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生活保護 「権利」なのに高い壁(2021年2月27日配信『新潟日報』)

感染禍を機に制度改善望む声

 新型コロナウイルス禍中の生活困窮者支援策を巡る国会の論戦をきっかけに、生活保護制度への関心が高まっている。22日には大阪地裁で生活保護費の減額を違法とする判決も出た。憲法25条で「健康で文化的な最低限度の生活」は保障され、生活保護の申請は国民の権利だ。だが消極的な行政の姿勢や、親族への「扶養照会」など申請のハードルの高さが課題となっており、国も弾力的な運用方針を示す。現状を知る新潟県内関係者は「ウイルス禍を機に制度の改善を」と訴える。
(報道部・小柳香葉子、西巻賢介)

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キャプチャ
生活保護の申請をためらった経験がある50代の女性。申請前は「精神的にも限界だった」

◎誤解、気後れ 申請ためらう

 国が「ためらわずに相談を」と呼び掛ける生活保護。しかし、当事者の中に「甘えてはいけない」といった誤解がある上、申請窓口となる自治体の福祉事務所の後ろ向きな姿勢に気後れしてしまうケースもある。県内関係者は「多くの福祉事務所は適切に対応している」とするが、相談に応じてもらえず困窮を深めた人もいる。

 「誰もが申請できるものではない」。昨夏、下越地方に住む50代の女性が生活保護について自治体窓口で問い合わせた際、職員から言われた言葉だ。「どんな人が申請できるのかと制度について聞きたかっただけ。何も聞かないで(自席に)戻っていった」と憤る。その職員は直接の担当ではなかったが、担当者につなぐこともなかった。

 女性はシングルマザーで2人の子どもを育てる。見た目には分からないが、複数の持病があり、数年間働けていない。児童扶養手当などの公的支援と貯金でやりくりしてきたが、昨夏に貯金が底をついた。ずっと楽な生活ではなかったが、「甘えてはいけない。頑張れば働ける自分は対象ではない」と思っていた。

 役所に取り合ってもらえなかった女性は申請を諦め、フードバンクに助けを求めた。その後、フードバンク職員の助言を受け、昨年末に申請することができた。その際、担当した職員から「あなたのような人こそ受けるべき」と言われた。「お金がなくて精神的に追い詰められたけれど、今は気持ちが楽だ」と安心した表情を見せる。

 生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度だ。ただ、「税金で生活させてもらっている」と肩身の狭さを感じる利用者は少なくない。

 夫の病気がきっかけで3年ほど前から生活保護を利用する県内の40代女性は、昨年自身にがんが見つかった。仕事をやめ、治療に専念している。高額の治療も無料で受けられ、「命をつなぐ一筋の光」と感じている。

 一方で、自治体の担当職員は、家族で生活再建したいという女性の意思を顧みず、離婚を勧めるなど家族関係に立ち入ってきた。「(離婚させることによって)支給額を減らしたいのかな」と思ったという。

 元気になって働きたいが、職員の対応がそうした気持ちを揺さぶる。「治るかどうか分からない私より、新型ウイルスで困った人にお金を使ったほうがいいのではとも思ってしまう」

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◎根強い偏見 求められる専門職

 新潟県によると、県内1月の生活保護新規申請件数は208件。1月までの本年度の月平均は206・8件で、2019年度の月平均210・2件よりも少なく、新型ウイルスの感染拡大以降も例年とほぼ変化はない。一方で減収になった人が借りられる国の「緊急小口資金」などはニーズが高い。識者は「生活保護は必要な人の2割ほどしか利用していない」として、付きまとう偏見の重さを強調する。

 新潟大の中村健准教授=公的扶助論=は生活保護の申請状況について、「新型ウイルスの影響がないのではなく、『困っている』と言えない人がいるのかもしれない」と話す。

 1月の国会では菅義偉首相が「最終的には生活保護という仕組みもある」と発言。野党が問題視し、制度の課題にも波及した。追及した野党議員も「生活保護に陥らせないために」と述べるなど、中村准教授は「社会全体に『生活保護にならないうちに』という偏見がある」と指摘する。

 根強いマイナスイメージを表す代表例が「扶養照会」だ。窓口となる福祉事務所が申請者の親族に援助できるかを確認する手続きで、「家族に知られたくない」と申請をためらう大きな要因となっており、政府は緩和方針を示している。

 生活保護担当の自治体職員らでつくる「にいがた公的扶助研究会」の上村正朗事務局長(64)は、積極的に制度を周知する県内自治体の少なさも偏見が一因とみる。「生活保護世帯が多いと住民からの反発も考えられ、増えてはいけないというのが根底にある」

 改善には何が必要か。上村さんは受給しながら就労支援で仕事を始めた人の紹介や、「困った時はお互いさま」という、偏見をなくすメッセージの発信を、住民に近い市町村こそ積極的に行うべきとする。

 また、福祉事務所で申請を阻む「水際作戦」をなくし、相談者に的確なアドバイスを送れるよう「(制度を十分に理解する)福祉の専門職を育てることが大事」と語気を強める。

 命を守る制度も使いづらければ必要な人に届かない。元路上生活者らの社会復帰を支援するNPO法人「自立支援ネットにいがた」の寺尾知香子理事長(70)は「軽度の知的障害者ら、公助が先でなければ一人で生活できない人もたくさんいる。使いやすくなるよう国や自治体が考えてほしい」と語った。




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