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【思ふことあり】スポーツジャーナリスト・増田明美 的外れな告げ口に対抗を(2021年3月23日配信『産経新聞』)

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記者会見する東京五輪・パラリンピック組織委の橋本聖子会長。開閉会式の企画、演出の統括役でクリエーティブディレクターの佐々木宏氏の辞任を発表した=18日午後、東京都中央区(代表撮影)

 間もなく聖火リレーが始まろうとしている。そんな中、東京五輪・パラリンピックの開閉会式で、企画・演出の統括役を務めるクリエーティブディレクターの佐々木宏さんが辞任した。違和感と怒りを感じる。

 問題は約1年前、演出チーム内でさまざまな企画を出し合う段階で出た一つのアイデア。それが女性タレントの容姿を侮辱したとされている。しかし、佐々木さんはその場でメンバーに注意され、謝罪し、撤回。指摘されたメンバーにお礼まで述べている。素晴らしいチームで準備を進めていたことが分かるのだ。

 アイデアを出し合った内輪のやり取りを1年たった今、告げ口した人のなんと卑怯(ひきょう)なことか。加えて、「女性の容姿を侮辱」などと、事実を歪曲(わいきょく)させてセンセーショナルな見出しで伝えるメディアも情けない。

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 チームで新たなコト、モノを創り上げる作業をしたことがある人なら分かると思う。質より量を重視して、集団でアイデアを出し合う方法としてブレーンストーミングやアイデアフラッシュなどいくつかの手法があるが、ポイントは自由闊達(かったつ)な意見を出し合うこと。

 間違った言葉や役に立たないこともどんどん出していい。私なんか、この段階でのことを告げ口されたら命がいくつあっても足りないと思う。とにかく皆でアイデアを出して、ダメなものはチーム内で議論しながら削除していく。

 今回の佐々木さんのアイデアは、チーム内で「没」にされたものだ。ビジネスの世界の手法で、没にしたアイデアの責任を取らなければいけないなら、創造力を捨てろと言っているようなものである。

 侮辱された(と第三者が言っている)渡辺直美さんは以前、子供向けのバラエティー番組内で、ダンス&ボーカルデュオ「ピッグ☆レディ」を結成している。骨付き肉を思わせるハンドマイクを持ち、かわいらしいブタの鼻を着けた「ぽっちゃりデュオ」だった。

 名前は1970年代に絶大な人気を誇った「ピンク・レディー」をもじったのだろう。「太っていることは決して悪くない」と、“ぽっちゃり女子”にエールを送る歌をうたっていた。それは面白くて勇気をもらえる内容だった。

 エンターテインメントの世界で活躍する渡辺さん本人が寄せたコメントの全文を読むと、侮辱されたとは思っていないのも分かる。

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 告げ口には、正義感で行う場合と、個人的な恨みで他人を陥れようとするものの2種類があると思う。後者は最悪だ。会社、PTA、趣味のサークルなど、どの世界においても告げ口をする人のことを尊敬できないと思う。人の悪口を第三者にコソコソ話すことは、最も嫌われる行為の一つだ。

 今回、世界に恥をさらしてしまったのは、的外れな告げ口を大々的に取り上げた日本のメディアではないだろうか。そして、理不尽な批判に組織委員会はピシっと正論で対抗してほしかった。

 過去の歴史から見て、告げ口によって事態が好転したことはないだろう。韓国歴史ドラマをよく見ているが、王宮での権力争いは告げ口が主役だ。「王様、彼は謀反を企てております」。で、名君になるべき若者が失脚する。

 ドラマでない日本の社会で、“告げ口文化”が社会を萎縮させているのが怖くて、悲しい。




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Author:gogotamu2019
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