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外出自粛のお願いはなぜ若者に届かず? 原田曜平氏に聞く(2021年2月22日配信『日刊ゲンダイ』)

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原田曜平(マーケティングアナリスト/信州大特任教授)

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が10都府県で延長されたが、街中の人出は減らない。とりわけ、繁華街では若者の姿が目立つ。無症状感染者が少なくないとされる若者に対し、政府は声を大にして外出自粛を求めているが、なぜ「お願い」は届かないのか。どうすれば耳を傾けてくれるのか。若者の動向に詳しい専門家に聞いた。

■政府の呼び掛けは「コアターゲット」が緩すぎる

 ――昨年の宣言下と比べ、自粛ムードが全体的に緩んでいる中、出歩く若者も少なくありません。

 僕の印象では外出を自粛している若者の方が圧倒的に多い。それなのに、「若者のみなさん」とひとくくりにしている点が一番の問題だと思います。確かに、第2波の感染拡大の局面では若者の感染率は高かったですが、足元では低くなってきている。各世代ごとに人口に占める累計感染者の割合をみると、10代と30代は他世代と大きく変わらない。ただ、20代は約0.7%とやや高いので、強いて言えば「20代」ですが、ほとんどの人はキチンと自粛している。どんなタイプの20代が問題なのか。コロナ禍に見舞われて1年も経っているのに、分析ができていないのではないでしょうか。

 ――「夜の街」がヤリ玉に挙げられたように、若者にも冷たい視線を向ける風潮が広がっています。

 一部の人を取り上げてイジメるような構図になってしまうのは良いことではありませんが、少なくとも実態を把握し、ターゲットを絞り込んで発信しないと、メッセージ効果は期待できません。新型コロナ対策も広告も同じです。マーケティングの現場では「コアターゲット」と呼ぶのですが、売り込みたい層に照準を定める。そして、ターゲットに向けた商品を作り、コミュニケーションを構築しないと、広告は届かないと言われています。健康食品のテレビCMを若者に人気のバラエティー番組に挟んでバンバン流し、「元気になれます」といくらやっても、購買にはつながりませんよね。政府の呼び掛けは「コアターゲット」が緩すぎるんです。

 ――「ペルソナマーケティング」はより高い効果が期待できるそうですね。

「ペルソナ」というのは、サービスや商品の典型的なユーザー像のこと。実在しているかのように年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、趣味、価値観、家族構成、生い立ち、ライフスタイル――など、リアルで詳細な情報を設定します。ペルソナのニーズを満たす商品を設計し、刺さるマーケティングを展開すると、ペルソナを設定しないマーケティングよりも成功する確率が高くなります。「ひるおび!」(TBS系)との共同調査(18~39歳の男女1157人対象)では、2度目の宣言発令で半数以上が外出回数が「減った」と回答し、その割合は1人暮らしよりも、実家暮らしの方が多かった。そうしたデータを基にすれば、呼び掛けは「1人暮らしの20代の社会人」に絞れるかもしれない。その人たちが周りから差別されることなく、気持ち良く応じられるよう言葉選びや発信の仕方には気を使わないといけない。温かい言葉遣いが前提です。上から目線ではなく、「否定しない」「寄り添う」というのも今の若者に届くポイントです。「頑張れ」とか「気を引き締めろ」といった言い方は受け入れられにくいですから。

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渋谷に繰り出す人、人、人

Z世代の「チル&ミー」な価値観とは

 ――著書で、10代前半から25歳くらいまでの「Z世代」(90年代半ば以降生まれ)を理解するキーワードは「チル&ミー」だと分析されています。

「チル」は米国のラッパーたちのスラングで、「chill out」(落ち着くの意)の略。日本語では「まったりする」というニュアンスに近い言葉です。コロナ禍によって変化する可能性がありますが、不安や競争の少ない生活を送ってきたZ世代の価値観を表しています。少子化で大学は全入、バイト先は選べるし、時給も上がる。就職活動は超売り手市場で「ダイヤモンドの卵」と呼ばれ、頑張らなくてもやっていける環境で育ってきたのがこの世代です。「ミー」は自己承認欲求や発信欲求の高さを指しています。これまでは芸能人になったり、何か大きな成功をしない限り、承認欲求がそうそう満たされることはなかった。それが、SNSの浸透で友人から「いいね」をもらうのが日常的になり、プチ承認を得られる環境が整っている。Z世代は良くも悪くも自意識過剰になっている傾向があります。言うなれば、プチスター気取り。「アメとムチ」と言いますが、Z世代のヤル気を引き出すのにムチは通用しません。アメでしか動かせない。僕の研究所には学生が30人ほどいるんですが、「こうした方がもっとステキになるのに」という表現を使うようにしています。

■藤井貴彦アナの「共感と応援」がバズり

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 ――号令一下、行動変容を求めるやり方が通じないわけですね。

 若者に非常に刺さったのが、「news every.」(日本テレビ系)の藤井貴彦アナのコメント(1月27日放送)です。「私の周りでもリモート授業であれば東京にいる必要がないからと実家に戻り、学校を辞めた学生さんがいました。実家でリモート授業を受けていて、誰も住んでいない家賃を払い続けている学生さんもいるそうです」と若者に寄り添い、「若者の感染者数は多いままですが、一概に若者に背負わせないようにしなければなりません。誰よりも彼らが感染者数の減少を願っているはずですし、いつか大活躍してやると考える若者もたくさんいるはずです。身近な若者への応援も忘れないでいてください」と呼びかけた。ツイッター上ですごくバズったので、多くの大学生が知っていると思いますよ。

 ――若者に対する共感と応援にあふれています。

 アナウンサーの言葉が若者にこれほど届いたのに、政治家の訴えが響かないのは恥ずかしいことだと思いますよ。2013年のサッカーW杯予選で話題になった「DJポリス」もそうですよね。騒然とする渋谷スクランブル交差点で、「みなさんは12番目の選手。日本代表のようなチームワークでゆっくり進んでください」とアナウンスして、若者を見事に誘導した。お笑いコンビの「ぺこぱ」が人気なのも同じ文脈です。否定しないツッコミが若者にとって心地いいんです。マーケティングの世界では、そうしたトレンドを取り入れるのは当然の発想なんですが、政治の世界ではそれが当たり前にならない。安倍前首相が星野源さんの「うちで踊ろう」に乗っかったのも、菅首相が国会で「〈全集中の呼吸〉で答弁する」と言ったのも、うわべだけ。本質を捉えていないからハズすんです。

 ――東京都の小池知事はユーチューバーのヒカキンやフワちゃんらとの対談動画を流し、ステイホームを訴えていますが、どうですか。

 インフルエンサーを起用するのはいいことだと思いますが、中途半端ですね。単発では見られても、長期的なコミュニケーションにつながっていない。ユーチューブを使えばいいだろう、フワちゃんを呼べばいいだろう、という表面的なものも感じますし。起きている間中、スマホをいじっている若者の生活実態を理解していない。つまり、新しい情報を毎日提供し、飽きられない工夫が必要なんです。ユーチューバーが苦労しているのはそこで、テレビとの両立の難しさもそこにあるんです。

 ――放任するわけにもいかないでしょうし、手だてはないのでしょうか。

 なぜ世論をうまくマーケティングしないのか。マーケティングに携わっている人間としては、不思議でなりません。調査をすれば現状把握も予測もできる。それには定性調査と定量調査が欠かせません。若者を把握したいのであれば、さまざまな属性の若者から聞き取りをして生の情報を集め、そこから質問項目を抽出する。これが定性調査で、マーケッターが想像できないような項目が出てくるのがポイントです。そして、全国で何千、何万サンプルを集める定量調査を実施すれば、リアルな若者の声が浮かび上がってくる。マーケティングは大衆迎合に傾いては決していけませんが、政策を効果的に実行するために必要不可欠なものだと思います。

(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)

▽原田曜平(はらだ・ようへい)1977年、東京都生まれ。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。03年度JAAA広告賞・新人部門賞受賞。「マイルドヤンキー」「さとり世代」「女子力男子」など若者消費を象徴するキーワードを広めた若者研究の第一人者。「若者わからん!」「Z世代」など著書多数。20年12月から現職。




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