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(論)医療的ケア児に関する社説・コラム(2021年4月2日・5月17日)

【医療的ケア児】社会で成長を支えたい(2021年5月17日配信『高知新聞』-「社説」)

 今国会に超党派の議員立法として「医療的ケア児支援法案」が提出される見通しになった。

 医療の進歩によって、かつては救えなかった赤ちゃんの命を救えるようになった。新生児集中治療室(NICU)を退院し、自宅で生活するようになった後も、たんの吸引などのケアが欠かせない「医療的ケア児」は増えている。

 支援体制が整わず、保育施設や学校に通うことを断念しているケースも少なくない。看護している親の負担も重いなど、医療的ケア児と家族が直面している困難に目を向ける必要がある。

 医療的ケア児は全国に2万人いると推計され、この10年で2倍に増えている。自分で体を動かせない重症心身障害児から、歩ける子どもまで状況はさまざまだ。

 必要なケアも、胃に管を入れての栄養補給や、人工呼吸器の使用、気管切開部の管理など多岐にわたる。

 法案は、医療的ケア児の母親である自民党の野田聖子幹事長代行らの勉強会がまとめた。今国会で全会一致での成立を目指す。

 2016年の児童福祉法改正で、「医療的ケア児」は初めて法律に記され、支援体制を整えることが自治体の「努力義務」となった。

 提出予定の法案では、支援を「国及び地方公共団体の責務」と明文化している。保育所や学校などの設置者に対しては、適切なケアを行える看護師らの配置など必要な措置を講じるよう求めている。

 現状では、特別支援学校に通学する場合でも、医療的ケアに「対応できない」と判断され、親が登下校時はもちろん、授業中も付き添いを求められることが少なくない。親が離職せざるを得なかったり、通学そのものを諦めたりしている。

 国は、看護師らを配置する経費の補助など受け入れを促している。ただ、ケアに対応できる看護師や教職員の不足もあり、地域の保育所や学校に入りたくても多くの医療的ケア児が「門前払い」になっている。

 子どもが学びの機会を奪われている状態と言え、格差解消を急がねばならない。

 教職員の研修など人材の養成はもちろん、受け入れ側の意識改革も必要である。安全面を考えて及び腰になりがちだが、医療的ケアは機器なども進歩している。

 障害のある人と障害のない人が共に学ぶ「インクルーシブ教育」は、国が打ち出している方向性である。医療的ケア児の学びをどう実現させるかという姿勢で検討すべきだ。

 自宅と学校以外の居場所づくりも進めたい。国は施設での受け入れを促すため、4月から事業者への報酬単価を引き上げた。子どもの一時預かり先を増やし、見守りとケアにつきっきりの親が休息する時間を確保することは欠かせない。

 どの地域に住んでいても切れ目のない支援が受けられる体制を整えたい。医療的ケア児が自宅にこもるのではなく、さまざまな経験をして成長できるような社会を目指したい。





医療的ケア児 支援の充実へ広い理解を(2021年4月2日配信『山陽新聞』-「社説」)

 自宅で暮らしながら、人工呼吸器や胃ろうを使うなどして日常的な医療的ケアが必要な子どもが増えている。その支援の充実を図りたい。

 厚生労働省が障害福祉サービス事業所に支払う報酬をきのう改定し、こうした「医療的ケア児」を支援する施設を手厚く評価することにした。

 厚労省研究班の推計によると、医療的ケア児は2019年時点で全国に約2万人おり、過去10年でほぼ倍に増えている。背景には医療技術の進歩があり、生まれつき重い障害のある赤ちゃんの命も救えたり、成長に応じて退院して家で暮らせるようになったりしている。

 そうした変化に、自宅に帰った後の支援などの制度は追いついていないのが実情だ。児童発達支援や放課後等デイサービスといった通所サービスは受け入れが十分に広がっていないと指摘される。

 その一因とされるのが、こうした通所サービスの報酬が重症心身障害児向けと、それ以外に分かれていたことだ。医療的ケア児には重症心身障害に当たらない子は多いが、動き回れる場合でも手厚い見守りが欠かせない。しかし、施設にとっては、こうした子を受け入れても、医療的ケアが必要ない子と報酬は変わらないという事情があった。

 制度のはざまにあって通う先が見つからず、子育ての相談相手もいないまま24時間つきっきりで世話をする保護者もいるとされる。支援を求める声が高まっているのは当然だろう。

 障害福祉サービスの報酬改定は3年に1度行われ、2021年度からは全体で0・56%の引き上げが昨年末に決まっていた。その中で通所サービスは医療的ケア児に特化した基準を設け、看護師の配置などに充てる額を手当てする。受け入れ施設の増加が期待できる内容と言える。

 もう一つ、課題となっているのが教育現場での受け入れである。

 医療的ケア児の支援については、国だけでなく自治体が果たすべき役割も大きく、16年の児童福祉法の改正で支援に努めることが定められた。だが、市町村立が多い学校に通う際、保護者が付き添ってケアするよう求められることが少なくない。

 このため、今国会に超党派による議員立法で、支援の強化に向けた法案を提出し、成立を目指す動きもある。具体的には保護者の付き添いが必要なくなるよう、学校に看護師らの配置を求める。各都道府県には、家族の相談に応じ、情報提供や助言をする支援センターの設置を促すというものである。

 子どもの健やかな成長を図るとともに、保護者の離職を防止するとの目的は理解できる。その実現を図るには、当事者家族の声に耳を傾けて、実効性のある仕組みにするのはもちろん、国会審議などを通じて幅広い理解を得ていくことが求められる。




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Author:gogotamu2019
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