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(論)安保法施行5年(2021年3月29・30・31日・4月5・6日)

安保法施行5年/「違憲」の指摘を直視せよ(2021年4月6日配信『神戸新聞』-「社説」)

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の施行から5年が過ぎた。自衛隊と米軍の一体運用が常態化し、連携する相手をオーストラリアや欧州に広げる動きもある。

 日本が攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国が攻撃されれば武力行使に道を開く安保法は、戦後日本の基本姿勢である「専守防衛」を逸脱し、違憲だと多くの憲法学者が指摘している。「戦争放棄」や「戦力不保持」などを定めた憲法9条と矛盾する疑いがあるためだ。

 それが解消されないまま、既成事実が積み上げられていく状況に歯止めをかけなければならない。

 この5年、集団的自衛権の行使に当たる活動こそなかったものの、自衛隊の任務は大幅に拡大した。問題は、その詳細が国民に公表されていないことだ。

 典型は、自衛隊が平時から米軍の艦艇などを守る「武器等防護」である。2017年に2件、18年に16件、19年に14件と実績を重ね、昨年は25件で過去最多となった。防衛省は具体的な活動内容を米軍の運用に直結するとして明らかにしていない。

 武器を使用して他国の要員を助ける「駆け付け警護」の任務が付与された16~17年の南スーダン国連平和維持活動(PKO)では、自衛隊の現地での活動内容を防衛省に報告する日報の隠蔽(いんぺい)が発覚した。

 国民のあずかり知らないところで自衛隊の活動がなし崩し的に広がり、武力行使への歯止めがきかなくなる懸念はぬぐえない。

 安倍晋三前首相は、法案審議で「最大限情報を開示する」と答弁していた。政府は約束通り、情報を開示し、丁寧に説明するべきだ。

 一方で、日本を取り巻く安保環境が厳しさを増す現実も直視しなければならない。中国は沖縄県・尖閣諸島周辺への領海侵入を繰り返し、北朝鮮も弾道ミサイル開発を進める。

 だが、米国などと一体となって「抑止力」を強めるだけでは、東アジアの緊張は高まるばかりだろう。自衛隊が偶発的な戦闘に巻き込まれるリスクが増すとの指摘もある。

 情勢が緊迫する中でこそ、日本は冷静に現状を分析し、中国とも対話を重ねて、地域の安定に貢献する平和外交に努めねばならない。

 立憲民主党は、基本政策で「安保法の違憲部分を廃止」と明記した。与党の公明党も集団的自衛権の行使には慎重とされる。

 安倍前政権は、憲法改正の議論が必要な解釈変更を閣議決定で済ませ、安保法を強引に成立させた。違憲訴訟が各地で起こされるなど国民には反対論が今も根強い。

 成立過程にも問題がある安保法は今からでも見直す必要がある。





安保関連法施行5年 説明なき拡大は許されぬ(2021年4月5日配信『茨城新聞』-「論説」)

 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を解禁した安全保障関連法が2016年に施行されてから3月29日で5年になった。

 この間、集団的自衛権の行使につながる活動はなかったが、平時から自衛隊が米軍の艦艇などを守る「武器等防護」の活動は増え続けており、自衛隊と米軍の運用の一体化が常態化している。さらに連携する相手を、オーストラリアや欧州の国に広げる動きもある。

 軍備拡張を続ける中国を念頭に置いた活動の拡大だが、その具体的な内容が十分に国民に説明されているとは言い難い。憲法違反が指摘される安保関連法の下で、憲法を巡る根幹の議論と国民への説明を置き去りにしたまま、なし崩しで自衛隊の活動を拡大することは許されない。政府には丁寧な説明を求めたい。

 安倍前政権は戦争放棄を定めた憲法9条の下で「保有するものの行使はできない」とされてきた集団的自衛権の解釈を変更し、密接な関係にある他国が攻撃を受けて日本の存立が脅かされる「存立危機事態」には、行使できるとした。

 本来は憲法改正の議論が必要なものだが、安倍前政権はその解釈変更を閣議決定で断行した。

 安保関連法は違憲だとする一連の各地の訴訟で、これまでの判決では損害賠償の請求などは退けられている。ただ、憲法学者の間には依然として違憲との見解があり、野党の立憲民主党なども違憲と主張している。

 安倍前政権は歴代政権が守ってきた憲法解釈を変更するため、変更に前向きな外務官僚を内閣法制局長官に据える強引な手法をとった。憲法の安定性を損なう姿勢は菅政権に引き継がれ、学問の自由を侵害する恐れのある日本学術会議の任命拒否問題などにつながっているのではないか。

 安保関連法はこのほかの分野でも自衛隊の活動を広げた。国連平和維持活動(PKO)で、襲われた他国の要員を助ける「駆け付け警護」なども新たな任務になり、実際の活動はなかったが、南スーダンPKOに派遣された陸上自衛隊部隊に発令された。

 特に増えているのが米軍の艦艇や航空機を守る活動だ。19年は14件、20年は25件に上った。自衛隊幹部は「平時から自衛隊が米軍を守るという行動が日米同盟の強化につながっている」と強調するが、具体的な活動内容は「米軍の部隊運用に直結する」として公表していない。法案審議の際に安倍晋三前首相は「最大限情報を開示し、丁寧に説明する」と答弁した。その公約を守るべきだ。

 日米の連携は、宇宙やサイバーなどの領域でも進む。菅、バイデン政権下で初めて開かれた先日の外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも「全ての領域を横断する防衛協力を深化させる」という方針を確認した。

 日本周辺の安保環境は確かに厳しくなっている。北朝鮮も核・ミサイル開発を進める。しかし、どこまで米軍と行動を共にするのかは慎重な議論が必要だ。宇宙やサイバー空間で、安保政策の基本である「専守防衛」をどう定義するのかも整理しなければならない。

 バイデン政権は同盟重視の一方で、日本に軍事的な負担増を求めてくる可能性もある。その要求にも冷静に対処し、活動拡大ではなく、地域の安定に資する安保政策を練り上げるべきだ。



安保法施行5年 情報公開が信頼確保への一歩だ(2021年4月5日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 憲法の解釈変更により集団的自衛権の行使を可能とした安全保障関連法が2016年3月に施行されて5年を迎えた。

 この間、集団的自衛権の行使につながる活動はなかったが、自衛隊が平時から米軍の艦艇や航空機を守る「武器等防護」は昨年、過去最多だった。米政権の中国との対決姿勢や台湾周辺の緊張激化、北朝鮮の弾道ミサイル開発を背景に、自衛隊と米軍の一体化が今後、なし崩し的に拡大する懸念を拭えない。

 そもそも安保法は、「法の番人」と呼ばれる内閣法制局長官を政権の意向に沿うようすげ替え、閣議決定で集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈に変更した強引な手法の産物だ。

 憲法学者の間では、いったん集団的自衛権に関する部分を削り、憲法改正から議論すべきだとの意見もある。政府は信頼確保のためにも最低限、活動内容の公開を徹底すべきだ。

 自衛隊と他国軍との一体化の懸念は、米軍にとどまらない。安保法は武器等防護や、弾薬、燃料の提供などの後方支援の対象を、安保条約を結ぶ米国に限定していないからだ。

 昨年12月、沖ノ鳥島周辺で日米仏の艦艇が敵の潜水艦に対応する想定で共同訓練。フランス海軍の潜水艦が太平洋で動静を明らかにするのは異例だった。日米仏は今年2月にも九州西方で燃料補給を訓練したほか、陸上自衛隊と米仏の陸軍による共同訓練も行われる見通しだ。

 また昨年11月の日豪首脳会談では、「準同盟」と位置付けるオーストラリア軍を武器等防護の対象として調整することで合意。連携強化の相手が拡大している現状に警戒を怠れない。

 この5年間で、複数の新任務が実行に移され、政府は「可能な限り情報を公開する」と説明していた。しかし内容は限定的で、信頼性に疑問符が付く。

 防衛省は毎年、武器等防護の件数や対象とした国、艦艇、航空機ごとの回数を公表してきたが、活動内容は「情報収集・警戒監視」「輸送、補給」「共同訓練」など大くくり。「米軍の運用に直結する」として日時や場所、参加部隊は非公表だ。

 継続的にあるとみられる洋上給油も実態は分からず、情報公開は形骸化していると言わざるを得ない。

 何より信頼を大きく損ねたのが、16年12月から17年5月まで陸上自衛隊部隊が派遣された南スーダン国連平和維持活動(PKO)で、部隊から日々の活動内容を防衛省に報告する日報の隠蔽(いんぺい)だった。防衛相辞任に至った問題の教訓をいま一度、肝に銘じるべきだ。

 安保法の成立過程で見られた安倍前政権の憲法や法律を軽視する姿勢は、菅政権にも引き継がれているのではないか。過去の首相答弁を筋の通らない解釈で押し切った日本学術会議の任命拒否問題は、その懸念を深めるものだった。情報公開による信頼性の確保に向け、菅政権の姿勢が問われている。





安保法施行5年 議論と説明が置き去りに(2021年3月31日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を解禁し、自衛隊の任務を大幅に拡大した安全保障関連法が、2016年の施行から29日で5年になった。

 この間、集団的自衛権の行使につながる活動はなかったが、自衛隊が米軍の艦艇などを平時から守る「武器等防護」は増え続け、自衛隊と米軍の運用の一体化が常態化している。軍備拡張を続ける中国を封じ込めるため、連携強化の相手をオーストラリアや欧州の国々へと拡大する動きもある。

 だが、日本への武力行使がなくても集団的自衛権の行使を認める安保法は、憲法に違反しているとの指摘もある。安保法の運用実績も国民に十分説明されているとは言い難い。憲法を巡る議論と国民への説明を置き去りにしたまま、なし崩しで自衛隊の活動が拡大されている状況は改めるべきだ。

 安倍前政権は、戦争放棄を定めた憲法9条の下で「保有するものの行使はできない」とされてきた集団的自衛権の解釈を変更。密接な関係にある他国が攻撃を受け日本の存立が脅かされる「存立危機事態」の際は行使できるとした。

 歴代政権が守ってきた解釈を変更するため、変更に前向きな外務官僚を内閣法制局長官に起用。本来は憲法改正の議論が必要なところを閣議決定で済ませた。与党も世論が真っ二つに割れる中で採決を強行し、安保法を成立させた。

 安保法の施行後、特に増えているのが武器等防護だ。19年は14件、20年は過去最多の25件に上る。自衛隊幹部は「米軍を守るという行動を示せるようになり、同盟の強化につながった」と強調している。しかし、任務の具体的な内容については「米軍の部隊運用に直結する」として公表していない。安倍晋三前首相は法案審議で「最大限情報を開示し、丁寧に説明する」と約束したが、実際には限定的な説明にとどまっている。

 国連平和維持活動(PKO)の最中に襲われた他国の要員を助ける「駆け付け警護」や、他国軍との「宿営地の共同防護」も自衛隊の新たな任務となった。これらが実際に行われる際、防衛省や自衛隊が国民への説明を徹底できるかも気掛かりだ。

 安保法は違憲だとする訴訟も各地で続いている。これまでの判決では請求は退けられているが、憲法学者の間には依然として違憲との見解がある。

 日本周辺の安保環境は確かに厳しくなっている。中国の軍事的台頭に一国で対抗するのは難しい。北朝鮮も核・ミサイル開発を進める。とはいえ、米軍とどこまで行動を共にするかは慎重な議論が必要だ。バイデン政権が同盟強化と引き換えに軍事的な負担増を求める可能性もある。

 前政権は専門家の指摘を軽んじ、法や憲法を無視する前例を作った。菅政権にも同様の傾向がうかがえるが、それでは国民の信頼は確保できまい。活動拡大ありきでなく、国益につながるかを丁寧に見極めながら安保政策を練り上げてもらいたい。



安保関連法施行5年(2021年3月31日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

 地域の安定に資する政策を 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を解禁した安全保障関連法が2016年に施行されてから29日で5年になった。 この間、集団的自衛権の行使につながる活動はなかったが、平時から自衛隊が米軍の艦艇などを守る「武器等防護」の活動は増え続けており、自衛隊と米軍の運用の一体化が常態化している。

 さらに連携する相手を、オーストラリアや欧州の国に広げる動きもある。 軍備拡張を続ける中国を念頭に置いた活動の拡大だが、具体的な内容が十分に国民に説明されているとは言い難い。

 憲法違反が指摘される安保関連法の下で、憲法を巡る根幹の議論と国民への説明を置き去りにしたまま、なし崩しで自衛隊の活動を拡大することは許されない。政府には丁寧な説明を求めたい。

 安倍前政権は、戦争放棄を定めた憲法9条の下で「保有するものの行使はできない」とされてきた集団的自衛権の解釈を変更し、密接な関係にある他国が攻撃を受けて日本の存立が脅かされる「存立危機事態」には、行使できるとした。本来は憲法改正の議論が必要なものだが、安倍前政権はその解釈変更を閣議決定で断行した。

 安倍前政権は歴代政権が守ってきた憲法解釈を変更するため、変更に前向きな外務官僚を内閣法制局長官に据える強引な手法をとった。憲法の安定性を損なう姿勢は菅政権に引き継がれ、学問の自由を侵害する恐れのある日本学術会議の任命拒否問題などにつながっているのではないか。

 安保関連法は他分野でも自衛隊の活動を広げた。国連平和維持活動(PKO)で、襲われた他国の要員を助ける「駆け付け警護」なども新たな任務になり、実際の活動はなかったが、南スーダンPKOに派遣された陸上自衛隊部隊に発令された。 特に増えているのが米軍の艦艇や航空機を守る活動だ。

 19年は14件、20年は25件に上った。自衛隊幹部は「平時から自衛隊が米軍を守るという行動が日米同盟の強化につながっている」と強調するが、具体的な活動内容は「米軍の部隊運用に直結する」として公表していない。

 法案審議の際に安倍晋三前首相は「最大限情報を開示し、丁寧に説明する」と答弁した。その公約を守るべきだ。 日本周辺の安保環境は確かに厳しくなっている。北朝鮮も核・ミサイル開発を進めるが、どこまで米軍と行動を共にするのかは慎重な議論が必要だ。バイデン政権は同盟重視の一方で、日本に軍事的な負担増を求めてくる可能性もある。その要求にも冷静に対処し、活動拡大ではなく、地域の安定に資する安保政策を練り上げるべきだ。





安保関連法施行5年(2021年3月30日配信『福井新聞』-「論説」)

拡大の前に説明が必要だ
 
 安倍晋三前政権下で憲法解釈を変更してまで、集団的自衛権の行使を解禁した安全保障関連法が施行されて5年を経た。この間、実際に行使につながる事態はなかったものの、平時から自衛隊が米軍の艦艇などを守る「武器等防護」の活動は2019年が14件、20年は25件と増え続けている。

 確かに日米同盟の強化に資する面はあるだろうが、一方で具体的な活動については「米軍の部隊運用に直結する」として一切公表していない。安倍前首相は国会で「最大限情報を開示し丁寧に説明する」と答弁しており、その約束は反故(ほご)にされたも同然だ。

 そもそも、安倍前政権は本来、戦争放棄を定めた憲法9条改正の議論に付すべきものを、憲法の解釈変更を閣議決定で断行。変更に前向きな外務官僚を内閣法制局長官に起用する禁じ手ともいえる手法も取るなどして、9条の下で「行使はできない」とされてきた集団的自衛権を、密接な関係の他国が攻撃を受けて日本の存立が脅かされる「存立危機事態」には行使できるとした。

 懸念されるのは、武器等防護の連携対象を米軍だけでなく、オーストラリアや欧州の国に広げる動きがあることだ。北朝鮮の脅威に加え、軍備拡張にまい進する中国を念頭に置いたものだろうが、憲法を巡る根幹の議論と国民への説明をないがしろにしたまま、なし崩しで自衛隊の活動を広げることはあってはならないはずだ。

 安保関連法ではこのほか国連平和維持活動(PKO)で、襲撃された他国の要員を助ける「駆け付け警護」や、宿営地を他国軍と協力して守る「共同防護」なども自衛隊の新たな任務となった。これまで実施されたことはなかったが、南スーダンPKOに派遣された陸上自衛隊に発令された経緯がある。

 日米の連携を巡っては、日本周辺の安保環境の厳しさを背景に、菅、バイデン政権下で初めて開催された外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも「全ての領域を横断する防衛協力を深化させる」との方針を確認し合った。宇宙やサイバーなどの分野でも連携を拡大させようとの考えだろうが、日本の基本方針である「専守防衛」をどう定義するかなど、慎重な議論が求められる。

 同盟重視のバイデン政権はその一方で、日本に在日米軍駐留経費などの負担増を求めてくる可能性も否めない。さらに、米中が日本周辺で軍事的衝突に至った場合は、日本も傷を負うことは避けられないだろう。活動の拡大ではなく、地域の安定に寄与する安保政策に加え、したたかな外交戦略も駆使すべきだ。



安保関連法施行5年(2021年3月30日配信『佐賀新聞』-「論説」)

説明なき拡大は許されぬ5

 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を解禁した安全保障関連法が2016年に施行されてから29日で5年になった。

 この間、集団的自衛権の行使につながる活動はなかったが、平時から自衛隊が米軍の艦艇などを守る「武器等防護」の活動は増え続けており、自衛隊と米軍の運用の一体化が常態化している。さらに連携する相手を、オーストラリアや欧州の国に広げる動きもある。

 軍備拡張を続ける中国を念頭に置いた活動の拡大だが、その具体的な内容が十分に国民に説明されているとは言い難い。憲法違反が指摘される安保関連法の下で、憲法を巡る根幹の議論と国民への説明を置き去りにしたまま、なし崩しで自衛隊の活動を拡大することは許されない。政府には丁寧な説明を求めたい。

 安倍前政権は、戦争放棄を定めた憲法9条の下で「保有するものの行使はできない」とされてきた集団的自衛権の解釈を変更し、密接な関係にある他国が攻撃を受けて日本の存立が脅かされる「存立危機事態」には、行使できるとした。

 本来は憲法改正の議論が必要なものだが、安倍前政権はその解釈変更を閣議決定で断行した。

 安保関連法は違憲だとする一連の各地の訴訟で、これまでの判決では損害賠償の請求などは退けられている。ただ、憲法学者の間には依然として違憲との見解があり、野党の立憲民主党なども違憲と主張している。

 安倍前政権は歴代政権が守ってきた憲法解釈を変更するため、変更に前向きな外務官僚を内閣法制局長官に据える強引な手法をとった。憲法の安定性を損なう姿勢は菅政権に引き継がれ、学問の自由を侵害する恐れのある日本学術会議の任命拒否問題などにつながっているのではないか。

 安保関連法はこのほかの分野でも自衛隊の活動を広げた。国連平和維持活動(PKO)で、襲われた他国の要員を助ける「駆け付け警護」なども新たな任務になり、実際の活動はなかったが、南スーダンPKOに派遣された陸上自衛隊部隊に発令された。

 特に増えているのが米軍の艦艇や航空機を守る活動だ。19年は14件、20年は25件に上った。自衛隊幹部は「平時から自衛隊が米軍を守るという行動が日米同盟の強化につながっている」と強調するが、具体的な活動内容は「米軍の部隊運用に直結する」として公表していない。法案審議の際に安倍晋三前首相は「最大限情報を開示し、丁寧に説明する」と答弁した。その公約を守るべきだ。

 日米の連携は、宇宙やサイバーなどの領域でも進む。菅、バイデン政権下で初めて開かれた先日の外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも「全ての領域を横断する防衛協力を深化させる」という方針を確認した。

 日本周辺の安保環境は確かに厳しくなっている。北朝鮮も核・ミサイル開発を進める。しかし、どこまで米軍と行動を共にするのかは慎重な議論が必要だ。宇宙やサイバー空間で、安保政策の基本である「専守防衛」をどう定義するのかも整理しなければならない。

 バイデン政権は同盟重視の一方で、日本に軍事的な負担増を求めてくる可能性もある。その要求にも冷静に対処し、活動拡大ではなく、地域の安定に資する安保政策を練り上げるべきだ。(共同通信・川上高志)





安保法施行5年 違憲の疑い放置するな(2021年3月29日配信『北海道新聞』-「社説」)

 安倍晋三前政権が憲法解釈を強引に変更し、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法を施行させてから5年がたった。

 政府はこの間、平時から米軍の艦船を防護したり、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸上自衛隊に、武器を使って他国の要員を助ける駆け付け警護の任務を付与したりしてきた。

 安保法に基づくこれらの活動は他国の標的となり、結果的に戦争に巻き込まれるリスクを高める。

 憲法は国際紛争の解決手段としての武力行使を放棄している。

 違憲の疑いが強い安保法は廃止するのが筋である。

 にもかかわらず、菅義偉政権が自衛隊の防護対象をオーストラリア軍にも拡大しようとしていることは見過ごせない。

 前政権の安保政策を徹底的に検証し、正すべきは正すことこそ菅政権に求められていることだ。

 自衛隊による米軍防護は昨年、過去最多の25件に上った。

 政府は安保法に基づく新任務について「可能な限り情報公開する」と約束していたが、国名以外の時期や場所などの詳細は公表せず、説明責任も果たしていない。

 政府はトランプ前政権に求められて米国製の防衛装備品を大量購入するとともに、安保法に基づく任務などを通じ、米軍と自衛隊の一体化を加速させてきた。

 さらに問題なのは昨年末以降、防衛協力の相手国を米国以外にも広げる姿勢を強めていることだ。

 米国、オーストラリア、インドとの4カ国協力を推進し、フランスや英国、ドイツなど欧州との連携も強化する方向だ。

 いずれも東・南シナ海で加速する中国の海洋進出を封じ込める意図があるのは間違いない。

 中国による沖縄県・尖閣諸島周辺への領海侵入は看過できないが、軍事、経済両面で影響力を強める中国への包囲網は、東アジアの緊張を高める恐れがあろう。

 日本が取るべきは平和外交だ。軍事的な対応より、対話を通じて国際問題の解決を図る外交に力を尽くさなくてはなるまい。

 安保法制定の過程では、安倍前首相が自らの意向に沿う外交官を「法の番人」であるはずの内閣法制局長官に充て、多くの憲法学者の反対意見を顧みずに、与党の数の力で成立させた。

 そうした恣意(しい)的な政権運営は、検察官の定年延長や日本学術会議の会員任命拒否でも見られる。

 菅政権は憲法や国会を軽視する姿勢を改めるべきだ。



違憲性を問い続けねば 安保法施行5年(2021年3月29日配信『東京新聞』-「社説」)

 安倍前内閣が成立を強行した安全保障関連法が施行されてきょう29日で5年。この間、自衛隊の米軍防護が増えるなど米軍との一体化が確実に進むが、同法の違憲性を解消し、地域の緊張を緩和する外交・安全保障政策にこそ、知恵を絞るべきではないか。

 米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官は、バイデン政権の閣僚として初めての訪問先に日本を選んだ。このことは、アジア・太平洋地域の情勢が依然、厳しいことを物語る。その視線の先にあるのは、軍事的台頭が著しい中国にほかならない。

増える米軍の防護任務

 今月16日に開かれた日米両国の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)後の共同発表では、海洋進出の動きを強める中国を名指しで批判し、「日米同盟」をさらに強化する決意を表明した。

 自衛隊と米軍の防衛協力はこれまでも、自衛隊の役割拡大という形で、緊密化が進んできた。

 その度合いを一層強めたのが、安倍晋三前首相が2015年9月に成立を強行し、翌16年3月に施行された安保関連法である。

 「一体化」ともいえる自衛隊と米軍との緊密な協力関係は、数字にも表れている。自衛隊が昨年1年間、安保法に基づいて実施した米軍の艦艇や航空機の防護は19年の14回から増え、25回を数えた。初めて実施した17年以降で最も多い。

 内訳は弾道ミサイル警戒を含む情報収集・警戒監視活動による艦艇警護が4回、共同訓練の際の航空機警護が21回。法律上は米国以外の軍隊も対象だが、安保法施行後の5年間で自衛隊が防護したのは米軍だけだ。

 「アジアで最も強力な2つの軍隊の統合が進んでいることの表れだ」。米CNNは、自衛隊による米軍防護の増加をこう報じた。

軍事衝突の引き金にも

 安保法の施行以前、自衛隊が平時に武器を使って防護できる対象は自衛隊の武器や施設に限られていたが、同法の施行で「日本の防衛に資する活動」を行う米軍など外国軍隊の武器や施設が対象に加えられた。

 しかし、いくら日本の防衛に資する活動をしているといっても、米艦などの防護活動中に攻撃や妨害行為があった場合、阻止するために自衛隊が武器を使用すれば、紛争の引き金を引きかねない。

 しかも、防護活動の時期や場所は米軍の部隊運用に関わるとして発表されず、情報に乏しい。

 安倍前首相が安保法案の国会審議で、米艦などへの防護活動について「国会および国民に対する説明責任を果たすため、可能な限り最大限の情報を開示し、丁寧に説明する考えだ」と、情報公開を約束したにもかかわらずだ。

 安倍前内閣は法案提出に当たって、歴代内閣が堅持してきた「集団的自衛権の行使」を憲法違反とする解釈を一内閣の判断で強引に変更し、一部とはいえ行使容認に転じた。

 安保法を巡り、各地で違憲訴訟が提起されたのも当然だろう。

 安保法でさらに進んだ自衛隊の任務、装備両面での強化や米軍との一体化が、戦争放棄や戦力不保持を定めた憲法九条に合致するのか。施行から5年を経ても、その妥当性を問い続けねばなるまい。

 今年は1991年に湾岸戦争が勃発してから30年の節目の年でもある。振り返れば、この戦争を契機に日本の国際貢献策として自衛隊の海外派遣が始まり、イラク戦争や「テロとの戦い」など国際紛争の度に、自衛隊は海外での活動範囲や役割を拡大してきた。

 そして私たちが今、直面するのが、中国の著しい台頭だが、これまでと全く違うのは中国が日本にとって地理的、経済的に極めて近い関係にあることだ。

 もし、米中両国が日本周辺地域で軍事的衝突に至れば、日本も無傷ではいられまい。米国が日本に対し、日米安全保障条約に規定された以上の、さらなる軍事的協力を求めてくるかもしれない。

「したたかな外交」こそ

 もちろん「平和」と口にするだけで、日本の平和と安全を保つことはできないが、日米の軍事的一体化を進めることで逆に、地域の緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥らないだろうか。

 日本は憲法が許す範囲内で自国の守りを固める一方、地域の警察力としての米軍の存在を認め、米軍への基地提供という安保条約上の義務は誠実に果たす。

 その上で、権威主義に大きく傾く中国とは対話を通じて自由や民主主義、人権を重んじ、国際社会の責任ある一員として責任を果たすよう促す。そんな外交戦略を描き、果敢に展開するしたたかさが必要とされているのではないか。
 対立をあおり、封じ込めに固執することを、賢明な外交・安全保障政策とはとてもいえない。



安保法制施行5年 平和外交にこそ力を注げ(2021年3月29日配信『琉球新報』-「社説」)

 憲法学者から違憲との指摘がある集団的自衛権行使を可能にし、日米の軍事一体化を進めるなど、さまざまな課題をはらむ安全保障法制は、29日で施行から5年を迎えた。

 この間、自衛隊と米軍の一体運用は常態化し、太平洋に面するオーストラリアだけでなく、欧州を含めた形で軍事的な連携が際限なく広がる。

 海洋進出を図る中国や弾道ミサイルを発射した北朝鮮など、東アジアの安全保障環境に懸念は絶えない。しかし軍事的な力に頼るばかりの安全保障策でよいのか。

 有事となれば真っ先に狙われるのは国境の島であり、米軍、自衛隊基地が集中する沖縄であるのは疑いない。76年前、軍民混在の地上戦を経験した県民は「軍隊は住民を守らない」という教訓を得た。

 政府は違憲の疑いが濃い安保法制を見直すだけでなく、国民を守るため平和外交にこそ力を注ぐべきだ。

 安保法制で可能になった任務では、集団的自衛権の行使こそなかったが、平時に他国軍の艦艇などを自衛隊が守る「武器等防護」は19年に14件、20年に25件実施している。防衛省は件数と概要のみ公表し、詳細は明かしていない。

 現状は米軍だけを対象にしているが、菅義偉首相はオーストラリアのモリソン首相との昨年11月の会談で、オーストラリア軍も「武器等防護」の対象に追加するよう調整を進めることで合意した。

 「武器等防護」は地理的制約がなく自衛隊が世界中で活動できる。しかし詳細な情報を公開せず、国会も十分関与できない。これでは自衛隊を統制できない。

 当時の安倍晋三首相は国会と国民に説明責任を果たすと語ったはずだ。「抑止力」を名目にした自衛権が際限なく広がれば、国民が知らないうちに戦争に巻き込まれる可能性がある。

 国民に重要な情報を開示しない中で各国軍隊との訓練が日常化すれば、沖縄を拠点とする米軍の活動もさらに激しくなる。沖縄は現状でも過重な負担を強いられている。最近では米軍の低空飛行や物資つり下げなど危険な訓練も常態化する。自衛隊の先島配備も着々と進みつつある。

 法そのものの問題も多いが、成立過程で残した立憲主義や法治主義の否定は現在にもつながる。集団的自衛権行使を違憲とする専門家の声に耳を傾けず、政権の意に沿う人物を登用し「法の番人」である内閣法制局の見解さえも変えてしまった。

 安倍前政権が残した負の遺産は、政権に異議を唱える学者を排除するという点で、現政権の日本学術会議任命拒否問題とつながっている。

 法的安定性を損ない、違憲とする国民からの疑念も絶えない安保法制は、本当に必要なのか。現状では隣国との摩擦の種にしかならない。
 政府は、違憲との指摘がある安保法制を根幹から見直すべきだ。



[安保法施行5年]米軍との一体化を危惧(2021年3月29日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 安全保障関連法が施行されてから5年たった。

 憲法解釈を変更して、歴代政権が認めてこなかった集団的自衛権の行使を可能にした法律だ。他国軍への後方支援の拡大や、国連が統括しない「国際連携平和安全活動」への隊員派遣も可能になった。

 集団的自衛権の行使につながる活動は、これまでのところない。ただ、自衛隊の任務は大幅に広がり、日米の軍事一体化が加速している。

 自衛隊が他国の艦艇や航空機を守る新任務「武器等防護」は2020年、過去最多の25件あった。対象はいずれも米軍。17年に初めて2件実施されて以降、18年に16件、19年14件と増加傾向にある。

 政府は当初「可能な限り情報を公開する」と説明していた。だが、実際に公表されている情報は限定的だ。

 「米軍の運用に直結する」として日時や場所、自衛隊がどの部隊を出したのかは明らかにしていない。活動内容も「情報収集・警戒監視」「共同訓練」など大くくりで示すのみだ。

 安保法は、後方支援の対象を安保条約を結ぶ国に限定していない。日本の連携強化の相手は欧州やオーストラリアに拡大しつつある。

 活動が、なし崩し的に広がり、歯止めが利かなくならないか、懸念が拭えない。国会が十分検証できるよう情報開示を徹底すべきだ。

 「駆け付け警護」の任務が付与された南スーダンPKOでは、日報の隠(いん)蔽(ぺい)が発覚した。このような事実隠しも二度とあってはならない。

■    ■

 安保法は名護市辺野古の新基地建設ともつながる。それを象徴する「事実」が判明した。

 陸上自衛隊と米海兵隊が、辺野古新基地に陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させることで極秘に合意していた、というのだ。

 計画は一時凍結されているというが、このままなら新基地が自衛隊と共同使用されるのは目に見えている。

 自衛隊は中国の動きをにらんだ「南西シフト」を鮮明にし、八重山や宮古、沖縄本島、奄美へと配備を着々と進展させる。

 一方で県内では既に日米の一体化が目に見える形で進む。航空自衛隊は今月、米軍嘉手納基地で地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の機動展開訓練を実施した。

 政府が唱える「負担軽減」は掛け声だけとなっている。その裏で進む基地機能の強化を受け入れることはできない。

■    ■

 歴代の法制局長官や多くの憲法学者が成立前に訴えたように、安保法は違憲の疑いが濃厚だ。にもかかわらず放置している政府の責任は重い。

 米中対立が激化する今、日米軍事一体化は、かえって米中の戦争に巻き込まれかねないというジレンマを抱える。政府が「抑止力」に頼りすぎなのも危うい。

 必要なのは冷静に物事を見極め、バランスの取れた安保政策を議論することだ。中国との間で太いパイプをつくる、といった一見すると遠回りに見える外交努力が、地域の平和を築く上で求められている。



安保法制施行5年(2021年3月29日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

「戦争する国」の阻止が急務だ


 安倍晋三前政権が憲法の平和主義と立憲主義を破壊し強行した安保法制=戦争法が2016年3月29日に施行されてから5年がたちます。同法制が海外での米軍の戦争に自衛隊が参戦し武力行使できる道を開いた中で、日米両国の軍事一体化が急速に深まっています。安倍前政権を継承した菅義偉政権の下でも「戦争する国」づくりの重大な動きが進んでいます。

米軍の防護が最多に

 防衛省は2月、安保法制に基づき自衛隊が20年に実施した米軍防護が25回だったと発表しました。米軍防護は、米艦や米軍機などを自衛隊が警護するものです。警護の地理的範囲に限定はなく、米軍が攻撃を受ければ自衛隊が武器を使用して反撃できます。

 年ごとの米軍防護の回数は、初めて実施された17年が2回、18年が16回、19年が14回で、20年の25回は最多です。その内訳は、弾道ミサイルなどの情報収集・警戒監視活動を行っている米艦の警護が4回、日米共同訓練に参加している米軍機の警護が21回でした。

 米軍防護は、自衛隊を意図しない戦闘に巻き込む恐れがあります。例えば、南シナ海で自衛隊と共同訓練をしている米軍と中国軍との間で偶発的な衝突が起こった場合でも、米軍防護の任務に就いている自衛隊は武器を使用して米軍を守らなければなりません。

 今月16日の日米外交・軍事担当閣僚会合(2プラス2)の共同発表は、南シナ海での中国の不法な活動への反対をうたい、台湾海峡の平和と安定の重要性を指摘しました。その上で「同盟の運用の即応性及び抑止態勢を維持し、将来的な課題へ対処するための、実践的な二国間及び多国間の演習及び訓練が必要」と強調しました。「実践的」な演習・訓練は、不測の軍事衝突の危険を高めかねません。

 防衛庁(現防衛省)幹部を歴任し、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を務めた柳沢協二氏は「日米共同で軍事的プレゼンスを高め、状況によっては米艦も防護するという姿勢は、アメリカの秩序・覇権に与(くみ)することを意味します」「南シナ海や台湾で米中が衝突し、本格的な戦争になれば、日本も無傷ではいられません」と警告しています(『抑止力神話の先へ―安全保障の大前提を疑う』)。

 安保法制は、南シナ海や台湾での有事を「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)と認定すれば、戦闘が予測される地域でも自衛隊が米軍に補給や輸送などの後方支援をすることを可能にします。米軍の後方支援部隊の警護もできます。そうなれば自衛隊が標的になるだけでなく、米軍基地が集中する日本、とりわけ沖縄が攻撃目標になるのは避けられません。

自衛隊が本格参戦も

 さらにそれを「わが国の存立が脅かされる明白な危険がある事態」(存立危機事態)とすれば、自衛隊は集団的自衛権を行使し本格的に参戦することになります。

 日本は2プラス2の共同発表で「日米同盟を更に強化するために能力を向上させる」と表明しました。菅政権は、他国を攻撃できる長距離巡航ミサイルなど「敵基地攻撃能力」の保有も企てています。安保法制の廃止と、同法制の根拠となっている集団的自衛権の行使などを認めた閣議決定の撤回はいよいよ急務になっています。






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