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国会では嘘、職場では異常残業 第2の赤木さんが出る懸念(2021年3月30日配信『日刊ゲンダイ』)

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安倍前首相は嘘の答弁数百回、保身のために官僚を犠牲に(菅首相=右)

 一体、霞が関で何が起きているのか。政府が今国会に提出した法案に誤記などのミスが相次いでいる問題。新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案など法案23本、条約1本の条文にミスがあり、正誤表などの関連資料も含めると134件に上るというのだ。異常事態である。

 たとえば、コロナ対応に忙殺されてきた厚労省でミスが多発しているというのなら、まだ分かる。だが、ミスが見つかった法案は13府省庁にまたがるのだ。霞が関全体がどうかしているとしか思えない。政治家の不正の尻ぬぐいで隠蔽や改ざんに時間を取られ、本来の業務にシワ寄せがきているのか。際限なく続くウソ答弁のつじつま合わせに追われているのか。まさか、利害関係者から連夜の接待を受けるのに忙しく、法案のチェックがなおざりになっているわけではあるまい。

 元文科官僚の寺脇研氏(京都芸術大客員教授)はこう言う。

「霞が関の幹部が官邸の方だけ見て、本当に必要かどうかも分からない仕事が急に降ってくる状況では、残業の多さや給料の安さに嫌気が差してしまう若手官僚の気持ちは分からないでもありません。わざとミスをしているわけではないが、官僚のやる気が落ちていることは感じます。SNS上では、匿名で不満をブチまけている霞が関のキャリア官僚も多い。公共に寄与したい、社会のために働きたいという熱意を持って官僚になったのに、政権の都合に翻弄されて、不要な仕事を押し付けられたりしています。前政権の“アベノマスク”がいい例で、突然やれと言われたので必死で調整しても配布が遅れた結果、厚労省が批判された。ワクチン接種事業などもそうですが、現場の実情や問題点を無視して官邸から『この日までにやれ』とトップダウンで指令が降りてくるので、どうにか形だけ整えようとして、“やっつけ仕事”になってしまう面はあるのではないでしょうか」

■官邸主導と内閣人事局の弊害

 安倍政権で強化された「官邸主導」の弊害が、このコロナ禍で顕著になってきたこともあるだろう。

 官邸が決めた政策がたとえ実情とそぐわなくても、役所の幹部は異論を唱えることもなく拝受して部下に丸投げする。内閣人事局で幹部人事を握られているため、官邸の言う通りに仕上げることが自分の出世につながるからだ。それも、とにかくスピーディーに、世論にウケるうちにとスケジュールありきになっている。それで、現場の若手の残業が増えるわけだ。

 内閣人事局によると、中央省庁の昨年10、11月の在庁時間で、過労死ラインの80時間を超える割合は10月が18%、11月が16%だったという。

 厚労省では、今年1月に80時間以上の時間外労働を行った職員は398人にのぼる。

 そのうち、100時間以上150時間未満が149人、150時間以上が28人で、最長は226時間だった。

 元外務審議官の田中均氏がツイッターでこう提起していた。

<問題を直視しませんか。過労死レベルを超える多数の残業公務員。その影響か、法案条約24本の条文に誤記。政治家のため虚偽答弁する者や自死を選ぶ公務員。パフォーマンス得意で責任は取らない政治家と党部会などで頭ごなしに批判を受け続ける公務員。そして志をもつ公務員志望者は激減。政治家は劣化>

「根本にある政治の責任が問われている」
「かつては、政治家がダメでも官僚が優秀だから日本の国が回っていると言われたものです。今は、官邸に人事権を握られている霞が関が政治に忖度して、マトモな仕事ができなくなっている。政治家の嘘や隠蔽に付き合うヒラメ官僚もどうかと思いますが、そうさせている政治の側の責任も大きいと思います」(寺脇研氏=前出)

 28日のNHK「日曜討論」で、共産党の小池晃書記局長は法案の誤りは首相を先頭にした虚偽答弁、政治の私物化など国会審議の軽視・形骸化の中で起きていると指摘。「根本にある政治の責任が一番問われている」と言っていた。

 官邸が決めたことを形にするのが霞が関の仕事になり、政治家を守るために官僚が国会で堂々と嘘を言うようになってしまった。ひと昔前は考えられなかったことだ。 

 元経産官僚の古賀茂明氏もこう指摘する。

「デジタル庁など、官邸の思いつきのような政策に振り回され、霞が関が疲弊しているのも事実です。法案をつくるような緻密な仕事をきっちりやろうと思えば、時間も手間もかかる。昔はそういう地味な仕事をする官僚が評価されていましたが、今は大臣や官邸に取り入ることしか考えていない幹部だらけになり、地道な作業がおろそかになっている可能性はあります。ウケ狙いのパフォーマンスに走る官僚が引き立てられ、幹部連中が忖度競争で出世していくのを見ていたら、現場のモチベーションが落ちるのも当然でしょう。“悪貨は良貨を駆逐する”で、政治も霞が関も加速度的に劣化が進んでいるように感じます」

 安倍政権以降、霞が関はすっかり官邸の下請け機関になり、政策立案能力も落ちている。それで意欲を失う若者も多く、自己都合を理由とした20代の国家公務員総合職の退職者数は2013年度の21人から、19年度は4倍の87人に増えた。

■安倍政権以降、倫理観が崩壊

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赤木さんの自死から3年(赤木雅子さん提供)

 優秀な人材が霞が関に見切りをつけることは、税金を払っている国民にとっても不幸なことだが、官僚は迷走する官邸のデタラメなコロナ対応に翻弄され、責任者が次々に辞める東京オリンピック・パラリンピックの後始末に狂奔させられ、さらには菅首相の長男が関係する総務省の汚職事件の口裏合わせにもてんやわんや。国民生活のためではなく、政権を守ることにリソースが割かれている。真面目な公務員ほど、現状に疑問を感じるのではないか。

 安倍政権下で起きた森友事件では、公文書改ざんを命じられた近畿財務局職員の赤木俊夫さんが自死を選ぶという痛ましい事件があった。赤木さんは、<公正に職務を執行していますか。国民の疑惑や不信を招くような行為をしていませんか>などと書かれた「国家公務員倫理カード」を手帳に挟んで常に持ち歩いていたという。そういう実直な公務員が良心の呵責に苦しんで死を選び、官邸の方ばかり見て忖度するゴマすり官僚が出世する社会でいいはずがない。

 しかも、そうやって政権に尽くしても山田前内閣広報官や谷脇前総務審議官のように、あっさり切り捨てられるのだ。自分たちの保身のために平気で官僚を犠牲にする人でなし政権では、いつ第2の赤木さんが出てもおかしくない。真面目な官僚ほど苦悩してしまう。

「3月7日は赤木さんの3回目の命日でしたが、ニュースでほとんど取り上げられることはなかった。あれほどの不幸な事件が起きたのに、3年が経っても、政治と官僚機構のあり方を根本的に見直す議論もなく、まったく改善されていない。霞が関は思考停止に陥っているように見えます。前政権で『逮捕されなければ犯罪行為を犯しても嘘を言っても構わない』という“倫理観の崩壊”が起き、それが今も政官界を覆っている。今国会で明るみに出た総務省の接待疑惑も、それを糊塗する国会答弁も根は同じです。首相交代は安倍政権の悪しき慣習を断ち切るチャンスだったのに、菅首相は真っ先に『政策に反対する官僚は異動してもらう』と公言して、ますます忖度を蔓延させているのだから絶望的です。この流れを止めるには、やはり政権交代でリセットするしかありません」(古賀茂明氏=前出)

 菅首相は25日の参院予算委員会で法案のミスについて「あってはならないことで、行政府の長として、私に責任があることは間違いない」と陳謝していたが、コトの本質が分かっているのかどうか。安倍政権から続く誤った官邸主導で、菅の存在が官僚機構を萎縮させ、忖度を生み、政治と霞が関を劣化させているのだ。国家の崩壊を止めるには、政権交代以外に道はない。





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