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高齢ひきこもり 親子の共倒れを防ぐには(2019年4月19日配信『西日本新聞』ー「社説」)

 ひきこもり支援の現場では近年、当事者の高齢化がささやかれてきた。とはいえ、この数字には驚くほかない。

 ひきこもり状態にある40~64歳の中高年の人は、全国で61万3千人に上るという。内閣府が昨年、5千人を対象に初めて実施した調査に基づく推計値だ。

 国はこれまで、ひきこもりを若年層(15~39歳)の問題と位置付け、調査と支援に取り組んできた。2015年度調査に基づくこの層の推計値は54万1千人だったので、幅広い年齢層にわたって100万人規模の当事者がいることになる。国は対策を抜本的に見直す必要がある。

 今回調査では、ひきこもり状態の人の約8割が男性だった。期間は「5年以上」が約5割を占め、30年以上の人もいた。

 きっかけで目立つのは「退職」「職場になじめなかった」「就職活動がうまくいかなった」など仕事に関するつまずきだ。調査対象世代のうち40代が社会に出た時期は、バブル経済崩壊後の就職氷河期と重なる。非正規雇用が増え始めた頃でもある。ひきこもりの増加や高齢化には、こうした社会的要因が影を落としている側面もあろう。

 ほかに、小中高校での不登校や受験の失敗、病気や妊娠がきっかけになった人もいる。ひきこもりの端緒は、人それぞれであることがよく分かる。

 当然ながら、個々の当事者の実情に即した、多様な初期対応や支援が求められる。

 中高年の場合、期間が長引くほどに、就労は難しくなる。段階的に仕事になじむためにトレーニング期間を設けるなど、きめ細かな支援が欠かせない。

 支援は家族や本人の相談から始まることが多いが、孤立して問題を抱え込むケースも少なくないという。長期化した場合、当事者も家族も深い疲労感と無力感に陥り、身動きが取れなくなっている可能性もある。

 窓口で相談を待つだけではなく、行政と支援団体などが連携し、積極的に地域の当事者を見つけ出して、訪問支援などにつなぐ努力を重ねてほしい。

 今回の中高年対象の調査は規模が小さく、実態の一端を示したにすぎないと考えるべきだ。大分県のように、地域住民と接する機会が多い民生委員などの協力を得ながら、より丁寧な実態調査に乗り出している自治体もある。国も本腰を入れて実態調査を進め、要因や背景の分析を踏まえた総合的対策を打ち出すべきだろう。

 80代の親が50代の子どもを支える事態に至れば、生活は困窮し、親子共倒れの危機も高まる。いわゆる「8050問題」への対応は、もはや待ったなしの状況と考えるべきだ。



ひきこもり支援/高年齢化への対応急がねば(2019年4月19日配信『福島民友新聞』ー「社説」)
 
 ひきこもりは若者特有の現象という従来のイメージを覆す結果である。背景を丁寧に分析し、有効な支援を打ち出す必要がある。

 内閣府が、半年以上にわたり家族以外とほとんど交流せず、自宅にいる40~64歳のひきこもりの人が全国に61万3千人いるとの推計値を公表した。中高年の実態が明らかになったのは初めてだ。

 団塊ジュニアを含む40代以上はバブル崩壊後の就職氷河期を経験した人もいる。思うように仕事が見つからなかったり、職場でつらい経験をしたりして、ひきこもったケースもあるとみられる。

 2000年代初頭にはニートという言葉が登場し、国は30代までの就労支援を強化した。ただ半年以内の就労という性急な目標を掲げたため、さまざまな困難を抱えたり、年齢制限を超えたりした人が取り残され、今に至る可能性も捨てきれない。個別の事情をくんだ支援ができていたのか。国や自治体、関係機関は省みて今後の対応に生かさなければならない。

 課題は、就労にとどまらない。ひきこもりが長期化すると、同居の親も高齢化し、病気や介護、経済的困窮といった複合的なリスクが生じる。調査では3人に1人が高齢の親に経済的に依存していることも判明した。福祉の現場では親が80代、本人が50代で生活が困窮する「8050問題」も指摘されている。

 15年施行の生活困窮者自立支援法で、ようやく40歳以上が支援対象になったが、相談窓口を設置しているだけという自治体も多い。県内でひきこもりの人を支援する民間団体の担当者は「親が子を支えきれなくなってきている」と厳しさを増す現状を指摘する。きめ細かな支援が急務だ。

 ひきこもりの長期化や高齢化が調査によって裏付けられたが、県には、中高年のひきこもりを担当する部署がないのが現状だ。今回の調査結果を受けて、就労支援や生活保護など関連する部署の連携強化について検討を始めたというが、担当部署が明確でなければ、実効性のある対策を講じることは難しいのではないか。

 また、今回の調査で判明したのは全国の推計値であり、県内の状況は分からないままだ。秋田県藤里町では社会福祉協議会が2010年から1年半をかけて戸別訪問による実態調査を行い、自立を後押しした結果、8割以上が社会復帰した例もある。参考にしたい。

 ひきこもりの背景は十人十色だが生きづらさの原因は社会の側にもある。本人の視点に立った支援の形を社会も考えるべきだ。



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