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緊張感無き「宣言解除」リバウンド回避には「脱馴化」が必要(2021年3月20日配信『NEWSポストセブン』)

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第4波襲来の声も聞かれるが…(写真/共同通信社)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、3月21日で解除されることが決定した緊急事態宣言について。

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 首都圏1都3県に発令されていた緊急事態宣言が解除されることとなった。菅義偉首相は3月17日、期限の21日に全面解除する方針を表明、その理由を感染者や病床使用率の数字が解除の方向に入っているためと述べた。だが、その顔色は悪く表情は冴えなかった。

 きっと首相自身が一番そう思いたい、そうなって欲しいと願っているのだろう、ぶら下がり取材の言動を見てそう感じた。「なぜここで」という記者の問い掛けに、「なぜというよりも」とそれが妥当な判断だとして説明した。相手を納得させるというより、証拠を示して分らかせようとしたかった、そんな印象を受けた。

「解除してリバウンドは防ぐことは可能か」と質問されると、「あの~」と一拍間を置いたが、「緊急事態を宣言してから現実的に(感染者数は)8割下がってきている」と語気を強めた。淡々とした表情で、手振りもほとんどないまま終了することが多い菅首相だが、この時は珍しく左手を上げて下がっていることを強調、大きく頷きながら言葉を続けた。

 だが、感染者数は下げ止まるどころかリバウンドをし始めており、17日の東京では新たに409人の感染が確認され、1か月ぶりに400人を上回った。FNNプライムオンランは解除の理由について、「宣言をこれ以上延長しても効果が薄れるだけ」「ここで解除しなければ、いつまでも解除できない」とする政府関係者の話を伝えているが、おそらくこれが政府の本音だろう。

 コロナ疲れに自粛疲れ、緊急事態宣言への慣れ、気の緩み。3月に入り人々の間に流れているのはそんな空気だ。

 宣言が再再延長され、これまでと変わらないコロナ対策が続いても、最初の頃のような緊張感も危機感も、もはやないだろう。マスクをしてはいるものの、桜の開花宣言と春のポカポカ陽気につられ、散歩に出かけては大勢の人たちとすれ違うし、仕事で電車や地下鉄に乗れば乗客は確実に増加しており、どの街も人出は増えつつある。平日のランチ時間帯は店の前に行列ができ始め、昼下がりの喫茶店はおしゃべりを楽しむ人たちで満席だったりする。

 宣言に対する「慣れ」の背景にあるのは、心理学でいうところの「馴化(じゅんか)」だろう。馴化とは、ある刺激が繰り返し与えられるとその刺激に対して興味や注意が失われ、反応が低下すること。弱い刺激や反応したところで何ら報酬がない刺激には、生じやすいとも言われる。

 例えば学校の徒競争で、ピストルの「バン」というスタートの合図に最初は驚くが、何度も聞くと慣れて驚かなくなる。これと同じで刺激に鈍感になってくるのだ。小池都知事が「密です!」と発した当時は、それが刺激となってソーシャルディスタンスに気を付けていたが、今では“密”という言葉を聞いてもスルーする人が大半だろう。

 馴化が生じ、緊急事態が“緊急”でなくなった感がある今、人々は周りの人たち行動によって、自分たちなりの判断基準を作りつつある。人々の注意や関心を引くためには、早々に別の刺激に反応する「脱馴化」を生じさせることが必要だろう。

「解除の方向に向かっている」と菅首相は言うが、感染者は微増し、変異型ウイルスの急拡大のリスクも報じられている。リバウンドを避けるため、政府はコロナ対策をどう強化するのか。別の“刺激”により感染が下火になればと願うが、菅首相の暗い表情を見ていると、先行きの不安は拭えない。




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Author:gogotamu2019
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