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志願者数初の10万人超え「日本のMIT」千葉工業大学のスゴみを徹底解説(2021年3月27日配信『日刊ゲンダイDIGITAL』)

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 今年の大学入試で、志願者数上位校で唯一、昨年比増だったのが、千葉工業大学だ。志願者数は初の10万人超え、前年6位から近畿大学に次ぐ2位に躍進した。知名度は低いが、企業のブランドイメージは高いという。一体、どんな大学なのか――。

  ◇  ◇  ◇

 日本のMIT(マサチューセッツ工科大学)は、千葉県習志野市の「津田沼駅」と「新習志野駅」に本キャンパスがある。東京駅から電車で30分ほどの理工系の単科大学で、工学部の偏差値は47.5(機械工学科=河合塾調べ)。

 1942年に興亜工業大学として設立し、46年から千葉工業大学に改称された。私大理工系大では最古というが、一般的な知名度も低い。お世辞にも全国から学生が集まるとは思えないが、今では早稲田大、明治大に志願者数で勝る人気を誇っている。

「入試改革に熱心な印象があります。受験料は1学科3万円ですが、4万5000円出せば全学科併願できます。また『大学入学共通テスト利用入学試験(旧センター試験)』(通常1万5000円)に限っては、今年度はコロナ禍の受験生の進学支援策として一律無料にしました。こうした時代に合わせた対応が素早く、受験生や親に支持されているのでしょう」(大学通信ゼネラルマネジャーの安田賢治氏)

 単に受験しやすいだけではない。大学改革でいえば、志願者が急増した2016年に工学部の再編を実施。工学部、創造工学部、先進工学部の3学部に改組し、学科も細かく設置した。

 これまで、学科によって300人以上の学生が在籍していたが、社会の求める研究領域のニーズがより細分化されたこともあって、個々の学生に高い専門性を身に付けられるよう、コンパクトに絞った。

 そもそも理工系あるあるだが、同大は留年率とそれに伴う中退率が高かった。それが細かな教育をすることで教員とのコミュニケーションを取りやすくなり、学生の理解が深まるまで教えられる環境につながった。

「結果的に留年・退学の減少、就職での実績向上に結び付き、退学・留年率とも全国の理工系大学の平均以下になりました。この取り組みは高校教諭から高評価でした」(同大入試広報部担当者)

 12年の中退率は全大学平均2.65%に対して5.5%と2倍あったが、20年には2.4%に下がっている。

学長は惑星探査研究の第一人者


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松井孝典氏

 こうした入試改革が受験者数につながった面はあるが、やはり全国から集まるのは「宇宙」と「ロボット」の最新研究を学べる環境にあるからだ。

 まず「宇宙」の分野に力を入れたのは09年。現・学長の松井孝典氏が東大を退官後、千葉工業大に入職し、惑星探査研究センターを創設した。松井氏は、東大卒の地球・惑星物理学者として著名な研究者で、現在もセンター所長を兼任している。センターはJAXA出身者や全国の宇宙研究の教授らを引き抜き、彼らはJAXA、NASA(米国)やESA(欧州)など世界の宇宙機関が推進する惑星・小天体探査ミッションに参加している。学生は最先端技術を間近で見られ、研究に携われるのだ。

「はやぶさ2」のほぼ全ての搭載観測機器の開発と検討に関わったり、また千葉県御宿町にロケット実験場を設置し、高度100キロメートルの宇宙に到達する小型観測ロケットを開発、宇宙由来の微粒子採取を試みている。19年には地上ではなく、洋上ロケット発射実験にも成功した。

 12年に設置した「東京スカイツリータウン(R)」キャンパスでは、こうした研究活動で生まれた先端技術を応用した体感型アトラクションゾーンを一般公開している。入場無料で、iPadを使って、超巨大画面でロボットの解剖・設計図の操作を体験したり、120インチタッチパネルで、太陽系のバーチャルツアーを楽しめるプログラムもある。さらに14年に、大人気漫画「宇宙兄弟」とコラボレーションをスタートさせ、大学公式HPにキャラクターのイラストや名言などを交えた学部案内ページやパンフレットを作成。話題になってメディアでの紹介も増え、理工系志望の高校生からの認知度も高まった。 

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パナソニックや三菱重工とロボットの共同開発(千葉工業大学提供)

 もう一方の「ロボット」については、同大は03年に「未来ロボット技術研究センター」を設立した。そして、大学としては世界初の「非接触型手のひら静脈認証技術」および「多機能ICカード」を大学内の各施設に導入し、学生のころから最先端の技術に触れられる環境を整備した。センターには、科学技術振興機構(北野共生システムプロジェクト)で、ロボット研究チームのリーダーを務め、20社以上の企業と連携してロボットの部品を開発していた工学博士の古田貴之氏らのチームを引き抜いた。

 06年に工学部に未来ロボティクス学科を新設し、大学直轄の研究組織であるセンターと連携し、学生は研究者たちから学べる環境になった。

「さらに全国の高校などから依頼を受けて学生向けにロボット解体し、特徴を学ばせるショーを行っていました。他校にはない取り組みで、進学校の教員からの知名度は高まりました」(前出の安田賢治氏)

 企業や自治体との共同研究にも積極的だ。富士ソフト(自動走行計測ロボットの開発)、大成建設(自律型鉄筋結束ロボット)――。そして東日本大震災後に福島第1原子力発電所へ最初に投入された国産ロボット「クインス」(東北大学と共同開発)の経験を生かして開発した「櫻弐號」は原発などの過酷な環境下で除染などの作業に耐えられる構造で、ガレキ撤去やサンプル収集などの軽作業も可能。三菱重工は、同大から技術情報のライセンシングを受けて生産販売をする予定だという。

 同大は、注目されそうな分野や研究内容を見極めて、直轄の研究所を立ち上げてきた。

「その際、著名な研究者1人とその研究グループごとお声がけしています。チーム(組織)ができているので、成果を早く示すことができます。学生はいろいろな先端研究を間近に見ることができるメリットがあります」(前出の担当者)

 最近ではパナソニックと産学連携センターをつくった。学生は実践的な開発に参加している。ほか、「人工知能・ソフトウェア技術研究センター」「国際金融研究センター」「次世代海洋資源研究センター」と多岐にわたる直轄の研究機関を立ち上げ、最新では19年に考古学の研究をする「地球学研究センター」を設立し、古代エジプトのツタンカーメン墓所副葬品である鉄剣の解析などを行っている。各分野の専門家グループを引き抜いて、学生に実践研究の機会を与える。教授や企業とのツテもつくりやすいため、就職活動にも生きているのだろう。

 出身者には、東京メトロ社長の山村明義氏、キヤノン名誉会長の賀来龍三郎氏(故人)、元東洋ゴム取締役会長の駒口克己氏、任天堂でファミコンの開発責任者を務めた立命館大教授の上村雅之氏もいる。

 理工系の技術開発者を輩出していることもあり、卒業生の就職先には、日産自動車、旭化成、資生堂、日清食品、テレビ東京、日立製作所、富士通など有名企業の名前が並ぶ。首都圏の理工系単科大である東京理科大、東京工業大にも引けを取らない就職先は、かなりお買い得。日本のMITと呼ばれるのもダテではない。 




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