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家事の男女不平等、なぜ男性に「当事者意識」なし? 背景に「稼ぎは夫」「ケアは妻」の根深さ(2021年3月10日配信『AERA.com』)

深澤友紀,宮本さおり

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コロナ禍でテレワークが増え、家族内のスケジュール調整や宅配の管理など目に見えない家事も増えている(撮影/写真部・松永卓也)

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 森喜朗氏の女性差別発言で注目されたジェンダー問題。職場以上に家庭でこそ、女性は不当な思いを抱いているという調査結果もある。不平等を感じる根源は家庭のどこにあるのか。今こそ、社会全体で考える好機だ。AERA 2021年3月15日号は「家庭内ジェンダー」を特集。

*  *  *

 ふーっ。

 電話に出ない夫に送ったメッセージの返信が届いた。スマホの画面には「ごめん、仕事だから無理」の文字。都内に住む会社員の女性(38)はスマホを握ったまま、深いため息をついた。

 大事な会議の直前、保育園から1歳の息子が発熱していると連絡があった。夫にお迎えを頼んだが、拒まれた。「私だって無理だよ……」と泣きそうになりながら、上司や同僚に何度も頭を下げ、職場を後にする。

 夫は、実父のようにソファにふんぞり返って妻に「お茶!」などと命令しないし、毎朝出勤前に子ども2人を保育園に送っていく。家事も育児も「協力的」なほうだと思う。それでも育児に対する当事者意識は低く、「できるだけ」の範疇を超えることはない。「無理」の一言で責任を放棄し、同じフルタイムで働いている自分ばかりが急なお迎えや病院の受診などに対応している。会社の新規プロジェクトに参加したかったが、挑戦する余裕も自信もなく、あきらめた。

 社会のジェンダー意識は確実に変化し、家事育児を分担する男性も珍しくなくなった。

 NHK放送文化研究所が1973年から5年ごとに実施している「日本人の意識」調査では、父親が台所の手伝いや子どものおもりをすることについて、「するのは当然」が2018年は89.4%。この45年間で36.2ポイントも増えた。一方、総務省の社会生活基本調査(16年)では、夫婦と子どものいる共働き世帯で、妻の家事関連時間は1日で4時間54分なのに対し、夫はわずか46分と6分の1以下。家事や育児の負担が女性側に大きく偏っている現状がある。

■家事分担で不当な扱い

ビジネスに特化したSNSを展開するリンクトインが20年に実施した「日本女性の仕事と生活に関する意識調査」では、「女性であるというだけで不当に扱われた」と感じる場面(複数回答可)のトップは「家事分担の話し合い中」(33%)で、2位の「職場」(30%)を上回った。さらに、仕事の機会を妨げているもの(複数回答可)として、「家庭内でのサポートが足りない」と回答した女性は44%で、「組織内でのサポートが足りない」(24%)の2倍近かった。

 つまり、ジェンダー不平等の元凶は「家庭内」にあるとも言えるのだ。リンクトインの広報担当者は言う。

「女性であるがゆえに家事育児の負担が重くのしかかり、そうした家庭内の不平等が女性の仕事の機会や昇進の障壁にもなっています。その結果、4割を超える女性が『もし自分が男性だったら仕事でより良い業績を出せる』と考えています」

 この家庭内男女不平等を生んでいる原因の一つが、「稼ぐのは男の責任、子育ては女の責任」という性別役割分業意識だ。30年以上共働き夫婦の家事分担について研究を続ける日本女子大学の永井暁子准教授(家族社会学)は言う。

「男性も家事育児をするのが当然という意識が高まってきた一方で、『世帯の稼ぎ主は夫』という稼得責任への意識の強さは男女ともあまり変わっておらず、家事育児などのケア役割は女性に、仕事については男性に偏りがちです」

■夫は加点で妻は減点

 東京都内に住むフリーランスライターの女性(44)も「家事育児は女の役割」という意識が抜けない夫に悩まされている。

「夫は、家事育児に関して自分のことは加点法、私のことは減点法で考えるので、私は『やって当たり前』で感謝もされず、やらなかったときだけ失敗をつつかれます」

 性別役割分業の意識が浸透しているのは日本だけではないと、アフリカ出身の夫を持つ滋賀県在住の女性(46)は言う。

「フルタイム勤務なのに、家庭のことはすべて私が担当という状態で、『あなたがやらないことは、全部私がやらなければいけないんだよ』と話したらやっと理解できたようで、掃除を少し手伝ってくれるようになりました。夫の家庭も家事育児はすべて義母が担っていたので、彼自身もロールモデルがないのだと思います」

 妻自身がジェンダー意識を内面化し、良き妻・母でありたいとの思いから、家事育児を夫に任せないということもある。

 都内在住の会社員男性(36)は朝食づくりや夕食後の洗い物、洗濯を担当。週末には率先して外で子どもを遊ばせる。

「でも、妻は僕が子どもを遊ばせているのを見かけたと近所の人に言われると、まるで自分が何もしない妻と思われるのでは、と不安みたいです。食事もデリバリーなどをもっと使ってもいいよと言っても『自分で作りたい』と言って譲りません。女がやらなければという義務感みたいなものがあるようです」

 小学生、中学生の2人の娘がいる名古屋市に住む勤務社労士の女性(45)は、大手企業に勤める夫の方が家事が得意だという。例えば夕食も、女性が担当するときは手軽に作れる丼ものが多いが、夫は平日でも栄養バランスを考えて3品作る。

「彼を見ていると、自分の家事スペックの低さに罪悪感を抱くこともあります。これって、女性の方が家事はうまくて当たり前というバイアスがあるからですよね」

(編集部・深澤友紀、フリーランス記者・宮本さおり)

※AERA 2021年3月15日号より抜粋





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