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<民主主義のあした>菅首相の記者会見、本紙は指名ゼロ 質問「選別」、最多6回の社も(2021年4月5日配信『東京新聞』)

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記者会見する菅首相=3月18日

 首相が自ら国民に向けて情報を発信し、報道機関が国民の「知る権利」に応えようと疑問点などをただす首相記者会見。菅義偉首相がこれまで官邸で行った9回の会見で、各社が何回質問できたかを本紙が集計したところ、6回からゼロと大きな差があることが分かった。本紙は一度も質問できていない。政府に批判的な社の質問回数が少ない傾向にあり、識者は「官邸によるメディア選別。結果的に国民に不利益を及ぼす」と警鐘を鳴らしている。(関口克己)

 会見は通常、首相の冒頭発言に続き、官邸の記者クラブ「内閣記者会」の幹事社2社(2カ月交代で持ち回り制)がそれぞれ代表質問。次いで挙手した記者から内閣広報官が指名する。

 菅政権が発足した昨年9月16日から、緊急事態宣言の解除を発表した今年3月18日までの9回の首相会見で、最も多く指名されたのは日本経済新聞とテレビ東京で各6回(テレビ東京は1~2月の幹事社としての質問4回を含む)。

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 5回質問できたのは7社で、このうち読売新聞、産経新聞、共同通信はすべて幹事社としてではなく、挙手して指名された。本紙は菅首相の就任以降、毎回官邸担当記者が挙手しているが、指名されていない。

 質問は1社1問に制限され、回答が不十分だったりしても再質問できない。

 本紙は小野日子(ひかりこ)内閣広報官に文書で、指名されない理由や、事前に質問内容を伝えないことと関係があるかを質問したが、「挙手の状況、内閣記者会とフリーランス等のバランスなどを勘案して指名している」とするだけで明確な回答はなかった。



<民主主義のあした>国民の疑問に答えているか 首相の記者会見 1社1問、追加認めず(2021年4月5日配信『東京新聞』)

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記者の出席人数制限が行われている菅首相の記者会見=3月18日、首相官邸で

 少数意見を尊重しながら時間をかけて合意形成し、重要政策が決まっていく。政府はそれを誠実に実行する−。そんな民主主義の基本が今、揺らいでいます。どうすれば良くなるのかを探ろうと、問題点や改善への動きを伝える特集を月1回程度、お届けすることにしました。初回のテーマは「首相の記者会見」。国民の「知る権利」に十分答えているとは言いがたい現状を掘り下げました。

 歴代首相は衆院解散や内閣発足、重要法案成立などの節目に官邸で記者会見してきた。メディアを通じ、主権者の国民に自らの言葉で意思決定の理由を伝え、理解を得るためだが、同時に、説明不足やごまかしがないか報道機関が問いただす場でもある。

 会見は内閣記者会の主催だが、開くかどうかは事実上、首相側が決めている。司会も慣例で内閣広報官が務める。幹事社2人が質問した後、挙手した記者から広報官が指名する流れだ。幹事社質問は事前に記者クラブ内で周知される。それ以外の社には、官邸側が質問内容を事前に問い合わせているが、応じる社と応じない社がある。本紙は、記者会見は予定調和であってはならないとの立場から伝えていない。

◆出席29人に制限

 新型コロナウイルス感染防止のためとして、昨年4月7日の安倍晋三首相(当時)の会見以降、官邸側が参加者を29人に制限している。常勤19社は「1社1人」。残る10人は地方紙や外国メディア、フリーランスらで、希望者が多いと官邸側が抽選で決める。内閣記者会は感染状況が一時落ち着いた昨年10月、制限見直しを申し入れたが、官邸側は拒否した。

 第2次安倍政権以降、幹事社を含めて質問は3〜6人、時間は30分程度が多かった。その後、新型コロナ感染拡大が深刻化。より丁寧な説明を求める声が強まった昨年3月以降、質問者や時間が増えた。

◆質疑は深まらず

 それでも、質疑の内容が深まったとは言えない。官邸側が「なるべく多くの人に質問してもらう」との理由で「1社1問」に限り、答えが不十分な場合でも追加質問を認めないからだ。このため、菅義偉首相の発言も結果的に、冒頭発言の繰り返しが目立つ。質問を求めて挙手する記者が残っていても、広報官が「次の日程」などを理由に打ち切る。首相動静を見る限り、会見後に重要な日程がなかったケースも目立つ。

 菅首相の会見では、質問できなかった記者に書面での追加質問を受け付け、後日に首相が書面回答する方式が採られているが、これも「1社1問」限りだ。

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◆サービスではなく政府の義務 山田健太専修大教授(言論法)

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山田健太専修大教授

 日本の政策決定は、その過程の透明性が足りない。新型コロナウイルスへの対応やデジタル庁設置法案なども、政策決定の過程が見えない。官邸の意思決定にかかってしまっているためだ。その分、首相の説明責任は非常に重いのに、説明は尽くされない。他国の政権トップより会見は多いと言うが、米国などは情報開示が徹底されており、日本と背景が違う。

 情報公開法は、政府の活動を「国民に説明する責務」を明記する。公的機関が持つ情報は国民の共有財産で、開示しなければならない。今の首相会見は国民への「サービス」となっているが、本来は国民の「知る権利」に応える法的義務がある。

 第2次安倍政権発足以降「政府批判は悪」という社会の風潮が強まった。メディアを選別して異論を排し、言論の封殺が進む。政府はこの対立構造を利用し、メディアを含めた社会を二分化している。コアな支持層の賛成で政策を進められるから、支持しない層には説明しなくていいという姿勢となった。

 恣意(しい)的なメディア選別は、結果的に社会全体の「知る権利」を後退させる。政府寄りのメディアの質問には答え、批判的なら応じない。こんな姿勢なら、政府が望む情報だけが世の中に流れていく。自由闊達(じゆうかったつ)で多様な情報の流れによる公共の言論空間を維持、保障することが公権力の憲法上の義務なのに、政府がその空間を壊している。

 現在の首相会見は内閣広報官が司会役を務め、官邸側に主導権があり問題だ。質問回数のいびつさは、メディアを選別する官邸側の恣意的判断が働いていると思わざるを得ない。

 1社1問に限り、再質問を認めない運用もやめるべきだ。事前の質問通告は、きちんとやりとりしたい場合一つの手だが、1問1答では深く追及できないので意味がない。こんな実態の会見を続ければ、市民のメディア不信は強まるだけだ。

 コロナ禍の社会に、正解はない。政治に正解を求めず、メディアと市民社会が正解を探す。その動きを伝えることで、新しい民主主義のあり方が見えてくると期待したい。 (談)

◆各国は 米大統領自ら仕切り指名、応酬も

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3月25日、米ホワイトハウスで開かれた就任後初の記者会見で、記者からの質問に応じるバイデン大統領(右)=AP

 欧米でも首脳の記者会見の機会は限られるが、再質問は認めるケースが多い。

 ウェブサイト「米大統領プロジェクト」によると、大統領の単独会見は、1960年代まではほぼ月平均2回以上行われたが、その後減少。トランプ前大統領まで直近6人のうち、ブッシュ(父)氏を除く5人は月平均1回未満だった。現職のバイデン氏は今年1月の就任から2カ月以上会見せず、初会見が過去100年で最も遅く、批判された。

 ホワイトハウスの会見室の記者席は49席。常駐記者による記者会が座席を全て決め、その他の記者は立ち見になる。時間は1時間弱から1時間半ほど。米メディアの記者は「大統領に質問できる機会はめったにない」と嘆く。

 司会役はおらず、大統領自ら記者を指名するなど、終了まで全てを仕切る。記者は簡潔に質問をぶつけ、再質問もできる。トランプ氏は「フェイクニュース」と呼ぶ自らに批判的なメディアもあえて指名し、バトルを繰り広げた。

 フランスは、大統領が頻繁に会見する伝統がない。現職のマクロン氏はテレビ演説や会員制交流サイト(SNS)での発信を好む。2018年の反政府デモ「黄色いベスト運動」で「国民との距離が遠い」と批判され、就任約2年の19年に初めて、記者を一堂に集めて会見した。以後はオンラインを含め数回開いたが、新型コロナによる3度の都市封鎖を知らせたのはテレビ演説だった。

 質問する記者は大統領府の報道担当が指名。日刊紙リベラシオンによると、質問を希望する記者は事前に報道担当にアピールする慣例があるが、質問内容の通告は求められない。

 議会制民主主義発祥の地・英国も、首相が記者会見する機会は多くはなかった。だが、コロナ禍が深刻となった昨年春以降、現職のジョンソン氏はテレビ会議方式で会見。記者以外の市民にも質問の機会を設けているのが特徴だ。

 コロナ関連で重要な発表がある時に開かれるため会見は不定期だが、他のテーマも質問できる。会見では記者らが順番に質問し、再質問も可能だ。




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