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(論)70歳まで就業に関する社説・コラム(2021年4月5・8・9日・5月11日)

70歳までの就業 進まない現実踏まえねば(2021年5月11日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 4月から企業の努力義務となった、70歳まで働ける環境づくりが進んでいない。コロナ禍で経営の先行きが見通せないためだ。

 安倍晋三前政権が掲げた全世代型社会保障改革の目玉政策である。元気な高齢者に働いてもらい、社会保障制度の担い手を増やすのが狙いだ。

 来年4月に始まる年金制度改革にも影響が及ぶ。政府は、意図した通りに進まない現実を直視しなければならない。

 共同通信社が主要110社に行ったアンケートで、6割が「検討中」と回答した。「業績が厳しく、コロナなどで先が読めない」「時期を含めて慎重に検討したい」などを理由にしている。

 長引くコロナ禍で、雇用情勢は悪化の一途をたどっている。中小企業ではなおさらだ。多くが、事業維持に追われて、対応に手が回らないのが実情だろう。

 高年齢者雇用安定法は、定年の廃止や延長、継続雇用制度の選択肢を設け、希望者を65歳まで雇うよう企業に義務付けている。

 政府は4月からの法改正で▽起業やフリーランスを希望する人と業務委託▽自社が関わる社会貢献事業への従事―も選択肢に加え、70歳までを努力義務にした。

 アンケートでは、31・8%が継続雇用、5・5%が定年延長で70歳までの就業機会を確保している。業務委託は1社、社会貢献事業はゼロだった。

 新たな選択肢は企業との雇用関係がなくなり、最低賃金といった労働法の保護が受けられないと、当初から指摘されてきた。継続雇用も雇い止めのリスクが残る。

 この制度で就業を70歳まで広げるのは妥当か、検証が必要だ。

 政府は来年4月から、公的年金受給開始(原則65歳)を選べる年齢の上限を、70歳から75歳に引き上げる。66歳以降も収入が見込めるようになれば、受け取りを遅らせる人が増え、給付額を抑えることができる可能性が生じる。

 ただ、企業にとっては現役世代の賃下げや若者の採用抑制につながる恐れがある。コロナが収束しても取り組みが広がるかは不透明だ。社会保障制度の安定化につながるとは思えない。

 政府は、努力義務を、将来的に義務化する方針だ。少子高齢化で現役世代の先細りが確実な中、高齢者の就業は今後も重要な対策に位置づけられるだろう。

 70歳まで働くことが前提となってはいけない。高齢でも安心して暮らせる社会保障制度をまず作り上げていかねばならない。





70歳就業法施行 労働意欲持てる環境を(2021年4月9日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 改正高年齢者雇用安定法が今月から施行された。既に義務化されている65歳までの就業機会の確保に加え、さらに70歳まで働けるよう企業に努力義務を課した。制度を浸透させていくには、意欲ある高齢者が働きやすい環境を整備していくことが欠かせない。

 減少が進む労働力の確保と膨らむ社会保障費の抑制が政府の狙いだ。2022年には、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり始める。30年後には現役世代が高齢者をほぼ一対一で支える「肩車型社会」を迎えるため、現役世代の負担増に歯止めをかけなければならない状況となっている。

 これまでは定年の延長や廃止、継続雇用制度のいずれかにより希望者全員を65歳まで雇用するよう企業に義務付けてきた。4月からは個人事業主として業務委託契約を結んだり、自社の社会貢献事業で働いてもらったりする方法を加え、70歳までの就業機会を確保することを努力義務とした。

 業務委託契約や社会貢献事業の場合、企業と高齢者の間に雇用契約はなくなる。これは会社員ではなくなることを意味し、労働法の保護を受けられない。働き過ぎを防ぐ労働時間規制や最低賃金の適用対象から外れるため、不利益が生じないような制度設計が企業側に求められる。

 他にも多くの課題がある。多くの企業は勤続年数や年齢に応じて賃金を引き上げる年功序列を採用している。再雇用の場合、以前と同じような仕事をしても賃金が大幅に減るケースがある。これでは労働意欲は高まらない。労働条件に関し労使でしっかり話し合いたい。

 高齢者の労災も目立つ。企業は高齢者個々の体力や事情に応じた柔軟な働き方を進める必要がある。

 若者の雇用への影響も懸念される。若者と高齢者の仕事内容が似通っていて両者が代替可能な場合、企業が継続雇用の高齢者を増やせば、人件費抑制のため若者の新規採用枠が絞られる可能性がある。

 企業内の世代構成がいびつになれば、活力をそぎかねない。豊富な経験、人脈、技能を持つ高齢者と、体力や新しい分野への順応力に優れた若者が補完し合って企業の生産性を高める道を探りたい。

 現在は新型コロナウイルスの感染拡大により雇用情勢は悪化している。高齢者と若者が競合する事態は避ける必要がある。

 65歳以降も働くことを前提とした改革は他にもあり、従来60~70歳の間で選択してきた公的年金受給開始年齢は来春、75歳まで繰り下げが可能となる。時期を遅らせるほど毎月の受給額は増える。何歳から受け取るかという判断も求められる。

 政府は70歳までの就業機会確保の義務化を検討する方針だ。早くから人生設計を考え、備えておきたい。





70歳雇用 就労継続に知恵を絞りたい(2021年4月8日配信『読売新聞』-「社説」)

 65歳を超えても働き続けたいという人が増えている。企業は、様々に知恵を絞り、その希望をかなえてもらいたい。

 改正高年齢者雇用安定法が今月から施行された。すでに義務化されている65歳までの就業機会の確保に加え、さらに70歳まで働けるよう、企業に努力義務を課す内容である。

 企業には、定年の廃止や延長、継続雇用制度の導入に加え、フリーランスとなった退職者と業務委託契約を結ぶ方法も認めている。企業が関わる社会貢献事業に有償ボランティアとして従事する制度を導入する選択肢もある。

 どのような対応が可能か、各企業は積極的に検討してほしい。

 少子化が進み、労働力人口が減少するなかで、就労意欲の高い高齢者が長く働き、社会の支え手となる意義は大きい。

 60歳以上を対象とした内閣府の調査では、「いつまでも」という人を含め、65歳を超えて働きたいという人が過半数に上ったという。就労の継続は、高齢者にとって、経済的な基盤を強くするだけでなく、生きがいともなろう。

 高齢者の就業によって成果を上げている企業は少なくない。

 大和証券は、営業職の一部を対象に、定年後の継続雇用制度で働ける年齢の上限を撤廃した。

 60代後半や70代の社員が経験を生かし、資産運用や相続の相談業務などで活躍している。同世代の顧客は多く、営業力強化につながっているという。

 高齢になると、体力などの個人差が広がる。企業は、働き手の希望をよく聞き、職場の実情に即した制度をつくることが不可欠だ。労災事故が起きないよう、安全な職場づくりにも目配りしたい。

 従業員全体の人事や賃金制度について、労使で十分に協議していかなければならない。

 従業員自身が早くから人生設計を考え、能力を高める必要もあろう。社内研修や公的な職業訓練の機会を増やすことが大切だ。

 高齢者は、何歳から年金を受け取るかという判断も迫られる。

 受給開始時期は原則として65歳だが、希望すれば70歳まで遅らせられる。来年度からは、75歳までの繰り下げが可能となる。時期を遅らせるほど毎月の受給額は増え、75歳で開始すれば、65歳から始めた場合の1・84倍になる。

 働けるうちはできるだけ年金に頼らず、受給開始を遅らせて引退後の収入を増やすという選択を促す仕組みである。国は、丁寧な説明で周知を図るべきだ。



70歳まで就業 安心して働ける環境整備が急務(2021年4月8日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 改正高年齢者雇用安定法が、今月施行された。70歳まで働きたい人に就労機会を用意することが企業の努力義務となった。

 少子高齢化による人手不足を補い、高齢者の収入を増やすことで、増大する社会保障費の抑制につなげる狙いがある。

 65歳以上の就業者は900万人を超え、4人に1人は仕事に就いている計算。日本人の「健康寿命」が延びる中、より長く働ける社会への転換は時代の要請だろう。ただし、労働者がしっかり保護されていることが前提だ。就労への追い立てや押し付けがあってはならず、一人一人が安心して働ける環境整備を急ぎたい。

 高年齢者雇用安定法は①定年廃止②定年延長③継続雇用制度の導入―のいずれかを活用し、希望者全員を65歳まで雇用することを企業に義務付けている。

 今回の改正法ではこの三つに加え、起業した人やフリーランスに業務委託したり、自社が関わる社会貢献事業に従事させたりすることも新たな選択肢として設けた。

 昨年の時点で70歳以上が働くことができる制度のある企業は3割超にとどまる。深刻な人手不足を背景に対応する企業は徐々に増えているものの、多くの企業で手を付けられていない。導入の後押しに向け、選択の幅を広げることは大事だ。

 ただ、多様な働き方には注意がいる。フリーランスは雇われている時よりも働く場所や時間が自由になるが、最低賃金や休業時の補償は受けられない。収入も不安定になりがちだ。

 NPOや有償ボランティアでの就労が想定される社会貢献事業は、企業が出資や運営サポートにどの程度力を入れるかによって経営が左右される。支援が中断されれば悪影響が及ぶが、フリーランス同様に雇用契約がないため働き手の立場は弱い。企業に都合よく使われる危うさをはらむ。

 高齢者の就労を進めるには処遇も重要になる。65歳までの就労確保で企業の大半が継続雇用制度の導入を採用しているが、この場合、賃金が下がるのが一般的だ。70歳まで就労が延びれば不満がさらに広がる可能性がある。現役世代の人事や賃金にも影響するだけに、処遇の在り方について労使間で丁寧な協議が欠かせない。

 従来に増して現場への配慮も求められる。2018年の休業4日以上の労災は60歳以上が4分の1を占めた。高齢者になると思った以上に体力が落ち、健康面の個人差も大きくなる。働き手も過信は禁物だ。

 連合の調査では、高齢になっても働きたいと思う人の理由は「生活の糧を得るため」が最多だった。年金だけでは不安だから、働かざるを得ない現実がある。政府は一連の雇用問題を企業任せにしてはならない。中小企業への助成や、相談体制の拡充に努め、働きやすい仕組みづくりへ主体的に関わっていくべきだ。





70歳就業の確保 自由で安心な雇用環境を(2021年4月6日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法が1日、施行された。企業は社員が希望すれば65歳まで雇用することを既に義務付けられているが、就業の選択肢をさらに増やし、働きたい人の活躍の場を拡大する。

 少子高齢化が進み、30年後には現役世代が高齢者の暮らしをほぼ一対一で支える「肩車型社会」を迎える。社会保障の面からも労働力確保の面からも、高年齢者の就業機会の確保は、時代の求めに応じたものといえるだろう。ただ、それは押し付けであってはならない。制度の前提として、高齢者個々人の意欲や事情に応じ、自由に安心して働ける雇用環境整備が、まずなされるべきだ。

 これまでは企業が(1)定年延長(2)定年廃止(3)継続雇用制度の導入-のいずれかを活用し、希望者全員を65歳まで雇うよう義務付けていた。改正法ではさらに(4)起業やフリーランスを希望する人への業務委託(5)自社が関わる社会貢献事業への従事-なども追加した。

 厚生労働省の昨年6月時点の調査では、継続雇用や65歳定年などで65歳まで働ける従業員31人以上の企業は99・9%だが、66歳以上でも働ける制度がある企業は33・4%。県内では66歳以上が34・8%、70歳以上も32・3%あった。

 年金や貯蓄など老後への不安が高まる中、収入を伴う仕事を続けたいと望む高齢者は多い。企業は着実に対応を進めてほしい。

 ただ一方で、高齢者雇用には、処遇面を中心にまだ多くの課題が残されている。

 高齢者の再雇用などでは、賃金が抑えられることが多いが、「仕事内容が定年前と変わらないのに賃金が大幅に下がるのは不合理」との判決が昨年、名古屋地裁で下された。今月からは「同一労働同一賃金」のルールが中小企業にも適用されるようになった。高齢者雇用でも、能力に応じて意欲を維持できる処遇が求められる。

 高齢者の労災も増えている。企業は労働安全環境の改善に努めるとともに、高齢者の体力や事情に応じた柔軟な働き方を整備していかなければならない。

 今回の法改正で新たな選択肢となった「起業やフリーランスへの業務委託」では、企業と雇用関係がなくなる。働く場所や時間は自由になるが、労働者保護の関係法が適用されなくなる。労災保険に原則入れず、最低賃金も適用されないなど、働く側の自己責任が拡大する。労使間の事前の十分な協議が必要だろう。

 少子高齢化によって、長期的には労働力不足が進むことは間違いないが、新型コロナウイルス感染拡大により雇用情勢は暗転している。現状では、高齢者雇用の拡大が若者の雇用に影響を与える可能性が出てきたのも懸念材料だ。

 労働市場での世代間競合を避けるためにも、豊富な経験や人脈、技能を持つ高齢者と、体力があり新しい分野への順応性に優れた若者が、補完し合って企業の生産性を高める道を探りたい。





70歳まで就業 処遇の改善も忘れるな(2021年4月5日配信『中国新聞』-「社説」)

 人生100年時代に合わせ、雇用環境も変えていかなければならないのだろう。希望者には70歳まで働く機会を確保することが企業の努力義務となった。1日に施行された改正高年齢者雇用安定法によってである。

 これまでは希望者全員を65歳まで雇うよう義務付けられていた。少子高齢化による人手不足の解消や、技術の伝承などのメリットがあり、その仕組みは、ほぼ整ってきたと言えよう。

 今回さらに70歳まで引き上げた。罰則のない努力義務だが、いずれは義務付けることも政府は検討しているという。

 まだ働きたい人が安心して就業できる環境を各企業は整えなければならない。もちろん一層の負担を求める以上、政府の支援も欠かせない。

 とりわけ今、新型コロナウイルスの感染拡大で雇用状況が悪化している。解雇や雇い止めは累計で10万人近くに達した。飲食や観光など、厳しい状況が続きそうな業種もある。政府にしかできない対策を講じて、これ以上の悪化を防ぐべきだろう。

 高齢者の就業は社会保障にも深く関係している。少子化による現役世代の先細りに加え、超高齢化で年金受給者は増えていく。1人の現役世代が1人のお年寄りを支えるような「肩車」負担の時代は間近である。

 年金財政の逼迫(ひっぱく)を緩和するため、元気な高齢者にはいつまでも働いて、年金財政を支える側に立ってもらいたい―。そんな思惑が政府にはある。来年4月には、年金の受け取り開始年齢の上限を今の70歳から75歳まで引き上げる。70歳までの就業と合わせて、現役世代の負担軽減を図るのに懸命のようだ。

 ただ企業の多くはまだ、70歳就業について、対応を決めていない。厚生労働省の昨年6月1日時点の調査では、66歳以上が働ける制度が「ある」企業は、全体の3分の1程度しかない。

 取り組みを促すため、政府は新たな方策を打ち出している。従来の定年廃止・延長、継続雇用制度の導入に加え、業務委託契約と、社会貢献事業への支援を通じた高齢者の働く場の間接的提供―の二つである。

 企業の選択肢が広がるのは確かだが、不安もある。例えば業務委託の場合、最低賃金や休業時の補償がなく、労災も対象外となるなど、一部で労働者の権利が守られないからだ。

 高齢者自身の問題もある。個人差はあるが、加齢に伴う身体能力の衰えは避けられない。労災をどう防ぐか。現場の目配りが今まで以上に求められる。

 そもそも、専門技能を生かしたり趣味などのすきま時間を使ったりして働き続けることを歓迎する人ばかりとは限らない。食いつなぐために働かざるを得ない人も少なくないだろう。

 そうした人が安上がりの労働者として便利に使われないよう、企業だけではなく、政府も目を光らせなくてはならない。例えば処遇改善も忘れてはなるまい。働く高齢者の増加で懸念される、新卒採用や若い人の昇進などへの悪影響を防ぐことにもつながるはずだ。

 人生100年時代にふさわしい社会はどうあるべきか。視野を広げて、高齢者の雇用の在り方や、安心して働き続けられる場づくりを考えねばならない。政府は、企業任せにせず、積極的に関与する必要がある。




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