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高齢者の「身元保証」代行業でトラブル増加 監督省庁なく実態不透明(2021年3月27日配信『AERA.com』)

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身元保証など高齢者サポートをめぐる契約トラブルの事例 (週刊朝日2021年4月2日号より)

 身寄りのない高齢者らを対象に身元保証代行業が広がってきた。病院・高齢者施設に入る際、身元保証人が通例求められるからだ。だが、それを条件に拒否してはいけないという国の方針のため、事業者の監督官庁はなく実態は不透明。裁判で公序良俗違反とされた事例も。どうすればいいのか。

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【他にもこんなトラブルが… 契約トラブルの事例はこちら】

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 身寄りのない高齢者と身元保証を請け負う事業者をめぐり、1月下旬に下された司法判断が注目されている。80代女性がNPO法人と結んだ「死亡時に不動産を除く全財産を贈与する」との死因贈与契約について、名古屋地方裁判所岡崎支部(近田正晴裁判官)が「公序良俗に違反し無効」とする判決を出したのだ。

 判決によると、愛知県安城市の養護老人ホームに入所していた女性は2017年、市職員が施設長だったホームの斡旋(あっせん)で、同法人と身元保証や死因贈与の契約を結んだ。翌年、女性は死亡。同法人代表は女性の預金約620万円の支払いを金融機関に求めたが拒否され、訴訟を起こした。

 死後の事務処理費用は約50万円。近田裁判官は「(約620万円は)暴利であると言わざるを得ない」と指摘した。また、身元保証人を入所条件にしてはいけないという国の通達にかかわらず、同法人が入所者の半数以上と身元保証契約を締結、女性のほか5人と死因贈与契約を結んでいたことも批判。市とホームを運営する社会福祉協議会、同法人の3者に癒着構造があったと認め、請求を棄却した。

 原告の同法人代表は判決を不服とし、控訴した。こう話す。

「事実に反するひどい判決と受けとっています。事実無根のことで、名誉が毀損(きそん)されました。癒着の事実はありません」

 市の担当者も、「癒着構造はありません」「民間同士の契約で、市は関与していません」などと述べた。

 身元保証など高齢者のサポートをめぐる契約について、これまでも国民生活センターに多数の相談が寄せられている。「契約内容をよく理解できていないにもかかわらず、高額な契約をしてしまった」というもののほか、「詳細な説明がないこと」「解約時の返金」などについてもトラブルになっているという。

 16年には、財団法人「日本ライフ協会」が葬儀代などとして集めた数億円を流用するなどして経営破綻し、社会問題化した。

 こうした問題が出てきた背景の一つに、超高齢化や核家族化などに伴う身寄りのない高齢者の増加がある。ソーシャルワーカーを十数年務めた、同朋大の林祐介専任講師は指摘する。

「(親族がいても)関係が疎遠だと、かかわりたくないとなっている」

 そんな状況に置かれた高齢者が身元保証人を求められたら、事業者を利用せざるを得ない。

 病院・施設側はなぜ身元保証人を求めるのか。葬儀など死後の対応のほか、買い物代行や金銭管理、容体急変時の付き添いなどを病院・施設が対応することになると負担が増えるからだ。また、入所者が施設を移る必要がある場合、行き先で身元保証人を求められたら移れなくなるため、結局、入所時に求めることになる。

 通達を出している厚生労働省の担当者も、「施設としても身元保証を求めるメリットがある。デメリットを考えると、どうしても求めてしまう」と現状を認識している。

 上智大総合人間科学部社会福祉学科の栃本一三郎教授は3年ほど前、全国100前後ある身元保証事業者の中で連絡可能なところをすべて調べた。

「必要なサービスであることは確かです。不安に乗じて金もうけしようと入り込んでいる事業者は少なく、見るに見かねてというのが多かった」

 ただ、事業者によって契約内容はバラバラ。認知症患者らが契約内容をきちんと理解できるのかという問題は残る。

 判断能力が衰えた高齢者らのために、成年後見制度もある。本人が健康なときに選んでおく任意後見人のほか、関係者の申し立てで家庭裁判所が選任する法定後見人もいる。ただ、神戸六甲わかば司法書士事務所の前田実代表はこう語る。

「問題の解決に適した制度と考えていますが、使い勝手が悪く利用されていません」

 法定後見人については当初、家裁は親族を選ぶことが多かったが、本人の金銭を使い込む事例もあり、弁護士、司法書士、社会福祉士ら専門職を選ぶようになった。だが、月々の費用がかかるほか、親族側からは本人の預金通帳も見せてもらえないことなどへの不満が出ている。医療行為の同意が必要な場合も、「財産行為の代理などと違い、後見人にはなじまない」(消費者問題に詳しい洞澤美佳弁護士=たつき総合法律事務所)。買い物代行をすることも難しく、制度には限界がある。

 身寄りのない高齢者が身元保証人を求められたら、どうすればいいのか。上智大の栃本教授は言う。

「まずは地域包括支援センターに尋ねてみるなど、一人で決めずに相談することが大切です。子どもや孫がいれば、相談したほうがいい」

 医療ソーシャルワーカーを二十数年務めた、日本医療社会福祉協会の坪田まほ業務執行理事は言う。

「いつ身寄りがなくなるかわかりません。一人ではお墓に入れず、誰かのお世話にならないといけません。健康なうちに意思表示をして残しておくことも大事です。一人ひとりが自分のこととして考えていかないと、社会は変わっていきません」

(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日  2021年4月2日号




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