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(論)孤独・孤立(2021年2月28日・3月3・4・8・10・12・・1516・17日・4月11日)

コロナ下の聖火リレー 感染拡大時の対応明確に(2021年4月11日配信『毎日新聞』-「社説」)

 3月下旬から始まった東京オリンピックの聖火リレーに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が出始めている。

 大阪府は13、14日に予定していた府内全域の公道でのリレーを中止した。約180人のランナーは、一般観客を入れない万博記念公園の中を走る予定だ。

 今後も感染状況の悪化が懸念される。「まん延防止等重点措置」は大阪府など3府県に続き、東京都、京都府、沖縄県でも適用されることが決まった。

 大会組織委員会と各地の実行委員会は、感染拡大時の対応を明確にしておくべきだ。

 沿道ではすでに何度も密集ができて問題となっている。名古屋市では中心部の繁華街や熱田神宮に大勢の観衆が集まった。しかし、リレーは中断せずに続けられた。

 組織委は大勢の人が沿道に密集した場合、その区間のリレーを取りやめることもあると発表していた。だが、急に計画を変更することは容易ではない。

 ランナーの前を行くスポンサー企業の車両が大音量で音楽を流し、派手な宣伝をしていることにも、批判が相次いでいる。

 リレーが行われた三重県の鈴木英敬知事は「『盛り上げるぞ』という演出がすべて適切だったのか」と苦言を呈した。

 過剰な演出は「密状態」を助長しかねない。感染防止で大きな声も出せない中、お祭り騒ぎのような雰囲気を不快に思う人もいるだろう。配慮が必要だ。

 聖火リレーにスポンサーがついたのは、「商業五輪」の始まりと呼ばれる1984年ロサンゼルス五輪からだ。以来、企業からの多額の協賛金がリレーの運営を支えてきた。

 とはいえ、五輪の高潔なイメージが損なわれないよう、企業側には節度が求められる。

 島根県は、組織委の感染対策の不備などを理由に中止を一時検討した。最終的には、スポンサー車両の音量を下げるなどの対応を組織委が企業側と調整するという条件で実施することになった。

 リレーはまだ序盤だ。7月23日の開会式まであと100日以上続く。感染防止と注意喚起をさらに徹底し、計画を改善していく必要がある。



孤独・孤立問題 省庁連携のもと対応を急ぎたい(2021年4月11日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルス感染拡大に伴う孤独や社会的孤立の問題で、初の担当相を設けて対策に取り組んでいる。1億総活躍担当相が兼務で担当閣僚となり、内閣官房には「孤独・孤立対策担当室」を新設した。コロナ禍で、生活困窮者や自殺者が増加しており、担当相はリーダーシップを発揮して各省庁にまたがる問題に横断的に対応し、これ以上追い詰められる人を増やしてはならない。

 警察庁のまとめでは、2020年の自殺者数は2万1081人に上った。前年から912人増え、自殺者の前年からの増加は09年以来となった。中でも小中高生の自殺者数は、統計のある1980年以降最多の499人で、2019年に比べると100人増。原因・動機は、うつ病などの精神疾患のほか、進路の悩み、学業不振が多かった。

 年代別では10、20代の増加が顕著で、前年と比べ522人増えた。女性の自殺者も目立ち、前年比935人増の7026人だった。専門家はコロナ禍の社会不安が複合的に影響し、孤立することで、うつ状態となり、自殺を引き起こしやすい状況が生まれていたと分析している。

 厚生労働省によると、コロナ禍による学校の長期休校や、外出自粛により家族で過ごす時間が増えた影響で、学業や進路、家族の不和などに悩む人が増加したとみられる。パートやアルバイトで働く女性も多く、コロナの影響で雇い止めになるなどしており、県内でも派遣スタッフが一度に数十人単位で職を失ったと聞く。事態は深刻で対策を急ぐべきだ。

 政府は「孤独・孤立問題」への緊急支援策として、自殺防止や生活困窮者への住まい確保、引きこもり状態にある人の学習の手助けに取り組んでいるNPO法人に対する財政支援などに60億円を充てる。

 具体的には、公営住宅や都市再生機構の空き部屋をNPOに安く貸し、住まいがない人に低い家賃で提供する仕組みも創設する。電話や会員制交流サイト(SNS)での相談体制の強化や、新たな相談員の養成を図るが、対策は多くが「民間頼み」で実効性は不透明なままだ。

 孤独や孤立は定義や指標があいまいな上、自殺防止や引きこもり支援、高齢者の見守り、仕事や住まいを失った生活困窮者支援など、対応施策は多岐にわたる。担当省庁は、内閣府や厚労省、文部科学省、国土交通省、農林水産省など複数にまたがっているため縦割りになりがちだが、支援から抜け落ちる人があってはならない。

 政府は、1月下旬の国会審議で、国民民主党から、孤独担当相を置くよう求められたが、首相が「担当は厚労相」と答弁した経緯があり、担当相の設置は急ごしらえ感は否めない。しかし、孤独・孤立問題は切迫している。18年に担当相を置いた英国の事例も参考に、官民が一体となってきめ細やかな施策を展開する必要がある。



山椒魚の孤独(2021年4月11日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 「ああ、寒いほど独りぼっちだ!」。井伏鱒二の小説「山椒魚(さんしょううお)」で、肥大したために岩屋から出られなくなった主人公がもらす。状況から、たぶん季節は水もぬるむ春。それでも寒くなるほどつらい孤独だ。

 会合等の自粛で”おこもり”を強いられる今の状況に似るかもしれない。「悲嘆にくれている者を、いつまでもその状態に置いとくのは、よし悪しである。山椒魚はよくない性質を帯びてきたらしかった」。孤独が精神にもたらす負の影響が読者に伝わってくる。

 菅義偉首相が孤独問題の担当相を任命し、対策担当室を設置。政府を挙げてこの問題に取り組むと表明した。コロナ禍の長期化による問題の深刻化が背景にある。深刻さは自殺者数に表れている。2020年の自殺者は2万1081人で、11年ぶりに前年よりも増加した。

 特に女性は7026人と過去5年で最多。非正規で働く人が影響を強く受けたとみられる。小中高生も過去最多だ。長引いた休校が子どもたちの心理をむしばんだのだろうか。米国内での調査だが、孤独な高齢者は睡眠障害などを発症しがちで、そうでない高齢者より早死にのリスクが14%高かった。

 「注意深い心の持ち主であるならば、山椒魚のすすり泣きの声が岩屋の外に漏れているのを聞き逃しはしなかったであろう」。暖かくなっても孤独に震える人がいる。必死に社会との接点を探る人がいる。身近な人のシグナルを聞き逃さないように努めたい。





[孤独・孤立対策] 効果的な支援続けたい(2021年3月28日配信『南日本新聞』-「社説」)

 孤独や社会的孤立の問題に対応するため、菅政権は坂本哲志1億総活躍担当相を担当閣僚とする「孤独・孤立対策担当室」を新設した。厚生労働省や文部科学省などの職員を集めて省庁を横断して取り組む。

 衆院選へ向けて政権の新たな看板政策にしようという思惑も透けるが、長引く新型コロナウイルスの感染まん延で自殺や経済的困窮の状況が深刻さを増す中、政府がようやくこの問題に本腰を入れ始めたことは評価できよう。

 首都圏の緊急事態宣言は解除されたものの、特に非正規雇用の女性などは全国的に厳しい立場に置かれたままだ。縦割りになりがちな担当省庁をうまく連携させて、きめ細かく効果的な支援を続けてほしい。

 コロナ禍で明らかになった孤独・孤立の課題は多岐にわたり、しかもそれぞれが関連している。女性の自殺、非正規で働く人の解雇・雇い止め、ひとり親家庭の困窮と子どもの貧困、家庭内暴力などである。

 警察庁によると、昨年の自殺者数は2万1081人で、11年ぶりに前年から増えた。とりわけ女性の増加が目立ち、7026人と過去5年で最多だった。今年1、2月の女性の自殺者は暫定値で1096人を数え、増加傾向はなお続いている。

 大きな要因として雇用状況の悪化が指摘される。女性はパートやアルバイトなどで働く人が多く、コロナ禍で雇い止めに遭ったり、勤務シフトの減少で収入が落ち込んだりして追い詰められ、孤立していく構図が浮かぶ。

 内閣府の有識者研究会が「女性不況の様相」と表現した経済的な打撃に加え、外出自粛に伴うメンタルヘルスの不調なども影響したとみられる。

 こうした事態を受け、政府はひとり親だけでなく、両親がいる住民税非課税の子育て世帯にも子ども1人当たり5万円を配る給付金の支出を決めた。

 さらに、自治体への交付金の使途として、生理用品の無料配布などの活用を認めた。電話や会員制交流サイト(SNS)で自殺防止に取り組む相談事業を行うNPO法人にも助成する。

 孤独・孤立担当相の新設は、1月下旬の国会審議で、英国が2018年に世界で初めて設けた孤独担当相を日本でも創設するよう国民民主党が迫ったのがきっかけだった。

 政府が孤独・孤立問題や女性支援の対応を急いだ背景には、「公助」の前に「自助」を強調してきた菅義偉首相の姿勢が批判を浴びたことに対する危機感もあったに違いない。

 先月の緊急フォーラムでは、支援団体から首相に「市町村長に命を支える取り組みを一緒にやろうと呼び掛けてほしい」との声が出た。政府、自治体、民間が力を合わせ、必要な人に確実に支援の手が届くようにしたい。





「無縁社会」(2021年3月17日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 手塚治虫の漫画「火の鳥・未来編」の主人公は不死の体を与えられ、生き物が死に絶えた地球でただ一人生き残る。その使命はこの星の再生を見守ることだった。実に30億年もの間、孤独に地球の生まれ変わりを待つ。寂寥(せきりょう)感は気の遠くなるほどだ

▼今も暗闇の中で孤立し、生きる気力を失う人は多い。2020年の自殺者は09年以来の増加となった。県内も同じ傾向である。新型ウイルス禍が広がった影響も大きい

▼「無縁社会」という言葉が流行語になったのは10年ほど前だった。地縁や血縁の結びつきが弱まり、人と人の関係が薄くなる。会員制交流サイト(SNS)が発達した半面、ネット空間でむなしさを感じる人も多いようだ。引きこもりや孤独死など社会から孤立する状況は昨今、ますます深刻になっている

▼「孤高」といえば、他人に頼らず自らを律して生きる気高さが感じられる。こうした孤独は尊かろう。だが、真の孤独は絶望状態を意味する。本紙生活面の連載「おじさん図鑑」で以前、エッセイストの飛鳥圭介さんが書いていた。命の瀬戸際に立つ孤独な人は想像以上に多い、と

▼英国では18年、孤独が健康に悪影響を及ぼすとして担当大臣が新設された。わが国でも坂本哲志1億総活躍担当相が孤独問題の担当を兼務することになったが、本格的な対策はこれからだ

▼年度替わりが近づく。暮らしの環境が変わり、孤独を感じる人が増える時期のようだ。多くの人が孤独に沈む社会のありようは変えられるだろうか。





孤独・孤立対策 支援団体と連携し地道に(2021年3月16日配信『山陽新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス禍で深刻になる自殺や失業など「孤独・孤立」問題に政府がようやく取り組み始めた。

 坂本哲志1億総活躍担当相が担当になり、内閣官房に対策担当室が新設された。関係省庁の連絡調整会議の初会合も先週開かれた。夏に策定する経済財政運営指針「骨太方針」に対策を盛り込む考えという。

 「まずは自助」の理念を掲げてきた菅義偉首相は1月の国会審議で、暮らしを守るための施策が十分かと野党に問われ「最終的には生活保護という仕組みもある」と発言し反感を買った。そうしたことから、もともとは野党が主張していた孤独・孤立対策に本腰を入れたように映る。

 問われるのは具体策である。求められる対策は自殺防止や引きこもり支援、高齢者の見守り、仕事や住まいを失った生活困窮者支援など多岐にわたる。そもそも孤独・孤立の問題は定義や指標があいまいで、そこから検討を始めなければなるまい。

 政府は会員制交流サイト(SNS)を活用した相談対応や民間支援団体との連携に向け作業部会を設置する。困窮する子育て世帯に特別臨時給付金を再支給する方向でも検討に入った。

 まずは生活困窮の対策や、支援を要する人を見つけるための相談体制の整備を急がねばならない。とりわけ、子育て中などにもかかわらず「望まない孤独」に陥ることは防いでもらいたい。

 昨年の自殺者数は2万1077人(暫定値)で、前年と比べて908人増えた。リーマン・ショック後の2009年以来、11年ぶりに増加に転じ、特に女性は千人近くも多かった。

 外出自粛で夫の在宅時間が増え、妻に対するドメスティックバイオレンス(DV)が悪化した。失業により多くのひとり親家庭が困窮状態に陥った。外出自粛に伴う精神面の不調などもあり、多くの人が孤独に苦しんでいる。

 とはいえ、孤独・孤立は、コロナ禍が初めて生み出した問題ではない。日本だけの課題でもなく、世界で先駆的に孤独担当相が任命されて話題となったのは18年、英国でだった。現代社会が抱える病理が、コロナ禍によって一層顕著になり、社会全体の課題として看過できなくなったと言える。

 日本では支援策が内閣府や厚生労働省、文部科学省、国土交通省など複数の省庁にまたがっており、そこから抜け落ちる人が多いと指摘される。今回、縦割り行政でなく、政府一体で推進する姿勢を示したことは評価できる。

 急ごしらえで対策を本格化させただけに、どこまで実効性のある対策を打ち出せるかが鍵となる。特効薬が見つからない問題も多かろう。支援団体などの声に耳を傾けて丁寧に議論を重ね、地道な取り組みを続けていくことが欠かせない。





【孤独・孤立対策】悩む人につながる支援を(2021年3月15日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの流行が長引き、外出自粛などで人とのつながりが薄れて、「望まない孤独」や社会的孤立に苦しむ人が増えている。

 政府が対策に乗り出した。菅義偉首相は孤独・孤立問題の担当相を新設し、坂本哲志1億総活躍担当相を兼務で充てた。課題が多岐にわたるため、全ての省庁を参加させた政府の連絡調整会議を設けた。

 一人で困りごとを抱え込んでいる人が相談でき、適切な支援につなげられる体制を構築せねばならない。

 海外では、英国がコロナ禍以前の2018年、孤独が健康に悪影響を及ぼすとして「孤独担当相」を設置した。孤独をなくすことを政府目標としている。

 日本社会でも以前から多くの人が苦しんできた問題で、それがコロナ禍によって顕在化したと言えるだろう。孤独や社会的孤立は、本人が追い込まれた末に自ら死を選ぶ危険性がある。国が解決すべき問題として対策に乗り出した意義は大きい。

 状況の深刻さは数字に表れている。昨年の自殺者数は2万1077人(暫定値)で前年と比べ908人多かった。リーマン・ショック後の09年以来11年ぶりの増加で、コロナ禍がさまざまに影響している可能性が指摘されている。

 特に女性と子どもの命に関わる問題になっている。女性の自殺は前年より千人近くも増えた。うつ病など健康問題を理由とする人が多い。小中高校生の自殺は統計のある1980年以降最多の479人に上った。

 女性は非正規雇用が多く、コロナ禍で収入減や失業に遭って困窮する人が増えている。子どもは一斉休校で生活環境の激変に見舞われた。

 社会や地域とのつながりも薄れ、助けを求める声を上げられず追い込まれる状況が生まれている。

 外出自粛などが影響し、女性へのドメスティックバイオレンスや子どもへの虐待が激化している場合もある。若者が心身を悪化させて引きこもりになったり、高齢者が孤独感から活力を失ったりもしている。

 さまざまな要因が絡み合っており、解決に向けては一体的な支援を行う必要がある。政府が省庁横断の取り組みを目指していることは評価したい。

 相談窓口は複数に分かれるのではなく、国民が相談すれば適切な支援に振り分けてもらえる総合的な窓口に一本化すべきだろう。悩む人に寄り添ってきた民間支援団体の意見を取り入れることも欠かせない。

 日本では、生活上の問題が生じたときに「自己責任」とみなす傾向が強い。しかし、個人の努力だけで解決できない問題は多くある。

 ましてやコロナ禍である。政府は国民に対して、相談を呼び掛けるメッセージを繰り返し伝えねばならない。悩みを抱え込んでいる人が「助けてほしい」と声を上げやすい社会状況をつくる必要がある。
 孤独・孤立の問題に特効薬はなく、地道な取り組みを重ねるしかない。国は国民の心身を守るため、対策に腰を据えて臨むべきだ。





孤独・孤立対策/早急に支援の具体策を(2021年3月13日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 長期化する新型コロナウイルスの感染まん延で自殺や窮乏などが深刻さを増す中、政府はようやく対策に本腰を入れ始めた。1億総活躍担当相を担当閣僚とし、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を新設。厚生労働省や文部科学省などの職員を集めて省庁横断で取り組む態勢を取り、支援団体代表らを招いた緊急フォーラムも開催した。

 もともと1月下旬の国会審議で国民民主党が孤独担当相を置いて生活困窮者に対する支援を拡充するよう求めた。その時、菅義偉首相は「担当は厚労相」と受け流したが、2月に入ると一転、その主張を丸のみした。自民党は特命委員会で対策の検討に入り、公明党も対策本部を設置した。

 首相は経済成長を優先し「公助の前に自助」と強調してきたが、秋までには実施される衆院選に向けて看板政策にしようという思惑も透けて見える。ただコロナ禍で見えてきた課題は▽女性や若者の自殺▽非正規で働く人の解雇・雇い止め▽ひとり親家庭の困窮と子どもの貧困▽ドメスティックバイオレンス(DV)-など多岐にわたる。

 昨年4月に初めて緊急事態宣言が発出されて以来、それぞれ状況は日々悪化しており、早急に効果的な支援の具体策を打ち出す必要がある。縦割りになりがちな担当府省庁をうまく連携させ、支援からこぼれ落ちてしまう人を出さないようにできるかが問われよう。

 警察庁によると、2020年の自殺者数は2万1077人。前年比で908人増えた。年々減り続けてきた自殺者が前年を上回るのは09年以来のことだ。男女別で見ると、男性が11年連続で減少する一方、女性は増加に転じ、7025人と過去5年で最多となった。

 今年1月も女性の自殺者は525人を数え、前年同月比で30人増と増加傾向は続いている。背景の一つに不安定な雇用がある。女性はパートやアルバイトなど非正規で働く人が多くコロナ禍で雇い止めに遭ったり、勤務シフトの減少で収入が落ち込んだりして追い詰められ、孤立していく構図が浮かぶ。

 内閣府の有識者研究会は女性への影響が特に深刻とし「女性不況の様相」と指摘している。総務省の労働力調査では昨年10~12月期、正社員は14万人増加したが、非正規は78万人も減少。うち50万人は女性だった。とりわけ、シングルマザーの場合、困窮で子どもの将来が閉ざされかねないと懸念が広がっている。

 支援団体には「食事の回数を減らした」「死にたい」などと悲痛な声が寄せられている。新学期を控えて入学や進学の準備で支出が増える、この時期には現金給付などの支援が必要になろう。

 コロナ禍の影響は経済面にとどまらない。内閣府によると、DV被害の相談件数は昨年4~11月の各月で前年比の約1.4~1.6倍となり、8カ月の合計は約13万2千件で過去最多。児童虐待の深刻化につながる恐れもあり、相談体制の拡充や相談員の待遇改善を急がなければならない。

 昨年は小中高生の自殺者も過去最多になるなど、社会のひずみが次々と噴き出した。中にはまだ実態がよく分からないものもある。各府省庁が情報やデータを突き合わせ、支援団体の協力も得て実態を詳しく把握し、支援がきちんと必要とする人に届くようにしてほしい。





孤独・孤立対策 不安に寄り添う社会にしたい(2021年3月10日配信『読売新聞』-「社説」)

 一人で不安を抱える人たちに寄り添い、手を差し伸べられる社会づくりを進めていきたい。

 昨年の自殺者は約2万1000人に上り、11年ぶりに増えた。女性の増加が著しい。女性の働き手が多い飲食業などがコロナ禍で打撃を受け、仕事や家庭での悩みが深刻化しているという見方もある。

 地縁や血縁などにもとづく社会的なつながりが弱まっているところに、新型コロナウイルスの流行が追い打ちをかけた。周囲から手助けを得られない人が増えているのではないか。

 高齢者には、感染を恐れて外出を自粛し、家に閉じこもりがちな人が少なくない。大学がオンライン授業になり、他人と話す機会が減ったという若者もいる。

 望まない孤独は、心身に悪影響を及ぼすだけでなく、医療費の増加や生産性低下を招くという指摘がある。孤独や孤立は、社会全体の課題である。

 英国は、2018年に孤独問題担当相を設けた。各省の横断的な組織が民間と協力し、カフェや文化的な拠点といった様々な居場所をつくっている。孤独を感じる人に、かかりつけ医が地域の活動を紹介しているという。

 こうした状況を踏まえ、政府は孤独や孤立への対策を強化している。菅首相は、坂本1億総活躍相を担当閣僚に任命した。

 関係省庁でつくる連絡会議を発足させ、5月までに具体策をまとめるという。支援が行き届かない現状の問題点を分析し、各省の縦割りを排して重層的な対策に取り組むことが重要である。

 喫緊の課題は、孤独や孤立を招く生活困窮への対応だ。安定した仕事や住まいがないという切迫した問題に加え、病気や障害、親の介護、子供の教育など、それぞれの事情が背景にあろう。

 自治体やNPOなどによる相談体制の整備も急がれる。SNSなどを活用し、休日や深夜でも相談しやすくすることが有効だろう。専門的な知識やノウハウが学べるように、研修体制を強化して人材の育成に力を注いでほしい。

 周囲へのSOSの出し方を学校で教えるなど、声をあげやすい環境を整える施策が大切だ。

 家族がいて、経済的に困窮していなくても、孤独に悩む人はいる。ボランティア活動やスポーツ、文化を通じた幅広い交流を活発化することが望ましい。

 一過性の取り組みに終わらせず、当事者の実情を踏まえた適切な対策を継続してもらいたい。





孤独・孤立対策 早期に実効性ある政策を(2021年3月8日配信『新熊本日日聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会環境の悪化によって、自殺者の増加や生活窮乏などの問題が深刻さを増している。政府は坂本哲志・1億総活躍担当相に「孤独・孤立」対策の担当を兼務させ、内閣官房に担当室も新設。各省庁職員らによる横断的な取り組みをスタートさせた。

 状況が悪化する中、縦割り行政ではなく、政府一体で対策を推進する姿勢は評価できる。だが、ようやく本腰を入れ始めた感は否めず、具体策も2022年度予算案に盛り込むことを念頭に検討している。これ以上困難に直面した人をなくすためには、一日も早く実効性のある政策に着手すべきだ。

 警察庁によると、20年の自殺者は2万1077人。前年より908人増えた。年々減り続けていたが、前年を上回るのは09年以来だ。男性が11年連続で減少した半面、女性は増加に転じ、7025人と過去5年で最多だった。熊本県内の自殺者も前年より多い296人だった。

 自殺の背景の一つに、雇用の不安定さが増していることが挙げられる。厚生労働省の調べでは、20年の有効求人倍率は前年比0・42ポイント減の1・18倍で、1975年以来45年ぶりの大きな下げ幅だった。企業の先行き懸念が強まり、求人を大きく縮小したことなどが影響した。

 このため、毎年増え続け2千万人を超えていた非正規労働者が昨年減少に転じた。特に女性が深刻で、1月の労働力調査によると非正規の女性は前年同月比68万人減の1407万人。減少幅は男性の3倍超で、休業者数も136万人と男性の1・3倍に当たる。内閣府の有識者研究会が「女性不況の様相」と指摘するほどである。

 企業業績が悪化する中で、正社員数はほぼ変動していないため、非正規労働者が雇用の調整弁になっているとみられる。休業や失業で家に閉じこもったり、収入の落ち込みで追い詰められたりすれば、孤立につながりかねない。年度末に人員整理に踏み切る企業も予想され、解雇や雇い止めはさらに増える恐れがある。

 このほかドメスティックバイオレンス(DV)や、ひとり親の困窮も深刻で、児童虐待につながる可能性もあるため看過できない状況だ。親の失業やアルバイト先の閉店などによって経済的苦境に陥った学生も県内をはじめ全国で増えている。1月に熊本市で行われた食料配布会には370人が列をなした。コロナ禍で顕在化した問題は互いに関連している点も少なくなく、既存の政策を見直した上で、抜本的かつ包括的な対策につなげてもらいたい。

 政府は、野党の提案を丸のみする形で対策に乗り出した。秋までに実施される衆院選に向けて争点をつぶし、看板政策にしようとの思惑が透けて見える。国民の反発を招いた首相の「公助の前に自助」発言の影響を払拭[ふっしょく]したいとの思いもあるだろう。しかし、まずは国民の痛切な声に耳を傾けることが先決である。





「孤独・孤立」問題対策 自己責任論まず脱せよ(2021年3月5日配信『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの影響で仕事を失い貧困に陥ったり、死を選んだりする人の増加に歯止めがかからない。「自助」をいくら強調しても状況は改善しない。もはや菅義偉首相も放置できなくなったようだ。背景にある孤独や孤立の問題の解決に、政府として取り組むという。

 先月半ば、坂本哲志1億総活躍担当相に「孤独問題」担当の兼務を指示した。厚生労働省や文部科学省の職員ら約30人で孤独・孤立対策担当室を内閣官房に新設した。全省庁が加わる連絡調整会議を近く設置する。

 縦割りの対応では、公助の網から漏れる人も多かろう。省庁横断で対策を考え、実行しようとする姿勢は評価したい。

 ただ問題や原因は多岐にわたる。非正規労働者の解雇や、女性と若者の自殺だけではない。引きこもり、1人暮らしのお年寄りなど、対応すべきテーマは山積している。どれだけ実効性のある具体策を打ち出せるかが問われよう。

 政府は、この夏に策定する「骨太方針」に対策を盛り込むというが、遅すぎる。迅速な対応が求められる。

 菅首相は当初、担当大臣を置くつもりはなかった。1月の国会審議で、創設を国民民主党に迫られたが、「担当は厚生労働相」と答えていた。生活困窮者への支援が不十分と国会で指摘され「最終的には生活保護という仕組みもある」と述べ、批判を浴びた。それも方針転換の要因になったようだ。

 そもそも孤独担当大臣は英国が2018年に新設した。国内経済に年5兆円近い損失を生むとの試算なども、社会全体で取り組む機運を高めたのだろう。

 日本でも翌19年の参院選で国民民主党が主要公約に掲げた。菅政権はその主張を「丸のみ」して看板政策とする考えだ。今秋までに実施される衆院選をにらみ、主要野党間にくさびを打ち込みつつ、争点をなくす一石二鳥の思惑があるに違いない。

 ただ現状は、そんな思惑がかすむほど深刻だ。しわ寄せは非正規労働者や女性、子どもに集中している。総務省の調査では、非正規労働者は昨年、前年より75万人減った。うち50万人は女性であった。

 経済的困窮などを背景に自殺者が昨年、11年ぶりに増加に転じた。特に女性は14・5%も増えた。小中高校生も統計のある1980年以降最も多かった。警察に寄せられたドメスティックバイオレンス(DV)の相談は昨年、過去最多となった。被害者の8割近くが女性だった。

 こうした問題は、コロナ禍が顕在化させたと言えよう。





社会を挙げて孤立を防げ(2021年3月4日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 新型コロナウイルスの流行が、人びとの暮らしを直撃している。外出自粛などで社会や地域とのつながりが薄れ、悩みや不安をひとりで抱え込むことも少なくない。

 厚生労働省によると、2020年に自殺した人は約2万1千人(暫定値)で、前年より約900人増えた。増加はリーマン・ショック後の09年以来、11年ぶりだ。とくに女性の自殺が7025人と前年より15%増え、小中高生も計498人と過去最多だ。

 コロナ禍による孤立や孤独が影響しているのは確かだろう。悩みに寄り添い、必要な支援につなぐ仕組みづくりを急ぎたい。

 まずは相談体制の整備だ。行政だけでなく、NPOによる電話相談なども多い。少しでもスタッフを増やしたり、受付時間を延ばしたりする努力が続いている。若い世代向けにSNS(交流サイト)を使うところもある。こうした取り組みを後押ししたい。

 相談が来るのを待つだけでなく必要な情報や支援を個別に届ける工夫もいる。地域の見守り活動や、居場所づくりも大事になる。

 抱えている悩みは人によってさまざまだ。失業などの経済問題や将来不安、人間関係、病気、暴力・虐待など、複数にまたがることも多い。縦割りをなくし、包括的な支援につなげたい。もちろん、それぞれの分野で支援の専門家を育成・確保することは大前提だ。

 困ったとき、苦しいとき。SOSを出すのは当たり前のことだ。例えば小学校の授業のなかで、援助を上手に受ける力「受援力」について教えることなどが考えられよう。過度に「自己責任」と思いすぎてはいけない。

 社会的な孤立の深刻化を受けて、菅義偉首相は新たに孤独・孤立問題を担当する大臣を置き、内閣官房に専門の部署を設けた。近く関係省庁を横断する連絡会議もスタートさせる。政府と与野党が協力し、早急に対策を練るべきだ。

 孤立・孤独は、すべての人にかかわる問題である。社会の総力を挙げて、大切な命を守りたい。



孤独・孤立対策 早急に支援の具体策を(2021年3月4日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 長期化する新型コロナウイルスの感染まん延で自殺や窮乏などが深刻さを増す中、政府はようやく対策に本腰を入れ始めた。1億総活躍担当相を担当閣僚とし、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を新設。厚生労働省や文部科学省などの職員を集めて省庁横断で取り組む態勢を取り、支援団体代表らを招いた緊急フォーラムも開催した。

 もともと1月下旬の国会審議で国民民主党が孤独担当相を置いて生活困窮者に対する支援を拡充するよう求めた。その時、菅義偉首相は「担当は厚労相」と受け流したが、2月に入ると一転、その主張を丸のみした。自民党は特命委員会で対策の検討に入り、公明党も対策本部を設置した。

 首相は経済成長を優先し「公助の前に自助」と強調してきたが、秋までには実施される衆院選に向けて看板政策にしようという思惑も透けて見える。ただコロナ禍で見えてきた課題は▽女性や若者の自殺▽非正規で働く人の解雇・雇い止め▽ひとり親家庭の困窮と子どもの貧困▽ドメスティックバイオレンス(DV)-など多岐にわたる。

 昨年4月に初めて緊急事態宣言が発出されて以来、それぞれ状況は日々悪化しており、早急に効果的な支援の具体策を打ち出す必要がある。縦割りになりがちな担当府省庁をうまく連携させ、支援からこぼれ落ちてしまう人を出さないようにできるかが問われよう。

 警察庁によると、2020年の自殺者数は2万1077人。前年比で908人増えた。年々減り続けてきた自殺者が前年を上回るのは09年以来のことだ。男女別で見ると、男性が11年連続で減少する一方、女性は増加に転じ、7025人と過去5年で最多となった。

 今年1月にも、女性の自殺者は525人を数え、前年同月比で30人増と増加傾向はなお続いている。背景の一つに不安定な雇用がある。女性はパートやアルバイトなど非正規で働く人が多く、コロナ禍で雇い止めに遭ったり、勤務シフトの減少で収入が落ち込んだりして追い詰められ、孤立していく構図が浮かぶ。内閣府の有識者研究会は女性への影響が特に深刻とし「女性不況の様相」と指摘している。総務省の労働力調査では昨年10〜12月期、正社員は14万人増加したが、非正規は78万人も減少。うち50万人は女性だった。とりわけ、シングルマザーの場合、困窮で子どもの将来が閉ざされかねないと懸念が広がっている。

 支援団体には「食事の回数を減らした」「死にたい」などと悲痛な声が寄せられている。新学期を控えて入学や進学の準備で支出が増える、この時期には現金給付などの支援が必要になろう。

 コロナ禍の影響は経済面にとどまらない。内閣府によると、DV被害の相談件数は昨年4〜11月の各月で前年比の約1.4〜1.6倍となり、8カ月の合計は約13万2千件で過去最多。児童虐待の深刻化につながる恐れもあり、相談体制の拡充や相談員の待遇改善を急がなければならない。

 昨年は小中高生の自殺者も過去最多になるなど、社会のひずみが次々と噴き出した。中にはまだ実態がよく分からないものもある。各府省庁が情報やデータを突き合わせ、支援団体の協力も得て実態を詳しく把握、それに即して支援がきちんと必要とする人に届くようにしてほしい。





孤独・孤立問題 急がれる命を守る対策(2021年3月3日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛生活の長期化で、孤独・孤立の問題が深刻化している。昨年の国内の自殺者数は11年ぶりに増加した。政府は省庁横断でこの問題に取り組む姿勢を示している。

 菅義偉首相は先月、坂本哲志1億総活躍担当相に孤独問題の担当を兼務するよう指示。内閣官房に厚生労働省や文部科学省などの職員による「孤独・孤立対策担当室」を新設した。夏に策定する経済財政運営指針「骨太方針」に対策を盛り込む。国民の命に関わる問題である。必要とされる対策については前倒ししてでも実行を急ぎたい。

 民間の支援団体代表らを招いて開かれた緊急フォーラムでは、出席者から相談窓口の強化を求める意見などが寄せられていた。相談業務への支援を早急に行う必要がある。

 全国の自殺者では女性と小中高生の増加が著しい。男女共に孤独感が原因の事例が増えている。若者向けには電話のほか、インターネットを通じた相談も有効とされる。その充実を図らなくてはならない。

 孤独問題に地道に取り組んできた団体やボランティアが今後も対策の主役となろう。そうした団体や個人の力を引き出すのが国の役割。予算面でしっかり支えることが期待される。

 海外に目を向ければ、国が取り組む孤独対策として英国の先例がある。孤独が健康に悪影響を及ぼすとして2018年に「孤独担当相」を設置。孤独をなくすことを政府の目標とした。日本に限った問題ではないことが分かる。

 菅首相は「自助・共助・公助、そして絆」を基本理念に掲げるが、「まずは自助」が持論とされる。1月下旬の参院予算委員会ではコロナ禍の影響を受ける生活困窮者の支援を巡って「生活保護という仕組みもある」と答えて批判を浴びた。

 今回の孤独対策が打ち出されたのは同委員会での野党の質問がきっかけだった。菅首相は先のフォーラムで「絆のある社会を目指す」「助け合いながら生きていける社会の構築が重要」と強調している。

 菅政権は安倍前政権と同様に経済、コロナ対策の両立を目指してきた。経済的打撃が深刻な事業者や雇用を守るための支援の大切さはいうまでもない。一方、感染拡大局面で政府の需要喚起策「Go To キャンペーン」を推進するなど時として経済対策への偏重も目立った。

 今回は経済重視とは一線を画した姿勢がうかがえる。国民の直面する孤独・孤立という社会問題に国を挙げて取り組む覚悟を示してほしい。

 ただ現状では深夜の飲食や接待問題などで政治家や官僚に対する国民の信頼が大きく損なわれている。まずは信頼回復が急務だ。その上で苦境にある一人一人の悩みに国が目を向けているとのメッセージを届け、着実に支援を実行してもらいたい。





「孤独相」の新設 希望を生む本腰の対策を(2021年2月28日配信『西日本新聞』-「社説」)

 この問題の裾野は広く、実態は深刻だ。国民の暮らしを支える諸施策を総点検し、社会全体に安心と希望を回復していく本腰の取り組みが求められる。

 菅義偉首相が「孤独・孤立問題」担当相を新設した。坂本哲志1億総活躍相に兼務を命じ、内閣府や厚生労働省、文部科学省など6府省の職員約30人で構成する対策室を設置した。

 新型コロナウイルス禍による女性や子どもの自殺急増などを受けた措置で、過去に例のない試みだ。感染防止や緊急経済対策に加え、孤独や孤立を防ぐ多面的な取り組みを省庁横断で進めることが狙いという。

 当面の課題を洗い出そうと25日には首相官邸で民間支援団体の代表らの声を聞く緊急フォーラムを開催した。首相は近く関係省庁連絡調整会議を設置し、政府が夏に策定する経済財政運営指針「骨太方針」に対策を盛り込む方針も示している。

 まず重要なことは感染症が人と人の距離を隔てている現実をいま一度直視し、対策の視野を広げることだろう。コロナ禍が引き起こした負の連鎖は、自殺や家庭内暴力の多発、感染者や医療従事者への差別や偏見といった問題にとどまらない。

 例えば、コロナ感染症で家族を失う人は別れ際に立ち会えず葬儀も満足に営めない。高齢者施設は集団感染が続発し、家族との面会がままならない。大学ではオンライン講義が続き、学生同士の交流もできない-。決して軽視できない状況がある。

 坂本担当相は当面想定する施策として高齢者や子どもの見守り、地域のつながりの強化などを挙げる。いずれも重要だが、具体的にどう取り組むのか。孤独や孤立について「行政としての定義や支援の指標を設けるべきだ」という指摘もある。

 コロナ禍は日本社会の矛盾もあぶり出した。非正規で働く人々の解雇や雇い止め、中小事業者の相次ぐ倒産や廃業、外国人労働者の苦境など、しわ寄せは弱者に集中する。格差の解消や多文化共生への処方箋は欠かせない。生活支援の各種相談窓口はあっても主管官庁が分かれ、周知も十分と言えない。縦割り行政の是正も含め、セーフティーネットの再構築が課題だ。

 孤独担当の閣僚は英国で導入例があり、野党の国民民主党からの提案を菅首相がそのまま受け入れた。背景には不祥事続発による支持率低迷があり、新たな目玉政策を掲げる狙いも透ける。仮に政権浮揚が主目的であれば底が浅い判断で、国民の理解や後押しは得られまい。

 首相には社会構造の変革も見据えた展望を求めたい。国会も与野党で議論を重ね、打開策を探る機運を盛り上げてほしい。




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