FC2ブログ

記事一覧

小6で性暴力、いじめ…「なんで抵抗しなかった」責めた父(2021年2月26日配信『西日本新聞』)

 福岡市・天神の警固公園で、マスク姿のナツキ(22)=仮名、福岡県=はいつもの縁石に座っていた。昨年12月上旬の深夜、気温は5度。ナンパしてきたニット帽の若い男が横に座り、肩に手を回す。「話は合うし、まいっか」。一緒にもつ鍋を食べ、別れた。

キャプチャ


キャプチャ

 「お兄ちゃんはね―」。幼い頃から両親が愛情を注ぐのは優秀な兄。2歳違いでいつも比較された。「家にはいたくない」。大学生になり、授業以外はアルバイトで埋めた。2、3週間に1度は警固公園で人間観察。終電を過ぎたら、カラオケ店で朝を迎える。

 身長150センチの童顔に薄化粧をまとう。「女」と思って誘ってくる男の目当ては分かっている。怖くはない。「俺、中身は男だし、汚れているから」

小6で受けた性暴力、父は私を責めた

 「ドンッ」。小学6年の時、階段を下りているとランドセルを蹴られ、転げ落ちた。見上げた踊り場にいたのは5年の女子。「だっさ」と笑っていた。3年から始まったいじめで、無視され続け「学校中が敵」に思えた。

 夏の終わり、同級生の男子が優しく声を掛けてくるようになる。自宅で一緒にゲームをしていたら「マジックするよ」とひもで両手を縛られた。下半身を触られ、さらに暴行。「ありがとう」。男子はこう言い残して帰って行った。

 翌日、インターネットで調べ、何をされたのかを知る。混乱と怒りと、感情が渦巻く中で「男に生まれ変わった」。親には何も言えず、いつも通りを装った。

 落ち葉舞い散るころ、休み時間に教室の窓から飛び降りようとした。3階だったか、4階だったか。窓から身を乗り出し、校庭が見えた瞬間、担任から体をつかまれた。「離して」。思わず叫んだ。相談しても動いてくれなかったのに、今更なんで。

 帰宅すると、「何があったんだ」と聞く両親に初めて全て伝える。父親は性被害について「なんで抵抗しなかった」と責めた。「気付けずにごめん」は聞けなかった。

 環境を変えようと、自宅から離れた中高一貫校に入ったのに、また、いじめのターゲットになった。先生は「気のせい」とスルーした。「何を言っても無駄。大人は信用しちゃいけない」。中学校生活もうまくいかない。諦めからリストカットをするようになった。

「家庭内性暴力」である親から子への性的虐待は、家庭という閉ざされた空間であることに加え、生活を頼る相手という関係性から、より実態が見えにくい。子どもたちを守るために何ができるのか。

 性的虐待とは、子どもへの性的行為、性行為を見せる、性器を触る・触らせる、裸の写真を撮影するなどの行為。厚生労働省によると、2018年度に全国の児童相談所で対応した性的虐待は1730件で、児童虐待防止法が施行された翌年の01年度から倍増した。一方、米国では性的虐待が全虐待の1割に上る調査結果もあり、1%にとどまる日本では被害が見過ごされているとの指摘もある。

 NPO法人「ふくおか・こどもの虐待防止センター」事務局長の松浦恭子弁護士は「養育者との力関係から抵抗を諦めたり、被害を知られると家族が崩壊すると考えたりして訴えをためらう子もいる」とし、本人の被害申告と第三者の早期発見の難しさを指摘する。

 歳月を経てなお体験が想起され苦しむ場合もある。最高裁は15年、北海道の40代女性が、子どもの頃に親族から受けた性的虐待が原因で06年にうつ病を発症したと認定。親族に慰謝料などの支払いを命じた。今回のAさんも「泣いてもいいんだよと言ってもらえ、安心できる場所をずっと求めていた」と振り返る。

 周りの大人にできることは何か。福岡市子ども家庭支援センター長の河浦龍生さん(68)は「子どものサインを見逃さないこと」と強調する。吐き気や腹痛など身体症状▽家に帰りたがらない▽性非行や万引を繰り返す▽感情を抑制できない-といった体調や行動の変化だ。「安全基地を作れるのは、児相職員や教員など支援職だけではない。子どもが話せる『社会的親』を増やすことが、被害を最小限にする鍵だ」と断言する。

 「子どもの虐待防止センター」理事で、小児精神科医の奥山真紀子さんは、子どもへの暴力防止の予防教育「CAPプログラム」が提唱する「安心、自信、自由を侵されない権利」に触れ「三つの権利が自分にあることと、それらが侵される暴力の具体例を学ぶ権利教育を学校で徹底すべきだ」と語る。同センターは虐待を受けている子や育児が不安な親などから電話相談を受け付けている。

■加害者には「子どもは思い通りになる」という錯覚がある

 虐待の被害者、加害者の心理に詳しい神奈川大心理相談センター所長の杉山崇教授(臨床心理学)に聞いた。

 被害者は苦痛や恐怖に逆らえない体験を繰り返すと、何とかしようという気力を失い、虐待行為が終わるのを待つようになる。名古屋地裁岡崎支部の判決は、こうした「学習性無力感」が考慮されていないのではないか。精神状態を保つために長期間、記憶にブロックをかけ、Aさんのように何かの拍子に思い出すこともよく起こる。

 加害者心理に目を向けると、特徴の一つとして、家庭内の閉鎖的な環境で「子どもは養育している自分の思い通りになる」という錯覚がある。認識のゆがみは他者との関わりの中で気付ける。性衝動を抑えられないという心理的問題もあり、課題を共有できるコミュニティーがあれば、再犯防止の効果を期待できる。 (国崎万智)



「抵抗などできない」実父から性暴力…今も消えない記憶 女性の訴え➡ここをクリック




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ