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(論)アイヌ民族(2021年3月16・17・19日)

差別を乗り越える(2021年3月19日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 「あ、イヌが来た」。北海道江別市の清水裕二さんが小学生の頃、同級生が言った。振り向くと犬はいない。同級生が清水さんをあざ笑った。母は清水さんに「勉強してシャモ(和人=アイヌではない日本人)になれ」と言った

▼成績優秀だった清水さんは教師になった。近年は市民団体「コタンの会」共同代表としてアイヌ民族の権利回復運動に取り組む。ただ幼少時からの被差別体験のせいで、自身の出自を公表するまで長い年月を要した

▼日本テレビの情報番組「スッキリ」でアイヌ民族に焦点を当てたドキュメンタリー番組を紹介した際、出演者が謎掛けを披露し「あ、犬」と発言した。視聴者から批判があり、同社は「アイヌの方たちを傷つける不適切な表現があった」と謝罪した

▼アイヌ民族は政府の同化政策で固有の歴史や文化、言語などを否定されてきた。差別を恐れ、出自を隠して生きるアイヌ民族は今も多い。しかし国内での理解はまだ深まっていないようだ

▼番組で紹介された動画はアイヌ民族の萱野りえさんが米国の先住民族と交流する物語だ。言語や文化を取り戻す活動をする先住民女性は「私のすることは全て先人の夢である」と語る

▼出自と向き合うことに迷いを抱える萱野さんにこの言葉が勇気を与えた。差別を乗り越え固有の歴史、文化を守るすべを模索する状況は沖縄にも通じている。





シマフクロウの目(2021年3月17日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 アイヌ民族の守り神シマフクロウの大きな目は四方八方ににらみをきかし、遠くまで見渡すことができる。ところが、サケはその目玉をあざ笑ってしまう。「そんな姿で神様なんて」。すると、シマフクロウの怒りで海は干上がってしまった

▼アイヌ民族の神謡を元に、宇梶静江さんが古い布に伝統的刺しゅうでよみがえらせた「シマフクロウとサケ」(福音館書店)の一節だ。すべての生きるものにそれぞれの役割があり、敬い合って生きることの尊さを伝えている

▼日本テレビ系列の情報番組でアイヌ民族を侮る発言があった。差別的表現を用いたお笑い芸人は勉強不足を猛省したという。学ぶことで、無知が招いた罪の上にアイヌ民族の歴史を書き足していくことは可能だろう

▼アイヌ施策推進法はアイヌ民族を先住民族と位置づけ、誇りを尊重する基本理念を明記した。昨夏にはアイヌ文化復興の拠点、民族共生象徴空間(ウポポイ)が胆振管内白老町で開業したが、理解が進まない現状が浮き彫りとなった▼文化を発展させるということは、その歴史も直視するということだ。美しい文様は一朝一夕に生まれたものではない。過去から目をそらしては教訓も得られまい

▼見かけだけで決めつけてばかにすることの愚かさがある。宇梶さんはそう指摘する。視野が狭くなってはいないだろうか。今こそ、シマフクロウの知恵を思い起こしたい。





先住民族と表現 歴史への理解深めねば(2021年3月16日配信『北海道新聞』-「社説」)

 過去の歴史への認識と先住民族への配慮を全く欠いていたと言うほかない。

 日本テレビ系列の情報番組で12日、アイヌ民族への差別と受け取れる表現があった。

 15日の番組で改めて謝罪したが、関係者からは怒りの声が上がった。日本テレビは放送の経緯を検証して公表するとともに、再発防止を徹底してほしい。

 アイヌ民族の誇りを尊重し、共生社会の実現を目指し、2019年にアイヌ施策推進法が施行された。だが、今なおヘイトスピーチ(憎悪表現)は後を絶たない。

 先住民族アイヌの歴史や文化への理解を広げていくための対策に一層力を入れなければなるまい。

 問題となった発言はアイヌ民族を描いたドキュメンタリーを紹介した後、お笑い芸人が発した。再掲は避けるが、長年アイヌ民族を傷つけてきた言葉である。

 番組終了後から会員制交流サイト(SNS)などで批判や抗議の声が相次いだ。

 日本テレビは担当者には差別に当たるという認識が不足し、放送前の確認も不十分だったと説明する。そのまま素通りしたことにチェック体制の甘さがみられる。

 お笑いという表現活動は、一歩間違えば人をあざけり、受け手を傷つけることにつながる。それだけに内容によっては細心の注意が欠かせない。

 日本テレビは謝罪したものの、放送が視聴者の心情を著しく害した事実は消えないことを、深刻に受け止めるべきだ。

 われわれメディアとしても、自らの報道や言論を省みる機会としたい。

 国が今月発表した全国世論調査では9割がアイヌ民族を先住民族だと「知っている」と答えた。認識が広がったのはアイヌ施策推進法でアイヌ民族が先住民族と明記されたことなどが理由という。

 昨年7月に開業した胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」も理解を深めたと分析する。

 だが、開業当時からウポポイとそこで働くアイヌ民族の職員に対して、インターネット上などで心ない誹謗(ひぼう)中傷が続いた。

 だからこそウポポイの役割は重要だといえよう。歴史的背景を含めてアイヌ民族への理解を促す取り組みがさらに求められる。

 「民族共生」に向けた一歩は、アイヌ民族に苦難を強いた歴史を直視することから始まると、心に刻みたい。




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