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週のはじめに考える 民主主義の復元力(2021年2月7日配信『東京新聞』-「社説」)

 この年末年始、例年より「民主主義」という言葉があふれていたように感じました。それだけ語る必要性が高まったということでしょう。それはコロナ禍や、日米の政治状況と無縁ではありません。

◆貴重で壊れやすいもの

 米国のバイデン大統領は1月20日の就任演説で、冒頭から民主主義に言及しました。

 「今日はアメリカの日です。民主主義の日です」「私たちは候補者の勝利でなく、民主主義の大義の勝利を祝います」「私たちは再認識しました。民主主義は貴重で壊れやすいものです。そして今この時に民主主義は勝ったのです」

 就任演説の中で民主主義に言及したのは11カ所に上ります。

 2009年のオバマ、17年のトランプ両大統領の就任演説ではいずれも、民主主義という言葉を全く使っていません。両氏の真意は分かりませんが、機能しているのが当然で、言及する必要すらなかったのでしょうか。

 バイデン氏が何度も民主主義に言及したのは、トランプ前政権の4年間で民主主義が危機に瀕(ひん)していると感じたからでしょう。政権交代を機に、民主主義を再生したい、との決意すら感じます。

 日本でも安倍前政権下で、「森友学園」への国有地売却を巡り、事実と異なる政府答弁が139回、「桜を見る会」前日の夕食会でも、安倍晋三前首相による国会答弁のうち虚偽答弁は118回を数えました。政策決定や法整備は正しい情報に基づくことが基本ですから、国民を代表する国会をおとしめる行為です。

 ところで、民主主義とは、そもそもどんな制度なのでしょうか。

 教科書風にいえば、日本をはじめ多くの国が採用しているのは議会制民主主義で、主権者である国民が民主的な選挙で選んだ代表を通じて政治を行うことです。

 近代民主政治は、基本的人権の尊重、国民主権、権力分立という基本原理に基づいています。

◆意志があって強くなる

 権力が眼前の出来事を事実として認めず、自らに批判的なメディアや人々を威嚇し、国民を分断したのがトランプ政治です。
 その結末が、バイデン氏の勝利を認めまいと、暴徒が米議会になだれ込む暴力行為です。公正に行われたはずの選挙結果を否定すれば、民主主義は成り立ちません。

 副大統領に就いたハリス氏は昨年11月の演説で、公民権運動の指導者、故ルイス下院議員の「民主主義は状態ではなく行動だ」との言葉を紹介し、「米国の民主主義は決して保障されたものではない。私たちの意志があってこそ強いものになる」と訴えました。
 米議会での出来事は、民主主義を守るための行動がなければ、容易に破壊されると感じさせます。

 同様の認識は日本国憲法12条にも見られます。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」

 民主主義の基本原理である自由や権利ですら、不断の努力がなければ保持できないとの訴えです。

 それは戦前から戦中にかけての苦い経験と無縁ではありません。

 明治から昭和にかけての日本でも、大衆運動で民主主義が前進しました。自由民権運動による国会開設や、普選運動による納税額と無関係の普通選挙権の獲得です。

 しかし、大正デモクラシーもつかの間、昭和初期からの軍部台頭で、民主主義は傷付けられ、破滅的な戦争へと突き進みます。
 第1次世界大戦後のドイツも同様です。当時、最も民主的な憲法とされたワイマール憲法を持ちながらも、ヒトラー率いるナチスの独裁を許し、戦争や虐殺で多くの命が失われました。

 民主主義はトランプ政権の米国に限らず、歴史を振り返れば極めて脆弱(ぜいじゃく)です。だからこそ、民主主義を損なう動きがあれば、敢然と立ち向かわねばなりません。

 一人一人の努力なしに民主主義は維持できず、傷付いても再生する復元力が働かないのです。

 民主主義に関する気になる報告があります。スウェーデンの調査機関V−Demによると、19年時点で民主主義の国・地域は世界で87に減り、非民主主義の国・地域は92に増えました。民主国家の数が非民主国家を下回るのは18年ぶりです。

◆コロナ禍が与える試練

 コロナ禍は民主主義にも試練を与えています。感染拡大を防ぐために、私権や人権の制限はどこまで許されるのか。命や暮らしを守るのは、民主主義か非民主的な権威主義か、との問い掛けです。

 中国など権威主義の国家は、自らの体制の優位を喧伝(けんでん)しますが、人々の自由や人権が蔑(ないがし)ろにされる社会が健全とは思えません。

 私たちは民主主義の持つ力と復元力を信じたい。非民主的な動きに抗(あらが)うための行動が、私たち一人一人に求められているのです。




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gogotamu2019

Author:gogotamu2019
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