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入院拒否に罰則の感染症法改正は「歴史の汚点」、明石市長の真意は(2021年3月16日配信『日経ビジネス』)

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改正感染症法は「天下の悪法」?(写真はイメージ)

 入院拒否者への50万円以下の過料などを定める改正感染症法が2月に施行された。兵庫県明石市の泉房穂市長は会見の場で「ハンセン病の教訓が全く生かされておらず、歴史の汚点」と批判した。泉市長に法改正の懸念点や、今後の新型コロナウイルスへの対応について聞いた。

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――2月13日に新型コロナウイルスの感染者が入院を拒んだ場合に罰則を科せる改正感染症法が施行されました。これを強く批判しています。

泉房穂 明石市長(以下、泉氏):感染症法というのはハンセン病の悲しい歴史を踏まえて、感染した人の人権に最大限配慮することを念頭にできた法律です。だから前文にも「感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要」と書かれてあります。

 そうはいっても感染症の中には隔離する必要があるものもあり、これまでの感染症法でも行政による措置入院ができるようになっています。身柄を拘束して入院させることができるわけですから、もちろんそこには人権侵害の要素もありますが、しっかりした要件の下で人権に配慮した形で行われることになっています。

 必要であれば措置入院ができるわけだから、それに罰則を科す必要はあるわけがない。むしろ罰則を科すことによって感染したことがあたかも悪いような、ある意味において差別の助長につながる可能性もあります。

 私が必要だと思うのは、なぜ感染者の中に入院したがらない人がいるのかを考えるということ。小さな子供がいて面倒を見る人がいなくなるとか、親の介護をする人がいなくなるとか、さまざま事情があります。そこを解消し「安心して入院してください」という取り組みが行政には必要。北風と太陽でいう太陽路線の政策が必要だと思います。

 今回の改正は天下の悪法で、歴史の汚点であることは明らかです。20年後、30年後には教科書に「なんて愚かな法改正だったんだ」と書かれ、「2021年は恥ずかしい法改正をした年」として子どもたちが学ぶことになるのではないでしょうか。私はそれくらい怒っているのです。

――新型コロナウイルスの流行開始から1年あまりがたちました。どのようなことを考えて市政運営をしてきましたか。

泉氏:シンプルです。市民に寄り添う、市民のニーズに応えていく。それに尽きます。第1波から直近の第3波までありましたが、その時々に市民の不安や必要性に応じた政策を、国の対応を待つことなくやってきました。

 私は明石市の市長であり、市民に近いいわゆる基礎自治体の長の立場。国はある意味全体を見るという立場ですが、市民の生活から遠く、施策には限界もあります。それに対して、私はより近い立場で、市民や地域経済、商店街を含めてリアリティーが把握できるのです。

 具体的には街に出るのが不安な方が多くいるリアリティーを受け止めた経済対策が必要だということ。去年の4月、緊急事態宣言が全国に出ていたころは今思えば感染者数はそこまで多くなかった。でも、国民の不安感はすごく強い状況だったわけです。多くの人々が将来への不安に打ちひしがれていました。

泉氏:商店街からは「テナント料が払えない」という悲鳴が上がりました。パートさんも雇っておけないから、そのご家庭の子どもさんも食べていけなくなるなど影響も広がっていきます。

 そうしたときに明石市ではスピード感のある対策が必要だということで、20年4月に2カ月分のテナント料として最大100万円を無利子で貸し付けることを始めました。4月25日から続々と振り込んでいき、何とかこれでしのいでくださいとお願いしたのです。

 加えてひとり親家庭に対しては児童扶養手当について5万円の上乗せ支給をしました。家計やアルバイト収入への影響から学費が払えないとの大学生の声に応えて、20年度前期の学費分として100万円の無利子貸与も5月に開始しました。必要と考えていたのは、目の前で沈みそうな市民、商店街をすぐに助け切るということです。

――手厚い支援を行ってきたということですが、財政面への影響はなかったのでしょうか。

泉氏:私は基金を取り崩してでも今はやるべきだと考えていましたし、今も思っています。結果として国から一定程度の支援をいただきましたので、独自の支援策は相当やってきましたが、それほどお金は減っていません。明石市はコロナ前に無駄遣いをなくし財政健全化をしていた経緯もあったので、思い切った政策をしても財政状況には大きな影響は出ていません。

――国のコロナ対策についてはどう見られてきましたか。

泉氏:国もこの1年あまり結構な金額を費やしてきましたが、スピード感がなく、時機を失していることも多かった。国がやっているのは、彼らが海に沈んだあとにゆっくり(支援を)出そうとするようにも見えます。ほとんどニーズに合っていません。同じような額のお金を使っても、必要なときに間に合わせないといけないし、足りないのであれば対象を絞ってでもピンポイントで救わなければならないところを救わないと。それによって経済が持ち直していくわけです。国は満遍なくやろうとしているので、効果が薄く、使った金額に見合う効果が得られたのかは甚だ疑問です。

 当初の海外との関係についてもそうです。感染対策としては、とにかく日本への入り口を閉めることが必要だった。でも初期対応を誤ってしまった部分は正直あると思います。

 政治というのは結果責任を負うもの。私は国の対策は失敗が続いたと考えます。

――国の経済対策としてはGo Toキャンペーンもあります。どのように考えていますか。

泉氏:私は大変批判的に見ています。一時の経済を持ち直すために余計に感染者を増やしているのでは意味がありません。そういう意味では明らかな失策だと思います。国民へのメッセージとして、今が辛抱の時期なのか、街や地方に出て行く時期なのか、二転三転してしまったことも問題でした。

――現在はGo Toトラベル事業は停止しています。再開時期についてはどうお考えですか。

泉氏:再開しないほうがいいです。愚かな政策はする必要がありません。税金の使い方が間違っています。今は本当に困っている人を支援する時期だと思っていますが、Go Toトラベルは高級ホテルに泊まっていた人を超高級ホテルに泊めるだけのようなもの。お金持ちにお金を配る時期ではないと思います。

――4月からは高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種が始まります。自治体の中には接種する医療従事者や会場の確保に苦慮する声もありました。

泉氏:明石市はすでに医師会と連携して個別接種ができる態勢や場所は確保していますし、特に不安に思っていることはありません。国からの情報が錯綜(さくそう)していて、当初のスケジュールから随分押してきているので、正確な情報をいただきたいとは思っています。

――今後の収束への道筋についてはどう考えていますか。

泉氏:ワクチンにはもちろん効果はあるとは思っていますが、とはいえ全てが解決するほど単純なことではないでしょう。コロナとはしばらく付き合っていかなければならないと思っていますし、すでに大きく変わった生活様式も戻らないものも多いと考えています。

 例えば、大人数の忘年会などはなかなか戻らないかもしれない。そうなると飲食関係の業種は業態の変更が引き続き必要だと思います。また、教育現場のオンライン化が進んでいますが、コロナ対策と同時に不登校の子供たちが家にいながら学び続けられるといったように、コロナ対策がある意味でプラスに働いた面もあるでしょう。高齢者向けの生涯学習の場もオンラインで設けましたが、そういった対応は今後もメリットになる部分はあると思います。

――国のコロナ対応に対する不満を述べられましたが、あらためて自らが国政に進出する可能性はありますか。

泉氏:私は明石市長ですから。いろいろありましたが、そういった中で頑張れと言われて市長をさせていただいています。それ以上でも以下でもありません。

――以前、日経ビジネスの記事「明石市長、『燃やせ』発言の真意〔敗軍の将、兵を語る〕」(関連記事参照)でも語っていますが、ご自身の発言を契機に辞職され、再選されてからの市政運営についてお聞かせください。

泉氏:市民からの信頼感は非常に強まったと考えています。市長に対する期待に応えていかなければならない、あらためて市民を向いた政治をしなければならないという思いが固まりましたし、これまで以上に市民に寄り添った政治をやるんだという強い決意、覚悟が生まれました。それがほかの市町がやっていない中での店舗や大学生への支援をはじめとした今回のコロナ対策にもつながったのです。

藤中 潤



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