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(論)緊急時多宣言再延長(2021年3月5・6・7・8・9・1・12・16日)

「花疲れ」(2021年3月16日配信『産経新聞』ー「産経抄」)

 「花疲れ」という言葉がある。花見に出かけて、人混みに酔ってしまう。あるいは花見酒を飲みすぎる。あれやこれやで、くたびれはてた状態をいう。

 ▼昭和の俳人、鈴木真砂女(まさじょ)に「坐(すわ)りたるまゝ帯とくや花疲れ」の句があるように、春の季語である。各地から桜開花の便りが届く、花見の季節が今年もやってきた。ただ、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐという観点からすれば、花疲れははなはだよろしくない。

 ▼桜の名所として知られる東京都立上野恩賜公園では、昨年に続いて一部エリアの立ち入りを制限して宴会ができないようになっている。例年200万人以上が訪れる目黒川沿いの桜については、目黒区長がビデオメッセージで「お花見自粛のお願い」を発信した。

 ▼一方、緊急事態宣言の再延長下にある首都圏では、「自粛疲れ」が蔓延(まんえん)している。晴天に恵まれた一昨日の日曜日、都内の繁華街は多くの人でにぎわった。都の要請に従わず、午後8時以降も営業を続ける居酒屋は大繁盛である。

 ▼政府は緊急事態宣言について、21日までで解除する方向だという。といっても、新規感染者数は下げ止まり、一部ではむしろ微増に転じている。つまり事態は好転しているものの、もはや宣言に効果はない、との認識も広がっているというのだ。頼みの綱であるワクチンが行き渡るのは、まだ先のこと。自分の身は自分で守るしかない。

 ▼小池百合子都知事が主張する「とことんステイホーム」では、「こころ」と「からだ」両方の健康は保てない。人の集まることのない隠れた名所を探し出し、もちろんマスク着用で花を愛(め)でる。歩き回って家に帰れば、ほどよい疲労感で深い眠りも得られよう。こんな「花疲れ」なら推奨されていい。



2度目の桜(2021年3月16日配信『高知新聞』-「小社会」)

 何があっても桜は咲く。作家の角田光代さんは随筆で、桜は律義だと書く。震災後の春。東北・三陸の町々でも満開の桜は美しかった。〈たたえる人も、見る人すらもいなくても〉。

 一種の残酷さを感じた。ただ、時がたって少しずつ見方が変わっているという。〈変わり続けるしかない私たちの暮らしに、そんなふうに変わらないものがあるということは、ときに私たちを救うのではないか〉(日本文芸家協会編「ベスト・エッセイ2019」)。

 広島や東京などに続いて高知でもきのう、桜の開花が発表された。人々の生活がどう変化を求められようと、自然の営みは変わらない。コロナ流行下、2度目の桜の季節がきた。

 思い出すのは、最初の緊急事態宣言につながった去年の桜だ。3月下旬の3連休、花見の名所がにぎわった。「緩んでいる」と前首相。しかし官房長官、つまり現首相は経済優先で「屋外は問題ない。花見はいいでしょ」と意に介さなかった。高知新聞掲載の検証記事にある。

 1年がたち、政府はまた宣言の解除を巡って難しい判断を迫られそうだ。首都圏では人々に自粛疲れが目立ち、同じ対策なら延長しても仕方ないという声がある。専門家は第4波を恐れ、さらなる対策を求める。経済も落ち込む中、どう有効な手だてを示すのか。

 感染症と向き合って2度目の季節が巡る。どう学習してきたか。変わらない桜を前に政治の力量が問われよう。





何かしなければ始まらないことも(2021年3月12日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★首都圏は緊急事態宣言の延長が続いているが、その先はなかなか見えてこない。それどころか都議選や衆院選挙を見据える東京都知事・小池百合子が神奈川、千葉、埼玉を体よくコントロールしようとして知事たちに反発を受けるなど、醜い主導権争いや、五輪開催を念頭に置いた政権との駆け引きばかりがニュースになっている。だが、本質は、春になり首都圏の住民が一気に街に繰り出す不安に対して、得策がないことだろう。政争はご自由にやられたらいいが、そこには都民、県民の命と生活がかかっていることを忘れないでいただきたい。

★東京都医師会会長・尾崎治夫は雑誌で「ただでさえ3月は学校の修了式や会社の転勤などさまざまな『人の動き』がある時期。そんなタイミングで解除のメッセージが出ることで『2カ月我慢したけど、いよいよ解放されるぞ』という流れになってしまうと、リバウンドが懸念される」と指摘。また「その後何も対策をとらない場合、4月中には1日の新規感染者数が1000人を超え、5月中に2000人超え」という試算もあると、警鐘を鳴らす。

★その一方、ネットにはこんなつぶやきもある。「飲食店に時短を要請して、協力金で6万円払っているけどお店はやっていけないと言うし、飲み食いに行きたいお客さんも不平たらたら。この辺で発想を変えて、1日6万円あれば、お店の人には、1週間に1度の唾液によるPCR検査。お客さんには、その場で15分でわかる抗原定性検査で、感染力をみるための予算が確保できるかも。みんなを自粛させるのではなくて、感染の恐れが少ない場所での飲食を楽しんでもらえるよう、お店にもお客さんにも協力してもらう、そういう協力をしてくれたら、協力金を払うということにしたらどうです」。専門家の多くは何もしないでいれば収まるというのだろうが、何かしなければ始まらないことも考えていただきたい。





外食(2021年3月9日配信『高知新聞』-「小社会」)

 江戸で本格的な外食が始まったのは17世紀後半。浅草寺の門前で飯と汁とおかずを一緒に提供した店が最初という。それまでも湯茶を出す店はあったが、食事は斬新だった。

 評判を呼び、飲食店が急増。やがて料亭のルーツとなる料理茶屋が登場し、屋台も広がった。にぎりずしや天ぷらも元は屋台の食事だったようだ。酒井伸雄著「日本人のひるめし」にある。

 欧州で外食が始まるのは浅草寺門前から約100年後。日本の外食は歴史も長く、特に江戸は独特の外食文化を育んだといえそうだ。ところが、350年近くたった現在、東京など首都圏の外食産業が窮地に陥っている。1都3県の緊急事態宣言が再延長に入った。

 時短営業や休業を続ける飲食店も、限界に来てはいないだろうか。首都圏の店は鮮魚や野菜などの仕入れで地方にとっても大のお得意さま。高知の郷土料理を提供する店も多い。

 「日本人のひるめし」によると、江戸で外食が発展した背景には、頻発する大火があったようだ。物を買っても灰になりやすく、「『宵越しの金は持たない』という江戸っ子の気質が生まれてきた」。人口が多かった職人たちは食べ物にお金を使った。

 コロナ禍の首都圏では高額な時計や絵画などが売れているという。食や旅に投じる予定だったお金が向けられていると聞く。災いが育んだ外食文化。コロナ禍という現代の災いに向き合う妙案はないのだろうか。





緊急事態の再延長(2021年3月8日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 「国内で新たに44人の新型コロナウイルス感染を確認」「酒宴自粛で苦悩する松山市の繁華街」「マスクなど求め殺到する客にドラッグストア悲鳴」…

▲1年前のきょう紙面で報じたニュースを拾ってみた。当時は国内でコロナ感染者が40万人を超える事態になるとは想像できなかった。感染の第3波が収まらない中、首都圏への緊急事態宣言が再延長され、きょうからあと2週間続く

▲新規感染者数はピーク時に比べると大きく減ったが、このところ下げ止まり、医療体制は依然厳しい。感染力が強いとされる変異株もじわじわと広がる。宣言の再延長は「危機感を持って行動を」と訴える強いメッセージ。だが、裏腹に繁華街や行楽地は人々でにぎわう

▲コロナと向き合う日々は「緊急事態」が続いているようなもの。1年前は未知のウイルスを相手にパニック状態だった。今は感染防止対策が浸透し、マスクなど物資も十分にある。だからこそ、対策への疲れや警戒感の薄れもあろう

▲3月下旬からは進学や転勤で人の往来がどうしても増える。花見を楽しむ人も多い。思い返せば、1年前は花見の時期などを経て最初の緊急事態宣言につながった。桜の名所、東京の上野公園では今年も自粛という

▲危機感を持つべきなのは首都圏も地方も同じ。今、行動を緩めると、どういう結果になるか。もう想像できないとは言えない。ゴールデンウイークもすぐそこに迫っている。





緊急宣言の再延長 2週間後は大丈夫なのか(2021年3月7日配信『産経新聞』-「主張」)

 政府が、首都圏1都3県に発令中の新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再延長を決めた。7日までの期限を2週間延ばし、21日までとする。

 菅義偉首相は5日夜の記者会見で、国民の協力に感謝を表明するとともに、7日に解除できなかったことを陳謝した。対策徹底へ一層の協力を求めた。

 再延長の決定自体は妥当だが、21日に専門家や国民が納得するかたちで宣言を解除できる状況をつくり出せるのか。解除する場合にその後のリバウンド(感染再拡大)を防げるのか。懸念は解消されていない。

 首都圏では新規感染者数が下げ止まっている。東京都では5日、7日間平均の新規感染者が前の週をわずかだが上回った。

 菅首相は会見で、延長を2週間にした理由や解除後のリバウンドを抑止できると考える根拠を問われた。だが、2週間を「感染拡大を押さえ込むと同時に、状況をさらに慎重に見極めるために必要な期間」と語るにとどまった。

 宣言解除の具体的な条件も示さなかった。新規感染者数や病床使用率、陽性率など6つの感染指標の説明もなかった。首相会見は大きな方針を示すものとはいえ、テレビで会見を見ていた国民の多くは戸惑ったのではないか。

 ウイルスという厄介な相手と戦っているのは分かる。それでも解除の条件や、その後の感染者数の推移の見通しについてどのように考えているのか、丁寧に語ってほしかった。

 今後の感染対策は、延長される2週間と、その後の時期の対策が混ぜこぜで示された。

 全国3万の高齢者施設で3月末までに検査を実施する。大都市の繁華街などで無症状者へのモニタリング検査を行う。病床の増床、変異株の検査を充実させる。いずれも必要だが、掛け声倒れにせず、規模やスピードを実効性あるものにしてもらいたい。

 改めて指摘したいのは、日本の医療提供体制の脆弱(ぜいじゃく)さだ。

 東京のコロナ重症者は現在約50人だ。コロナ禍が始まってから1年以上がたつ今、人口約1400万人の東京で重症者が約50床を占めて「逼迫(ひっぱく)」状況になるのは情けないかぎりだ。菅首相や小池百合子都知事らは医療資源の動員、配分のまずさを猛省し、直ちに見直すべきである。



社会全体が「忍」の一字を胸に(2021年3月7日配信『産経新聞』ー「産経抄」)

小学生のグループに問題を出した。次の掛け算の答えを予測してください。

 ▼〈8×7×6×5×4×3×2×1〉。別のグループには並びを逆さまにして見せた。〈1×2×3×4×5×6×7×8〉。結果は「8」から始まる式を見た子供たちの方が、大きな数を予測した。行動経済学の本にも載るこの研究は、人の判断や選択が、最初に目印とした数字に左右されることの裏付けだという。

 ▼地上から仰ぎ見る東京タワー(高さ333メートル)も、標高2500メートルの山頂に立てば足元のマッチ棒だろう。いまの社会も同じかもしれない。年明け早々の東京で2500人を超えた新型コロナウイルスの感染者が、ここ数日は300人前後で推移している。1年前なら誰もがおびえただろう数字にも、さほど危機感をおぼえない。慣れの怖さである。

 ▼やむを得ない判断だろう。首都圏の1都3県に発令中の緊急事態宣言は、期限の7日からさらに2週間延長された。入学に就職に転勤と、人々が列島を目まぐるしく行き交う季節も近い。ここで緩んでは、感染者や死者の数が跳ね上がるのは目に見えている。宣言が一足先に解除された地域でも、コロナの足音が背後で響いていることをお忘れなく。

 ▼「鷹化(たかか)して鳩となる」は、啓蟄(けいちつ)を少し過ぎた頃の穏やかな陽気を指す。〈忍びがたきを忍びて鷹は鳩となり〉佐藤紅緑(こうろく)。暖かな季節は、北風をしのいだ先に待っている。そんな句意らしい。苦境にあえぐ飲食店、キャンパスライフを知らぬ学生らにはもう少しの辛抱を願うとして、社会全体が「忍」の一字を胸に過ごすときだろう。

 ▼感染者の数は、東京と同じく隣接県でも下げ止まった観がある。同じ数字にも目角を立てた鷹に戻り「冬」の出口を待つとする。



緊急事態宣言の延長 対策の検証と修正急げ(2021年3月7日配信『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス対策として、首都圏4都県で続く緊急事態宣言が21日まで2週間再延長されることになった。

 1日当たりの新規感染者数の減少スピードが鈍化し、病床使用率が依然として高いままの自治体があるためだ。

 解除を急げば、感染が再び急増する「リバウンド」を招く恐れが強い。政府が感染抑止の「決め手」と位置づけるワクチンも各地で接種できるようになるまでには時間がかかる。

 全国への感染拡大も防がなければならず、延長はやむを得ないといえよう。

 ただ菅義偉首相は1月に宣言を再発令した際には、「1カ月後には必ず事態を改善させる」と約束した。それが2月に続き2度も延長されることになり、期間は2カ月半と長期化した。

 下げ止まりを懸念する指摘は先月に入ってから出ていた。それでも政府が対策を大きく見直すことはなく、宣言の再延長を余儀なくされた。

 首都圏での経済活動への制約が長引けば、地方経済への打撃も増す。首相の政治責任は重いと言わざるを得ない。

 東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県では1月に宣言が再発令されて以降、感染リスクが高い飲食店への営業時間の短縮要請を柱にした対策により、感染者数は比較的順調に減った。

 感染状況を表す指標は、最も深刻なステージ4(爆発的感染拡大)を軒並み脱してはいる。ただ病床使用率はステージ3(感染急増)のままで、感染者数も第2波に匹敵する水準で高止まりしている。

 感染源をつかめず、クラスター(感染者集団)が発生しているのかどうかさえ分からないケースも増えている。夜間や繁華街の人出が再び増加傾向にあることも気掛かりだ。

 なぜ首都圏で感染者数が下げ止まったのか、理由は判然としない。飲食店中心に絞った対策では、抑止効果に限界が出始めているのではないか。これまでの対策の効果を検証し、修正を急ぐ必要がある。

 首相は記者会見で、遅ればせながら全国の高齢者施設約3万カ所で検査を実施すると表明した。重症化しやすい高齢者への感染対策の徹底は必要だ。

 専門家は、無症状者を含めて幅広く検査を実施することを求めている。感染力が強いとされる変異株の広がりが脅威となっている。次の流行の予兆をいち早く探知するためにも、積極的疫学調査の拡大は欠かせない。

 宣言の延長幅を2週間とした理由は分かりにくい。首相は「2週間あれば病床の状況は大幅に改善できる」と強調するが、その科学的な根拠は示していない。

 2週間後の3月下旬に宣言が予定通り解除されれば、転勤や卒業などで人の移動や会食の機会が増える時期と重なる。気候がよくなれば、人の流れがさらに活発になるのではないか。

 コロナ禍への慣れや自粛疲れが広がっていることも見逃せない。専門家からは1カ月程度の延長を求める声も出ていた。

 首相は延長幅を2週間とした判断の根拠を分かりやすく説明しなければならない。同時に新規感染者数や病床の状況がどうなれば宣言を解除するのか具体的な目標を示し、国民と事業者に協力を求める必要がある。



緊急事態再延長 感染者数下げ止まり 打開が必要(2021年3月7日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 政府は首都圏1都3県に発令している新型コロナウイルス緊急事態宣言の再延長を決めた。きょう7日までの期限を21日まで2週間延ばした。

 新規感染者数が下げ止まり一部地域で病床の逼迫(ひっぱく)が続き、変異株にも警戒が必要なことを理由に挙げた。現状では、宣言を解除すると感染再拡大を招く恐れがある。再延長はやむを得ないが、菅義偉首相は宣言を長期化させた結果を重く受け止めなければならない。

 感染者数の下げ止まりは対策が手詰まりにあることを示す。政府は要因を分析し、打開を急がなければならない。宣言解除後に再拡大しないよう、感染を抑え込むことが肝要だ。

 1都3県のコロナ患者向けの病床使用率は、3日時点で千葉は51%と「ステージ4」(爆発的感染拡大)の水準となり、埼玉も42%と予断を許さない。感染力が強いとされる変異株も国内で広がってきており、感染の「第4波」発生が懸念されているのが現状だ。

 首都圏は社会経済活動の拠点で人の流れが多く、感染再拡大のリスクが他地域より高い。全国に感染が波及する起点にもなる。今後、ワクチン接種が本格化するが、感染が再拡大すれば患者の診療に時間や人手がとられ、円滑な接種の妨げになりかねない。感染者数を低い水準に抑えることが不可欠だ。病床をさらに確保し、医療体制を強化することも求められる。

 感染抑止には人と人の接触を減らす必要がある。だが感染症への慣れもあり、宣言下でも主要駅や繁華街の人出の減少は見られない。外出自粛、テレワーク推進、飲食店の営業時間短縮といった対策は継続されるが、大きな効果は見込みにくいのではないか。政府や自治体は取り組みを再点検し、より有効な対策を打ち出すべきだ。

 感染者数下げ止まりの一因として、専門家は感染源が追えない「見えないクラスター(感染者集団)」の存在を挙げる。東京の最近の感染者データでは、約半数が経路不明という。業務多忙で態勢を縮小していた保健所の疫学調査を強化し、感染源の特定を進めたい。クラスターが多発している高齢者施設の検査や、市中感染探知を目的とした無症状者へのモニタリング検査も速やかに実施したい。

 今回の緊急事態宣言は1月7日に発令された。期間が2カ月を超え、飲食店などの苦境は深まっている。再延長に理解を得て時短要請などに協力してもらうためには、支援策の継続・拡充が欠かせない。

 政府が延長期間を2週間とした科学的根拠は不明だ。3月25日に始まる東京五輪の聖火リレーへの影響を避ける思惑が透けるが、日程ありきの解除となってはならない。3月下旬以降は進学や転勤などで人の往来が増える。行動を緩めず感染防止を徹底してもらうため、首相は効果的なメッセージを国民に発信する必要がある。





結ばない首相像(2021年3月6日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 中島敦の短編小説「文字禍」は、「文字の霊などというものが、一体、あるものか」との問題提起に始まる

▼物語では古代アッシリアの老博士が、一つの文字を見つめているうちにその文字が解体して、意味のない一つ一つの線の交錯としか見えなくなる体験をする。「ゲシュタルト崩壊」と呼ばれる現象だ

▼きのうの菅義偉首相の記者会見を見て、同様の錯覚にとらわれた。テレビ画面に映る年配の男性の、顔や髪形、視線といった外形から、その人が「首相」という意味のある存在に、どうしてもつながってこないのである

▼首都圏の緊急事態再延長については、「大変申し訳ない思いであり、心よりおわび申し上げる」と語っていた。これまで何度聞いただろう。そして、これからは何度聞くのだろう。リーダーとして、どのような責任感で事態打開にあたるのか、決意が伝わってこない

▼これまでも、総務省幹部への接待が問題となった自分の長男について「別人格だ」と言ってみたり、前広報官の辞職が後手後手ではないかと問われて、「私はそのように思っていない」と答えたり。国民の多くが抱く疑問に答えず、保身に走っているように見える

▼かの老博士は、魂が人間を統べるように、文字に霊がなければ単なる線の集合が音と意味を持つことはできぬと気付く。魂のこもった言葉がないと、首相という存在も像を結ばないのだろう



大阪市のオフィス街に一風変わった靴店があ…(2021年3月6日配信『河北新報』-「河北新報」)

 大阪市のオフィス街に一風変わった靴店があった。二十数年間、店頭に閉店セールの垂れ幕を掲げ続けた。「もうあかん やめます」「いや、やっぱりやります! どっちやねんセール」。ユーモアのある文言は、ちょっとした名物だった

キャプチャ

▼行き交う人々は当初、閉店すると信じただろう。セールにつられて靴を買った客がいたかもしれない。でも、垂れ幕の文字にも次第に慣れ、当たり前のこととして日常の光景に溶け込んでいく

▼こちらは、新型コロナウイルス緊急事態宣言下の日常に慣れきってしまったことが要因なのだろうか。病床の逼迫(ひっぱく)状況が続いていることなどから、首都圏の1都3県に出されている宣言がきのう、21日まで2週間再延長されることが決まった

▼感染状況をさらに改善させて、25日からの東京五輪聖火リレーを無事に行いたい。菅義偉首相の胸中には、きっとあるはずだ。だが、新規感染者数の下げ止まりや変異株の拡大を考えると、もう一歩踏み込んだ対策が求められる。さもないと、人の移動が盛んになる年度末を迎えるだけに、感染の再拡大が現実味を帯びる

▼時短営業を強いられてきた飲食店は苦境が続くことになる。「これ以上は無理。もうやめます」。セールの文言ではない、悲痛な叫びが聞こえてきそうだ。



「リバウンド」(2021年3月6日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 「リバウンド」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。バスケットボールファンなら言うまでもなくシュートが外れたボールを取るゴール下のプレーだろう。日頃からベルトの穴の位置が気になる身としては、ダイエット後の体重増加のことが真っ先に浮かぶ

▼最近では新型コロナウイルスの感染再拡大を意味するリバウンドをよく目にする。10都府県に発令されていた緊急事態宣言を大阪など6府県で先行解除することが取り沙汰された先月下旬以降のことだ

▼本紙では昨日付の紙面までに計8回使われている。過去1年をさかのぼってみると、約180回使われたリバウンドのほとんどがバスケの記事だった。感染再拡大の意味での使用例は最近に限られることが分かる

▼首都圏4都県の緊急事態宣言が再延長されることが決まった。大きな理由の一つはリバウンドへの警戒。首都圏の多くの人々が細心の注意と対策に努めてきたであろうことを思えば気の毒だ

▼一方で感染者ゼロが続き、感染リスクが低くても気を緩めることなく住民らが自粛に努めている地方は少なくない。本県もその一つだ。ただでさえ人口減少で地域経済が縮小する中、自粛による客の減少が飲食店などの経営に追い打ちを掛けている

▼対照的に人口密度が高く、人の流れが多い首都圏は感染症に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。新たな感染症が今後も世界で繰り返し流行する可能性があるとすれば、一極集中の是正こそが今後ますます重要になることに気付く。



緊急事態再延長 感染対策徹底させる2週間に(2021年3月6日配信『読売新聞』-「社説」)

 遅ればせながら、PCR検査の拡充や保健所の強化を打ち出したのは評価できるが、重要なのはどう具体化するかだ。

 再延長期間中の取り組みを、解除後の感染抑止につなげねばならない。

 菅首相が、新型コロナウイルス対策で首都圏に発令中の緊急事態宣言について、3月7日の期限を21日に再延長することを決めた。首相は「この2週間で収束に向けて全力を挙げる」と述べた。

 1都3県では、1月7日の発令から先月の延長を経て、2か月以上、宣言が続くことになる。

 この間、新規感染者数は減少し、病床の逼迫ひっぱく度合いもある程度緩和したが、いずれも十分とは言えない。ワクチンが各地で接種できるようになるまでには、時間がかかる。感染を下火にさせる対策を継続することが肝要である。

 政府は、基本的対処方針を改定し、無症状者を含めて幅広くPCR検査を実施する規定を盛り込んだ。感染再拡大の予兆を探知するため、検査を拡大する方向性を示したものだが、いかにも遅い。

 自治体によっては、既に高齢者施設などで網羅的に検査しているところもある。それを参考に、首都圏の繁華街など感染リスクの高い場所でも、早急に実施できる環境を整えるべきだ。

 対処方針には、保健所の体制強化も明記された。保健師は患者の健康管理や感染経路の追跡を担い、電話相談などは、民間に委託することが想定されている。

 だが、方針を掲げるだけでは意味がない。政府は既に、保健所間で人員を融通する仕組みを設けたが、どのように実行されているのか、点検してもらいたい。

 行政による対策拡充と合わせ、国民の普段の生活では、不要不急の外出自粛や、飲食店の営業時間短縮への協力が不可欠になる。

 人出が増えている繁華街もあるという。コロナ禍に慣れてしまった人もいるのだろう。

 しかし、一人ひとりの努力が、一日も早い緊急事態宣言の解除と、感染の収束につながることを忘れてはならない。

 宣言の長期化で、様々な事業者が苦境に陥っている。政府は、飲食店に対する協力金や、売上高が激減した企業への一時金などを迅速に支給する必要がある。今年度の予備費は2兆円以上残っている。有効に活用してほしい。

 年度末は、雇用契約の切り替え時期でもある。大量の失業者を出さぬよう、非正規労働者などの雇用支援を続けることも大切だ。



緊急宣言を延長 国民への説明は十分か(2021年3月6日配信『東京新聞』ー「社説」)

 政府は、東京都と神奈川、千葉、埼玉三県に発令している緊急事態宣言を二週間、延長することを決めた。感染を再び拡大させないためには、対策を徹底し、確実に抑え込まねばならない。

 一都三県の新規感染者数は、減少傾向にあるとはいえ、その速度は鈍化している。

 感染源が分からなかったり、クラスター(感染者集団)が発生しているのかさえ不明な例も多い。病床使用率が下がらず医療の負荷が減らない地域もある。夜間の人出も再び増加している。この状況で宣言を解除すれば、感染が再拡大する懸念は拭えない。

 感染拡大を十分に抑え込むことが結局、経済活動の再開を早め、経済へのダメージを小さくする。宣言の延長はやむを得ない。

 ただ延長期間がなぜ2週間なのか。これから年度末に向けて歓送迎会や卒業式、花見などのイベントシーズンを迎える。専門家の中には、年度をまたいで1カ月程度の延長を求める声があった。

 宣言延長により、国民はさらに我慢を強いられるのに、菅義偉首相の説明は不十分ではないか。

 今月25日には東京五輪の聖火リレーが始まるため、首相はその前に宣言を終わらせたいようにすら映る。

 これまで飲食店の時間短縮営業や不要不急の外出自粛の要請、テレワークの推進に取り組んできたが手詰まり感がある。経営支援を含む明確な追加対策も見えない。期間延長だけで新規感染者数を減らす効果があるのか疑問だ。

 もちろんやるべきことはある。感染が広がる医療機関や高齢者施設では検査態勢の強化など対策を徹底すべきだ。いずれ既存株と入れ替わるとみられる変異株への監視態勢も強化せねばならない。

 新規感染者数が減少しつつある今のうちに、医療機関同士の連携も強化しておきたい。

 感染拡大の防止には人と人との接触をどう抑えるかが重要だ。

 政府の対策分科会はイベントの自粛、宴会なしの花見、家族以外は四人までの会食、混雑していない店の利用、店舗での一定の二酸化炭素濃度を超えないような換気の実施、経営トップの率先したテレワークなど、具体的な対策を挙げている。

 政府がここまで細かな対策を求めるのなら、国民の納得と協力を得られるよう丁寧に説明し、危機感を共有することが必要だ。首相はその責任を果たしているか、常に自問自答すべきである。



緊急事態再延長 目標や道筋分かりやすく(2021年3月6日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 ウイルス対応の改正特別措置法に基づき、首都圏の1都3県に発令している緊急事態宣言の再延長が決まった。あすまでの期限を2週間先の21日までとする。

 1月中旬以降続いている新規感染者数の減少スピードが鈍化し、病床使用率が依然として高いままの地域もあるためだ。

 今後本格化するワクチン接種を円滑に進めるには、多くの医療従事者が要る。2週間でさらに感染者を減らし医療機関の負担を軽くして、再拡大を起こさない態勢づくりにつなげねばならない。

 今回の宣言は1月7日、全国の新規感染者数が一日7千人を超える中で発令された。飲食店への営業時間短縮要請を柱にしながら1カ月後に延長。千人前後まで減ったが、1都3県では100~300人台で下げ止まりつつある。

 内閣官房がまとめた対象地域の人出動向によると、主要駅や繁華街では、最初に緊急事態宣言が発令された昨年春に比べて増加傾向が続く。これからは年度末や桜の開花が重なり、人の移動がさらに活発になる可能性が高い。

 住民の側には自粛疲れや感染症への慣れが広がっている。期限の先延ばしだけでは効果は期待できない。さらなる住民の協力が得られるかが大きな鍵を握る。

 国、自治体、企業、個人がそれぞれにやるべきことは何か。分かりやすい目標や封じ込めに向けた道筋を明確に示し、丁寧に説明することが必要だ。

 感染力が強いとされる変異株への対応も重要になる。

 厚生労働省によると、検出された地域が長野も含めた19都府県に広がっている。神戸市が独自に市内の感染者の検体を調べた結果、変異株の割合が日ごとに大きくなっていることも分かった。

 海外では未成年にも感染しやすいとの報告がある。拡大を許せば、学級閉鎖や休校といった対策も必要になるかもしれない。

 全国各地で変異株の実態把握が欠かせない。国や各自治体が進めている検査の体制整備と実施を急がねばならない。

 緊急事態宣言の発令や解除を巡っては、官邸と知事との間で主導権争いのようなやりとりが目に余った。解除後に再び宣言を出す事態になれば、政治への不信は一層深まると考えるべきだ。

 引き続き時短を求められる飲食店への影響は大きい。罰則を設けた改正特措法による命令などの法的措置ではなく、十分な支援が必要なのは言うまでもない。



緊急事態再延長 解除確実にする2週間に(2021年3月6日配信『新潟日報』-「社説」)

 2週間で感染拡大をしっかりと抑え込み、宣言を解除できるレベルにできるかが焦点だ。

 新たな期限は21日となる。その頃は進学や就職、花見など人の往来が増す。本県からも進学や就職で大勢の人が首都圏に向かう時期だ。迷わず解除できる状態になるように対策を徹底し、確実な収束につなげたい。

 菅義偉首相は5日、埼玉、千葉、東京、神奈川の首都圏4都県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言を再延長し、期限を7日から21日に変更した。

 1月7日の再発令後、2度目の延長となる。国民に制約を強いる状況が続き、首相は3月5日の記者会見で「大変申し訳ない思いだ」と陳謝した。

 専門家からは、解除を急げば感染再拡大は避けられず、ワクチン接種にも影響が生じるとの見方が示されていた。延長はやむを得ない。

 延長について首相は、感染者数の減少が鈍くなり病床が逼迫(ひっぱく)していることを理由に挙げた。

 4都県の新型ウイルス患者向けの病床使用率はステージ4(爆発的感染拡大、50%以上)を脱し、20%以上が基準のステージ3(感染急増)となったが、千葉、埼玉では40%を超え、油断できない水準にある。

 ただし、2週間の延長幅は妥当と言えるのかどうか。

 首相は「2週間あれば病床の状況は大幅に改善することができる」と強調するが、その科学的根拠は示していない。

 期間の検討に当たって、首相は1カ月とすることには難色を示したという。

 経済再生が遅れることへの懸念に加え、東京五輪・パラリンピックの聖火リレーのスタートが25日に迫り、五輪開催の可否に影響が及ぶことを避けたい思惑があるとされる。

 再発令後の新規感染者数は下げ止まり、東京では5日、直近7日間の数が増加に転じた。

 研究者は流行が既存株から、より感染力が強い変異株に置き換わりつつあると指摘する。

 徹底的に封じ込めなければ新規感染者が増え、いずれ病床使用率も上昇に転じかねない。

 再延長でも解除のめどが立たず再々延長となれば政権の「後手」や「小出し」に振り回されてきた国民の失望感はさらに大きくなるだろう。首相は感染抑止へ指導力を発揮してほしい。

 2週間で確実に収束させると同時に、変異株の流行などを見据え、再拡大を起こさない体制を整えてもらいたい。

 4都県知事が解除に慎重姿勢を示す中、首相は今回、小池百合子都知事らの機先を制する形で3日に延長を宣言した。先手を急ぐような対応は「官邸側と小池氏の神経戦だった」(政府関係者)という。

 首相はウイルス対応を巡る後手批判の返上を狙ったのだろうが、政府と自治体がぎくしゃくしていては国民への協力の呼び掛けも説得力が薄れかねない。

 今度こそ宣言を終わらせる。その強い意志の下、政府と自治体が連携してメッセージを発信していくことが不可欠だ。



首都圏の緊急事態再延長(2021年3月6日配信『福井新聞』-「論説」)

新たな対策早急に進めよ

 政府は首都圏の1都3県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言を21日まで2週間延長することを決定した。経済を重視する菅義偉首相は7日で解除する考えだったようだが、知事や専門家、医師会などから慎重な意見が出され、外堀を埋められる前に延長の意向を表明し「先手」をアピールした格好だ。

 首相は5日の参院予算委員会で再延長について「率直に申し訳ない」と陳謝したが、1月の宣言発令時に「1カ月後に必ず事態を改善させる」、2月の延長時に「1カ月で全ての都府県で解除できるようにする」と述べてきた。2度の延長で2カ月半に長期化する事態を招いた責任は重い。

 1都3県は新規感染者数減少ペースの鈍化が顕著だ。感染指標は緊急事態相当のステージ4(爆発的感染拡大)を脱しているが、確保想定病床の使用率はステージ3(感染急増)の「20%以上」の状態が続いており、リバウンドが危惧されている。特に千葉はステージ4の「50%」に近く逼迫(ひっぱく)の手前の状態だ。

 専門家からは感染源やクラスター(感染者集団)の発生場所が不明なケースが増加し、昼間は無論、夜間の人出も増えているとの指摘があり、地域によっては依然、病床使用率の高いところもみられるという。首相の延長判断は妥当といえるが、一方で飲食店中心の集中対策では限界があるともしており、首相は重く受け止めなければならない。

 2週間では短く「1カ月必要」との声もある。解除が見込まれる22日以降は花見のシーズンや歓送迎会などの時期に重なる。昨年3月下旬の3連休では人出が増え、その後感染者数が急増し、4月7日の1回目の緊急事態宣言発令を招いた苦い記憶があるからだ。

 感染力が強いとみられる変異ウイルス(変異株)の感染拡大も懸念される。3月4日までに234人の感染が報告され、19都府県に拡大したという。神戸市の変異株用検査では検体数に占める割合が2月上旬の4・6%に対して、同中旬には15・2%まで増加した。確実に広がっているとみるべきであり、首相は今後、さらなる厳しい判断を迫られかねない。

 問題は、再延長を余儀なくされた以上、飲食中心に絞った対策の不備を早急に点検し修正した上で、新たな対策を打ち出す必要があることだ。政府は感染再拡大の予兆をつかむモニタリング検査や、濃厚接触者を洗い出す積極的疫学調査を推進するとしているが、すぐにでも実行に移すべきだろう。保健所の調査強化や人材確保、業務の外部委託の推進も盛り込んだ。一方で、終了した持続化給付金などに代わる中小企業の支援策も欠かせない。



追加策がないのは問題だ/首都圏再延長(2021年3月6日配信『神戸新聞』-「社説」)

 政府は、新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に基づき、首都圏4都県に発令中の緊急事態宣言について、2週間の再延長を決めた。新たな期限は21日までとなる。

 首都圏では2月中旬以降、1日当たりの新規感染者数の減少にブレーキがかかり、医療現場の負担が十分に軽減されたとは言い難い。一部地域で病床の逼迫(ひっぱく)が続き、延長の判断はやむを得ないと言える。

 ただ、2度の延長で、宣言期間が初めて2カ月を超える。事業者の疲弊が強まり、市民の我慢も限界を迎えつつある。

 菅義偉首相は再延長について「率直に申し訳ない」と陳謝した。再延長の期間中に感染拡大を徹底的に抑え込み、宣言解除の見通しを示すのが政治の責任だ。

 だが、そのための実効性ある追加対策が示されたとは言えない。

 飲食店などを中心とした従来の対策だけで抑え込むのは難しいとの専門家の指摘もある。より踏み込んだ若者への啓発や高齢者の検査強化、感染実態を把握する疫学調査など、できることはまだあるはずだ。

 なぜ感染者の減少が鈍化しているのか。目標をどう設定し、どうすれば出口にたどり着けるのか。政府はこれまでの取り組みを科学的に検証し、有効な対策を早急に打ち立てなければならない。

 最大の懸念は、強い感染力を持つとされる海外由来の変異株の拡大である。少なくとも19都府県で検出されており、政府の専門家分科会の尾身茂会長は「もう既存株に置き換わるプロセスに入っている」と危機感を強めている。

 神戸市では、検査した感染者の15%超を英国型が占めたとの報告もあった。拡大が進むと「第4波」を誘発しかねず、特に警戒が必要だ。

 2月いっぱいで宣言が解除された兵庫など関西の3府県でも、新たな陽性者数の下げ止まり傾向が現れている。首都圏の感染状況が1~2週間遅れて波及する傾向にあり、予断を許さない状況に変わりはない。

 兵庫県は8日以降も飲食店への営業時間短縮要請を一部で継続すると決めたが、一人一人が引き続き感染対策を徹底しなければならない。

 首都圏の再延長を踏まえて、菅首相はきのう、約1カ月ぶりに正式な記者会見を開いた。

 卒業旅行や歓送迎会が増える年度末を迎え、21日に解除する判断がより難しくなることも想定される。

 リバウンドを招かないためには今がまさに正念場である。科学的知見に基づいた説得力のあるメッセージが欠かせない。首相は国民の疑問や不安に向き合い、説明責任を果たし続けねばならない。



緊急事態の再延長 解除へ向け対策強化図れ(2021年3月6日配信『山陽新聞』-「社説」)

 首都圏の1都3県に発令されている新型コロナウイルス緊急事態宣言について、菅義偉首相は7日に迫った期限を21日まで再延長すると発表した。病床の逼迫(ひっぱく)などを理由に挙げ、2週間については「感染拡大を抑え込むと同時に、状況を見極めるために必要な期間だ」としている。

 新規感染者の減少ペースの鈍化が特に首都圏で顕著だ。宣言を解除すれば、感染の再拡大が懸念される状況だけに妥当な判断と言えよう。

 記者会見で菅氏は、予定通りに解除できなかったことを陳謝。無症状者のモニタリング検査や、若い世代にも届く広報などの対策を示した。

 緊急事態宣言が及ぼす経済への悪影響を懸念する菅氏は、先行解除した関西や東海など6府県に続き、予定通り7日に完了させる道筋を描いていた。25日には東京五輪の聖火リレーが始まることなどもあって再延長は避けたい思いが強かったろう。

 それを軌道修正させたのは、小池氏ら4知事や専門家らの相次ぐ慎重論だった。日本医師会や経済界などからも解除によって負うリスクなどへの危機感が示され、外堀は埋められた。

 経済重視でコロナ対策が後手に回り批判された菅氏としては、強引に解除して感染の再拡大を招けば、政治責任を問われる。残されたのは、小池氏らの要請前に延長を表明して政治決断をアピールすることだったのだろう。

 だが、主導権争いにこだわっている場合ではなかろう。菅氏は2週間の延長によって「事態を大幅に改善できる」と述べたが、その根拠は定かではない。越えなければならない課題は山積している。

 緊急事態宣言の重みが薄れた感が否めない。自粛疲れからか、宣言中でも多くの人出があり警戒感の緩みを感じる。特に、これからは人の移動が増える時期だ。就職や進学、さらには花見シーズンなどにも当たり、どう引き締められるかが問題となる。

 感染力が強いとされる変異株の広がりも脅威だ。既存株から置き換わって感染の「第4波」を招きかねない。監視・検査体制を強化して備える必要があろう。

 時短営業など影響を受ける事業者は、延長でさらに厳しい状況に置かれる。緊急事態の対象地域はもちろん、地方の状況にも目配りした支援策が求められる。

 宣言を延長しても、従来の対策のままでは改善は望めまい。延長期間に何ができるかが問われる。まずは、これまで首都圏で感染を十分に抑えられなかった原因を把握するため、講じてきた対策の検証が必要だ。その上で、解除後も見据えた実効性ある対策を練らなければならない。

 国や自治体、関係機関が連携を強めて感染防止を徹底させ、早期の宣言解除へ向けて全力を尽くすよう求めたい。国民一人一人の自覚も欠かせない。



【緊急事態再延長】感染防止へあらゆる手を(2021年3月6日配信『高知新聞』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルス対応で首都圏1都3県に発令している緊急事態宣言について、7日までの期限を21日まで2週間再延長することを決めた。

 感染者数の減少鈍化や病床の逼迫(ひっぱく)を踏まえ、自治体や専門家からも延長を求める声が上がっていた。感染が再拡大すれば医療従事者の負担が高まり、今後本格化するワクチン接種の妨げにもなる。

 宣言の再延長はやむを得ない。大事なのはどうやって感染を抑え込むのか、どうなれば解除するのか、国民に明確に示すことだ。
 今回の緊急事態宣言は今年1月初めに発令。当初は1カ月での解除を目指したが、2度の延長により初めて宣言期間が2カ月を超えることになった。

 政府は飲食店に重点を置いた感染防止対策に取り組んできた。しかし、それだけでは宣言解除にもっていくことができなかったことを重く受け止める必要がある。

 今後は再拡大の予兆をつかむために、街で無症状の人に参加してもらう「モニタリング検査」を実施する。既に大阪や兵庫、京都で始めた。濃厚接触者を洗い出す積極的疫学調査も進める。集団感染の発生源をいち早く探知するため、保健所の調査強化や人材確保、業務の外部委託も推進する。

 PCR検査を「いつでも、どこでも、何度でも」受けられるよう、体制を拡充することや、保健所の機能強化は以前から指摘されていた。いまだにそれが十分改善されていないのだとすれば驚きを禁じ得ない。再拡大を招かないよう、あらゆる措置を講じなければならない。

 緊急事態宣言の解除は「ステージ4」(爆発的感染拡大)と評価される地域が、少なくとも「ステージ3」(感染急増)相当に落ち着くことが目安となっている。関西など6府県が2月末で先行解除された際は、目安のクリアが強調された。
 今回4都県についても、菅義偉首相は「ほとんどの指標でクリアしている」としつつ、さらに「ベクトルが下に行くことが大事だ」と述べた。解除の基準が曖昧では国民は混乱する。

 首相の再延長表明は、解除に慎重姿勢だった小池百合子都知事らの機先を制する狙いも指摘されている。政府側には都の感染対策への不満があるようだが、国と自治体が一枚岩にならなければ感染収束など到底おぼつかない。

 今月25日には東京五輪・パラリンピックの聖火リレーが始まる。再延長を2週間としたのは、それまでに感染を落ち着かせたい思惑がうかがえる。むろん、スケジュールありきであってはならない。最優先すべきなのは、国民の命と暮らしを守るための判断である。

 感染力が強いとされるコロナの変異株が国内でも広がっている。感染防止の今が正念場だ。これまで以上に緊張感を持った対応が求められることを、政府は肝に銘じなければならない。



首都圏宣言延長 コロナ封じへの正念場だ(2021年3月6日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新年度から国民生活を正常に戻し、夏の東京五輪開催につなげる-という視点に立てば、まさにここが正念場である。

 新型コロナウイルス対策で政府が首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言の期限を2週間延長し、21日とすることを決めた。首都圏の経済活動への制約が長期化することで、地方経済にもマイナスの影響が予想される。それでも現状を見ると、感染再拡大の懸念はなお拭えない。判断としては妥当だろう。

 昨年来、ウイルスが首都圏を主たる感染源として列島全体に拡散してきたことは明らかだ。 今年1月に緊急事態宣言が再び出て以降、飲食店の時短営業を軸にした対策により首都圏の感染者は大幅に減り、国の警戒レベルで最も深刻な「ステージ4」の状況を脱してはいる。

 ただ最近は感染者の減少率が鈍化し、医療提供体制の逼迫(ひっぱく)は完全には解消されていない。感染力が強いとされる変異株もじわじわ広がっている。ワクチンの供給、接種を巡っても準備に混乱が目立つ。

 春先は通常、歓送迎会や花見など人の接触が増える時季だ。25日には五輪の聖火リレーが始まる。ここで対策を緩めれば、感染が再拡大し混乱を招く恐れがある。政府と1都3県は「人流」の抑制と併せて変異株対策や疫学調査の強化などを着実に進めてほしい。地方でもいま一度、市民に協力を促したい。

 その上で、政府に改めて指摘したい問題もある。一つは時短営業を強いられる飲食店などに対し損失に見合う支援金を平等に支給する仕組みが構築されていないことだ。早急に検討し、事業者の理解を得るべきだ。

 もう一つは専門家や自治体との連携に依然ほころびが見えることだ。菅義偉首相は宣言延長について「ぎりぎりまで状況を見極める」と述べていながら、期限4日前の3日に突然、2週間延長の方針を表明した。

 専門家には経済再生に前のめりな首相に不満や懸念の声がくすぶる。1月の宣言は都知事らの強い要請に応じる形で出したため「政府の対応は後手」との批判も招いた。そこで今回は、首相が率先して厳しい判断を下す姿勢を演出した格好だ。

 本来は専門家や自治体の声をじっくり聞くのが筋だ。それを省いたことで首相の焦りが際立った感もある。国と1都3県による連絡調整会議が機能した形跡がないことも問題だろう。

 国、専門家、自治体の3者が綱引きを演じていては、国民の幅広い協力は得られない。今後の感染再拡大をなんとしても食い止める。そのためには3者がここで冷静に向き合い、連携を深める契機とすべきだ。



首都圏の宣言延長 コロナ対策の不備修正を(2021年3月6日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 首都圏4都県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言が21日まで再延長されることになった。菅義偉首相は期限の7日で解除する意向だったが、各知事や医療界、専門家に慎重意見が強いことを考慮して軌道修正。再延長の方針を決定前に表明することで、政府の対策が後手に回っているとの批判の打ち消しを図った。

 首相は病床逼迫[ひっぱく]を理由に挙げ、再延長は「国民の命と暮らしを守るために必要」としている。ただ、当初は1カ月のはずだった宣言期間は、2度の延長で2カ月を超えることになる。経営状況が一段と厳しくなる事業者も多かろう。首相や知事らは責任を重く受け止めるべきだ。宣言の取り扱いを巡って主導権争いを繰り広げている場合ではあるまい。

 今後問われるのは、2週間の延長期間中に何をやるかだ。政府や自治体は、病床状況の改善を待つだけではなく、感染の再拡大抑止や収束につながる施策を集中的に実施する必要がある。若者や飲食を主眼とした対策の不備を早急に洗い出し、修正してもらいたい。

 1月の宣言発令時、首相は「1カ月後に必ず事態を改善させる」と約束。2月に1カ月延長を決定した際も「1カ月で全ての都府県で解除できるようにする」と述べたが、掛け声倒れに終わった。

 また、首相は専門家の抵抗を抑えて関西など6府県の緊急事態宣言を先行解除した際には「基準を決めている。基準はクリアしている」と正当性を強調。しかし今回の4都県については「(解除基準を)クリアしている」としつつも、さらに「ベクトルが下へ行くことが大事」と厳格な解釈に転じた。解釈次第で結論が変わるようでは、基準とは言えない。

 厚生労働省の専門家組織は、首都圏4都県では新規感染者の減少スピードが鈍化し、病床使用率の高い地域がなおあると分析している。その意味では、首相の判断は妥当と言える。ただ、専門家は感染源やクラスター(感染者集団)の発生場所が分からないケースが増え、夜間の人出も増していると分析。従来の対策では感染者の減少は困難だと指摘している。

 政府はこれまで、若い世代が飲食の場で感染し、家庭などにウイルスを持ち込むのが主因とみて対策の的を絞ってきた。その結果、多くの地域では新規感染者数も医療体制の負荷も減ってきたが、なぜ首都圏は危機を脱せないのか。理由を突き止めるためにも、対策の効果検証を急ぐべきだ。

 高齢者施設でのクラスター対策も徹底する必要がある。積極的疫学調査の強化も待ったなしだ。保健所の業務も一部を外注するなど効率化したい。営業時間の短縮要請に応じた事業者への協力金も事業規模に応じた内容とすべきだ。

 3月下旬以降は進学や就職、転勤などで人の移動が活発になる。感染力が強いとされる変異ウイルスも広がっている。2週間で第3波を抑え込み、第4波を未然に防ぐことができるのか。首相の判断力と実行力が問われる。



理不尽のそしり(2021年3月6日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 分数計算を習う小学校中学年ごろか、「仮分数」と呼ばれた同級生がいた。横棒の下の分母より上の分子の数字が大きい。つまり頭でっかちの意である

▼いじめ防止として、学校によってはあだ名が禁止されているという昨今では、真っ先にやり玉に挙がるような呼称だろう。思えば、本人の努力でどうなるものでない容姿をからかわれるのは、理不尽極まりない

▼新型コロナウイルス対応で、首都圏に発令中の緊急事態宣言の再延長がきのう決まった。菅義偉首相らの説明を聞いて、申し訳ないが「入る帽子がない」と嘆いていた同級生の姿を思い出したのは、「これは仮分数の問題か」と理解したからだ

▼首相らが理由の第一に挙げた医療の逼迫[ひっぱく]とは、分母に病床数、分子に入院者数を当てはめた病床使用率の高さである。これが高じて、仮分数となるような医療崩壊を招くことは断じて防がなければならない-との訴えは分かる

▼ただ引っ掛かるのは、関係者が入院者数や感染者数減少の必要性ばかり語ること。使用率を下げるには、同時に専用病床と医療従事者を増やすことも重要であるはずだが…

▼もともと全体の病床数は、人口当たりで欧米を上回る日本である。それがなぜ、欧米よりはるかに少ない感染者数で仮分数の危機を迎えるのか。この分数計算が、どうしても分からない。もしも、行政側が分母を増やす務めを果たしていないのであるならば、首都圏住民への「ステイホーム」のさらに声高な呼び掛けは、理不尽のそしりを免れまい。



緊急事態の再延長(2021年3月6日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

従来型の対策では打開できぬ

 菅義偉政権は、東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県に発令中の緊急事態宣言を再延長しました。7日までの期限を21日までにします。首都圏では新型コロナの新規感染者数の減少ペースが落ち、病床ひっ迫も予断を許さない状況が続いています。宣言を解除すれば感染再拡大に転じる危険も指摘されています。一方、営業時間短縮に協力してきた業者からは落胆の声が上がります。しかし、首相は、国民に一層の努力を求めるばかりで、これまでの不十分なやり方の基本を変えようとしません。事態打開のためには、従来の対策の根本を改めることが急務です。

首相の決意の根拠みえず

 4都県の緊急事態宣言は1月8日に始まりました。2月初めに3月7日まで延長を決めたものの、感染状況の十分な改善につながらず、2週間延ばすことになりました。21日までとなれば宣言期間は70日以上です。昨年4月初めからの1度目の緊急事態宣言は1度延長したものの50日弱でした。前回宣言より長期にわたり国民生活への制約が続くことの影響の大きさは計り知れないものがあります。

 菅首相は、再延長に至ったことを陳謝し、再々延長にならないよう「全力で取り組む」決意を述べました。しかし、どのように感染を抑え込むのか、具体的な中身が見えません。なぜ2週間の延長なのか、その期間にどのような対策を講じるかなどについて、国民が納得できる踏み込んだ説明はありません。再延長を議論した専門家による政府の「基本的対処方針等諮問委員会」でも、2週間延長で十分なのかという疑問が出されました。科学的な根拠も明確でないままに、「2週間ありき」で決めたとなれば、あまりに無責任です。

 首相は2月初めに延長を決めた際、「もうひと踏ん張り」と国民に努力を求め、多くの国民は感染抑止のために協力しました。それでも再延長を余儀なくされました。菅政権のやり方に欠陥があったことは明らかです。対策の弱点を徹底的に検証し、反省を踏まえた打開策を講じなければ、失敗が繰り返されてしまいます。

 急がれるのは、検査の抜本的拡充、医療機関の減収補填(ほてん)、営業への十分な補償、雇用と賃金の保障など現場の切実な要求に政治が応えることです。ところが菅政権に、その基本的立場がありません。

 4日の参院予算委員会で日本共産党の田村智子政策委員長は、地域の医療が崩壊の危機に直面し苦闘している実態を示し、減収補填を拒む政府を追及しました。またコロナ禍で非正規雇用が激減する中、矛盾が集中している女性の貧困が深刻化している問題で政府の責任をただしました。しかし、首相らの答弁は、これまでの対策の枠から一歩も出ません。冷たい政治の転換が不可欠です。

大前提は国民からの信頼

 再延長を受けて、時短要請に協力しない店に対し、違反すると罰金を伴う「命令」を出す自治体の動きがあることは見過ごせません。強権的手法は、国民に対立と分断をもたらすだけで、感染対策の逆行にしかなりません。

 感染症対策の土台は、国民の理解と納得、政治への信頼です。与党議員の深夜会食や異常な官僚接待などで国民の政治への不信を広げる事態を招いた菅政権の政治姿勢が厳しく問われます。





緊急事態延長へ 抑止へ具体策欠かせぬ(2021年3月5日配信『北海道新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が首都圏1都3県で継続している新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言について、7日までの期限を2週間程度、再延長する考えを表明した。

 首都圏での感染者数の下げ止まりは明らかだ。謝恩会や歓送迎会が多い時期でもある。再拡大すれば、ワクチン接種にも影響する。

 宣言の延長はやむを得まい。

 首相は病床の逼迫(ひっぱく)を最たる理由に挙げたが、先月末に6府県を先行解除した際、地元医師会は病床逼迫を訴えていた。

 医療現場の危機的状況を都合良く使い分けている感が否めない。

 漫然と緊急事態宣言を続けることは許されない。大事なのは感染者数の下げ止まり要因を科学的に分析し、宣言を早期解除するための具体的な抑止策を示すことだ。

 首相は一貫して7日解除を目指してきた。一方、東京都の小池百合子知事らは延長を求める意向だった。今回の判断は、知事側に押し切られて、再び後手批判を浴びるのを避ける意図が色濃い。

 期間についても、首相はなぜ2週間なのか理由を示さず、再延長後の解除基準も曖昧な言い方だ。

 「新規陽性者数が何となく下がり切れていない」という分析だけで、有効な対策を打てるのか。

 気になるのは昨年11月以降、死亡者数が増加傾向にあることだ。

 感染者数全体に占める高齢者の割合も増えている。

 英国などで広がった感染力が強いとされる変異ウイルスだけでなく、ワクチンが効きにくい新たな変異株が国内で広がっている。

 飲食店の営業時間短縮や、高齢者施設でのクラスター(感染者集団)対策など、従来対応だけで抑え込むのは難しいのではないか。

 若い人と高齢者の接触を徹底して減らす方策など、年代別のきめ細やかな対応策のほか、感染状況を早期に把握するための検査体制の大幅拡充などが欠かせまい。

 水際対策をより厳格化する必要もあろう。政府は東京五輪・パラリンピックでの海外客受け入れを見送る方向で調整に入った。開催の可否を含め、国民の生命、健康を第一に考えた判断が求められる。

 昨年秋から生活保護の申請が前年より増える傾向にある。コロナ禍による失職などで、生活困窮者が増えていることの表れだ。

 時短要請された飲食店が事業継続するには協力金では足りず、通常営業を続けるケースもある。

 不安なく感染対策に協力できるよう、宣言延長に伴う支援策もしっかり講じてもらいたい。



「緊急事態」再延長へ/解除の基準を明確に示せ(2021年3月5日配信『河北新報』-「社説」)

 首都圏1都3県に発令中の新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言は、7日の期限が2週間程度、再延長されることになった。

 解除したら逆戻りしてしまうのではないか。国民の心配はこの一点に集中している。感染の再拡大へ大きな不安を抱えたまま、ブレーキを緩めることはできまい。

 きょうの対策本部会合で決定するが、解除の基準を明確に示すことが重要である。

 解除を巡り、政府と自治体の足並みがそろっていない。最たるものが解除の目安となる新規感染者数だ。

 西村康稔経済再生担当相は「東京で1日当たり500人」としてきた。東京は2月中旬以降、500人を下回り、政府は解除に前向きだが、都は一貫して慎重だ。

 小池百合子知事が掲げた目安は「3月上旬に140人以下」。2倍以上のレベルに高止まりしている。

 500人の目安に対し、解除後のリバウンドを見込むと、感染の「第4波」を回避できない懸念が専門家から指摘されてきた。

 クリアすべきハードルが別々に設定されては、対象地域は戸惑うばかりだ。とりわけ感染対策の「急所」と目され、時短営業を長期間求められている飲食業界は振り回され続けている。

 延長は2度目になる。事業者の多くは現行の支援制度に対し、時短営業で失った収入に見合わないと不満を充満させ、死活問題に直面している。再延長の理由について、的確で丁寧な説明がなければ、事業者は納得しないだろう。

 菅義偉首相は解除の基準に関し「病床使用率が50%以下になって、ベクトルが下に行くことが大事だ」と強調した。使用率を下げるため、政府には病床を確保する努力を強く求めたい。

 なぜ、延長期間を2週間と見込むのか。

 東京五輪・パラリンピックの聖火リレーがいよいよ25日に始まる。宣言解除を7日から2週間先送りしてもリレーの日程と重ならない。

 経済の再生と五輪開催へ歩みを進めるためには、緊急事態の旗を降ろす必要があろう。だが、それがためにスケジュールを無理に合わせるようなことがあってはなるまい。

 緊急事態は宣言前の状態に戻すのが目的ではない。リスクを可能なかぎり抑え込み、二度と同じ事態に陥らないと安心できるレベルまで落ち着かせることが大命題だ。

 ここに来て、従来より感染力が強いとされる変異株の感染例が国内でも増えている。3月以降は歓送迎会や花見など行事が多く、爆発的に感染が拡大した年末年始と状況が似ている。

 感染者数の減り方が鈍っている現状は、対策の手詰まり感を示す。延長中、何に重点を置き、理解を求めるのか。菅首相の求心力が問われる重大な局面だ。



首都圏で緊急事態延長 対策の点検、修正を急げ(2021年3月5日配信『茨城新聞』-「論説」)

 菅義偉首相は首都圏4都県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言を2週間程度再延長する意向を表明した。期限の7日で解除したい考えだったが、慎重意見が強い知事、医療界、専門家に外堀を埋められる前に機先を制そうとした形だ。

 首相は当初1カ月に限って宣言を発令したが、2度の延長で2カ月半に長期化することになった事実をまず直視しなければならない。問題は再延長して何をやるかであり、真に目指すべきは宣言解除の先の感染収束だ。政府は飲食中心に絞った対策の不備を早急に点検し修正する必要がある。

 1月の宣言発令時、首相は「1カ月後に必ず事態を改善させる」としたものの2月に1カ月延長を決定。「1カ月で全ての都府県で解除できるようにする」と述べたが果たせなかった。2度も延長させた政府や知事らの責任は重い。

 首相は専門家の抵抗を抑え中京、関西など6府県を先行解除した時には「基準を決めている。基準はクリアしている」と気色ばんで正当性を強調した。ところが今回の4都県については「(解除基準を)クリアしている」としつつも、さらに「ベクトルが下へ行くことが大事」と、同じ基準でも厳格な解釈に転じた。解釈で結論が変わるような基準は混乱を招く。

 4都県は全て新規感染者数が1週間前と比べて増加傾向で減少ペースの鈍化が顕著になっている。感染状況指標も緊急事態宣言に相当するステージ4(爆発的感染拡大)を軒並み脱したが、「全入院者に対する確保想定病床の使用率」は4都県全てステージ3(感染急増)の「20%以上」のままだ。中でも千葉はステージ4になる50%のぎりぎり手前だ。

 厚生労働省の専門家組織も新規感染者の減少速度が鈍化し、病床使用率の高い地域がなおあると分析しており、その意味では首相の判断は妥当と言える。ただ専門家は感染源やクラスター(感染者集団)発生場所が分からないケースが増え、夜間の人出も上昇していると危機感を表明。その上で、飲食中心の対策では感染者減少が困難になっていると指摘した。首相は重く受け止めるべきだ。

 多くの国民の関心は、首都圏で感染を十分抑えられない原因にある。先行解除の6府県を含め国内の多くの地域は新規感染者数、医療体制の負荷ともに着実に減ってきたが、なぜ首都圏は危機を脱せないのか。理由は依然明確でない。だからこそ対策の効果検証が必要ではないか。

 政府は、若い世代が飲食の場で感染し家庭などにウイルスを持ち込むのが主な要因とみて対策の的を絞ったが、各地で止まらない高齢者施設でのクラスター対策などをもっと徹底する必要性がある。専門家が求めるPCR検査による早期探知や、積極的疫学調査の強化も待ったなしだろう。

 街の人出が増えるのは、生活維持の必要から人々がやむなく通常の社会経済活動を再開しているためではないか。「緩み」を引き締めるには、終了した持続化給付金などに代わる中小企業の支援策の検討も必要だ。

 2週間後の3月下旬は、卒業、転勤、花見など人の移動が活発になる時期だ。自粛生活からの反動が心配な一方、感染力が強い変異ウイルスも確実に広がっている。首相はさらに困難な決断を迫られると認識すべきだ。



緊急事態延長へ 解除の先の感染抑止策を急げ(2021年3月5日配信『読売新聞』-「社説」)

 緊急事態宣言を解除したら感染が再拡大する、という繰り返しでは意味がない。再延長の期間中に、これまでの対策を検証し、実効性のある抑止策を打ち出すべきだ。

 菅首相は、新型コロナウイルス対策で東京と埼玉、千葉、神奈川の1都3県に発令中の宣言を2週間程度再延長する考えを示した。5日に専門家の意見を聞き、延長期間を正式決定するという。

 これらの地域では、新規感染者数が1月中旬以降、大幅に減ってきたが、最近では減少のスピードが鈍化している。これまでの対策の何が足りないのかを洗い出し、解除後の再拡大を防ぐ態勢を築かなければならない。

 高齢者施設での集団感染がいまだに相次いでいる。職員への定期的なPCR検査や、感染者が出た施設への専門家の派遣などはどの程度行われているのか。政府や自治体は各地の実態を調査し、改めて対策を徹底してもらいたい。

 感染力が強いとされる変異ウイルスが国内でも少しずつ広がっている。各地域で検査態勢を充実させ、早期発見と隔離によって蔓延まんえんを防ぐことが重要だ。

 春は進学や就職、転勤など人の移動が多いシーズンでもある。感染の再拡大を防ぐためには、一人一人の行動がカギになる。政府は対策の狙いを丁寧に説明し、協力を求めることが必要だろう。

 首相は、1月の宣言発令時、1都3県の知事の要請に押される形で判断したため、「後手に回った」という批判を浴びた。今回は、申し入れを待たずに延長する考えを示した。知事の機先を制する狙いがあったとみられている。

 国と自治体が、主導権争いを繰り広げている場合ではない。感染抑止のための具体策について、協力し合うべきだ。

 宣言解除の基準が不明確なのも問題だ。政府は、感染状況が最も深刻な「ステージ4」を脱することを条件に掲げてきた。今回、おおむね達成しているのに延長する理由を明確にしてほしい。

 重症患者は減少傾向だが、引き続き医療は逼迫ひっぱくしている。更なる病床の確保に努めることが不可欠だ。保健所も患者の入院先の調整に追われ、感染経路の追跡を十分できていない。業務の一部を外注するなどの効率化を図りたい。

 宣言の延長で、国民にはさらに負担を強いることになる。営業時間の短縮が続く飲食店の中には、経営状況が厳しいところがあるだろう。延長期間中の支援にもしっかり取り組むことが大切だ。



緊急事態の継続は説明尽くし効果的に(2021年3月5日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 政府は新型コロナウイルス対策で、東京など1都3県の緊急事態宣言を21日まで再延長すると決めた。2月の段階では解除を繰り上げる議論もあったが、安全策をとる。政府は判断基準をわかりやすく説明するとともに、解除後の対策も具体的に示すべきだ。

 首都圏の新規感染者数は「感染急増」を示す「ステージ3」を下回った。医療の逼迫度を示す病床使用率も「感染爆発」にあたる「ステージ4」はなくなった。

 政府は従来、ステージ3への移行を緊急事態宣言解除の目安とする考えを示していた。条件を満たすのに解除されないと、飲食事業者などは先行きを見通せない。

 厚生労働省の専門家組織の分析からは、どこに不安があるかわかる。自治体固有の事情もあろう。それらをかみ砕いて説明し、人々の理解を得なければならない。

 東京などの感染者は2月以降、減少ペースが鈍っている。飲食店の営業時間短縮を長い間続けても減らないとすれば、どこが問題なのか。「見えない感染源」があるなら、検査を増やすなどして早く突き止め対策を講じるべきだ。

 医療の実情も数字だけからは見えないことが多い。病床使用率が下がったとはいえ、多くの病院は使用可能な病床数を無理して増やしている。重症者の入院長期化などで現場の緊張は続いていることを、周知する必要がある。

 変異ウイルスによるクラスターの多発も不安材料だ。感染力が強いが死亡率は押し上げないとされる。全国で広がった場合、最悪どんな事態が予測されるのか。可能な範囲で示してほしい。

 緊急事態宣言の延長を2週間とした理由はわかりにくい。年度末や年度初めのイベントの多い時期の前に解除しては、感染抑止効果は小さいとの意見もある。

 菅義偉首相は5日夜の記者会見で「感染を抑え込み状況をさらに慎重に見極めるのに必要な期間」だと説明した。そう考える根拠ははっきりせず、リバウンドを防ぐ決め手は見えない。

 感染対策には柔軟さが要る。しかし緊急事態宣言の基準に曖昧な部分が多いと、2月に解除済みの府県も含め、再度宣言を検討する場合にも混乱が生じかねない。

 改正新型インフルエンザ対策特別措置法のもとで、宣言に準じた「まん延防止等重点措置」の実施も増えるだろう。こちらも運用基準の見える化を求めたい。



緊急事態宣言 延長期間で何を変えるか(2021年3月5日配信『産経新聞』-「主張」)

 菅義偉首相は4日の国会で、首都圏の1都3県に発令中の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言について、「国民の命と暮らしを守るため、2週間程度の延長が必要と考えている」と述べた。

 首都圏では新規感染者数の減少スピードの鈍化が目立つ。東京などでは前の週の同じ曜日よりも感染者数が増えた日も出ている。最近の東京の新規感染者数は、急激な感染拡大に見舞われる直前の昨年11月頃の水準だ。病床の逼迫(ひっぱく)も解消されたとはいえない。延長の判断は妥当だろう。

 ただし、期間を延ばしても今までと同じ対策を漫然と続けるなら改善は見込めない。どのような対策を講ずるのか、期間終了時にどのような指標を満たせば解除するのか。菅首相は記者会見でこの点を明確に説明してほしい。

 緊急事態宣言を先行解除された関西圏の大阪市や京都市では人出が大幅に増加している。首都圏でも同様に解除すれば、人出が増して感染拡大につながることが懸念される。

 政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は宣言期間の延長を「正しい選択」と述べた。確かにこの状況で解除を強行するよりは正しかろう。

 だが、宣言中であるにもかかわらず、首都圏の主要駅周辺ではすでに人出が増加傾向にある。新規感染者数の下げ止まりはこうした「緩み」に起因するとみるべきだ。現行の宣言は期待したほどの成果をあげなかったことを政府や1都3県は反省し、延長期間中の対策の中身と解除の条件、解除後の姿を具体的に示してほしい。

 新たな対策の効果が新規感染者数などに反映されるには約2週間を要するとされる。それでは2週間後の解除の是非を判断する指数にはなりにくい。病床数を拡充して使用率を改善するといった、目に見える目標が必要である。

 感染力の強い新型コロナの変異株への備えはますます重要になっている。国や自治体は検査態勢や濃厚接触者の範囲を広げるなど対策を強化するときだ。

 時短営業を続ける飲食店は厳しい経営状況にあるが、延長する2週間は経済を取り戻すための期間でもある。菅首相は「大変重要な局面にある」とも語った。その認識に見合うだけの対策と実行力をみせてもらいたい。



啓蟄(2021年3月5日配信『東京新聞』ー「筆洗」)

 ものごとが衰える兆しは、盛りの中にすでに表れているものだ。<衰颯(すいさつ)の景象(けいしょう)は、すなわち盛満(せいまん)の中にあり>。中国の古典『菜根譚(さいこんたん)』は、難しい表現で君子の心構えを説いている。だから、平穏な時にこそ、わざわいの兆しを気にかけよと。コロナ禍に通じる教訓に思えて、難しい一節を頑張って覚えている

▼1年前を思い出す。桜が盛りを迎えていた公園や観光地が、そこそこ多くの人でにぎわったのは、3月の3連休であった。4月には感染が増えて、地方にも広がっている

▼2週間ほどの時差で厳しい現実を突きつけてくるウイルスである。盛りの中に衰えの兆しをもっと感じるべきだったという無念は記憶に新しい。首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言は、先日の解除見送りに続いて、再度の延長となりそうである

▼各都県では、さまざまな指標がたしかに改善した。喜ばしいことだが、一方で、感染減のペースが鈍っていることを示す数字がある。1年前の教訓を生かすならば、わざわいの兆しをみるのがいいはずだ。我慢の時が続くけれど、同じ無念を味わうわけにもいかない

▼きょうは24節気の中で冬を越した虫がはい出すとされる「啓蟄(けいちつ)」である。24節気をさらに分けた72候では「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」となる

▼花の盛りに向かう季節が巡ってくるが、心の守りの戸も、まだ固く閉めている時であろう。



首都圏で緊急事態再延長(2021年3月5日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆飲食中心の対策効果検証を◆


 菅義偉首相は首都圏4都県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言を2週間程度再延長する意向を表明した。期限の7日で解除したい考えだったが、慎重意見が強い知事、医療界、専門家に外堀を埋められる前に機先を制そうとした形だ。

 首相は当初1カ月に限って宣言を発令したが、2度の延長で2カ月半に長期化することになった事実を直視してほしい。問題は再延長して何をやるかであり、真に目指すべきは解除の先の感染収束だ。政府は飲食中心に絞った対策の不備を早急に点検し修正する必要がある。

 1月の宣言発令時、首相は「1カ月後に必ず事態を改善させる」としたものの、2月に1カ月延長を決定。その際も「1カ月で全ての都府県で解除できるようにする」と述べたが果たせなかった。2度も延長させた政府の責任は大きい。

 首相は専門家の抵抗を抑え中京、関西など6府県を先行解除した時には「基準を決めている。基準はクリアしている」と気色ばんで正当性を強調した。ところが今回の4都県については「(解除基準を)クリアしている」としつつも、さらに「ベクトルが下へいくことが大事」と、同じ基準でも厳格な解釈に転じた。解釈で結論が変わるような基準は混乱を招く。

 厚生労働省の専門家組織も新規感染者の減少速度が鈍化し、病床使用率の高い地域がなおあると分析しており、その意味では首相の判断は妥当と言える。ただ専門家は感染源やクラスター(感染者集団)発生場所が分からないケースが増え、夜間の人出も上昇していると危機感を表明。その上で、飲食中心の対策では感染者減少が困難になっていると指摘した。首相は重く受け止めるべきだ。

 国民の関心の先は、首都圏で感染を十分抑えられない原因にある。先行解除の6府県を含め国内の多くの地域は新規感染者数、医療体制の負荷ともに着実に減ってきたが、なぜ首都圏は危機を脱せないのか。理由は依然明確でない。だからこそ対策の効果検証が必要だろう。

 政府は、若い世代が飲食の場で感染し家庭などにウイルスを持ち込むのが主な要因とみて対策の的を絞ったが、各地で止まらない高齢者施設でのクラスター対策についてもっと徹底する必要がある。専門家が求めるPCR検査による早期探知や、積極的疫学調査の強化も待ったなしだろう。

 3月下旬は卒業、転勤、花見など人の移動が活発になる時期だ。自粛生活からの反動が心配な一方、感染力が強い変異ウイルスも確実に広がっている。2週間後、首相はさらに困難な決断を迫られると認識すべきだ。



啓蟄(2021年3月5日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 3月に入って生き物の活動が盛んになった。当然ではあるが、季節の変化に確実に対応する自然の営みに感心しきりだ。わが家の小さな庭にも花が咲き、メジロやツグミなどの野鳥が日替わりで訪れてくる。

 冬鳥のツグミはそろそろ北へ帰る時期だから、長い渡りに備えての腹ごしらえだろう。せわしく地上を歩き回って何かをついばんでいる。今日は「冬眠していた虫たちが土中から這(は)い出る」とされる啓蟄(けいちつ)。出てきてすぐに狙われる虫にとっては生死の分かれ目だ。

 生理的には自然のサイクルと遠い昔に決別したはずの人間も、春は浮き立つ気分を抑えきれない。コロナで閑散としていた県内の行楽地や商業施設をのぞくと、人出がかなり戻ってきたようにみえる。県独自の緊急事態宣言が先月7日に終了したのも拍車をかけたようだ。

 首都圏の繁華街でも人出が増える動きがあり、感染者の減少が鈍化の傾向にある。病床使用率の高い地域もあり、医療提供体制は依然厳しい。今月7日が期限だった1都3県の緊急事態宣言は2週間程度再延長する方針だ。だが今月後半は企業の転勤や卒業シーズンで、解除の判断が難しいだろう。

 本県も本当の”春”が来たわけではない。医療従事者を対象とするワクチンの接種は今日にも始まるが、一般向けの接種は未確定の要素が多い。対策を緩めると感染が拡大するパターンは何度も経験した。行楽は少人数で、決してめじろ押しにならないように。



啓蟄(2021年3月5日配信『新聞』-「南風録」)

 暖かくなり、昼間はコートなしで出歩ける日が増えてきた。新型コロナで緊急事態宣言下の東京にも着実に春が近づいている。きょうは二十四節気の啓蟄(けいちつ)である。

 冬ごもりしていた虫たちがいそいそと穴からはい出す姿を想像すると、少しうらやましい。人が自由に動き回れるのはいつになるのやら。首都圏の新規感染者数は下げ止まり、宣言は2週間ほど延長される見通しとなった。

 コロナ下の外出控えを意味する「巣ごもり」という言葉が本紙に初めて載ったのは昨年3月13日だった。感染者数の増減に一喜一憂しながら、もう1年になろうとしている。そんな暮らしから抜け出す鍵としてワクチンへの期待が高まっている。

 重症化しやすい高齢者や持病のある人にとっては頼みの綱に違いない。ようやく日本でも医療従事者への先行接種が始まり、自分はいつ打てるのか気になる人は多いだろう。

 供給量は十分とは言えず、世界を見回せば争奪戦になっている。貴重さ故に、ペルーの大統領や政府高官が抜け駆け接種したり、米国の接種会場で高齢者に変装した人が見つかったりしている。一刻も早くとの気持ちは分かるが何とも浅ましい。

 日本でも計画通り供給されるか、大勢にスムーズに接種できるか心もとない。頭痛や発熱といった副反応が気にならなくもないが、巣ごもりから脱する姿を思い描きつつ順番を待つとしよう。




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