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日テレの「アイヌ差別発言」問題 北海道のアイヌ民族集落の人々はどう受け止めたのか(2021年3月15日配信『AERA.com』)

キャプチャ20
日本テレビ本社

 12日に日本テレビの情報番組「スッキリ」内でアイヌ民族への差別表現が放送された問題は、いまだ収まりをみせない。騒動を受け、15日には同番組の冒頭で、水卜麻美アナウンサーが「制作に関わった者に、この表現が差別に当たると言う認識が不足していて、番組として放送に際しての確認が不十分でした」と頭を下げた。北海道のアイヌ民族集落の人たちはこの発言をどう聞いたのか。
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 問題の発言は、12日朝に放送された。アイヌ民族の女性の人生を追ったドキュメンタリー映画を紹介した後、芸人の脳みそ夫(41)が同作品に絡め、差別的な言い回しを含んだ謎かけを披露した。

 騒動を受け、日本テレビは同社ホームページの最上部に、以下の謝罪文を掲載。

<3月12日(金)放送の「スッキリ」の中で、アイヌ民族の女性をテーマにしたドキュメンタリー作品を紹介しました。それを受けての放送内容においてアイヌの方たちを傷つける不適切な表現がありました。
日本テレビではアイヌの皆様、ならびに関係者の皆様に深くお詫び申し上げるとともに今後、再発防止に努めてまいります。>

 問題となった放送の翌日、北海道アイヌ協会の幹部が緊急に会合を開き、対応を協議。北海道アイヌ協会の大川勝理事長(76)は「憤りを感じ、大変遺憾である。このまま終わらせるわけにはいかないので、きちっとした対応を日本テレビにしてもらいたい」と記者団にコメントした。

 同局は、差別表現が放送された理由について、12日の朝日新聞の取材にこうコメントしている。

「当該コーナーの担当者にこの表現が差別に当たるという認識が不足しており、放送前の確認も不十分でした。その結果、正しい判断ができないまま、アイヌ民族の方々を傷つける不適切な表現で放送してしまいました」

 これに対して、SNSでは「コーナー担当者のせいにしている」「責任の所在が分からない」などの批判も多く見受けられた。こうした批判を受けてか、15日の謝罪では、「認識不足」の主語が「コーナー担当者」から「制作に関わった者」に置き換わっている。

「あの言葉を聞いただけで不快に思う人もいる」

 では、番組をチェックするプロデューサーなどの意識はどうだったのか。また社内にはコンプライアンス推進室もあるが、なぜチェックが働かなかったのか。これらについて日本テレビに問い合わせたが、期日までに回答は得られなかった。

 一連の騒動について、アイヌ民族の集落で暮らす人たちはどう感じているのだろうか。

 北海道で最も大きなアイヌ民族の集落・阿寒湖アイヌコタンで民芸店を営んでいる西田正男さん(75)は「あまりにも認識不足で、残念」と悔しがる。

「(芸人)本人に差別的な意識がなかったとしても、アイヌ民族が昔どういう境遇にあったのかを知っていれば、あのような発言は出ない。過去をしっかり勉強してほしいし、国も積極的に教育してほしい」

 別の民芸店の店主は、「コタンでは、昔からあのような差別表現があったことは知られている。トラウマになっている人も多く、あの言葉を聞いただけで不快に思う人もいます」

 さらにこう続ける。

「(日テレ側は)誰も気が付かなかったというのがそもそもの問題。もし芸人さんが知らなかったとしても、(当該のコーナーは)生放送ではないので、なぜ制作側がチェックできなかったのか。番組に出演していた加藤浩次さんも北海道出身なのに、気がつかなかったのは残念です」

 木彫りなどの民芸品を売る「ニタユンクル」の渡辺澄夫さん(58)は、「今回のことで、若い人が遊び半分であの言葉を出してしまわないか心配」と懸念する。

「本州の人は、アイヌが差別的な扱いを受けてきたことを知らない人はまだまだ多い。小・中学校の教科書でもほんの少し触れるだけで、十分な教育がされていない。日本人も、同じ日本の民族については知らなくてはいけないと思います」

 印象的だったのは、伝統的な刺しゅうなどを売る「クロユリ屋」のフチさん(84)の言葉だ。

「私は倭人で、ご縁があってここに嫁に来ましたが、アイヌの集落の中で、倭人だからと言っていじめられたことは一度もありません。アイヌも倭人も外国の人も、この地球に暮らす人間なのですから、認め合ってほしい」

「問題は感性が働かなかったこと」


 一連の騒動について、改めて北海道アイヌ協会に見解を聞くと、担当者がこう回答した。

「問題は無知が招いたのではなく、丁寧さや配慮、感性が働かなかったことにあるのではないでしょうか。日本テレビさんは会社の憲章として、基本的人権を尊重するのだということを表明していますが、大事なのは、機能しているのかどうかです」

 協会は今後の日本テレビの対応をみてから、改めて会合の機会を設けるという。

 また担当者は、次のような切実な言葉も残した。

「北海道以外の地域で、アイヌについてどれほど教育を受けてきたでしょうか。学ぶ機会が無ければ、個人旅行でウポポイ(民族共生象徴空間)を訪れるなどして、自主的に学ぶしかない。より多くの人たちに、アイヌ文化を知っていただく機会が増えていくことを望んでいます」

 教育を受ける機会を拡充することはもちろん、我々が歴史を知ろうとする姿勢がもっと大事なのは言うまでもない。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)




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