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「人をなかなか信用しない子」も「過剰になれなれしい子」も…親から虐待された子どもに表れがちな「愛着形成」の異常(2019年8月6日配信『読売新聞』ー「ヨミドクタ」)

本田秀夫「子どものココロ」

 親から虐待を受けた子どもたちには、高い確率でこころの問題が生じます。幼児期から顕著になる場合も多いのですが、学童期から思春期にかけて問題が深刻になる場合もあります。成人して以降も、何らかのこころの問題が持続することは、しばしばあります。

キャプチャ
イラスト:高橋まや

愛着の形成不全には二つのタイプ


 乳幼児期の子どもが親から虐待を受けると、「愛着(アタッチメント)」という心理機能の形成に異常をきたしやすくなります。愛着とは、養育者など特定の人に対する特別な情緒的な結びつきのことです。自分の欲求を満たしてくれ、そばにいるだけで安心感を得られるような、いわば「心の安全基地」のような存在があることによって、子どもは安定した情緒発達をとげることができると考えられています。本来なら安全基地になるはずの親から暴力を受けたり、 罵倒ばとう されたりし続けると、愛着形成はうまくいきません。

 虐待が原因で愛着形成がうまくいかない場合、幼児期以降の対人関係において、大きく二つのタイプの問題が起こり得ます。

 その一つは「反応性アタッチメント障害」です。抑制傾向が強いタイプで、「楽しさや喜びを他者と共有しようとしない」「嫌なことがあっても他者に慰めを求めようとしない」「用心深くて他者をなかなか信用しない」などが特徴です。

 もう一つは「脱抑制型対人交流障害」といい、対人距離が近すぎるタイプです。知らない大人にも警戒せずに近づいたり、過剰になれなれしく言葉をかけたり、ついて行ったりします。情緒的に不安定なタイプです。

 これらの問題があると、同世代の仲間と安定した交流が難しくなるため、集団生活のなかでトラブルが生じやすくなります。

大人になっても困難を引きずり…

 長期にわたって繰り返される虐待は、子どもにとって強い心理的トラウマ体験となります。2018年に公表された国際疾病分類第11版(ICD-11)では、長期にわたり反復的に受けた逆境体験によって引き起こされる「複雑性PTSD」という診断が採用されました。

 愛着の形成がうまくいっていない子どもたちが、複雑性PTSDへと移行していくことは珍しくありません。複雑性PTSDでは、「再体験」(フラッシュバックや悪夢などの形でトラウマ体験が何度も想起される)、「回避」(トラウマ体験の記憶を誘発するような場所、人物、話題を避ける)、「過覚醒」(常に警戒してリラックスできない)、「情動不安定」(感情のコントロールがうまくできない)、「否定的な自己概念」(自分は価値が低い、恥ずべき、罪深いなどと感じる)、「対人関係の異常」(対人関係を維持し、親密な感情を持つことができない)といった症状が見られます。これらの症状は、思春期以降、多くの場合は成人期まで続き、社会生活を困難にします。

親自身が過去に虐待を受けていた例も多く

 虐待は、子どもの発達にも影響を及ぼします。学習機会が十分に保障されないために、知的発達の遅れや学業不振が見られることもあります。また、ADHD(注意欠如・多動症)に似た多動性・衝動性や、自閉スペクトラム症に似た対人関係の異常やこだわり行動が見られることもあります。近年の脳画像研究では、繰り返し虐待を受けた子どもたちの脳に形態学的異常が出現するとの指摘があります。

 愛着形成の異常、複雑性PTSD、発達の異常などは、大人になってからもさまざまなこころの問題を引き起こします。自信の低下、抑うつ、不安、自殺念慮、自傷、アルコール・薬物依存などの背景に、子どもの頃に受けた虐待があるケースは少なくありません。性的虐待を受けた人が性的逸脱行動を示すことや、身体的虐待を受けた人が非行や暴力などの問題を起こすことも珍しくありません。

 子どもを持ったとき、怒りのコントロールができずに自分の子どもを虐待してしまうこともあり、「虐待の世代間連鎖」といわれます。実際、児童虐待の事例では、親自身が子どもの頃に虐待を受けていた場合が多いのです。したがって、虐待への対応では、被害を受ける子どものケアだけでなく、親自身が抱えているこころの問題と向き合うことも欠かせません。(本田秀夫 精神科医)

本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授。同学部付属病院子どものこころ診療部長。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。



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内容紹介

【13刷、53,000部突破のベストセラー! 】
「自閉症スペクトラム」は他人事ではない!

○臨機応変な対人関係が苦手
○自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたい

――あなたの身の回りにそんな人はいませんか?
もしくは、あなた自身、そんな自覚はありませんか?

自閉症とアスペルガー症候群の垣根、さらには障害と非障害の間の垣根をも取り払い、
従来の発達障害の概念を根本から覆す「自閉症スペクトラム」の考え方が、いま注目されています。
「10人に1人」が潜在的に抱える「生きづらさ」の原因を解明するとともに、
早期発見や療育、支援の方法やあり方まで、多角的に解説します。

▼本書の構成

第1章 あなたも「自閉症スペクトラム」かもしれない!?

第2章 特徴から理解する自閉症スペクトラム
1.共通する特徴1:臨機応変な対人関係が苦手
2.共通する特徴2:「こだわり」が強い
3.その他に見られる特徴
4.併存しやすい精神的・神経的な問題
5.発生しやすい二次的な問題

第3章 線引きが難しい自閉症スペクトラムの境界線
1.障害か? それとも個性か?
2.自閉症スペクトラムは、どのくらいいるのか?

第4章 自閉症スペクトラムの人をいかに支えるか
1.特有の発達スタイルに応じた支援
2.思春期より前の支援
3.思春期以降の支援
4.併存する問題や二次的な問題への対応
5.社会参加のための枠組みづくり

第5章 自分が自閉症スペクトラムかもしれないと思ったら・・・・・・

出版社からのコメント
この本は、医師の武勇伝など必要のない、地味で平凡だけれど充実した生活を、少しでも多くの自閉症スペクトラムの人たちと、その家族に保障するためにはどうすればよいか、私が20年間考えてきたことのエッセンスをまとめたものです。
多数例の統計データで、実験的に検証したものばかりではありませんが、最前線の実践家として、これまでに自閉症スペクトラムの人たちを数千人は診療し、数百人は10年以上継続的に診てきた経験から得た知恵を盛り込んでいます。
(中略)
この本に書かれている内容は、高度で細かい知識ではありません。
どちらかというと、ごくシンプルで基本的な考え方をまとめたものです。
でも、基本の繰り返しが重要であることは、領域を問いません。
私たちはつい、細かい情報が増えることにばかり目が行きがちですが、その陰に隠れて、基本がおろそかになりやすいのです。
小手先の知識や技術に惑わされて、二次的な問題を助長しないよう気をつけるとともに、じっくりと基本的な支援論について考えながら、腰を据えて歩んでいくことが大事です。
この本によって、少しでも多くの人たちに自閉症スペクトラムへの関心を持っていただき、理解していただければと思います。
また、この本を読んだ自閉症スペクトラムの人が、社会参加していくためのヒントを少しでも得ることができたとすれば、これに勝る喜びはありません。
本田 秀夫(「おわりに」より)

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Author:gogotamu2019
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