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涙も怒りもずっと我慢してきた 「黙らせる社会」に抵抗するフェミニズム専門書店「エトセトラブックス」を開いた松尾亜紀子さん(2021年2月14日配信『毎日新聞』)

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フェミニズム専門の出版社「エトセトラブックス」代表の松尾亜紀子さん=東京都世田谷区で

 1月、東京・世田谷区に書店「エトセトラブックス」がオープンした。運営するのは同名の出版社代表、松尾亜紀子さん(43)。「フェミニズムにまつわる本」を一堂に集める。学問書ばかりでなく漫画もあれば小説もある。光あふれる店内は穏やかな空気が流れ、つい長居したくなる。

◆生きづらいのは自分だけじゃない

 2018年冬に大手出版の編集者を辞め、1人で出版社を開業した。「本を読めば、苦しみの原因は社会にはびこる性差別だと気付ける。生きづらいのは自分だけじゃないと思える」

 フェミニズムの視点を知れば「世の中の見え方」が変わる。たとえば痴漢は、2000年代に入るまで性犯罪ではなく男性の「娯楽」として扱われてきた。そんな事実を研究者が雑誌や新聞の分析で解き明かした、牧野雅子著『痴漢とは何か』などを出版してきた。

 独立へと背中を押したのは、医大入試の性差別事件だった。東京医科大が女子を減点していたと報じられた翌日、作家の北原みのりさんらと大学前でデモをした。松尾さんはマイクを握り、思わず「ふざけんなー!」と絶叫した。その姿をテレビで見た親戚の高齢女性たちから電話がきた。故郷は長崎の佐世保。「九州は男尊女卑が根強い。説教されると身構えていたら、『よく言った、ありがとう』と涙声で感謝された」

◆社会は変わる 思い立ったら行動

 ツイッターで「#私たちは性差別に怒っていい」と発信すると反響は大きかった。被害者が声を上げ、訴訟につながった。翌年、同大の合格率は男女ほぼ同じに。「社会は変わる。当事者以外も声を上げて連帯するのが大事だと実感した」

 19年春には、娘をレイプした実父の無罪など理不尽な性暴力の判決が相次いだ。思い立ったら行動。今度は同じ仲間と、花を手に性暴力根絶を訴える「フラワーデモ」を始めた。デモは全都道府県に広がった。杉田水脈衆院議員が性暴力被害者を「うそつき」のように発言した際は署名を集めて自民党本部に運んだ。

◆無意識に自分に呪いをかけていた

 だが意外にも「大学までは優等生で、『男のようだ』と褒められて何の疑問も持たなかった」。社会人になり「仕事で泣いたら終わり。セクハラされても大人の女は笑って受け流すものだと信じてきた」。あるとき、女性の上司2人と仕事をした。「優秀な二人が、時に泣きながら激論する姿に驚いた。感情を言葉にしていいんだと初めて気付いた」。それまでは「女は感情的で男は理知的」という偏見を無意識に受け入れ、自分に呪いをかけていた。

 「私自身がずっと涙を我慢してきた。同時に怒りも」。小学生の時、親族の集まりで祖父母宅に泊まるたび、年上の従兄弟(いとこ)が布団の中で体を触ってきた。隣には妹たちが寝ていたが恥ずかしさに声を出せず、被害は2年続いた。母に打ち明け、信じてもらえたが「よくあることだから」と慰められ、黙るしかなかった。

 「フラワーデモに勇気づけられて、やっと妹に言えた。被害から30年ですよ…」。被害者が声を上げなかったのではなく、社会が聴こうとしてこなかった。その構造は今も同じだ。

◆身近な問題からフェミニズムを考えよう

 先日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言で批判を浴びた。女性役員の比率を上げるのに反対する発言の趣旨は、「女は黙っていろ」。あからさまな差別に批判が集中した。だが、性差別の多くは慣習や制度で社会構造に組み込まれ、見えにくくされている。女性が人権侵害に怒ること自体が、「わきまえていない」とタブー視される。

 松尾さんはフラワーデモで司会をしながら、いつも参加者の話に泣いている。よく泣き、怒り、笑う。豊かな感情表現は、黙らせようとしてくる社会の大きな壁への抵抗にみえる。

 半年ごとに刊行する「エトセトラ」は、より身近な問題からフェミニズムを考える雑誌だ。フェミニストの田嶋陽子さんの特集号では、「メディアが勝手に虚像を作った」と詳(つまび)らかに。最新号は、職場のヒール靴強制をなくす「#KuToo」を始めた石川優実さんが編集長で「女性運動への反動」を特集した。社会学者の森山至貴さんは「現在進行形のフェミニズムを知ることができる」と評する。次号は、韓国ドラマの特集。隣の国でフェミニズムが文化を変えてきた過程を追い、日本もできるはずだと示したい。 (出田阿生)



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