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選択的夫婦別姓訴訟「国の逃げは許さない」 副団長・竹下博將弁護士の「攻めの戦略」(2021年3月20日配信『弁護士ドットコムニュース』)

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第二次夫婦別姓訴訟・弁護団副団長の竹下博將弁護士(2021年1月/弁護士ドットコム撮影/都内)

選択的夫婦別姓の制度導入を求める声は年々、高まっている。その声をリードしてきたのが、「夫婦別姓訴訟」といわれる複数の裁判だ。

選択的夫婦別姓をめぐっては、1996年に法制審議会答申でその導入が提言されたが、25年を経ても実現していない。そのため、制度導入を求める人たちにより、数々の訴訟が提起されてきた。

なかでも大規模なのが、2015年に最高裁まで戦った「第一次夫婦別姓訴訟」と、その流れをくんだ「第二次夫婦別姓訴訟」と呼ばれるものだ。「第二次」は、高裁判決を経て、このあと再び最高裁大法廷で判断されることが決まっている。

その弁護団で副団長として活躍しているのが竹下博將(ひろゆき)弁護士だ。敗訴した「第一次夫婦別姓訴訟」の最高裁大法廷判決も糧に、今回は「攻めの戦略」を展開している。竹下弁護士に聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●第二次夫婦別姓訴訟の「切り札」

これまで、選択的夫婦別姓を求める訴訟はいくつもあった。

近年、最も注目されたのが、2015年12月に最高裁大法廷で判断された「第一次夫婦別姓訴訟」だ。しかし、最高裁は、夫婦同姓を義務付ける民法750条の規定を「合憲」と結論付けた。原告団だけでなく、訴訟を支援してきた大勢の人たちが落胆した。

最高裁判決から3年も経たない2018年5月、新たな原告たちが「第二次夫婦訴訟」を全国3カ所の地裁で提訴した。現在、高裁判決を経て、最高裁に上告している。

同じ原告たちはほぼ同時に、別姓で記入した婚姻届が受理されないのは違憲だとして、家庭裁判所に家事審判を申し立てた。こちらも東京高裁で棄却されたため、最高裁に特別抗告して、今後、大法廷で判断されることが2020年12月に決まった。

これら複数の裁判や審判を支えてきたのが、夫婦別姓訴訟弁護団だ。竹下弁護士は第一次訴訟から参加している。

多くの人々が涙をのんだ第一次夫婦別姓訴訟。今回の第二次夫婦別姓訴訟は、どう違うのだろうか。

「第二次夫婦別姓訴訟では、かなり戦略的に取り組んでいます」

こう話す竹下弁護士。実は、全国の地裁で提訴した訴訟や、都内の家庭裁判所に申し立てた家事審判のほか、弁護団には「切り札」ともいえる訴訟があるという。

映画監督の想田和弘さんと舞踏家・映画プロデューサーの柏木規与子さん夫妻が提訴した「婚姻関係確認訴訟」である。一体、どのような主張をしているのだろうか。

●想田監督たちの「夫婦別姓訴訟」


想田さんと柏木さんは、1997年、ニューヨーク市で、夫婦別姓のまま結婚した。海外で結婚する場合、婚姻届を提出しなくても、現地の法律に基づいておこなわれれば、国内でも婚姻は成立している(法の適用に関する通則法24条2項)。

しかし、国内では、夫婦同姓でないと夫婦の戸籍が作成されないため、二人は「法律婚」した夫婦であるにも関わらず、戸籍上で婚姻関係を公証できない状態にある。そのため、法律上の不利益を被っているとして、国を提訴した。

この裁判は、第二次夫婦別姓訴訟と並行して進められ、今年1月に東京地裁で結審して、4月に判決が言い渡されることになった。弁護団の中で、この裁判の中心的な役割を担っている竹下弁護士はこう説明する。

「この裁判は、想田さんと柏木さんという二人の日本人が、別姓のままでニューヨーク州の法律に従って現地で結婚したことが、日本においても有効な婚姻として認められるのかどうかが、最大の争点です。

婚姻が有効に成立するには、『婚姻の形式的成立要件』(婚姻の方式)と『婚姻の実質的成立要件』(婚姻の意思があり、重婚などの取り消し理由がないこと)を満たす必要があります。

夫婦同姓でなければ国内で結婚できないのは、『婚姻の形式的成立要件』である婚姻届(民法739条1項)において、『夫婦が称する氏』を記載する必要があるからです(戸籍法74条1号)。

しかし、夫婦同姓を強制する国が日本以外にないことは国側も認めていて、海外では、『夫婦が称する氏』を決めなくても結婚できます。その国の方式を満たしていれば、夫婦別姓のまま、日本でも有効な婚姻が成立している、通則法24条2項がそのように定めている、というのが私たちの主張です」

これに対して、国側は二人のケースは「婚姻の実質的成立要件」を満たしていないとして、婚姻そのものが成立していないと反論している。

●民法750条をどう解釈するか?

もう少し説明すると、ポイントになるのは民法750条の解釈だ。 

民法750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とされている。国側は、この条文について「婚姻の効力」だけでなく、「婚姻の要件」も定めていると主張している。

竹下弁護士はこう説明する。

「つまり、そもそも婚姻するとき、夫婦の氏を決めるという合意をすることが、『婚姻の実質的成立要件』である、というのが、国側の反論です。

そこが、最大の対立になっているわけですが、『第一次夫婦別姓訴訟』の最高裁大法廷判決は、民法750条について、『婚姻の効力』であって『婚姻を直接制約するものではない』、つまり、『婚姻の要件』ではないと判断しているのです」

また、日本人と外国人が結婚した場合、かつては、日本人は親の戸籍に入ったまま、その戸籍に外国人と結婚したことを載せることができた。

「別姓のまま結婚した日本人同士の場合も、その方法をとれば良いのでは、と考え、訴訟では、婚姻したことについて戸籍に記載できる地位にあることの確認を求めています。

あわせて、結婚したことの公証手段がないのであれば、法に不備がある以上、結婚を保護しようとする憲法24条および女性差別撤廃条約16条2項に違反していると主張して、国家賠償請求もしています」

●事実婚では超えられない壁を壊す

想田さんたちの裁判は、第二次夫婦別姓訴訟として提訴されたほかの裁判とほぼ同時期の2018年に提訴された。

ところが、ほかの裁判がこの3年で高裁判決を経て、次々と最高裁に上告されているのと対照的に、やっと4月21日に東京地裁で判決を迎える。

法廷では時間をかけた議論がおこなわれてきただけに、判決には注目が集まる。その判断は、ほかの夫婦別姓訴訟への影響があると考えられるからだ。

「その影響は、非常に大きいと思います」と竹下弁護士も話す。

「別姓のまま外国の方式でした結婚が、日本国内でも有効に成立しているという判断を司法の場で求めるなんてことは、想定されていなかったと思います。

ほかの裁判のように、民法750条の違憲性を真正面から訴える『王道』とは異なり、夫婦同氏制と婚姻の成立要件との関係について精緻な検討が求められるテクニカルなアプローチです。

今回の裁判で、別姓のまま海外で法律婚したことが日本でも婚姻として有効に成立しているという判断が示されれば、たとえば、戸籍に夫婦としての記載はなくても、住民票に夫あるいは妻としての記載を求めることができるようになると思います。

これまで、いくら頑張っても事実婚夫婦では乗り越えられなかった壁を壊せるわけです」

●国側の「逃げ」を許さない

この訴訟は、再び最高裁大法廷で判断されることとなった「第二次夫婦別姓訴訟」にもつながるという。

「仮に、今回の裁判で、民法750条について、国側が主張するように『婚姻の実質的成立要件』を定めたものであるという判断が出た場合、別姓のまま海外で結婚することはできないことになりますが、他方、2015年の最高裁の判断が誤っていたことにもなります。

当時、最高裁は『効力に過ぎず、要件ではない』(直接の制約ではなく、事実上の制約にとどまる)と考え、合憲か違憲かの判断基準を緩やかにしたわけです。

だから、『実質的成立要件である』(直接の制約である)との国側の主張が認められれば、それがブーメランとなって、『第二次夫婦別姓訴訟』の最高裁大法廷では、憲法適合性の判断基準が厳格となりますので、国は逃げ切れないのです。

このようなかたちで、『第二次夫婦別姓訴訟』の側面的な支援にもなっていると考えています」

なお、2015年の最高裁判決では、岡部喜代子裁判官(当時)が反対意見として、「夫婦が称する氏を選択しなければならないことは、婚姻成立に不合理な要件を課したものとして婚姻の自由を制約するものである」と述べ、憲法24条に違反すると指摘していた。

「今回は、かなりテクニカルで精緻な議論をし、戦略的に多元的なアプローチをとっているつもりです」と竹下弁護士。4月21日の東京地裁判決に注目と期待が集まる。

【竹下博將弁護士略歴】

第二次夫婦別姓訴訟弁護団副団長。1976年3月、京都府生まれ。1994年3月、洛星高等学校卒業、1998年3月、京都大学工学部工業化学科卒業。2006年10月に弁護士登録、中島・宮本法律事務所入所。主な著書に「養育費・婚姻費用の新算定表マニュアル~具体事例と活用方法~」(日本加除出版・執筆代表者)。養育費算定の文書化サービス( https://kajijiken.com/ )を運営。





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