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コロナ対策でも露呈した菅首相の女性問題不見識! 田村智子議員が看護介護労働の性差別による低賃金の改善を訴えるも取り合わず(2021年3月7日配信『リテラ』)

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5日会見する菅首相(首相官邸HPより)

 5日、首都圏を対象とした緊急事態宣言の再延長を発表し、記者会見をおこなった菅義偉首相。延長期間である2週間の根拠も示さず、肝心の感染再拡大防止策は「コマーシャルを倍増して徹底する」というトホホなものだった。

 しかし、5日の会見でさらにあ然とさせられたのは、女性に対する支援策についての菅首相の説明だ。

 菅首相は昨年から女性の自殺者が急増していることを取り上げると、「大変心を痛めており、対策が急務」と発言。その上で、女性の非正規やひとり親などを対象に「ITスキルなどの訓練の機会を大幅に広げる」といった就労支援をおこなうと発表したのだ。
 
 女性の自殺増加は昨年の夏から問題化してきたもので「対策が急務」と言うにはあまりにも遅すぎるが、その上、対策は「IT技能訓練」って……。まず緊急に必要なのは、直接の給付金や生活保護受給要件の緩和など、生活に不安を抱かずにすむ状況をつくり出すことだが、困窮者支援について質問が飛ぶと、菅首相は「緊急小口資金の限度額を200万円に引き上げました」などと言うだけだった。

  森喜朗氏の性差別発言以降、ことあるごとに菅首相はあたかも「女性」の問題に取り組んでいるかのようなアピールをおこなってきたが、コロナ禍で女性の困難がここまで顕在化しても、この有様。今回アピールした「IT技能訓練」も、パソナのようなお友だち企業に丸投げ、中抜きが起こる展開になるのは目に見えている。

 だが、菅首相の「女性」政策が、いかにその場しのぎであるかをあぶり出したのは、これだけではない。さらに象徴的だったのが、4日の参院予算委員会だった。

「社会的に、女性に対して『当たり前』とされてきたこと、これがじつは新型コロナのもとで女性に大きな困難をもたらしている」

 この日、日本共産党の田村智子参院議員が、コロナ禍で女性の自殺者や失業者が急増している背景に女性に対する構造的差別の問題があることを指摘したのだが、菅首相はじめ菅政権の閣僚たちはこの問題に誰一人まともに取り合おうとしなかったのだ。


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女性の非正規労働者が首を切られ、自殺者が急増しているのに菅首相は「女性の正規社員が増えている」

 まず、田村智子議員が取り上げたのは、昨年4月の雇用者数では対前月比で女性が約74万人、男性の約2倍も減少したという事実だった。この背景にはもちろん、コロナ禍で真っ先に首切りの対象になった非正規雇用の7割が女性という構造があるのだが、田村議員はあらためて菅首相に「非正規で働く女性たちがコロナ禍で雇用の調整弁にされている」実態をどう考えているのかを質したのである。

 しかし、この質問に菅首相は「政府としてはさまざまな対応をさせていただいているところ」と力なく答え、田村憲久厚労相にいたってはこんなことを言い出した。

「正規で働ける場がなくて非正規で就かれている女性の方々もいるとは思います。一方で、ご自身が時間帯等々含めて、自ら望んでそういう職種に就かれる女性が多いのもたしかでございます」
 
「自ら望んで非正規で働いている女性がいるのも事実」って、それは家事や育児、介護を女性に押し付ける社会が前提にあるからだろう。それなのに、「自ら望んでいる」と言い張るとは……。

 さらにひどかったのはこのあとだ。田村智子議員が「(昨年4月に)緊急事態宣言が出された途端、女性の非正規雇用が激減した。経験したことのないパンデミックのなかで、たちまち仕事を失って収入が途絶える。それがどれほど不安と苦しみをもたらしたか。このことと女性の自殺者の急増と切り離して考えることはできないと思うんですけど、総理の認識を伺いたい」と重ねて問うと、菅首相は「女性の自殺者の割合が高くなっているその原因・動機は、健康問題や家庭問題、経済・生活問題、さまざまなものがある」と言い、さらにこう強調したのだ。

「女性の正規は、じつは増えているんです」

 小泉純一郎や安倍晋三をはじめとする自民党政権のなかで非正規雇用を増やしつづけ、それがいまこれだけの自殺者を出していることの大きな要因のひとつと指摘されているというのに、「女性の正規は増えている」と主張するとは、厚顔無恥もはなはだしい。しかも、この数年、全体の正規雇用が増えるのに比例して女性の正規雇用も増えているが、女性の正規雇用でもっとも増加している業種は医療・福祉業。つまり、看護師や介護士など「低賃金・過重労働」によって人手不足が問題となっている業種なのだ。

 じつは、田村智子議員も総理答弁に切り返すかたちで、まさにその問題に踏み込んでいた。

「総理は『(女性の)正規雇用は増えている』とおっしゃった。いちばん増えているのは、医療・福祉なんですよね。だけど、その正規雇用は、女性は給料が安い。これも『当たり前』にされてきたんじゃないか(という問題)なんですよね」

 そして、田村智子議員は女性看護師・女性介護員・女性保育士等と大卒・高卒の男性労働者との賃金比較を年代別にまとめたグラフを示したのだが、そのデータを見ても待遇差は歴然だった。

 まず、女性看護師は20代の最初のころはで大卒よりも高いものの、20代半ばごろに逆転、そのまま差がどんどん広がっていく。女性介護員・女性保育士の場合は、最初から大卒・高卒の男性労働者と同等かそれよりも低い。しかも、20代から60代まで給与を示すグラフが水平に近い状態でほとんど上昇しないため、40、50代になると、その差は大卒男性とでは2倍〜2.5倍以上に広がってしまう。

田村智子議員が突きつけた看護・介護・保育職の低賃金の背後にある女性差別問題

 なぜ、看護師や介護、保育士はこのような「異常な低賃金構造」となっているのか。その背景にあるのは、「看護師は医師の補助的業務、介護や保育はもともと女性の家庭労働であり専門性や経験を評価しない」という考え方だ。つまり、「世話する存在」として女性が家庭において無償で担ってきたものだからこそ、それが労働として市場化しても低賃金であることが定着してしまっているのだ。

 女性をケア要員とみなす性別役割分業と、それに基づく賃金格差という性差別。この是正が求められるのが当然であるだけではなく、このコロナ禍では看護師をはじめとして介護士、保育士の仕事が社会的にいかに重要かがあらためて浮き彫りになった。にもかかわらず、コロナ禍でも賃金は安いままで過重労働を強いられ、心が折れて退職するケースは相次いでいる。

 こうしたなかで、田村智子議員は「ケア労働」の構造的差別を明らかにした上で「抜本的な賃金引き上げ」を訴え、「この現状を変える。政策的にできることです。総理、これやりましょうよ!」と呼びかけたのだ。

 しかし、菅首相はこの呼びかけにも立ち上がろうとはせず、田村憲久厚労相が代わりに答弁する始末。田村智子議員が再び答弁を求め、菅首相はようやく答弁席に立ったが、その答弁はこんなものだった。

「介護についても、保育についても、それぞれ賃金の引き上げをおこなってきていることは事実ではないでしょうか」
「いまも非常に厳しい状況のなかで働くそうしたみなさんに感謝と敬意を表しますとともに、引きつづき現場で働いているみなさんの気持ちに寄り添いながら、ここはしっかり対応させていただきたい」

 雀の涙程度の賃金引き上げでは構造的な問題は解決しないというのに、「感謝と敬意」でお茶を濁す。だが、これこそが菅政権の態度なのだ。

 実際、看護師の人手不足に直面した政府が打ち出したのは、「派遣の規制緩和」だった。厚労省は2月、介護施設や障がい者施設へ看護師を日雇いで派遣できるよう、原則禁止とされてきた30日以内の日雇い派遣を認める方向で検討をはじめたのだ。

看護師不足も日雇い派遣の規制緩和で穴埋め コロナでも全く無反省な新自由主義

 看護師不足を抜本的な処遇改善ではなく、むしろ処遇を悪化させかねない規制緩和で穴埋めしようとする新自由主義丸出しの発想。新型コロナによって「ケア労働」の重要性を目の前に突きつけられても、まだ使い捨てでどうにかなると考えているのだから、あきれるほかはない。

 しかも、問題はそれが女性に対する差別に基づいた構造的な問題だと指摘されても、一切耳を貸さないという事実だ。森発言によって世界から日本の性差別がこれほど注視されていても、菅首相はその根本的な問題に取り合おうとしない、いや理解しようとすらしていないのである。

 しかし、それも当然かもしれない。男女共同参画担当大臣に任命した丸川珠代氏が選択的夫婦別姓に反対する自民党議員有志の文書に署名していた問題でも、菅首相は「いち政治家として、こうした活動をすることはおかしくはない」などと言い張った。そもそも、菅首相は過去に選択的夫婦別姓の推進を求めていたひとりだったが、総理大臣という立場になっても制度導入を積極的に進めようとせず、丸川大臣の資質を疑わない態度からもわかるように、結局は女性が置かれている社会的状況について真剣に考えたことなどないのだ。

 女性差別全開の極右思想の持ち主だった安倍晋三がようやく退陣し、女性の問題について大きな政策転換をおこなうチャンスだというのに、何をすべきかさえ理解しない菅首相。いや、女性の足を引っ張る「害悪」という意味では、安倍前首相と菅首相に大差はないのである。

(水井多賀子)




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