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東京五輪は“恥さらし”? 上野千鶴子「『古い男たちの五輪』はもういらない」(2021年3月24日配信『AERA.com』)

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上野千鶴子氏

 本当に開催できるのか……不安が拭えない中、東京五輪が近づいてきた。3月25日には澤穂希さんら「なでしこジャパン」メンバーを第1走者に聖火リレーが始まる。が、ここに来てまたも五輪精神に反する不祥事が発覚。このままでは日本の“恥部”を世界にさらす大会になりかねない。
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 3月21日で首都圏1都3県の緊急事態宣言を解除した菅義偉首相。「第4波」の気配が迫る中での決断は、25日から始まる聖火リレーを意識したためとも指摘される。ある政府関係者がこう語る。

「4月の訪米に備えワクチンを打った菅首相は、バイデン大統領と直談判して五輪開催のお墨付きをもらうことで頭がいっぱいです。五輪を開催して大会期間中に感染者が一定程度、拡大することは想定内ということでしょう。多少、クラスターが発生しようと、大会を開きさえすれば、その高揚感で国民の支持を得られると計算している。人類はコロナ禍でも大会を成し遂げたと宣伝できますから」

 支持率回復のための五輪だとすれば、「平和の祭典」「復興五輪」などの言葉がむなしく響く。実際、そうした疑念を抱かれかねないほど、関係者のモラルが問われる不祥事が相次いでいる。

 3月17日には、東京五輪・パラリンピックの開閉会式の演出責任者を務めるクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が、演出チーム内のLINEでタレントの渡辺直美さんに豚の扮装をさせるなど、侮辱するような提案をしていたことが文春オンラインの報道で発覚。佐々木氏は辞任した。佐々木氏は広告大手の電通出身。東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏は呆れた様子でこう語る。

「小学生のいじめ並みの幼稚で粗野な容姿いじりですね。2017年には壇蜜さんを起用した宮城県の観光PR動画が性的な表現で炎上するなど、広告業界は男社会による旧態依然とした女性蔑視の価値観を許してきた。こうしたことが起きる素地は元からあったと言えます」

 佐々木氏は数々の有名CMを手がけたヒットメーカー。博報堂出身の作家・本間龍氏が語る。

「業界では“天皇”と呼ばれるくらい有名。クリエーターというより、部下や外部から上がってきたアイデアの中から良いものをピックアップし進めていくのが得意だった。しかし、今回の一件で、考え方が古く、世界的なジェンダー平等の潮流に取り残されていたことが露呈してしまいました」

 佐々木氏の出身母体である電通は、五輪組織委にも多くの人材を送り込み、五輪に大きな影響力を及ぼしてきた。

「組織委は東京都、政府、地方自治体やスポンサーなどからの出向者の寄せ集め。大半の人は五輪のような巨大イベントのノウハウなどないので、電通に頼らざるを得ない。こうしたことから、電通出身の佐々木氏が起用されたのでしょう」(本間氏)

 森喜朗・五輪組織委前会長の女性蔑視発言で注目されたジェンダー意識の低さも再び問われている。佐々木氏が主導権を奪って以降の演出チームはスタッフが男性ばかりだと指摘されたのだ。佐々木氏も報道後に公表した謝罪文で<スタッフに男性が多いというご指摘はその通り>と認めた。

 森氏の辞任後、五輪組織委の新会長には女性の橋本聖子氏が就任。女性理事を12人増員させるなど組織委も「汚名返上」を試みているが、染みついた体質は相当根深い。前出の上野氏が語る。

「橋本氏の会長起用は『困った時の女頼み』で五輪の強行開催か中止かの困難な舵取りを押し付けられただけ。女性理事を増やしたといっても、ほとんどの事柄が決定済みの最終段階からの参加に意味があるのか。上層部にいる古い体質の男性たちの頭はまったく切り替わっていません」

 不祥事のたび国民の気持ちは五輪から離れていく。それでも日本が五輪開催に固執する背景には、巨大商業イベントと化した五輪の利権がある。五輪は1984年のロサンゼルス大会から1業種1社のスポンサー制度を取り入れていたが、東京五輪ではその原則を取り払った。これにより、スポンサー数は2012年のロンドン五輪、16年のリオ五輪と比べても膨れ上がり、68社もの国内スポンサーをつけた。

「1業種1社だとスポンサー企業が増えないから、集められるカネに限界がある。だから、スポンサー数は制限なしとした。主導したのは電通です。電通はスポンサー企業と組織委の間でマージンを抜いていますから。その結果、組織委は公表しているだけでも3千億円以上のスポンサー料をかき集めました」(本間氏)

 巨額の資金を集めてしまった以上、後戻りはできない。また、大会経費はすでに約1兆6千億円にまで膨張。五輪による景気浮揚を見越してこれだけのお金を突っ込んでしまった東京都と政府も、もはや「中止」とは言えないというわけだ。

 だが、目先の利益を追いかけて、より多くを失うことにならないのか。前出の上野氏はこう語る。

「私は当初から開催に反対です。『高度経済成長時代の輝きをもう一度』と、五輪熱で景気浮揚を狙うなんて、発想が古すぎます。開催が至上命題とされているようですが、コロナ対策が不十分なまま東京五輪で変異株への感染が拡大したら、日本は国際政治レベルで窮地に立たされますよ」

 本間氏もこう指摘する。

「外国人観光客を入れないことになり、五輪関連のインバウンド需要も見込めない。海外から選手や関係者が1万人以上やってきて、テロ対策や感染対策など、準備の費用もかさむ。五輪を開催したほうが日本は損をするのではないか」

“古い体質の男たち”がのさばる現状を変えないと、世界に恥をさらす結果になりかねない。(本誌・永井貴子、上田耕司)

※週刊朝日  2021年4月2日号




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