FC2ブログ

記事一覧

生活保護申請「門前払い」の一部始終を20代女性が録音 頻発する「水際作戦」の実態とは(2021年3月26日配信『AERA.com』)

キャプチャ

「水際作戦」で追い返された女性(20代)が、相談員とやりとりをした会話の録音を文字にした資料。相談員が虚偽の説明を繰り返していた(撮影/写真部・高橋奈緒)© AERA dot. 提供 「水際作戦」で追い返された女性(20代)が、相談員とやりとりをした会話の録音を文字にした資料。相談員が虚偽の説明を繰り返していた(撮影/写真部・高橋奈緒)

 生活保護の申請に来た人を、窓口の職員が虚偽の説明を並べて追い返してしまう。専門家らが「水際作戦」と呼ぶ信じがたい実態を、ある女性が録音していた。AERA 2021年3月29日号から。

*  *  *

 生活保護の申請に来た人を、ウソの説明で門前払いにする。各地の行政窓口で、そんな事例が頻発している。コロナ禍で申請が増え、経験の少ない職員らの負担が増していることも一因だが、日本弁護士連合会などはそんなやり口を「水際作戦」と呼んで問題視してきた。
 
■「申請の意思なし」記録

 2月下旬、20代の女性は、横浜市神奈川区の生活支援課を訪れた。住まいがなくネットカフェや公園を転々としていた女性は、自作した申請書一式を持って生活保護の申請に来たのだった。女性は念のため、相談員とのやりとりをスマートフォンに録音していた。そこには、虚偽の説明を繰り返す相談員の会話が記録されていた。

 仕事も住所もないと話す女性に相談員が言う。

「おうちのない状態だと、ホームレスの方の施設があって、そちらに入ってもらう」

 生活保護法では本人の意思に反して施設に入所させることを禁じている。だが相談員の説明は、施設入所が生活保護の前提であるかのようなものだった。

 ほかにもこの相談員は、簡易宿泊所等に住民票を設定しないと生活保護の申請ができないと説明するなど虚偽説明を繰り返した。女性は申請を断念。相談員は、記録票に「女性に申請の意思なし」と記したという。

 女性を支援する「つくろい東京ファンド」代表の稲葉剛さん(52)は、神奈川区の対応を厳しく批判する。

「厚生労働省は各福祉事務所に対し再三再四、『保護の開始の申請等の意思が示された者に対しては、その申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきである』と通知しています。今回の対応は、生活保護の申請権を侵害する悪質な水際作戦に他なりません」

 生活支援課は女性に対し全面的に過ちを認めて謝罪したが、担当課長は取材に「原因は検証中。現時点では何がというお答えはできない」と述べた。

 女性は同課の対応について「謝ってはくれたみたいだけど、前置きの理由や言い訳がすごく多いと感じた」と話している。

■人員減で「素人」ばかり

 前出の稲葉さんは、神奈川区だけの問題ではないと指摘する。

「コロナ禍で生活保護の申請が増えると、それに比例し首都圏各地の自治体で『水際作戦』で申請者を追い返そうという動きが強まります」

 背景には何があるのか。

 都内の自治体で生活保護を15年以上担当していた、生活保護問題対策全国会議事務局次長の田川英信さん(66)は、福祉事務所が機能しなくなっていることが大きいと指摘する。

「自治体の職員は国の方針でどんどん減らされました。しかも、新人や若手が多く配置され、いわば『素人』ばかりの福祉事務所も少なくありません。研修や勉強をする余裕がなく、よくわかっていない先輩が後輩を指導するので、誤った認識や対応が受け継がれているのではないでしょうか」

 申請を断られた人は、所持金がなければ野宿するしかない。朝晩まだ冷え込むこの時期の野宿は、命の危険にもかかわる。

 同ファンドの小林美穂子さんは、「水際作戦」がどのような意味を持つか、自治体はもっと考えてほしいと訴える。

「生活保護は最後の砦です。福祉事務所に行けば何とかしてくれると思って行くわけです。そこで追い返すということは、『福祉は助けてくれないんだ』という誤ったメッセージが伝わってしまいます。さらに、特に若い女性が追い返されて路上にいると、身の危険にさらされることも考えられます。それが想像できないのでしょうか」

(編集部・野村昌二)

※AERA 2021年3月29日号




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ