FC2ブログ

記事一覧

注目の人 直撃インタビュー:高田秀重氏「テークアウト全盛の新生活は『人類の危機』」(2021年3月29日配信『日刊ゲンダイ』)

キャプチャ
高田秀重(東京農工大教授)

 コロナ禍になってからプラスチックごみが増えていないだろうか。外食をやめてテークアウト、宅配を頼む。家でジュースやお茶、ハイボールを飲む。みんなプラスチックの容器に入っている。結果、ごみの日にはパンパンの袋。実はこうしたプラスチックの使用量の増加こそが新型コロナウイルスによる死者を増やしているのかもしれないということをご存じだろうか?多くの人が知らないプラスチックの危険性について、第一人者の学者が警鐘――。

■プラごみ添加剤でコロナ死者増や精子減少が?

 ――プラごみとコロナが関係あるのですか?

 コロナの死者の地域分布図とプラスチック由来の添加剤による汚染濃度図を重ね合わせてみたんですよ。汚染レベルが高いのは米国や西ヨーロッパ。ここはコロナの死者数も多いのですよ。それなりの医療体制がある先進国でなぜ、死者が多いのか。プラスチックの添加剤の中には人間の免疫力を低下させるものが入っている。そういうものの影響かもしれないと考え始めたのです。

 ――添加剤というと?

 プラスチックは炭素―炭素の単結合がつながったポリマーからできています。この単結合は柔軟であるため加工しやすいのですが、紫外線や酸化によって、切れやすく、劣化しやすい。それを防ぐための酸化防止剤、加工のための可塑剤など、さまざまな添加剤を練り込んでいるのです。

 ――それらが免疫力を低下させる?


 例えばプラスチックの添加剤としてUV326という物質が使われています。紫外線によるプラスチックの劣化を防ぐため、日焼け止めの成分であるUV326が加えられています。UV326はビタミンAの代謝を促進し、免疫力低下を引き起こします。可塑剤として使用されるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)は粘膜細胞の粘着タンパク質の合成を阻害する可能性が指摘されています。粘着タンパク質とは接着剤のようなもので、これがあるとウイルスも粘膜から容易に侵入できないけれど、接着が弱まると侵入しやすくなり、サイトカインストーム(免疫の暴走)などの免疫撹乱を誘発することが懸念されています。

 ――プラスチックに練り込まれている添加剤がどうやって、ヒトの体に取り込まれるのですか?

 2つのルートがあります。1つはプラスチック容器に入った食品を電子レンジで温める。すると、加熱によって、容器に含まれている添加剤が食品の脂分に溶け出し、人間の口に入ってしまう。

 ――ほとんどの人がテークアウトの食品をチンして食べていますよ。

 溶けにくい素材が使われるようにはなってきていますが、このルートは存在します。

 ――もう1つは?

 プラスチック自体は、いずれボロボロになっていく素材です。ポイ捨てされたり、ごみ箱からあふれたものが風で飛ばされ、川に流れ、最後は海に流入する。紫外線を浴びて微細なマイクロプラスチック(直径5ミリ以下)になり、海に漂う。化学繊維の糸くず、芳香剤、洗顔剤に含まれる磨き粉などもマイクロプラスチックになり、海に流れる。いまや50兆個以上のマイクロプラスチックが海に漂っていると推定されています。これらを海の生物が取り込むと、食物連鎖を通じて濃縮され、そうした海産物を人間が食べてしまう。

 ――実感が湧きません。

 東京湾で採取したカタクチイワシの8割で消化管から1ミリ前後のマイクロプラスチックが検出されています。最近は人間の胎盤からマイクロプラスチックの検出が報告されました。ここに含まれる添加剤が胎盤を通り抜けて、胎児に移行することが懸念されています。ヒトの臍帯中からビスフェノールAも検出されています。これは、微量でも強い影響を与える環境ホルモンで、添加剤としても使われています。

キャプチャ2
大量のプラごみが漂着するインドネシア・バリ島の海岸(Maxim・Blinkov氏/Shutterstock.com提供)

レジ袋有料化や新法案では解決にならない

 ――影響は免疫力低下だけですか?

 添加剤や、その反応副生成物の中には内分泌撹乱作用や生殖毒性を持つ環境ホルモンも含まれています。これらがヒトの体内に入れば、ホルモン受容体との結合などによって、ホルモンバランスを撹乱させ、乳がんや子宮内膜症の増加、精子の減少などを引き起こす懸念がある。実際に子宮内膜症の患者さんの血液中からビスフェノールAが検出されています。さらに最近、ヨーロッパで行われた大規模な疫学調査の結果、成人男子の精子数が過去40年間で半減していることが分かりました。原因の候補のひとつにプラスチック添加剤が挙げられています。

 ――ちっとも知りませんでした。こうした危険性が指摘されるようになったのは最近ですか?

 容器から添加剤が溶け出す問題は20年前から指摘されて、改善はされています。マイクロプラスチックの問題は、海での存在が確認されたのが15年前、おおよその全体量が分かったのが10年前、生態系にたまっていることが分かったのは5年くらい前のことです。

 ――それなのに、世界中にプラ容器があふれていますね。テークアウトがニューノーマルな生活様式みたいになり、ますますプラごみが増えそうです。

 今や、日用品でプラスチックを使っていないものを見つける方が難しいくらいです。生産量は過去50年間で20倍に増え、日本は1人当たり容器包装プラスチックごみの発生量で世界2位です。

 ――レジ袋が有料になり、プラごみは減っているのかと思っていました。つい先日、「プラスチック資源循環促進法案」も閣議決定され、スプーンやフォークが有料になります。

 荒川の河川敷でNGOが集めたごみのランキングをしていますが、レジ袋は10位。1位はペットボトル。レジ袋を使わないことで問題が解決すると思ったら大間違い。新法案も削減法というよりリサイクル促進法の域を出ていません。

 ――ペットボトルは分別して、ごみ出ししていますが。

 ペットボトルのリサイクルは国内ではコストがかかりすぎるので、海外に送られていたのをご存じですか? 飲み残しを洗うなどの手間暇がかかり、人件費がかさむからです。こうした輸出は東南アジアの汚染問題になっていて、今年1月からバーゼル条約により、汚れたままの廃プラスチックを海外に輸出できなくなりました。国内でのリサイクルを強化しなければいけませんが、そもそも、プラスチックは劣化するので、100%のリサイクルはできない。「分別しているから安心」ではなく、リサイクルには限界があることを知り、素材を替える工夫などに取り組まなければいけません。

■添加剤の影響、被害を受けるのは子供

 ――ヨーロッパに比べて、日本はプラごみや環境ホルモンの問題に鈍感な気がします。

 国際的には、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で、添加剤の規制が検討されています。UV328という紫外線吸収剤も欧州では懸念物質として指定されていますが、ヨーロッパに比べて日本の規制は甘いですね。こうした添加剤の影響、被害を受けるのは子供なんですよ。その子供も大人になってから自分が影響を受けたことを知る。影響がすぐに出ないから鈍感だという部分もあるでしょう。それでなくても、日本の企業は社長がコロコロ代わり、短期的な利益を追い求める傾向がある。環境問題は長期的視野に立って、人間の損得を考えなければいけないのです。

 ――かといって、今すぐプラ消費をやめるわけにもいきませんね。解決策はあるのでしょうか?

 カーボンニュートラルを目指すのであれば、化石資源から作るプラスチックは今世紀後半以降、生産できなくなります。かといって、すべてをバイオマスに切り替えれば、森林破壊を招いてしまう。プラスチックに依存してきた商品の生産、提供方法、物流など消費社会の在り方を根本的に見直す必要があるのです。過度なグローバル化、強欲的な資本主義の功罪も検証すべきでしょう。なぜ、世界中から食料を輸入し、スーパーに並べなければならないのか。そのために過剰なプラスチック包装がなされるわけです。地産地消にすれば、野菜や魚は紙などに包んで渡せばいい。過去半世紀にわたって、人類は短期的な経済効率を優先させて、紙、金属、陶器で作られていたものをプラスチックに置き換えてきた。そのことから見直さなければいけません。

(聞き手=寺田俊治/日刊ゲンダイ)

▽高田秀重(たかだ・ひでしげ) 1959年生まれ、東京都立大卒。東京農工大農学部教授。国連海洋汚染専門家会議グループのメンバー。マイクロプラスチック研究の第一人者。「プラスチックモンスターをやっつけよう!」などの著書がある。



キャプチャ

キャプチャ2

キャプチャ3

内容

プラスチックは便利だけれど、生きものにからみつき、ちいさくなってエサのふり をし、毒を出し、ほかの有害物質とくっつきパワーアップも! そんな「プラスチッ クモンスター」の特徴をわかりやすく伝えます。「蜜ろうラップのつくり方」「浜辺で マイクロプラスチックを見つける実験」などもたっぷり紹介。絵本感覚で読める本書は、おとなの入門書にも。たのしみながら、暮らしの中のプラスチックを減らせます。

絵本の定期便ブッククラブ★O2(小学校中・高学年~)★2020年5月新刊読み物コース選定

クレヨンハウス➡ここをクリック





スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ