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(論)後半国会・予算成立(2021年3月27・30日)

国会折り返し(2021年3月30日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆論戦から逃げない態度示せ◆

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令下で始まった国会が一つのヤマ場を越えた。過去最大の2021年度予算が成立したが、コロナ対応、利害関係者による総務省幹部への接待で生じた行政不信、昨年の国会から続く日本学術会議会員の任命拒否、桜を見る会をはじめとする政治とカネの問題などについて、議論を尽くしたとはとても言えまい。

 国会の大きな役割の一つは、行政府をチェックすることだ。しかし、前政権時代に首相官邸への権力の一極集中が強まった結果、国会の権威は失墜し、機能が形骸化した。与党も野党も自問自答し、行政監視の原点に戻る必要がある。

 この国会では菅義偉首相の長男が勤める東北新社や、NTTが総務省幹部らに接待攻勢をかけていた実態が発覚。放送・通信行政の公平、公正性に疑義が膨らんだ。

 にもかかわらず、当の官僚たちは「記憶にない」を繰り返し、新たな「証拠」を突きつけられると一転して認めた。武田良太総務相が官僚に明確に答弁しないよう促した疑いも表面化した。記録の改ざんや廃棄といった、ここ数年の行政府の国会軽視、「虚偽答弁」がまかり通る総モラルハザード(倫理観の欠如)現象が一段と進んだ。

 前半国会の最大の論点は目の前のコロナ対応だった。ここまで1年余りの感染症対策の経験を通じた最大の教訓は、打つ手が遅れれば事態は深刻化、長期化することではなかったか。

 観光、飲食業支援の「Go To」事業にこだわり、コロナの特別措置法改正は今年2月にずれ込んだ。緊急事態宣言を解除したならば、再拡大の波を極力抑え第4波を阻止するためにも、第3波への対応を謙虚に検証しなければならない。

 国会論戦によって情報公開を徹底し、国民とリスクコミュニケーションを図り、野党の主張にも耳を傾ける。政府、与党にはそうした論戦から逃げない度量が求められている。

 成立した予算は、一般会計総額106兆6097億円。コロナ対応に追われる地方自治体や医療機関、高齢者施設に対する支援は待ったなしだ。その上で、緊急性の低い事業などを先送りしていく予算の順位付けが、財政の持続可能性を考える上では重要になる。

 今年は政権選択の衆院選が行われる。首相の登場が少なくなりがちな後半国会だけに、有権者に判断の物差しを示すためにも、時間の延長など運用を改善し、2年近く見送られている党首討論を定期的に開催すべきだ。国権の最高機関が危機にひんしていることを自覚してもらいたい。





国会折り返し 「政府の劣化」が目に余る(2021年3月28日配信『西日本新聞』-「社説」)

 国会の運びは日程上順調に見えても、菅義偉首相の国政運営は随所で不調を来し、国民の政治不信はむしろ増幅している。首相はこの「落差」を直視して後半国会に臨むべきだ。

 総額106兆円余の2021年度政府予算が一昨日、国会で成立した。新型コロナウイルス禍が続く中、過去最大規模となる予算の早期成立にこぎ着けたことで、菅政権はひとまず前半国会を乗り切った格好だ。

 ただ釈然としない国民も少なくなかろう。前半国会では、コロナの感染防止対策やワクチンの供給・接種体制の遅滞がクローズアップされた。総務省官僚らの接待問題などの不祥事も次々に発覚し、根深い政官業の癒着構図があぶり出された。

 予算審議の終盤では、政府が今国会に提出した法案・条約案24本の条文や参考資料に誤りがあったことが判明した。前代未聞の驚くべき失態だ。政府は原因究明と再発防止のプロジェクトチームを立ち上げるという。これも「政府の劣化」をうかがわせる深刻な事態である。

 野党はこうした問題を厳しく追及しつつ、コロナ対策の重要性を踏まえ、審議を先延ばしする戦術は避けた。その結果、新年度予算自体はすんなりと成立したわけだ。菅政権はこの流れを良しとしてはなるまい。

 共同通信の直近の世論調査では、政府のコロナ対策を「評価しない」が5割を超え、首相の長男が関与した総務省の接待問題で「首相の説明は不十分」という声が7割余に達した。

 コロナ感染は緊急事態宣言の全面解除からほどなく東京や大阪、宮城など各地で再拡大の様相を見せている。変異ウイルスの急速な広がりも気掛かりだ。政府は国民の安心と協力が得られるよう早急に全般的な対策の点検と見直しを図るべきだ。

 接待問題も第三者による検証委員会の設置で決着したわけではない。閣僚も含めて利害関係者との会食の有無を調べ、途中経過も国民に公表すべきだ。調査対象者が多いことを理由に、検証作業の「時間稼ぎ」を図るような姿勢は許されない。

 菅首相は来月、米国を訪問しバイデン大統領との首脳会談に臨む一方、後半国会では目玉施策のデジタル庁設置関連法案の早期成立を目指す。自民党内ではこれらが衆院解散・総選挙への下地になるとの見方もある。

 しかし、コロナ禍の収束が見通せない中、解散の大義も見当たらないのが実情だろう。国会の折り返し点に当たり、首相に求められるのは「国民のために働く内閣」として襟を正し、国政を立て直すことだ。政治への信頼回復に向けて、あくまで謙虚な姿勢を強く求めたい。





通常国会後半へ 不信と不安募る法案ミス(2021年3月27日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新年度予算が成立し、通常国会は後半に入る。

 菅義偉首相の看板政策であるデジタル庁の設置を柱とするデジタル改革関連法案をはじめ、個別の政策が与野党で審議される。

 ところが、議論する前から前代未聞の事態が起きている。

 政府が提出した法案、条約の条文や関連資料に誤りが続出していることだ。

 新型コロナウイルスへの政府の対応は、依然として後手に回っている。そんな中での失態は、国民の不安や不信をさらに増幅させる可能性がある。

 政府の説明によれば、誤りは13府省庁が担当する計23法案1条約に及ぶ。

 例えば、デジタル改革関連法案では、関連資料に誤字や数字の間違いなど45カ所ものミスが発覚し、誤記を修正するために提出した正誤表にも誤りがあった。

 このため「正誤表の正誤表」を新たに提出する異例の対応に追われた。

 ほかにも産業競争力強化法改正案や防衛省設置法等改正案、銀行法改正案などで誤りがあった。

 なぜ、こんな単純なミスが続出したのか。

 各府省庁がコロナ対策に追われているため人員が足りないのか。自宅で仕事をするテレワークが増えたからか。

 あるいは菅首相が実績を作るために提出を急がせたためなのか。そもそも官僚の士気が低下しているのか。どの理由であれ深刻だ。

 政府はミスの原因を早急に究明する必要がある。

 総務省幹部らが関係業者から高額接待を受けた問題も決着していない。接待により行政がゆがめられることはなかったのか。解明に向けた政府の姿勢は後ろ向きだ。

 日本学術会議の会員候補のうち6人を任命しなかった問題も忘れてはならない。

 政府と自民党は、組織のあり方を改革する点ばかりに力を注いでいるが、なぜ菅首相は6人の任命を拒んだのか、疑問の核心に依然として答えていない。

 コロナ対策で不可欠なのは政府に対する国民の信頼だ。菅首相は態勢を立て直すと同時に、あらゆる問題に対して誠実に説明することだ。信頼回復はそこからだ。



新年度予算成立 感染抑止の論戦が足りない(2021年3月27日配信『読売新聞』-「社説」)

 危機を乗り越えるための対策について、与野党が十分に論じているとは言い難い。駆け引きに終始せず、建設的な論戦を心がけるべきだ。

 一般会計総額で過去最大の106兆円を超える2021年度予算が成立した。政府は、予算に盛り込まれた施策を着実に実施しなければならない。

 新型コロナウイルス対策では、保健所の体制を強化することが柱だ。保健師の確保に向けて、採用に関する自治体の費用を支援するほか、保健師の人材バンクを全都道府県に設置するという。

 感染者の入院先の調整や、PCR検査の手配など保健所の業務は多岐にわたっている。公衆衛生に携わる人材を増やし、現場の負担を軽減する意義は大きい。

 感染が拡大した地域に保健師を弾力的に融通できるよう、人材バンクを有効に活用してほしい。

 緊急事態宣言前に編成された予算では、病床逼迫ひっぱくへの対応や事業者支援が的確に想定されていない。必要に応じ、5兆円の予備費を迅速に執行してもらいたい。

 宣言は全面解除されたが、感染者が急増している地域もある。

 今国会では、緊急事態に準じた対策を知事が講じられる「まん延防止等重点措置」が新設された。感染状況を見極め、メリハリのある対策を講じることが重要だ。

 政府の感染症対応は後手に回ってきた。菅首相は、新たな措置の適用を躊ちゅう躇ちょしてはならない。専門家や自治体の意見を踏まえつつ、主体的に判断する必要がある。

 国会審議で、野党は総務省の接待問題に焦点を当てている。

 立法府が行政の監視機能を果たすことは大切だが、閣僚や官僚に、誰と食事をしたのかを延々と質ただしているようでは、生産的ではない。問題の所在について、野党自ら調査を尽くすことが不可欠だ。

 政府の姿勢も、誠実さを欠いている。武田総務相は「国民の疑念を招くような会食には応じていない」と繰り返し述べている。答弁に向かう省幹部に「記憶がないと言え」と指図していた。

 衆参両院で多数を占めているから、雑な対応でも押し切れるという驕おごりが、自民党にありはしないか。そんな心構えで次期衆院選を乗り切るつもりなのだろうか。

 政府提出法案や関連資料に、誤字などのミスが相次いで見つかっている。異常な事態だ。



21年度予算成立 財政健全化の視点どこに(2021年3月27日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 2021年度の予算がきのう、成立した。

 一般会計総額は9年連続して過去最大となり、106兆円を超えている。

 新型コロナウイルス対策費が膨らんだだけではない。

 税収が10%近く落ち込む見通しの中、防衛費は9年連続して増加した。公共事業費は6兆円余で11%減ってはいる。一方で1月に成立した20年度の3次補正予算に、国土強靱(きょうじん)化の経費として約2兆円を前倒して計上しており、事実上は増額だ。

 コロナ対策に必要な経費を盛り込むのは当然だ。ただし、膨張する予算に、必要性が十分に検証されていない項目を紛れ込ませている疑念は拭えない。補正予算も含め、国会は審議を尽くしたのか。

 コロナ対策の予備費は5兆円を盛り込んだ。防衛費とほぼ同額である。緊急時に備えて使い道を決めずに計上し、政府判断で支出できる。国会の事前チェックを原則とする財政民主主義に基づく予算のあり方として疑問が残る。

 20年度は補正予算で計11兆5千億円積んだ予備費をほぼ使い切った。支出は適切だったのか、国会で検証する必要がある。予備費の巨額計上が恒常化することは避けねばならない。

 財政は既に「火の車」だ。20年度の一般会計総額は、度重なる補正で175兆円超と空前の規模になった。新規国債の発行額は112兆円に達した。国の長期債務残高は20年度末に1010兆円と1千兆円を突破する見込みだ。

 21年度予算も新規国債発行額は43兆円超を計上し、当初予算で11年ぶりに増える。感染の状況次第で、さらに膨らむ可能性がある。

 22年には団塊の世代が後期高齢者になり始め、医療費の増加が見込まれる。歳出・歳入の改革に取り組み、財政の持続性を確保することが欠かせない。

 緊急時とはいえ、国会の審議は財政健全化の視点をあまりに欠いていないか。秋までに実施される衆院選を意識し、与野党がさらなる巨額支出を求める懸念もある。

 30兆円超の東日本大震災の復興予算は、一般会計と区別して特別会計で管理し、所得税を25年間にわたり2・1%分上乗せするなどして財源を賄った。

 コロナ対策費も必要な支出をする一方で、国民負担の議論が欠かせない。英国はコロナ対策で膨らんだ借金の返済のため、法人税を約50年ぶりに引き上げることを決めている。国債に頼って支出を膨張させていては、将来世代への責任を果たせない。






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