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(論)嫡出推定の見直し(2021年2月11・13・14・17・18・24・3月1・7日)

[嫡出推定見直し] 無戸籍者生まぬ制度へ(2021年3月7日配信『南日本新聞』-「社説」)

 婚姻を基準に子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」の見直しに向け、法相の諮問機関である法制審議会の親子法制部会が中間試案をまとめた。

 離婚後300日以内に生まれた子どもを「前夫の子」とみなす規定の例外を設け、母親が出産時点で再婚していれば「現夫の子」と新たに規定する。併せて女性に限り離婚後100日間、再婚を禁じる規定も撤廃する。

 明治時代から120年以上続く現行のルールは、母親が出生届を出さずに無戸籍者が生じる大きな要因とされてきた。試案は現代の家族観を反映した法律の転換点と評価できよう。

 ただ、見直しは今のところ離婚も再婚も成立した後に生まれた子どもに限られ、家庭内暴力で離婚協議もままならないケースなどは対象とならない。制度を充実させるために議論を深めていく必要がある。

 嫡出推定は本来、生まれた子どもと戸籍上の父親との関係を早く確定させて、養育や相続などで子どもの利益を図る考えに基づく制度である。海外でも採用している国は少なくない。

 しかし近年、離婚直後に別の男性との子どもを産んだ場合などに、前夫の子どもとみなされるのを避けるため、母親が出生届を出さないケースが増えてきた。

 法務省が市区町村などを通して把握した無戸籍者は1月時点で901人おり、このうち73%がこうした事例に当たる。支援団体によると、行政が捉えられていない潜在的な無戸籍者も多く、少なくとも1万人に上るという。

 無戸籍者は住民票の作成や運転免許の取得、銀行口座の開設などが難しく、進学や就職、結婚でも深刻な影響を受ける。本人に落ち度がないのに多大な不利益を強いられる現実を考えれば、民法の規定見直しは急務だ。

 中間試案は、夫にだけ認められていた父子関係を否定する「嫡出否認」の訴えを、未成年の子どもと、子の代理の母親もできるようにすることも示した。当事者への配慮がうかがえる。

 とはいえ、なかなか離婚できなかったり、再婚に至らなかったりした場合の対応が不十分との指摘が出ている。300日規定そのものの撤廃を求める声も根強い。事実婚など家族の在り方が多様化する中、さらにさまざまな要請に応えなければならない。

 例えば、科学技術の進歩を生かし、今では民間機関も手掛けているDNA鑑定で血縁上の父親と判定できれば、出生届を受け付ける仕組みなども検討するべきではないか。

 法制審部会が方向性を示したことで、法改正に結びつく可能性は高くなってきた。現在、生活に支障を来している無戸籍者への支援を含め、救済の枠からこぼれ落ちる子どもが出ないよう知恵を絞りたい。





嫡出推定の見直し/家族観を反映した制度に(2021年3月1日配信『河北新報』-「社説」)

 法制審議会(法相の諮問機関)の親子法制部会は、妊娠や出生時の婚姻状況を基に子の父親を決める民法の「嫡出推定」を見直す中間試案をまとめた。現行制度は無戸籍者を生む要因となっている。改正に至れば、子の福祉を害する問題の解消に結び付くだけに高く評価したい。

 民法は「婚姻中に妊娠した子は夫の子とする」「結婚から200日が経過した後、または離婚から300日以内に生まれた子は婚姻中に妊娠したものとする」と規定する。

 前夫とは別の男性との子を産んだのに、離婚から300日以内なら戸籍上は前夫の子となる。それを避けたい母親の心理的負担は大きく、出生届を出さない事態が社会問題化した。無戸籍者は当然、行政サービスが受けにくくなる。

 法務省によると、1月10日現在の無戸籍者は901人に上る。その原因が嫡出推定制度にあるとみられる事例は約7割に及ぶ。
 嫡出推定の規定は1898年施行の明治民法を踏襲した。子の福祉のため、父親を早く確定する必要があるとの考え方に基づく。ただ、近年の離婚や再婚の実情に合致していないことは明らかだ。

 試案によると、離婚後300日以内の子は前夫の子とする規定は維持しつつ、出産時点で再婚していれば現夫の子とする規定を新設する。妊娠時点の婚姻関係を基準に父親を決める原則の例外と位置付ける。婚姻の解消が死別による場合に限っては、適用外とする案も残した。

 妊娠を機に結婚する男女は増えており、結婚後200日以内に誕生した子は戸籍実務で夫の子として扱われる。試案では、結婚後の子であれば夫の子と明記するとした。父親の死後、遺産相続争いなどが生じることも想定した対応と読み取れる。

 女性を対象にした離婚後100日間の再婚禁止期間は父親推定の重複が解消されるため不必要となり、条文を削除する。男女平等の観点からも好ましく、歓迎したい。

 父親にのみに限られていた「嫡出否認」の権利を未成年の子にも与え、子の代わりに母親が行使できる制度の新設も検討する。

否認できる1年の期間も3年または5年に延長する。否認を申し立てる機会に幅を持たせ、トラブルの解消を図る狙いがある。

 いずれも合理性があり、現代の家族観や行動様式を反映したと言えよう。法制審はパブリックコメント(意見公募)を経て議論を深め、最終案を法相へ答申する。法務省は来年の通常国会への改正法案提出を目標に作業を進める。

 親子法制の見直しは審議過程にあり、引き続き検討すべき項目や付随する課題は多々ある。事実婚カップルへの対応、第三者提供精子により生まれた子の父子関係の整備などがこれに当たる。時機を逸することなく、問題を払拭(ふっしょく)する改正に期待したい。



嫡出推定見直し 子の利益守る法改正早く(2021年3月1日配信『新潟日報』-「社説」)

 子どもの利益をしっかりと守れるように制度を見直すのは当然だ。無戸籍となる人が生じている現行制度の問題点を早急に改めなくてはならない。

 法相の諮問機関である法制審議会の親子法制部会は、子の父を決める民法の「嫡出推定」を見直す中間試案をまとめた。

 現行規定では、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」と見なされ、別の男性との子でも「前夫」が父となる。

 中間試案は、出産時点で母が再婚していれば「現夫の子」とする例外を設けたのがポイントだ。妊娠時点を重視するルールには縛られなくなる。

 離婚後に前夫が子の父となることを避けて母が出生届を出さないケースがあり、無戸籍者を生む要因となっていた。

 法務省によると今年1月時点で無戸籍者は901人に上り、このうち7割以上がこうした理由によるという。

 無戸籍の場合、原則として住民登録ができず、パスポートを取得できないなど、生活を送る上で多くの支障がある。子どもの不利益が指摘されながら、長年解決されずにいた。

 ルール改正が実現すれば、大きな転換といえる。

 父子関係を否定する「嫡出否認」も見直す。これまでは夫にのみ出生から1年間認められていたが、未成年の子と、その代理である母にも認めた。提訴期間も3~5年に延長する。

 夫婦関係が破綻し別居しているのに、暴力などで離婚手続きを取れない場合、母が別の男性との子を産んでも戸籍上は夫の子になるため、子の側から父子関係を否定できるようにした。

 出生後、父子関係を早期に確定させて子の利益を図る一方で、子に覆す権利も認めた。

 こうした規定を設けることも無戸籍問題の解消につながることが期待される。

 婚姻を基準に子の父を決める「嫡出推定」は、1898年施行の明治民法から引き継がれてきたが、現代の家族観とはずれが生じている。

 中間試案の内容は、現代の男女関係や家族の実態に合わせようとした様子がうかがえる。

 試案では男女平等に関わる規定についても見直しが進んだ。

 現在は離婚時に妊娠している女性にのみ100日間の再婚禁止期間が課されているが、この条文自体を削除し、離婚後すぐに再婚できるようにした。

 再婚禁止期間は海外でも設けている国はほとんどなく、男女平等に反するとの批判が根強くあった。

 ただ全ての問題が解消されたわけではない。

 離婚後に事実婚を選んだり、何らかの事情で結婚に至らなかったりした場合は現行のままで、課題は先送りされた。

 300日規定の例外ができても、母が再婚せずに出産した場合は、生まれた子は「前夫の子」と推定される。

 家族の在り方や家族観が多様化している時代の中で、子の利益を守ることを最優先に、よりよい制度を探っていくべきだ。





無戸籍生まない嫡出推定に(2021年2月24日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 法制審議会の部会が、民法の「嫡出推定」制度の見直しに向けた中間試案をまとめた。無戸籍で苦しむ人をなくすための、大事な一歩にしたい。

 法務省の審議会の部会で嫡出推定見直しの議論が進んでいる
嫡出推定とは、子どもの父親を早期に決めるための制度だ。子どもの養育環境を、出生直後から安定させる狙いがある。

 だが、これが逆に働くことがある。子どもにとって不安定な状況である無戸籍の要因になっているのだ。

 例えば、現行規定では離婚後300日以内に生まれた子は別れた夫の子となる。このため母親が離婚直後に別の男性との間の子どもを出産した場合、戸籍には元夫の子と記載される。これを避けるために出生届を出さない事例などが起きていた。

 今回の中間試案では、離婚後300日以内であっても出産時に母親が再婚していれば、再婚相手の子とする例外規定を設ける。

 父子関係を否定する「嫡出否認」についても見直す。いまは訴えることができるのは夫のみだ。家庭内暴力から逃げているような場合は協力を得るのが難しかった。試案では子どもにも広げ、母親が代理になることなどを盛り込んだ。訴えができる期間も延ばす。

 法務省によると、これまでに無戸籍と判明した人は約3400人おり、1月時点で約900人は無戸籍のままだ。戸籍がないと、住民登録やパスポートの取得が難しい。暮らしのさまざまな面で不利益をこうむる。

 いまの「嫡出推定」の規定ができたのは明治時代だ。時代に合わせて法が変わるのは当然のことだろう。いまや離婚も再婚も珍しくはない。DNA鑑定で親子関係も特定しやすくなっている。

 部会では引き続き検討し、2021年度中に答申をまとめる、法務省は来年の通常国会に改正案を提出する見通しだ。着実に改正につなげたい。一方で、いままさに無戸籍の人がいる。必要な支援が受けられるよう、法務局や自治体が取り組む必要がある。



【嫡出推定見直し】無戸籍解消に欠かせない(2021年2月24日配信『高知新聞』-「社説」)

 法制審議会(法相の諮問機関)の部会が、子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」を見直す中間試案をまとめた。

 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす規定の例外として、母が出産時点で再婚していれば「現夫の子」とする。前夫が父となるのを拒む母が出生届を出さず、無戸籍者を生む要因となっていた。女性のみに離婚後100日間の再婚を禁じていた規定も撤廃する。

 家族の多様化が進む時代。不利益を被る者が出ないよう、見直しを進めるのは当然である。

 嫡出推定は1898年施行の明治民法から引き継がれてきた。扶養義務を負う父親を早く確定させ、子どもの利益や権利を保護する目的があった。

 しかし夫の暴力から逃げ出した女性が、離婚協議が終わらない間に別のパートナーと子をもうけることもある。この場合、「前夫の子」とみなされるのを避けて出生届を出さない事例が近年相次いでいる。

 法務省が把握している無戸籍者は1月時点で901人いるが、7割以上が嫡出推定を避けたケースだ。支援団体によると、実際には少なくとも1万人はいるという。

 無戸籍者は進学や就職、結婚など実生活で困難を強いられる。大阪府では昨年9月、無戸籍とみられる高齢女性が餓死しているのが見つかった。同居の息子も無戸籍で、行政への支援を求められず救急車も呼べなかったと話している。

 無戸籍の人たちをこれ以上増やさないために、嫡出推定の見直しは避けて通れない。

 DNA型鑑定により、100%に近い形で生物学的な親子関係を明らかにできる時代でもある。120年以上前の規定が残っていたこと自体、おかしいと言わざるを得ない。

 再婚禁止期間を巡っても、これを設けている国は少ない。国連の女性差別撤廃委員会から、廃止勧告も受けている。撤廃しない理由はないだろう。

 嫡出推定を覆すには「嫡出否認」の訴えを起こさなければならない。これも現行では夫のみ出生から1年間認められている。試案はこの権利を未成年の子と、その代理として母にも広げ、提訴期間も延長する。

 一連の改正は家族の在り方の多様化や男女平等に沿う内容といえる。現代の家族観を反映した法律への転換点となるものだろう。

 むろん、これで十分というわけではない。

 「300日規定」の例外として救済されるのは、再婚したカップルだけである。事実婚や、何らかの事情で結婚に至らなかった場合は前夫の子と推定されてしまう。再婚していない場合について、中間試案は「引き続き検討する」と言及するにとどまっている。

 法制審は意見公募を経て最終案をまとめる。法務省は来年の通常国会への改正法案提出を目指す。時代に即した最善の法制度を検討しなければならない。





嫡出推定見直し 無戸籍防ぐ法改正を急ぎたい(2021年2月18日配信『読売新聞』-「社説」)

 親の都合で出生届が出されず、落ち度のない子供に不利益が生じることがあってはならない。新たな無戸籍児を生み出さないよう、必要な法改正を急ぐべきだ。

 法制審議会の部会が、民法の嫡出推定制度の見直しに向けた中間試案をまとめた。法制審の答申を経て、政府が来年の通常国会に改正案を提出する見通しだ。

 現行民法は、婚姻中に妊娠した子を夫の子、離婚後300日以内に生まれた子も別れた夫の子と推定している。この嫡出推定を否認できるのは、夫に限るとしている。明治以来、変わらぬ規定だ。

 規定は父親を早期に確定し、扶養を受ける子の権利を守るために設けられたものだ。しかし、離婚直後の女性が新たな交際相手との子を産んだ場合、戸籍に前夫の子と記載されるのを避けようと、出生届を出さないケースがある。

 この規定の存在が、多くの無戸籍児を生む原因になっている以上、見直すのは当然である。

 試案は、「離婚後300日」の規定を残しつつ、出産時に再婚していれば、再婚相手の子と推定する例外を設けるとした。

 さらに、父子関係を否定する嫡出否認の権利を、夫だけでなく子にも認めるようにする。子が幼い時は母親が代理で提訴できる。

 実態に即した父子関係が認められるようになれば、母親が出生届の提出をためらう必要もなくなる。今回の見直しを無戸籍児の解消に結びつけることが大切だ。

 近年、離婚や再婚は珍しくない。DNA鑑定技術の進歩で、親子の血縁関係も特定しやすくなった。法改正に際しては、時代の変化を十分考慮する必要がある。

 無戸籍の場合は原則、住民登録やパスポートの取得ができない。婚姻届を受理してもらうのも手間がかかるほか、就職で不利になることもあるなど、日常生活に様々な困難が生じている。

 社会的に孤立しやすいため、大阪府では昨秋、無戸籍の高齢女性が餓死する事件も起きた。同居の息子も無戸籍で、周囲に助けを求められなかったという。

 無戸籍の人は2014年以降、計約3400人確認された。新たに戸籍をつくった人もいるが、約900人は今も無戸籍のままだ。民法の規定があるため、出生届を提出しなかったケースが多い。

 支援する民間団体は、実際は1万人以上の無戸籍者がいると指摘している。法務局や自治体は実態把握に努め、相談体制を強化するなど対策を充実させてほしい。



「嫡出推定」見直し 無戸籍生まない法改正を(2021年2月18日配信『琉球新報』-「社説」)

 子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」規定について、法制審議会の部会が見直し案をまとめた。

 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす現在の規定に例外を設け、母が出産時点で再婚していれば「現夫の子」とする内容だ。現行規定は無戸籍の子を生む主要因となっている。早急に法改正してほしい。

 「嫡出推定」は、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子とみなすと規定する。同時に離婚時に妊娠している女性にのみ100日間の再婚禁止期間が課されている。

 今回の見直し案は、現行規定は残しつつ、例外として出産時に再婚していれば現夫の子とする新たなルールを導入する。再婚禁止期間は不要となった。

 生まれた子との父子関係を否認する「嫡出否認」制度は前夫のみに認められていたが、未成年の子とその代理として母にも認める。

 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす規定は、無戸籍者を生み出す大きな要因として、十数年前から社会問題化していた。

 現行規定は女性の妊娠時点で婚姻関係にある男性を父とする規定だ。しかし関係は壊れているのにさまざまな理由で離婚が遅れ、別の男性と親密になることがある。暴力を振るう夫から妻が逃れ、離婚協議が終わらないまま新たなパートナーとの間に子を授かる場合もある。しかし子が前夫の子となるのを避けるために出生届を出さないことがあり、無戸籍の子が生まれてしまう。

 戸籍がないと修学や免許・資格取得、銀行口座開設や各種手続きに至るまで大きな支障を来す。昨年、大阪府で高齢女性が餓死した事件では同居の40代息子も共に無戸籍で行政の支援を得られなかった。

 法務省によると無戸籍者は901人おり、前夫が父となるのを避けるため母が出生届を出さなかったケースが73%に上った。支援団体は1万人はいるとみている。

 現行規定ができた明治民法下では子の利益のために父子関係を確定させることが必要だった。しかしDNA鑑定により父子の血縁関係を確認できるようになった。父子関係がないと訴えを起こせる嫡出否認も夫の側にしか認められなかったのは、家父長制の下で女性側に決定権がなかった現れだろう。子とその代理である母が嫡出否認の権利を得たのは当然のことだ。

 ただ、見直し案で300日規定の例外として救済されるのは再婚したカップルだけだ。再婚していない場合は例外が適用されず、課題が残る。

 結婚についての考え方や家族のあり方も多様化しているにもかかわらず、事実婚や何らかの事情で結婚に至らなかったケースは前夫の子と推定されてしまう。婚姻を基準とする考え方にも限界がある。時代に合わせた最善の方法を検討していかねばならない。





嫡出推定見直し(2021年2月17日配信『(愛媛新聞』-「地軸」)

 身分証明ができず、進学や就職が困難になる。家賃や携帯電話、クレジットカードなどの契約も難しい…

▲何らかの事情で出生届が出されないと、「無戸籍」になり、生活に大きな不利益が生じる。支援団体によると、無戸籍の人は全国で少なくとも1万人に上る。何の責任もないのに本来持つ権利も、それを行使する機会も奪われたまま生きるのは、どれほど苦しいことか

▲無戸籍の人を生む主要因となっているのが民法の「嫡出推定」だ。女性が婚姻中に妊娠した子は夫の子とみなす規定で、戸籍上の父を早く決めて子どもを保護する目的がある

▲ただ規定により、夫と離婚直後に別の男性との間の子を産んでも、前夫の子として戸籍に記載される。それを避けるために女性が出生届を出さず、無戸籍になるケースがあるという。子どもを保護するはずが逆に弱い立場に追いやる結果となり、深刻な問題だ

▲法制審議会の部会が規定の見直しを検討している。先日、母が離婚前に妊娠していても出産時点で再婚していれば現夫の子とする、といった中間試案をまとめた。規定は明治時代から引き継がれており、現代の多様化した家族形態に合わないのは明らかだ。DNA型で親子関係も分かる時代。「今ごろやっと」の感がある

▲時代遅れの規定のせいで無戸籍の人が受けた被害は取り戻せない。せめて今後は誰も差別や不利益を受けることがないよう、見直しは徹底的に。





嫡出推定の見直し 無戸籍解消へつなげたい(2021年2月14日配信『山陽新聞』-「社説」)

 子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」の見直しを進めていた法制審議会(法相の諮問機関)の部会が、中間試案をまとめた。

 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす規定に例外を設け、出産時に再婚していれば「現夫の子」とみなす。これに伴い、女性に離婚後100日間の再婚を禁じていた規定も撤廃するといった内容だ。

 300日規定があるために女性が出生届を出すのをためらい、子どもが無戸籍となる問題が明らかになって久しい。ようやく見直しの方向性が示された。

 法制審は今後、意見公募を経て議論を進め、最終案をまとめる。法務省は来年の通常国会への改正法案の提出を目指すという。

 明治時代にできた嫡出推定の規定は、法律上の父子関係を早く確定し、子どもの養育環境を安定させる目的があった。しかし、2000年代以降、弊害が指摘されるようになった。

 夫の暴力などから逃げた女性が、離婚協議中や離婚直後に別の男性との間の子どもを産んだ場合、「前夫の子」とみなされるのを避けるため、出生届を出さないケースが相次いだ。法務省によると、今年1月時点で約900人が無戸籍の状態にあり、7割以上が嫡出推定を避けたのが理由という。支援団体は、把握されていない無戸籍者はさらに多いと指摘している。

 中間試案によると、離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とする規定は維持しつつ、出産時に再婚していれば「現夫の子」とする規定を新設する。離婚時に妊娠している女性に課されている、100日間の再婚禁止期間の規定は撤廃する。

 女性のみの再婚禁止期間の規定は、海外で設けている国はほとんどない。撤廃は当然だろう。

 嫡出推定を覆すには「嫡出否認」の訴えを起こす必要があるが、現行法では夫(前夫)にしか認められていない。暴力などから逃げた女性が、夫(前夫)に裁判手続きを求めるのは困難で、これも無戸籍問題の一因となっていた。中間試案では訴えの権利を子どもや、その代理の母親にも認めるとした。

 中間試案はおおむね現代の家族観や男女平等の視点を踏まえた方向だが、無戸籍の当事者や支援者からは既に不十分との声が上がっている。

 300日規定の例外を設けることで、救済されるのは再婚をしたカップルだけである。事実婚や、何らかの事情で結婚に至らない場合は「前夫の子」と推定されてしまう。裁判手続きを取るとしても負担は大きい。DNA鑑定を証拠とする父子関係の確定や、300日規定そのものの撤廃を求める声もある。

 生まれてくる子どもが不利益を受けることがないよう、さらに踏み込んで議論を尽くしてもらいたい。





「嫡出推定」見直し 子の人権保護を最優先に(2021年2月13日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 法制審議会の親子法制部会が、離婚後300日以内に生まれた子の父親は前の夫の子とみなす民法の「嫡出推定」を見直す中間試案をまとめた。母親が出産時点で再婚していれば、離婚からの日数を問わず「現在の夫の子」と推定する例外規定を設ける内容だ。

 婚姻を基準に子の父を決める嫡出推定は、1898年施行の明治民法から引き継がれる制度。出生後、父子関係を早く確定させ、養育や相続などで子の法的地位を安定させるのが目的だ。だが近年、女性が離婚直後に別の男性との子を産んだ場合に、前夫の子とみなされるのを避けるため、出生届を出さず、子が無戸籍になる事例が相次ぎ、社会問題になっていた。

 今回の見直しは120年以上続く制度を現代の家族観を反映した内容に転換する一歩となる。出生時の状況によって子が不利益を被ることは避けなくてはならない。法制審は生まれてくる子の人権保護を最優先に、無戸籍の子が生じないよう論議を深めるべきだ。

 法務省によると、今年1月時点の無戸籍者は901人。このうち73%は、前夫が父とみなされるのを避けようと母が出生届を出さなかった。戸籍がないと、行政サービスが十分に受けられないばかりか、進学や就職、結婚でも多大な不利益を強いられる。個人の尊厳を脅かす深刻な問題だ。

 民法は結婚200日経過後に生まれた子は現夫の子、離婚後300日以内の子は前夫の子とみなすと規定。結婚後の妊娠・出産を前提にしているが、妊娠を機に結婚するカップルが増えており、時代の変化を想定できていない。

 現行制度では母が離婚後すぐに再婚した場合、前夫と現夫とで父とみなされる推定が重複するのを避けるため、女性に限り離婚後100日間の再婚禁止期間が設けられていた。男女平等に反すると批判を浴びてきたが、今回の見直しにより重複は解消されるため、禁止規定を削除する。

 父子関係を否定する嫡出否認の訴えは、夫にのみ出生から1年間認められているが、未成年の子と子の代理となる母にも広げ、提訴期間も3年か5年に延長する。

 しかし課題は残る。離婚後300日規定の例外として救済する対象は再婚したカップルに限られている。事実婚や、夫から暴力を受け離婚ができないなど、何らかの事情で結婚に至らないケースで生まれた子は前夫の子と推定される。中間試案は再婚していない場合は「引き続き検討する」との言及にとどまっている。

 DNA型鑑定などの科学的手法も導入すべきだ。離婚できないケースであっても、父子の血縁関係が特定できた場合は、出生届を受理できるように制度を整備すれば、子が無戸籍とならずに済むからだ。

 今後、法制審は意見公募を経て最終案を法相に答申するが、離婚後300日規定の妥当性自体も検討してほしい。現代の多様化したライフスタイルや家族観を家族法制に反映させるべきだ。





嫡出推定見直し 無戸籍者生まぬ制度に(2021年2月11日配信『北海道新聞』-「社説」)

 法制審議会の部会が、子が生まれた時期によって父親が誰かを推定する民法の嫡出推定制度を見直す中間試案をまとめた。

 離婚した直後などに別の男性との間に生まれた子の出生届が出されず、無戸籍になるケースが増え問題になっていた。試案は解決に向けた一歩と言える。

 無戸籍者の不利益は就学や就職、住宅の賃借に至るまで多岐にわたり、個人の尊厳にかかわる。

 法制審は、生まれてくる子の人権保護を最優先にしてさらに詰めた検討を行い、無戸籍の子をゼロにする制度改正を目指すべきだ。

 法務省によると無戸籍者は現在約900人で、その7割超の原因が嫡出推定制度にあるとされる。

 暴力などを理由に別れた前夫が戸籍上の父子関係になるのを望まない女性が出生届を出さないためで、見直しが議論されてきた。

 試案の柱は大きく二つだ。

 まず、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子とみなしてきた現行規定はそのまま残した上で、女性が再婚していれば、離婚からの日数を問わず現夫の子と推定する例外規定を設ける。

 しかし、これでは根本解決とは言い難い。対象が再婚カップルに限られ、事実婚や何らかの事情で結婚に至らないケースは前夫の子と推定されるからだ。

 パートナーと婚姻関係を結ばないカップルは今や珍しくない。多様化したライフスタイルを踏まえる必要があろう。

 もう一つの柱は、父子関係の推定を覆す嫡出否認の権利を父親のみから子にも拡大することだ。

 無戸籍者の救済につながる可能性はある。ただし母親には直接の否認権を認めず、子の代理で提訴できる仕組みにするという。

 父子関係の当事者ではないとの理由というが、法制審では男女平等の観点から母親にも認めるべきだとの論議もあった。再検討が求められる。

 疑問なのが、試案にDNA鑑定への視点を欠いている点だ。

 嫡出推定制度は、父子関係を早く確定し子の法的地位を安定させる狙いで明治時代につくられた。

 広く普及したDNA鑑定など科学的な手法を制度にどう組み合わせるか、といった時代に即した議論も必要ではないか。

 親が子を戒めることを認める懲戒権の規定を条文から削除することも盛り込まれた。虐待を正当化する口実に使われていると指摘されており、当然だ。体罰禁止の規定の追加も欠かせない。



中世の遺物(2021年2月11日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 日本では礼儀作法が学ばれ、細心の注意をもって履行されるのは、まさに家庭においてである。1946年の名著「菊と刀」でそう指摘したのは、米国の文化人類学者ルース・ベネディクトだった

▼米国においては家庭が形式的礼儀を一切脱ぎ捨てる場であるのと対照的に、日本では「性別と世代の区別と長子相続権とに立脚した階層制度が家庭生活の根幹になっている」と看破した

▼中世に始まり武家社会に浸透した家父長制を全国民に適用したのが、明治31年(1898年)施行の明治民法である。富国強兵国家を目指す中央集権体制整備にあたり、戸主による家族の統率という封建制度を利用した

▼法制審議会の部会が、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定すると定めた民法の「嫡出推定」を見直す試案をまとめた。前夫の子としたくない母親が出生届を出さず、無戸籍となる子どもの救済は急務だ

▼明治民法で定めた嫡出推定などは家父長制の価値観が色濃い。女性のみ離婚後100日間再婚を禁じ、父子関係を否定する「嫡出否認」の訴えは夫だけに認める。見直しは当然だろう

▼DNA鑑定も可能な時代だ。時代錯誤の規定に驚かされた方も少なくないのではないか。冒頭の指摘は「各々其ノ所ヲ得」の章にある。分をわきまえよということか。価値観の変化を妨げる要因は、五輪を巡る差別的発言に限らないようである。



無戸籍問題 根本解決を/「嫡出推定」見直し(2021年2月11日配信『東奥日報』-「時論」)

 法相の諮問機関、法制審議会の親子法制部会は、子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」見直しに向け中間試案をまとめた。離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす規定の例外を設け、母親が出産時点で再婚していれば「現夫の子」と新たに規定する。また女性に限り離婚後100日間、再婚を禁じる規定も撤廃する。

 嫡出推定は明治時代から120年以上続く制度で、生まれた子と戸籍上の父との関係を早く確定させ、養育や相続などで子の利益を図るという考えに基づく。民法は結婚200日経過後に生まれた子は現夫の子、離婚後300日以内の子は前夫の子とみなすと規定。結婚後に妊娠して出産するのを前提にしている。

 だが近年、妊娠したり出産したりして結婚するカップルが増え、DV問題が深刻化するなど時代の変化にそぐわなくなっている。また、離婚直後に別の男性との子を産んだ場合などに前夫の子とみなされるのを避けるため、出生届を出さない母が増えている。

 このため、子が無戸籍となる事例が相次ぎ、社会問題化した。法務省によると、今年1月時点の無戸籍者は901人。このうち73%は、前夫が父とみなされるのを避けようと母が出生届を出さなかった。無戸籍になってしまうと、住民票の作成や銀行口座の開設などが難しく、進学や就職、結婚でも多大な不利益を強いられる。

 中間試案は、300日規定を維持しつつ、出産時点で再婚していれば現夫の子とする新たな規定を設け、妊娠時点の婚姻関係を基準に父を決める原則の例外とした。

 時代の変化を反映した内容といえよう。ただし、これによって救済されるのは、離婚も再婚も成立した後に生まれた子に限られる。例えばドメスティックバイオレンス(DV)から逃れ、離婚協議もままならない女性が新たな相手との子を産むようなケースは対象とならない。

 また現行制度では、母が離婚後すぐに再婚した場合、前夫と現夫とで父とみなされる推定が重複するのを避けるため、女性の再婚禁止期間が設けられたが、今回の見直しにより重複は解消することから、規定を削除する。

 ほかに父子関係を否定する嫡出否認の訴えは夫にのみ出生から1年間認められているが、未成年の子と子の代理となる母にも広げ、提訴期間も3年か5年に延長する。

 さまざまな当事者の利益に配慮した形だ。とはいえ、中間試案で示された枠組みから、こぼれ落ちる無戸籍者が少なからずいるとみられる。離婚できないようなケースで子が無戸籍とならないよう、今では民間機関も手掛けているDNA型鑑定で血縁上の父と判定できれば、出生届を受け付ける仕組みも考えたい。

 「父が鑑定に非協力的な場合もあり、父子関係が即時に決まらないのは望ましくない」との意見もあるが、親の事情によって救われない子が出てしまうようでは、無戸籍問題の根本的な解決にはつながらないだろう。

 法制審は今後、パブリックコメント(意見公募)も踏まえて議論を進め、最終案を法相に答申するが、DNA型鑑定を証拠とする父子関係の確定や300日規定そのものの撤廃などを求める声は根強い。事実婚も含め、より多くの救済を目指し、議論を深めていく必要がある。



「嫡出推定」の見直し 無戸籍児生まない制度に(2021年2月11日配信『毎日新聞』-「社説」)

 生まれた子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」規定について、法制審議会の部会が見直し案をまとめた。戸籍のない子が存在している問題に対応するためだ。

 社会問題化してから既に十数年がたつ。直ちに法改正すべきだ。

 現行規定では、離婚後300日以内に生まれた子は別れた夫の子とみなす。このため、女性が離婚直後に新たなパートナーとの子を産んだ際に出生届を出さず、無戸籍となるケースが生じている。

 無戸籍だった人は判明しているだけで3393人に上る。今も901人は戸籍がなく、73%は嫡出推定の制度が原因になっている。

 戸籍がなければ、行政サービスが十分に受けられない。学校に通えなかった人もいる。

 見直し案は「離婚後300日」の規定を残しつつ、出産時に再婚していれば、現在の夫の子とする例外を設けることにした。

 女性は離婚後100日経過しなければ再婚できないとする再婚禁止期間の規定も撤廃する。

 一方、父子関係を否定する「嫡出否認」の裁判手続きは現在、夫にしか認められていない。

 だが、夫の暴力で別居していた妻が、新たなパートナーとの子を出産した場合、夫に裁判手続きを求めるのは難しい。夫の子とされるのを避けるため、出生届を出さない対応につながっている。

 こうした状況を考慮し、見直し案は子どもや母親にも嫡出否認の訴えの権利を認めた。

 法改正しても課題は残る。離婚後、新たなパートナーとは結婚しない人も少なくない。この場合は「離婚後300日」の例外が適用されず、問題の解決にならない。

 嫡出推定は、明治時代から残る規定だ。出生後すぐに父子関係を確定させ、子どもを不安定な立場に置かないように設けられた。

 しかし、DNA型鑑定の進歩で父子の血縁関係は特定しやすくなった。結婚についての考え方や家族のあり方も多様化している。

 「離婚後300日」の規定自体が必要かも検討すべきだ。問題の背景には戸籍制度の存在があり、見直しを求める意見も出ている。

 出生時の状況によって、子どもが不利益を受けることはあってはならない。無戸籍の子を生まない制度を早急に整えるべきだ。




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