回も「虚偽答弁」との批判は避けられない。国会軽視と指弾されよう。

 安倍晋三前首相と親しい者を優遇したと指摘された森友、加計両学園や桜を見る会を巡る問題への反省もうかがえない。

 武田良太総務相は秋本氏と、同じく接待を受けた湯本博信官房審議官を官房付に異動させると発表した。他の2人を含め、懲戒処分を視野に入れているというが、真相解明前に国会質疑から遠ざけ、幕引きを図るとしたら容認できない。

 菅首相は総務省の調査にこそ忖度がないよう指示するとともに、自らの責任を率直に認める必要がある。そうでなければ行政への信頼を取り戻すのは難しい。(共同通信・鈴木博之)



もてなされたらお返しするのが世間の常識(2021年2月20日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 鳥、バラの花、エメラルド、香水、そして左足…。舞台となった閉ざされた島では何かが一種類ずつ消えていく。実体としてなくなるのではなく、人々の記憶から消滅するのだ

▼小川洋子さんの小説『密[ひそ]やかな結晶』(講談社文庫)。国際的な評価も高く昨年、英国の文学賞で翻訳書部門の最終候補に残った。<わたしを含めて、みんな実に簡単にいろいろなことを忘れることができる>-。そんな一節が印象に残る

▼随分前に読んだ作品を思い出したのは、まるでその島の住人のように「簡単に忘れる」総務省局長の答弁を聞いたからだ。菅義偉首相の長男らによる接待問題である。「文春オンライン」が公開した会食時の音声への見解にはびっくりした

▼局長は音声の一部を「自分の声」と認めたものの、所管する衛星放送について話したかは「記憶にない」。2カ月ほど前の会食で、首相の長男とされる人物が「BS」と繰り返しているにもかかわらず、覚えていないとかたくなに主張した

▼政治家や官僚が都合のいいように記憶を操る姿はおなじみだが、ここまであからさまなのは珍しいのでは。さすがにこれでは持たないと思ったか、きのうになって「発言があったのだろうと受け止めている」と奇妙な言い回しで渋々認めた

▼放送事業会社に勤務し、衛星放送を扱う子会社の役員も務める首相の長男は、接待だけでなくタクシーチケットや贈答品も局長ら幹部に渡した。もてなされたらお返しするのが世間の常識だろう。さて、今回のお返しは?



[首相長男接待] 実態解明へ徹底調査を(2021年2月20日配信『南日本新聞』-「社説」)

 放送行政を所管する総務省幹部が、放送事業に携わる菅義偉首相の長男らから接待を受けていた問題に批判が高まっている。

 接待の時期は長男が関わる衛星放送の認可更新の直前に集中していた。野党は首相の影響力を背景に放送行政がゆがめられた可能性があるとして、追及を強めている。

 総務省は接待された幹部4人のうち2人を事実上更迭した。他の2人も含めて懲戒処分も視野に入れ、早期の幕引きを図りたい考えだ。

 しかし、官業癒着による恣意(しい)的な行政が行われていないことが明らかにされない限り、行政への不信は払拭(ふっしょく)されない。実態解明へ徹底した調査が求められる。

 首相の長男は放送事業会社「東北新社」に勤務し、総務省から衛星放送の認可を受けている子会社の役員も務めている。

 今月初め、長男らが東京都内の料亭などで昨年10~12月に総務省幹部4人を接待していたことが発覚した。最後の接待の翌日、子会社の衛星放送の認可更新が認められていた。その後の総務省の調査で、2016年以降、長男らとの会食は延べ12回に上り、タクシーチケットや贈答品を受け取っていたことも判明した。

 そのうちの一人、秋本芳徳情報流通行政局長は衆院予算委員会で、長男との会食で許認可権を持つ衛星放送に絡む話題が出たかどうかを問われ、いったんは「記憶はない」と述べた。

 しかし、秋本氏が接待を受けた際の録音として、長男とされる人物が「BS」と繰り返す音声などが公開されると一転し、これを認めた。長男も「自分だと思う」と話しているという。

 総務省は、長男は国家公務員倫理規程で接待が禁じられる「利害関係者」に当たる可能性があるとしている。許認可権のある幹部が接待会食を受け続けたのは、公平性に疑念を生じさせるあるまじき行為である。

 一方、野党は長男の接待に幹部が応じたのは「首相への忖度(そんたく)」による特別扱いだと批判を強めている。首相は総務副大臣、総務相を歴任し総務省に強い影響力を持ち、総務相当時の政務秘書官は長男が務めていた。

 加えて、総務相時代に意に沿わない課長を更迭するなど人事権を使って官僚を従わせてきた。首相の存在が官僚の忖度を生んだのではないかとの疑念がある。安倍晋三前首相に近い人物が不自然に厚遇された森友、加計両学園問題を思わせる。

 首相はこれまでの国会質疑で長男は「別人格」として議論を拒んできた姿勢を改めるべきだ。その上で自らの責任を含め、実態解明に積極的に協力して政治にも向けられている国民の不信を払拭しなければならない。



[総務省幹部更迭] 首相は率先して説明を(2021年2月20日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 総務省幹部が放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らから接待を受けていた問題で、同省は幹部2人を事実上更迭する人事を発表した。

 更迭された一人、秋本芳徳情報流通行政局長は当初国会で、接待の際、衛星放送についてのやりとりがあったかの「記憶はない」と答弁。接待時のものとされる音声が公表されその一部を自らの声と認めた後も、衛星放送に絡む発言は「記憶にない」と主張していた。

 19日の衆院予算委員会で秋本氏は一転、やりとりを認めた上で「私の記憶力不足と不適切な発言があったという点は反省している」と述べた。あくまで当初の説明と食い違いはないとの強弁だ。

 さらに秋本氏は、長男が国家公務員倫理規程に定める「利害関係者」に当たるとの認識も示した。許認可権限を持つ官僚が、許認可を受ける側の関係者と会食を繰り返していたということだ。接待により放送行政がゆがめられたとの疑念はさらに強まった。

 同時に、政府側による国会での「虚偽答弁」がまたも繰り返されたことになる。

 森友学園問題では、当時の財務省理財局長らが国会で、交渉記録が「ない」などとする虚偽答弁を計139回繰り返した。加計学園問題では、元首相秘書官が「記憶にない」とした地元自治体担当者らとの面会が明らかになった。

 官僚らの間に、国民に真摯(しんし)に説明することを避け、政権中枢への忖度(そんたく)と強弁を繰り返す思考がまん延している。国会と国民を軽んじるこうした姿勢は断じて容認できない。

■    ■

 長男の勤務する会社の元社長は、菅首相自身も政治献金を受け数回会食した間柄だ。

 「利害関係者」であるにもかかわらず接待に応じた官僚らに、首相側への忖度がなかったとは考えにくい。総務省は今後接待を受けた他の幹部も含め懲戒処分を検討するというが、首相も紛れもなく当事者であり、接待を受けた官僚のみを更迭や処分して済む問題ではない。

 だが首相は、長男を「別人格」と強調した上で、「国民から疑念を抱かれる行動は控えるべきだ」との一般論で追及をかわした。極めて不誠実な対応だ。

 接待に関する「虚偽答弁」にもかかわらず、政府は放送行政のゆがみはなかったとの答弁を撤回していない。ならば首相が率先して説明し国民の疑念を晴らすべきだ。野党が要求する長男らの国会招致や、第三者委員会による調査はその一助となるはずだ。

■    ■

 新型コロナウイルス対応で国民に自粛を求める中、深夜に飲食した与党5議員が相次ぎ議員辞職・離党した。「政治とカネ」を巡る汚職や公選法違反事件などの不祥事も続いている。国民の目には、衆参で圧倒的多数を占める巨大与党の「おごり」に映る。

 今回の幹部更迭も、予算案や放送法改正案審議などへの影響を最小限にしたいとの思惑とされ、接待問題との関連を政府は公式には認めていない。22日には総務省の再調査結果が報告されるが、それで幕引きを図るなら「おごり」への厳しい目は続くだろう。





総務省接待問題 癒着の疑惑が拭えない(2021年2月19日配信『北海道新聞』-「社説」)

 放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男による総務省幹部の接待問題で、同省の秋本芳徳情報流通行政局長と長男らが会食した際のやりとりとされる音声が週刊文春の報道で明らかになった。

 音声には「今回の衛星の移動」「BS」など放送事業との関連をうかがわせる発言がある。

 総務省は音声の一部について秋本氏が「自分の声だ」と認めたと国会に報告した。

 国会で秋本氏は長男が勤務する東北新社の事業が話題に上った記憶はないと答弁してきた。これが虚偽だった疑いが濃くなった。

 総務省は放送行政を所管し、元総務相の首相は同省に強い影響力を持つ。旧態依然の政官業の癒着構図が浮かびつつある。

 政府は不透明な接待がなぜ行われ、どんな会話が交わされたかを徹底的に調べなければならない。

 文春によると、音声は昨年12月10日に長男と秋本氏が会食した際に録音された。

 この5日後に、東北新社の子会社が運営する「スターチャンネル」が5年に1度の認定更新を総務省から受けている。

 会食時期に加え、音声に残る生々しいやりとりを見れば、癒着が疑われるのも当然だろう。

 秋本氏は音声の一部を認めながら、衛星放送に絡む発言は「記憶にない」と説明しているという。

 安倍晋三前政権でも、加計問題で元首相秘書官が関係者との面会を「記憶にない」と否定した。疑惑から言い逃れる官僚や政治家が使うお決まりの文句だ。

 総務省の調査では、秋本氏ら幹部4人が長男と会食した回数は2016年から延べ12回に及ぶ。

 4人は放送行政を担当する。長男や同席した子会社社長を国家公務員倫理規程が接待を受けることを禁じる「利害関係者」とは思わなかったとの説明は、にわかに信じがたい。

 会食に応じたのも、あやふやな説明も、首相の威光を恐れて忖度(そんたく)が働いた結果ではないか。

 安倍前首相の妻や友人が関わる法人への優遇が指摘された森友・加計問題と同様に、行政の公正性がゆがめられた可能性がある。

 首相自身も東北新社の元社長らから12~18年に計500万円の献金を受けている。「長男とは別人格」と人ごとのように語るのではなく、疑惑の解明に指導力を発揮しなればならない。

 野党は音声の再調査と長男の国会招致を求める。立法府として真相究明に全力を挙げるべきだ。





菅首相長男と総務省 特別扱いの疑い強まった(2021年2月18日配信『毎日新聞』-「社説」)

 総務省幹部が菅義偉首相の長男から接待を受けていた問題で、同省幹部が長男を特別扱いしていた構図が浮かび上がってきた。

 長男は放送事業会社「東北新社」に勤める。長男ら同社幹部との会食は、昨年12月の3回を含め、過去5年で延べ12回に上っていた。手土産やタクシーチケットを受け取っていたこともあった。

 長男が役員を務める子会社は、総務省から放送事業者の認定を受けている。国家公務員倫理規程は「利害関係者」からの接待を禁じている。長男はこれに該当するだろう。倫理規程に違反した可能性が高い。

 同省幹部は国会で、他の放送事業者と同様の会食をしたことはないと語った。

 長男は、首相が総務相時代に秘書官を務めていた。首相は今も同省の人事を掌握し、強い影響力を持っている。同省幹部らは、首相の影を感じたからこそ長男の誘いに応じたとみるのが自然だろう。

 見過ごせないのは、昨年12月の会食時期だ。東北新社の別の子会社が手がける衛星放送の認定を、同省が更新する直前だった。

 また、長男が役員を務める子会社の「囲碁・将棋チャンネル」は約3年前にCS放送業務の認定を受けている。この時認定された12社16番組のうち、ハイビジョンでない放送はほかになかった。

 審査基準はハイビジョン化を進めるために改正されたばかりだった。しかし、ハイビジョンであるにもかかわらず認められなかった番組もあった。

 審査基準の改正や認定の過程で子会社への有利な取り計らいはなかったのだろうか。

 武田良太総務相は調査を終え次第、処分を行うという。

 だが、ことは倫理規程違反にとどまらない。首相や周辺への忖度(そんたく)で、行政の公正さや公平さが損なわれたのではないかという疑念が出ていることが問題の核心だ。安倍晋三前政権時に起きた森友・加計問題と似通った構造だ。

 首相は「長男は別人格」と無関係を強調するが、政治への信頼に関わる問題だけに疑惑を放置することは許されない。長男ら関係者の国会招致に応じるよう与党に指示すべきだ。全容を解明する責任が首相にはある。





総務省接待の実態解明を急げ(2021年2月17日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 総務省幹部が菅義偉首相の長男から接待を繰り返し受けた問題が国会で連日取り上げられている。国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、利害関係者からの供応接待や金品の贈与を禁じている。会食の目的や経緯を含め、実態を早期に解明していく必要がある。

 総務省は国会審議で幹部4人の会食への参加を認め、2016~20年にのべ12回にのぼったと説明した。昨年10~12月の4回は飲食代の提供のほか、タクシー券と手土産も受け取っていた。

 会食は谷脇康彦総務審議官が19年から3回、吉田真人総務審議官が20年に2回、秋本芳徳情報流通行政局長が16年から4回、湯本博信官房審議官が19年から3回だ。

 招待側は映像作成などを手掛ける東北新社の幹部と同社に勤める首相の長男で、彼らは衛星放送子会社の役員も務めていた。

 国家公務員倫理規程は飲食代を自ら負担する会食は認めるが、1回1万円を超える場合は事前届け出が必要だ。幹部の届け出は週刊誌の取材を受けた後だった。

 野党は接待が放送行政の公平性をゆがめた可能性を指摘する。昨年の会食直後に東北新社の子会社が総務省から衛星放送の認定更新を受けた点を問題視している。

 首相は国会で「国民から疑念を招くことは避けるべきだ。透明性の下で総務省がしっかり対応してほしい」と強調した。事実解明に自ら指導力を発揮すべきだ。

 総務省は当初、人事院の国家公務員倫理審査会が調査中だとして詳しい説明を避けた。政府内の調査を理由に、国会での事実解明を拒む対応は許されない。

 武田良太総務相は16日の衆院本会議で「一日も早く調査を終え処分し、結果を関係法令に基づき公表する」と述べた。同様の事例の有無も含め徹底調査すべきだ。

 昨年末は新型コロナウイルスの感染が再拡大し、政府は不要不急の外出自粛を求めていた。首相の長男の存在が会食参加の背中を押したのであれば、行政の公平性の観点から大きな問題をはらむ。





またも政治不信の火種が 首相長男の接待(2021年2月14日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長人事や、新型コロナワクチンの報道に埋もれがちだが、衆院予算委員会で見逃せない質疑が続いている。菅義偉首相の長男らが、総務省の複数の幹部を接待していた疑惑である。

 首相の長男は放送事業会社「東北新社」に勤務し、同社子会社は、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。この子会社社長を含む長男側が、放送行政を所管する総務省情報流通行政局長ら幹部4人を個別に接待していたことが明らかになってきた。国家公務員倫理規程が禁じる「利害関係者」からの接待に当たる可能性がある。行政をゆがめた疑惑も否定できない。まずは事実の徹底究明を求めたい。

 一方、菅首相は「私と長男とは完全に別人格」と答弁するなど、“われ関せず”の姿勢を装っている。だが、長男は菅首相が総務相時代の秘書官だった。政権にとっては公務員倫理を超えて、政治の信頼にかかわる問題であろう。首相が自身との関連を否定するならなおのこと、早期の調査に力を注ぐべきだ。

 総務省は12日の衆院予算委で、接待が指摘された幹部4人について、少なくとも2016年から延べ12回、首相長男側と会食したと説明した。昨年12月に集中した直近の会食ではタクシー券と贈答品を受け取っていた。幹部の一人は、費用を払わずに会食し、事後に返還したとも釈明している。

 12月の会食には首相長男と子会社社長が同席していた。同月は、子会社が18年に総務省の認定を受けた放送事業の更新期に当たっていた。まさに放送行政をつかさどる幹部が、事業者から個別接待を受けていたかたちである。

 野党は18年当時にさかのぼって経緯を追及する構えだ。当時の情報流通行政局長だった山田真貴子・現内閣広報官に対し、長男側との会食の有無など、調査が必要としている。山田氏は安倍晋三前首相の秘書官を務めた後、17年に局長に就任。菅首相が政権発足に当たり広報官に起用した。

 また、首相が代表を務める自民党支部には14~18年、長男が勤務する東北新社の当時の社長が計250万円を献金していたことも明らかになった。こうした事実を見る限り、総務相を経験して同省に強い影響力を持つとされる菅首相が、この問題に全く無関係とは言い難い状況に映る。

 「李下[りか]に冠を正さず」-権力者として疑惑を招くような行為を慎む。安倍前政権が再三にわたり自らを戒めてきた言葉である。菅首相も骨身に染みているはずだが、歴代最長の7年8カ月に及んだ前政権でも反省はついに生かされず、またも政治不信の火種が浮上してしまった。

 国民の落胆は共同通信社が今月上旬に報じた全国世論調査結果に表れている。内閣支持率は40%台を割り込んだ。政権への信頼を取り戻すためにも、菅内閣は他の重要懸案と併せ、接待疑惑の全容を速やかに解明する責務があろう。





【長男の官僚接待 】首相は逃げの姿勢通らぬ(2021年2月13日配信『高知新聞』-「社説」)

 首相の身内が優遇され、官僚が忖度(そんたく)する。そんな構図となれば、安倍前政権の体質をそのまま継承したような不祥事である。

 放送行政などを所管する総務省の幹部4人が、放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らから個別に接待を受けていたと週刊文春が報じ、国会で野党の追及が続いている。

 東北新社の子会社は、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。国家公務員倫理法に基づく倫理規程は「利害関係者」からの接待を禁じており、幹部4人が違反している疑いは濃厚だ。

 総務省は12日の国会質疑で、幹部らが長男側と会食したのは現時点の調査で2016年から延べ12回に及ぶと明らかにした。昨年12月の会食ではいずれもタクシーチケットと贈答品を受け取っていたとしている。

 ただ、会食費用を負担していたかどうかや、贈答品などを含む金額は「精査中」として回答を避けた。幹部らもこれまでに年1回程度の会食があったとは認めているが、「調査を受けている」として詳細の回答は拒否する場面が目立っている。

 総務省と人事院が連携して調査しているようだが、前政権でも繰り返された「身内の調査」で実態がどこまで明らかになるのか、国民には不信感がある。内部調査を理由に、国権の最高機関での説明を軽視する姿勢は許されない。

 首相の答弁姿勢も疑問だ。「長男とは完全に別人格だ」と反論し、具体的な説明を回避している。「別人格」には違いないとしても、自らは無関係だといわんばかりの逃げの姿勢が通る問題とは思えない。

 複数の幹部は、首相が総務相時代に秘書官につけていた長男と知り合ったという。

 加えて、人事権誇示にこだわる首相自身の政治手法も影を落としているのではないか。8年近く官房長官だった首相は、官僚操縦術に関して「反対するなら異動してもらう」と公言している。

 官僚が首相の影をうかがい、保身と忖度に走った結果、接待が実現したとみられても仕方があるまい。

 首相が代表を務める自民党の選挙区支部が14~18年、東北新社の当時の社長から計250万円の献金を受けていたことも分かっている。

 首相は、国民の政治不信がこれ以上増幅することがないよう説明を果たす責任がある。

 身内優遇が事実ならば安倍前政権時に発覚した森友、加計学園や「桜を見る会」を巡る疑惑と根が同じだろう。首相と周辺に対する官僚の忖度がはびこり、行政の公正さ、公平性が疑われる問題である。

 前政権では安倍晋三前首相による答弁のはぐらかしや強弁もあり、疑惑が究明されないまま次々に累積。国会の審議日程を圧迫した。

 今国会は、新型コロナウイルスという危機への対応に直面している。菅首相は疑惑と正面から向き合って早急に解明し、国民に十分説明するよう求める。





総務省幹部接待 首相は議論から逃げるな(2021年2月10日配信『東奥日報」-「時論」/『茨城新聞』-「論説」)

 衆院予算委員会は来年度予算審議の序盤を終えた。菅義偉首相は、放送事業会社勤務の長男が放送行政を所管する総務省幹部らを接待した問題で「民間人、別人格」と突っぱねるなど、中身の議論から逃げる姿勢を繰り返した。

 首相就任前の8年近い官房長官時代は「詳細は承知しない」「問題ない」で押し通し、ぶれない姿勢をアピールした。だが首相にこのスタイルは許されない。野党と四つに組む議論抜きでは、国民への説明責任を果たすことはできない。

 接待された総務省幹部4人のうちの1人は費用を払わずに会食してタクシー代も提供され、後に返金したと述べたが、金額は答えなかった。首相は放送事業会社社長が同郷の支援者だと認めたものの、それと長男の接待を「結び付けるのはおかしい」と反発。「長男や家族にも名誉やプライバシーがある」と総務省が調査中であることを盾に事実の確認を拒んだ。国権の最高機関より行政の内部調査が優先される道理などないはずだ。

 首相は総務副大臣、総務相を歴任し総務省に強い影響力を持つ。長男は総務相当時の政務秘書官だ。国民が疑念を抱くのは、首相自身を含む「政官業の癒着」ではないかという点だ。首相にはその自覚はあるのか。

 首相は「改革実行には更迭も辞さない」と人事権を振りかざし官僚を従わせてきた。この「恐怖支配」ゆえに官僚は、言われなくても首相の歓心を買うよう忖度(そんたく)を働かせる。首相は否定しても、官僚は長男と首相の威光を「結び付け」て接待に応じたに違いない。そうさせた原因は首相の政治手法にあるではないか。

 森友・加計学園問題の悪しき前例を繰り返さないためにも、自らの責任を重く受け止め、事実解明に積極協力すべきだ。

 首相は官房長官時代を合わせ8年以上官邸に君臨する。本人がいかに身を律しても、権力者周辺が「役得」のおこぼれに預かる魅力にあらがえない例は古今東西枚挙にいとまがない。「腐敗防止」のため権力者は、親族の行動まで律する義務があると考えるべきだ。

 政治責任を回避する首相の姿勢が目立った場面は他にもある。新型コロナウイルス対策のスマートフォン向け接触確認アプリ「COCOA(ココア)」が情報通知できない障害を国が4カ月放置した問題もそうだった。

 昨年9月の基本ソフト(OS)更新で3割の利用者に「濃厚接触」の通知が届かなくなり、障害確認は年明けになった。政府は国民に利用を再三呼び掛けながら責任を持った管理を怠り、開発、メンテナンスを業者任せにしていたのが原因だ。

 首相は「大変申し訳ない」と陳謝したが、自身に責任が及ぶ閣僚処分などは否定。通知停止により救える命も救えなかった例があるかもしれない。首相や閣僚は重大性の認識が欠けていないか。官僚を指揮し政府の管理体制を固めるのは当然政治の責任のはずだ。

 議論の入り口で防御を固める姿勢は、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言を巡っても際立った。首相は当初「詳細は承知しない」で通したが、世論の反発が高まり「あってはならない」「(国益に)芳しくない」と徐々に森氏をかばえなくなった。国会の先には国民がいる。首相はその認識で答弁すべきだ。



首相長男問題の質疑 官僚の答弁拒否も忖度か(2021年2月10日配信『毎日新聞』-「社説」)

 放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男が、総務省幹部を接待したとされる問題の解明が進まない。

 野党の質問に対し、総務省の関係者が、同省や国家公務員倫理審査会が調査中であることを理由に答弁を拒んでいるからである。

 これでは、かえって「もっと何かを隠しているのではないか」と国民の疑念が深まるばかりだ。

 首相も「長男は別人格」と繰り返し、まるで人ごとのようだ。

 総務省の幹部4人が昨年、東北新社の幹部と無届けで会食し、手土産などを受け取っていたという不祥事である。

 放送事業を所管する総務省の職員が、同社のような利害関係者から接待を受けるのは国家公務員倫理規程に違反する可能性が高い。 加えて会食には同社社員である菅首相の長男が同席していた。

 同社側には首相の長男という立場を利用して、事業の許認可などを有利に進める狙いがあったのではないかとの疑念がある。

 ところが会食に出ていたとされる総務省の幹部は当初、会食の事実を認めて一定の説明をしていたにもかかわらず、その後は一転して「調査中」の一点張りだ。

 警察、検察当局の捜査対象となっている関係者が、捜査への影響や、自身が訴追される恐れがあることなどを理由に、国会での答弁を拒む例はままある。

 だが倫理審査会は人事院の下に置かれた組織だ。国会答弁が審査会の調査の支障となるとは思えない。国会の場で国民に向けて説明することこそ公務員の責務だ。

 総務省幹部は、詳しく説明して長男問題が尾を引けば、菅首相のダメージとなり、その結果、自分は左遷されるかもしれないと恐れているのではないか。

 官僚の人事を思い通りに動かすことで権力を掌握してきた首相だけに、そんな疑いを抱く。そうだとすれば忖度(そんたく)政治の弊害である。

 先の衆院予算委員会では総務省側の答弁が不十分だと野党が反発して退席し、1時間以上審議が止まった。時間の空費は残念だ。

 この状況を変えるには、首相が総務省に「私のことは気にせず、きちんと説明を」と指示することである。それが首相が掲げる「当たり前の政治」というものだ。



総務省幹部の接待問題(2021年2月10日配信『福井新聞』-「論説」)
首相は事実解明に尽くせ

 「民間人、別人格」。菅義偉首相は、放送事業会社勤務の長男が放送行政を所管する総務省の幹部らを接待した問題を巡り、衆院予算委員会でこう突っぱねた。だが、国民の目には「首相の長男だから接待できた」と映っても仕方がない。さらには、接待を通じて放送行政がねじ曲げられた可能性はないのか、疑念は深まるばかりだ。

 接待を受けた総務省幹部4人のうち1人は、費用を払わずに会食しタクシーチケットももらい、後に返金したと述べたが、金額は答えなかった。「平均、年1回ほど機会を持った」とも答弁したものの、「(総務省などの)調査を受けている中なので、回答は控えたい」とした。国権の最高機関である国会の場よりも、行政府の内部調査が優先される異様な事態だ。

 首相は放送事業会社の社長が同郷の支援者だと認めたが、それと長男の接待を「結び付けるのはおかしい」と反発。「長男や家族にも名誉やプライバシーがある」と、これも総務省の調査を盾に事実確認を拒んでいる。総務副大臣、総務相を歴任し、長男は総務相当時、政務秘書官を務めていた。総務省に強い影響力を持つ首相だけに、自身を含めた「政官業の癒着」が疑われていることを認識すべきだろう。

 安倍晋三前首相は森友、加計学園問題で、自身や夫人に関係のある人物を優遇したとの疑惑が持たれ、いまなお解明されたとは言い難い。菅首相は官房長官時代を含め8年以上官邸に君臨し人事権を振りかざし官僚を統治してきた。森友、加計問題では官僚の忖度(そんたく)が指摘されたが、今回の接待問題も同じ構図ではないか。首相は否定しても、官僚は長男と首相の威光を「結び付け」て接待に応じたとみるべきだろう。自らの責任を重く受け止め、事実解明に尽くす必要がある。

 予算委では、他にも首相が政治責任を回避するようなシーンが目立った。一つは新型コロナウイルス対策のスマートフォン向け接触アプリ「COCOA(ココア)」の障害を4カ月も放置した問題だ。政府は国民に利用を再三呼び掛けながら、管理を怠っていた。通知の停止で救える命も救えなかった例があるかもしれない。首相は「大変申し訳ない」と陳謝したが、誰も責任を取っていない。

 もう一つは、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言に対する首相の姿勢だ。当初は「詳細は承知していない」だったが、「あってはならない」「(国益に)芳しくない」などと答弁を変えた。世論の反発を意識してのことだろうが、接待問題もしかり。国民が厳しい目を向けていることを自覚し答弁すべきだ。





首相長男の接待 「別人格」では通用しない(2021年2月9日配信『西日本新聞』-「社説」)

 「官民癒着」と疑われても仕方ない接待を受けていた総務省官僚の不謹慎とともに、菅義偉首相の政治姿勢が厳しく問われる疑惑である。徹底的な調査で真相を明らかにすべきだ。

 放送行政を所管する総務省の幹部4人が昨年10~12月、放送事業会社「東北新社」に勤める首相の長男や同社幹部から東京都内の料亭などで接待を受けていた-と週刊文春が報じた。帰宅時にはタクシー券や手土産まで受け取っていたという。

 国家公務員倫理規程は利害関係者の接待を受けたり、金品を受領したりすることを禁じている。費用を自己負担する会食でも1万円超の場合は事前届け出が必要なのに無届けだった。

 4人のうちの1人とされた情報流通行政局長は衆院予算委員会で、長男と会食したことや費用を負担していなかった事実を認めた。その上で「利害関係者ではないと認識していた」と釈明したが、本当だろうか。

 菅首相は第1次安倍晋三政権で総務相を務め、ふるさと納税制度の旗振り役だった。今なお総務省内に強い影響力を持つとされる。首相が看板政策に掲げる「携帯電話の料金値下げ」や「デジタル行政の推進」なども同省絡みの案件だ。

 長男は首相が総務相時代の大臣秘書官だった。かつて仕えた大臣が首相に上り詰めたという状況下で、その秘書官だった長男から公務員倫理に背く接待を受けたのは、まさに首相本人に対する配慮ではなかったか。

 そうだとすれば、首相の身内や友人が絡んで官僚の「忖度(そんたく)」が批判された安倍前政権の森友・加計(かけ)学園問題と同様の構図である。菅内閣は安倍政権の継承を掲げるが、こんな「負の遺産」まで丸ごと引き継いでいるとすれば看過できない。

 さらに理解に苦しむのは、疑惑に対する首相の対応である。国会で疑惑をただされた首相は当初「私と長男とは完全に別人格だ。長男にもプライバシーがある」「本来このような場(国会)でお答えすべきことではない」などと反論していた。

 こんな答弁が世間に通用するだろうか。さすがにその後は「私自身は全く承知していない。総務省が事実を確認してルールに基づいて対応すべきだ」と軌道修正したが、人ごとのような姿勢は変わっていない。

 共同通信社が6、7両日に実施した世論調査によると、この問題で首相の説明に「納得できない」は62・0%で「納得できる」(30・8%)の2倍以上に達した。最高権力者が、接待疑惑の渦中にある身内を「別人格で民間人」と言い募るのは無理だ。首相の誠意ある説明と国民が納得する対応を求めたい。





総務省接待問題 首相長男への忖度解明を(2021年2月8日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 忖度(そんたく)が働きかねない接待を受けて、政策が不当にゆがめられていないか。事実関係の詳細な調査が必要だ。

 総務省の幹部4人が昨年10~12月にかけ、菅義偉首相の長男らから接待を受け、費用を払わずに会食したことが分かった。

 長男が勤める放送事業会社の子会社は、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。接待には子会社社長らも同席。総務省の幹部には、放送行政を所管する情報流通行政局の秋本芳徳局長らが含まれていた。

 国家公務員倫理規程が禁じている「利害関係者」からの接待や金品の贈与に当たる可能性が高い。会社側は首相の長男を同席させて、許認可を受ける事業を有利に進めようとしたのか。

 秋本局長は衆院予算委員会で「(接待を受けた)当時は利害関係者に当たらないと認識していた」と述べ、後に利害関係者と分かって返金したと説明している。

 倫理規程は利害関係者との飲食で、自己の飲食費が1万円を超える場合は届け出を必要とする。総務省は費用超過の3人について事後に届け出をさせたという。

 不明な点が多い。まず、幹部らが接待に応じた理由だ。

 首相はかつて総務相を務めており、省内への影響力は維持されているとされる。長男は首相が総務相の時代に秘書官を務めており、10年以上前から幹部らと交流があったとみられている。幹部らは首相の長男に配慮して接待に応じた疑念は拭えない。

 次に接待の結果である。総務省が何らかの便宜を図っていれば贈収賄にもなりかねない。

 会食した昨年12月は衛星放送の更新時期に当たっていたとされる。衆院予算委で秋本局長は「その話題が出たか」との質問に対して、「記憶にない」と答えている。接待の内容と放送行政を綿密に調べる必要がある。

 秋本局長は予算委では「調査を受けている」として、接待に応じた理由や返金額、返金先など詳細を明らかにしていない。菅首相も「長男には、会社の調査があれば事実に基づき対応するように、と伝えた」などと述べるだけで、事実の解明に消極的だ。

 これでは済まされないだろう。森友・加計学園問題では、省庁幹部が安倍晋三前首相の妻や友人に忖度して、政策をねじ曲げた疑いが残っている。首相の身内に対する総務省幹部の対応に問題はなかったのか。事実を徹底的に解明しなければ疑念は晴れない。



首相長男の官僚接待 政権の体質こそ問題だ(2021年2月8日配信『中国新聞』-「社説」)

 政治とカネの問題や時の政権に対する官僚の忖度(そんたく)が後を絶たず、国民の政治不信は強まるばかりだ。今度は総務省幹部4人が昨年10月から12月にかけ、菅義偉首相の長男らから高額接待を受けていた問題が発覚した。

 首相の長男は、番組制作や衛星放送などの会社「東北新社」に勤めている。その子会社は、放送行政を所管する総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。長男は子会社の取締役でもあり、まさに「利害関係者」と言えよう。

 利害関係者からの接待や金品の贈与は、国家公務員倫理規程で禁止されている。幹部4人は違反している疑いが濃厚だ。行政の公平性に対する信頼を揺るがす重大な問題である。

 総務省が中心になって調べているが、身内の調査で、どこまで実態を明らかにできるのか。お手盛りで済ませては不信感は拭えない。弁護士など第三者を交えて徹底的に解明すべきだ。

 この問題は週刊文春の報道で発覚した。幹部4人はそれぞれ料亭やすし店などで接待され、手土産やタクシーチケットも受け取っていた。首相の長男は全ての会食に参加したという。

 幹部の1人、秋本芳徳・情報流通行政局長は昨年12月、長男側の誘いに応じて費用を払わず会食した事実を国会で認めた。長男と、子会社の社長に接待された。にもかかわらず「利害関係者に当たらないと認識していた」。お金は後で支払ったという。昨年12月はちょうど衛星放送の更新時期だったとも指摘されている。

 この説明では到底納得できない。利害関係者だと本当に気が付かなかったのか。誰に接待を受けるか、きちんと調べなかったのか。首相の長男の誘いだから断りづらかったのか。接待を受けたのはこの時だけか…。疑問は次々に浮かんでくる。

 放送や郵便、携帯電話をはじめとする通信事業など、総務省が許認可などの権限を持つ分野は少なくない。そうした利害関係者との付き合いには、細心の注意が求められる。それだけにモラルのなさは信じられない。1人1万円超の会食の場合は、事前の届け出が必要だが、誰も届け出ていなかったという。

 菅首相の対応もあきれるほかない。当事者とも言えるのに国会答弁はまるで人ごとのようだ。確かに「長男は完全に別人格」という弁解はその通りである。しかし首相の威光を当てにしたり見返りを求めたりして長男に近付いてくる人はいるはずだ。自らの持つ権限や権力に対して、菅氏は無自覚すぎよう。

 しかも菅氏は、自らが総務相になった2006~07年、長男を公職である大臣秘書官にしていた。顔色をうかがう人が省内にいても不思議ではない。

 安倍前政権の時に発覚した森友、加計学園や「桜を見る会」の問題と根っこは同じだろう。身内や仲間、支持者を特別扱いする「政治の私物化」体質である。感化されたのか、官僚も国民ではなく、官邸ばかり見て仕事をするようになってしまい、ついには公文書の改ざんまで起きた。官房長官として支えた菅氏の責任も重い。

 そうした体質を引き継いだことこそ問題だ。国民の信頼を取り戻すため、抜本的に改める必要がある。菅氏は、その先頭に立たなければならない。



長男の官僚接待問題 首相は人ごとにせず真相究明を(2021年2月8日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 放送行政などを所管する総務省幹部が、放送事業会社勤務の菅義偉首相の長男らと会食し、費用を払っていなかった問題が浮上している。衆院予算委員会で野党が追及した。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程が禁じる「利害関係者」からの接待に当たる可能性がある。総務省は会食をしたのは事実だと認め、「法に抵触しないか調査している」とした。首相の長男という立場が関係した接待だったのではないかという疑念がある。首相は具体的な説明を回避しているが、人ごとのような対応は許されない。首相自ら事実関係について詳細に説明し、徹底的な調査で真相を究明しなければならない。

 週刊文春の報道によると、谷脇康彦総務審議官ら幹部4人は昨年10~12月に東京都内の料亭などで長男らから接待を受け、帰りにタクシーチケットや手土産を受け取った。4人のうちの複数の幹部は、首相が総務相時代に秘書官をしていた長男と知り合ったという。

 名前の挙がった幹部のうち秋本芳徳情報流通行政局長が、費用を払わず会食した事実を認めた。情報流通行政局は放送行政を所管し、首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」の子会社は総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。

 秋本氏は、所管行政に関わる企業の関係者が参加していたと分かり、事後に返金したと釈明した。倫理規程は利害関係者との会食で、自己の飲食費が1万円を超える場合に届け出を必要としている。費用が1万円を超えた幹部については、報道直前の2月2日に届け出をしたという。返金や届け出の経緯は不自然であり、手続きが適切に行われているとは言い難い。

 首相の対応は十分ではない。「総務省で事実関係を確認し、ルールにのっとって対応してほしい」と強調し、長男には電話で「調査には事実に基づき報告するように」と伝えたという。だが事実関係を確認したかどうかという問いには「内容は立ち入るべきではない」と答えた。行政の公平性が問題となっており、首相は率先して事実確認に取り組む立場だ。当事者意識に欠けると言わざるを得ない。

 「私と長男とは完全に別人格だ」と気色ばんで反論する。首相の存在が会食の実現に影響を与えた可能性は否定できず、無関係を主張してやり過ごすことはできない。事業の許認可を受ける側の企業が官僚を接待すれば、政策がゆがめられなかったかどうか疑われるのは当然だろう。首相は国民の疑念を重く受け止めるべきだ。

 与党の調査に対する後ろ向き姿勢は看過できない。政府参考人として秋本氏ら2人の出席を認めたが、総務審議官については応じなかった。安倍政権時代から官僚による官邸への忖度(そんたく)が問題視されている。政治や行政への信頼を取り戻すには、今回の問題の全容を早急に明らかにするしかない。



高官接待疑惑(2021年2月8日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 菅義偉首相の触れ込みは「たたき上げ」だ。秋田で生まれ、横浜市議を経て国政に足場を築く。自民党内で長らく、世襲候補の制限を訴えてきた

▲親の威光が直結する社会の不条理さを身をもって知る一人であろう。昨秋の党総裁選では対立候補が世襲議員であることを踏まえ、存分に違いをアピールした。ところがそんな首相の政治信条とは相いれない疑惑が足元に浮上。週刊文春が報じた長男の総務省幹部接待疑惑である

▲昨年10~12月、幹部4人を料亭などでもてなし、帰りにタクシーチケットや手土産を渡していたという。長男は放送事業会社に勤め、総務省は放送行政などを所管する。幹部側は国家公務員倫理規程に触れる恐れがある

▲首相が総務相当時、長男は秘書官だった。ただの民間人では高官4人をやすやすと接待に招くことなどできまい。役人にしても背後にいる父親の顔がちらついたはず。応じたほうが得策と計算しても不思議はない。行政をゆがめかねない癒着関係が見え隠れする

▲安倍晋三前首相の妻が名誉校長を務めていた学園の事件を思い起こさせる。権力の周辺者はとかく特権意識を持ちがちだ。その力が狙われるのも世の常だからこそ、身を律することが大事なのだが

▲首相は「私と長男とは完全に別人格だ」というが、無関係はありえない。身内ゆえの厳しさなくして、どうして国民に痛みを求めることができようか。信条に恥じない対応を。





[首相長男の官僚接待] 無関係では済まされぬ(2021年2月7日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 放送行政などを所管する総務省の幹部4人が、放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らから、個別に接待されていたことが明らかになった。

 週刊文春の報道によると、総務審議官や情報流通行政局長ら幹部4人が昨年10~12月、東京都内の料亭などで長男らからそれぞれ接待を受けた。帰りにはタクシーチケットや手土産を受け取っていた。手厚いもてなしぶりだ。

 長男が勤める会社の子会社は、総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。国家公務員倫理法に基づく倫理規程が禁じる「利害関係者」からの接待に当たる可能性がある。

 倫理規程では、利害関係者との会食で自分の飲食費が1万円を超える場合は届け出が必要だとしている。にもかかわらず費用が1万円を超えた3人について届け出がされたのは、報道前日の今月2日だった。

 それまでの間、必要な手続きが取られなかったのは、相手が利害関係者だという意識が働かなかったということなのか。常識的に納得できるはずがない。政策がゆがめられるようなことがなかったか、など疑問は尽きない。

 そもそも一事業者の会食の誘いに、総務省の幹部が相次いで応じるのも理解しづらい。首相の長男の誘いだったからこそ断らずに接待に応じた、と見るのが自然だろう。

 行政の公平性・公正性に疑念を持たれるような行為である。判明している4件以外にも接待はあったのか、など徹底的に調査し、厳正な処分を求めたい。

■    ■

 この問題への首相の対応は不誠実だ。

 衆院予算委員会で最初に取り上げられた際、首相は「私と長男とは、完全に別人格だ。長男にもプライバシーがある」と気色ばんだ。

 しかし、長男は首相が総務相時代に秘書官を務めていた。そのときに官僚たちとつながりができた可能性がある。

 総務省は、携帯電話料金引き下げなど首相が重視する政策を所管している。首相は総務副大臣や総務相を歴任し、今でも人事面を含め省内への影響力が大きいという。

 官邸は「首相とは『別人格』である長男と、一部の総務官僚の個別問題」と矮(わい)小(しょう)化して事態を乗り切る算段のようだ。だが、首相は決して無関係ではない。

 与党も、総務審議官2人の予算委招致に応じなかったのは真相解明への誠意に欠く。

■    ■

 安倍晋三前政権時には、森友学園や加計学園、桜を見る会、と「政治の私物化」が指摘される問題が相次いだ。

 いずれも首相に近い人が優遇されたり、そのために官僚による官邸への忖(そん)度(たく)があったりしたのではないか、との疑念が持たれた。

 政権を継いだ菅首相は、たたき上げであることを自負する。だが、自身の秘書官歴のある長男の官僚接待で今、厳しい目が向けられている。

 コロナ対策の遅れや相次ぐ不祥事で政治への不信感が高まっている。この問題を人ごとのように捉えたままでは信頼回復は難しい。



首相長男 官僚接待(2021年2月7日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

おかしいことの典型でないか

 総務省幹部が、衛星放送関連会社に勤務する菅義偉首相の長男から接待を受けていたことが問題になっています。国会で追及された首相はあれこれごまかしますが、無関係ではすまされません。総務相経験のある首相は同省に強い影響力があるとされ、長男は菅総務相の大臣秘書官でした。「一民間人」とはいえない立場です。首相は昨年9月の就任会見で、国民感覚から見て「おかしいことは直していかなければ」と力説しました。官民癒着の接待は「おかしいこと」の典型ではないでしょうか。首相は言明通り、徹底調査し、国民に説明すべきです。

首相の威光影響したのか

 総務省幹部接待は『週刊文春』(4日発売)が報じました。谷脇康彦総務審議官、吉田真人総務審議官、秋本芳徳情報流通行政局長、湯本博信官房審議官が昨年10~12月に衛星放送などを営む「東北新社」の役員らから個別に接待されていました。同社社員である首相長男は全ての接待に同席したとされ、総務省幹部は帰宅時にタクシーチケットや手土産を渡されたといいます。東北新社の子会社は、総務省に許認可権限がある衛星放送事業を運営しています。国家公務員倫理規程は、利害関係者から供応接待を受けることを禁止しています。一連の接待が禁止事項にあたる疑いは濃厚です。

 衆院予算委員会で秋本局長は、首相長男らと会食を認めたものの、「利害関係者ではないと認識していた」などと弁明しました。信じがたい話です。「調査中」「記憶にない」と述べ、説明を拒んでいることも重大です。武田良太総務相は、人事院の倫理審査会の調査後に「処分」するとしていますが、詳しい内容を語りません。

 菅首相は2005年に総務副大臣に就任し、06~07年は総務相を務めました。この間、大きな影響力を持ち、その力はいまも続いているとされます。大臣秘書官だった首相長男と、問題になっている総務省幹部との間に接点がなかったという方が不自然です。

 接待した側には、首相の長男という威光を使って事業を有利に運ぼうという思惑があったのではないか。総務省側は、首相の長男だったから誘いに応じたのではないか。普通の民間人は、総務審議官や局長に簡単に会えない上、長時間の会食などほぼ不可能です。今回の接待の背景は「首相の権威」の影響を抜きに考えられません。

 ところが首相の対応は総務省任せです。自身が長男に電話をした際も、事実を詳しくたださず、会社の調査に応じるよう言っただけです。自らの家族が関係し行政の公平・中立性を損ねた疑惑という認識がないのは深刻です。

 首相は就任時に「世の中には国民の感覚から大きくかけ離れた数多くの当たり前でないことが残っている」と強調し、既得権益の打破をうたいました。その姿を国民は忘れていません。

ますます信頼が失われた

 安倍晋三前政権下では、首相や家族に近い人物・企業が優遇された「森友」「加計」「桜」疑惑が噴出し、解明はいまも決着していません。これらの疑惑では、官僚の忖度(そんたく)や情報隠蔽(いんぺい)なども大問題になりました。コロナ禍で政治への信頼が極めて重要な時に、接待問題で国民に新たな不信を広げた菅政権の姿勢が厳しく問われます。





首相長男の接待 疑惑にふたは通らない(2021年2月6日配信『北海道新聞』-「社説」)

 菅義偉政権に政治不信を招きかねない問題が新たに浮上し、新年度予算案の審議に入った衆院予算委員会で野党が追及した。

 放送行政を所管する総務省の幹部4人が放送事業会社「東北新社」に勤める菅首相の長男らから接待を受けていた。

 国家公務員倫理法に基づき利害関係者からの接待を禁じた倫理規程に抵触する恐れがある。総務省の調査と併せ、国家公務員倫理審査会でも調べている。

 安倍晋三前政権では安倍氏本人や夫人、友人への官僚の忖度(そんたく)が行政の公正性をゆがめ、公文書改ざんなど森友・加計問題の土壌になった。

 後を引き継いだ菅政権でも、首相の威光に配慮する同様の忖度が働いていないか。それが国民が抱く疑念の核心である。

 ところが、首相は「総務省で事実関係を確認し、ルールにのっとって対応してほしい」と繰り返すばかりだった。まるで人ごとだ。

 政府として疑惑にふたをすることなく、接待の目的などについて徹底調査が求められる。

 接待は昨年10~12月に東京都内の料亭などで行われたと週刊誌が報じた。総務省も4人が長男らと会食したのは事実と認めている。

 首相は報道内容について「全く承知していない。長男と私は別人格だ」と強調したが、その説明は通用しまい。

 首相は総務副大臣、総務相を歴任し、NHK改革など放送事業に強い影響力を持つ。しかも、政権の意向に反する省庁幹部は「異動してもらう」と断言し、人事で強権を振るうことも辞さない。

 長男は首相の総務相時代に秘書官を務めていた。総務省幹部も接待の違法性を承知していながら、断り切れなかったのではないか。そうみられても仕方がない。

 きのうの予算委で、総務省の秋本芳徳情報流通行政局長は「なぜ接待に応じたのか」と問われ、調査中を理由に「答えを差し控える」を連発し、説明を避け続けた。

 まともに答えない政府側の姿勢は、行政を監視する立法府の役割をないがしろにするものだ。

 これで政府内の調査が適正に行われるのか。疑問を禁じ得ない。

 農水省でも安倍政権時代に、吉川貴盛元農水相が起訴された収賄事件の贈賄側との会食に幹部が同席していたことが判明している。

 旧態依然の政官業の癒着が疑われる事案が相次いでいる。首相自身が責任を自覚し、たがを締め直さなければならない。



総務省接待問題 隠蔽、改竄しないよう(2021年2月6日配信『東京新聞』-「社説」)

 こんな官僚接待がいまだに行われていたとは、驚きと怒りを禁じ得ない。しかも、接待した側に菅義偉首相の長男がいた。政官癒着の典型ではないか。徹底的に調査し、真相を明らかにすべきだ。

 総務省の谷脇康彦、吉田真人両総務審議官と秋本芳徳情報流通行政局長、湯本博信官房審議官の幹部四人が昨年十〜十二月、衛星放送事業や番組制作などを営む「東北新社」幹部の会食接待を受け、手土産やタクシー券も受け取っていた。週刊文春が報じた。

 国家公務員倫理規程は、利害関係者との会食について、自ら飲食代を負担する場合でも一万円を超えるときは倫理監督官への事前の届け出が必要としている。

 会食は無届けで、当初は利害関係者との認識がなかったとしているが、総務省は放送事業を所管する。衛星放送事業を営む同社を利害関係者と認識していなかったのなら職務怠慢にほかならない。

 それとも利害の有無にかかわらず、官僚が接待されるのは当然と思っていたのか。そのいずれでも国民感覚と著しく乖離(かいり)している。

 首相によると、長男の同社入社には「いろんなご縁」があった。首相は総務相を務め、長男は大臣秘書官だった。首相は長男と「完全に別人格」と強調するが、「完全に無関係」ではあり得ない。

 同社は首相やその長男という立場を利用し、事業許認可などを有利に進めようと考えたのではないか。総務省側も首相の長男だから断れなかったのではないか。国民にそう見られても仕方がない。

 一連の接待によって、総務省が同社に何らかの便宜を図ったか否かは現時点で分かっていない。

 ただ、政治家と官僚との関係や癒着、双方の倫理観、不祥事に対して、国民の厳しい目が注がれていることを忘れてはなるまい。
 安倍晋三前政権時代には森友・加計両学園や桜を見る会を巡る問題など、権力者と近しい関係者を優遇する政治が横行した。総務省官僚への接待は菅政権でもそれが続いていることをうかがわせる。暗澹(あんたん)たる気分だ。

 国会は予算案審議やコロナ対策など課題山積だが、この問題を闇に葬ってはならない。関係者の招致を含めて、国政調査権を駆使して徹底的に究明すべきである。

 総務省は接待が法令に違反しないか調査しているという。自浄能力は示すべきだが、調査結果を隠蔽(いんぺい)したり、改竄(かいざん)したりという、財務省が犯した愚を二度と犯さないよう、くぎを刺しておきたい。



長男の官僚接待 首相は「人ごと」にするな(2021年2月6日配信『新潟日報』-「社説」)

 菅義偉首相という存在を抜きにしては、成り立つことが考えにくい関係だ。にもかかわらず人ごとのような態度を取るのは承服できない。

 役所が事実関係についてきちんと調査し、国民に公表することは当然だ。同時に、菅首相も当事者意識を持って問題に向き合わなければならない。

 放送行政などを所管している総務省幹部4人が、放送事業会社に勤務する首相の長男らから個別に接待を受けていたと週刊誌が報じた。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程が禁じている「利害関係者」からの接待に当たる可能性が指摘されている。

 報道によると、谷脇康彦総務審議官ら幹部4人は昨年10~12月に東京都内の料亭などで長男らから接待を受け、帰りにはタクシーチケットや手土産を受け取った。

 接待を受けたと報じられた秋本芳徳情報流通行政局長は4日の衆院予算委員会で、費用を払わずに会食していたことを認めた。所管行政に関わる企業の関係者の参加が分かり、事後に返金したとも説明した。

 首相の長男が勤務する放送事業会社「東北新社」の子会社は総務省から衛星基幹放送事業者の認定を受けている。

 事業の許認可を受ける側の企業が官僚を接待すれば、行政の公平・公正に影響し、政策をゆがめるのではないかと疑念を持たれても仕方ない。

 長男は首相が総務相時代に秘書官を務めていた。首相は著書などで、総務省への自らの影響力もアピールしている。

 首相の息子だったから官僚側も会食を断りにくかったのではないか、といった疑問が浮かぶのは自然だろう。

 それだけに、長男の官僚接待と首相の関わりについて国民の関心は大きいはずだ。

 ところが、首相は3日夜には記者団に「私自身は全く承知していない。総務省で適切に対応されると思う」とし、距離を置く姿勢を見せた。

 4日の衆院予算委では野党から「国民に厳しいことを言いながら、親族や総務省をかばっている」などと追及されると、「私と長男とは、完全に別人格」と反論した。

 5日の予算委では、首相は4日の質疑後に長男に「調査には事実に基づき報告するように」と電話で伝えたと説明。その一方で、事実関係を確認したか問われると「内容は立ち入るべきではない」と答えた。

 あくまでも、自分とは無関係という態度を貫き通すつもりなのか。あまりに誠実さに欠ける対応である。

 安倍政権では森友学園問題や加計学園問題が発覚、官僚の忖度(そんたく)に厳しい目が注がれた。安倍晋三前首相やその妻、友人らに対する官の姿勢が問われ、政治私物化などの批判を浴びた。

 事は政権の信頼性に関わる重大な問題である。菅首相に求められるのはそうした認識だ。知らぬ存ぜぬでは、国民の疑念は膨らむばかりだろう。





首相長男の総務省接待 「知らない」では済まない(2021年2月5日配信『毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の政治姿勢が問われる新たな不祥事が発覚した。

 総務省の谷脇康彦総務審議官ら幹部4人が昨年10~12月、衛星放送やテレビ番組制作などを手がける東北新社の幹部と無届けで会食し、手土産やタクシーチケットを受け取っていたことが明らかになった。

 会食には同社社員である菅首相の長男が同席していた。

 総務省は放送事業を所管している。同社のような利害関係者から接待を受けるのは国家公務員倫理規程に違反する可能性が高い。

 一方、会社側には首相の長男という立場を利用して、事業の許認可などを有利に進めようとしたのではないかという疑念がある。

 にもかかわらず、首相はきのうの衆院予算委員会で、時に気色ばんで「私は承知していない」「長男は公的立場にない」と突っぱね続けた。今後の対応についても「総務省が調査する」と繰り返すだけだった。

 この接待により、総務省が同社に何らかの便宜を図ったかどうかは現時点では不明だ。ただし、公務員の倫理規程は、国民からわずかでも疑惑を持たれないようにするため厳しく定められたものだ。

 総務省は、関係者に事後の届け出をさせて、自分の代金分を会社側に支払うよう指示したという。倫理規程違反であることは既に認めているということだ。

 同省では2019年、かんぽ生命保険の不正販売をめぐる行政処分の検討状況を日本郵政グループ側に漏えいした問題で、事務次官が辞職した。

 利害関係者との癒着が批判されたのを忘れたのか。それとも首相の長男が関係していたから会食を断れなかったというのだろうか。

 菅首相は総務相経験者で、同省の政策や人事に今も大きな影響力を持っている。長男は、菅首相が総務相だった時に、その秘書官を務めていた。

 安倍晋三前政権時代には、森友学園問題や加計学園問題が発覚した。首相や妻昭恵氏の知り合いだから優遇されたのではないかという疑問は今も消えていない。

 国民は今、そうした「特別扱い」に一段と厳しい目を向けている。首相は国民の意識を理解していないとしか思えない。



長男の接待疑惑 首相が自ら説明を尽くせ(2021年2月5日配信『産経新聞』-「主張」)

 放送行政などを所管する総務省幹部らが、菅義偉首相の長男から接待を受けていた。長男は放送事業会社の東北新社に勤務しており、同社子会社は衛星基幹放送事業者の認定を受けている。

 国家公務員倫理規程は国家公務員が利害関係者から高額接待を受けることや、金銭や物品の贈与を受けることを禁じている。

 長男の接待は規程に違反する可能性が濃厚で、総務省が調査している。秋本芳徳情報流通行政局長は衆院予算委員会で、菅氏の長男らと会食した事実を認め、会食費は事後に返金したと説明した。

 総務省によると、谷脇康彦総務審議官ら計4人が昨年、東北新社から複数回接待を受けたことを認めた。国家公務員は割り勘でも、1人当たりの金額が1万円を超えると届け出なくてはならない。

 谷脇氏らは3日までに届け出を提出した。届け出が遅れた理由については「利害関係者との認識がなかった」と説明しているのだという。到底、信じ難い。

 長男は菅首相が総務相時代に政務秘書官を務めていた。同省幹部らとの面識は当時からあったとみられる。元総務相秘書官、首相の長男の威光を背景とする接待であると疑われて当然である。

 菅首相は衆院予算委で「長男とはほとんど会っていない。完全に別人格だから、そこはご理解いただきたい」と述べた。

 この釈明は通るまい。

 所管官庁の許認可事業に関わる接待疑惑である。肉親が関与していれば、首相の政治責任も問われるのは当然だろう。

 菅首相はまた、「全体像は掌握している。確認した上でルールにのっとって対処される」とも述べた。長男とは電話で話し、調査に協力するよう伝えたという。

 だが調査を総務省任せにしていいのか。疑惑の目は当然、元秘書官から利害関係のある社への就職の経緯にも及ぶ。総務省が速やかに調査結果を公表すべきはもちろんだが、首相もていねいな説明を尽くすべきだ。

 疑惑の発端は、週刊文春の報道だった。毎週のごとく、週刊誌報道に対する釈明に追われる政権のありようは惨めである。

 新型コロナウイルス禍への対処に全力をあげなければならないこの時期に、情けないではないか。まず迅速で真摯(しんし)な対応を、国民は注視している。




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